JP4038982B2 - 車両用ハブユニット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用ハブユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両の駆動輪側に用いられる車軸装置には図3に示すようなものがある。この車軸装置50は、駆動シャフト51と、その車両インボード側(以下単に「インナ側」という)に取付けられるとともにデファレンシャル装置に連結される第一等速ジョイント52(トリポードジョイントが用いられる)と、駆動シャフト51の車両アウトボード側(以下単に「アウタ側」という)に取付けられるハブユニット53とが設けられている。
【0003】
このハブユニット53は、図示しない車輪(ブレーキディスクロータ)を取付けるためのハブホイール54と、このハブホイール54の挿通孔に回転軸55が一体的に挿通支持された第二等速ジョイント56(ボールジョイントが用いられる)と、ハブホイール54および第二等速ジョイント56を軸心回りに回転自在に支持するための複列転がり軸受57とを備えている。
【0004】
第二等速ジョイント56は、インナ側を開放する椀形状に形成された外輪58と、この外輪58のアウタ側に一体的に形成されて外輪58よりも小径の前記回転軸55とを備え、この外輪58には、駆動シャフト51の端部を挿通固定するための内輪59、ハブホイール54(あるいは駆動シャフト51)を傾動案内するための玉60、およびその保持器61が内装されている。
【0005】
また、外輪58の開放部をシールするためのシールブーツ62が設けられ、このシールブーツ62は、一側端部が外輪58の開放部を覆うように取付けられるとともに他側端部が駆動シャフト51の途中を外嵌するよう渡して配置され、各端部は、バンドによって適当な締結力でもって外輪58、駆動シャフト51に取付けられている。
【0006】
前記複列転がり軸受57は、二列の軌道溝を有する単一の外輪63を有し、二列で配設される転動体としての複数の玉64および二つの冠形保持器65を備え、本来必要な2つの内輪については、一方は第二等速ジョイント56の外輪58の外周面を軌道面として他方はハブホイール54の外周面を利用した構成とされている。
【0007】
そして、複列転がり軸受57の外輪63の外周面途中には、車体側に固定されるナックル66にボルト67止めされる径方向B外向きのフランジ68が形成され、ナックル66の中心部には、前記車軸装置50をアウター側から組付ける際に挿通させるための挿通孔69が形成されている。
【0008】
ところで、耐荷重性を考慮すると、前記第二等速ジョイント56の容量は大きいほうが望ましい。従って、図3の車軸装置50では、このように第二等速ジョイント56の容量を可及的に大きくして、複列転がり軸受57の外輪63の径よりも、第二等速ジョイント56の外輪58の径、すなわちシールブーツ62の最大径の方が大きくなっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記車軸装置50は、ナックル66の中心部に形成した挿通孔69から第一等速ジョイント52を挿通し、駆動シャフト51を挿通し、シールブーツ62を挿通孔69に挿通して複列転がり軸受57のフランジ68をナックル66に当接させる。その後ハブユニット56を挿通孔69の径方向Bに移動して、ナックル66およびフランジ68に形成した取付け孔どうしを位置合わせし、これら取付け孔にボルト68を通して双方を固定することで車軸装置50を車体に対して組付ける。
【0010】
このようにして車軸装置50、特にハブユニット56をナックル66に対して固定するので、ナックル66の挿通孔69の径はシールブーツ62の最大径に等しいか大きく形成しなければならない。しかし、シールブーツ62の最大径に比して複列転がり軸受57の外輪63の径は小さいのが一般的である。従って、上記のようにフランジ68をナックル66に当接させるまでハブユニット56を挿通孔69に挿通すると、図4に示すように、複列転がり軸受57の外輪63と、ナックル66の挿通孔69の間にかなりの隙間70が発生する。そして、このような隙間70が発生した状態で、上記のようにハブユニット56を径方向Bに移動してナックル66およびフランジ68に形成した取付け孔どうしを位置合わせし、取付け孔にボルト68を通して双方を固定するといった作業は難しかった。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題を解決し得る車両用ハブユニットの提供を目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る車両用ハブユニットは、外周面に車体に固定した支持部材に取り付けられる第一の取付フランジを、内周面に複列外輪軌道を、それぞれ有し、支持部材に形成した挿通孔に取り付けられる外輪と、外周面に、車輪が取り付けられる第二の取付フランジと、複列の外輪軌道のうちの一端寄り部分の外輪軌道と対向する第一の内輪軌道を、それぞれ設けた第一の内輪部材と、外周面に複列の外輪軌道のうちの他端寄り部分の外輪軌道と対向する第二の内輪軌道を、内周面に等速ジョイントの椀形部を、それぞれ有する第二の内輪部材と、各外輪軌道と上記第一、第二の内輪軌道との間にそれぞれ複数個設けられる転動体とを備え、等速ジョイントを保護するための蛇腹状のシールブーツが椀形部の開放側に取り付けられた車両用ハブユニットであって、外輪の第一の取付フランジよりもインボード側の径はシールブーツの最大径に比べて小さく、外輪の外周面に、支持部材の挿通孔の径にほぼ等しい大きさの外径に形成されるとともに第一の取付フランジを支持部材の取付け面に対して当接させた状態で挿通孔に嵌合する嵌合環部材が取り付けられ、等速ジョイントを、支持部材に形成され軸方向全体でシールブーツの最大径に比べ大きな径を有する挿通孔に車両アウトボード側から車両インボード側へ通過させ、第一の取付フランジを、支持部材の取付け面に対して当接させた状態で固定するようにしたことを特徴とする。
本発明の請求項2に係る車両用ハブユニットは、請求項1に記載の車両用ハブユニットにおいて、前記嵌合環部材は、アルミニウムなどの軽合金により形成されていることを特徴とする。
【0013】
上記構成において、嵌合環部材を支持部材の挿通孔に嵌合するように取付けることにより、従来発生していた、複列転がり軸受の外輪の外周面と、支持部材の挿通孔の内周面との間の隙間が発生しないので、支持部材に複列転がり軸受の外輪を固定する際に、車両用ハブユニットを径方向に位置調節するといった作業を省略して、支持部材に対する取付けを容易にする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本発明の実施の形態に係る車両用ハブユニット1は、自動車の駆動輪側の車軸装置Aに設けられ、この車軸装置Aは、駆動シャフト22と、そのインナ側で、図示しないデファレンシャル装置に連結される第一等速ジョイント12と、駆動シャフト22のアウタ側に連結される前記車両用ハブユニット1とから構成される。
【0015】
この車両用ハブユニット1は、図示しない車輪を取付ける後述のブレーキディスクロータ11が固定されるハブホイール2と、このハブホイール2に形成された挿通穴3に一体的に挿通する軸部4(回転軸)がアウタ側に形成された第二等速ジョイント5と、前記ハブホイール2および第二等速ジョイント5を軸心C回りに回転自在に支持するための複列転がり軸受6とを備えている。
【0016】
前記軸部4の外周面には、ハブホイール2のメススプラインにスプライン嵌合されるオススプラインが形成され、軸部4はハブホイール2の凹部2aに対してかしめられることでハブホイール2と一体化され、軸心C方向の移動を阻止されている。
【0017】
前記ハブホイール2には、その外周面の途中に、径方向外向きに突出するフランジ7が形成され、このフランジ7にハブボルト7aを介して前記ブレーキディスクロータ11が固定され、このブレーキディスクロータ11に図示しない車輪が固定される。図中の符号13はブレーキディスクロータ11の回転を制動するためのブレーキパッドである。
【0018】
前記第二等速ジョイント5は、ツェッパタイプ(バーフィールド型)と呼ばれる周知のものが用いられ、前記軸部4を一側に一体的に形成した断面椀形の椀形部15、前記駆動シャフト22を挿通固定した内輪17、ハブホイール2を駆動シャフト22に対して傾動案内するための玉10およびその保持器20を備えている。そして前記内輪17に、前記駆動シャフト22の端部がスプライン嵌合され、この駆動シャフト22は止め輪(符号省略)などで内輪17に対して抜け止め固定されている。
【0019】
また、第二等速ジョイント5を保護するためのシールブーツ21が椀形部15の一方開放側から駆動シャフト22の途中に渡して取付けられ、このシールブーツ21は蛇腹状のブーツ本体31と、椀形部15に外嵌するアウタ側の端部と、駆動シャフト22の途中に外嵌する端部とを備え、このシールブーツ21のアウタ側の端部は、バンド25によって適度の締結力で椀形部15に取付けられ、シールブーツ21の別の端部も同様に別のバンド26によって適度の締結力で駆動シャフト22に取付けられている。
【0020】
前記複列転がり軸受6は、二列の軌道溝を有する単一の外輪16と、二列で配設される転動体としての複数の玉9と、二つの冠形保持器23とを備え、本来必要な2つの内輪については、一方は椀形部15の外周面を軌道面として他方はハブホイール2の外周面を利用した構成とされている。
【0021】
前記複列転がり軸受6の外輪16におけるアウタ側とハブホイール2の外周面との隙間をシールするための環状の接触型シール部材32が設けられ、前記複列転がり軸受6の外輪16におけるインナ側と椀形部15の外周面との隙間をシールするためのシール装置35が設けられ、図2に示すように、このシール装置35は、接触型シール部材36と非接触型シール部材37とから構成されている。
【0022】
そして、前記外輪16の外周面途中には、車体に固定されるナックル(支持部材の一例)24に対してボルト27止めされる径方向外向きのフランジ8が形成され、ナックル24およびフランジ8には、ボルト27を挿通するための取付け孔28a,28bが形成されている。
【0023】
前記ナックル24の中心に、車軸装置Aをアウタ側から挿通するための挿通孔29が形成され、この挿通孔29の径は第二等速ジョイント5の最大径d1(この場合「バンド25」の径)よりも大きく形成されている。そして、外輪16のフランジ8のインナ側に、ナックル24の挿通孔29の径にほぼ等しい外径d2に形成した嵌合環部材(「カラー」ともいう)30が、フランジ8のインナ側基部に当接する位置で嵌着されている。なお、この嵌合環部材30は、例えばアルミニウムなどの軽合金によって形成される。
【0024】
上記構成の車両用ハブユニット1では、駆動シャフト22の回転動力が、第二等速ジョイント5およびハブホイール2に伝達され、ブレーキディスクロータ11および車輪に対して伝達されてこれが軸心C回りに回転する。
【0025】
ここで車軸装置Aを車体に対して組付ける手順を説明すると、まず、車軸装置Aを組立て、予め車体に固定しているナックル24の挿通孔29に第一等速ジョイント12を挿通し、さらに車軸装置Aをインナ側に移動させ、車両用ハブユニット1のシールブーツ21部分を通過させ、例えば図2の実線で示す位置まで車両用ハブユニット1を移動させる。このとき、挿通孔29の径は第二等速ジョイント5の最大径d1よりも大きく形成しているので、シールブーツ21部分を挿通孔29に対して容易に通過させることができる。
【0026】
その後、さらに車軸装置Aをインナ側に移動させるが、このとき、挿通孔29の位置に対して嵌合環部材30が一致するよう、車軸装置Aの位置を径方向に位置調節して移動させるようにし、車軸装置Aをインナ側に移動して図2の仮想線で示すように、嵌合環部材30を挿通孔29に嵌合させる。そうすると、ナックル24の側面に対してフランジ8の取付け面が当接する。この状態でボルト27を取付け孔28a,28bに挿通してナックル24に対してフランジ8を固定する。
【0027】
そして、嵌合環部材30の外径d2はナックル24の挿通孔29の径にほぼ等しく形成したので、ボルト27を取付け孔28a,28bに挿通する際、従来のように車軸装置Aを径方向に移動させるといった調節が不要になり、車軸装置Aを車体に取付ける作業が容易になる。
【0028】
このような作用効果は、耐荷重性を考慮して第二等速ジョイント5の容量を大きくした場合に対しても同様である。すなわち、耐荷重性を考慮すると、第二等速ジョイント5の容量は大きい方がよいが、この場合、第二等速ジョイント5の最大径d1に応じてナックル24の挿通孔29の径も大きくする必要があり、ナックル24の側面にフランジ8が当接するまで車軸装置Aを挿通した場合、複列転がり軸受6の外輪16の外周面とナックル24の挿通孔29の内周面との間に大きな隙間が生じることになるが、この隙間に嵌合する嵌合環部材30を複列転がり軸受6の外輪16に嵌着しておくことで、上記と同様に、容易に車軸装置Aを車体に対して取付けることができる。
【0029】
このように本発明の実施の形態によれば、第二等速ジョイント5およびハブホイール2を軸心C回りに回転自在に支持する複列転がり軸受6の外輪16に、ナックル24の挿通孔29の内周面に嵌合する嵌合環部材30を嵌着したので、外輪16の外周面と挿通孔29の内周面との間に隙間が生じることがなく、従って、フランジ8をナックル24に対して固定する際に車軸装置Aを径方向に位置調節することなしに、ボルト27を取付け孔28a,28bに挿通してフランジ8をナックル24に対して固定することができる。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、車体側に固定される支持部材に形成した挿通孔に等速ジョイントを挿通し、等速ジョイントを回転自在に支持する複列転がり軸受の外輪を支持部材に対して固定するようにした車両用ハブユニットにおいて、前記複列転がり軸受の外輪に、支持部材の挿通孔の径にほぼ等しい大きさの外径に形成するとともに複列転がり軸受の外輪を支持部材の取付け面に対して当接させた状態で挿通孔に嵌合する嵌合環部材が取付けられたので、嵌合環部材を支持部材の挿通孔に嵌合するように取付けることにより、従来発生していた、複列転がり軸受の外輪の外周面と、支持部材の挿通孔の内周面との間の隙間が発生しないので、支持部材に複列転がり軸受の外輪を固定する際に、車両用ハブユニットを径方向に位置調節するといった作業を省略でき、支持部材に対して容易に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す車両用ハブユニットの全体断面図である。
【図2】同じく要部拡大断面図である。
【図3】従来の車両用ハブユニットの全体断面図である。
【図4】同じく一部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 車両用ハブユニット
4 軸部
5 第二等速ジョイント
6 複列転がり軸受
7 フランジ
8 フランジ
11 ブレーキディスクロータ
12 第一等速ジョイント
15 椀形部
16 外輪
21 シールブーツ
22 駆動シャフト
24 ナックル
25 バンド
29 挿通孔
30 嵌合環部材
d1 第二等速ジョイントの最大径
d2 嵌合環部材の外径
A 車軸装置
C 軸心
Claims (2)
- 外周面に車体に固定した支持部材に取り付けられる第一の取付フランジを、内周面に複列外輪軌道を、それぞれ有し、支持部材に形成した挿通孔に取り付けられる外輪と、
外周面に、車輪が取り付けられる第二の取付フランジと、複列の外輪軌道のうちの一端寄り部分の外輪軌道と対向する第一の内輪軌道を、それぞれ設けた第一の内輪部材と、
外周面に複列の外輪軌道のうちの他端寄り部分の外輪軌道と対向する第二の内輪軌道を、内周面に等速ジョイントの椀形部を、それぞれ有する第二の内輪部材と、
各外輪軌道と上記第一、第二の内輪軌道との間にそれぞれ複数個設けられる転動体とを備え、
等速ジョイントを保護するための蛇腹状のシールブーツが椀形部の開放側に取り付けられた車両用ハブユニットであって、
外輪の第一の取付フランジよりもインボード側の径はシールブーツの最大径に比べて小さく、
外輪の外周面に、支持部材の挿通孔の径にほぼ等しい大きさの外径に形成されるとともに第一の取付フランジを支持部材の取付け面に対して当接させた状態で挿通孔に嵌合する嵌合環部材が取り付けられ、
等速ジョイントを、支持部材に形成され軸方向全体でシールブーツの最大径に比べ大きな径を有する挿通孔に車両アウトボード側から車両インボード側へ通過させ、第一の取付フランジを、支持部材の取付け面に対して当接させた状態で固定するようにしたことを特徴とする車両用ハブユニット。 - 前記嵌合環部材は、アルミニウムなどの軽合金により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ハブユニット。
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