JP4044625B2 - 内燃機関の燃焼制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の気筒を有する内燃機関の燃焼制御装置に係り、詳しくは、少なくとも1つの気筒において、いわゆるアトキンソンサイクルが採用されうる内燃機関の燃焼制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、内燃機関のピストンは、気筒(シリンダボア)内を上下動し、当該気筒内での挙動は、吸入、圧縮、燃焼、膨張、排気といった一連のサイクルで表現される。従来から知られている燃焼サイクルとしては、オットーサイクルと称されるものが挙げられる。このオットーサイクルにおいては、シリンダボア内の容積(v)とシリンダボア内の圧力(p)との関係は、図7に示すようなp−v線図(但し、同図はあくまでも模式的なもの)として表すことができる。このオットーサイクルは、膨張比と圧縮比とがほぼ等しい関係にある点に特徴を有している。
【0003】
かかるオットーサイクルにおいて、熱効率を上昇させようとする場合には、圧縮比(≒膨張比)を高めることが考えられるが、単に圧縮比を高めるだけでは、ノッキングという問題が起こってしまう。このため、単に圧縮比を高めるにも限界があった。
【0004】
上記の欠点を有するオットーサイクルに対し、例えば、SAE Technical Paper Series No. 910451等においては、アトキンソンサイクルと称される技術(場合によってはミラーサイクルとも称される)が開示されている。このアトキンソンサイクルにおいては、膨張比を大きくとった上で吸気弁の閉タイミングを変えることにより、実圧縮比を下げるようにしている。通常は、吸気弁の閉タイミングを吸気下死点よりも遅くすることで、実圧縮比が下げられる(勿論、早閉じの場合でも実圧縮比は下げられる)。当該遅閉じタイプのアトキンソンサイクルにおいては、シリンダボア内の容積(v)とシリンダボア内の圧力(p)との関係は、例えば図8に示すようなp−v線図(但し、同図もあくまでも模式的なもの)として表すことができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来技術では、熱効率を高め、燃費の向上を図ることができるものの、実圧縮比を高く設定できない。このため、実圧縮比を下げざるをえない分、内燃機関の出力が低下してしまい、高負荷時には、要求される出力が得られないという事態が生じていた。
【0006】
これに対し、上記アトキンソンサイクルにおいて、リショルムコンプレッサ及びインタークーラー等を用い、過給的に吸気を送りこみ、もって実圧縮比の低下に伴う出力の低下分を補うという技術も知られている。しかしながら、かかる手法を採用すると、システム自体が著しく高価なものとなってしまい、コストの高騰を招くおそれがあった。また、これらリショルムコンプレッサ、インタークーラー等の搭載により却って燃費が悪化してしまい、当初のアトキンソンサイクルを採用するメリットが低下してしまうおそれもあった。
【0007】
本発明は前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、燃費の向上及び高負荷時における出力の低下抑制を共に満足させることができ、もって運転者の要求する運転性能を確保することのできる内燃機関の燃焼制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明においては、内部にピストンを備えた複数の気筒を有する内燃機関の燃焼制御装置において、一部のみの気筒における実圧縮比を膨張比よりも小さくなるようにし、それ以外の気筒における実圧縮比を膨張比とほぼ等しくなるようにする気筒別実圧縮比制御手段と、前記一部のみの気筒に対応してそれ以外の気筒に対応する吸気通路よりも長く且つ通路面積が小さく設定された吸気通路とを備えたことをその要旨としている。
【0009】
本発明によれば、気筒別実圧縮比制御手段により、一部のみの気筒における実圧縮比が膨張比よりも小さくなるよう制御され(アトキンソンサイクル)、それ以外の気筒における実圧縮比を膨張比とほぼ等しくなるように制御される(オットーサイクル)。従って、負荷が低負荷域にあるときには、アトキンソンサイクル特有の作用を確保することができるとともに、負荷が高負荷域にあるときには、オットーサイクル特有の作用を確保することができる。
さらに、一部のみの気筒に対応する吸気通路を、それ以外の気筒のそれに比べ、長く、かつ、細く設定するようにした。そのため、一部のみの気筒以外の気筒においては、高回転時においてより適切な対応を図ることができ、一部のみの気筒においては、低回転時においてより適切な対応を図ることができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記内燃機関の負荷が低負荷域にあるとき、前記一部のみの気筒以外の気筒において燃料カットを実行することをその要旨としている。
上記構成によれば、内燃機関の負荷が低負荷域にあるとき、一部のみの気筒以外の気筒において燃料カットが実行される。このため、より一層の燃費の向上を図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明における内燃機関の燃焼制御装置を具体化した第1の実施の形態を図1〜図3に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1は本実施の形態における、車両に搭載されたエンジンの燃焼制御装置を示す概略構成図であり、図2は、燃焼制御装置の1つの気筒に着目した概略構成図である。これらの図に示すように、複数の気筒(本実施の形態では4気筒)を有する内燃機関としてのエンジン1には、吸気通路2を介してエアクリーナ3から外気が取り込まれる。また、その外気の取り込みと同時に、エンジン1にはその吸入ポート1aの近傍にて各気筒♯1,♯2,♯3,♯4毎に設けられたインジェクタ4から噴射される燃料が取り込まれる。そして、その取り込まれた燃料と外部空気との混合気が各気筒♯1〜♯4毎に設けられた吸気バルブ5aを介して燃焼室1bへ導入される。その混合気が燃焼室1b内にて爆発・燃焼され、図示しないクランク軸が回転されて車両に駆動力が得られる。その後、爆発・燃焼後の排気ガスが排気バルブ5bを介して各気筒毎の排気マニホールドが集合する排気通路6へと導出され、外部へ排出される。
【0018】
また、吸気通路2の途中には、図示しないアクセルペダルに連動して開閉されるスロットルバルブ8が設けられている。そして、このスロットルバルブ8が開閉されることにより、吸気通路2への吸入空気量が調節される。また、そのスロットルバルブ8の下流側には、吸入空気の脈動を平滑化させるサージタンク9が設けられている。
【0019】
吸気通路2において、エアクリーナ3の近傍には、吸気温THAを検出するための吸気温センサ21が設けられている。また、スロットルバルブ8の近傍には、その開度、すなわちスロットル開度TAを検出するスロットルセンサ22が設けられている。さらに、サージタンク9には、同タンク9に連通して吸入圧力(吸気圧)PiMを検出する負荷検出手段としての吸気圧センサ23が設けられている。
【0020】
一方、排気通路6の途中には、排気ガス中の主として3つの有害な成分、すなわち、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を同時に浄化する触媒装置としての三元触媒13が設けられている。また、排気通路6の途中の三元触媒13よりも上流側においては、排気中の酸素濃度OXを検出するための酸素センサ24が設けられている。
【0021】
また、エンジン1には、その冷却水の温度(冷却水温)THWを検出するための水温センサ25が設けられている。
エンジン1の各気筒♯1〜♯4毎に設けられた点火プラグ10には、ディストリビュータ11にて分配された点火信号が印加される。ディストリビュータ11はイグナイタ12から出力される高電圧をエンジン1のクランク角に同期して各点火プラグ10に分配するためのものであり、各点火プラグ10の点火タイミングはイグナイタ12からの高電圧出力タイミングにより決定される。
【0022】
ディストリビュータ11には、同ディストリビュータ11の図示しないロータの回転からエンジン1の回転数(エンジン回転数)NEを検出する回転数センサ26が取付けられている。また、同じくディストリビュータ11には、ロータの回転に応じてエンジン1のクランク角の変化を所定の割合で検出するクランク角センサ27が取付けられている。さらに、図示しないトランスミッションには、車両速度(車速)SPDを検出してその検出値の大きさに応じた信号を出力する車速センサ28が設けられている。
【0023】
また、本実施の形態では、電子制御装置(以下単に「ECU」という)30が設けられている。このECU30には、上記した吸気温センサ21、スロットルセンサ22、吸気圧センサ23、酸素センサ24、水温センサ25、回転数センサ26、クランク角センサ27及び車速センサ28がそれぞれ接続されている。また、ECU30には、インジェクタ4及びイグナイタ12等がそれぞれ接続されている。ECU30は、中央処理装置(CPU)、所定の制御プログラム等を予め記憶した読み出し専用メモリ(ROM)、CPUの演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)、予め記憶されたデータを保存するバックアップRAM等を備えている。また、ECU30は、これら各部と外部入力回路、外部出力回路等とをバスによって接続してなる論理演算回路として構成されている。そして、ECU30は、上記各センサ21〜28からの検出信号に基づき、インジェクタ4及びイグナイタ12等を駆動制御するようになっている。
【0024】
次に、本実施の形態における構成上の特徴部分について説明する。
まず、第1に本実施の形態における4つの気筒♯1〜♯4のうち、2つの気筒♯2,♯3については、通常のオットーサイクルが採用されている。また、他の2つの気筒♯1,♯4については、いわゆるアトキンソンサイクルが採用されている。すなわち、前者の2つの気筒♯2,♯3に設けられた吸気バルブ5aは、図3において実線で示すように、通常のタイミングで開閉される。これに対し、アトキンソンサイクルの採用された他の2つの気筒♯1,♯4に設けられた吸気バルブ5aは、図3において2点鎖線で示すように、通常の場合よりも遅れたタイミングで開かれ、遅れたタイミングで閉じられるようカムプロフィールが設定されている。このように、吸気バルブ5aの閉タイミングが吸気下死点よりも遅く設定されることで、実圧縮比が下げられる。従って、当該他の2つの気筒♯1,♯4における燃焼室1b内の容積(v)と圧力(p)との関係は、図8に示すようなp−v線図として表すことができる。
【0025】
これとともに、前者の2つの気筒♯2,♯3に比べ、他の2つの気筒♯1,♯4は、ピストン、コンロッド、シリンダヘッド等の調整により、膨張比が大きくなるよう設定されている。例えば、本実施の形態では、前者の2つの気筒♯2,♯3の膨張比は「8〜13」に、実圧縮比は「8〜13」に設定されており、膨張比に対する実圧縮比の比率は「1.00」となっている。これに対し、他の2つの気筒♯1,♯4の膨張比は「14〜18」に、実圧縮比は「8〜13」に設定されており、膨張比に対する実圧縮比の比率は「1.08〜2.25」となっている。本実施の形態では、上記カムプロフィール等により、実圧縮比調整手段が構成されている。
【0026】
また、第2に、図1に示すように、他の2つの気筒♯1,♯4に対応する吸気通路2(吸気管)は、前者の2つの気筒♯2,♯3のそれに比べ、長く、かつ、細く(通路面積が小さく)設定されている。このように、気筒♯2,♯3においては、吸気管が、短く、かつ、太く設定されていることにより、高回転数に対応できるようになっている。
【0027】
次に、上記のように構成されてなる本実施の形態の作用及び効果について説明する。
上記実施の形態によれば、エンジン1の負荷が低負荷域にあるとき、前記他の2つの気筒♯1,♯4における実圧縮比が膨張比よりも小さくなっている(アトキンソンサイクル)。このため、少なくとも当該気筒♯1,♯4においては、熱効率が高められ、総合的には燃費の向上が図られうる。
【0028】
また、負荷が高負荷域にあるとき、前者の2つの気筒♯2,♯3における実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなっている。すなわち、高負荷域においては、少なくともアトキンソンサイクルの採用されていない気筒♯2,♯3においては、通常の燃焼状態(オットーサイクル)が確保されることになる。従って、要求されるある程度の出力は確保することができる。その結果、燃費の向上及び高負荷時における出力の低下抑制を共に満足させることができ、もって運転者の要求する運転性能を確保することができる。
【0029】
さらに、上記実施の形態では、別途リショルムコンプレッサ、インタークーラー等を搭載せずとも、簡易な構成でもって上記効果を奏せしめることができる。そのため、上記装置の搭載により却って燃費が悪化したり、コストの増大を招いたりするのを抑制することができる。
【0030】
併せて、上記実施の形態では、他の2つの気筒♯1,♯4に対応する吸気通路2(吸気管)を、前者の2つの気筒♯2,♯3のそれに比べ、長く、かつ、細く設定するようにした。そのため、気筒♯2,♯3においては、高回転時においてより適切な対応を図ることができ、他の2つの気筒♯1,♯4においては、低回転時においてより適切な対応を図ることができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態について説明する。但し、本実施の形態の構成等においては上述した第1の実施の形態とほぼ同等であるため、同一の部材等については同一の符号を付してその説明を省略する。そして、以下には、第1の実施の形態との相違点を中心として説明することとする。
【0032】
まず、本実施の形態では、上記第1の実施の形態では説明しなかったが、図1に示すように、前記前者の2つの気筒♯2,♯3に対応する吸気通路2(吸気管)内には、開閉式の吸気制御弁13が設けられている。これら吸気制御弁13は、アクチェエータ14によって開閉駆動される。当該吸気制御弁13及びアクチュエータ14は、可変吸気システムを構成するものであって、当該吸気制御弁13が開閉されることによって、吸気通路2内の通路面積が変更されるようになっている。例えば中速域では、通路面積が幾分小さく設定され、これにより吸気流速が高く保持され、吸気脈動が有効に利用されるようになっている。
【0033】
また、本実施の形態では、エンジン1の負荷に応じて、燃料の噴射量の制御(インジェクタ4の制御)が実行されるようになっているとともに、上記吸気制御弁13の制御が実行されるようになっている。
【0034】
以下には、これらの制御内容について図4に示すフローチャートに従って説明することとする。図4は、上述したECU30によって実行される「燃焼制御ルーチン」を示すフローチャートであって、本ルーチンは所定時間毎の定時割り込みで実行される。
【0035】
処理がこのルーチンへ移行すると、ECU30は、まずステップ101において、各センサ21〜28からエンジン負荷に相当する吸気圧PiMをはじめとした各種信号を読み込む。
【0036】
次に、ステップ102において、今回読み込んだ吸気圧PiMに基づき、現在の運転状態が低負荷域にあるか否かを判断する。そして、低負荷域にあると判断した場合には、ステップ103へ移行する。ステップ103においては、今回読み込んだエンジン回転数NE、スロットル開度TA等の各種信号に基づき、他の2つの気筒♯1,♯4に対応する燃料噴射量TAU♯1,TAU♯4をそれぞれ算出する。また、これとともに、前者の2つの気筒♯2,♯3に対応する燃料噴射量TAU♯2,TAU♯3を共に「0」とする。つまり、前者の2つの気筒♯2,♯3においては燃料カットが実行される。
【0037】
さらに、ステップ104においては、前者の2つの気筒♯2,♯3に対応して設けられた吸気制御弁13を全閉とし、その後の制御を一旦終了する。
また、前記ステップ102において、現在の運転状態が低負荷域にないと判断した場合には、ステップ105へ移行する。ステップ105においては、今回読み込んだ吸気圧PiMに基づき、現在の運転状態が中負荷域にあるか否かを判断する。そして、中負荷域にあると判断した場合には、ステップ106へ移行する。ステップ106においては、今回読み込んだエンジン回転数NE、スロットル開度TA等の各種信号に基づき、全ての気筒♯1〜♯4に対応する燃料噴射量TAU♯1〜TAU♯4をそれぞれ算出する。
【0038】
さらに、ステップ107においては、前記吸気制御弁13を半開制御(別途のルーチンで目標開度が算出され、当該目標開度に基づき半開制御が実行される)し、その後の制御を一旦終了する。
【0039】
これに対し、ステップ105において、現在の運転状態が中負荷域にないと判断した場合には、現在の運転状態が高負荷域にあるものとしてステップ108へ移行する。ステップ108においては、今回読み込んだエンジン回転数NE、スロットル開度TA等の各種信号に基づき、全ての気筒♯1〜♯4に対応する燃料噴射量TAU♯1〜TAU♯4をそれぞれ算出する。
【0040】
さらに、ステップ109においては、前記吸気制御弁13を全開とし、その後の制御を一旦終了する。
このように、上記「燃焼制御ルーチン」においては、そのときどきの負荷状態に応じて気筒♯1〜♯4毎に燃料噴射量TAU♯1〜TAU♯4が設定されるとともに、吸気制御弁13の開度制御が実行される。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態においても上述した第1の実施の形態とほぼ同等の作用効果を奏する。また、本実施の形態では、上記作用効果に加えて、えて、エンジン1の負荷が、低負荷域にある場合には、前者の2つの気筒♯2,♯3において燃料カットが実行される。このため、より一層の燃費の向上を図ることができる。
【0042】
また、エンジン1の負荷が、中負荷域にあるときには、前者の2つの気筒♯2,♯3に関しては、吸気制御弁13が半開状態で制御される。このため、中負荷、中速域では、吸気通路2の通路面積が高負荷よりも幾分小さく設定され、これにより、吸気流速が高く保持され、吸気脈動が有効に利用される。従って、所定の出力を確保した上で、燃費のさらなる向上を図ることができる。
【0043】
(第3の実施の形態)
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態について説明する。但し、本実施の形態の構成等においては上述した第1、第2の実施の形態と同一の部材等については同一の符号を付してその説明を省略する。そして、以下には、上記各実施の形態との相違点を中心として説明することとする。
【0044】
まず、本実施の形態では、前者の2つの気筒♯2,♯3に対応して設けられた吸気バルブ5aの閉タイミングを制御するために、第1の実施の形態で説明したカムプロフィールの変更により閉タイミングを変更するのではなく、公知の可変バルブタイミング機構が設けられている。より詳しく説明すると、吸気バルブ5a及び排気バルブ5bを開閉駆動する図示しない吸気側カムシャフト及び排気側カムシャフトは、それぞれシリンダヘッドとベアリングキャップ(いずれも図示せず)との間で回転可能に支持されている。そして、吸気バルブ5a及び排気バルブ5bは、前記各カムシャフトの回転により、図示しないカムを介して開閉動作される。また、各カムシャフトの一端にそれぞれ設けられたタイミングプーリは、タイミングベルトを介してクランクシャフトに駆動連結されている。
【0045】
従って、エンジン1の運転時には、クランクシャフトからタイミングベルト及び各タイミングプーリを介して各カムシャフトに回転動力が伝達され、吸気バルブ5a及び排気バルブ5bが開閉駆動される。また、これら吸気バルブ5a及び排気バルブ5bは、クランクシャフトの回転に同期して、すなわち吸気行程、圧縮行程、爆発・膨張行程及び排気行程の一連の四行程に同期して、所定の開閉タイミングで駆動される。
【0046】
そして、前記可変バルブタイミング機構(以下、VVTとする)は、前記他の2つの気筒♯1,♯4に対応する吸気側カムシャフトと吸気側タイミングプーリとの間に介在され、他の2つの気筒♯1,♯4の吸気バルブ5aの開閉タイミングを変更する。なお、上記VVTは、例えば、電磁制御式のオイルコントロールバルブ(以下、OCVとする)のデューティ制御により駆動される。
【0047】
これに対し、前者の2つの気筒♯2,♯3に対応する吸気バルブ5aについては、可変バルブタイミング制御は実行されない。このため、吸気側カムシャフトも、他の2つの気筒♯1,♯4に対応する吸気側カムシャフトとは別物となっている。
【0048】
次に、上記のように構成されてなる本実施の形態の特有の作用等について説明する。
本実施の形態においても、ECU30により、現在の運転状態が低負荷域にあるか否かが判断される。そして、低負荷域にあると判断されたならば、ECU30によってOCVが制御され、VVTが制御される。当該遅角制御が行われることにより、他の2つの気筒♯1,♯4に対応する吸気バルブ5aの閉タイミングが遅らされる。このため、当該他の2つの気筒♯1,♯4における実圧縮比が膨張比よりも小さくなり、少なくとも当該気筒♯1,♯4においては、熱効率が高められ、総合的には燃費の向上が図られうる。
【0049】
また、負荷が高負荷域にあるとき、VVTが進角側に制御される。当該進角制御が行われることにより、他の2つの気筒♯1,♯4に対応する吸気バルブ5aの閉タイミングが、前者の2つの気筒♯2,♯3に対応する吸気バルブ5aの閉タイミングと同等に早められる。すなわち、高負荷域においては、全ての気筒♯1〜♯4において、通常の燃焼状態(オットーサイクル)が確保されることになる。従って、要求される出力を十分に確保することができる。その結果、燃費の向上及び高負荷時における出力の低下抑制を共に満足させることができ、もって運転者の要求する運転性能を確保することができる。
【0050】
(第4の実施の形態)
次に、本発明を具体化した第4の実施の形態について説明する。但し、本実施の形態の構成等においては上述した第1〜第3の実施の形態と同一の部材等については同一の符号を付してその説明を省略する。そして、以下には、上記各実施の形態との相違点を中心として説明することとする。
【0051】
まず、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態とは異なり、全ての気筒♯1〜♯4において同一の構成が採用されており、以下に記す制御内容は、全ての気筒♯1〜♯4において一律に実行される。
【0052】
また、図5に示すように、エンジン1のシリンダヘッド1cには、副燃焼室15が形成されている。さらに、シリンダヘッド1cには、この副燃焼室15の開口部分を開閉するための副燃焼室バルブ16が設けられている。この副燃焼室バルブ16は、アクチュエータ17によって開閉され、当該アクチュエータ17には、ECU30からの制御信号に基づき作動する。本実施の形態においては、上記副燃焼室バルブ16が開閉されることにより、副燃焼室15と燃焼室1bとの間が連通されたりされなかったりする。そして、この連通の有無によって実質的な燃焼室容積が可変とされ、ひいては実圧縮比が可変とされるようになっている。
【0053】
すなわち、本実施の形態では、エンジン1の負荷に応じて、副燃焼室バルブ16の開閉による実圧縮比の制御が実行されるようになっている。以下には、当該制御内容について図6に示すフローチャートに従って説明することとする。図6は、上述したECU30によって実行される「燃焼制御ルーチン」を示すフローチャートであって、本ルーチンは所定時間毎の定時割り込みで実行される。
【0054】
処理がこのルーチンへ移行すると、ECU30は、まずステップ301において、各センサ21〜28からエンジン負荷に相当する吸気圧PiMをはじめとした各種信号を読み込む。
【0055】
次に、ステップ302において、今回読み込んだ吸気圧PiMに基づき、現在の運転状態が低負荷域にあるか否かを判断する。そして、低負荷域にないと判断した場合には、ステップ303へ移行する。ステップ303においては、通常の燃焼(オットーサイクル)を実行するべく、副燃焼室バルブ16を閉じるべくアクチュエータ17を制御する。そして、その後の処理を一旦終了する。
【0056】
一方、ステップ302において、現在、低負荷域にあると判断した場合には、ステップ304へ移行する。ステップ304においては、現在、吸気行程中にあるか否かを判断する。そして、現在、吸気行程中にある場合には、ステップ305において、副燃焼室バルブ16を閉じるべくアクチュエータ17を制御する。そして、その後の処理を一旦終了する。一方、吸気行程中にない場合、つまり、それ以外の行程にあるときには、ステップ306へ移行する。そして、ステップ306において、副燃焼室バルブ16を開くべくアクチュエータ17を制御し、その後の処理を一旦終了する。
【0057】
このように、上記「燃焼制御ルーチン」においては、エンジン1の負荷が低負荷域にあるとき、全ての気筒♯1〜♯4における実圧縮比が膨張比よりも小さくなるよう、副燃焼室バルブ16が吸気行程中以外のタイミングで開かれる。このため、全ての気筒♯1〜♯4において熱効率が高められ一層の燃費の向上が図られうる。
【0058】
また、負荷が高負荷域(低負荷域以外の領域)にあるとき、全ての気筒♯1〜♯4における実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなる。すなわち、高負荷域においては、全ての気筒♯1〜♯4において、通常の燃焼状態(オットーサイクル)が確保されることになる。従って、要求される出力を十分に確保することができる。その結果、燃費の向上及び高負荷時における出力の低下抑制を共に満足させることができ、もって運転者の要求する運転性能を確保することができる。
【0059】
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、例えば次の如く構成してもよい。
(1)上記各実施の形態では、4つの気筒♯1〜♯4を有するタイプのエンジン1に具体化したが、気筒数が複数であれば、それ以下或いは、それ以上の気筒数(例えば6気筒、8気筒等、もちろん直列型、V型いずれでも可)を有するタイプのエンジンに具体化することもできる。
【0060】
(2)上記第1の実施の形態では、前者の2つの気筒♯2,♯3における実圧縮比を膨張比とがほぼ等しくなるようにし(オットーサイクル)、他の2つの気筒♯1,♯4における実圧縮比が膨張比よりも小さくなるようにした(アトキンソンサイクル)が、これらの組合せは自由である。従って、例えば1つの気筒のみをアトキンソンサイクルとし、それ以外の気筒についてはオットーサイクルを採用するようにしてもよい。また、その逆であってもよい。
【0061】
(3)上記第1の実施の形態では、前者の2つの気筒♯2,♯3に対応する吸気通路2(吸気管)を、他の2つの気筒♯1,♯4のそれに比べ、長く、かつ、細く設定するようにしたが、かかる構成を省略してもよい。
【0062】
(4)上記第2の実施の形態における吸気制御弁13及びアクチュエータ14を省略するようにしてもよい。
(5)上記第2の実施の形態では、他の2つの気筒♯1,♯4についてアトキンソンサイクルを採用し、前者の2つの気筒♯2,♯3についてオットーサイクルを採用するようにしたが、全ての気筒について、負荷に応じてアトキンソンサイクルとオットーサイクルとを切り換えるようにしてもよい。
【0063】
(6)上記第3の実施の形態におけるVVTとしては、OCVで制御されるタイプのものを採用したが、いかなるタイプのVVTを採用してもよい。
(7)上記第4の実施の形態においては、副燃焼室15、副燃焼室バルブ16及びアクチュエータ17を設けることにより、実質的な燃焼室容積を可変とする構成を採用したが、その他の構成により実質的な燃焼室容積を可変とするようにしてもよい。例えば、燃焼室1bの内部にピンを出没制御させるようにして実質的な燃焼室容積を可変とするようにしてもよい。或いは、コンロッドの長さを可変とすることにより実質的な燃焼室容積を可変とするようにしてもよい。
【0064】
(8)上記第4の実施の形態においては、全ての気筒♯1〜♯4について負荷に応じてアトキンソンサイクルとオットーサイクルとを切り換えるようにしたが、一部の気筒のみを切換可能としてもよい。
【0065】
(9)上記各実施の形態においては、吸気圧PiMに基づき負荷の高低を判断するようにしたが、その他の検出信号(例えばスロットル開度TA)に基づいて判断するようにしてもよい。
【0066】
特許請求の範囲の請求項に記載されないものであって、上記実施の形態から把握できる技術的思想について以下にその効果とともに記載する。
(a)請求項1記載の内燃機関の燃焼制御装置において、前記実圧縮比を膨張比よりも小さくなるようにするための手段として、吸気バルブの閉タイミングを遅らせるもの、及び燃焼室の実質的容積を可変とするもののうち少なくとも一方を採用することを特徴とする。
【0067】
上記の構成によれば、容易に本発明の作用効果を奏せしめることができる。
【0068】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の内燃機関の燃焼制御装置によれば、燃費の向上及び高負荷時における出力の低下抑制を共に満足させることができ、もって運転者の要求する運転性能を確保することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態の燃焼制御装置を示す概略構成図である。
【図2】燃焼制御装置の1つの気筒に着目した概略構成図である。
【図3】第1の実施の形態のカムプロフィールを説明するタイミングチャートである。
【図4】第2の実施の形態においてECUにより実行される「燃焼制御ルーチン」を示すフローチャートである。
【図5】第4の実施の形態における副燃焼室等を示す拡大断面図である。
【図6】第4の実施の形態においてECUにより実行される「燃焼制御ルーチン」を示すフローチャートである。
【図7】オットーサイクルを説明するp−v線図である。
【図8】アトキンソンサイクルを説明するp−v線図である。
【符号の説明】
1…内燃機関としてのエンジン、1b…燃焼室、5…吸気バルブ、13…吸気制御弁、15…副燃焼室、16…副燃焼室バルブ、23…負荷検出手段を構成する吸気圧センサ、30…実圧縮比制御手段、気筒別実圧縮比制御手段を構成するECU。
Claims (2)
- 内部にピストンを備えた複数の気筒を有する内燃機関の燃焼制御装置において、
一部のみの気筒における実圧縮比を膨張比よりも小さくなるようにし、それ以外の気筒における実圧縮比を膨張比とほぼ等しくなるようにする気筒別実圧縮比制御手段と、
前記一部のみの気筒に対応してそれ以外の気筒に対応する吸気通路よりも長く且つ通路面積が小さく設定された吸気通路とを備えたことを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の燃焼制御装置において、
前記内燃機関の負荷が低負荷域にあるとき、前記一部のみの気筒以外の気筒において燃料カットを実行することを特徴とする内燃機関の燃焼制御装置。
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