JP4023763B2 - 導電性キャリアテープ - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の電子部品、精密部品などを個別に収納して、搬送、保管するための収納ポケットを連続的に多数設けた導電性キャリアテープに関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般に、ＩＣやトランジスタなどの電子部品や精密部品は、キャリアテープの凹部を構成する収納ポケットに収納された後、その開口部をトップテープによって封止され、搬送や保管、さらには部品実装に使用されている。
このようなキャリアテープは、基材として、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アモルファスポリエステル、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂からなるシートを使用し、このシートをプレス成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形して電子部品収納用の収納ポケットを成形し、キャリアテープを作製していた。
キャリアテープは、搬送中や実装時の振動による摩擦が原因となって発生する静電気によって、電子部品の性能を低下させてしまう可能性があるため、電子部品を保護する観点から、導電性を付加する形態がとられていた。
【０００３】
このようなキャリアテープに発生する静電気を除去する方法としては、キャリアテープ基材である熱可塑性樹脂シート中に導電性フィラーとしてカーボンブラックを練り込む方法、熱可塑性樹脂シート上の片面、もしくは両面に帯電防止剤を塗布する方法、あるいは導電性塗工剤を塗布する方法などが知られている。
【０００４】
しかし、上記熱可塑性樹脂シート中にカーボンブラックを練り込む方法では、流動性や成形性が低下して、キャリアテープ成形不良が発生しやすくなり、また、成形加工することによって導電性能を維持することが困難になる場合があり、安定した成形性及び導電性能を維持できる導電性キャリアテープは望めなかった。
【０００５】
そこで、上記欠点を解消するため、出願人は、先に、ポリエステル系樹脂の水性分散液、導電性付与剤及び軟化点１００℃以上で、粒径２〜１０μｍのポリオレフィン系樹脂の水性分散液を含有し、各成分の固形分比が特定の範囲内にあるプラスチック被覆用導電性組成物（特許第２７６１１６４号公報参照）を提案し、これを用いて、熱可塑性樹脂シートの片面もしくは両面に導電層を形成させたキャリアテープを開発した。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記キャリアテープでは、ロングラン成形時に導電性組成物中にブロッキング防止剤として含まれるオレフィン系樹脂が溶融して成形金型やキャリアテープに異物として付着することが判明した。
【０００７】
そのため、キャリアテープの収納ポケット内に異物が付着した場合には、収納される電子部品に異物が転写され、部品性能の低下や不良の原因につながるという問題があった。
また、キャリアテープのトップテープ貼着面に異物が付着した場合には、該トップテープの接着不良、あるいは剥離強度の低下やバラツキの原因になるという問題もあった。
さらに、金型内に異物が付着した場合には、成形不良の要因となるため、製造を中断して金型内の清掃を行わなければならなかった。
【０００８】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべく、成形不良や導電性能の低下を防止し、ロングラン成形時においても異物付着のない実用上極めて望ましい導電性キャリアテープを提供することを課題とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、キャリアテープ基材である熱可塑性樹脂シートの電子部品を収納する側の面もしくは両面に、ポリエステル系樹脂の水性分散液と、導電性カーボン、及び軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液とを含有する混合物を用いてなる導電層を設けた導電性キャリアテープであり、前記導電層がポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と導電性カーボンとの重量比が９５：５〜５０：５０であり、かつ前記ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び前記導電性カーボンの合計重量と軟化点１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分との重量比が９９：１〜７５：２５である混合物を用いたものであることが好ましい。
【００１０】
また、キャリアテープ基材である熱可塑性樹脂シートの電子部品を収納する側の面もしくは両面に、ポリエステル系樹脂の水性分散液と、導電性金属化合物、及び軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液とを含有する混合物を用いてなる導電層を設けた導電性キャリアテープであり、前記導電層がポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と導電性金属化合物との重量比が７５：２５〜４０：６０であり、かつ前記ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び前記導電性金属化合物の合計重量と軟化点１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液との固形分の重量比が９９：１〜７５：２５である混合物を用いたものであることが好ましい。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の導電性キャリアテープを添付図面に基づいて詳細に説明する。図１は、本発明の導電性キャリアテープの一例を示す縦断面図である。この図に示すように、導電性キャリアテープ１は、基材２の電子部品を収納する側の面もしくは両面に導電層３が設けられている構成である。基材２は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アモルファスポリエステル、ポリカーボネート、ＡＢＳ樹脂等の熱可塑性樹脂からなるシートが使用される。このシートの厚さは、０．２〜０．５ｍｍが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂のシート中に少量のカーボンブラックを混合して黒色に着色したシートであっても良い。
【００１２】
導電層３は、▲１▼ポリエステル系樹脂の水性分散液、▲２▼導電性付与剤としての導電性カーボンまたは導電性金属化合物、▲３▼ポリアミド系樹脂の水性分散液、の各成分を含有する混合物を用いたものである。
前記▲１▼のポリエステル系樹脂の水性分散液は、導電性付与剤である前記導電性カーボンまたは導電性金属化合物と前記ポリアミド系樹脂のバインダーとして働くとともに、基材２と導電性付与剤及びポリアミド系樹脂とのバインダーとしての機能も備えている。
【００１３】
ポリエステル系樹脂は、多塩基酸と多価アルコールの重縮合で得られる、カルボキシル基と水酸基との間のエステル結合を主鎖中に有するものであり、飽和、不飽和のいずれでもよい。また、スチレン、アクリレート、ウレタン等との共重合体であってもよい。ポリエステル系樹脂の水性分散液は、単独でも二種以上を併用したものでも使用することができる。
【００１４】
上記▲２▼の導電性カーボンは、良好な導電性及び帯電防止性の付与を目的として使用されるもので、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンウィスカー等が挙げられる。
【００１５】
上記▲３▼のポリアミド系樹脂の水性分散液は、基材２や導電層３に対して耐ブロッキング性や耐擦傷性を向上させる。また、本発明に用いられるポリアミド系樹脂としては、ナイロン６、ナイロン６６、ナイロン４６、ナイロン１１、ナイロン１２、ナイロン６１０、共重合ナイロン等が挙げられ、これらの水性分散液は、通常用いられる方法により製造される。
【００１６】
前記ポリアミド系樹脂は、軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下の範囲のものを使用することが重要である。この軟化点が１２０℃未満であると、成形時の熱で金型に付着しやすくなる。また、粒径が１μｍ未満であるとブロッキング防止機能が低下し、逆に１０μｍを超えると導電層３から脱落しやすくなる。
【００１７】
本発明において、混合物を構成する上記▲１▼〜▲３▼の各成分の固形分の重量比を特定の範囲に規定にすることが好ましい。その範囲は、まずポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と導電性カーボンとの重量比が９５：５〜５０：５０であることが望ましい。導電性カーボンの比率が５％未満であると導電性が損なわれ、逆に５０％を超えると導電層３が脆くなる。
さらに、ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び導電性カーボンの合計重量と軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分との重量比は、９９：１〜７５：２５の範囲が好ましく、特には９８：２〜８０：２０であることがより好ましい。
ポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分の比率が１％未満であると、高温時のブロッキング性が悪くなり、逆に２５％を超えると基材２への密着性が悪くなる。
【００１８】
本発明は、前記導電性カーボンに代えて、導電性金属化合物を使用することもできる。導電性金属化合物としては、例えば、白艶華、酸化錫で被覆した酸化チタン粒子、アルミニウムをドープした酸化亜鉛粒子、チタン酸カリウムウィスカー等が挙げられる。
導電性金属化合物を使用した場合、各成分の範囲はポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と導電性金属化合物との重量比が７５：２５〜４０：６０であることが好ましい。導電性金属化合物の比率が２５％未満であると導電性が良好な組成物が得られず、逆に６０％を超えると導電層３が脆くなる。
さらに、ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び導電性金属化合物の合計重量と軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分との重量比は、９９：１〜７５：２５の範囲が好ましく、特には９８：２〜８０：２０であることがより好ましい。
ポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分の比率が１％未満であると、高温時にブロッキングが発生しやすくなり、逆に２５％を超えるとプラスチックシートへの密着性が悪くなる。
【００１９】
本発明の導電性キャリアテープを構成する導電層３の形成方法は、上記基材の電子部品を収納する側の面もしくは両面に、上記各成分を含有する混合物でコーティングすることにより行われるが、その方法としては、浸漬法、スプレー法、フローコート法、ダイレクトグラビア法、ダイレクトグラビアリバース法、キスリバース法、メイヤーバー法、ロールコート法等が挙げられる。
前記導電層３の厚さは、通常０．５〜２０μｍの範囲、好ましくは１〜１０μｍの範囲である。また、この導電層３の表面抵抗値は、１×１０4〜１×１０8Ω／□の範囲が好ましい。
【００２０】
本発明において、導電性キャリアテープを製造するには、上記基材と導電層からなるシートを、プレス成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などの方法により、電子部品を個別に収納できる所望の収納ポケットを成形することにより製造される。この収納ポケットは、電子部品を収納できる凹部を有するものであれば、特に制限はないが、通常、図１に示した態様のものが一般的である。
【００２１】
【実施例】
次に、本発明について、実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例の記載のみに限定されるものではない。
【００２２】
厚さ０．３ｍｍ、幅６００ｍｍ、長さ５００ｍｍのアモルファスポリエチレンテレフタレート（Ａ−ＰＥＴ）シート［ＮＳ１００：出光社製、商品名］の両面に、導電層を形成するための混合物（導電塗工剤）をダイレクトグラビア法により塗布した。次いで、熱風乾燥機により７０℃で乾燥を行い、膜厚２μｍの導電層を形成させた。
なお、この混合物を構成する各成分の明細は以下のとおりである。
【００２３】
（各成分について）
▲１▼．ポリエステル系樹脂の水性分散液
ラックスキンＵＳ１８０（セイコー化成社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．（不揮発性分）は、２０％である。
▲２▼．導電性付与剤
（ａ）導電性カーボン
ライオンペーストＷ−３７６Ｒ（ライオン社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．は、１２．５％である。
（ｂ）導電性金属化合物
ライオンペーストＷＳ−５２０Ａ（ライオン社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．は、４１．５％である。
▲３▼．軟化点１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液
ＳＰ−５００（東レ社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．は、４０％である。
▲４▼．軟化点１００℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリオレフィン系樹脂の水性分散液
ケミパールＷ−３０８（三井化学社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．は、４０％である。
【００２４】
［実施例１］
混合物を構成する各成分の配合について、上記▲１▼及び▲２▼（ａ）並びに▲３▼を使用し、前記▲１▼と▲２▼（ａ）の固形分比（重量比）を、９４：６に調整し、［▲１▼＋▲２▼（ａ）］：▲３▼の固形分比（重量比）を９６：４とした。その後、得られたシートを２４ｍｍ幅にスリットし、プレス金型で２４時間連続成形を行い、深さ４．０ｍｍ、縦１５．０ｍｍ、横１３．０ｍｍの収納ポケットを有するキャリアテープを作製した。
このキャリアテープについて、成形に際しての金型内の汚れ及びキャリアテープのフランジ面あるいは収納ポケット内に異物が付着しているか否かを各時間毎に、目視により観察し、その結果を表１に示した。
なお、表1中、異物の付着がない場合…○、異物の付着がある場合…×、として評価した。
【００２５】
［比較例１］
混合物を構成する各成分の配合を、実施例１の上記▲３▼に代えて、上記▲４▼を用いた以外は、実施例１と同様にして、キャリアテープを作製した。
このキャリアテープについて、実施例１と同様の方法により異物の付着評価を行い、その結果を表１に示した。
【００２６】
［実施例２］
混合物を構成する各成分の配合について、上記▲１▼及び▲２▼（ｂ）並びに▲３▼を使用し、前記▲１▼と▲２▼（ｂ）の固形分比（重量比）を、７４：２６に調整し、［▲１▼＋▲２▼（ｂ）］：▲３▼の固形分比（重量比）を９５：５とした。その後、得られたシートを２４ｍｍ幅にスリットし、プレス金型で２４時間連続成形を行い、深さ４．０ｍｍ、縦１５．０ｍｍ、横１３．０ｍｍの収納ポケットを有するキャリアテープを作製した。
このキャリアテープについて、実施例１と同様の方法により異物の付着評価を行い、その結果を表１に示した。
【００２７】
［比較例２］
混合物を構成する各成分の配合を、実施例２の上記▲３▼に代えて、上記▲４▼を用いた以外は、実施例２と同様にして、キャリアテープを作製した。
このキャリアテープについて、実施例１と同様の方法により異物の付着評価を行い、その結果を表１に示した。
【００２８】
【表１】
【００２９】
【発明の効果】
本発明によれば、導電層がキャリアテープ基材に塗布されていることによって、導電性カーボン等を基材中に練り込んだものとは異なり、基材の流動性の低下がなく、成形性が良好となるので複雑なポケット形状や深絞りの導電性キャリアテープを提供することが可能である。
また、導電層の追随性も良く、安定した導電性能を維持することができる。
さらには、ロングラン成形においても金型やキャリアテープに異物付着がなく、成形不良やトップテープとの接着不良が発生しにくいため、品質安定、向上に多大な効果が得られる。
また、金型内に異物が付着することがないので、製造を中断して金型清掃する必要がなく、低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は、本発明の導電性キャリアテープの一例を示す概略断面説明図である。
【符号の説明】
１ 導電性キャリアテープ
２ 基材
３ 導電層
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種の電子部品、精密部品などを個別に収納して、搬送、保管するための収納ポケットを連続的に多数設けた導電性キャリアテープに関する。
【０００２】
【従来の技術】
一般に、ＩＣやトランジスタなどの電子部品や精密部品は、キャリアテープの凹部を構成する収納ポケットに収納された後、その開口部をトップテープによって封止され、搬送や保管、さらには部品実装に使用されている。
このようなキャリアテープは、基材として、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アモルファスポリエステル、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂からなるシートを使用し、このシートをプレス成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形して電子部品収納用の収納ポケットを成形し、キャリアテープを作製していた。
キャリアテープは、搬送中や実装時の振動による摩擦が原因となって発生する静電気によって、電子部品の性能を低下させてしまう可能性があるため、電子部品を保護する観点から、導電性を付加する形態がとられていた。
【０００３】
このようなキャリアテープに発生する静電気を除去する方法としては、キャリアテープ基材である熱可塑性樹脂シート中に導電性フィラーとしてカーボンブラックを練り込む方法、熱可塑性樹脂シート上の片面、もしくは両面に帯電防止剤を塗布する方法、あるいは導電性塗工剤を塗布する方法などが知られている。
【０００４】
しかし、上記熱可塑性樹脂シート中にカーボンブラックを練り込む方法では、流動性や成形性が低下して、キャリアテープ成形不良が発生しやすくなり、また、成形加工することによって導電性能を維持することが困難になる場合があり、安定した成形性及び導電性能を維持できる導電性キャリアテープは望めなかった。
【０００５】
そこで、上記欠点を解消するため、出願人は、先に、ポリエステル系樹脂の水性分散液、導電性付与剤及び軟化点１００℃以上で、粒径２〜１０μｍのポリオレフィン系樹脂の水性分散液を含有し、各成分の固形分比が特定の範囲内にあるプラスチック被覆用導電性組成物（特許第２７６１１６４号公報参照）を提案し、これを用いて、熱可塑性樹脂シートの片面もしくは両面に導電層を形成させたキャリアテープを開発した。
【０００６】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記キャリアテープでは、ロングラン成形時に導電性組成物中にブロッキング防止剤として含まれるオレフィン系樹脂が溶融して成形金型やキャリアテープに異物として付着することが判明した。
【０００７】
そのため、キャリアテープの収納ポケット内に異物が付着した場合には、収納される電子部品に異物が転写され、部品性能の低下や不良の原因につながるという問題があった。
また、キャリアテープのトップテープ貼着面に異物が付着した場合には、該トップテープの接着不良、あるいは剥離強度の低下やバラツキの原因になるという問題もあった。
さらに、金型内に異物が付着した場合には、成形不良の要因となるため、製造を中断して金型内の清掃を行わなければならなかった。
【０００８】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべく、成形不良や導電性能の低下を防止し、ロングラン成形時においても異物付着のない実用上極めて望ましい導電性キャリアテープを提供することを課題とする。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、キャリアテープ基材である熱可塑性樹脂シートの電子部品を収納する側の面もしくは両面に、ポリエステル系樹脂の水性分散液と、導電性カーボン、及び軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液とを含有する混合物を用いてなる導電層を設けた導電性キャリアテープであり、前記導電層がポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と導電性カーボンとの重量比が９５：５〜５０：５０であり、かつ前記ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び前記導電性カーボンの合計重量と軟化点１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分との重量比が９９：１〜７５：２５である混合物を用いたものであることが好ましい。
【００１０】
また、キャリアテープ基材である熱可塑性樹脂シートの電子部品を収納する側の面もしくは両面に、ポリエステル系樹脂の水性分散液と、導電性金属化合物、及び軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液とを含有する混合物を用いてなる導電層を設けた導電性キャリアテープであり、前記導電層がポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と導電性金属化合物との重量比が７５：２５〜４０：６０であり、かつ前記ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び前記導電性金属化合物の合計重量と軟化点１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液との固形分の重量比が９９：１〜７５：２５である混合物を用いたものであることが好ましい。
【００１１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の導電性キャリアテープを添付図面に基づいて詳細に説明する。図１は、本発明の導電性キャリアテープの一例を示す縦断面図である。この図に示すように、導電性キャリアテープ１は、基材２の電子部品を収納する側の面もしくは両面に導電層３が設けられている構成である。基材２は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アモルファスポリエステル、ポリカーボネート、ＡＢＳ樹脂等の熱可塑性樹脂からなるシートが使用される。このシートの厚さは、０．２〜０．５ｍｍが好ましい。また、前記熱可塑性樹脂のシート中に少量のカーボンブラックを混合して黒色に着色したシートであっても良い。
【００１２】
導電層３は、▲１▼ポリエステル系樹脂の水性分散液、▲２▼導電性付与剤としての導電性カーボンまたは導電性金属化合物、▲３▼ポリアミド系樹脂の水性分散液、の各成分を含有する混合物を用いたものである。
前記▲１▼のポリエステル系樹脂の水性分散液は、導電性付与剤である前記導電性カーボンまたは導電性金属化合物と前記ポリアミド系樹脂のバインダーとして働くとともに、基材２と導電性付与剤及びポリアミド系樹脂とのバインダーとしての機能も備えている。
【００１３】
ポリエステル系樹脂は、多塩基酸と多価アルコールの重縮合で得られる、カルボキシル基と水酸基との間のエステル結合を主鎖中に有するものであり、飽和、不飽和のいずれでもよい。また、スチレン、アクリレート、ウレタン等との共重合体であってもよい。ポリエステル系樹脂の水性分散液は、単独でも二種以上を併用したものでも使用することができる。
【００１４】
上記▲２▼の導電性カーボンは、良好な導電性及び帯電防止性の付与を目的として使用されるもので、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンウィスカー等が挙げられる。
【００１５】
上記▲３▼のポリアミド系樹脂の水性分散液は、基材２や導電層３に対して耐ブロッキング性や耐擦傷性を向上させる。また、本発明に用いられるポリアミド系樹脂としては、ナイロン６、ナイロン６６、ナイロン４６、ナイロン１１、ナイロン１２、ナイロン６１０、共重合ナイロン等が挙げられ、これらの水性分散液は、通常用いられる方法により製造される。
【００１６】
前記ポリアミド系樹脂は、軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下の範囲のものを使用することが重要である。この軟化点が１２０℃未満であると、成形時の熱で金型に付着しやすくなる。また、粒径が１μｍ未満であるとブロッキング防止機能が低下し、逆に１０μｍを超えると導電層３から脱落しやすくなる。
【００１７】
本発明において、混合物を構成する上記▲１▼〜▲３▼の各成分の固形分の重量比を特定の範囲に規定にすることが好ましい。その範囲は、まずポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と導電性カーボンとの重量比が９５：５〜５０：５０であることが望ましい。導電性カーボンの比率が５％未満であると導電性が損なわれ、逆に５０％を超えると導電層３が脆くなる。
さらに、ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び導電性カーボンの合計重量と軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分との重量比は、９９：１〜７５：２５の範囲が好ましく、特には９８：２〜８０：２０であることがより好ましい。
ポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分の比率が１％未満であると、高温時のブロッキング性が悪くなり、逆に２５％を超えると基材２への密着性が悪くなる。
【００１８】
本発明は、前記導電性カーボンに代えて、導電性金属化合物を使用することもできる。導電性金属化合物としては、例えば、白艶華、酸化錫で被覆した酸化チタン粒子、アルミニウムをドープした酸化亜鉛粒子、チタン酸カリウムウィスカー等が挙げられる。
導電性金属化合物を使用した場合、各成分の範囲はポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と導電性金属化合物との重量比が７５：２５〜４０：６０であることが好ましい。導電性金属化合物の比率が２５％未満であると導電性が良好な組成物が得られず、逆に６０％を超えると導電層３が脆くなる。
さらに、ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び導電性金属化合物の合計重量と軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分との重量比は、９９：１〜７５：２５の範囲が好ましく、特には９８：２〜８０：２０であることがより好ましい。
ポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分の比率が１％未満であると、高温時にブロッキングが発生しやすくなり、逆に２５％を超えるとプラスチックシートへの密着性が悪くなる。
【００１９】
本発明の導電性キャリアテープを構成する導電層３の形成方法は、上記基材の電子部品を収納する側の面もしくは両面に、上記各成分を含有する混合物でコーティングすることにより行われるが、その方法としては、浸漬法、スプレー法、フローコート法、ダイレクトグラビア法、ダイレクトグラビアリバース法、キスリバース法、メイヤーバー法、ロールコート法等が挙げられる。
前記導電層３の厚さは、通常０．５〜２０μｍの範囲、好ましくは１〜１０μｍの範囲である。また、この導電層３の表面抵抗値は、１×１０4〜１×１０8Ω／□の範囲が好ましい。
【００２０】
本発明において、導電性キャリアテープを製造するには、上記基材と導電層からなるシートを、プレス成形、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などの方法により、電子部品を個別に収納できる所望の収納ポケットを成形することにより製造される。この収納ポケットは、電子部品を収納できる凹部を有するものであれば、特に制限はないが、通常、図１に示した態様のものが一般的である。
【００２１】
【実施例】
次に、本発明について、実施例及び比較例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例の記載のみに限定されるものではない。
【００２２】
厚さ０．３ｍｍ、幅６００ｍｍ、長さ５００ｍｍのアモルファスポリエチレンテレフタレート（Ａ−ＰＥＴ）シート［ＮＳ１００：出光社製、商品名］の両面に、導電層を形成するための混合物（導電塗工剤）をダイレクトグラビア法により塗布した。次いで、熱風乾燥機により７０℃で乾燥を行い、膜厚２μｍの導電層を形成させた。
なお、この混合物を構成する各成分の明細は以下のとおりである。
【００２３】
（各成分について）
▲１▼．ポリエステル系樹脂の水性分散液
ラックスキンＵＳ１８０（セイコー化成社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．（不揮発性分）は、２０％である。
▲２▼．導電性付与剤
（ａ）導電性カーボン
ライオンペーストＷ−３７６Ｒ（ライオン社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．は、１２．５％である。
（ｂ）導電性金属化合物
ライオンペーストＷＳ−５２０Ａ（ライオン社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．は、４１．５％である。
▲３▼．軟化点１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液
ＳＰ−５００（東レ社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．は、４０％である。
▲４▼．軟化点１００℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリオレフィン系樹脂の水性分散液
ケミパールＷ−３０８（三井化学社製、商品名）を用いた。
なお、Ｎ．Ｖ．は、４０％である。
【００２４】
［実施例１］
混合物を構成する各成分の配合について、上記▲１▼及び▲２▼（ａ）並びに▲３▼を使用し、前記▲１▼と▲２▼（ａ）の固形分比（重量比）を、９４：６に調整し、［▲１▼＋▲２▼（ａ）］：▲３▼の固形分比（重量比）を９６：４とした。その後、得られたシートを２４ｍｍ幅にスリットし、プレス金型で２４時間連続成形を行い、深さ４．０ｍｍ、縦１５．０ｍｍ、横１３．０ｍｍの収納ポケットを有するキャリアテープを作製した。
このキャリアテープについて、成形に際しての金型内の汚れ及びキャリアテープのフランジ面あるいは収納ポケット内に異物が付着しているか否かを各時間毎に、目視により観察し、その結果を表１に示した。
なお、表1中、異物の付着がない場合…○、異物の付着がある場合…×、として評価した。
【００２５】
［比較例１］
混合物を構成する各成分の配合を、実施例１の上記▲３▼に代えて、上記▲４▼を用いた以外は、実施例１と同様にして、キャリアテープを作製した。
このキャリアテープについて、実施例１と同様の方法により異物の付着評価を行い、その結果を表１に示した。
【００２６】
［実施例２］
混合物を構成する各成分の配合について、上記▲１▼及び▲２▼（ｂ）並びに▲３▼を使用し、前記▲１▼と▲２▼（ｂ）の固形分比（重量比）を、７４：２６に調整し、［▲１▼＋▲２▼（ｂ）］：▲３▼の固形分比（重量比）を９５：５とした。その後、得られたシートを２４ｍｍ幅にスリットし、プレス金型で２４時間連続成形を行い、深さ４．０ｍｍ、縦１５．０ｍｍ、横１３．０ｍｍの収納ポケットを有するキャリアテープを作製した。
このキャリアテープについて、実施例１と同様の方法により異物の付着評価を行い、その結果を表１に示した。
【００２７】
［比較例２］
混合物を構成する各成分の配合を、実施例２の上記▲３▼に代えて、上記▲４▼を用いた以外は、実施例２と同様にして、キャリアテープを作製した。
このキャリアテープについて、実施例１と同様の方法により異物の付着評価を行い、その結果を表１に示した。
【００２８】
【表１】
【発明の効果】
本発明によれば、導電層がキャリアテープ基材に塗布されていることによって、導電性カーボン等を基材中に練り込んだものとは異なり、基材の流動性の低下がなく、成形性が良好となるので複雑なポケット形状や深絞りの導電性キャリアテープを提供することが可能である。
また、導電層の追随性も良く、安定した導電性能を維持することができる。
さらには、ロングラン成形においても金型やキャリアテープに異物付着がなく、成形不良やトップテープとの接着不良が発生しにくいため、品質安定、向上に多大な効果が得られる。
また、金型内に異物が付着することがないので、製造を中断して金型清掃する必要がなく、低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図１】図１は、本発明の導電性キャリアテープの一例を示す概略断面説明図である。
【符号の説明】
１ 導電性キャリアテープ
２ 基材
３ 導電層
Claims (4)
- 電子部品を個別に収納するための収納ポケットを連続的に多数設けたキャリアテープであって、基材と導電層とからなり、前記基材が熱可塑性樹脂シートであり、該基材の電子部品を収納する側の面もしくは両面に、ポリエステル系樹脂の水性分散液と、導電性カーボン、及び軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液とを含有する混合物を用いてなる導電層を設けたことを特徴とする導電性キャリアテープ。
- 導電層は、ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と導電性カーボンとの重量比が９５：５〜５０：５０であり、かつポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び前記導電性カーボンの合計重量と軟化点１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分との重量比が９９：１〜７５：２５である混合物を用いてなる請求項１記載の導電性キャリアテープ。
- 電子部品を個別に収納するための収納ポケットを連続的に多数設けたキャリアテープであって、基材と導電層とからなり、前記基材が熱可塑性樹脂シートであり、該基材の電子部品を収納する側の面もしくは両面に、ポリエステル系樹脂の水性分散液と、導電性金属化合物、及び軟化点が１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液とを含有する混合物を用いてなる導電層を設けたことを特徴とする導電性キャリアテープ。
- 導電層は、ポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分と前記導電性金属化合物との重量比が７５：２５〜４０：６０であり、かつポリエステル系樹脂の水性分散液の固形分及び導電性金属化合物の合計重量と軟化点１２０℃以上で、粒径１μｍ以上１０μｍ以下のポリアミド系樹脂の水性分散液の固形分との重量比が９９：１〜７５：２５である混合物を用いてなる請求項３記載の導電性キャリアテープ。
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