JP4063992B2 - ブロック共重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融流動性および成形加工性に優れ、力学物性および圧縮永久歪み等のゴム物性に優れるブロック共重合体組成物、ならびに該組成物からなる成形品および密封材に関する。本発明のブロック共重合体組成物は成形性、力学的特性、柔軟性、弾性回復性、ガスバリヤー性、密封性、安全性、衛生性などの特性に優れ、該組成物からなる成形品は、シール材、ガスケット、パッキング材などの密封材として使用することによって、上記の優れた諸特性が効果的に発揮される。
【0002】
【従来の技術】
従来より、医薬・医療用シール性物品としては医薬容器用ゴム栓、シリンジ用ガスケット、減圧採血用ゴム栓およびキャップ等がブチルゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム等のゴム材料で製造されている。
これらのゴム材料は、医薬・医療用シール性物品に要求されるガスバリヤー性、非溶出性、耐滅菌性、耐針刺性、自己密閉性等の特性を満足させるため、ならびに該物品の賦形上、加硫されているのが一般的である。
該物品を製造するには、ゴム材料と硫黄系加硫剤(硫黄、加硫促進剤、その他助剤)あるいは有機過酸化物をロールやインターナルミキサー等の混合機を用いて混合し、次いで、得られた混合物(配合ゴム組成物)をプレス下に加硫したり、または成形後に加硫するという工程を経ている。
上記の工程で所望の物品を製造するには、加硫工程に由来して、大がかりな設備を必要とし、また複雑な工程を経るために長時間を要し、生産性も悪いという問題がある。さらに、得られた物品には種々のゴム薬剤が添加されているため、これらが溶出するという問題、加硫されているためにバリや不良品の再利用ができないという問題、硫黄系加硫剤を使用した場合には使用済み物品を焼却処理する際に亜硫酸ガスを発生するという公衆衛生上の問題がある。
【0003】
上記のような問題の解決手段として、芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体からなる医薬・医療用シール性ゴム物品が提案されている(特開昭56−53173号公報、特開平5−212104号公報、特開平5−295053号公報等)。該ブロック共重合体を使用して物品を製造する場合、加硫しなくとも要求される諸特性を満足しうる物品が得られるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体においては、医薬・医療用シール性ゴム物品として要求される性能、特に自己密閉性、耐針刺性および加熱殺菌工程での耐液漏れ性等の物性と成形加工性を両立させることが、通常、困難である。すなわち、加硫ゴムに近い良好な諸物性を有する物品を得るためには、芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体として比較的高分子量のものを用いることが好ましいが、該高分子量のブロック共重合体は溶融粘度が非常に高く、プレス成形、射出成形等の成形加工性が大幅に低下するため、このような高分子量のブロック共重合体を使用する場合には良好な形状を有する成形品を得ることが難しくなる。
【0005】
本発明は、芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体を用いた高分子材料であって、医薬・医療用シール性ゴム物品の材料に要求されるようなガスバリヤー性、非溶出性、加熱殺菌時の耐液漏れ性、耐滅菌性、耐針刺性、自己密閉性等における優れた諸特性を具備し、かつ良好な成形加工性をも兼ね備えた高分子材料を提供することを課題とする。また本発明は、該高分子材料の優れた諸特性が効果的に発揮される成形品および密封材(医薬・医療用シール材等)を提供することを他の課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決すべく本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体について分子量の相違する2種以上のものを併用して製造した重合体組成物において、使用するブロック共重合体の組合わせがある特定の条件を満足する場合、ガスバリヤー性、非溶出性、加熱殺菌時の耐液漏れ性、耐滅菌性、耐針刺性、自己密閉性等の諸物性に優れており、かつプレス成形、射出成形等において良好な成形加工性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、第1に、
【0008】
(1)芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量が50000以上かつ200000以下の範囲内であるブロック共重合体(I)の1種類、および、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックとイソブチレン系重合体ブロックとからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量が10000以上かつ50000未満の範囲内であるブロック共重合体(II)の1種類を混合して得られるブロック共重合体組成物であって、
【0009】
(2)上記ブロック共重合体(I)の含有量と上記ブロック共重合体(II)の含有量の比が、(I)/(II)の重量比において10/90〜90/10の範囲内であり、かつ
【0010】
(3)該組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて、上記ブロック共重合体(I)および上記ブロック共重合体(II)の溶出開始から溶出終了に至るまでの全所要時間(t)と、上記ブロック共重合体(I)のピークの溶出時間(i)と上記ブロック共重合体(II)のピークの溶出時間(ii)との差が、式
【0011】
【数2】
〔(ii)−(i)〕/(t)≧0.05
【0012】
で示される条件を満足するブロック共重合体組成物である。
【0013】
また本発明は、第2に、上記ブロック共重合体組成物からなる成形品である。
【0014】
さらに、本発明は、第3に、上記ブロック共重合体組成物からなる密封材である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明のブロック共重合体組成物は、1種類以上の上記ブロック共重合体(I)と1種類以上の上記ブロック共重合体(II)を混合することによって製造される。該ブロック共重合体(I)および(II)は、いずれも、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)とイソブチレン系重合体ブロック(b)とを有する。
【0017】
上記芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)は、主として芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位からなる重合体ブロックであり、場合によって他の共重合性単量体から誘導される構造単位を少量有していてもよい。
芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)を構成する芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位としては、例えば、スチレン、α−スチレン、β−スチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン、アセトナフチレンなどの芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位の1種または2種以上を挙げることができ、これらのうちでも、スチレンから誘導される構造単位を主体とすることが好ましい。また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)が芳香族ビニル化合物から誘導される構造単位と共に他の共重合性単量体から誘導される構造単位を有している場合、該他の共重合性単量体から誘導される構造単位の割合は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)の重量に基づいて30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。その際の他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどのカチオン重合性単量体の1種または2種以上を挙げることができる。
【0018】
そして、上記イソブチレン系重合体ブロック(b)は、主としてイソブチレンから誘導される構造単位からなる重合体ブロックであり、場合により他の共重合性単量体から誘導される構造単位を少量含有していてもよい。
イソブチレン系重合体ブロック(b)がイソブチレンから誘導される構造単位と共に他の共重合性単量体から誘導される構造単位を有している場合、該他の共重合性単量体から誘導される構造単位の割合は、イソブチレン系重合体ブロック(b)の重量に基づいて30重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。その際の他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどのカチオン重合性単量体の1種または2種以上を挙げることができる。
【0019】
ブロック共重合体(I)および(II)では、得られるブロック共重合体組成物のガスバリヤー性、力学的特性などの点から、通常、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)とイソブチレン系重合体ブロック(b)との割合が(a)/(b)の重量比において5/95〜80/20の範囲内であることが好ましく、10/90〜70/30の範囲内であることがより好ましい。
【0023】
本発明では、ブロック共重合体(I)および(II)として、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)−イソブチレン系重合体ブロック(b)−芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)というブロック配列を有するトリブロック共重合体を使用することが、取り扱い性、入手の容易性、得られる組成物の力学物性などの点から好ましい。
【0024】
本発明のブロック共重合体組成物において併用する上記のブロック共重合体(I)とブロック共重合体(II)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量の点で区別される。すなわち、該分子量は、ブロック共重合体(I)においては50000以上かつ200000以下の範囲内であり、ブロック共重合体(II)においては10000以上かつ50000未満の範囲内である。ブロック共重合体(I)単独または2種類以上のブロック共重合体(I)のみから調製された組成物では、溶融粘度が高くなりすぎ、成形加工性が低下する。また、ブロック共重合体(II)単独または2種類以上のブロック共重合体(II)のみから調製された組成物では、圧縮永久歪みの値が大きくなり、例えば成形品を薬栓として使用する際に加熱殺菌時の耐液漏れ性等において充分な性能が得られなくなる。
ブロック共重合体(I)の代りにゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量が200000を超えるブロック共重合体を使用する場合には、得られる組成物の溶融粘度が高くなりすぎ、成形加工性に劣る。また、ブロック共重合体(II)の代りにゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量が10000未満のブロック共重合体を使用する場合には、得られる組成物においてゴム物性が不充分となる。
【0025】
本発明においては、得られる組成物の諸物性と成形加工性とのバランスの点から、ブロック共重合体(I)としてゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量が55000以上かつ190000以下の範囲内であるものを使用することがより好ましく、また、ブロック共重合体(II)としてゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量が15000以上かつ45000以下の範囲内であるものを使用することがより好ましい。
【0026】
ブロック共重合体(I)および(II)では、それぞれ、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)の数平均分子量が2500〜50000の範囲内であり、イソブチレン系重合体ブロック(b)の数平均分子量が5000〜100000の範囲内であり、かつブロック共重合体全体の数平均分子量が10000〜200000の範囲内であることが好ましい。また、ブロック共重合体(I)および(II)について、それぞれ、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比がMw/Mnの値において1.0〜2.0の範囲内であることが好ましい。なお、ブロック共重合体(I)および(II)は、場合により、分子鎖の途中および/または分子鎖末端に、塩素原子や臭素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、酸無水物基、エポキシ基などの官能基を有していてもよい。
【0027】
本発明で使用するブロック共重合体(I)および(II)においては、それらの製造法や入手法などについての制限は特にない。
何ら限定されるものでないが、ブロック共重合体(I)および(II)の製造法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、ルイス酸およびこれと組み合わせてカチオン重合活性種を形成しうる有機化合物から構成される開始剤系の存在下に、必要に応じて、ピリジン誘導体、アミド類などの添加剤の共存下、ヘキサン、塩化メチレンなどの不活性溶媒中で、主として芳香族ビニル化合物からなる単量体の重合工程と主としてイソブチレンからなる単量体の重合工程とを任意の順序で段階的に行って各重合体ブロック(a)および(b)を逐次形成させることにより、所望のブロック配列を有するブロック共重合体(I)および(II)をそれぞれ製造することができる。上記したルイス酸としては、例えば、四塩化チタン、三塩化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化スズなどを挙げることができ、またカチオン重合活性種を形成しうる有機化合物としては、例えばアルコキシ基、アシロキシ基、ハロゲン原子などの官能基を有する有機化合物、具体例としては、ビス(2−メトキシ−2−プロピル)ベンゼン、ビス(2−アセトキシ−2−プロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンなどを挙げることができる。また、上記のアミド類としては、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどを挙げることができる。
【0028】
より具体的には、例えば、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)−イソブチレン系重合体ブロック(b)−芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)のブロック配列を有するトリブロック共重合体は、例えば、上記したような官能基を分子中に1個有する有機化合物とルイス酸とを開始剤系として用いて、まず、主として芳香族ビニル化合物からなる単量体を重合系内に添加して重合させ、その重合反応が実質的に終了した後に、主としてイソブチレンからなる単量体を重合系内に添加して重合させ、その重合反応が実質的に終了した後、再度、主として芳香族ビニル化合物からなる単量体を重合系内に添加して重合させる方法によって製造することができる。また、前記した方法とは別に、官能基を分子中に2個有する有機化合物とルイス酸とを開始剤系として用いて、主としてイソブチレンからなる単量体を重合させ、その重合が実質的に終了した後に、主として芳香族ビニル化合物からなる単量体を供給することによって、先に形成したイソブチレン系重合体の分子鎖両端に主として芳香族ビニル化合物からなる単量体を重合させることができるので、この方法によって、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)−イソブチレン系重合体ブロック(b)−芳香族ビニル化合物系重合体ブロック(a)のブロック配列を有するトリブロック共重合体を製造することもできる。
【0029】
本発明のブロック共重合体組成物は1種類のブロック共重合体(I)と1種類のブロック共重合体(II)を含有する。本発明の組成物においては、ゴム物性と成形加工性の両立の点から、その中に含有されるブロック共重合体(I)の全量とブロック共重合体(II)の全量の比が、(I)/(II)の重量比で、10/90〜90/10の範囲内であることが必要であり、20/80〜80/20の範囲内であることがより好ましい。
【0030】
本発明のブロック共重合体組成物においては、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおいてブロック共重合体(I)のピークの溶出時間(i)とブロック共重合体(II)のピークの溶出時間(ii)との差(すなわち(ii)−(i)の値)が、組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフにおいてブロック共重合体(I)およびブロック共重合体(II)が溶出開始してから溶出終了に至るまでに要する全所要時間(t)に対して0.05倍以上となること、すなわち式〔(ii)−(i)〕/(t)の値が0.05以上となることが必要である。0.05未満の場合には、ブロック共重合体組成物における成形加工性が低下するか、または圧縮永久歪み等のゴム物性が低下する。
【0031】
上記の溶出時間(i)および溶出時間(ii)としては、それぞれ対応するブロック共重合体の単体のゲルパーミエーションクロマトグラフより求めた溶出時間の値を採用することが好ましいが、ブロック共重合体組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフに基づいてそれぞれ対応するピークの極大値における溶出時間として把握することもできる。ブロック共重合体組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフに基づいて溶出時間(i)および(ii)を求める場合、それぞれに対応するピークの極大値が十分に分離しているときには、該極大値に対応する溶出時間をそれぞれ求めればよく、また一方のピークの頂点が他方のピークのと重なっていてピークの極大値の確認が困難なときにはピーク曲線における変極点に対応する溶出時間を採用してもよい。
【0032】
本発明のブロック共重合体組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で必要に応じて無機充填剤を含有していてもよい。無機充填剤を含有させるとその増量効果によりコストの低下をはかることができ、また場合によってはブロック共重合体組成物の品質の向上に機能する場合もある。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、カーボンブラック(チャンネルブラック、フェーネスブラックなど)、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、硫酸バリウム、天然ケイ酸、ホワイトカーボン、酸化チタンなどを挙げることができ、これらの無機充填剤は単独で使用してもまたは2種以上を併用してもよい。また、本発明のブロック共重合体組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じて、顔料、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、シリコーンオイルなどの離型剤などのような他の添加剤の1種または2種以上を含有していてもよい。
【0033】
本発明のブロック共重合体組成物は、1種類以上のブロック共重合体(I)、と1種類以上のブロック共重合体(II)とを、所望に応じて添加剤と共に混合することによって調製することができる。混合は、通常、ブロック共重合体(I)および(II)の溶融混練条件下で行われ、その溶融混練では、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練で通常用いられるような溶融混練装置を用いることができる。溶融混練の条件については、使用するブロック共重合体の種類、装置の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常、180〜280℃の範囲内の温度で1〜15分間程度の時間が採用される。なお、得られるブロック共重合体組成物において上記の式〔(ii)−(i)〕/(t)が0.05以上となる条件を満足させることは、使用する各ブロック共重合体の単体におけるゲルパーミエーションクロマトグラフに基づくデータ(溶出開始時間、最大ピークの溶出時間、溶出終了時間等)を考慮することなどによって、実験的に容易に達成可能である。
【0034】
本発明のブロック共重合体組成物の形態については、特に限定されるものではないが、成形材料として使用する場合にはペレット状であることが好適である。
【0035】
本発明のブロック共重合体組成物は、熱可塑性であり、熱可塑性重合体に対して一般に採用されているような成形方法および成形装置を用いて容易に成形することができ、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形などの溶融成形法によって、任意の形状や寸法を有する種々の成形品を製造することができる。
【0036】
特に、本発明のブロック共重合体組成物は、成形加工性に優れると共に、ガスバリヤー性、耐圧縮永久歪み性、密封性、封止性、柔軟性、力学的特性、耐油性、安全性、衛生性などにおいて優れた特性を有することから、バンド、グリップなどのような汎用の成形品のみならず、シール材、パッキング材、ガスケットなどの密封材の成形材料として有効に使用することができる。該密封材の中でも、医療用器具用の密封用材(例えば、医薬容器の栓体、シリンジ用ガスケット、減圧採血管用のシール材またはパッキング材)、食品を扱う分野での密封材(例えば、食品製造・加工装置用の各種密封材や食品を保存および/または収納するための容器用の各種密封材)として極めて有効に使用することができる。なお、密封材の形状や構造、大きさなどは、それぞれの用途などに応じて適宜設定することができる。
【0037】
【実施例】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0038】
使用したブロック共重合体の数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量))ならびにブロック共重合体組成物のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)は、標準ポリイソブチレンを指標として用いて、下記の条件の下で測定した。
【0039】
装置:液体クロマトグラフLC−6A(島津製作所製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1ml
温度:55℃
カラム:shim−pack GPC 802、804、806(島津製作所製)
検出器:示差屈折率検出計
【0040】
なお、ブロック共重合体組成物において得られたゲルパーミエーションクロマトグラフについては、解析処理上の誤差を軽減できるようにするために、次のようにして、補正されたベースラインL1”およびL2”を設定したうえで溶出の全所要時間(t)を求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフの低分子量側のベースラインを延長した直線(L1)と、該L1と平行であって、かつ最も大きいピークの山部に接する直線(L1’)との距離(D1)を求めた。該L1と平行であって、かつ山部に接する直線(L1’)との間に位置し、かつL1からの距離が0.01×D1である直線(L1”)を引いた。該L1”と山部との交点のうち最も低分子量側にある点をAとした。同様にして、高分子量側にあるベースラインを延長した直線(L2)と、該L2と平行であって、かつ最も大きいピークの山部に接する直線(L2’)との距離(D2)を求めた。該L2と平行であって、かつ山部に接する直線(L2’)との距離(D2)を求めた。該L2と平行であって、L2とL2’との間に位置し、かつL2からの距離が0.01×D2である直線(L2”)を引いた。該L2”と山部との交点のうち最も高分子量側にある点をBとした。点Aにおける溶出時間と点Bにおける溶出時間の差の絶対値を(t)とした。
【0041】
以下の実施例において、ブロック共重合体組成物の成形性の評価;それから得られた成形品の表面硬度、引張破断強度、引張破断伸び、100%モジュラス、永久伸び、圧縮永久歪みおよびガス透過性の測定または評価;該組成物から得られた栓体の液漏れ性、コアリング性能および針刺し後の液漏れ性の評価;ならびに該組成物から得られたシリンジ用ガスケットの泡立ち性、△pH、△過マンガン酸カリウム消費量および蒸発残留物量の試験または測定は、それぞれ下記(1)〜(7)に示す方法で行った。
【0042】
(1)ブロック共重合体組成物の成形性:
ブロック共重合体組成物を用いて、日精樹脂工業株式会社製の80トン射出成形機を使用して、シリンダー温度210℃および金型温度40℃の条件下で、板状の成形性評価用試験片(寸法:長さ×幅×厚さ=80mm×80mm×3.2mm)を作製し、その際の組成物の流動性および成形品の表面状態を目視により観察することにより、次に示す3段階の評価基準に従って成形性を評価した。すなわち、溶融した組成物の流動性が良好で、金型と同じ形状および寸法の成形品が得られ、しかも成形品の表面が平滑である場合には「良好(○)」と判定し、溶融した組成物の流動性が良好で、金型とほぼ同じ形状および寸法の成形品が得られるが、成形品の表面が平滑でない場合には「普通(△)」と判定し、溶融した組成物の流動性が悪く、金型と同じ形状および寸法の成形品が得られない場合には「不良(×)」と判定した。
【0043】
(2)成形品の表面硬度:
上記の成形性評価用試験片について、その表面硬度をJIS−K6301に準じて測定した。
【0044】
(3)成形品の引張破断強度、引張破断伸び、100%モジュラスおよび永久伸び:
ブロック共重合体組成物を用いて、日精樹脂工業株式会社製の80トン射出成形機を使用して、シリンダー温度210℃および金型温度40℃の条件下で、3号形ダンベル試験片を射出成形した。そのダンベル試験片を用いて、JIS−K6301に準じて、引張破断強度、引張破断伸び、100%モジュラスおよび永久伸びを測定した。
【0045】
(4)成形品の圧縮永久歪み:
上記の成形性評価用試験片を用い、JIS−K6301に準じて、温度70℃、圧縮変形量25%の条件下に22時間放置した時の圧縮変形歪みを測定した。
【0046】
(5)成形品のガス透過性:
ブロック共重合体組成物を用いて、温度200℃、プレス圧力100kg/cm2の条件下にプレス成形して厚さ20μmのフイルムを作製し、そのフイルムについて、ガス透過性試験装置(柳本株式会社製「GTR−10」)を使用して、酸素ガスの透過係数をASTM D3985に準じて測定した。該透過係数の値が小さいほど、ガス透過性が低い、すなわちガスバリヤー性に優れるものと評価することができる。
【0047】
(6)栓体の性能評価:
(i)耐液漏れ性:
ブロック共重合体組成物を用いて、溶融温度200℃、プレス圧力100kg/cm2の条件下にプレス成形を行って、直径×長さ=2cm×2cmの円柱状の栓体を製造した。内容積500mlの透明なガラス製のボトルに水500mlを充填した後、ボトルの口部に栓体を差し込んで密封した。このボトルを加圧釜に入れて120℃で60分間加熱した後取り出し、ボトルの口部における液漏れの有無を目視で観察した。
【0048】
(ii)コアリング性:
上記の耐液漏れ性(i)の評価と同様にして直径×長さ=2cm×2cmの円柱状の栓体を製造した。上記の(i)で用いたのと同じ透明なガラス製のボトルに水500mlを充填した後、ボトルの口部に栓体を差し込んで密封した。さらにボトル口部の栓体の上にアルミキャップを巻き締めて被せ、アルミキャップの上部面の中央部分を円形に取り除くことにより、栓体の一部表面を露出させた。栓体の露出面の中央付近より標準注射針(22G)を差し込む操作を場所をずらせながら繰り返すことにより、注射針を栓体に計10回貫通させた。注射針の貫通によって栓体から切り離されて水中に浮いているブロック共重合体組成物細片の個数を数え、その個数に基づいてコアリング性の評価を行った。このコアリング性の評価においては、水中に浮いている組成物細片の個数が少ないほどコアリング性が良好であると判定することができる。
【0049】
(iii)針刺し後の液漏れ性:
上記の耐液漏れ性(i)の評価と同様にして直径×長さ=2cm×2cmの円柱状の栓体を製造した。上記の(i)で用いたのと同じ透明なガラス製のボトルに水500mlを充填した後、ボトルの口部に栓体を差し込んで密封した。栓体の表面外側からボトル内部に注射針(22G)を貫通させ、それとは別にエアー針(22G)を栓体の表面外側からボトル内部に貫通させた後、ボトルを倒立させ、ボトル内の水が150mlになるまで注射針を通してボトル内の水を外部に流出させた。次いで、ボトルは倒立させた状態のままで注射針を抜いて、その際における水の流出の有無を目視により観察した。この際の水の流出の有無に基づいて、針刺し後の液漏れ性の評価を行った。この針刺し後の液漏れ性の評価においては、注射針を抜いた時やその後に水の流出がないことが、栓体の針刺し後のシール性が良好であると判定することができる。
【0050】
(7)シリンジ用ガスケットの性能評価:
ブロック共重合体組成物を用いて、温度200℃、プレス圧力100kg/cm2の条件下にプレス成形を行って、シリンジ用ガスケットを製造した。これを操作棒(ピストン棒)の先端に固定して、シリンジ(注射器)の外筒(容量10ml、平均内径15.5mm、ポリプロピレン製)の内側に挿入した。このようにして作製したシリンジを使用して、第12改定日本薬局方「輸液用ゴム栓試験法」に記載されている溶出物試験法に従い、泡立ち性、△pH、△過マンガン酸カリウム消費量および蒸発残留物量の試験または測定を行った。
【0051】
(i)泡立ち性:
この泡立ち性試験では、消泡時間が短いほど耐泡立ち性が良好であることを示し、泡立ち性が3分以内であればシリンジ用ガスケットとして合格である。
【0052】
(ii)△pH:
この試験では、△pHの値が小さいほどシリンジ用ガスケットからの溶出物が少なく安全性が高いことを示し、△pHが±1.0以内であれば医療用のシリンジ用ガスケットとして合格である。
【0053】
(iii)△過マンガン酸カリウム消費量:
この試験では、△過マンガン酸カリウム消費量の値が小さいほどシリンジ用ガスケットからの溶出物が少なく安全性が高いことを示し、△過マンガン酸カリウム消費量の値が2.0ml以下であれば医療用のシリンジ用ガスケットとして合格である。
【0054】
(iv)蒸発残留物量:
この試験では、蒸発残留物量が少ないほどシリンジ用ガスケットからの溶出物が少なく安全性が高いことを示し、蒸発残留物量の値が2.0mg以下であれば医療用のシリンジ用ガスケットとして合格である。
【0055】
なお、実施例において使用したブロック共重合体は、以下のとおりのものである。
【0056】
(1)SIBS−1:スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体〔ゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量=78000、数平均分子量=75000、分子量分布(Mw/Mn)=1.1、スチレン単位含有量=30重量%〕
【0057】
(2)SIBS−2:スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体〔ゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量=47000、数平均分子量=45000、分子量分布(Mw/Mn)=1.1、スチレン単位含有量=30重量%〕
【0058】
(3)SIBS−3:スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体〔ゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量=55000、数平均分子量=52000、分子量分布(Mw/Mn)=1.1、スチレン単位含有量=30重量%〕
【0059】
《実施例1〜4》
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体のSIBS−1とSIBS−2の各ペレットを、下記の表1に示す所定の重量比でドライブレンドし、二軸押出機(プラスチック工業研究所製「BT−30」)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練した後ペレット化することにより、ペレット状のブロック共重合体組成物を製造した。
得られた組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフに基づいて上記の〔(ii)−(i)〕/(t)の値を求めた。なお、本実施例においては、SIBS−1およびSIBS−2が、それぞれ本発明における上記ブロック共重合体(I)および(II)に該当する。
また、得られた組成物を用いて成形性評価用または各種物性試験用の試験片、フイルム、栓体およびシリンジ用ガスケットをそれぞれ上記した方法により製造し、成形性評価、成形品評価(表面硬度、引張破断強度、引張破断伸び、100%モジュラス、永久伸び、圧縮永久歪みおよびガス透過性)、栓体評価(耐液漏れ性、コアリング性能および針刺し後の液漏れ性)およびシリンジ用ガスケット評価(泡立ち性、△pH、△過マンガン酸カリウム消費量および蒸発残留物量)を上記した方法で行った。得られた結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
《比較例1》
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体のSIBS−1のペレットを単独で用いて、成形性評価用または各種物性試験用の試験片、フイルム、栓体およびシリンジ用ガスケットをそれぞれ上記した方法により製造し、成形性評価、成形品評価(表面硬度、引張破断強度、引張破断伸び、100%モジュラス、永久伸び、圧縮永久歪みおよびガス透過性)、栓体評価(耐液漏れ性、コアリング性能および針刺し後の液漏れ性)およびシリンジ用ガスケット評価(泡立ち性、△pH、△過マンガン酸カリウム消費量および蒸発残留物量)を上記した方法で行った。得られた結果を下記の表2に示す。
【0062】
《比較例2》
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体のSIBS−2のペレットを単独で用いて、成形性評価用または各種物性試験用の試験片、フイルム、栓体およびシリンジ用ガスケットをそれぞれ上記した方法により製造し、成形性評価、成形品評価(表面硬度、引張破断強度、引張破断伸び、100%モジュラス、永久伸び、圧縮永久歪みおよびガス透過性)、栓体評価(耐液漏れ性、コアリング性能および針刺し後の液漏れ性)およびシリンジ用ガスケット評価(泡立ち性、△pH、△過マンガン酸カリウム消費量および蒸発残留物量)を上記した方法で行った。得られた結果を下記の表2に示す。
【0063】
《比較例3、4》
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体のSIBS−1とSIBS−2の各ペレットを、下記の表2に示す所定の重量比でドライブレンドし、二軸押出機(プラスチック工業研究所製「BT−30」)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練した後ペレット化することにより、ペレット状のブロック共重合体組成物を製造した。
得られた組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフに基づいて上記の〔(ii)−(i)〕/(t)の値を求めた。なお、本比較例においては、SIBS−1およびSIBS−2が、それぞれ上記ブロック共重合体(I)および(II)に該当するものとみなす。
また、得られた組成物を用いて成形性評価用または各種物性試験用の試験片、フイルム、栓体およびシリンジ用ガスケットをそれぞれ上記した方法により製造し、成形性評価、成形品評価(表面硬度、引張破断強度、引張破断伸び、100%モジュラス、永久伸び、圧縮永久歪みおよびガス透過性)、栓体評価(耐液漏れ性、コアリング性能および針刺し後の液漏れ性)およびシリンジ用ガスケット評価(泡立ち性、△pH、△過マンガン酸カリウム消費量および蒸発残留物量)を上記した方法で行った。得られた結果を表2に示す。
【0064】
《比較例5》
スチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体のSIBS−2とSIBS−3の各ペレットを、下記の表2に示す所定の重量比でドライブレンドし、二軸押出機(プラスチック工業研究所製「BT−30」)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混練した後ペレット化することにより、ペレット状のブロック共重合体組成物を製造した。
得られた組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフに基づいて上記の〔(ii)−(i)〕/(t)の値を求めた。なお、本比較例においては、SIBS−3およびSIBS−2が、それぞれ上記ブロック共重合体(I)および(II)に該当するものとみなす。
また、得られた組成物を用いて成形性評価用または各種物性試験用の試験片、フイルム、栓体およびシリンジ用ガスケットをそれぞれ上記した方法により製造し、成形性評価、成形品評価(表面硬度、引張破断強度、引張破断伸び、100%モジュラス、永久伸び、圧縮永久歪みおよびガス透過性)、栓体評価(耐液漏れ性、コアリング性能および針刺し後の液漏れ性)およびシリンジ用ガスケット評価(泡立ち性、△pH、△過マンガン酸カリウム消費量および蒸発残留物量)を上記した方法で行った。得られた結果を表2に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
上記の表1の結果から、実施例1〜4の本発明のブロック共重合体組成物は、成形性に優れ、優れた柔軟性を有し、引張破断強度で代表される力学的特性に優れており、しかも圧縮永久歪みおよび永久伸びが小さくて復元性(弾性回復性)に優れ密封性が良好であること、しかも酸素ガス透過性が低くてガスバリヤー性に優れていることがわかる。さらに、実施例1〜4のブロック共重合体組成物を用いて製造された栓体は、栓をしたときの液漏れおよび針刺し後の液漏れがなくて密封性に極めて優れており、しかもコアリング性に優れていて針で刺したときにブロック共重合体組成物が栓体から切り離されることがないため、針刺しを伴う薬液容器用の栓体として極めて適していることがわかる。その上、実施例1〜4のブロック共重合体組成物を用いて製造されたシリンジ用ガスケットを操作棒の先端に取り付けたシリンジでは、耐泡立ち性が良好で、△pH、△過マンガン酸カリウム消費量および蒸発残留物量のいずれもが極めて小さいことから、ガスケットからの溶出部が少なく、安全性および衛生性にも優れていることがわかる。
【0067】
一方、上記の表2の結果から、比較的高分子量のスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を単独で用いている比較例1では、圧縮永久歪みおよび永久伸びが小さくて、弾性回復性が大きく、密封性には優れるものの、溶融粘度が高く成形加工性に劣り、良好な表面性を有する成形品を得るのが難しいことがわかる。比較的低分子量のスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体を単独で用いている比較例2では、成形加工性は良好であるものの、圧縮永久歪みが大きくて、弾性回復性が小さく、密封性に劣ることがわかる。また、分子量の相違する2種類のスチレン−イソブチレン−スチレントリブロック共重合体からなる組成物であっても、比較例3、4または5におけるように、高分子量成分と低分子量成分との重量比またはゲルパーミエーションクロマトグラフに基づく条件が本発明の範囲外である場合には、ゴム物性と成形加工性のバランスに劣ることがわかる。
【0068】
【発明の効果】
本発明のブロック共重合体組成物は、良好な成形加工性を有するために、熱可塑性重合体に対して一般に採用されているような成形方法および成形装置を用いて容易に成形することができ、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形などの成形法で溶融成形することによって、任意の形状や寸法を有する種々の成形品を製造することができる。
【0069】
そして、本発明のブロック共重合体組成物は、ガスバリヤー性、耐圧縮永久歪み性、密封性、封止性、柔軟性、力学的特性、耐油性、安全性、衛生性などの諸性質に極めて優れており、それらの特性を活かして、汎用の成形品のみならず、シール材、パッキング材、ガスケットなどの密封材などの製造に効果的に使用することができる。特に、本発明のブロック共重合体組成物を用いて製造した医薬・医療分野における各種器具用の密封材(例えば、医薬容器の栓体、シリンジ用ガスケット、減圧採血管用のシール材またはパッキング材)は、封栓時の液漏れや針刺し後の液漏れ、針刺し時の細片状の切断分離がなく、その上、薬液中への成分の溶出が極めて少ないので、十分な安全性および衛生性を確保しながら、良好な操作性で取り扱うことができる。さらに、本発明のブロック共重合体組成物は、上記した優れた特性を活かして、食品関連分野(例えば、食品製造・加工装置や食品の保存や収納用の容器における密封材)やその他の用途にも安全にかつ衛生的に用いることができる。
Claims (4)
- (1)芳香族ビニル化合物系重合体ブロック−イソブチレン系重合体ブロック−芳香族ビニル化合物系重合体ブロックからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量が50000以上かつ200000以下の範囲内であるブロック共重合体(I)の1種類、および、
芳香族ビニル化合物系重合体ブロック−イソブチレン系重合体ブロック−芳香族ビニル化合物系重合体ブロックからなり、ゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて最大ピークを示す分子量が10000以上かつ50000未満の範囲内であるブロック共重合体(II)の1種類を混合して得られるブロック共重合体組成物であって、
(2)上記ブロック共重合体(I)の含有量と上記ブロック共重合体(II)の含有量の比が、(I)/(II)の重量比において10/90〜90/10の範囲内であり、かつ
(3)該組成物のゲルパーミエーションクロマトグラフにおいて、上記ブロック共重合体(I)および上記ブロック共重合体(II)の溶出開始から溶出終了に至るまでの全所要時間(t)と、上記ブロック共重合体(I)のピークの溶出時間(i)と上記ブロック共重合体(II)のピークの溶出時間(ii)との差が、式
- 上記ブロック共重合体(I)および上記ブロック共重合体(II)について、それぞれ、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比がMw/Mnの値において1.0〜2.0の範囲内である請求項1記載のブロック共重合体組成物。
- 請求項1または2記載のブロック共重合体組成物からなる成形品。
- 請求項1または2記載のブロック共重合体組成物からなる密封材。
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