JP4016529B2 - 雑音抑圧装置,音声認識装置及び車両用ナビゲーション装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、認識対象となる音声信号成分と雑音信号成分とが混在した入力信号から雑音成分を除去することによって、音声信号の認識率の向上を図るようにした雑音抑圧装置,音声認識装置及び前記音声認識装置を備えた車両用ナビゲーション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
音声認識装置は、例えばカーナビゲーション装置などに用いられており、例えば自動車の乗員が目的地を設定するために発声した音声を認識して設定を行うようにしている。この場合、音声認識装置は、入力された音声を予め記憶されている複数の比較対象パターンと比較して、一致度合いの最も高いものを認識結果とするようにしている。
【0003】
ところで、カーナビゲーション装置の実際の使用環境下である車中においては、話者により発声された音声が入力される際に雑音成分が含まれることが避け難たく、音声の認識率を向上させるためには、その雑音成分を如何にして抑圧・除去するかが重要な課題となっている。
【0004】
そこで、例えば、音声入力区間の判定後に入力信号から雑音成分を除去する方式の1つとして、スペクトラムサブトラクション法(例えば、STEVEN F BOLL,Suppression of Acoustic Noise in Speech Using Spectral Subtraction,IEEE Tran.on Acoustics,Speech and Signal processing,Vol.Assp-27,No.2 April 1979,pp.113-120 など)がある。スペクトラムサブトラクション法は、入力された音声データを短時間のフレームに分割し、各フレーム毎に雑音が重畳している入力音声のスペクトラムから事前に推定した雑音のスペクトラムを減算することで、本来の音声スペクトラムを推定するようにしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、事前に推定された雑音は、音声が入力される直前の入力状態を参照することで推定されているため、実際に認識対象の音声が入力されている区間に発生している雑音とは一致しないという問題がある。従って、この方式では、例えば空調,エンジン,モータの駆動音のように、比較的継続的に発生し短時間では性質が余り変化しない定常雑音の抑圧には効果があるが、周囲の人間の話し声や物体の移動音のように、突発的に発生し短時間で性質が変化する非定常雑音については除去することができない。
【0006】
そこで、特開平4−245300号公報に開示されているように、音声入力用のマイクと雑音入力用のマイクとを夫々別個に設けて、両者より得られるデータに基づいて雑音成分を推定しリアルタイムで減算することで、定常雑音及び非定常雑音の除去を行うようにしたものがある。
【0007】
しかしながら、例えば、自動車の車室内などでは、自動車の走行時と停止時とで周囲における雑音の発生状態が大きく変化する。このような状況下において雑音の除去を一律に行うと、適正に得られるべき音声データに過剰な歪みを発生させるおそれがあり、そのような場合には、逆に、音声の認識率を低下させることになる。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、雑音の発生状態が大きく変化する環境下においても、音声の入力信号から雑音成分を適切に除去することができる雑音抑圧装置,音声認識装置及び前記音声認識装置を備えた車両用ナビゲーション装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の雑音抑圧装置によれば、第1定常雑音減算手段は、音声用マイクの入力信号に基づいて推定した定常雑音を前記入力信号より減算し、第2定常雑音減算手段は、雑音用マイクの入力信号に基づいて推定した定常雑音を前記入力信号より減算する。すると、第1定常雑音減算手段より出力される信号には、音声信号に加えて非定常雑音成分が残留する。そして、非定常雑音推定手段は、第1及び第2定常雑音減算手段の出力信号に基づいて非定常雑音を推定し、制御手段は、周囲の状態に応じて非定常雑音減算手段が行う非定常雑音の減算の実行を制御する。
【0010】
即ち、音声信号データを抽出する際に、周囲において発生している雑音の性質が主として定常的である場合には、非定常雑音の減算を行わない方が音声信号データに歪みを与えることなく良好に抽出することができる場合がある。従って、制御手段が周囲の状態に応じて非定常雑音の減算の実行を制御することで、その状態に適合するように雑音の抑圧を行うことができる。
【0011】
請求項2記載の雑音抑圧装置によれば、第1定常雑音減算手段は、音声用マイクの入力信号に基づいて推定された定常雑音を前記入力信号より減算し、第2定常雑音減算手段は、雑音用マイクの入力信号に基づいて推定された定常雑音を前記入力信号より減算する。また、非定常雑音推定手段は、音声用マイク及び雑音用マイクの入力信号に基づいて非定常雑音を推定し、非定常雑音減算手段は、第1定常雑音減算手段の出力信号より非定常雑音を減算する。そして、制御手段は、周囲の状態に応じて、第1,第2定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段が行う減算の実行を制御する。
【0012】
即ち、周囲において発生している雑音の状態に応じては、定常雑音のみを減算したり、非定常雑音のみを減算したり、または、両者を何れも減算しない方が音声信号データを良好に抽出することができる場合がある。従って、制御手段が周囲の状態に応じて定常雑音,非定常雑音の減算の実行を制御することで、その状態に一層適合するように雑音の抑圧を行うことができる。
【0013】
請求項3記載の雑音抑圧装置によれば、非定常雑音推定手段は、音声用マイクの入力信号及び雑音用マイクの入力信号に基づき非定常雑音を推定し、定常雑音推定手段は、音声用マイクの入力信号に基づき定常雑音を推定する。そして、非定常雑音減算手段は、音声用マイクの入力信号から非定常雑音を減算し、定常雑音減算手段は、非定常雑音減算手段の出力信号から定常雑音を減算し、制御手段は、周囲の状態に応じて、非定常雑音減算手段及び定常雑音減算手段における減算の実行を夫々制御する。従って、請求項2と同様の効果を得ることができる。また、非定常雑音を推定する場合には事前に入力信号から定常雑音を減算することなく、定常雑音の減算は、非定常雑音の減算除去後に一括して行うことによりその分構成を簡単にすることができると共に、演算処理の負担も軽減することができる。
【0014】
請求項4または5記載の音声認識装置によれば、音声認識手段は、請求項1または2,3記載の雑音抑圧装置より出力される音声データを解析して音声データパターンを認識するので、雑音が良好に抑圧された音声データに基づいてそのデータパターンを精度良く認識することができる。
【0015】
請求項6記載の車両用ナビゲーション装置によれば、請求項5記載の音声認識装置における音声認識手段によって認識された音声データパターンに基づいて所定の処理を実行するので、雑音環境の変動が激しい車室内においても、話者たる車両の乗員の音声を高精度で認識することができる。従って、乗員は、入力キーなどを手動操作せずとも、音声入力によって所望の操作を確実に行わせることができ、利便性が向上すると共に運転の安全性を確保することもできる。
【0016】
請求項7記載の車両用ナビゲーション装置によれば、車両状態検出手段は、車両の状態を検出すると、検出信号を音声認識装置に出力する。そして、音声認識装置が備えている雑音抑圧装置の制御手段は、与えられた検出信号に応じて定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段における減算の実行を制御する。従って、制御手段は、車両の走行状態や各部の動作状態などに基づいて、定常雑音及び非定常雑音の減算の実行を適切に制御することができる。
【0017】
請求項8記載の車両用ナビゲーション装置によれば、雑音抑圧装置の制御手段は、車両のワイパーが作動している場合には、非定常雑音減算手段における減算のみが実行されるように制御する。即ち、雨天の場合には通常車両のワイパーを作動させるが、斯様な場合には、雨音やワイパーの間欠的な作動音が非定常的な性質を有する雑音として発生することになり、これらが支配的であると考えられる。従って、非定常雑音減算手段における減算のみを実行することで、非定常雑音を効果的に抑圧することができ、音声の認識率を向上させることができる。
【0018】
請求項9記載の車両用ナビゲーション装置によれば、雑音抑圧装置の制御手段は、車両が停車中である場合には、非定常雑音減算手段における減算のみが実行されるように制御する。即ち、例えば、交差点における信号待ちで車両が停車している場合には、すれ違う車の走行音やウインカーの作動音などが非定常的な性質を有する雑音として発生する。従って、非定常雑音減算手段における減算のみを実行することで、請求項9と同様に非定常雑音を効果的に抑圧することができる。
【0019】
請求項10記載の車両用ナビゲーション装置によれば、雑音抑圧装置の制御手段は、車両が加速若しくは減速走行している場合には、非定常雑音減算手段における減算のみが実行されるように制御する。即ち、車両が加速若しくは減速走行する際には、エンジンの回転数が急激に変化するので、そのエンジン音が非定常雑音として発生する。従って、非定常雑音減算手段における減算のみを実行することで、請求項8または9と同様に非定常雑音を効果的に抑圧することが可能となる。
【0020】
請求項11記載の車両用ナビゲーション装置によれば、雑音抑圧装置の制御手段は、車両状態検出手段を介して得られる車両のナビゲーション情報にも応じて、定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段における減算の実行を制御するので、車両が位置している周囲の環境をも考慮して定常雑音,非定常雑音の減算をどのように実行させるかを決定することができる。
【0021】
請求項12記載の車両用ナビゲーション装置によれば、雑音抑圧装置の制御手段は、車両が駐車場に位置していると共に当該車両のエンジンが停止している場合は、定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段における減算が何れも実行されないように制御する。即ち、車両が駐車場に駐車している状態では定常雑音たるエンジン音は発生しておらず、周囲における車両の往来も比較的少ないので外部より到来する非定常雑音も殆ど想定されない。従って、斯様な場合には、定常雑音及び非定常雑音の何れも減算しないほうが歪みの少ない音声データを得ることができる。
【0022】
請求項13記載の車両用ナビゲーション装置によれば、雑音抑圧装置の制御手段は、VICSレシーバより車両状態検出手段を介して得られる交通情報にも応じて、定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段における減算の実行を制御する。即ち、交通量の多少に応じて非定常雑音の発生頻度は変化するので、VICSの交通情報を参照することによって、非定常雑音の減算についての実行の可否を妥当に決定することができる。
【0023】
請求項14記載の車両用ナビゲーション装置によれば、雑音抑圧装置の制御手段は、車両が略一定速度で走行しており、且つ、当該車両が現在走行中である道路の交通量が所定量以下である場合には、定常雑音減算手段における減算のみが実行されるように制御する。
【0024】
即ち、交通量の少ない道路を車両が略一定速度で走行している時は、エンジン音やロードノイズ,風切り音などは略一定の状態で発生する一方、他の車両のすれ違い音は殆ど発生しないことから、前者の定常的な性質を有する雑音が支配的となっている。従って、定常雑音減算手段における減算のみを実行することで音声データに歪みを与えることなく雑音を効果的に抑圧することができ、音声の認識率を向上させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1実施例)
以下、本発明をカーナビゲーション装置に適用した場合の第1実施例について図1乃至図6を参照して説明する。カーナビゲーション装置1全体の電気的構成を示す図1において、カーナビゲーション装置1は、位置検出器2,地図データ入力器3,操作スイッチ群4,これらが接続される制御回路5などを備えている。更に、制御回路5には、外部メモリ6やディスプレイ等の表示装置7,リモコンセンサ8や音声認識装置9などが接続されている。尚、制御回路5は、マイクロコンピュータとして構成されており、その内部には、具体的には図示しないが、周知のCPU,ROM,RAM,I/Oなどを備えている。そして、これらの構成要素はバスラインを介して互いに電気的に接続されている。
【0026】
位置検出器2は、周知の地磁気センサ10,ジャイロスコープ11,距離センサ12,及びGPS(Global Positionning System)衛星からの電波に基づいて車両の位置を検出するGPS受信機13などを備えている。尚、これらの各センサ等10〜13は、夫々が性質の異なる誤差を生じるため、各センサ等10〜13からの情報を参照することで、必要に応じて修正を行いながら各情報を使用するように構成されている。尚、要求される精度に応じては、各センサ等10〜13の内の一部を用いて構成しても良く、或いは、更にステアリングセンサや車輪センサなどを追加しても良い。
【0027】
地図データ入力器3は、地図データ及び目印データや、位置検出精度を向上させるための所謂マップマッチング用のデータ等を含む各種データを入力するための装置である。データの記憶媒体としてはCD−ROMを用いるのが一般的であるが、DVD(Digital Versatile Disk)やメモリカードなどを用いても良い。
【0028】
表示装置7の画面には、地図データ入力器3より入力される地図データが表示されると共に、その地図データ上に、位置検出器2より入力される車両の現在位置を示すマーカや、誘導経路や設定地点の目印等の付加データなどが重畳して表示されるようになっている。
【0029】
また、カーナビゲーション装置(カーナビ)1は、リモートコントロール端末(以下、リモコンと称す)14を介してリモコンセンサ8から、或いは、操作スイッチ群4を介して目的地の位置が入力されると、現在位置からその目的地までの最適な走行経路を自動的に選択して誘導経路として表示する、所謂経路案内機能をも備えている。このように、自動的に最適な経路を設定する手法には、例えばダイクストラ法等が知られている。操作スイッチ群4は、例えば、表示装置7と一体に形成されたタッチスイッチ若しくはメカニカルスイッチなどが用いられ、各種入力操作に使用されるようになっている。
【0030】
そして、音声認識装置9は、上記操作スイッチ群4やリモコン14が手動操作で目的地などを指示するために用いられるのに対して、利用者が音声で入力を行うことによっても同様に目的地などを指示できるようにするために配置されている。
【0031】
この音声認識装置9は、音声認識部(音声認識手段)15,対話制御部16,音声合成部17,音声抽出装置18,音声用マイク19及び雑音用マイク20,PTT(Push To Talk)スイッチ21,スピーカ22及び制御部23から構成されている。
【0032】
音声認識部15は、対話制御部16の指示により音声抽出装置18より与えられる音声データについて音声認識処理すると、その認識結果を対話制御部16に出力するようになっている。即ち、音声認識部15は、音声抽出装置18から取得した音声データと、予め記憶されている辞書データに登録されている複数の比較対象パターン候補とを照合比較して、一致度の高い上位比較対象パターンを対話制御部16に出力する。
【0033】
入力音声中の単語系列の認識は、音声データを順次音響分析して例えばLPC(Linear Prediction Coefficient) ケプストラムなどの音響的特徴量を抽出し、その時系列データを得る。そして、得られた時系列データを幾つかの区間に分割し、周知のDPマッチング法,HMM(Hidden Markov Model) ,或いはニューラルネット等の手法を用いて各区間が辞書データとして格納されたどの単語に対応しているかを求めるようにする。
【0034】
対話制御部16は、音声認識結果や自身が管理する内部状態から、音声合成部17への応答音声の発声指示や、カーナビ1全体を統括制御する制御回路5に対して例えばナビゲート処理のために必要な目的地を通知して設定処理を実行させるための指示を行うようになっている。即ち、この音声認識装置9を利用すれば、ユーザは、カーナビ1に対する目的地の指示などを、操作スイッチ群4やリモコン14を操作せずとも音声入力によって行うことができる。
【0035】
音声用マイク19は、ユーザが発声した音声を入力するために設けられている。また、雑音用マイク20は、ユーザが発声した音声の背景として存在する雑音を入力するために設けられている。
【0036】
音声抽出装置18は、PTTスイッチ21がユーザによりオン操作されたことを制御部23が検出すると、後述するように、音声用マイク19及び雑音用マイク20に夫々入力された信号に基づいて運転者が発声した音声の信号をデジタルデータとして抽出し、音声認識部15に出力するようになっている。尚、制御部23は、車載オーディオ機器のアンプ24に対して、オーディオ用スピーカ25に出力しているオーディオ信号の音量を一時的に絞って略零にする(ミュート)指示を与えたり、また、そのオーディオ信号の音量を元の状態に復帰させる(ミュート解除)指示を与えることもできるように構成されている。
【0037】
ここで、音声抽出装置18の詳細な構成について図2をも参照して説明する。音声抽出装置18は、フレーム分割部26,音声区間判定部27,音声用バッファ28,雑音用バッファ29,音声用のフーリエ変換部30,雑音用のフーリエ変換部31,雑音抑圧装置32を備えて構成されている。
【0038】
フレーム分割部26は、マイク19,20より入力される音響信号を例えば10数KHz程度のレートでサンプリングして夫々A/D変換し、得られた離散データ系列を数10ms程度の時間幅に設定された区間(フレーム)毎に切り出して分割し、切り出しの端部によって発生する高調波成分を抑制するための窓関数(例えば、ハニング窓)を乗じて音声区間判定部27に出力するようになっている。
【0039】
音声区間判定部27は、音声用マイク19に入力された音響信号の各フレームについて、話者が発声した音声の信号が含まれているか否かを判定・検出して、音声信号が含まれているフレームのデータについては、音声用バッファ28に出力して蓄積するようになっている。但し、後述する定常雑音成分を推定するために、音声用バッファ28の先頭には、雑音のみが含まれている区間が1フレーム分だけ蓄積される。
【0040】
また、音声区間判定部27は、雑音用マイク20に入力された音響信号の各フレームデータの内、音声信号が含まれているフレームに対応する(即ち、同時刻)フレームのデータを、雑音用バッファ29に出力して蓄積するようになっている。
【0041】
尚、以降において、フレーム分割部26以降における音声用マイク19系統のデジタルデータを音声信号データ,雑音用マイク20系統のデジタルデータを雑音声信号データと称する。
【0042】
フーリエ変換部30,31は、バッファ28,29に夫々蓄積されているデータを高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して短時間パワースペクトラムを生成し、雑音抑圧装置32に出力するようになっている。雑音抑圧装置32は、音声用のフーリエ変換部30によって生成された短時間スペクトラム(音声と雑音とを含むスペクトラム)と、雑音用のフーリエ変換部31によって生成された短時間スペクトラム(雑音のみ含むスペクトラム)とに基づいて、後述するように定常雑音及び非定常雑音を推定するようになっている。そして、スペクトラムサブトラクション方式のアルゴリズムに従い雑音除去を行う。雑音抑圧装置32によって雑音除去された音声データは、音声認識部15に出力されるようになっている。
【0043】
また、雑音抑圧装置32には、車両状態検出装置(車両状態検出手段)33の検出信号(車両情報)が与えられるようになっている。車両状態検出装置33は、自動車の走行状態を例えばECUを介して得ると共に、ワイパーや方向指示器などの各部の動作状態をスイッチ(図示せず)のオンオフにより検出するようになっている。また、車両状態検出装置33は、カーナビ1の制御回路5より自動車の現在位置が地図上のどこにあるか等の情報を得ると共に、VICSレシーバ34が受信したVICS(Vehicle Information and Communication System)の交通情報をも得ることができるように構成されている。そして、車両状態検出装置33は、これらを車両情報として雑音抑圧装置32に出力するようになっている。
【0044】
図3は、雑音抑圧装置32の詳細な構成を示す機能ブロック図である。フーリエ変換部30においてフーリエ変換された音声信号データは、減算器(第1定常雑音減算手段)35に直接与えられていると共に、定常雑音推定部(第1定常雑音推定手段)36及び開閉スイッチ37を介して減算器35に与えられている。また、フーリエ変換部31においてフーリエ変換された雑音信号データは、減算器38に直接与えられていると共に、定常雑音推定部(第2定常雑音推定手段)39及び開閉スイッチ40を介して減算器(第2定常雑音減算手段)38に与えられている。
【0045】
音声側の減算器35の出力データは、減算器(非定常雑音減算手段)41に与えられていると共に、非定常雑音推定部42にも与えられている。また、雑音側の減算器38の出力データは、非定常雑音推定部42に与えられている。そして、非定常雑音推定部(非定常雑音推定手段)42の出力データは、開閉スイッチ43を介して減算器41に与えられており、減算器41の出力データは、音声認識部15に与えられるようになっている。
【0046】
開閉スイッチ37,40及び43の開閉は、減算制御部(制御手段)44によって制御されるようになっている。減算制御部44には、フーリエ変換部30,31からの音声,雑音信号データが与えられている共に、車両状態検出装置33からの車両情報が与えられている。そして、減算制御部44は、これらの情報に基づいてスイッチ37,40及び43の開閉を制御することで、減算器35,38及び41における減算の実行を制御するようになっている。
【0047】
ここで、定常雑音推定部36,39は、音声信号データ,雑音信号データに含まれている定常雑音成分を推定し、データとして出力するものである。例えば、音声側のフーリエ変換部30より与えられる雑音区間の出力データをn1(t)とし、雑音区間の時刻をt1→t2すると、定常雑音α1は以下のように計算(推定)される。(尚、周波数要素fは省略)
【数1】
即ち、これは、雑音区間のパワースペクトルの平均である。
【0048】
同様に、雑音側のフーリエ変換部31より与えられる出力データをn2(t)とすると、定常雑音α2は以下のように計算される。
【数2】
【0049】
そして、フーリエ変換部30が出力する音声区間のデータをSN(t)とし、すると、フーリエ変換部31の出力データをN(t)とすると、減算器35,38により減算が実行された結果、定常雑音が除去されたデータを夫々sn(t),n(t)とすると、
sn(t)=SN(t)−α1 …(3)
n(t)= N(t)−α2 …(4)
となる。
【0050】
また、非定常雑音推定部42は、上記データsn(t),n(t)に基づいて非定常雑音r(t)を推定するようになっている。非定常雑音r(t)を推定するための補正係数βを決定する方式は様々であるが、一例として、雑音区間の時刻を(1)式,(2)式に合わせてt1→t2とすると、
【数3】
で求めることができる。すると、非定常雑音r(t)は、
r(t)=β・n(t) …(6)
で表わされる。
【0051】
そして、定常雑音α1が除去された音声データsn(t)には非定常雑音r(t)が残存しているので、減算器41において減算を行い非定常雑音r(t)を除去した音声データをs(t)とすれば、
s(t)=sn(t)−r(t) …(7)
となる。この際、s(t)が負の値を示した場合には、適当な値(例えば“0”)でクリップするようにする。
【0052】
即ち、定常雑音は、その性質が一定であることから、パワースペクトラムの平均として比較的容易に推定することができる。それに対して、非定常雑音は、リアルタイムで突発的に発生する雑音であるから、発生の態様が様々で推定が比較的困難であり、リアルタイムの状況に応じて推定を行い、減算の可否を判定する必要がある。
【0053】
尚、以上は、定常雑音α1を除去するという前提で非定常雑音r(t)を求めた例であり、定常雑音α1を除去しない場合には、非定常雑音r(t)の推定においても、スイッチ37,40を開くことで定常雑音α1,α2を除去しないデータを用いて推定を行う。即ち、スイッチ37及び40は、連動して開閉制御されるようになっている。
【0054】
次に、本実施例の作用について図4乃至図6をも参照して説明する。先ず、カーナビ1の動作の概略について説明すると、カーナビ1に電源が投入されると、表示装置7の画面上に操作メニューが表示される。そして、運転者が、操作スイッチ群4またはリモコン14を操作して案内経路を表示装置7に表示させる処理を選択したり、或いは、音声認識装置9を介して音声入力することで対話制御部16から制御回路5へ同様の選択指示がなされると、以下のように処理が実行される。
【0055】
即ち、運転者が表示装置7に表示された地図を参照して音声或いはリモコン14の操作により目的地を入力すると、GPS受信機13より得られる位置データに基づき自動車の現在位置が求められる。そして、制御回路5は、ダイクストラ法を用いてコスト計算することで、現在位置から目的地までの最短距離となる経路を誘導経路として求める。そして、求めた誘導経路を表示装置7の地図上に重畳して表示することで、運転者に適切な経路を案内する。斯様にして誘導経路を計算する処理や案内する処理は、一般的に良く知られたものであるから詳細な説明は省略する。
【0056】
次に、音声認識装置9の動作について、上述の経路案内のために目的地を音声入力する場合を例として説明する。図4は、音声認識装置9における制御部23の制御内容を示すフローチャートである。先ず、制御部23は、PTTスイッチ21が押された(ON)か否かを判断し(ステップS1)、押された場合は「YES」と判断し、アンプ24に対してオーディオ用スピーカ25に出力しているオーディオ信号のミュート指示を与える(ステップS2)。
【0057】
その時点で、アンプ24がオーディオ用スピーカ25にオーディオ信号を出力している場合は、図5(b),(c)に示すように、オーディオ信号がミュートされることで音声用マイク19及び雑音用マイク20に入力されている音響信号のレベルが低下する。
【0058】
それから、制御部23は、音声抽出装置18に対して、音声用マイク19及び雑音用マイク20に入力されている音響信号の取り込み処理及び蓄積処理の開始指示を与える(ステップS3)。例えば、話者(運転者)が目的地を「愛知県刈谷市昭和町」と発声して入力したものとする。すると、フレーム分割部26は、マイク19,20より入力される音響信号をサンプリングしてフレーム毎に分割し、音声信号データ及び雑音信号データを音声区間判定装置27に出力する。この時、音声用マイク19には、話者の音声と共に雑音が入力され、雑音用マイク20には、専ら雑音が入力されることになる。
【0059】
そして、音声区間判定装置27は、例えば、音声信号データ及び雑音信号データについて分割されたフレーム毎に短時間パワーを計算し、両者の差分が所定値以上となったフレームを音声入力区間と判定し、当該フレームのデータを音声用バッファ28及び雑音用バッファ29に夫々出力する。但し、前述のように、バッファ28及び29の先頭に配置される1フレームのみは、音声入力区間直前の雑音入力区間とする。
【0060】
それから、制御部23は、PTTスイッチ21がOFFされるまで待機し(ステップS4)、OFFされると「YES」と判断して入力信号の取り込み中止を音声抽出装置18に指示すると(ステップS5)、続いて、音声抽出装置18に音声抽出処理の開始指示が与える(ステップS6)。そして、アンプ24に対してオーディオ信号のミュート解除を指示すると(ステップS7)、ステップS1に移行する。
【0061】
音声抽出装置18は、制御部23より音声抽出処理の開始指示が与えられると、フーリエ変換部30,31によって、バッファ28,29に夫々蓄積されている音声入力区間に対応するフレームデータを読み出してFFTにより短時間スペクトラムを生成し、雑音抑圧装置32に出力する。
【0062】
図6は、雑音抑圧装置32の減算制御部44による雑音抑圧処理の制御内容を示すフローチャートである。減算制御部44は、先ず、車両状態検出装置33より車両情報を得ると(ステップA1)、以下の判断ステップA2〜A6において夫々の判断を行い、その判断に基づいてスイッチ37,40及び43の開閉を制御し、スペクトラムサブトラクション方式によって、雑音の抑圧除去を行う。
【0063】
判断ステップA2において、減算制御部44は、エンジンが停止しているか否かを判断し、停止している場合は、制御回路5より得られるナビゲーション情報に基づいて自動車の現在位置が駐車場であるか否かを判断する(ステップA7)。そして、現在位置が駐車場である場合には、スイッチ37,40及び43を何れも開くことで定常雑音,非定常雑音の減算除去を何れも行わないようにする(ステップA8)。
【0064】
即ち、自動車が駐車場に駐車している場合には、定常雑音たるエンジン音は発生しておらず、周囲における車両の往来も比較的少ないので外部より到来する非定常雑音も殆ど想定されない。従って、斯様な場合には、定常雑音及び非定常雑音の何れも減算しないほうが歪みの少ない音声データを得ることができるからである。ステップA8の処理を終えると、ステップA1に移行して再び現在の車両情報を得る。
【0065】
一方、判断ステップA2において、エンジンが停止状態ではなく「NO」と判断すると、減算制御部44は、自動車が停車中であるか(車速がゼロか)否かを判断し(ステップA3)、停車中である場合は、スイッチ37及び40を開きスイッチ43を閉じることで非定常雑音の減算除去のみを行う(ステップA11)。即ち、例えば、交差点における信号待ちなどで自動車が停車している場合には、エンジンはアイドリング状態にあるためエンジン音は小さく発生しており、すれ違う車の走行音やウインカーの作動音などが非定常的な性質を有する雑音として頻繁に発生するため、これらが支配的な状況にある。従って、非定常雑音のみを減算することで、音声データに極力歪みを与えることなく雑音を効果的に抑圧することができる。
【0066】
判断ステップA3において自動車が停車状態ではなく「NO」と判断すると、減算制御部44は、自動車が加速中若しくは減速中であるか否かを判断し(ステップA4)、加速中若しくは減速中である場合はステップA11に移行して非定常雑音の減算除去のみを行う。尚、ここでの加減速は、一定値以上の比較的急な加減速とする。即ち、自動車が加速若しくは減速走行している場合には、エンジンの回転数が急激に変化するので、そのエンジン音が非定常雑音として発生する。従って、非定常雑音のみを減算除去する。
【0067】
判断ステップA4において自動車が加減速中ではなく「NO」と判断すると、減算制御部44は、ワイパーが作動中であるか否かを判断し(ステップA5)、ワイパーが作動している場合はステップA11に移行して非定常雑音の減算除去のみを行う。即ち、雨天の場合には通常ワイパーを作動させるが、斯様な場合には、雨音やワイパーの間欠的な作動音が非定常的な性質を有する雑音として発生することになり、これらが支配的であると考えられる。従って、非定常雑音のみを減算除去する。
【0068】
判断ステップA5においてワイパーが作動中でなはく「NO」と判断すると、減算制御部44は、VICSレシーバ34より得られるVICS情報に基づいて走行中の道路の交通量が所定量以下か否かを判断し、(ステップA6)、所定量以下である場合はステップA10に移行する。そして、スイッチ37及び40を閉じスイッチ43を開くことで定常雑音の減算除去のみを行う。
【0069】
即ち、ステップA6で「YES」と判断される場合、自動車は、交通量の少ない道路を略一定速度で走行している状態にある。従って、エンジン音やロードノイズ,風切り音などは略一定の状態で発生する一方、他の車両のすれ違い音は殆ど発生しないことから、前者の定常的な性質を有する雑音が支配的となっている。故に、定常雑音のみを減算除去することで音声データに歪みを与えることなく雑音を効果的に抑圧することができ、音声の認識率を向上させることができる。
【0070】
そして、判断ステップA6において交通量が所定量を超えており「NO」と判断すると、減算制御部44はステップA10に移行する。そして、スイッチ37,40及び43を閉じることで定常雑音及び非定常雑音の減算除去を行う。即ち、判断ステップA6で「NO」と判断される場合、自動車は、交通量がある程度ある道路を略一定速度で走行している状態にある。従って、エンジン音やロードノイズなどが略一定の状態で発生すると共に、他の車両のすれ違い音もある頻度で発生することになる。故に、定常雑音と非定常雑音とを何れも減算除去する。
【0071】
以上のようにして、雑音抑圧装置32より雑音の抑圧除去が行われると、音声データs(t)が音声認識部15に出力される。すると、前述のように、音声認識部15において、音声データs(t)について音響的特徴量が抽出された時系列データが得られ、その時系列データが区間分けされて、適当な単語毎に辞書データに登録されているデータパターンとの照合が行われる。
【0072】
その認識結果は、音声認識部15から対話制御部16へと与えられ、対話制御部16は、与えられた認識結果に基づいて音声合成部17への応答音声の発声指示を与え、スピーカ22を介して「愛知県刈谷市昭和町」と合成音声を発声させる。また、音声認識部15の認識結果は、制御回路5にも与えられ、制御回路5は、「愛知県刈谷市昭和町」を目的地として案内経路の計算を開始する。
【0073】
以上のように本実施例によれば、雑音抑圧装置32の減算制御部44は、車両情報検出装置33より得られる車両情報に基づいてスイッチ37,40及び43の開閉を制御することで、音声用マイク19に入力された話者の音声信号データより定常雑音,非定常雑音の減算除去を自動車の走行状態などに応じて行うようにした。
【0074】
即ち、自動車の走行状態に応じて発生している雑音の状態に適合するように雑音の抑圧除去を行うことで音声データに歪みを与えること(例えば、前述したように、s(t)の値が負になってクリップさせること等)を極力抑制することができ、音声認識装置9における認識率を向上させることが可能となる。そして、カーナビ1は、音声認識装置9によって認識された音声データパターンに基づいて所定の処理を実行するので、雑音環境の変動が激しい車室内においても、話者たる運転者の音声を高精度で認識することができる。従って、運転者は、操作スイッチ群4やリモコン14などを手動操作せずとも、音声入力によって所望の操作を確実に行わせることができ、利便性が向上すると共に運転の安全性を確保することもできる。
【0075】
また、本実施例によれば、雑音抑圧装置の減算制御部44は、具体的には、自動車が駐車場に駐車している状態、交差点などで停車している状態、ワイパーの作動状態、自動車の加減速状態や、交通量等に応じて、定常雑音,非定常雑音の減算除去を適宜行うようにしたので、この様な実際に走行状況に合わせて最適となるように雑音を抑圧除去することで、音声認識装置9の認識率を高めることができる。
【0076】
(第2実施例)
図7は、本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。雑音抑圧装置45の詳細な構成を示す図7において、フーリエ変換部30からの音声信号データは、減算器(非定常雑音減算手段)46,非定常雑音推定部(非定常雑音推定手段)47及び減算制御部(制御手段)48に与えられており、フーリエ変換部31からの雑音信号データは、非定常雑音推定部47及び減算制御部48に与えられている。
【0077】
減算器46の出力データは、減算器(定常雑音減算手段)49を介して音声認識部15に与えられていると共に、定常雑音推定部(定常雑音推定手段)50及び開閉スイッチ51を介して減算器49に与えられている。また、非定常雑音推定部47の出力データは、開閉スイッチ52を介して減算器46に与えられている。そして、開閉スイッチ51,52の開閉は、減算制御部48によって制御されるようになっている。その他の構成は第1実施例と同様である。
【0078】
第2実施例における非定常雑音推定部47は、フーリエ変換部30,31から与えられるの音声信号データ,雑音信号データについて、定常雑音を抑圧除去することなく非定常雑音を推定するようになっている。即ち、非定常雑音r(t)を推定するための補正係数βを、例えば、
【数4】
で決定し、非定常雑音r(t)を
r(t)=β・N(t) …(9)
で決定する。従って、スイッチ52を閉じた場合の減算器46の出力データをsn1(t)とすると、
sn1(t)=SN(t)−r(t) …(10)
となる。
【0079】
また、定常雑音推定部50は、第1実施例における定常雑音推定部36と同様に定常雑音α1を求めるようになっている。従って、スイッチ51を閉じた場合の減算器49の出力データをsn2(t)とすると、
sn2(t)=sn1(t)−α1 …(11)
となる。即ち、スイッチ51を閉じ、スイッチ52を開いた場合の減算器49の出力データは、(3)式と同様となる。
【0080】
次に、第2実施例の作用について説明する。減算制御部48は、第1実施例の減算制御部44と同様に図6に示すフローチャートに従って雑音抑圧処理を行うが、雑音の抑圧除去にかかわるステップA8〜A11におけるスイッチの開閉状態が異なる。即ち、
となる。
【0081】
以上のように構成された第2実施例によれば、非定常雑音推定部47が非定常雑音を推定する段階では音声信号データ及び雑音信号データから定常雑音を抑圧除去せず、定常雑音を抑圧除去する場合には、減算器46の出力側で一括して除去するようにしたので、構成が簡単になると共に演算処理を軽減することができる。
【0082】
(第3実施例)
図8及び図9は本発明の第3実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。雑音抑圧装置53の詳細な構成を示す図8において、フーリエ変換部30からの音声信号データは、定常雑音減算部(第1定常雑音減算手段)54及び減算器(非定常雑音減算手段)55を介して音声認識部15に与えられていると共に、減算制御部(制御手段)56に与えられている。また、フーリエ変換部31からの雑音信号データは、定常雑音減算部(第2定常雑音減算手段)57及び減算制御部56に夫々与えられている。
【0083】
定常雑音減算部54及び57は、第1実施例における定常雑音推定部36及び39と同様に音声信号データ及び雑音信号データについて定常雑音を推定すると共に、推定した定常雑音データの減算処理までを行うようになっている。そして、定常雑音減算部54及び57の出力データは、非定常雑音推定部(非定常雑音推定手段)58に夫々与えられており、非定常雑音推定部58の出力データは、開閉スイッチ59を介して減算器55に与えられている。尚、非定常雑音推定部58も、第1実施例における非定常雑音推定部42と同様に非定常雑音を推定するようになっている。そして、開閉スイッチ59の開閉は、減算制御部56によって制御されるようになっている。その他の構成は第1実施例と同様である。
【0084】
次に、第3実施例の作用について図9をも参照して説明する。第3実施例の構成においては、定常雑音減算部54及び57によって定常雑音は常に減算されるようになっており、減算制御部56は、非定常雑音の減算を行うか否かのみを決定してスイッチ59を開閉制御する。即ち、図9に示すフローチャートでは、図6のフローチャートよりステップA2〜A5,A7,A8が削除されており、減算制御部56は、車両情報として交通量の情報のみを得ると、その情報に基づいて、スイッチ59を閉じて定常,非定常雑音の両方を抑圧除去するか(ステップA9)、または、スイッチ59を開いて定常雑音のみ抑圧除去するか(ステップA10)を決定する。
【0085】
以上のように構成された第3実施例によれば、減算制御部56は、交通量の情報のみに基づいて非定常雑音を抑圧除去するか否かを決定する。即ち、定常雑音は、周囲の状況が変化した場合でも、それ状況に応じて妥当な値を推定することができる(平均値として得られるため)ので、定常雑音を常に減算するようにしても音声データに大きな歪みを与えることがない場合も想定される。従って、第3実施例のように構成すれば、減算制御をシンプルに行うことができる。また、車両状態検出装置33より得る情報を少なくすることができる(この場合、VICSレシーバ34の情報のみで良い)。
【0086】
本発明は上記し且つ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
図6,図9に示すフローチャートはあくまでも一例であり、定常,非定常雑音除去の可否を判定する要素としては、適宜状況に応じて追加,変更,削除するなど設定を行えば良い。例えば、カーナビ1以外で、工場などで使用する装置を音声入力で操作するものに適用する場合には、可動中の工作機械の種類や台数などに応じて条件を設定すれば良い。例えば、プレス装置のように非定常的な性質を有する雑音を発生させる装置が稼働している場合には非定常雑音のみを除去し、旋盤やボール盤のように定常的な性質を有する雑音を発生させる装置が稼働している場合には定常雑音のみを除去するように設定する。
【0087】
音声認識装置9,音声抽出装置18,雑音抑圧装置32を夫々独立に構成しても良い。
車両状態検出手段に、例えば、天候の情報(例えば、雨量や風速)などを直接に入力可能に構成して、その天候状態に応じて雑音抑圧装置に雑音除去の可否を判定させるようにしても良い。
減算制御部44,48,56は、フーリエ変換部30,31より与えられる音声信号データ及び雑音信号データを解析することで、雑音の発生状況を直接推定し、定常,非定常雑音除去の可否を判定するようにしても良い。
非定常雑音推定部に車両状態検出手段の情報を入力して、その車両情報に応じて非定常雑音を推定する補正係数βの計算方式を変更するようにしても良い。また、補正係数βは必ずしも用いる必要はなく、単に定常雑音成分を除去したものを非定常雑音として推定しても良い。
【0088】
雑音抑圧装置及び音声認識装置は、車両用ナビゲーション装置に限ることなく、その他、音声認識結果に基づいて何らかの処理を行うものであれば、適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明をカーナビゲーション装置に適用した第1実施例を示すものであり、カーナビゲーション装置全体の電気的構成を示す機能ブロック図
【図2】音声抽出装置の詳細な構成を示す機能ブロック図
【図3】雑音抑圧装置の詳細な構成を示す機能ブロック図
【図4】音声認識装置の制御部の制御内容を示すフローチャート
【図5】夫々波形図であり、(a)はPTTスイッチのON,OFF状態、(b)は音声用マイクの入力信号、(c)は雑音用マイクの入力信号を示す
【図6】雑音抑圧装置の減算制御部の制御内容を示すフローチャート
【図7】本発明の第2実施例を示す図3相当図
【図8】本発明の第3実施例を示す図3相当図
【図9】図6相当図
【符号の説明】
1はカーナビゲーション装置(車両用ナビゲーション装置)、9は音声認識装置、15は音声認識部(音声認識手段)、19は音声用マイク、20は雑音用マイク、32は雑音抑圧装置、33は車両状態検出装置(車両状態検出手段)、34はVICSレシーバ、35は減算器(第1定常雑音減算手段)、36は定常雑音推定部(第1定常雑音推定手段)、38は減算器(第2定常雑音減算手段)、39は定常雑音推定部(第2定常雑音推定手段)、41は減算器(非定常雑音減算手段)、42は非定常雑音推定部(非定常雑音推定手段)、44は減算制御部(制御手段)、45は雑音抑圧装置、46は減算器(非定常雑音減算手段)、47は非定常雑音推定部(非定常雑音推定手段)、48は減算制御部(制御手段)、50は定常雑音推定部(定常雑音推定手段)、49は減算器(定常雑音減算手段)、53は雑音抑圧装置、54は定常雑音減算部(第1定常雑音減算手段)、55は減算器(非定常雑音減算手段)、56は減算制御部(制御手段)、57は定常雑音減算部(第2定常雑音減算手段)、58は非定常雑音推定部(非定常雑音推定手段)を示す。
Claims (14)
- 音声を入力するための音声用マイクと、
雑音を入力するための雑音用マイクと、
前記音声用マイクの入力信号に基づいて推定した定常雑音を、前記入力信号より減算する第1定常雑音減算手段と、
前記雑音用マイクの入力信号に基づいて推定した定常雑音を、前記入力信号より減算する第2定常雑音減算手段と、
前記第1定常雑音減算手段の出力信号及び前記第2定常雑音減算手段の出力信号に基づいて非定常雑音を推定する非定常雑音推定手段と、
前記第1定常雑音減算手段の出力信号より前記非定常雑音推定手段によって推定された非定常雑音を減算する非定常雑音減算手段と、
周囲の状態に応じて、前記非定常雑音減算手段における減算の実行を制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする雑音抑圧装置。 - 音声を入力するための音声用マイクと、
雑音を入力するための雑音用マイクと、
前記音声用マイクの入力信号に基づいて定常雑音を推定する第1定常雑音推定手段と、
前記雑音用マイクの入力信号に基づいて定常雑音を推定する第2定常雑音推定手段と、
前記音声用マイクの入力信号から、前記第1定常雑音推定手段によって推定された定常雑音を減算する第1定常雑音減算手段と、
前記雑音用マイクの入力信号から、前記第2定常雑音推定手段によって推定された定常雑音を減算する第2定常雑音減算手段と、
前記音声用マイクの入力信号及び前記前記雑音用マイクの入力信号に基づいて非定常雑音を推定する非定常雑音推定手段と、
前記第1定常雑音減算手段の出力信号より前記非定常雑音推定手段によって推定された非定常雑音を減算する非定常雑音減算手段と、
周囲の状態に応じて、前記第1,第2定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段における減算の実行を夫々制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする雑音抑圧装置。 - 音声を入力するための音声用マイクと、
雑音を入力するための雑音用マイクと、
前記音声用マイクの入力信号及び前記雑音用マイクの入力信号に基づいて非定常雑音を推定する非定常雑音推定手段と、
前記音声用マイクの入力信号に基づいて定常雑音を推定する定常雑音推定手段と、
前記音声用マイクの入力信号から前記非定常雑音を減算する非定常雑音減算手段と、
前記非定常雑音減算手段の出力信号から、前記定常雑音推定手段によって推定された定常雑音を減算する定常雑音減算手段と、
周囲の状態に応じて、前記非定常雑音減算手段及び定常雑音減算手段における減算の実行を夫々制御する制御手段とを備えてなることを特徴とする雑音抑圧装置。 - 請求項1記載の雑音抑圧装置と、
この雑音抑圧装置により出力される音声データを解析して音声データパターンを認識する音声認識手段とを備えてなることを特徴とする音声認識装置。 - 請求項2または3記載の雑音抑圧装置と、
この雑音抑圧装置により出力される音声データを解析して音声データパターンを認識する音声認識手段とを備えてなることを特徴とする音声認識装置。 - 請求項5記載の音声認識装置を備え、
前記音声認識手段によって認識された音声データパターンに基づいて所定の処理を実行することを特徴とする車両用ナビゲーション装置。 - 車両の状態を検出し、検出信号を前記音声認識装置に出力する車両状態検出手段を備え、
前記音声認識装置の制御手段は、前記車両状態検出手段より出力される検出信号に応じて、前記定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段における減算の実行を制御することを特徴とする請求項6記載の車両用ナビゲーション装置。 - 前記雑音抑圧装置の制御手段は、車両のワイパーが作動している場合には、前記非定常雑音減算手段における減算のみが実行されるように制御することを特徴とする請求項7記載の車両用ナビゲーション装置。
- 前記雑音抑圧装置の制御手段は、車両が停車中である場合には、前記非定常雑音減算手段における減算のみが実行されるように制御することを特徴とする請求項7または8記載の車両用ナビゲーション装置。
- 前記雑音抑圧装置の制御手段は、車両が加速若しくは減速走行している場合には、前記非定常雑音減算手段における減算のみが実行されるように制御することを特徴とする請求項7乃至9の何れかに記載の車両用ナビゲーション装置。
- 前記車両状態検出手段は、車両のナビゲーション情報をも受信可能に構成され、
前記雑音抑圧装置の制御手段は、前記車両状態検出手段を介して得られるナビゲーション情報にも応じて、前記定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段における減算の実行を制御することを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の車両用ナビゲーション装置。 - 前記雑音抑圧装置の制御手段は、車両が駐車場に位置していると共に当該車両のエンジンが停止している場合は、前記定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段における減算が何れも実行されないように制御することを特徴とする請求項11記載の車両用ナビゲーション装置。
- 前記車両状態検出手段は、VICS情報を受信するレシーバを備え、
前記雑音抑圧装置の制御手段は、前記レシーバより前記車両状態検出手段を介して得られる交通情報にも応じて、前記定常雑音減算手段及び非定常雑音減算手段における減算の実行を制御することを特徴とする請求項7乃至12の何れかに記載の車両用ナビゲーション装置。 - 前記雑音抑圧装置の制御手段は、車両が略一定速度で走行しており、且つ、当該車両が現在走行中である道路の交通量が所定量以下である場合には、前記定常雑音減算手段における減算のみが実行されるように制御することを特徴とする請求項13記載の車両用ナビゲーション装置。
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