JP4056180B2 - 非水電解質二次電池用負極活物質および非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
本発明は、高容量、かつサイクルによる放電容量の低下が改善された非水電解質二次電池、特にその負極活物質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、起電力が高く、高エネルギー密度を有しているリチウムイオン二次電池は、移動体通信機器や携帯電子機器の発展とともに需要が大きく伸びている。この種のリチウム二次電池の負極材料として、リチウム金属を用いると、エネルギー密度は高いが、充電時に負極にデンドライトが析出し、充放電を繰り返すとデンドライトが成長しセパレータを突き破って正極側に達し、内部短絡を起こすおそれがあり、安全性に問題があった。また、析出したデンドライトは、比表面積が大きいため反応活性度が高く、その表面で電解液中の溶媒と反応して電子伝導性を欠いた固体電解質的な界面皮膜を形成する。そのため電池の内部抵抗が高くなったり、電子伝導のネットワークから孤立した粒子ができるようになったりし、これらが充放電効率を低下させる要因となっている。これらの理由で負極材料としてリチウム金属を用いたリチウム二次電池は、安全性、および短いサイクルに問題があった。
現在、リチウム金属に替わる負極材料として、リチウムイオンを吸蔵・放出できる炭素質材料を使用した電池が実用化されている。通常、炭素質材料からなる負極では、金属リチウムは析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題はない。しかし、炭素質材料の代表例である黒鉛は、その理論容量が372mAh/gであり、リチウム金属単体の理論容量の10分の1程度にすぎず、容量の点で満足できる水準ではない。
【0003】
高容量化を可能にする負極活物質として、リチウムと化合物を形成する単体の金属材料および非金属材料が知られている。例えば、Si、Sn、およびZnのリチウムを最も多く含む化合物の組成式は、それぞれLi22Si5、Li22Sn5、およびLiZnであり、この範囲で金属リチウムは通常析出しないため、デンドライトによる内部短絡の問題はない。そして、これら化合物と各単体材料との間の電気化学容量は、それぞれ4199mAh/g、993mAh/g、および410mAh/gであり、いずれも黒鉛の理論容量よりも大きい。
炭素質材料よりも高容量の材料として、遷移元素からなる非鉄金属の珪化物(特開平7−240201号公報)、4B族元素およびP、Sbの少なくとも一つを含む金属間化合物からなり、その結晶構造がCaF2型、ZnS型、AlLiSi型のいずれかからなる負極材料(特開平9−63651号公報)などが提案されている。
さらに、複数の相を含む粒子で構成されている負極材料が提案されている(特開平11−86853号公報、特開平11−86854号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような炭素材料よりも高容量でリチウムと化合物を形成する単体には、炭素負極材料に比べて充放電サイクル特性が悪いという問題がある。すなわち、充電反応によるリチウム挿入での化合物形成による材料の膨張と、放電反応でのリチウム離脱による材料の収縮のために、活物質粒子が微細化することである。つまり、このような充放電反応での体積差のある2つの相の変化を繰り返すことにより、材料に歪みが生じて亀裂が発生し、活物質粒子が微細化するのである。その微細化した活物質粒子間では、電子伝導性が失われて電気化学的にも不活性となり、充放電容量が低下する。
【0005】
一方、複数の相を含む粒子で構成されている負極材料を用いた電池は、すべての相がリチウム吸蔵相からなる場合は、膨張・収縮に対する緩和物質がないためにサイクル特性に問題がある。リチウム吸蔵相とリチウム非吸蔵相の2相からなる負極材料では、高容量を目指す場合に高容量のリチウム吸蔵相とリチウム非吸蔵相とは、リチウム吸蔵による物質の変化の差が大きいので、膨張・収縮を緩和できずにサイクル特性に問題がある。
本発明は、以上に鑑み、高容量材料である新規負極活物質を用い、高容量でかつ充放電サイクル特性の改善された非水電解質二次電池を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために本発明の非水電解質二次電池用負極活物質は、材料組織上少なくとも3相を含む粒子で構成され、そのうち少なくとも2相はリチウムを吸蔵し、少なくとも1相はリチウムを吸蔵しない相である。
このような構成をとることにより、複数相がリチウム吸蔵相のみで構成されている場合のサイクル劣化やリチウム吸蔵相とリチウム非吸蔵相の2相のみで構成されている場合のサイクル劣化を抑制し、膨張・収縮の緩和を図り、サイクル特性の向上を図ることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の非水電解質二次電池用負極活物質は、下記式(1)、(2)および(3)でそれぞれ示される組成の相を少なくとも有し、式(1)中のM 1 は、K、Ce、Ti、Zr、V、Nb、Ca、Ba、La、Mo、W、Mn、Mg、Co、Ni、Pd、CuおよびFeからなるm 1 群より選択される少なくとも1種の元素、式(1)および(2)中のM 2 およびM 4 は、Al、SiおよびSnからなるm 2 群より選択される少なくとも1種の元素、式(2)中のM 3 は、K、Ce、Ti、Zr、V、Nb、Ca、Mo、W、Mn、Co、Ni、CuおよびFeからなるm 3 群より選択される少なくとも1種の元素、式(3)中のM5はFe、Co、Mn、Zr、La、Cu、Ni、Ti、Fe 18 Sn、Mg、V、Nb、Mo、W、PdおよびCeからなる群より選択され、Li吸蔵時の組成を式LixM5で表したときx≦0.05である単体または化合物である粒子で構成される。
【0008】
(1) M1αM2(0≦α<3)
(2) M3 aM4(α<a)
(3) M5
さらに本発明の非水電解質二次電池用負極活物質は、下記(a)〜(c)の特徴を有している。
(イ)前記式(1)および(2)で表される組成の相がリチウムを最も多く吸蔵したときの組成をそれぞれ式(4):Li y M 1 αM 2 および式(5):Li z M 3 a M 4 で表し、それぞれの活物質中での割合を原子比でw 1 およびw 2 で表し、それぞれの吸蔵リチウムの割合を原子比でL 1 =y/(α+1)およびL 2 =z/(a+1)で表したとき、{(L 1 ×w 1 )+(L 2 ×w 2 )}/2が2以下である。なお、0<w1<1、0<w2<1である。
(ロ)活物質粒子中における式(3)で表される組成の相の割合が10原子%以上、50原子%以下である。
(ハ)最大リチウム吸蔵量が一番多い相をML相としたとき、そのML相と式(3)で表される組成の相が接触していないか、または、断面における接触部が、それぞれの断面の周囲長さの和の5%以下の部分が接触している複合相から形成されている。
【0009】
ここで、式(1)で表される組成の相と式(2)で表される組成の相とは、リチウム吸蔵時のリチウム吸蔵量が異なり、式(3)で表される単体または化合物はリチウムをほとんど吸蔵しない。従って、式(1)および式(2)で表される組成の相は膨張・収縮が異なり、式(3)で表される単体または化合物は、多少のリチウム吸蔵があっても10原子%以内なので膨張・収縮はほとんど起こらない。これらの相互作用のために、活物質中の膨張・収縮が相互緩和され、活物質の微細化が起こりにくくなる。特に、活物質にSnやSiの単相のように、リチウム吸蔵量の大きな相が含まれる場合には、もう一つのリチウム吸蔵相が存在することにより、リチウム非吸蔵相との膨張・収縮における大きな差を中間緩和することが可能となる。また、このような3相が存在することで、活性相同士の凝集防止にも寄与することができる。
【0010】
上記(イ)において、(L 1 ×w 1 )と(L 2 ×w 2 )との平均値、すなわち{(L 1 ×w 1 )+(L 2 ×w 2 )}/2は1以下であることがより好ましい。
【0011】
(L 1 ×w 1 )と(L 2 ×w 2 )との平均値が2より大きくなると、膨張・収縮の緩和が難しい。電池の容量を若干落としてもサイクル特性を重視する場合には、(L 1 ×w 1 )と(L 2 ×w 2 )との平均値は1以下が好ましい。
【0012】
上記(ロ)に示すように、活物質粒子中における式(3)で表される単体または化合物の相の割合は10原子%以上50原子%以下であることが好ましい。10原子%未満であると膨張・収縮の緩和物質としては有効に働くには少ない。また、50原子%を越えると活物質の電気化学的容量が小さくなってしまう。
【0013】
上記した3相の配置関係は、上記(ハ)に示すとおりである。すなわち、最大リチウム吸蔵量が一番多い相、すなわち式(1)で表される組成の層をML相としたとき、そのML相と式(3)で表される組成の相が接触していないか、または、断面における接触部が、それぞれの断面の周囲長さの和の5%以下の部分が接触している複合相から形成されている活物質粒子である。
もう少し具体的には、式(3)で表される組成の相が核となり、その表面の一部または全面と、最大リチウム吸蔵量が一番多いML相および式(3)で表される組成の相以外の中間相とが接触しており、さらに、その中間相において式(3)で表される組成の相と接触していない表面の一部または全面とML相が接触しているような形態の複合相から形成されている活物質粒子であることが好ましい。または、最大リチウム吸蔵量が一番多いML相が核となり、その表面の一部または全面と、ML相および式(3)で表される組成の相以外の中間相とが接触しており、さらに、その中間相においてML相と接触していない表面の一部または全面と式(3)で表される組成の相が接触しているような形態の複合相から形成されている活物質粒子であることが好ましい。いずれにしても、ML相と式(3)で表される組成の相がほとんど接触していないような構造が望ましい。なぜならば、ML相はリチウム吸蔵時のリチウム含有量が他の相よりも多くなるために、膨張も大きくなる。その時に、ML相とリチウムをほとんど含有しないためにほとんど膨張が起こらない式(3)で表される組成の相とが接触せずに、ちょうど中間の膨張性を持つML相および式(3)で表される組成の相以外の中間相が間に存在することにより、活物質粒子全体の膨張を緩和することが可能となるためである。ML相と式(3)で表される組成の相は全く接触しない方が望ましいが、断面における接触部が、それぞれの断面の周囲長さの和の5%以下の部分が接触している程度であれば、ほとんど影響はない。
【0014】
本発明における前記式(1)と式(2)で表される組成の相の好ましい組合せ例を以下に列挙する。以下の例においては、式(3)で表される単体または化合物はTi、Zr、V、Nb、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、La、Ce、Mg、PdもしくはFe 18 Snである単体または化合物が好ましい。
【0015】
(a)式(1)で表される組成の相がSnであり、式(2)で表される組成の相がFeSn 2 、CoSn、Cu 6 Sn 5 、Ti 6 Sn 5 、Mn 2 Sn、Ti 2 SnもしくはTi 3 Snの単独または2種以上である。
(b)式(1)で表される組成の相がSn、KSn2、LaSn2、ZrSn2、MnSn2、CoSn2、PdSn2、FeSn2 もしくはNi3Sn4の単独または2種以上であり、式(2)で表される組成の相がFeSn、CoSn、Cu6Sn5 、Ni3Sn2 、Mn2Sn、Ti2Sn、K2Sn、Mn3Sn、Fe3Sn、Ni3Sn、Cu3Sn、Ti3Sn、Zr4Sn、Cu4Sn、Fe6SnもしくはFe12Snの単独または2種以上である。
【0016】
(c)式(1)で表される組成の相がKSnもしくはFeSnの単独または2種以上であり、式(2)で表される組成の相がK 2Sn、Mn3SnもしくはFe3Snの単独または2種以上である。
(d)式(1)で表される組成の相がCu6Sn5 もしくはTi6Sn 5 の単独または2種以上であり、式(2)で表される組成の相がTi2Sn、Cu3Sn、Ti3Sn、Fe6SnもしくはFe12Snの単独または2種以上である。
【0017】
(e)式(1)で表される組成の相がTi2Sn、K2Sn、Mg2Sn、Ca2SnもしくはBa2Snの単独または2種以上であり、式(2)で表される組成の相がMn3Sn、Fe3Sn、Ti3SnもしくはCu4Snの単独または2種以上である。
(f)式(1)で表される組成の相がSiであり、式(2)で表される組成の相がMoSi2 、ZrSi、FeSi、CoSi、NiSi、Ti5Si3 、Fe5Si3 、Co2Si、Mo3Si、Fe3SiもしくはCo3Siの単独または2種以上である。
【0018】
(g)式(1)で表される組成の相がSi、CaSi2 、TiSi2、ZrSi2、VSi2、NbSi2 、MoSi2、WSi2、MnSi2、CoSi2、CuSi2、FeSi2 もしくはNiSi2の単独または2種以上であり、式(2)で表される組成の相がTiSi、ZrSi、MnSi、FeSi、CoSi、NiSi、Cu6Si5、W3Si2、Ni3Si2、Ti5Si3、Nb5Si3 、Fe5Si3 、Ca2Si、Co2Si、V 3Si、Mo3Si、Mn3Si、Fe3SiもしくはCo3Siの単独または2種以上である。
(h)式(1)で表される組成の相がTiSi、MnSi、FeSi、CoSi、BaSiもしくはPdSiの単独または2種以上であり、式(2)で表される組成の相がTi5Si3 、Mn5Si3、Fe5Si3 、Co2Si、Mo3SiもしくはMn 2 Siの単独または2種以上である。
【0019】
(i)式(1)で表される組成の相がMn5Si 3 であり、式(2)で表される組成の相がMn3Siである。
(j)式(1)で表される組成の相がCo2Siであり、式(2)で表される組成の相がCo3Siである。
【0020】
(k)式(1)で表される組成の相がAl、CaAl4 、MnAl4、TiAl3 、FeAl3 、CaAl2 、CeAl2 もしくはCuAl 2 の単独または2種以上であり、式(2)で表される組成の相がCeAl、TiAl、MnAl、FeAl、CoAl、CuAl、Cu4Al3、La3Al2、Ce3Al 2 もしくはFe3Alの単独または2種以上である。
(l)式(1)で表される組成の相がLaAl、FeAlもしくはCuAlの単独または2種以上であり、そのときの前記式(2)で表される組成の相がCu4Al3、La3Al2 もしくはFe3Alの単独または2種以上である。
【0021】
本発明に用いられる負極活物質の製造方法は、活物質粒子中の3相のうち1相の熱力学的な結晶化温度が他の2相に比べて100℃以上離れている金属組成物を、融解状態から急冷して結晶化を行うことを特徴とするものである。本発明による活物質粒子は、固溶体または金属間化合物からなるが、その構成元素を所定の比率で混合したものを高温で溶融させ、その溶融物を乾式噴霧法、ロール急冷法、回転電極法などで急冷、凝固させて得ることができる。その際、必要に応じて粉砕、分級などにより粒子径を調節する。このように、溶融物の急冷、凝固により、リチウムを吸蔵する2相とリチウムを吸蔵しない1相の少なくとも3相からなる活物質粒子を得ることができる。特に、その後の熱処理により、リチウム吸蔵相の2相、リチウム非吸蔵相各々の相の均一性を高めることができるが、熱処理をしない場合でもそのような活物質粒子を得ることができる。また、急冷、凝固の方法は上記の方法に限られるものではない。
本発明の非水電解質二次電池は、リチウムイオンの可逆的な電気化学反応が可能な正極、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水系電解質、および上記活物質からなる負極を備える。ここに用いられる正極および負極は、リチウムイオンを電気化学的かつ可逆的に挿入・放出できる正極活物質および上記負極活物質に導電剤、結着剤等を添加した合剤層を集電体の表面に塗着して作製することができる。
【0022】
本発明に用いられる正極材料には、リチウム含有または非含有の化合物を用いることができる。特に、リチウム含有遷移金属酸化物として、例えば、Lix CoO2 、Lix NiO2、Lix MnO2 、Lix Coy Ni1-y O2、Lix Coy M1-yOz、LixNi1-yMyOz、Lix Mn2 O4 、Lix Mn2-y My O4 (M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3)があげられる。上記のx値は、充放電開始前の値であり、充放電により増減する。また、遷移金属カルコゲン化物、バナジウム酸化物およびそのリチウム化合物、ニオブ酸化物およびそのリチウム化合物、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、硫黄系有機化合物、シェブレル相化合物、活性炭、活性炭素繊維等の他の正極材料を用いることも可能である。また、複数の異なった正極材料を混合して用いることも可能である。正極活物質粒子の平均粒径は、特に限定はされないが、1〜30μmであることが好ましい。
【0023】
上記非水電解質二次電池用電極に用いる導電剤は、通常負極および正極材料に混合する形態で使用するもので、電子導電性材料であれば何でもよい。電子導電性材料としては、例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカ−ボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類などを単独またはこれらの混合物として含ませることができる。そして、負極の場合には、銅、ニッケル等の金属粉末類およびポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料、正極の場合には、用いる正極材料の充放電電位において、化学変化を起こさないように、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物あるいはポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料なども用いることができる。これらの導電剤のなかで、人造黒鉛、アセチレンブラックが特に好ましい。
【0024】
上記電極に用いられる結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。本発明において好ましい結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−ペンタフルオロプロピレン共重合体、プロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体または前記材料の(Na+)イオン架橋体を挙げることができ、これらの材料を単独または混合物として用いることができる。
【0025】
上記負極の集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケルあるいはチタンを処理させたものなどが用いられる。特に、銅あるいは銅合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けてもよい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
また、上記正極の集電体としては、用いる正極材料の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、材料としてステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボンあるいはチタンを処理させたものが用いられる。特に、アルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けてもよい。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布体の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0026】
上記電極を構成する合剤には、導電剤や結着剤の他、フィラー、分散剤、イオン伝導体、圧力増強剤およびその他の各種添加剤を用いることができる。フィラーは、構成された電池において、化学変化を起こさない繊維状材料であれば何でも用いることができる。通常、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系ポリマー、ガラス、炭素などの繊維が用いられる。フィラーの添加量は特に限定されないが、電極合剤に対して0〜30重量%が好ましい。
本発明における負極板と正極板の構成は、少なくとも正極合剤面の対向面に負極合剤面が存在していることが好ましい。
【0027】
非水電解質は、溶媒と、その溶媒に溶解するリチウム塩とから構成される。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネ−ト、プロピレンカ−ボネ−ト、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの脂肪族カルボン酸エステル類、γ−ブチロラクトン等のγ−ラクトン類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン等の鎖状エーテル類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル類、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、プロピルニトリル、ニトロメタン、エチルモノグライム、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、アニソール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性有機溶媒を挙げることができ、これらの1種または2種以上を混合して使用する。なかでも環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合系または環状カーボネートと鎖状カーボネートおよび脂肪族カルボン酸エステルとの混合系が好ましい。
これらの溶媒に溶解するリチウム塩としては、例えばLiClO4 、LiAlCl4、LiBF4 、LiPF6 、LiSbF6、LiAsF6、LiSCN、LiCl、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiCF3CO2 、Li(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiC4F9SO3、LiB(C6H5)、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、イミド類等を挙げることができ、これらを使用する電解液等に単独または二種以上を組み合わせて使用することができるが、特にLiPF6を含ませることがより好ましい。
これら電解質を電池内に添加する量は、特に限定されないが、正極材料や負極材料の量や電池のサイズによって必要量を用いることができる。支持電解質の非水溶媒に対する溶解量は、特に限定されないが、0.2〜2mol/lが好ましい。特に、0.5〜1.5mol/lとすることがより好ましい。
【0028】
電解液の他に次のような固体電解質も用いることができる。固体電解質としては、無機固体電解質と有機固体電解質に分けられる。無機固体電解質には、リチウムの窒化物、ハロゲン化物、酸素酸塩などがよく知られている。なかでも、Li4 SiO4 、Li4 SiO4 −LiI−LiOH、x Li3 PO4 −(1-x)Li4 SiO4、Li2 SiS3 、Li3 PO4 −Li2S−SiS2、硫化リン化合物などが有効である。有機固体電解質では、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリホスファゼン、ポリアジリジン、ポリエチレンスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンなどやこれらの誘導体、混合物、複合体などのポリマー材料が有効である。
また、ポリマー材料に、溶媒とその溶媒に溶解するリチウム塩とから構成される有機電解液を吸収保持させたものを正極合剤、負極合剤に含ませ、さらに有機電解液を吸収保持するポリマーからなる多孔性のセパレータを正極、負極と一体化した電池を構成することも可能である。このポリマー材料としては、有機電解液を吸収保持できるものであればよいが、特にフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体が好ましい。
さらに、放電容量や充放電特性を改良する目的で、他の化合物を電解質に添加することも有効である。例えば、トリエチルフォスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n−グライム、ピリジン、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、クラウンエーテル類、第四級アンモニウム塩、エチレングリコールジアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0029】
本発明に用いられるセパレータとしては、大きなイオン透過度と所定の機械的強度を持つ、絶縁性の微多孔性薄膜が用いられる。また、一定温度以上で孔を閉塞し、抵抗をあげる機能を持つことが好ましい。耐有機溶剤性と疎水性からポリプロピレン、ポリエチレンなどの単独または組み合わせたオレフィン系ポリマーあるいはガラス繊維などからつくられたシートや不織布または織布が用いられる。セパレータの孔径は、電極シートより脱離した正・負極材料、結着剤、導電剤が透過しない範囲であることが望ましく、例えば、0.01〜1μmであるものが望ましい。セパレータの厚みは、一般的には、10〜300μmが用いられる。また、空孔率は、電子やイオンの透過性と素材や膜厚に応じて決定されるが、一般的には30〜80%であることが望ましい。
【0030】
電池の形状はコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型、電気自動車等に用いる大型のものなどいずれにも適用できる。また、本発明の非水電解質二次電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
《実施例1》
表1に本実施例で用いた負極活物質(材料A〜材料C)におけるリチウム吸蔵相の2相とリチウム非吸蔵の1相の各組成、および各相の存在比率を示す。負極活物質を構成する各元素の粉体またはブロックを所定の仕込み比率で溶解槽に投入し、加熱、溶解し、その溶融物をロール急冷法で急冷、凝固させた。得られた凝固物をボールミルで粉砕し、篩で分級することにより45μm以下の粒子にした材料A〜材料Cを得た。これらの活物質は、電子顕微鏡観察、元素分析およびX線構造解析結果からリチウム吸蔵相2相とリチウム非吸蔵相から構成されており、リチウム吸蔵相−1とリチウム非吸蔵相とは接触せずに、リチウム吸蔵相−2が常にその中間にあることが確認された。また、上記分析結果を活用した定量分析により、表1に示すような割合で各相が存在していることがわかった。負極活物質の構成元素の仕込み比率については、特に限定されたものではなく、相が3相以上になり2相がリチウム吸蔵相で、1相がリチウム非吸蔵相である状態になればよく、仕込み組成を特に限定するものではない。さらに、各相は、純粋にその化学式が示す物質のみからだけではなく、他の元素、例えば、O、C、N、S、Ca、Mg、Al、Fe、W、V、Ti、Cu、Cr、Co、P等の元素が微量存在していてもよい。
【0033】
【表1】
【0034】
次に、負極活物質の評価法について説明する。図1は2320サイズ(直径2.3mm、総高2.0mm)のコイン型試験セルを示す。この試験セルを用いて活物質の充放電容量等の電気化学的特性を測定した。
図1において、1はステンレス鋼板製のケースを表す。ケース1の内底面にはステンレス鋼製のエキスパンドメタルからなる集電体2が溶接されており、この集電体上に各種負極活物質からなる試験電極3が一体に成形されている。試験電極3上には微孔性ポリプロピレン膜からなるセパレータ4がのせられている。ステンレス鋼板製のカバー5の内面には金属リチウム電極6が圧着されている。これらのケースおよびカバー内に有機電解液を注液した後、両者を間にポリプロピレン製ガスケット7を介して組み合わせ、ケース1の開口端を締め付けて密閉して試験セルを組み立てた。
【0035】
試験電極3は、上記の負極活物質粉末75重量部に対し、導電剤としての人造黒鉛20重量部と結着剤としてのポリフッ化ビニリデン5重量部を混合した合剤の所定量を集電体2上に一体成形した。ケース1内に成形された電極3を80℃で十分に減圧乾燥したのち、試験をセルを組み立てた。
有機電解液としてはエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの等体積混合溶媒に溶質の六フッ化リン酸リチウムを1mol/l溶解させたものを用いた。試験セルの充放電は、20℃の恒温槽内において、充電および放電とも電流密度0.5mA/cm2の定電流で、まず0Vになるまで充電した後、3Vになるまで放電する条件で充放電を300サイクルまで繰り返した。そして、初期の放電容量に対する300サイクル目の放電容量の比を容量維持率として算出した。ここでの充放電とは実電池の充放電反応に合わせた。つまり、負極活物質へのリチウム吸蔵反応を充電、リチウムの放出反応を放電とした。
【0036】
表1の材料A〜材料Cを負極とした実施例と、それぞれの3相を別々に準備して、実施例での割合と同比率にして単に混合した材料を負極とした比較例との、充放電サイクル試験における容量維持率を比較した。その結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表2より、リチウム吸蔵相が2相存在し、リチウム非吸蔵相が1相存在することで容量維持率が向上していることが明らかである。また、リチウム非吸蔵相が10重量%未満や50重量%を越えた場合には、比較例よりも低い容量維持率を示した。さらに、{(L1×w1)+(L2×w2)}/2が2を越えるような場合には、やはり、比較例よりも低い容量維持率を示した。
【0039】
《実施例2》
各種元素を塊状、板状または粒状のまま任意の比率で混合し、アーク溶解炉で活物質を鋳造した。得られた鋳造品をガスアトマイズ法により球状粒子とした。ガスアトマイズ法は、アルゴン雰囲気下、噴射ノズル径1mm、アルゴンガス噴射圧100kg/cm2で実施した。得られた各種活物質粒子を45ミクロンメッシュのふるいを通すことにより、平均粒径28μmの粒子を得た。これらの活物質粒子について、X線回折分析をしたところ、いずれも表3〜5に示すように複数の相を有していた。EMPA分析による面分析によると、どの粒子も結晶子径は最大で8μmであり、平均結晶子径は2.3μmであった。
比較例としてSn、Si、およびAlの各単体からなる平均粒径26μmの粒子(No.64、65および66)、Cu6Sn5相およびFeAl相の各1相からなる平均粒径28μm(平均結晶子径2.1μm)の粒子(No.67および68)、Mg2Ge相からなる平均粒径25μm(平均結晶子径3.2μm)の粒子(No.69)、Mg2Sn相からなる平均粒径27μm(平均結晶子径5.3μm)の粒子(No.70)、Sn相とMg2Sn相とからなる平均粒径27μm(平均結晶子径5.3μm、原子比Sn/Mg2Snが3/7)の粒子(No.71)を調製した。
【0040】
これらの活物質粒子を用いて実施例1と同様にして試験セルを作製し、初回放電容量と300サイクル目の放電容量の維持率を調べた。その結果を表3〜5に示す。表3〜5よりリチウム吸蔵相が2相存在し、リチウム非吸蔵相が1相存在する本発明による活物質は、容量維持率が優れていることが明らかである。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、電気化学的なリチウムの吸蔵・放出に伴い膨張・収縮を繰り返しても、導電剤との接触を維持し、充放電サイクル寿命特性が改善された負極活物質粒子が得られる。その結果、従来の炭素材料を負極材料としたものよりも高容量で、かつサイクル特性、高率充放電特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の非水電解質二次電池用負極活物質の評価に用いた試験セルの縦断面図である。
【符号の説明】
1 電池ケース
2 集電体
3 試験電極
4 セパレータ
5 カバー
6 金属リチウム電極
7 ガスケット
Claims (5)
- 下記式(1)、(2)および(3)でそれぞれ示される組成の相を少なくとも有し、式(1)中のM 1 は、K、Ce、Ti、Zr、V、Nb、Ca、Ba、La、Mo、W、Mn、Mg、Co、Ni、Pd、CuおよびFeからなるm 1 群より選択される少なくとも1種の元素、式(1)および(2)中のM 2 およびM 4 は、Al、SiおよびSnからなるm 2 群より選択される少なくとも1種の元素、式(2)中のM 3 は、K、Ce、Ti、Zr、V、Nb、Ca、Mo、W、Mn、Co、Ni、CuおよびFeからなるm 3 群より選択される少なくとも1種の元素、式(3)中のM5はFe、Co、Mn、Zr、La、Cu、Ni、Ti、Fe 18 Sn、Mg、V、Nb、Mo、W、PdおよびCeからなる群より選択され、Li吸蔵時の組成を式LixM5で表したときx≦0.05である単体または化合物である粒子からなり、さらに下記(イ)〜(ハ)の特徴を有する非水電解質二次電池用負極活物質。
(1) M1αM2(0≦α<3)
(2) M3 aM4(α<a)
(3) M5
(イ)前記式(1)および(2)で表される相がリチウムを最も多く吸蔵したときの組成をそれぞれ式Li y M 1 αM 2 およびLi z M 3 a M 4 で表し、それぞれの活物質中での割合を原子比でw 1 およびw 2 で表し、それぞれの吸蔵リチウムの割合を原子比でL 1 =y/(α+1)およびL 2 =z/(a+1)で表したとき、{(L 1 ×w 1 )+(L 2 ×w 2 )}/2が2以下である。なお、0<w 1 <1、0<w 2 <1である。
(ロ)活物質粒子中における式(3)で表される組成の相の割合が10原子%以上、50原子%以下である。
(ハ)最大リチウム吸蔵量が一番多い相をML相としたとき、そのML相と式(3)で表される組成の相が接触していないか、または、断面における接触部が、それぞれの断面の周囲長さの和の5%以下の部分が接触している複合相から形成されている。 - {(L 1 ×w 1 )+(L 2 ×w 2 )}/2がが1以下である請求項1記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- 式(3)で表される組成の相が核となり、その表面の一部または全面と前記ML相および式(3)で表される組成の相以外の中間相が接触しており、さらに、その中間相において式(3)で表される組成の相と接触していない表面の一部または全面とML相が接触している形態の複合相からなる請求項1記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- 前記ML相が核となり、その表面の一部または全面とML相および式(3)で表される組成の相以外の中間相が接触しており、さらに、その中間相においてML相と接触していない表面の一部または全面と式(3)で表される組成の相が接触している形態の複合相からなる請求項1記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
- リチウムイオンの可逆的な電気化学反応が可能な正極、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水系電解質、および請求項1〜4のいずれかに記載の活物質からなる負極を備えた非水電解質二次電池。
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