JP4025944B2 - 蓄電システム用有機電解質電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は蓄電システム用有機電解質電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、良好な地球環境の保全、省資源などに適したエネルギーの有効利用の観点から、深夜電力貯蔵、太陽光発電による電力貯蔵などを行うための家庭用分散型蓄電システム、電気自動車のための蓄電システムなどが注目を集めている。例えば、特開平6-86463号公報は、エネルギー需要者にエネルギーを最適条件で供給できるシステムとして、発電所から供給される電気、ガスコージェネレーション、燃料電池、蓄電池などを組み合わせたトータルシステムを提案している。これらの蓄電システムに用いる二次電池は、エネルギー容量が10Wh以下の携帯機器用小型二次電池とは異なり、大容量かつ大型のものが必要となる。また、これらのシステムでは、複数の二次電池を直列に積層し、電圧を例えば50〜400Vの組電池として用いるのが常法であり、ほとんどの場合、鉛電池を積層し、用いていた。
【0003】
一方、携帯機器用小型二次電池の分野では、小型かつ高容量のニーズに応えるべく、ニッケル水素電池、リチウム二次電池などの新型電池の開発が進んでおり、180Wh/l以上の体積エネルギー密度を有する電池が、市販されている。特にリチウムイオン電池は、350Wh/lを超える高い体積エネルギー密度を発揮する可能性を有すること、安全性、サイクル特性などの信頼性の点で、金属リチウムを負極に用いたリチウム二次電池に比べて優れることなどの理由により、その市場は飛躍的に増大している。
【0004】
この様な技術的な成果を背景として、蓄電システム用大型電池の分野においても、高エネルギー密度電池として、リチウムイオン電池の実用化に向けての研究開発が、リチウム電池電力貯蔵技術研究組合(LIBES)などにより、精力的に進められている。
【0005】
この様な大型リチウムイオン電池は、エネルギー容量が100〜400Wh程度であり、また体積エネルギー密度が200〜300Wh/lと携帯機器用小型二次電池並のレベルに達している。その形状は、直径50〜70mm程度、長さ250mm〜450mm程度の円筒型、厚さ35mm〜50mmの角型或いは長円角型などの扁平角柱形が代表的なものである。
【0006】
薄型のリチウム二次電池に関しては、薄型の外装に、例えば、金属とプラスチックをラミネートした厚さ1mm以下のフィルムを収納したフィルム電池(特開平5-159757号公報、特開平7-57788号公報など)、厚さ2〜15mm程度の小型角型電池(特開平8-195204号公報、特開平8-138727号公報、特開平9-213286号公報など)が知られている。これらは、いずれも、携帯機器の小型・薄型化に対応するものであり、例えば携帯用パソコン底面に収納できる厚さ数mmでJIS A4サイズ程度の面積を有する薄型電池も開示されているが(特開平5-283105号公報)、エネルギー容量は、10Wh以下であり、蓄電システム用二次電池としては、容量が小さ過ぎる。
【0007】
蓄電システム用の大型リチウム二次電池(エネルギー容量30Wh以上)においては、高エネルギー密度が得られるものの、その電池設計思想が携帯機器用小型電池の延長線上にあることから、直径または厚さが携帯機器用小型電池の3倍以上の円筒型、角型などの電池形状とされている。この場合には、充放電時の電池の内部抵抗によるジュール発熱あるいはリチウムイオンの出入りによって活物質のエントロピーが変化することによる電池の内部発熱により、電池内部に熱が蓄積されやすい。このため、電池内部の温度と電池表面付近との温度差が大きく、これに伴って内部抵抗が異なってくる。その結果、充電量および電圧のバラツキを生じ易い。また、この種の電池は、複数個を組電池として用いるため、システム内での電池の設置位置によっても、蓄熱の程度が異なるので、各電池間のバラツキを生じて、組電池全体の正確な制御が困難になる。さらに、高率充放電時などに際し、放熱が不十分である為、電池温度が上昇し、電池にとって好ましくない状態を生じるので、電解液の分解などよる電池寿命の低下、さらには電池の熱暴走の誘発などの点で、信頼性および安全性に問題が残されている。
【0008】
この問題を解決するため、電気自動車用の蓄電システムでは、冷却ファンを用いた空冷法、ペルチェ素子を用いた冷却法(特開平8-148189号公報)、電池内部に潜熱蓄熱材を充填する方法(特開平9-219213号公報)などが提案されているが、これらはいずれも外部からの冷却手法であり、本質的な解決法であるとは言えない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、30Wh以上の大容量および180Wh/l以上の高体積エネルギー密度を有し、低温特性およびレート特性に優れ、かつ、放熱特性に優れた安全性の高い蓄電システム用有機電解質電池を提供することを主な目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の従来技術の問題点に留意しつつ鋭意研究を重ねた結果、電解液の溶媒として、特定の組成を有する非水系溶媒を使用する場合には、上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の蓄電システム用有機電解質電池を提供するものである:
1.正極、負極およびリチウム塩を非水系溶媒に溶解して得られる非水系電解質を備えた有機電解質電池において、(1)非水系溶媒が、エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートと第三成分としてそれ以外の少なくとも1種の非水系溶媒とを含む混合溶媒であり、(2)エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの合計重量が、全溶媒重量の55〜90%であり、(3)ジメチルカーボネート/エチレンカーボネート(重量比)が1以上であり、(4)電池のエネルギー容量が30Wh以上であり、(5)電池の体積エネルギー密度が180Wh/l以上であり、かつ(6)電池が厚さ12mm未満の扁平形状であることを特徴とする蓄電システム用有機電解質電池。
2.非水系混合溶媒中の第三成分が、メチルエチルカーボネートである上記項1に記載の蓄電システム用有機電解質電池。
3.前記扁平形状の表裏面が、矩形である上記項1または2に記載の蓄電システム用有機電解質電池。
4.正極がマンガン酸化物を含み、負極がリチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質を含んでいる上記項1または2に記載の蓄電システム用有機電解質電池。
5.電池容器の板厚が、0.2〜1mmである上記項1、2または3に記載の蓄電システム用有機電解質電池。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態の非水系二次電池について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施の形態の扁平な矩形(ノート型)の蓄電システム用非水系二次電池の平面図及び側面図を示す図であり、図2は、図1に示す電池の内部に収納される電極積層体の構成を示す側面図である。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施の形態の非水系二次電池は、上蓋1及び底容器2からなる電池容器と、該電池容器の中に収納されている複数の正極101a、負極101b、101c、及びセパレータ104からなる電極積層体とを備えている。本実施の形態のような扁平型非水系二次電池の場合、正極101a、負極101b(又は積層体の両外側に配置された負極101c)は、例えば、図2に示すように、セパレータ104を介して交互に配置されて積層されるが、本発明は、この配置に特に限定されず、積層数等は、必要とされる容量等に応じて種々の変更が可能である。また、図1及び図2に示す非水系二次電池の形状は、例えば縦300mm×横210mm×厚さ6mmであり、正極101aにLiMn2O4、負極101b、101cに炭素材料を用いるリチウム二次電池の場合、例えば、蓄電システムに用いることができる。
【0014】
各正極101aの正極集電体105aは、正極端子3に電気的に接続され、同様に、各負極101b、101cの負極集電体105bは、負極端子4に電気的に接続されている。正極端子3及び負極端子4は、電池容器すなわち上蓋1と絶縁された状態で取り付けられている。
【0015】
上蓋1及び底容器2は、図1中の拡大図に示したA点で全周を上蓋を溶かし込み、溶接されている。上蓋1には、電解液の注液口5が開けられており、電解液注液後、仮封口のため、例えば、アルミニウム−変性ポリプロピレンラミネートフィルムからなる封口フィルム6を用いて一旦封口され、その後、少なくとも1回充電された後に外され、電池容器内の圧力を大気圧未満にした状態で最終封口される。この場合、封口フィルム6は電池内部の内圧が上昇したときに解放するための安全弁を兼ね備えることができる。封口フィルム6による最終封口工程後の電池容器内の圧力は、大気圧未満であり、好ましくは650torr以下、更に好ましくは550torr以下である。この圧力は、使用するセパレータ、電解液の種類、電池容器の材質及び厚み、電池の形状等を加味して決定されるものである。内圧が大気圧以上の場合、電池が設計厚みより大きくなったり、又は、電池の厚みのバラツキが大きくなり、電池の内部抵抗及び容量がばらつく原因となるため好ましくない。
【0016】
正極101aに用いられる正極活物質としては、リチウム系の正極材料であれば、特に限定されず、リチウム複合コバルト酸化物、リチウム複合ニッケル酸化物、リチウム複合マンガン酸化物、或いはこれらの混合物、更にはこれら複合酸化物に異種金属元素を一種以上添加した系等を用いることができ、高電圧、高容量の電池が得られることから、好ましい。また、安全性を重視する場合、熱分解温度が高いマンガン酸化物が好ましい。このマンガン酸化物としてはLiMn2O4に代表されるリチウム複合マンガン酸化物、更にはこれら複合酸化物に異種金属元素を一種以上添加した系、さらにはリチウム、酸素等を量論比よりも過剰にしたLiMn2O4系材料が挙げられる。
【0017】
負極101b、101cに用いられる負極活物質としては、リチウム系の負極材料であれば、特に限定されず、リチウムをドープ及び脱ドープ可能な材料であることが、安全性、サイクル寿命などの信頼性が向上し好ましい。リチウムをドープ及び脱ドープ可能な材料としては、公知のリチウムイオン電池の負極材として使用されている黒鉛系物質、炭素系物質、錫酸化物系、ケイ素酸化物系等の金属酸化物、或いはポリアセン系有機半導体に代表される導電性高分子等が挙げられる。特に、安全性の観点から、150℃前後の発熱が小さいポリアセン系物質又はこれを含んだ材料が望ましい。
【0018】
セパレータ104の構成は、特に限定されるものではないが、単層又は複層のセパレータを用いることができ、少なくとも1枚は不織布を用いることが好ましく、この場合、サイクル特性が向上する。また、セパレータ104の材質も、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、クラフト紙、ガラス等が挙げられるが、ポリエチレン、ポリプロピレンが、コスト、含水などの観点から好ましい。また、セパレータ104として、ポリエチレン、ポリプロピレンを用いる場合、セパレータの目付量は、好ましくは5〜30g/m2程度であり、より好ましくは5〜20g/m2程度であり、さらに好ましくは8〜g/20m2程度である。セパレータの目付量が30g/m2を超える場合には、セパレータが厚くなりすぎたり、あるいは気孔率が低下して、電池の内部抵抗が高くなるのに対し、5g/m2未満の場合には、実用的な強度が得られないので、いずれも好ましくない。
【0019】
本発明による非水系二次電池の電解質としては、エチレンカーボネート(以下「EC」という)とジメチルカーボネート(以下「DMC」という)とを主成分とする非水系溶媒中に公知のリチウム塩を含む非水系電解質を使用する。ECとDMCとの合計量は、全溶媒重量に対し、通常55〜90%であり、より好ましくは60〜90%である。ECとDMCの合計量が下限量未満である場合あるいは上限量を超える場合には、いずも、充分な低温特性が得られない。また、DMC/EC(重量比)は1以上であり、好ましくは3以下である。この重量比が1未満の場合には、-20℃付近では凝固することが多いので、充分な低温特性が得られない。すなわち、ECおよびDMCは、ともに凝固点が0℃以上であり、これら2種からなる混合溶媒を用いた電解液は、例えば-20℃付近で凝固して、十分な電池特性を発揮し得ないことが多い。従って、本発明で使用する非水系溶媒には、ECとDMCに加えて、第三成分を配合することにより、低温特性を改善する。第三成分としては、特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、酢酸メチル、蟻酸メチルがなどが例示される。これらの中では、メチルエチルカーボネートおよび酢酸メチルがより好ましく、メチルエチルカーボネート(以下「MEC」という)がさらに好ましい。ECと DMCとの配合比率が上述の範囲内である限り、上記第三成分を2種以上配合しても良い。第三成分の配合量(X:重量%)は、“X=100-(EC+DMC)”で示される量である。
【0020】
本発明において使用する電解液は、上記比率で混合した非水系溶媒に公知の電解質であるリチウム塩を溶解したものである。リチウム塩としては、特に限定されず、より具体的にはLiPF6、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2C2F5)2などが挙げられる。電解液の濃度も特に限定されるものではないが、一般的に0.5〜2mol/l程度が実用的である。この電解液は、当然のことながら、水分が100ppm以下であることが好ましい。具体的な電解液組成については、上記のECとDMCとの混合比率を考慮し、かつ正極材料の種類、負極材料の種類、充電電圧などの使用条件などに応じて、適宜決定される。
【0021】
上記のように構成された非水系二次電池は、家庭用蓄電システム(夜間電力貯蔵、コージェネレション、太陽光発電等)、電気自動車等の蓄電システム等に用いることができ、大容量且つ高エネルギー密度を有することができる。この場合、エネルギー容量は、好ましくは30Wh以上、より好ましくは50wh以上であり、且つエネルギー密度は、好ましくは180Wh/l以上、より好ましくは200Wh/l以上である。エネルギー容量が30Wh未満の場合、或いは、体積エネルギー密度が180Wh/l未満の場合は、蓄電システムに用いるには容量が小さく、充分なシステム容量を得るために電池の直並列数を増やす必要があること、また、コンパクトな設計が困難となることから蓄電システム用としては好ましくない。
【0022】
ところで、一般に、蓄電システム用の大型リチウム二次電池(エネルギー容量30Wh以上)においては、高エネルギー密度が得られるものの、その電池設計が携帯機器用小型電池の延長にあることから、直径又は厚さが携帯機器用小型電池の3倍以上の円筒型、角型等の電池形状とされる。この場合には、充放電時の電池の内部抵抗によるジュール発熱、或いはリチウムイオンの出入りによって活物質のエントロピーが変化することによる電池の内部発熱により、電池内部に熱が蓄積されやすい。このため、電池内部の温度と電池表面付近の温度差が大きく、これに伴って内部抵抗が異なる。その結果、充電量、電圧のバラツキを生じ易い。また、この種の電池は複数個を組電池にして用いるため、システム内での電池の設置位置によっても蓄熱されやすさが異なって各電池間のバラツキが生じ、組電池全体の正確な制御が困難になる。更には、高率充放電時等に放熱が不十分な為、電池温度が上昇し、電池にとって好ましくない状態におかれることから、電解液の分解等による寿命の低下、更には電池の熱暴走の誘起など信頼性、特に、安全性に問題が残されていた。
【0023】
本実施の形態の扁平形状の非水系二次電池は、放熱面積が大きくなり、放熱に有利であるため、上記のような問題も解決することができる。すなわち、本実施の形態の非水系二次電池は、扁平形状をしており、その厚さは、好ましくは12mm未満、より好ましくは10mm未満、さらに好ましくは8mm未満である。厚さの下限については電極の充填率、電池サイズ(薄くなれば同容量を得るためには面積が大きくなる)を考慮した場合、2mm以上が実用的である。電池の厚さが12mm以上になると、電池内部の発熱を充分に外部に放熱することが難しくなること、或いは電池内部と電池表面付近での温度差が大きくなり、内部抵抗が異なる結果、電池内での充電量、電圧のバラツキが大きくなる。なお、具体的な厚さは、電池容量、エネルギー密度に応じて適宜決定されるが、期待する放熱特性が得られる最大厚さで設計するのが、好ましい。
【0024】
また、本実施の形態の非水系二次電池の形状としては、例えば、扁平形状の表裏面が角形、円形、長円形等の種々の形状とすることができ、角形の場合は、一般に矩形であるが、三角形、六角形等の多角形とすることもできる。さらに、肉厚の薄い円筒等の筒形にすることもできる。筒形の場合は、筒の肉厚がここでいう厚さとなる。また、製造の容易性の観点から、電池の扁平形状の表裏面が矩形であり、図1に示すようなノート型の形状が好ましい。
【0025】
電池容器となる上蓋1及び底容器2に用いられる材質は、電池の用途、形状により適宜選択され、特に限定されるものではなく、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等が一般的であり、実用的である。また、電池容器の厚さも電池の用途、形状或いは電池ケースの材質により適宜決定され、特に限定されるものではない。好ましくは、その電池表面積の80%以上の部分の厚さ(電池容器を構成する一番面積が広い部分の厚さ)が0.2mm以上である。上記厚さが0.2mm未満では、電池の製造に必要な強度が得られないことから望ましくなく、この観点から、より好ましくは0.3mm以上である。また、同部分の厚さは、1mm以下であることが望ましい。この厚さが1mmを超えると、電極面を押さえ込む力は大きくなるが、電池の内容積が減少し充分な容量が得られないこと、或いは、重量が重くなることから望ましくなく、この観点からより好ましくは0.7mm以下である。
【0026】
上記のように、非水系二次電池の厚さを12mm未満に設計することにより、例えば、該電池が30Wh以上の大容量且つ180Wh/lの高エネルギー密度を有する場合、高率充放電時等においても、電池温度の上昇が小さく、優れた放熱特性を有することができる。従って、内部発熱による電池の蓄熱が低減され、結果として電池の熱暴走も抑止することが可能となり信頼性、安全性に優れた非水系二次電池を提供することができる。
【0027】
次に、上記のように構成された非水系二次電池の製造方法のうち最終封口工程について詳細に説明する。従来、電池内を大気圧以下にして封口する手法は、固体電解質又はゲル電解質を用いた厚さ1mm以下の小型フィルム電池に用いられていた。この場合、例えば、図3の(a)及び(b)に示すように、絞り加工された上蓋51及び平板の下蓋52(又は図3の(c)に示す絞り加工された下蓋52)の外周部Sの全部又は一辺を変性ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂53を用いて、減圧下で熱融着して最終封口工程を行っていた。
【0028】
一方、本発明のように、エネルギー容量が30Whを超える大型の電池の場合、最終封口工程において上述のような小型フィルム電池で用いる手法を転用することは、以下の理由から困難である。すなわち、本発明のような扁平形状の大型電池の場合、電池自体の面積が大きく、その融着面積も大きくなり、巨大な熱融着装置が必要になると共に、融着部分の信頼性に欠ける。また、電解液が溶液である場合、電極に電解液を含浸させた後、電解液による接着面の濡れを防止しながら熱融着することが困難である。上記のような理由から、大型の電池の場合、従来の小型フィルム電池のように電池容器の外周部を熱融着することは、従来から行われていなかった。また、上記した本発明の電池厚みに関する問題は、従来の厚さの厚い大型電池の場合、電池缶の厚さ、形状等で充分対応出来るため、特に問題とされていなかった。
【0029】
しかしながら、本実施形態の非水系二次電池では、完成後の電池の内部圧力が大気圧未満になるように、正極101a、負極101b、101c、セパレータ104及び非水系電解質を電池容器内に収容し、少なくとも1回充電した後に電池容器内の圧力を大気圧未満にした状態で電池容器の最終封口工程を行い、上記のような問題を解決している。
【0030】
上記の最終封口工程は、少なくとも一回の充電操作の後に行うことが好ましい。上記の充電操作は、電池に用いられる正極材料、負極材料、セパレータ、電解液等の種類、これらの材料の含水率及び不純物、電池が使用される電圧等に応じて種々の条件を採用することができる。例えば、電池の使用電圧まで4〜8時間率程度の速度で充電し、また必要に応じて定電圧を印可し、さらに8時間率程度の速度で放電した後に、最終封口工程を行ってもよい。或いは、電池の容量以下の充電操作のみを行った後に封口したり、2回以上の充放電を繰り返した後に封口する等の種々の充電操作も可能であるが、肝要なことは、完成後の電池の内圧を大気圧未満に維持することである。
【0031】
特に、負極に黒鉛、正極にリチウム複合酸化物を用いた液系の電解液を用いる場合、1回目の充電初期に電解液の分解により内部にガスが発生するため、例えば、充電操作を行わずに大気圧未満で最終封口工程を行っても、その後の1回目の充電操作により電池内部が加圧状態(大気圧以上)になり、電池の厚みが厚くなったり、電池の内部抵抗及び容量がばらつき、安定したサイクル特性が得られない場合がある。しかしながら、本実施の形態のように、充電操作を行ってガスを発生させた後に、最終封口工程を大気圧未満で行うことにより、この問題を解決できる。この場合、1回目の充電操作を行うときは、電池内を大気圧未満にして行うことも可能であるが、このときの電池内部の圧力については特に限定されない。
【0032】
また、電池内部を大気圧未満にする方法は特に限定されないが、具体的には、以下のようにして行うことができる。
【0033】
まず、図2に示すように、正極101a、負極101b、101c及びセパレータ104を積層し、得られた電極積層体等を上蓋1及び底容器2内に収容し、上蓋1及び底容器2の外周部を溶接する。次に、注液口5から電解液を電池容器内に注入する。次に、仮封口のため、前述のアルミニウム−変性ポリプロピレンラミネートフィルム、アルミニウム−変性ポリエチレンラミネートフィルムに代表される熱融着型で水分透過率の低い封口フィルム6を用いて注液口5を一旦封口し、その後、上記のように少なくとも1回充電した後に封口フィルム6を外す。なお、上記の仮封口の方法は、上記の例に特に限定されず、ねじ等を用いて開口部を一時的に封口してもよく、また、水分を除去した状態、例えば、空気を遮断した環境下又は露点が-40℃以下のドライ雰囲気下の場合、封口せずに上記の充電操作を行ってもよい。
【0034】
次に、最終封口工程として、封口フィルム6を熱融着する。なお、最終封口工程に用いられる方法は、上記の例に特に限定されず、金属板又は箔を溶接したり、若しくは、電池容器にコックを取り付けて電池内を所定の圧力(大気圧未満)に減圧した後、コックを閉じる等してもよい。
【0035】
なお、上記の最終封口工程の圧力は、大気圧未満であり、好ましくは650torr以下、さらに好ましくは550torr以下である。この圧力は、最終的に完成した電池に要求される内部圧力に応じて決定されるものである。また、最終封口工程を行うために電池容器に設けられる開口部の周長は、電池の外周長の1/10以下にすることが好ましく、1/20以下にすることがより好ましい。開口部の周長が外周長の1/10を超えると、上記したように、融着面積が大きくなり、巨大な熱融着装置が必要になると共に、融着部分の信頼性に欠ける等の問題が発生する。また、該開口部を設ける部分は、電池の外周部分5mmを除く、表裏面にあることが好ましい。電池の外周部分5mm以内に開口部を設けると、十分な強度が得られず、電解液の漏れ等の封口不良が発生し易いため好ましくない。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1
(1)LiCo2O4100重量部、アセチレンブラック8重量部、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)3重量部をN-メチルピロリドン(NMP)100重量部と混合し、正極合材スラリーを得た。該スラリーを集電体となる厚さ20μmのアルミ箔の両面に塗布し、乾燥した後、プレスを行い、正極を得た。図4の(a)は正極の説明図である。本実施例において正極101aの塗布面積(W1×W2)は、262.5×192mm2であり、20μmの集電体105aの両面に103μmの厚さで塗布されている。その結果、電極厚さtは226μmとなっている。また、電極の短辺側には電極が塗布されていない正極集電片106aが設けられ、その中央に直径3mmの穴が開けられている。
(2)黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ(MCMB、大阪ガスケミカル(株)製、品番6-28)100重量部、PVDF10重量部をNMP90重量部と混合し、負極合材スラリーを得た。該スラリーを集電体となる厚さ14μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥した後、プレスを行い、負極を得た。図4の(b)は負極の説明図である。負極101bの塗布面積(W1×W2)は、267×195mm2であり、18μmの集電体105bの両面に108μmの厚さで塗布されている。その結果、電極厚さtは234μmとなっている。また、電極の短辺側には電極が塗布されていない負極集電片106bが設けられ、その中央に直径3mmの穴が開けられている。更に、同様の手法で片面だけに塗布し、それ以外は同様の方法で厚さ126μmの片面電極を作成した。片面電極は(3)項の電極積層体において外側に配置される(図2中101c)。
(3)図2に示すように、上記(1)項で得られた正極8枚、負極9枚(内片面2枚)をセパレータ104a(ポリプロピレン不織布:ニッポン高度紙工業(株)製、MP1050、目付10g/m2)とセパレータ104b(ポリエチレン製微孔膜;旭化成工業(株)製、HIPORE6022、目付13.3g/m2)とを張り合わせたセパレータ104を介して交互に積層し、さらに、電池容器との絶縁のために外側の負極101cの更に外側にセパレーター104bを配置し、電極積層体を作成した。なお、セパレータ104は、セパレータ104bが正極側に、セパレータ104aが負極側になるように配置した。
(4)図1に示すように、厚さ0.5mmのSUS304製薄板を深さ5mmに絞り、底容器2を作成し、上蓋1も厚さ0.5mmのSUS304製薄板で作成した。次に、図5に示すように、上蓋1に、アルミニウム製の正極端子3及び銅製の負極端子4(頭部径6mm、先端M3のねじ部)を取り付けた。正極及び負極端子3、4は、ポリプロピレン製ガスケットで上蓋1と絶縁した。
(5)上記(3)項で作成した電極積層体の各正極集電片106aの穴を正極端子3に、各負極集電片106bの穴を負極端子4に入れ、それぞれ、アルミニウム製及び銅製のボルトで接続した。接続された電極積層体を絶縁テープで固定し、図1の角部Aを全周に亘りレーザー溶接した。その後、注液口5(径6mm)から、EC:DMC:MEC=6:7:7(重量比)からなる混合溶媒にLiPF6を濃度1mol/lで溶解した電解液を注液した後、大気圧下で仮止め用のボルトを用いて注液口5を一旦封口した。
(6)この電池を5Aの電流で4.1Vまで充電し、その後4.1Vの定電圧を印可する定電流定電圧充電を12時間行い、続いて、5Aの定電流で2.5Vまで放電した後、この電池の仮止め用ボルトをはずし、300torrの減圧下でアルミニウム箔-変性ポリプロピレンラミネートフィルムを熱融着することにより、電解液注液孔5を封口した。この電池を5Aの電流で4.1Vまで充電し、その後4.1Vの定電圧を印可する定電流定電圧充電を12時間行い、続いて、5Aの定電流で2.5Vまで放電したところ、容量は27.2Ah(100Wh)であった。また、25Aの定電流で放電した場合、その容量は、24.0Ahであり、放電終了時の電池温度の上昇は、同容量の箱形(厚み12mm以上)電池を組み立てた場合に比べ少なかった。
【0037】
更に、5Aの電流で4.1Vまで充電し、その後4.1Vの定電圧を印可する定電流定電圧充電を12時間行い、続いて、-20℃で8時間放置後5Aの定電流で2.5Vまで放電を行ない、低温特性を評価したところ、表1に示す通り、23.8Aであり、初期容量(27.2Ah)の87.5%と良好な結果を示した。
実施例2
電解液としてEC:DMC:MEC=7:10:3(重量比)からなる混合溶媒にLiPF6を濃度1mol/lで溶解した溶液を用いる以外は実施例1と同様にして、電池の初期特性および低温特性を評価した。結果を表1に示す。
比較例1
電解液としてEC:DMC:MEC=4:5:11(重量比)からなる混合溶媒にLiPF6を濃度1mol/lで溶解した溶液を用いる以外は実施例1と同様にして、電池の初期特性および低温特性を評価した。結果を表1に示す。
比較例2
電解液としてEC:DMC:MEC=10:6:4(重量比)からなる混合溶媒にLiPF6を濃度1mol/lで溶解した溶液を用いる以外は実施例1と同様にして、電池の初期特性および低温特性を評価した。結果を表1に示す。
比較例3
電解液としてEC:DMC:MEC=8:12:0(重量比)からなる混合溶媒にLiPF6を濃度1mol/lで溶解した溶液を用いる以外は実施例1と同様にして、電池の初期特性および低温特性を評価した。結果を表1に示す。
比較例4
電解液としてEC:DMC:MEC=8:0:12(重量比)からなる混合溶媒にLiPF6を濃度1mol/lで溶解した溶液を用いる以外は実施例1と同様にして、電池の初期特性および低温特性を評価した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示す結果から明らかな様に、電解液用非水系溶媒中のECとDMCの合計量およびEC/DMCの配合比のいずれか一方が、本発明の範囲外となる場合には、満足すべき低温特性が得られない。
比較例5〜6
実施例1で用いたものと同様の正極および負極を用いて18650型の従来の円筒電池(直径18mm、高さ65mm)を組んだ。セパレータにはポリエチレン製微孔膜(旭化成工業(株)製、HIPORE6022、目付13.3g/m2)を用いた。電解液としては、実施例1で用いたものと同組成の電解液と比較例2で用いたものと同組成の電解液とをそれぞれ使用した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
従来の円筒型電池の場合には、電解液用非水系溶媒中のECとDMCの合計量およびEC/DMCの配合比に関係なく、いずれの電池も低温特性は良好であり、本発明の様な厳密な電解液用溶媒組成の調整を必要としないことが、明らかである。
【0042】
【発明の効果】
以上から明らかな通り、本発明によれば、扁平型電池、特に、大容量且つ高体積エネルギー密度を有する扁平型電池において、特定の組成の電解液を選択することにより、低温特性、レート特性、放熱特性に優れた非水系二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施による形態の蓄電システム用非水系二次電池の平面図及び側面図を示す図である。
【図2】図1に示す電池の内部に収納される電極積層体の構成を示す側面図である。
【図3】小型のフィルム電池の構造の説明図である。
【図4】本発明の非水系二次電池の実施例に用いた電極の説明図である。
【図5】本発明の実施例における電池の厚み測定場所の説明図である。
【符号の説明】
1…上蓋
2…底容器
3…正極端子
4…負極端子
5…注液口
6…封口フィルム
51…上蓋
52…底容器
53…熱可塑性樹脂
101a…正極
101b…負極
101c…負極
104…セパレータ
104a…セパレータ
104b…セパレータ
105a…集電体
105b…集電体
106a…正極集電片
106b…負極集電体
Claims (5)
- 正極、負極およびリチウム塩を非水系溶媒に溶解して得られる非水系電解質を備えた有機電解質電池において、(1)非水系溶媒が、エチレンカーボネートおよびジメチルカーボネートと第三成分としてそれ以外の少なくとも1種の非水系溶媒とを含む混合溶媒であり、(2)エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの合計重量が、全溶媒重量の55〜90%であり、(3)ジメチルカーボネート/エチレンカーボネート(重量比)が1以上であり、(4)電池のエネルギー容量が30Wh以上であり、(5)電池の体積エネルギー密度が180Wh/l以上であり、かつ(6)電池が厚さ12mm未満の扁平形状であることを特徴とする蓄電システム用有機電解質電池。
- 非水系混合溶媒中の第三成分が、メチルエチルカーボネートである請求項1に記載の蓄電システム用有機電解質電池。
- 前記扁平形状の表裏面が、矩形である請求項1または2に記載の蓄電システム用有機電解質電池。
- 正極がマンガン酸化物を含み、負極がリチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質を含んでいる請求項1または2に記載の蓄電システム用有機電解質電池。
- 電池容器の板厚が、0.2〜1mmである請求項1、2または3に記載の蓄電システム用有機電解質電池。
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