JP4046582B2 - 窒化物系半導体発光素子およびその形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、窒化物系半導体発光素子およびその形成方法に関し、特に、電極層を含む窒化物系半導体発光素子およびその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、窒化物系半導体発光素子の一例である窒化物系半導体レーザ素子は、次世代の大容量光ディスク用光源としての利用が期待され、その開発が盛んに行われている。この窒化物系半導体レーザ素子の低動作電圧化および高信頼性化のためには、電極の低コンタクト抵抗化は不可欠である。特に、窒化物系半導体は、p型のキャリア濃度が低いため、p側電極に関しては、良好なオーミック性(低いコンタクト抵抗)を得ることが困難である。これに対処するために、近年では、p側電極として、良好なオーミック性を有するPdを含むPd/Au電極やPd/Pt/Au電極などのPd系の電極材料が用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−196201号公報
図28は、従来のPd系電極を有する窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。まず、図28を参照して、従来の窒化物系半導体レーザ素子150の構造について説明する。この従来の窒化物系半導体レーザ素子150では、サファイア基板101上に、約15nmの厚みを有するAlGaN低温バッファ層102が形成されている。AlGaN低温バッファ層102上には、約3μmの厚みを有するアンドープGaN層103が形成されている。アンドープGaN層103上には、n型GaNコンタクト層104が約5μmの厚みで形成されている。n型GaNコンタクト層104上には、約1μmの厚みを有するn型AlGaNクラッド層105、約50nmの厚みを有するInGaNからなるMQW(Multiple Quantum Well)発光層106、および、凸部を有する約300nmの厚みのp型AlGaNクラッド層107が形成されている。p型AlGaNクラッド層107の凸部上には、約70nmの厚みを有するp型GaNコンタクト層108が形成されている。
【0004】
p型GaNコンタクト層108上には、下から、約10nmの厚みのPd層と、約100nmの厚みのAu層と、約200nmの厚みのNi層との3層構造のPd系電極からなるp側電極109が形成されている。また、p側電極109の上面およびn型GaNコンタクト層104の上面の一部以外の領域を覆うように、SiO2膜110が形成されている。また、SiO2膜110を覆うとともに、p側電極109の上面に接触するように、パッド電極111が形成されている。
【0005】
また、p型AlGaNクラッド層107からn型GaNコンタクト層104までの一部領域が除去されている。その露出されたn型GaNコンタクト層104の上面に接触するように、n側電極112が形成されている。また、n側電極112に接触するように、パッド電極113が形成されている。
【0006】
図29〜図33は、図28に示した従来のPd系電極を有する窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。また、図34は、図28に示した従来の窒化物系半導体レーザ素子を活性層側からジャンクションアップ方式でサブマウントに取り付けた状態を示した断面図である。次に、図28〜図34を参照して、従来のPd系電極を有する窒化物系半導体レーザ素子150の製造プロセスについて説明する。
【0007】
まず、図29に示すように、MOCVD法を用いて、サファイア基板101上に、格子不整合を緩和するために、約600℃の温度条件下でAlGaN低温バッファ層102を約15nmの厚みで低温成長させる。そして、AlGaN低温バッファ層102上に、MOCVD法を用いて、約3μmの厚みでアンドープGaN層103を形成する。
【0008】
その後、MOCVD法を用いて、アンドープGaN層103上に、約5μmの厚みを有するn型GaNコンタクト層104、約1μmの厚みを有するn型AlGaNクラッド層105、約50nmの厚みを有するMQW発光層106、約300nmの厚みを有するp型AlGaNクラッド層107、および、約70nmの厚みを有するp型GaNコンタクト層108を順次形成する。
【0009】
次に、図30に示すように、p型GaNコンタクト層108からn型GaNコンタクト層104までの一部領域を異方性ドライエッチングを用いて除去する。
【0010】
次に、図31に示すように、リフトオフ法などを用いて、下から、約10nmの厚みのPd層、約100nmの厚みのAu層および約200nmの厚みのNi層の積層膜を約2μm幅のストライプ状に形成することによって、Pd層、Au層およびNi層の3層構造のPd系電極からなるp側電極109を形成する。この後、p側電極109の最上層のNi層をエッチングマスクとして、CF4ガスを用いた異方性ドライエッチングによりp型GaNコンタクト層108をエッチングするとともに、p型AlGaNクラッド層107を約150nmだけエッチングする。これにより、図32に示されるようなリッジ部が形成される。
【0011】
次に、図33に示すように、プラズマCVD法を用いて、全面にSiO2膜110を形成した後、n型GaNコンタクト層104上の一部上に位置するSiO2膜110を除去する。そして、そのSiO2膜110を除去した部分のn型GaNコンタクト層104上に、n側電極112を形成する。
【0012】
最後に、図28に示したように、Pd系電極からなるp側電極109の上面上に位置するSiO2膜110を除去した後、p側電極109およびn側電極112上に、それぞれ、パッド電極111および113を形成する。
【0013】
そして、図28に示すような窒化物系半導体レーザ素子150を、図34に示すように、ステム171に固定したサブマウント(放熱基台)170上に、半田などの融着材160を用いて固定する。この場合、素子のリッジ部と反対の面(サファイア基板101の裏面側)をサブマウント170に融着するジャンクションアップ方式を用いる。
【0014】
従来のPd系電極からなるp側電極109を有する窒化物系半導体レーザ素子は、上記のように形成されていた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来のPd系電極からなるp側電極109を有する窒化物系半導体レーザ素子150では、Pd系電極からなるp側電極109は、p型GaNコンタクト層108に対する付着力が弱いため、製造プロセスの途中でPd系電極からなるp側電極109が膜剥がれを起こしやすいという不都合があった。このため、素子の信頼性を向上させるのが困難であるといった問題点があった。
【0016】
また、従来のPd系電極からなるp側電極109を有する窒化物系半導体レーザ素子150では、p側電極109上にパッド電極112を形成する工程や組立工程における熱または応力によって、p側電極109のコンタクト特性が劣化するという不都合が生じる。この場合、コンタクト抵抗が高くなるので、動作電圧が高くなるという問題点があった。
【0017】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、
この発明の1つの目的は、低動作電圧で、かつ、信頼性の高い窒化物系半導体発光素子を提供することである。
【0018】
この発明のもう1つの目的は、上記の窒化物系半導体発光素子において、低コンタクト性を損なうことなく、電極層全体の窒化物系半導体層に対する付着力を強くすることである。
【0019】
この発明のさらにもう1つの目的は、低動作電圧で、かつ、信頼性の高い窒化物系半導体発光素子を容易に形成することが可能な窒化物系半導体発光素子の形成方法を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】
この発明の第1の局面による窒化物系半導体発光素子は、活性層上に形成されたp側のコンタクト層としての窒化物系半導体層と、窒化物系半導体層上に部分的に形成された電極層とを備え、電極層は、Ptを含む第1電極層と、第1電極層上に、前記窒化物系半導体層の表面と接触する部分を有するように形成され、Pdを含む第2電極層とを備えている。
【0021】
この第1の局面による窒化物系半導体発光素子では、上記のように、Ptを含む第1電極層を窒化物系半導体層上に部分的に設けるとともに、第1電極層上に、窒化物系半導体層の表面と接触する部分を有するように、Pdを含む第2電極層を設けることによって、第1電極層により電極層全体の窒化物系半導体層に対する付着力を強くすることができるとともに、第2電極層により低いコンタクト抵抗を得ることができる。これにより、素子の信頼性を向上することができるとともに、動作電圧を低減することができる。
【0024】
上記の窒化物系半導体発光素子において、好ましくは、第1電極層は、窒化物系半導体層上に、薄い膜厚で形成されることにより、自然発生的に、不均一な分布で、部分的に形成することができる。このように構成すれば、窒化物系半導体層上の第1電極層が形成されていない領域において、第2電極層を窒化物系半導体層に接触させることができるので、第2電極層によるコンタクト抵抗を容易に低減することができる。
【0025】
この場合、好ましくは、第1電極層は、窒化物系半導体層上に、3nm以下の膜厚で形成されている。このように構成すれば、窒化物系半導体層上に、島状の不均一な分布の第1電極層を容易に形成することができる。
【0026】
上記の窒化物系半導体発光素子において、好ましくは、第1電極層は、パターニングによって形成されている。このように構成すれば、窒化物系半導体層上の所定領域に、第1電極層を部分的に形成することができる。
【0027】
上記の窒化物系半導体発光素子において、好ましくは、窒化物系半導体層は、凹凸形状の表面を有する。このように構成すれば、窒化物系半導体層と、第1電極層および第2電極層との接触面積を増加することができるので、窒化物系半導体層上に第1電極層を介して第2電極層を形成することによる窒化物系半導体層と第2電極層との接触面積の減少を抑制することができる。これにより、コンタクト抵抗を安定的に低減することができる。この場合、凹凸形状の表面を有する窒化物系半導体層は、3%以上のIn組成と、20nm以下の膜厚とを有する。このような組成および膜厚で窒化物系半導体層を形成すれば、容易に、窒化物系半導体層の表面を、凹凸形状にすることができる。
【0028】
上記の窒化物系半導体発光素子において、好ましくは、窒化物系半導体層は、クラッド層の凸部上に形成されたコンタクト層を含み、クラッド層の凸部とコンタクト層とによってリッジ部が構成されている。このような構成では、狭い面積のコンタクト層上に電極を形成する必要があるが、リッジ部を構成するコンタクト層に対する電極層全体の付着力を第1電極層により強くすることができるとともに、第2電極層により低いコンタクト抵抗を得ることができる。その結果、動作電流および動作電圧を低減できるため、素子の信頼性を向上することができる。
【0031】
この発明の第2の局面による窒化物系半導体発光素子の形成方法は、活性層上にp側のコンタクト層としての窒化物系半導体層を形成する工程と、窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、Ptを含む第1電極層を形成する工程と、第1電極層上に、窒化物系半導体層の表面と接触する部分を有するように、Pdを含む第2電極層を形成する工程とを備えている。
【0032】
この第2の局面による窒化物系半導体発光素子の形成方法では、上記のように、窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、Ptを含む第1電極層を形成するとともに、窒化物系半導体層の表面と接触する部分を有するように、Pdを含む第2電極層を形成することによって、第1電極層により電極層全体の窒化物系半導体層に対する付着力を強くすることができるとともに、第2電極層により低いコンタクト抵抗を得ることができる。これにより、素子の信頼性を向上することができるとともに、動作電圧を低減することが可能な窒化物系半導体発光素子を容易に形成することができる。
【0033】
この第2の局面による窒化物系半導体発光素子の形成方法において、好ましくは、窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、第1電極層を形成する工程は、窒化物系半導体層の表面上に、部分的に開口部が形成されるような薄い厚みで第1電極層を形成する工程を含む。このように構成すれば、窒化物系半導体層の表面上に、容易に、部分的に、第1電極層を形成することができる。
【0034】
この第2の局面による窒化物系半導体発光素子の形成方法において、好ましくは、窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、第1電極層を形成する工程は、窒化物系半導体層の表面上に、第1電極層および第2電極層を形成した後、第2電極層と窒化物系半導体層との間に、電流を流すことによって、第2電極層の一部を窒化物系半導体層の表面に接触するように移動させる工程を含む。このように構成すれば、第1電極層による窒化物系半導体層に対する付着力を損なうことなく、第2電極層の低コンタクト性を確実に発揮させることができる。
【0035】
上記の窒化物系半導体発光素子の形成方法において、好ましくは、窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、第1電極層を形成する工程は、窒化物系半導体層の表面上に、レジストパターンを形成する工程と、レジストパターン上に、第1電極層を形成した後、レジストパターンを除去することによって、第1電極層をパターニングする工程とを含む。このようにリフトオフ法を用いれば、窒化物系半導体層の表面上に、容易に、部分的に、第1電極層を形成することができる。これにより、窒化物系半導体層上の第1電極層が形成されていない領域において、第2電極層を窒化物系半導体層に確実に接触させることができる。
【0036】
上記の窒化物系半導体発光素子の形成方法において、好ましくは、窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、第1電極層を形成する工程は、窒化物系半導体層の表面上に、第1電極層を形成した後、第1電極層上に、レジストパターンを形成する工程と、レジストパターンをマスクとして、第1電極層をエッチングすることによって、第1電極層をパターニングする工程とを含む。このように構成すれば、より確実に、窒化物系半導体層の表面上に、部分的に第1電極層を形成することができる。これにより、窒化物系半導体層上の第1電極層が形成されていない領域において、第2電極層を窒化物系半導体層に確実に接触させることができる。
【0037】
上記の第1電極層をパターニングする窒化物系半導体発光素子の形成方法において、好ましくは、第1電極層を形成する工程は、第1電極層をパターニングすることによって、平面的に見て、格子状の第1電極層を形成する工程を含む。このように構成すれば、窒化物系半導体層の表面上に、均一な分布で、部分的に、第1電極層を形成することができるので、第1電極層により電極層全体の窒化物系半導体層に対する付着力を、窒化物系半導体層の面内方向において、均一に強くすることができる。また、格子状の第1電極層を形成することによって、窒化物系半導体層上の第1電極層が形成されていない領域において、第2電極層を窒化物系半導体層に確実に接触させることができる。
【0038】
上記の窒化物系半導体発光素子の形成方法において、好ましくは、第1電極層を形成する工程は、電子線加熱蒸着法、抵抗加熱蒸着法およびスパッタ蒸着法のいずれかを用いて第1電極層を形成する工程を含む。このような蒸着法を用いれば、容易に、窒化物系半導体層に対する付着力の強い材料を含む第1電極層を形成することができる。また、窒化物系半導体層上に島状の不均一な分布の第1電極層を容易に形成することができる。
【0039】
上記の窒化物系半導体発光素子の形成方法において、好ましくは、第2電極層を形成する工程は、第1電極層上に第2電極層を形成した後、熱処理を行う工程を含む。このように構成すれば、第2電極層のコンタクト抵抗をより低くすることができる。
【0040】
上記の窒化物系半導体発光素子の形成方法において、好ましくは、窒化物系半導体層は、クラッド層上に形成されたコンタクト層を含み、第2電極層を形成する工程は、リフトオフ法を用いて、第1電極層の上面上の所定領域に第2電極層を形成する工程を含み、第2電極層を形成した後、第2電極層をマスクとして、第1電極層、コンタクト層およびクラッド層の一部をエッチングすることによって、リッジ部を形成する工程をさらに備える。このように構成すれば、容易に、クラッド層の凸部およびコンタクト層からなるリッジを形成することができる。また、第1電極層をリフトオフ法ではなく、エッチングによりパターニングすることによって、リフトオフ法で生じやすいパターン剥がれを防止することができる。
【0042】
上記の窒化物系半導体発光素子の形成方法において、好ましくは、窒化物系半導体層を形成する工程は、凹凸形状の表面を有する窒化物系半導体層を形成する工程を含む。このように構成すれば、窒化物系半導体層と、第1電極層および第2電極層との接触面積を増加することができるので、窒化物系半導体層上に第1電極層を介して第2電極層を形成することによる窒化物系半導体層と第2電極層との接触面積の減少を抑制することができる。これにより、コンタクト抵抗を安定的に低減することができる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0044】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図2は、図1に示した第1実施形態のp側電極周辺の拡大断面図である。図3は、図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の効果を説明するための特性図である。
【0045】
まず、図1および図2を参照して、第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子50の構造について説明する。この第1実施形態では、サファイア基板1上に、約15nmの厚みを有するAlGaN低温バッファ層2が形成されている。AlGaN低温バッファ層2上には、約3μmの厚みを有するアンドープGaN層3が形成されている。アンドープGaN層3上には、約5μmの厚みを有するn型GaNコンタクト層4、約1μmの厚みを有するn型AlGaNクラッド層5、約50nmの厚みを有するMQW発光層6、および、約300nmの厚みを有するとともに凸部を有するp型AlGaNクラッド層7が順次形成されている。p型AlGaNクラッド層7の凸部上には、約70nmの厚みを有するp型GaNコンタクト層8が形成されている。なお、MQW発光層6は、本発明の「活性層」の一例であり、p型GaNコンタクト層8は、本発明の「窒化物系半導体層」の一例である。
【0046】
ここで、第1実施形態では、p型GaNコンタクト層8上に、部分的に開口部を有するように、約1nmの厚みを有するPt電極層9が形成されている。Pt電極層9上には、下から、約20nmの厚みのPd層、約100nmの厚みのAu層および約200nmの厚みのNi層の3層構造からなるPd系電極層10が形成されている。このPd系電極層10の最下層のPd層は、Pt電極層9の開口部を介して、p型GaNコンタクト層8に接触するように形成されている。これらのPt電極層9とPd系電極層10とによって、p側電極が構成されている。なお、Pt電極層9は、本発明の「第1電極層」の一例であり、Pd系電極層10は、本発明の「第2電極層」の一例である。
【0047】
また、Pd系電極層10の上面およびn型GaNコンタクト層4の上面の一部以外の領域を覆うように、SiO2膜11が形成されている。Pd系電極層10の上面に接触するように、パッド電極12が形成されている。また、n型GaNコンタクト層4の上面上には、n側電極13が形成されている。n側電極13に接触するように、パッド電極14が形成されている。
【0048】
第1実施形態では、上記のようにp型GaNコンタクト層8上に、部分的に、p型GaNコンタクト層8に対する付着力の強い材料であるPtからなるPt電極層9を形成するとともに、そのPt電極層9上に、p型GaNコンタクト層8に対するコンタクト抵抗(界面エネルギ障壁)が低い材料であるPdを含むPd系電極層10を、p型GaNコンタクト層8に接触するように形成することによって、Pt電極層9によりp側電極のp型GaNコンタクト層8に対する付着力を強くすることができるとともに、Pd系電極層10のPd層により低いコンタクト抵抗を得ることができる。これにより、素子の信頼性を向上することができるとともに、動作電圧を低減することができる。
【0049】
図3には、窒化物系半導体レーザ素子を熱処理した後の動作電圧の変化が示されている。窒化物系半導体レーザチップをパッケージ上に固定し、半田付けによる配線を行う際には、350℃程度の加熱が必要になる。従来のPd系電極(Pd10nm/Au100nm/Ni200nm)を含むレーザ素子では、素子作製後に350℃の熱処理を行ったときには、図3に示すように、電極のオーミック性の劣化により動作電圧が7Vから20Vに増大する。その一方、第1実施形態のPt電極層とPd系電極層とを含む窒化物系半導体レーザ素子50では、350℃の熱処理後も、良好なオーミック性を維持することができ、その結果、図3に示すように、動作電圧はほとんど増加しない。したがって、第1実施形態では、低い動作電圧を得ることができる。
【0050】
図4〜図8は、図1に示した第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。また、図9は、図1に示した第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子を発光層側からジャンクションダウン方式でサブマウントに取り付けた状態を示した断面図である。以下、図1、図2、図4〜図9を参照して、第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子50の製造プロセスについて説明する。
【0051】
まず、図4に示すように、MOCVD法を用いて、サファイア基板1上に、格子不整合を緩和するために、約600℃の温度条件下で、約15nmの厚みを有するAlGaN低温バッファ層2を低温成長させる。その後、MOCVD法を用いて、AlGaN低温バッファ層2上に、アンドープGaN層3を約3μmの厚みで成長させる。
【0052】
その後、アンドープGaN層3上に、MOCVD法を用いて、約5μmの厚みを有するn型GaNコンタクト層4、約1μmの厚みを有するn型AlGaNクラッド層5、約50nmの厚みを有するMQW発光層6、約300nmの厚みを有するp型AlGaNクラッド層7、および、約70nmの厚みを有するp型GaNコンタクト層8を順次形成する。そして、p型GaNコンタクト層8からn型GaNコンタクト層4の一部領域を異方性ドライエッチングを用いてエッチングすることによって、図5に示すように、n型GaNコンタクト層4の一部領域を露出させる。
【0053】
次に、王水煮沸による洗浄を行った後、図6に示すように、EB蒸着法を用いて、Pt電極層9を約1nmの厚みで形成するとともに、そのPt電極層9上にPd層10aを約10nmの厚みで形成する。この場合、EB蒸着法により形成される膜は、比較的不均一な膜厚で形成されるため、約1nmの薄い厚みで形成されるPt電極層9は、p型GaNコンタクト層8およびn型GaNコンタクト層4の上面上に、不均一な膜厚で、かつ、部分的に開口部を有するように形成される。そして、Pt電極層9上に形成されるPd層10aは、Pt電極層9の開口部を介して、p型GaNコンタクト層8の上面に接触するように形成される。その後、リフトオフ法を用いて、Pd層10a上のリッジ部に対応する領域に、下から、約10nmの厚みのPd層、約100nmの厚みのAu層および約200nmの厚みのNi層からなる積層膜10bを、約2μm幅のストライプ状(細長状)に形成する。
【0054】
そして、積層膜10bの最上層のNi層をエッチングマスクとして、CF4ガスを用いた異方性ドライエッチングにより、Pd層10a、Pt電極層9およびp型GaNコンタクト層8をエッチングした後、p型AlGaNクラッド層7を約150nmの厚み分だけエッチングする。これにより、図7に示されるようなリッジ部が形成される。また、Pt電極層9と、下からPd層(約20nm)/Au層(約100nm)/Ni層(約200nm)が順次積層されたPd系電極層10とが形成される。このPt電極層9とPd系電極層10とによって、第1実施形態のp側電極が構成される。
【0055】
次に、図8に示すように、プラズマCVD法を用いて、SiO2膜11を堆積した後、n型GaNコンタクト層4の一部上に位置するSiO2膜11を除去する。そして、そのSiO2膜11を除去した部分のn型GaNコンタクト層4上に、n側電極13を形成する。
【0056】
最後に、図1に示したように、Pd系電極層10の上面上のSiO2膜11を除去した後、Pd系電極層10に接触するように、パッド電極12を形成するとともに、n側電極13に接触するように、パッド電極14を形成する。このようにして、第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子50が形成される。
【0057】
上記のように、第1実施形態の製造プロセスでは、付着力の強いPt電極層9が、低コンタクト材料(低界面エネルギ障壁材料)であるPdを含むPd系電極層10と、p型GaNコンタクト層8との間に、部分的に存在するので、Pd系電極10とp型GaNコンタクト層8とが部分的に接触する。このため、Pd系電極層10により電極部での電圧降下を小さくすることができるとともに、Pt電極層9により剥がれを防止することができる。その結果、低動作電圧で、かつ、高信頼性の素子を形成することができる。ここで、Ptは、Pdよりも接触抵抗が半導体の表面状態に左右されやすく不安定である。第1実施形態では、Pt/Pdの積層構造にすることによって、Pdの低コンタクト性を損なうことなく、かつ、Pdの存在によりPt自体の不安定性も改善されるので、相乗効果的にコンタクト抵抗を低減することができる。
【0058】
また、第1実施形態の製造プロセスでは、Pt電極層9およびPd層10aをリフトオフ法ではなく、全面に堆積およびエッチングする方法によってパターニングすることによって、リフトオフ法で生じやすいパターン剥がれを抑制することができる。
【0059】
また、上記第1実施形態の製造プロセスでは、電極材料(Pt電極層9)を蒸着する直前に、塩酸や王水などの強酸による洗浄を行うことによって、接触抵抗をより低減することができる。
【0060】
図1に示した第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子50を、リッジ部側からジャンクションダウン方式でステム71に設けられたサブマウント70に取り付けた状態が図9に示されている。ジャンクションダウン方式で放熱用のサブマウント70に第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子50を取り付ける場合、半田などの融着材60を用いて取り付けられる。このようにジャンクションダウン方式を用いることにより、MQW発光層6の発熱領域がジャンクションアップ方式の場合よりもサブマウント70に接近するとともに、熱伝導の悪いサファイア基板1を間に介さなくてよいので、素子の放熱特性を向上させることができる。その結果、放熱特性の悪化に起因して発生するしきい値電流の上昇を防止することができるので、窒化物系半導体レーザ素子の動作電流および消費電力を低減することができる。
【0061】
なお、第1実施形態では、Pt電極層9によってp側電極の付着力を向上させることができるので、ジャンクションダウン方式を用いたとしても、融着時の熱または応力によってp側電極のオーミック性が劣化するのを抑制することができる。これにより、放熱効果に優れ、かつ、低消費電力のデバイスを実現することができる。
【0062】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図11は、図10に示した第2実施形態のp側電極周辺の拡大断面図である。
【0063】
まず、図10および図11を参照して、第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の構造について説明する。この第2実施形態では、第1実施形態と同様、サファイア基板1上に、約15nmの厚みを有するAlGaN低温バッファ層2、約3μmの厚みを有するアンドープGaN層3、約5μmの厚みを有するn型GaNコンタクト層4、約1μmの厚みを有するn型AlGaNクラッド層5、約50nmの厚みを有するMQW発光層6、約300nmの厚みを有するp型AlGaNクラッド層7、および、約70nmの厚みを有するp型GaNコンタクト層8が順次形成されている。
【0064】
ここで、第2実施形態では、p型GaNコンタクト層8上に、部分的に開口部を有するように、Pt電極層21が形成されている。Pt電極層21上には、下から、約20nmの厚みのPd層、約100nmの厚みのAu層および約200nmの厚みのNi層の3層構造からなるPd系電極層22が形成されている。このPd系電極層22の最下層のPd層は、Pt電極層21の開口部を介して、p型GaNコンタクト層8の上面に接触するように形成されている。これらのPt電極層21とPd系電極層22とによって、p側電極が構成されている。なお、Pt電極層21は、本発明の「第1電極層」の一例であり、Pd系電極層22は、本発明の「第2電極層」の一例である。
【0065】
また、Pd系電極層22の上面およびn型GaNコンタクト層4の露出された上面の一部を除く領域を覆うように、SiO2膜11が形成されている。Pd系電極層22の上面に接触するように、パッド電極12が形成されている。また、n型GaNコンタクト層4の露出された上面上には、n側電極13が形成されている。n側電極13上には、パッド電極14が形成されている。
【0066】
第2実施形態では、第1実施形態と同様、p型GaNコンタクト層8上に、部分的に開口部を有するように、p型GaNコンタクト層8に対する付着力の強い材料であるPtからなるPt電極層21を形成するとともに、そのPt電極層21上に、p型GaNコンタクト層8に対するコンタクト抵抗(界面エネルギ障壁)が低い材料であるPdを含むPd系電極層22を、p型GaNコンタクト層8に接触するように形成することによって、Pt電極層21によりp側電極のp型GaNコンタクト層8に対する付着力を強くすることができるとともに、Pd系電極層22のPd層により低いコンタクト抵抗を得ることができる。これにより、素子の信頼性を向上することができるとともに、動作電圧を低減することができる。
【0067】
図12〜図18は、図10に示した第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。以下、図10〜図18を参照して、第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
【0068】
まず、図12に示すように、MOCVD法を用いて、サファイア基板1上に、格子不整合を緩和するために、約600℃の温度条件下で、約15nmの厚みを有するAlGaN低温バッファ層2を低温成長させる。その後、MOCVD法を用いて、AlGaN低温バッファ層2上に、アンドープGaN層を約3μmの厚みで形成する。そして、アンドープGaN層3上に、MOCVD法を用いて、約5μmの厚みを有するn型GaNコンタクト層4、約1μmの厚みを有するn型AlGaNクラッド層5、約50nmの厚みを有するMQW発光層6、約300nmの厚みを有するp型AlGaNクラッド層7、および、約70nmの厚みを有するp型GaNコンタクト層8を順次形成する。
【0069】
そして、p型GaNコンタクト層8からn型GaNコンタクト層4の一部領域までを異方性ドライエッチングすることによって、図13に示すように、n型GaNコンタクト層4の一部領域を露出させる。
【0070】
次に、王水煮沸による洗浄を行った後、図14に示すように、EB蒸着法を用いて、約3nmの厚みを有するPt電極層21aと、約10nmの厚みを有するPd層22aを順次形成する。この場合、Pt電極層21aは、第1実施形態の膜厚(約1nm)に比べて大きな膜厚(約3nm)で形成されるため、この状態では、p型GaNコンタクト層8およびn型GaNコンタクト層4の上面上のほぼ全面が、不均一な膜厚のPt電極層21aによって覆われている。そして、リフトオフ法を用いて、Pd層22aの上のリッジ部が形成される領域に対応する領域に、下から、約10nmの厚みのPd層、約100nmの厚みのAu層および約200nmの厚みのNi層の3層構造の積層膜22bを約2μm幅のストライプ状に形成する。
【0071】
そして、積層膜22bの最上層のNi層をエッチングマスクとして、Pd層22a、Pt電極層21aおよびp型GaNコンタクト層8を、CF4ガスを用いた異方性ドライエッチングによりエッチングした後、さらに、p型AlGaNクラッド層7も約150nmの厚み分だけエッチングする。これにより、図15に示されるようなリッジ部が形成される。また、Pt電極層21aと、下からPd層(約20nm)/Au層(約100nm)/Ni層(約200nm)が順次積層されたPd系電極層22とが形成される。
【0072】
次に、図16に示すように、プラズマCVD法を用いて、全面にSiO2膜11を形成した後、n型GaNコンタクト層4上の一部上に位置するSiO2膜11を除去する。そして、そのSiO2膜11を除去した部分のn型GaNコンタクト層4上に、n側電極13を形成する。
【0073】
次に、図17に示すように、Pd系電極層22の上面上のSiO2膜11を除去した後、Pd系電極層22の上面に接触するようにパッド電極12を形成するとともに、n側電極13の上面に接触するようにパッド電極14を形成する。
【0074】
次に、図18に示すように、p側のパッド電極12と、n側のパッド電極14との間に、約0.6Aの電流を印加することによって、p側電極(Pt電極層21a)と、p型GaNコンタクト層8との接触面での電流密度を30kA/cm2にする。そして、約5秒間保持する。ただし、共振器長は1mmとする。この場合、上記の電流密度30kA/cm2は、以下の式(1)によって求められる。
【0075】
0.6A/(1mm×リッジ部幅2μm)=30kA/cm2 ・・・(1)
なお、上記の電流密度30kA/cm2は、動作時の電流密度(5kA/cm2程度)より大きく、かつ、素子許容電流密度である100kA/cm2以下である必要がある。特に、電流密度は、20kA/cm2〜40kA/cm2の範囲が効果的である。この点を考慮して、第2実施形態では、30kA/cm2としている。上記のような電流の印加によって、Pt電極層21aとPd系電極層22のPd層との間において、Pd層中のPdがマイグレーション効果によってPt側に移動することにより、Pd層中のPdの一部が、p型GaNコンタクト層8の表面に到達する。このため、p型GaNコンタクト層8上の所定領域のほぼ全面を覆うように形成されていたPt電極層21a(図17参照)は、p型GaNコンタクト層8の上の所定領域に部分的に形成された開口部を有するPt電極層21(図18、図11参照)となる。
【0076】
第2実施形態では、上記のように、p側電極とn側電極との間に電流を印加することによって、Pd系電極層22中のPdをp型GaNコンタクト層8の表面に到達させることにより、Pt電極層21による付着力を損なうことなく、Pdの低コンタクト性を確実に発揮させることができる。
【0077】
(第3実施形態)
図19は、本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図20は、図19に示した第3実施形態のp側電極周辺の拡大断面図である。また、図21は、図19に示した第3実施形態の窒化物系半導体レーザ素子のPt電極層の構造を説明するための平面図である。この第3実施形態では、p型GaNコンタクト層とPt電極層との間に、p型InGaNコンタクト層を設けた例について説明する。
【0078】
この第3実施形態の窒化物系半導体レーザ素子では、第1実施形態と同様、図19に示すように、サファイア基板1上に、約15nmの厚みを有するAlGaN低温バッファ層2、約3μmの厚みを有するアンドープGaN層3、約5μmの厚みを有するn型GaNコンタクト層4、約1μmの厚みを有するn型AlGaNクラッド層6、約50nmの厚みを有するMQW発光層6、約300nmの厚みを有するp型AlGaNクラッド層7、および、約70nmの厚みを有するp型GaNコンタクト層8が順次形成されている。
【0079】
ここで、この第3実施形態では、図20に示すように、リッジ部を構成するp型GaNコンタクト層8上に、約3nmの厚みを有するp型InGaNコンタクト層31が形成されている。このp型InGaNコンタクト層31のIn組成は、15%である。このように膜厚が薄く、かつ、In組成の高いp型InGaNコンタクト層31の表面は、図20に示すように、多数の凹凸形状を有する形状になる。このようなp型InGaNコンタクト層31上に、約10nmの厚みを有する平面的に見て格子状(図21参照)にパターニングされたPt電極層32が形成されている。そのPt電極層32上には、下から、約10nmの厚みのPd層、約100nmの厚みのAu層および約200nmの厚みのNi層の積層膜からなるPd系電極層33が形成されている。Pt電極層32とPd系電極層33とによって、p側電極が構成されている。なお、Pt電極層32は、本発明の「第1電極層」の一例であり、Pd系電極層33は、本発明の「第2電極層」の一例である。
【0080】
Pd系電極層33の上面およびn型GaNコンタクト層4の上面の一部以外の領域を覆うように、SiO2膜11が形成されている。Pd系電極層33に接触するように、パッド電極12が形成されている。また、n型GaNコンタクト層4の露出された表面上に接触するように、n側電極13が形成されている。n側電極13の上面に接触するように、パッド電極14が形成されている。
【0081】
第3実施形態では、上記のように、p型GaNコンタクト層8上に、厚みが薄く(3nm)、かつ、In組成の高い(15%)p型InGaNコンタクト層31を形成することによって、p型InGaNコンタクト層31の表面の凹凸を増加させることができる。これにより、p型InGaNコンタクト層31と、Pt電極層32およびPd系電極層33との接触面積を増加させることができるので、p型GaNコンタクト層8上にPt電極層32を介してPd系電極層33を形成する場合よりもp型GaNコンタクト層8とPd系電極層33との接触面積の減少を抑制することができる。その結果、接触抵抗を安定的に低下させることができるとともに、Pt電極層32とp型InGaNコンタクト層31との付着力をp型GaNコンタクト層8上にPt電極層32を介してPd系電極層33を形成する場合よりもさらに向上させることができる。
【0082】
なお、この第3実施形態においても、第1および第2実施形態と同様、付着力の強いPt電極層32を設けるとともに、そのPt電極層32上に、コンタクト抵抗(界面エネルギ障壁)が低いPd層を含むPd系電極層33を設けることによって、Pt電極層32によりp側電極全体の付着力を強くすることができるとともに、Pd系電極層33のPd層により低いコンタクト抵抗値を得ることができる。
【0083】
図22〜図26は、図19に示した第3実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。以下、図19〜図26を参照して、第3実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスについて説明する。
【0084】
まず、図22に示すように、MOCVD法を用いて、サファイア基板1上に、格子不整合を緩和するために、約600℃の温度条件下で、約15nmの厚みを有するAlGaN低温バッファ層2を形成する。そして、そのAlGaN低温バッファ層2上に、MOCVD法を用いて、約3μmの厚みを有するアンドープGaN層3を形成する。その後、アンドープGaN層3上に、MOCVD法を用いて、約5μmの厚みを有するn型GaNコンタクト層4、約1μmの厚みを有するn型AlGaNクラッド層5、約50nmの厚みを有するMQW発光層6、約300nmの厚みを有するp型AlGaNクラッド層7、および、約70nmの厚みを有するp型GaNコンタクト層8を順次形成する。さらに、MOCVD法を用いて、p型GaNコンタクト層8上に、In組成が15%の約3nmの厚みを有するp型InGaNコンタクト層31を形成する。
【0085】
次に、p型InGaNコンタクト層31からn型GaNコンタクト層4の領域の一部までを異方性ドライエッチングすることによって、図23に示すように、n型GaNコンタクト層4の一部領域を露出させる。
【0086】
次に、約0.5μm×約0.5μmの大きさの格子状にレジストパターン(図示せず)を形成した後、p型InGaNコンタクト層31上およびレジストパターン(図示せず)上に、EB蒸着法を用いて、Pt膜(図示せず)を約10nmの厚みで形成する。その後、レジストパターン(図示せず)を除去することにより、図24(図21)に示すような、格子状にパターニングされたPt電極層32が形成される。その後、リフトオフ法を用いて、Pt電極層32上のリッジ部が形成される領域に対応する領域に、下から、約10nmの厚みのPd層、約100nmの厚みのAu層および約200nmの厚みのNi層の3層構造のPd系電極層33を約2μmの幅のストライプ状に形成する。その後、窒素雰囲気中で、約400℃に昇温することにより、熱処理を行う。
【0087】
ここで、図27には、PtおよびPdの熱処理温度と接触抵抗との関係が示されている。図27から明らかなように、約400℃の温度で熱処理を行うと、Pdの接触抵抗は低減される。また、約400℃の温度で熱処理を行う場合、Ptの接触抵抗は、大きく増加することはない。したがって、第3実施形態では、接触抵抗を低減するために、約400℃の温度で熱処理を行う。
【0088】
そして、Pd系電極層33の最上層のNi層をエッチングマスクとして、CF4ガスを用いた異方性エッチングにより、Pd系電極層33、Pt電極層32、p型InGaNコンタクト層31およびp型GaNコンタクト層8をエッチングするとともに、p型AlGaNクラッド層7を約150nmの厚み分だけエッチングする。これにより、図25に示されるような、リッジ部が形成される。
【0089】
次に、図26に示すように、プラズマCVD法を用いて、SiO2膜11を堆積した後、n型GaNコンタクト層4上の一部上に位置するSiO2膜11を除去する。そして、そのSiO2膜11を除去した部分のn型GaNコンタクト層4上に、n側電極13を形成する。
【0090】
最後に、図19に示したように、Pd系電極層33の上面上に位置するSiO2膜11を除去した後、Pd系電極層33上およびn側電極13上に、それぞれ、パッド電極12および14を形成する。
【0091】
このようにして、第3実施形態の窒化物系半導体レーザ素子が形成される。
【0092】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0094】
また、上記実施形態では、窒化物系半導体発光素子の一例として、窒化物系半導体レーザ素子(LD)の構造および作製方法を示したが、本発明はこれに限らず、窒化物系半導体発光ダイオード素子(LED)のような他の窒化物系半導体発光素子の構造および作製方法にも同様に適用可能である。
【0095】
また、上記実施形態では、窒化物系半導体レーザ素子の表面側にp側電極とn側電極との両方が設けられる場合の構造を示したが、本発明はこれに限らず、窒化物系半導体レーザ素子の表面側にp側電極が設けられるとともに、裏面側にn側電極が設けられる場合の構造にも同様に適用可能である。この場合には、基板として、絶縁性のサファイア基板に代えて、導電性のGaN基板などを用いればよい。
【0096】
また、上記第1実施形態では、窒化物系半導体レーザ素子をジャンクションダウン方式で組み立てる例を示したが、本発明はこれに限らず、ジャンクションアップ方式で組み立てる場合にも同様に適用可能である。
【0097】
また、第3実施形態では、In組成が15%で3nmの厚みを有するp型InGaN層31を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、3%以上のIn組成と、20nm以下の厚みとを有するp型InGaN層であれば、表面を凹凸形状にすることができるので、同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、上記実施形態では、p側のコンタクト層として、p型GaNコンタクト層を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、p側コンタクト層として、アンドープのコンタクト層を用いてもよい。
【0099】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、低コンタクト性を損なうことなく、電極層全体の窒化物系半導体層に対する付着力を強くすることができるので、低動作電圧で、かつ、信頼性の高い窒化物系半導体発光素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子のp側電極周辺の拡大断面図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の効果を説明するための特性図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図7】図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図8】図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図9】図1に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子をジャンクションダウン方式でサブマウントに取り付けた状態を示した斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。
【図11】図10に示した第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子のp側電極周辺の拡大断面図である。
【図12】図10に示した第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図13】図10に示した第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図14】図10に示した第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図15】図10に示した第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図16】図10に示した第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図17】図10に示した第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図18】図10に示した第2実施形態の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図19】本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。
【図20】図19に示した第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子のp側電極部分の拡大断面図である。
【図21】図19に示した第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子のPt電極層の構造を説明するための平面図である。
【図22】図19に示した第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図23】図19に示した第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図24】図19に示した第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図25】図19に示した第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図26】図19に示した第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図27】図19に示した第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の効果を説明するための特性図である。
【図28】従来の窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。
【図29】図28に示した従来の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図30】図28に示した従来の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図31】図28に示した従来の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図32】図28に示した従来の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図33】図28に示した従来の窒化物系半導体レーザ素子の製造プロセスを説明するための断面図である。
【図34】図28に示した従来の窒化物系半導体レーザ素子をジャンクションアップ方式でサブマウントに取り付けた状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
6 MQW発光層(活性層)
8 p型GaNコンタクト層(窒化物系半導体層)
9、21、32 Pt電極層(第1電極層)
10、22、33 Pd系電極層(第2電極層)
31 p型InGaNコンタクト層(窒化物系半導体層)
Claims (16)
- 活性層上に形成されたp側のコンタクト層としての窒化物系半導体層と、
前記窒化物系半導体層上に部分的に形成された電極層とを備え、
前記電極層は、
Ptを含む第1電極層と、
前記第1電極層上に、前記窒化物系半導体層の表面と接触する部分を有するように形成され、Pdを含む第2電極層とを備えた、窒化物系半導体発光素子。 - 前記第1電極層は、前記窒化物系半導体層上に、不均一な分布で、部分的に形成されている、請求項1に記載の窒化物系半導体発光素子。
- 前記第1電極層は、前記窒化物系半導体層上に、3nm以下の膜厚で形成されている、請求項2に記載の窒化物系半導体発光素子。
- 前記第1電極層は、パターニングによって形成されている、請求項1に記載の窒化物系半導体発光素子。
- 前記窒化物系半導体層は、凹凸形状の表面を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。
- 前記凹凸形状の表面を有する窒化物系半導体層は、3%以上のIn組成と、20nm以下の膜厚とを有する、請求項5に記載の窒化物系半導体発光素子。
- 前記窒化物系半導体層は、クラッド層の凸部上に形成されたコンタクト層を含み、
前記クラッド層の凸部と、前記コンタクト層とによってリッジ部が構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子。 - 活性層上にp側のコンタクト層としての窒化物系半導体層を形成する工程と、
前記窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、Ptを含む第1電極層を形成する工程と、
前記第1電極層上に、前記窒化物系半導体層の表面と接触する部分を有するように、Pdを含む第2電極層を形成する工程とを備えた、窒化物系半導体発光素子の形成方法。 - 前記窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、前記第1電極層を形成する工程は、
前記窒化物系半導体層の表面上に、部分的に開口部が形成されるような薄い厚みで前記第1電極層を形成する工程を含む、請求項8に記載の窒化物系半導体発光素子の形成方法。 - 前記窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、前記第1電極層を形成する工程は、
前記窒化物系半導体層の表面上に、前記第1電極層および前記第2電極層を形成した後、前記第2電極層と前記窒化物系半導体層との間に、電流を流すことによって、前記第2電極層の一部を前記窒化物系半導体層の表面に接触するように移動させる工程を含む、請求項8に記載の窒化物系半導体発光素子の形成方法。 - 前記窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、前記第1電極層を形成する工程は、
前記窒化物系半導体層の表面上に、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターン上に、前記第1電極層を形成した後、前記レジストパターンを除去することによって、前記第1電極層をパターニングする工程とを含む、請求項8に記載の窒化物系半導体発光素子の形成方法。 - 前記窒化物系半導体層の表面上に、部分的に、前記第1電極層を形成する工程は、
前記窒化物系半導体層の表面上に、第1電極層を形成した後、前記第1電極層上に、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンをマスクとして、前記第1電極層をエッチングすることによって、前記第1電極層をパターニングする工程とを含む、請求項8に記載の窒化物系半導体発光素子の形成方法。 - 前記第1電極層を形成する工程は、
前記第1電極層をパターニングすることによって、平面的に見て、格子状の前記第1電極層を形成する工程を含む、請求項11または12に記載の窒化物系半導体発光素子の形成方法。 - 前記第2電極層を形成する工程は、
前記第1電極層上に前記第2電極層を形成した後、熱処理を行う工程を含む、請求項8〜13のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の形成方法。 - 前記窒化物系半導体層は、クラッド層上に形成されたコンタクト層を含み、
前記第2電極層を形成する工程は、
リフトオフ法を用いて、前記第1電極層の上面上の所定領域に前記第2電極層を形成する工程を含み、
前記第2電極層を形成した後、前記第2電極層をマスクとして、前記第1電極層、前記コンタクト層および前記クラッド層の一部をエッチングすることによって、リッジ部を形成する工程をさらに備える、請求項8〜14のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の形成方法。 - 前記窒化物系半導体層を形成する工程は、
凹凸形状の表面を有する前記窒化物系半導体層を形成する工程を含む、請求項8〜15のいずれか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の形成方法。
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