JP4022991B2 - フェライト−マルテンサイト2相ステンレス溶接鋼管 - Google Patents

フェライト−マルテンサイト2相ステンレス溶接鋼管 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿潤炭酸ガスを含んだ原油や天然ガス等の流体を輸送するためのラインパイプ、あるいは化学プラント用配管として好適な、耐食性に優れたフェライト−マルテンサイト2相ステンレス溶接鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エネルギー事情の悪化により、炭酸ガスや硫化水素を多く含む原油・天然ガス井が開発されるようになってきた。
【0003】
湿潤炭酸ガスのみを含む環境、あるいはさらに極微量の硫化水素を含む環境では、耐食性の観点から、油井管としてはAISI 420に代表される降伏応力80ksi以上の高強度マルテンサイト系高C−13Cr鋼(0.2C−13Cr鋼)が使用されている(1ksi=0.703kgf/mm 2 =6.89N)。ラインパイプ用としては、溶接施工が必要な観点から、AISI 410に代表される、やはりマルテンサイト系の低C−13Cr鋼(0.1C−13Cr鋼)が使用されてきた。しかし、マルテンサイト系であるので強度はやはりX80級(80〜90ksi)の高強度になる。このAISI 410は、一般的に0.1%程度のCを含有し、溶接は可能であるが、溶接低温割れを防ぐために、予後熱処理が必要となり、施工コストがかさむという問題がある。
【0004】
ラインパイプとして要求される強度は、井戸条件や、操業条件等に左右されるが、X65相当の鋼管が要求されることも多い。
【0005】
2相ステンレス鋼(たとえば、22Cr−5Ni−3Mo系)は、AISI410以上の耐食性を有し、溶接性も良好であり、強度はX65級となることからラインパイプに用いられてきたが、合金元素を多量に含むことから高価であるという問題がある。
【0006】
最近では、上記のような問題点に鑑み、極低C化して予後熱処理が不要な程度にまで溶接性を高め、合金元素の含有も少なくした13Cr鋼の改良鋼が開発され、実際にラインパイプ用途に適用されつつある。
【0007】
これらの鋼管は、一般に、継目無製管法で製造されることが多い。継目無鋼管は、信頼性に関して高く評価されているが、下記するようないくつかの問題がある。
【0008】
すなわち、継目無製管法では製管の原理上、肉厚10mm以下の薄肉管の製造が困難なことである。また、オーステナイト単相域で製管できれば容易であるが、フェライト−オーステナイト2相域での製管となり、中かぶれが発生するという問題が生じ製造は容易ではない。さらに、継目無鋼管は真円度の面で溶接鋼管に及ばない。
【0009】
ラインパイプの溶接施工において望まれることは、溶接時の積層数を減らす為に、強度の許す範囲でなるべく薄肉であること、鋼管管端の突き合わせが容易なように、真円度に優れ、内径公差が小さいことである。
【0010】
したがって、ラインパイプ用鋼管の分野では、経済性の観点から、薄肉製管が可能で、真円度に優れた溶接鋼管が望まれている。
【0011】
このような観点から、近年、高耐食性ステンレス溶接鋼管の製造方法が開発されてきた。
【0012】
特開平4−191319(特公平7−5972)号公報には、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプの製造方法が開示されている。
【0013】
この方法は、炭素含有量が質量%で0.08%以下のマルテンサイト系ステンレスの熱延鋼帯を連続的に円筒状に成形しつつ鋼帯両端を電縫溶接して鋼管とし、次いで所定の条件で、焼入れ焼戻し処理する方法である。
【0014】
また、特開平9−164425号公報には、レーザー溶接法を用いた、マルテンサイト系ステンレス鋼ラインパイプの製造方法が開示されている。この方法は、マルテンサイトステンレス鋼帯を、所定の条件で、レーザー溶接により造管した後、850〜1000℃の温度域に加熱し、その後600〜700℃の温度域に加熱して、20℃/sで常温まで冷却する方法である。
【0015】
しかし、これらの方法ではマルテンサイト系ステンレス鋼を対象としており、造管後の焼入、焼戻に相当する熱処理が必要となる。焼入、焼戻による強度調整は比較的容易であるという長所がある。しかし、熱処理工程が増え、また、熱処理時に生成した酸化スケールを除去する必要が生じるなど、生産性がわるく製造コスト高となる。
【0016】
製管後の熱処理を避けるためには、熱間圧延後の巻取った段階での緩冷却でも焼きが入るように、焼入性を高める必要がある。Niの多量添加は、焼入性を高めるには好適であるが、合金元素多量添加によるコストアップが問題となる。
【0017】
また、鋼板の状態での強度上昇は、溶接製管を困難とするので、鋼板強度は低い方が望ましい。
【0018】
一方、特開昭63−278688号公報には、レーザー溶接法を用いたオーステナイト系ステンレス鋼ラインパイプの製造方法が、また特開昭63−278689号公報には、レーザー溶接法を用いたフェライト系ステンレス鋼ラインパイプの製造方法が開示されている。
【0019】
しかし、オーステナイト系ステンレス鋼、およびフェライト系ステンレス鋼では強度が低すぎてラインパイプ用には適さない。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、湿潤炭酸ガスを含んだ原油や天然ガス等の流体を輸送するためのラインパイプ、あるいは化学プラント用配管として好適な、耐食性に優れた強度グレードが、API規格(アメリカ石油協会規格)5LCにおいて、X56〜70級(56〜85ksi)に相当する安価なフェライト−マルテンサイト2相ステンレス溶接鋼管を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、以下に示す通りである。
【0022】
質量%で、C:0.05%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Ni:0.7〜4%、Cr:9〜15%、Al:0.1%以下、N:0.02%以下、Cu:0〜1.2%、Mo:0〜1.2%、Ti:0.2%以下、V:0.1%以下を含み、残部はFe及び不可避的不純物からなり、金属組織が、下記式を満足するフェライト相とマルテンサイト相の2相組織からなることを特徴とするフェライト−マルテンサイト2相ステンレス溶接鋼管。
【0023】
10+100C+80N+Ni+0.3Cu≦フェライト率(体積%)≦60+Cr+2.5Mo
ただし、上記式における元素記号は、含有量(質量%)を示す
【0024】
発明者らは、強度がラインパイプとして好適なX56〜70級(56〜85ksi)であり、安価な合金成分からなり、周溶接のための予後熱処理および造管時の焼入れ焼き戻し熱処理を省略することのできる鋼管を開発すべく種々実験を重ねた結果以下のような知見を得た。
【0025】
a)ラインパイプや化学プラント用配管としては、マルテンサイト系ステンレス鋼では強度が高か過ぎ、フェライト系やオーステナイト系ステンレス鋼では強度が低く過ぎるが、フェライト−マルテンサイト2相ステンレス鋼では適度な強度が得られる。また、安価な成分設計が可能であ。
【0026】
b)フェライト−マルテンサイト2相組織を有する鋼管を、継目無製管法で造管することは困難であるので、熱延あるいは厚板圧延で鋼板を製造してから、溶接する方法によれば造管することができる。
【0027】
c)強度に影響するのは、主として、▲1▼金属組織のマルテンサイト率、▲2▼フェライト相固溶強化元素(Mo、Cr)量および▲3▼マルテンサイト相固溶強化元素(C、N、Ni、Cu)量である。
【0028】
d)強度を下げるために、フェライト率は10%を超えることが必要である。望ましいフェライト率は20%以上である。
【0029】
e)しかし、マルテンサイト率が同じであっても、フェライト相、マルテンサイト相の固溶強化元素の含有量が多くなると、強度が上昇する。所望の強度に制御するための条件は、フェライト相、マルテンサイト相の固溶強化元素の含有量とフェライト相比との関係で下記式で整理できる。
【0030】
10+100C+80N+Ni+0.3Cu≦フェライト体積率(%)≦60+Cr+2.5Mo
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の溶接鋼管における諸条件を規定した理由を以下に説明する。
【0032】
(1)化学組成(以下、%表示は質量%を示す)
C:0.05%以下
C含有量が0.05%を超えると、フェライト相を安定かつ容易に確保するのが困難となり、また、マルテンサイト相の強度上昇を招いて、結果として高強度となる。さらに、Cr炭化物析出による耐炭酸ガス腐食性の劣化や、溶接部での硬度上昇を招いて耐硫化物応力割れ性の劣化が起こる。望ましいC量は0.03%以下で、少なければ少ないほどよい。
【0033】
Si:1%以下
Siは、脱酸剤として添加するが、1%を超えると清浄度がわるくなり靭性が劣化するので、上限を1%とした。
【0034】
Mn:1%以下
Mnも、脱酸剤として添加するが、Mnはオーステナイト安定化元素であるので、1%を超えるとマルテンサイト相が優先した組織となるので上限を1%とした。望ましくは0.5%以下である。
【0035】
Ni:0.7〜4%
Ni含有量が、0.7%未満ではマルテンサイト相を安定かつ容易に確保するのが困難となる。また、ラインパイプ用鋼管として微量の硫化水素を含む環境中で使用した場合、耐食性能を有する耐食性皮膜が形成されないため、必要な耐食性が確保できない。望ましくは、1%以上である。一方、4%を超えると、マルテンサイト相が多くなり、特に、Niの必要以上の固溶強化作用により溶接部において、マルテンサイト相の強度上昇を招いて、ラインパイプ用鋼管として微量の硫化水素を含む環境中で使用した場合、必要な耐食性が確保できない。望ましくは1%以上である。
【0036】
Cr:9〜15%
Crは、湿潤炭酸ガス環境下で優れた耐食性を示す元素で、含有量が9%未満では、母材部を含めてその鋼表面に充分な耐食性能を有する耐食性皮膜が形成されない。そのため、ラインパイプ用鋼管として炭酸ガスや硫化水素を含む環境中で使用した場合、必要な耐食性が確保できない。望ましくは10%以上である。一方、Crはフェライト安定化元素であるので、15%を超えて多量になると、オーステナイトを安定化させ、引いてはマルテンサイトを生成する元素である高価なNi等の合金元素の含有量を増量する必要が生じる。したがって、素材コストの上昇を招きフェライト−マルテンサイト2相ステンレス鋼の経済性が損なわれる。
【0037】
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として有効であるが、0.1%を超えると清浄度が悪化して靭性が低下するので上限を0.1%とした。
【0038】
N:0.02%以下
不純物としてのNは、含有量が0.02%を超えるとフェライト相を安定かつ容易に確保するのが困難となる。また、マルテンサイト相の強度上昇を招いて、結果として鋼管が高強度となり耐硫化物応力割れ性が低下する。さらに、熱間加工性が損なわれ、熱延鋼帯の製造が困難となる。望ましいN量は0.01%以下である。
【0039】
Cu:0〜1.2%
Cuは耐食性、特に微量のH2Sを含むCo2環境での耐食性を維持するために必要により含有させる元素で、Niと同様オーステナイトを安定化させ、引いてはマルテンサイトを生成させ、固溶強化によりマルテンサイト相の強度を上昇させる元素であるが、その効果はNiほど強くなく、1.2%を超えると耐食性の観点からも効果が飽和するので上限を1.2%とした。
【0040】
Mo:0〜1.2%
MoもCuと同じ効果を有し、必要により含有させる元素である。ただし、Cuと異なり、Crと同様にフェライト安定化元素であるので、1.2%を超えると、オーステナイトを安定化させ、引いてはマルテンサイトを生成する元素である高価なNi等の合金元素の含有量を増量する必要が生じる。また、Moは高価な元素であるので多量の添加はコストの上昇を招いてフェライト−マルテンサイト系ステンレス鋼の経済性が損なわれる。
【0041】
このように、Cu、Moは耐食性、特に耐局部腐食性と、耐硫化物応力割れ性を高める場合に含有させるのがよい。
【0042】
Ti:0.2%以下
Tiは13Cr鋼において不可避的不純物であるVの悪影響を除く場合に積極的に含有させる元素である。すなわち、TiはVよりもCに対する親和力が強いので、TiCとしてCを固定し、VCの析出を防止する。TiCは強化に寄与しないので、低強度に安定化させることができる。0.2%を超えると効果が飽和するばかりか、熱間加工性を悪化させる。望ましくは、0.1%以下である。
【0043】
V:0.1%以下
Vは、Cr鉱石から不可避的に混入する元素であるが、0.1%を超えると、微細なVCが析出するので高強度になり過ぎる。高強度になると、特に耐硫化物応力腐食割れ性が低下し、溶接低温割れ感受性も高くなる。したがって、上限を0.1%とした。望ましくは0.05%以下である。
【0044】
なお、不純物中のSは、0.005%以下、Pは0.04%以下にするのが好ましい。
【0045】
(2)金属組織、フェライト体積
度はフェライト体積率のみで規制することはできないので、強度に影響する合金元素の含有量も考慮しなくてはなら、下記式を満足させる必要がある。
【0046】
10+100C+80N+Ni+0.3Cu≦フェライト体積率(%)≦60+Cr+2.5Mo
元素記号は、含有量(質量%)である。
【0047】
なお、フェライト体積率は、点算法により求めることができる。すなわち、ミクロ組織を100倍の顕微鏡写真(7.3cm×9.5cm)を5視野撮って4倍に拡大し、5mmピッチで升目を写真に書いて、格子点がフェライト中にあれば1点、マルテンサイト中にあれば0点、フェライトとマルテンサイトの境界にあれば0.5点として全格子について調べて合計点を算出して、その点数を全格子点数で割って求めることができる。
【0048】
C、N、NiおよびCuのような、マルテンサイト相固溶強化元素が多いと、マルテンサイト相の強度が高くなり、それに引きずられて鋼全体の強度が高くなるので、フェライト体積率(%)≧10+[100C+80N+Ni+0.3Cu]を満足するように、フェライト相を確保しなければならない。
【0049】
また、Cr及びMoのような、フェライト相固溶強化元素が多いと、フェライト相の強度が高くなるので、フェライト体積率(%)≦60+[Cr+2.5Mo]の範囲でフェライト率を制限し、必要な強度に制御する必要がある。上式を満足しないと、56〜85ksiの強度(降伏応力)が得られない。
【0050】
上記の式は、C、N、NiおよびCuのような、マルテンサイト相固溶強化元素が少なくて、マルテンサイト相の強度が低ければフェライト相率が低くても、必要な強度に制御することが可能であり、逆に、Cr及びMoのようなフェライト相固溶強化元素が多くて、フェライト相の強度が高ければフェライト相率が高くても、必要な強度に制御することが可能であるということを意味している。
【0051】
なお、本発明のフェライト−マルテンサイト2相ステンレス溶接鋼管には、数%程度の残留オーステナイトを含んでもよい。次に、本発明の溶接鋼管の製造方法について説明する。
【0052】
素材として熱延鋼板あるいは厚鋼板を用い、通常の分塊圧延および熱間圧延により製造したものでよい。フェライト−マルテンサイト2相組織を有する鋼板を製造することは上記通常の圧延で比較的容易である。熱延鋼板あるいは厚鋼板は、通常の方法により目標の鋼管外周長とほぼ同じ幅に切断して円筒状に成形して突き合わせた部分を溶接して溶接鋼管とする。
【0053】
円筒状に成形する方法は通常の方法でよく、熱延鋼板の場合鋼帯を多数のロールスタンドで連続的に管状に成形する。また、厚鋼板の場合も通常のCプレス、UプレスおよびOプレスにより段階的に成形する。
【0054】
溶接方法も通常の方法でよく、電縫溶接、サブマージドアーク溶接、プラズマ溶接、TIG溶接、レーザ溶接等がある。
【0055】
生産性と溶接部の品質を兼ね備え、溶加材料が不要という長所も考慮すれば、最近開発されたレーザー溶接製管法が最も適している。
【0056】
また、溶加材料を用いる場合は、希釈の問題を考慮する必要があるが、普及品の22Crの2相系ステンレス鋼材が、強度もマッチングし、耐食性も母材以上であるので、使用することができる。次の実施例に示すように、その溶加材料を用いて溶接した鋼管は何ら品質に問題がないことを確認している。
【0057】
いずれの溶接法を採用しても、溶接後の熱処理は不要である。なぜならば、フェライト−マルテンサイト2相系を狙った成分系であるので、溶接部の組織は必然的にフェライト−マルテンサイト2相組織となり、機械的性質その他の面で不都合は生じない。もちろん、熱処理を実施することは、性能安定化につながるので、実施を制限するものではない。
【0058】
また、溶接鋼管は通常溶接後、焼入れ焼き戻し熱処理が施されて強度調整がなされる。しかし、本発明で規定する範囲内の化学組成としたフェライト−マルテンサイトの2相ステンレス鋼からなる溶接鋼管は、造管後焼入れ、焼戻し処理を施さなくても56〜85ksiの強度が得られる。
【0059】
溶接鋼管の素材とて用いた熱延鋼板及び厚鋼板の化学組成、フェライト率、「10+100C+80N+Ni+0.3Cu」の式の値及び「60+Cr+2.5Mo」の式の値を表1に示す。
【0060】
【表1】
Figure 0004022991
【0061】
鋼C、E〜I、K及びP〜Rは、厚さ5.5mmの熱延鋼板の化学組成である。この鋼板の熱履歴は、加熱温度:1250℃、熱間圧延仕上温度:950℃、巻取温度:550℃である。
【0062】
また、鋼S〜Uは、厚さ25.4mmの厚鋼板の化学組成である。この厚鋼板の熱履歴は、加熱温度:1150℃、熱間圧延仕上げ温度:850℃、熱間圧延後:水冷により600℃以下まで加速冷却である。
【0063】
これらの鋼のフェライト率はミクロ組織写真から点算法にて求めたものである。これらの熱延鋼板及び厚鋼板を、表2に示す条件で溶接して溶接鋼管を製造した。溶接後はいかなる熱処理も施さなかった。
【0064】
熱延鋼板に対しては、C、E〜I、K及びP〜Rの全鋼種で、オープンパイプ状に成形して、両エッヂ相互の突き合わせ部に上方よりレーザービームを照射するレーザ溶接製管法を適用し、一部の鋼種については電縫溶接製管法並びにTIG溶接製管法を適用した。また、厚鋼板に対しては、サブマージドアーク溶接製管法を適用した。
【0065】
TIG溶接並びにサブマージドアーク溶接の適用に際しては、溶加材料として22Cr2相ステンレス鋼を使用した。
【0066】
得られた各溶接管から溶接部が幅方向の中央に位置するように応力腐食試験片(厚さ2mm×幅10mm×長さ75mm−ノッチ無し)を採取した。これらの試験片に通常の4点曲げ法によって素材鋼板の母材降伏応力の100%の応力を付加した後、下記の2条件で腐食試験を行い、HAZを含む溶接部耐食性を評価した。試験時間はいずれも336時間とした。
【0067】
(1)0.003atmH2S−30atmCO2雰囲気下、25℃の5%NaCl水溶液に浸漬
(2)30atmCO2雰囲気下、125℃の25%NaCl水溶液に浸漬
上記腐食試験の評価は、試験条件(1)では割れが発生していない場合を○、少しでも割れが発生した場合は×とした。また、試験条件(2)では、腐食速度が0.1mm/y以下かつ選択腐食がない場合を○とし、それ以外は×とした。
【0068】
これらの試験結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
Figure 0004022991
【0070】
同表から明らかなように、化学組成が本発明で規定する範囲内で、かつフェライト率と合金元素の関係式を満足する鋼種を用いると、試験条件(1)で割れが発生せず、試験条件(2)で腐食速度が0.1mm/y以下かつ選択腐食が発生せず良好な耐食性を示した。
【0071】
これに対し、試番3(鋼C)は、フェライト率が低く、規定した式を満足しない場合であり、降伏応力が85ksiとなり、結果として高付加応力下で試験されたため、試験条件(1)で硫化物応力割れが発生した。
【0072】
試番5(鋼E)は、フェライト率が高く、規定した式を満足していない場合で、降伏応力が56ksi以上となっていない。しかし、耐食性は良好であった。
試番6(鋼F)は、Cr量が低く、試験条件(2)で腐食速度が増大した。
【0073】
試番7(鋼G)は、C量が高く、溶接部においてマルテンサイト相が硬化し、試験条件(1)で硫化物応力割れが発生した。
【0074】
試番8(鋼H)は、Cr量が高く、フェライト率が高くて規定した式を満足していない場合で、降伏応力が初期の目標とした56ksiになっていない。
【0075】
試番9(鋼I)は、Ni量が高く、またマルテンサイト率が高く、規定した式を満足せず、降伏応力が88ksiとなり、結果として高付加応力下で試験されたため、試験条件(1)で硫化物応力割れが発生した。
【0077】
試番11(鋼K)は、Ni量が低く、フェライト率が高い場合で、降伏応力が目標とした56ksi以上を満足せず、試験条件(1)で硫化物応力割れが発生した。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、湿潤炭酸ガスを含んだ原油や天然ガス等他の流体を輸送するラインパイプ、あるいは化学プラント用配管として好適な、耐食性に優れた安価なフェライト−マルテンサイト2相ステンレス鋼管が得られる。

Claims (1)

  1. 質量%で、C:0.05%以下、Si:1%以下、Mn:1%以下、Ni:0.7〜4%、Cr:9〜15%、Al:0.1%以下、N:0.02%以下、Cu:0〜1.2%、Mo:0〜1.2%、Ti:0.2%以下、V:0.1%以下を含み、残部はFe及び不可避的不純物からなり、金属組織が、下記式を満足するフェライト相とマルテンサイト相の2相組織からなることを特徴とするフェライト−マルテンサイト2相ステンレス溶接鋼管。
    10+100C+80N+Ni+0.3Cu≦フェライト率(体積%)≦60+Cr+2.5Mo、
    ただし、上記式における元素記号は、含有量(質量%)を示す。
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