JP4070970B2 - ゴルフクラブシャフト及びアイアンゴルフクラブセット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゴルフクラブシャフト及びアイアンゴルフクラブセットに関し、詳しくは、飛距離とコントロール性を改良したゴルフクラブシャフト、及びアイアンゴルフクラブセットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴルフクラブシャフトに比強度、比剛性の高いカーボン繊維を使用したゴルフクラブシャフトが製造され市場に定着している。また、カーボン繊維が比強度、比剛性が高くなるにつれ、軽量化されたゴルフクラブシャフトが製造できるようになった。
【0003】
また、このような比強度、比剛性の高いカーボン繊維を使用することにより、設計の自由度が広がり、部分的に剛性値を設計することができるようになっている。特にアイアンゴルフクラブにおいては、飛距離と共にコントロール性が重視されるため、シャフトの剛性分布を異ならせた種々の試みがなされている。
【0004】
例えば、特開2000−126338号において、BUTT端から特定位置の曲げ剛性を番手が大になるほど漸次減少させたアイアンゴルフクラブセットが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−126338号のアイアンゴルフクラブセットでは、シャフトのTIP側の剛性が考慮されておらず、コントロール性と飛距離の両立が不十分である。即ち、実際には、番手が大になるほど、つまりショートアイアンになるにつれ、細かなコントロール性が求められると共に、ボールを高く上げ狙い箇所にボールを止めるためにシャフトのしなりが必要であるが、これらの性能を実現することができていない。特に、アイアンゴルフクラブセットにおいては、番手の違いによるシャフトの影響を受けることなく、安定した性能を実現できるものが望まれている。
【0006】
その他、種々の提案がなされており、ゴルフクラブシャフトが軽量化されるにつれてスイング時のヘッドスピードが上がり、ある程度飛距離を出せるようになっている。しかし、近年高齢化社会になる傾向であり、非力なプレーヤーには、軽量化だけでは十分な飛びを確保出来ていないのが実状である。また、飛距離がたとえ目標に達したとしても、逆にコントロール性が低下するという問題が存在し、飛距離とコントロール性を両立するのは困難であった。
【0007】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、飛距離の向上と良好なコントロール性が両立されたゴルフクラブシャフトを提供すると共に、番手の違いによる違和感を感じることなく安定したシャフト性能を実現するアイアンゴルフクラブセットを提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、シャフトのTIP側端からシャフト全長の40%以上60%以下の位置までの範囲における最大EI値と最小EI値の差が、その範囲における最大EI値と最小EI値の平均値の10%以下であると共に、上記シャフトのBUTT側端からシャフト全長の30%の位置までの範囲における最低EI値が、上記シャフトのTIP側端からシャフト全長の40%以上60%以下の位置までの範囲における最大EI値の1.7倍〜3.5倍とし、かつシャフトのTIP端の直径が9.0mm以上12.0mm以下であることを特徴とするゴルフクラブシャフトを提供している。
【0009】
このように、シャフトのTIP側端からシャフト長さ方向のほぼ中央部までEI(曲げ剛性)値がほぼ同一で、EI値のばらつきがない上に、TIP径の値を規定しているため、上記TIP側部分全体としてしなりを出すことができると共に、シャフト全体としてもしなりを実現することができ飛距離を向上させることができる。また、TIP側の剛性値がほぼ一定である上にTIP径を規定しているため、スイング時の安定性が良く、コントロール性にも優れたゴルフクラブシャフトを得ることができる。
【0010】
上記のようにシャフトのTIP(ヘッド)側端からシャフト全長の40%以上60%以下、好ましくは45%以上55%以下の位置までの範囲のEI値を規定しているのは、40%未満であるとスイング中にシャフトのTIP端からシャフト中央部に向けてのしなり部分が少なく、十分に飛び効果が出ないためである。一方、60%よりも大きいと今度はしなり部分が大きくなりすぎ、コントロール性を損なってしまうためである。
【0011】
上記最大EI値と最小EI値の差が、上記範囲における最大EI値と最小EI値の平均値の10%以下、好ましくは6%以下としている。即ち、上記範囲でのEI値のばらつきが±5%以下、好ましくは±3%以下としている。これは、上記した差の値が上記平均値の10%より大きいと、規定範囲内での剛性値の差が大きくなり飛距離とコントロール性を両立させる本発明の効果が得られないためである。
【0012】
シャフトのTIP端の直径(外径)を9.0mm以上12.0mm以下、好ましくは9.1mm以上11.0mm以下、さらに好ましくは9.2mm以上10.5mm以下としている。上記範囲としているのは、9.0mmより小さいとネックでの折れが発生しやすく、コントロール性が低下するためである。一方、12.0mmより大きくなるとTIP側の剛性値が高くなりすぎ、しなり設計が難しくなるためである。
【0013】
上記シャフトのTIP側端からシャフト全長の40%以上60%以下の位置までの範囲の最大EI値は、1.0kg・m2以上3.5kg・m2以下、好ましくは1.2kg・m2以上2.5kg・m2以下の範囲であるのが良い。 上記範囲としているのは、上記範囲より小さいとシャフト全体が軟らかくなり過ぎ、安定性が悪くなり頼りなく感じやすいためである。一方、上記範囲より大きいとシャフト全体が硬くなり過ぎ、シャフトが変形し難くなり飛距離をロスすると共に、シャフトが硬く、難しく感じやすいためである。
【0014】
上記シャフトのBUTT(グリップ)側端からシャフト全長の30%の位置までの範囲における最低EI値が、上記シャフトのTIP側端からシャフト全長の40%以上60%以下の位置までの範囲における最大EI値の1.7倍〜3.5倍とするのが好ましい。 前述したようにシャフトのTIP端からシャフト中央部付近までのEI値をほぼ一定にして、しなり効果を向上させると共に、上記したようにBUTT側の規定範囲の最低EI値がTIP側の規定範囲の最大EI値よりも大きくなるように両者の比を設定することで、さらに飛距離やコントロール性を高めることができる。
【0015】
即ち、上記BUTT側端からの規定範囲における最低EI値を、上記TIP側からの規定範囲における最大EI値の1.7倍〜3.5倍とするのが良い。
上記範囲としているのは、1.7倍より小さいとシャフト全体が擦ってしまい鞭のような効果が得られず、却ってインパクト時にパワーロスし、飛びが損なわれやすいためである。一方、3.5倍より大きいと手に伝わる衝撃が大きくなりやすく、打球感を損なうためである。
【0016】
上記のようにシャフトのBUTT(グリップ)側端からシャフト全長の30%の位置までの範囲における最低EI値を、EI値の比較対象範囲としているのは、上記BUTT側からの範囲は、コントロール性やしっかり感に寄与する部分であり、TIP側のしなりにより飛距離の増大との両立を実現するのに最適な範囲であるためである。
【0017】
さらに、具体的には、ロングアイアンを#2、#3、#4(2番、3番、4番アイアン)とし、ミドルアイアンを#5、#6、#7(5番、6番、7番)とし、ショートアイアンを#8、#9(8番、9番)、PW(ピッチングウェッジ)、AW(アプローチウェッジ)、SW(サンドウェッジ)とした場合、上記BUTT側端からの規定範囲における最低EI値の、上記TIP側からの規定範囲における最大EI値に対する倍率を各々以下のように番手別に設定するのが良い。ショートアイアンでは1.7〜2.3倍、好ましくは1.75倍〜2.10倍、さらに好ましくは1.8倍〜2.0倍であるのが良い。ミドルアイアンでは2.0〜2.7倍、好ましくは2.2倍〜2.5倍、さらに好ましくは2.3倍〜2.4倍であるのが良い。ロングアイアンでは2.5倍〜3.5倍、好ましくは2.7倍〜3.4倍、さらに好ましくは2.9倍〜3.2倍であるのが良い。
番手が小になる(ロングアイアン)ほど全長が長くなるため、上記のようにTIP部とBUTT部の比率が高い方が、スイングした時のしなり点でのわん曲が大きくなり、シャフトTIP端側のしなりが大きくなるため、飛距離を向上させることができる。また、それぞれの番手において上記設定値が特に良いのは、前述した理由と同様の理由によるものである。
【0018】
また、シャフトの重心点はシャフトのTIP側端からシャフト全長の40%以上60%以下の範囲にあることが好ましい。これにより、振り抜きやすいシャフトとし、操作性も向上させることができる。
【0019】
上記シャフトのTIP側端からシャフト全長の40%以上60%以下の位置までの範囲と、上記シャフトのBUTT側端からシャフト全長の30%の位置までの範囲との間に存在するシャフト長さ方向中間部分の範囲におけるシャフト外径の傾斜率が、10/1000以上20/1000以下であるのが好ましい。
このように、傾斜率を規定することにより、上記TIP側とBUTT側のEI値をうまくつなげることができるため、打球フィーリングを良好なものとすることができる。
上記範囲としているのは、上記範囲以外の外径傾斜率では、TIP側はしなり、BUTT側はコントロール性やしっかり感といったそれぞれの機能を十分に出すことができないためである。さらには、10/1000より小さいと、シャフトのTIP側端からシャフト全長の40%以上60%以下の位置までの範囲のEI値と、シャフトのBUTT側端からシャフト全長の30%の位置までの範囲におけるEI値の比の設定が難しくなりやすい上に、打球フィーリングが悪くなりやすいためである。一方、20/1000より大きいと、製造工程上研磨仕上げしにくくバフが残りやすい上に、塗装もしにくく、転写マークしにくいためである。
【0020】
本発明のゴルフクラブシャフトはウッド型クラブ、アイアン型クラブ、パター等のあらゆる種類のゴルフクラブに適用することができるが、特にアイアン型クラブに好ましい。
【0021】
また、ゴルフクラブシャフトは、軽量で高強度である繊維強化樹脂製が好ましいが、スチールシャフト等の金属製シャフトとすることもできる。なお、繊維強化樹脂に用いられる樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられるが、これらを単独あるいは組み合わせて用いても良い。強度と剛性の点より、熱硬化性樹脂が好ましく、特にエポキシ系樹脂が好ましい。さらに、強化繊維としては、一般に高性能強化繊維として用いられるカーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維等が使用でき、軽量で高強度であることからカーボン繊維が好ましい。これらの強化繊維は、長繊維、短繊維の何れであっても良く、強化繊維の形状や配列については限定されず、これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。
【0022】
なお、繊維強化樹脂製とした場合には、シャフト重量は50g以上80g以下、好ましくは55g以上70g以下であるのが良い。これにより、軽量性、及び強度、操作性も兼ね備えたゴルフクラブシャフトを得ることができる。
【0023】
本発明は、さらに、番手の異なる複数のアイアンゴルフクラブを有するアイアンゴルフクラブセットであって、
上記アイアンゴルフクラブが、上記した本発明のゴルフクラブシャフトで構成されており、上記アイアンゴルフクラブの番手が大きくなるほど、シャフトの重心位置をBUTT側にすると共にシャフトのBUTT側端から15cmまでの範囲のねじれ剛性(GI)値を大きくしていることを特徴とするアイアンゴルフクラブセットを提供している。
【0024】
このように、本発明のゴルフクラブシャフトによりアイアンゴルフクラブを構成し、ゴルフクラブセットとすることで、低番手から高番手のいずれのクラブを用いた場合でも、シャフト長さ、番手の違いによるスイング時の違和感等の影響を受けることなく、良好な飛距離と安定したコントロール性を実現することができる。
【0025】
また、アイアンゴルフクラブセットとは、3番〜9番アイアンからなるものが一般的であるが、これにドライビング(2番)アイアン、10番アイアン、サンドウェッジ等の各種ウェッジ等が任意に付加されたものも本発明のアイアンゴルフクラブセットに含まれる。また、例えば奇数番手のアイアンクラブのみが組み合わされた所謂ハーフセットも本発明のアイアンゴルフクラブセットに含まれる。さらには、任意の番手のアイアンゴルフクラブが2本以上組み合わされたアイアンゴルフクラブセットも本発明のアイアンゴルフクラブセットに含まれる。
このようなアイアンゴルフクラブセットにおいて、少なくとも2本以上に本発明のゴルフクラブシャフトが適用されていれば良いが、ロングアイアン、ミドルアイアン、ショートアイアンの各々のアイアンにおいて各1本以上に適用されているのが好ましい。特に、#2〜#3アイアンに適用するのが良いが、セット中の全てのクラブに適用するのが最適である。
【0026】
本発明のアイアンゴルフクラブセットにおいて、アイアンゴルフクラブの番手が大きくなるほど、シャフトの重心位置をBUTT(手元)側にすると共にシャフトのBUTT端から15cmまでの範囲のGI(ねじれ剛性)値を大きくしていることが好ましい。
番手が大きいショートアイアンでは、特にコントロール性や操作性が重要である。このため、番手が大きくなるほど重心位置を手元側にすることにより、操作性が良くなり、コントロールし易くなる。また、BUTT側端から15cmまでの範囲はプレーヤーがグリップを握った時に手の指がかるところにほぼ一致する位置であるため、番手が大きくなるほど上記範囲のGI値を大きくすることにより、握り易くなりシャフトの操作性を高めることができる。
【0027】
シャフトのBUTT端から15cmまでの範囲のGI値は、ショートアイアンでは4.0kg・m2以上6.0kg・m2以下、ミドルアイアンでは3.5kg・m2以上5.5kg・m2以下、ロングアイアンでは2.1kg・m2以上3.5kg・m2以下であるのが良い。 それぞれの番手において上記設定値が特に良いのは、 各設定値より小さいと、手元でのねじれが大きくなりコントロール性が損なわれやすいためであり、一方、各設定値より大きいと、手に伝わる衝撃が大きい(硬く感じる)ため打球感が損なわれやすいためである。
【0028】
また、シャフトの重心位置(TIP側端からの距離)は、ショートアイアンでは495mm以上510mm以下、ミドルアイアンでは485mm以上500mm以下、ロングアイアンでは480mm以上500mm以下であるのが良い。なお、重心位置を調整するには、シャフトのBUTT側部分にガラスシートやタングステンシート等を介在させるのが好ましい。これにより、シャフトの剛性等の種々の性能に影響を及ぼすことなく重心位置を調整することができる。
【0029】
また、シャフトの長さは、ショートアイアンでは800mm以上920mm以下、ミドルアイアンでは910mm以上960mm以下、ロングアイアンでは950mm以上1000mm以下であるのが良い。上記範囲とすることにより、飛距離とコントロール性の両立を実現しやすくすることができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。 図1、図2は、本発明のゴルフクラブシャフトにより構成される第1実施形態に係るロングアイアン用のアイアンゴルフクラブ10を示し、シャフト1は、繊維強化プリプレグの積層体からなり、テーパー状とし、小径側先端にアイアン型ヘッド2が取り付けられ、大径端側にグリップ3が取り付けられている。
【0031】
ロングアイアン用のアイアンゴルフクラブ10は、4番手のアイアンクラブでありシャフト1の長さが960mm、シャフト1のTIP(ヘッド)側径が10.0mm、重心位置がTIP側端1aから496mmである。
【0032】
シャフト1のTIP側端1aからシャフト全長の50%の位置までの範囲Hlにおける最大EI値と最小EI値の差は、その範囲Hlにおける最大EI値と最小EI値の平均値の5%であり、ほぼ一定としている。また、シャフト1のTIP側端1aからシャフト全長の50%の位置までの範囲Hlにおける最大EI値は2.5kg・m2である。
【0033】
シャフト1のBUTT(グリップ)側端1bからシャフト全長の30%の位置までの範囲H2における最低EI値は、シャフト1のTIP側端1aからシャフト全長の50%の位置までの範囲Hlにおける最大EI値の3.0倍としている。また、シャフト1のBUTT側端1bから15cmまでの範囲のGI値を3.0kg・m2としている。
【0034】
さらに、シャフト1のTIP側端1aからシャフト全長の50%の位置までの範囲Hlと、シャフト1のBUTT側端1bからシャフト全長の30%の位置までの範囲H2との間のシャフト長さ方向中間部分H3におけるシャフト外径の傾斜率は15/1000としている。
【0035】
上記シャフト1は、繊維強化プリプレグを、芯金(マンドレル)に内周側から巻き付けて積層している。これら繊維強化プリプレグの強化繊維はいずれもカーボン繊維を用い、マトリクス樹脂としてエポキシ樹脂を用いている。
【0036】
シャフト1は、シートワインディング製法により作成されており、繊維強化プリプレグを芯金に、順次巻き付けて積層した後、ポリエチレンテレフタレート樹脂製等のテープでラッピングしてオーブン中で加熱加圧して樹脂を硬化させて一体的に成形し、その後、芯金を引き抜いて、シャフト1を形成している。
【0037】
このように、シャフト1のTIP側端1aからシャフト長さ方向のほぼ中央部までEI(曲げ剛性)値がほぼ一定で、EI値のばらつきがないため、TIP側部分全体としてしなりを出すことができる上に、シャフト全体としてもしなりを実現することができ飛距離を向上させることができる。また、TIP側の剛性値がほぼ一定であるため、スイング時の安定性が良く、良好なコントロール性を有するゴルフクラブシャフトを得ることができる。
【0038】
上記第1実施形態のアイアンゴルフクラブ10は、図3(A)にも示すように、ロングアイアン用であるが、本発明のゴルフクラブシャフトのシャフト長さ、取り付けるアイアン型ヘッドの種類、シャフトの剛性分布等を変更することにより、ミドルアイアン用、ショートアイアン用等の種々のゴルフクラブを得ることができる。
【0039】
具体的には、図3(B)に示すように、ミドルアイアン用のアイアンゴルフクラブ10’は、5番手のアイアン型ヘッド2’を取り付けたアイアンゴルフクラブでありシャフト1’の長さが945mm、シャフト1’のTIP径が10.0mm、重心位置がTIP側端から499mmである。
また、シャフト1’のBUTT側端からシャフト全長の30%の位置までの範囲における最低EI値は、シャフト1’のTIP側端からシャフト全長の50%の位置までの範囲における最大EI値の2.2倍とし、シャフト1’のBUTT端から15cmまでの範囲のGI値を5.0kg・m2としている。なお、シャフト1’のTIP側端からシャフト全長の50%の位置までのEI値、傾斜率は上記第1実施形態と同様としている。
【0040】
また、図3(c)に示すように、ショートアイアン用のアイアンゴルフクラブ10”は、9番手のアイアン型ヘッド2”を取り付けたアイアンゴルフクラブでありシャフト1”の長さが895mm、シャフト1”のTIP径が10.0mm、重心位置がTIP側端から502mmである。
また、シャフト1”のBUTT側端からシャフト全長の30%の位置までの範囲における最低EI値は、シャフト1”のTIP側端からシャフト全長の50%の位置までの範囲における最大EI値の1.9倍とし、シャフト1”のBUTT端から15cmまでの範囲のGI値を5.0kg・m2としている。なお、シャフト1”のTIP側端からシャフト全長の50%の位置までのEI値、傾斜率は上記第1実施形態と同様としている。
【0041】
また、アイアンゴルフクラブ10及びその他本発明のゴルフクラブシャフトを用いたロングアイアン用のゴルフクラブ1本(3番)、アイアンゴルフクラブ10’及びその他本発明のゴルフクラブシャフトを用いたミドルアイアン用のゴルフクラブ2本(6番、7番)、アイアンゴルフクラブ10”及びその他本発明のゴルフクラブシャフトを用いたショートアイアン用のゴルフクラブ4本(8番、PW、AW、SW)の合計10本のアイアンゴルフクラブにより、本発明のアイアンゴルフクラブセットを得ている。
【0042】
上記のようにEI値やシャフトのTIP径を規定することで容易に、飛距離とコントロール性に優れたゴルフクラブシャフトを得ることができるため、種々の番手のアイアンゴルフクラブに適用可能である。従って、このようなアイアンゴルフクラブを有するアイアンゴルフクラブセットでは、番手の違いによるシャフト長さの相違の影響を受けることなく、良好な飛距離と安定したコントロール性を実現することができ、プレーヤーにとって非常に使い勝手の良いクラブセットとすることができる。
【0043】
以下、本発明のゴルフクラブシャフトを用いたアイアンゴルフクラブの実施例1〜18及び比較例1〜6について詳述する。
各々、表1〜3に示すように、前述したEI値、GI値、TIP径、外径傾斜率、重心位置、シャフト長さを設定した。具体的には、各々、下記の構成からなる繊維強化プリプレグを用い、シャフトを作製した。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
本願でのシャフト成形は、以下のように実施した。マンドレルの長さ方向に対し強化繊維が±45°に繊維方向を持つように繊経強化プリプレグを2枚重ね合わせたものをマンドレルに巻き付けた。その次ぎに、マンドレルに対し、0°方向の繊維強化プリプレグを巻き付け、さらに、シャフトを補強するため0°方向の繊維強化プリプレグを2枚、先端部の補強のために三角形の補強層を巻き付け、本発明のシャフトを製造した。
【0048】
また、番手については、番手が最も小となる番手から大になるにつれ、BUTT側に繊維配向角度が45°になる補強層の巻き数を増加するように設計した。BUTT側にタングステンシートを挿入し重心位置を調整した。
マンドレルの外径傾斜率が上記シャフト外径傾斜率に合うようなマンドレルを用いた。
【0049】
上記繊維強化プリプレグの繊維としては、引張弾性率が30tonf/mm2では、三菱レイヨン社製のMRシリーズ(MR40)、東レ社製T800H、M30を用い、引張弾性率が40tonf/mm2では、三菱レイヨン社製のHRXシリーズ(HR40)、東レ社製M40Jを用い、引張弾性率が80tonf/mm2では、日本グラファイト社製のYS−80を用いた。
【0050】
(実施例1〜6)
ロングアイアンクラブとし、表1に示すように、本発明の規定範囲内となるようにゴルフクラブシャフトのTIP端側EI値、TIP径等を設定した。
(実施例7〜12)
ミドルアイアンクラブとし、表2に示すように、本発明の規定範囲内となるようにゴルフクラブシャフトのTIP端側EI値、TIP径等を設定した。
(実施例13〜18)
ショートアイアンクラブとし、表3に示すように、本発明の規定範囲内となるようにゴルフクラブシャフトのTIP端側EI値、TIP径等を設定した。
【0051】
(比較例1、2)
ロングアイアンクラブとし、表1に示すように、本発明の規定範囲外となるようにゴルフクラブシャフトのTIP端側EI値、TIP径等を設定した。
(比較例3、4)
ミドルアイアンクラブとし、表2に示すように、本発明の規定範囲外となるようにゴルフクラブシャフトのTIP端側EI値、TIP径等を設定した。
(比較例5、6)
ショートアイアンクラブとし、表3に示すように、本発明の規定範囲外となるようにゴルフクラブシャフトのTIP端側EI値、TIP径等を設定した。
【0052】
上記実施例1〜18、比較例1〜6のアイアンゴルフクラブについて、後述する方法により、飛距離、コントロール性の評価を行った。各評価結果を上記各表の下欄に記載する。
【0053】
(EI(曲げ剛性)値の測定)
図4に示すように、万能材料試験機60を用い、3点曲げにより、シャフト1を境ませて測定を行った。EI値の算出は下記の式より行った。
測定点を決定後、該測定点が万能試験機60の圧子61の下にくるようにシャフト1を治具62A、62Bの上に配置した。治具62A、62Bの間隔は200mmとした。圧子61の先端の曲率は75R、治具62A、62Bの先端の曲率は2Rとした。圧子61をテストスピード5mm/minで降下させ、シャフト1を境ませた。負荷荷重が20kgfに達した時点で圧子61の移動が終了し、その時のシャフト1の境み量を測定した。
EI(kg・mm2)=(負荷荷重×(支点間距離)3)/(48×境み量)
なお、測定値をkg・m2に換算して記載した。
【0054】
(GI(ねじれ剛性)の測定方法)
丸棒のねじり剛性の算出式より、剛性GIp、ねじりモーメントMt、ねじり角φ、比ねじり角θとし、以下のようにして、ねじり剛性を表す式を導出した。Ip=π/32(d24−d14)
φ=32Mtl/πGd4→πGd4=32Mtl/φ
θ=Mt/GIp
=32Mt/πGd4
よって、
GIp=(πGd4/32Mt)Mt
=(32Mtl/32Mtφ)Mt
=(1/φ)Mt
GI=支点間距離(mm)×ねじりモーメント(kg・mm)/ねじれ角度(度)
具体的には、図5に示すように、エアチャック方式のチャック70、71にて、シャフト1のBUTT端1bから1cm距離をあけた位置と、BUTT端1bから29cm離れた位置とを1.5kgf/cm2の圧力でチャックし固定した。各チャック70、71とシャフトとの接触長さは4cmとした。チャック70とチャック71の内側間の距離を20cmとした。シャフトのBUTT端1bに13.6kgfのおもりをかけて、太径固定部に13.9kg・cmのトルクを加え、ねじった時のねじれ角度を測定し、ねじれ剛性を算出した。
【0055】
(飛距離の評価)
H/S(ヘッドスピード)40〜45m/sのプレーヤー50人に試打してもらい、ショートアイアンでは110ヤード以上、ミドルアイアンでは150ヤード以上、ロングアイアンでは200ヤード以上の各規定距離を飛んだ人が6割以上いる場合「◎」、規定距離以上飛んだ人が4割以上6割未満の場合「O」、規定距離以上飛んだ人が4割未満の場合「×」の評価とした。
【0056】
(コントロール性の評価)
ハンディキャップが5〜20のゴルファー10名によりテストを行った。コントロール性が最も良いと感じたものを「◎」、コントロール性が良いと感じたものを「O」、コントロール性があまり良くないと感じたものを「△」、コントロール性が悪いと感じたものを「×」として、上記4段階で評価し、最も多い評価を採用した。
【0057】
表1〜3に示すように、実施例1〜18のアイアンゴルフクラブは、シャフトのTIP側の剛性値及びその規定範囲、TIP側端の径が本発明の規定範囲内であるゴルフクラブシャフトで構成されているため、飛距離とコントロール性の評価がいずれも良好であり、飛距離とコントロール性を両立できていることが確認できた。
【0058】
一方、比較例1、3、5はEI値がほぼ一定となる範囲がシャフトのTIP側端から30%までと短いため飛距離と共にコントロール性が悪かった。比較例2、4、6はシャフトのTIP径がいずれも8.5mmと小さいため飛距離と共にコントロール性が悪かった。
【0059】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、シャフトのTIP側端からシャフト長さ方向のほぼ中央部であるシャフト全長の40%以上60%以下の位置までの範囲において、EI(曲げ剛性)値がほぼ同一で、そのばらつきが少なく、かつTIP径を規定しているため、TIP側部分全体としてしなりを出すことができる上に、シャフト全体としてもしなりを実現することができ飛距離を向上させることができる。また、TIP径を規定すると共に、TIP側の剛性値がほぼ一定であるため、スイング時の安定性が良く、コントロール性にも優れたゴルフクラブシャフトを得ることができる。
【0060】
また、本発明のゴルフクラブシャフトによりアイアンゴルフクラブを構成し、アイアンゴルフクラブセットとすることで、低番手から高番手のいずれのクラブを用いた場合でも、番手の違いによるスイング時の違和感等を感じることなく、飛距離やコントロール性等のシャフト性能を安定して実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のゴルフクラブシャフトにより構成される第1実施形態のアイアンゴルフクラブの概略図である。
【図2】 第1実施形態のアイアンゴルフクラブを構成するゴルフクラブシャフトを示す図である。
【図3】 (A)はロングアイアン、(B)はミドルアイアン、(C)はショートアイアン用のアイアンゴルフクラブの概略図である。
【図4】 EI(曲げ剛性)の測定方法を示す図である。
【図5】 GI(ねじれ剛性)の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
1 シャフト
1a TIP側端
1b BUTT側端
2 アイアン型ヘッド
3 グリップ
10 アイアンゴルフクラブ
Claims (2)
- シャフトのTIP側端からシャフト全長の40%以上60%以下の位置までの範囲における最大EI値と最小EI値の差が、その範囲における最大EI値と最小EI値の平均値の10%以下であると共に、上記シャフトのBUTT側端からシャフト全長の30%の位置までの範囲における最低EI値が、上記シャフトのTIP側端からシャフト全長の40%以上60%以下の位置までの範囲における最大EI値の1.7倍〜3.5倍とし、かつシャフトのTIP端の直径が9.0mm以上12.0mm以下であることを特徴とするゴルフクラブシャフト。
- 番手の異なる複数のアイアンゴルフクラブを有するアイアンゴルフクラブセットであって、
上記アイアンゴルフクラブが、請求項1に記載のゴルフクラブシャフトで構成されており、上記アイアンゴルフクラブの番手が大きくなるほど、シャフトの重心位置をBUTT側にすると共にシャフトのBUTT側端から15cmまでの範囲のねじれ剛性(GI)値を大きくしていることを特徴とするアイアンゴルフクラブセット。
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