JP4010866B2 - 製紙機械用ドライヤーカンバス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は抄紙機の乾燥部で使用される製紙機械用ドライヤーカンバスの改良に関する。特には、広幅・高速の抄紙機にも適用可能な優れた形態保持特性および走行安定性、ならびに、高度な品位水準が要求される用途に好適な表面平滑性を有し、かつ、経糸方向の柔軟性と緯糸方向の剛性を備えた製紙機械用ドライヤーカンバスに関する。
【0002】
【従来の技術】
抄紙機の乾燥部に使用されるドライヤーカンバスは、湿紙を加熱されたシリンダーに押圧、接触させ乾燥させるのであるが、湿紙に与える押圧力が均一でないと乾燥ムラを生じ紙質を損なうことになる。特に、上質紙や塗工用原紙の抄紙のような高度な品位水準が要求される用途においては、湿紙の紙マーク等の品質欠点が発生することが無いだけでなく、湿紙の流れ方向および幅方向における乾燥の均一性に対する要求が厳しい。したがって、湿紙をシリンダーに均一に接触させる必要があり、流れ方向および幅方向における湿紙との均一な密着性と押圧力を、広幅・高抄速の条件下においても維持できることがドライヤーカンバスに求められる。そのため、良好な表面平滑性と経糸方向の柔軟性を有すると同時に、経糸方向の強力と緯糸方向の剛性を兼ね備えることが必要となる。
【0003】
一方、近年では抄紙機の広幅化、高速化が進み、例えば、カンバス幅寸法が9m以上、抄速max1,500m/min.以上の実績も有るが、そのような抄紙機の広幅化、高速化に対応して抄紙機の安定操業を確保することが出来るドライヤーカンバスの開発が求められており、従来のドライヤーカンバスにも増して、経糸方向の柔軟性の改善や緯糸方向の剛性の向上に加えて、形態保持特性や走行安定性を向上させることが一層重要になってきている。
【0004】
他方、抄紙用多筒式乾燥機の乾燥部の構造としては、従来から上下2段配列のドライヤーにおける上下カンバス方式、これの改良案としてのシングルランのカンバス方式や、そのさらに改良案としてのシリンダーが単列配置された形式のベルラン方式(米国ベロイト社の商標)、シムラン方式(フィンランド国バルメット社の商標)等が提案され、抄紙速度の高速化のための改良が成されてきた。シングルランのカンバス方式では下段のシリンダー上、またベルラン方式ではシリンダー間に設けられたサクションローラー上において、ドライヤーカンバスの外周上を湿紙が走行するために、上段のシリンダー部分と下段のシリンダー部分とでカンバスの厚さに相当する周速度の差が生じ、それが原因となって、例えば上下2段式配列のドライヤーを有する乾燥部に従来用いられてきたドライヤーカンバスを使用した場合には、湿紙の走行に伴って湿紙に掛かる張力の張りと緩みの繰り返しを生じ、湿紙に悪影響を及ぼしたり、甚だしくは断紙等の欠陥が発生したりすることも有った。そのため、特に、高速度の抄紙を行うシングルランのカンバス方式や前記シリンダーが単列配置された形式の乾燥部では、カンバスの厚さが薄いことが不可欠とされている。
【0005】
ドライヤーカンバスの経糸方向の柔軟性を良化する方法の一つとして、カンバスを構成する経糸に細繊度のモノフィラメントを用いる方法が考えられ、さらに、緯糸方向の剛性を増加するために、カンバスを構成する緯糸に太い繊度のモノフィラメントを用いる方法が考えられる。したがって、より細繊度のモノフィラメントを経糸に、より太繊度のモノフィラメントを緯糸に用いれば、緯糸方向の剛性を確保しつつ経糸方向の柔軟性を良化させることが可能になると考えられるが、その際、緯糸の剛直性に対して経糸の剛直性が不足する場合は、経糸と緯糸の交錯部分での交錯による結合が緩く、糸同士の拘束が弱くなって、カンバスの耐ズレ性の低下をきたす恐れがある。
【0006】
ここで、「耐ズレ性」とは、ドライヤーカンバスの斜め方向の変形に対する抵抗性を表す特性である。ドライヤーカンバスの斜め方向の変形が進むと、幅方向や長さ方向の寸法変化が大きくなり、ドライヤーカンバスとして必要な形態を保持できなくなったり、走行安定性を確保できなくなったりする問題を生じることになる。したがって、経糸の繊度と緯糸の繊度の関係、および、経糸の剛直性と緯糸の剛直性の関係が適当となるように選択する必要がある。
【0007】
また、ドライヤーカンバスの経糸方向の柔軟性を良化する他の方法として、カンバスを構成する経糸に、適当な厚さ寸法と、厚さ寸法より大きい幅寸法を有する、所謂、断面扁平モノフィラメント(以下「断面四角形モノフィラメント」と称する)を用いる方法がある。
【0008】
その他に、ドライヤーカンバスを構成する経糸を扁平化させるには、ドライヤーカンバスに加熱下で相当の高圧力を作用させて円形断面の太い糸を扁平断面にしてナックル部を扁平化させたり(特開昭58−41992号公報)、円形断面の糸の織り成すナックル部を研磨することによって平坦化する(実開昭57−56798号公報)技術などが従来から有るが、加熱下で高い加圧力を発生させる設備を必要としたり、研磨した経糸表面の粗面に紙粉や填料などの汚れが付着しやすく防汚性に劣る問題が有った。
【0009】
ところで、断面四角形モノフィラメントを経糸に用いた場合は、経糸方向の柔軟性は得られるが、次のような問題のあることが判っている。
【0010】
すなわち、近年の紙質に対する要求の高度化、抄紙機の高抄速化に伴い、高度な表面平滑性と厚さ寸法が小さいことを維持しつつ、低い通気度を含む広い通気度範囲を達成するためには、緯糸の高密度化や経糸が長浮きする織組織だけでは対応に限界があるため、ならびに、抄紙機の高抄速化と広幅化への対応のために緯糸方向の剛性や形態保持特性を補強するには、経糸の密度をも高める必要があり、例えば、経糸充填率を100%、好ましくは125%を越える高い範囲に設定することも必要となるが、その場合、隣り合った断面四角形モノフィラメント同士が干渉し合って希望する高い範囲の充填率を確保することが困難となり、対ズレ性を向上できず、形態保持特性や走行安定性の一層の向上が困難である。
【0011】
さらには、ある程度以上に充填率を高めていくと、織組織に表面性の良いものを選んでも、断面四角形モノフィラメントの平坦な表面とカンバス表面の並行が維持できなくなり{図6(A)参照}、カンバス表面の一部では経糸70の断面四角形の隅部がカンバス表面71に表出して、カンバスの表面性の向上に影響が出ること、また、製織時の経糸の捌きに影響して製織効率の低下をきたすこと等の問題点のあることが判明した。出願人らは、例えば、経糸に厚さ寸法×幅寸法が0.30mm×0.55mmの断面四角形ポリエステモノフィラメントを用いた場合、経糸充填率125%近辺が実用上の上限になるとの知見を経験的に有している。
【0012】
なお、経糸充填率は、織物の幅方向における経糸密度と、経糸断面の織物幅方向での幅寸法の積を用いて表した単位長あたりの百分率をいう。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題点に鑑み、本発明は、例えば上質紙や塗工用原紙の抄紙のような、高度な品位水準が要求される用途において好適に使用できる良好な表面平滑性を有し、かつ、経糸方向の柔軟性と緯糸方向の剛性を兼ね備えた製紙機械用ドライヤーカンバスを提供することを課題とする。
【0014】
さらに、シングルランのカンバス方式やシリンダーが単列配置された形式の乾燥部に適用可能な厚さであって、かつ、例えば、カンバス幅寸法が5m〜9m、さらには9m以上、抄速max1,500m/min.以上の広幅・高速の抄紙機にも適用可能な、優れた形態保持特性、走行安定性、ならびに広い通気度調整範囲を有する製紙機械用ドライヤーカンバスを提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の製紙機械用ドライヤーカンバスは、合成繊維織物より成る製紙機械用ドライヤーカンバスであって、経糸に、厚さ寸法が幅寸法より小さい四角形に内接し、連続する曲線、または、直線および連続する曲線から成る厚さ方向に直線部の無い断面形状を有し、かつ、前記四角形に内接する正規の楕円形の面積より大きい断面積を有する合成繊維モノフィラメントを用い、経糸充填率を130%〜175%の範囲内としたことを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明の製紙機械用ドライヤーカンバスは、経糸に用いる前記合成繊維モノフィラメントが、厚さ寸法×幅寸法が0.25mm〜0.40mm×0.35mm〜0.80mmの範囲内にある四角形に内接する前記厚さ方向に直線部の無い断面形状を有することを特徴とするものである。
【0017】
加えて本発明の製紙機械用ドライヤーカンバスは、経糸に用いる前記厚さ方向に直線部の無い断面形状を有するモノフィラメントが、厚さ寸法:幅寸法の比が1:1.25〜1:2の範囲内の四角形に内接し、かつ、内接する前記四角形の断面積の0.79倍を超え0.96倍以下の範囲内の断面積を有することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の製紙機械用ドライヤーカンバスは、前記緯糸の少なくとも一層に乾熱収縮率の高いモノフィラメントを用いたことを特徴とするものである。
【0019】
さらに本発明の製紙機械用ドライヤーカンバスは、緯2重斜文織の織組織から成り、少なくとも接紙面側緯糸および/または反接紙面側緯糸に、直径寸法が0.40mm〜0.80mmの範囲内にある断面円形モノフィラメントを用い、厚さ寸法が1.30mm〜1.80mmの範囲内であることを特徴とするものである。
【0020】
さらにまた、本発明の製紙機械用ドライヤーカンバスは、少なくとも接紙面側表面に経糸が長浮きする緯1重斜文織の織組織から成り、緯糸に、直径寸法が0.60mm〜1.00mmの範囲内にある断面円形モノフィラメントを用い、厚さ寸法が1.00mm〜1.60mmの範囲内であることを特徴とするものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の製紙機械用ドライヤーカンバスは、経糸および緯糸に合成繊維糸条を用いて織り成した合成繊維織物である。
【0022】
合成繊維糸条としては、PETやPBTなどのポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66などのポリアミド繊維、ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、もしくは耐熱性に優れたPPSやPEEK等から成る合成繊維糸条、またはそれらを主体として成る合成繊維糸条を用いることができ、経糸および/または緯糸に、それらを単独にあるいは組み合わせて用いる。寸法安定性および耐摩耗性、耐屈曲疲労等の点からはPETやPBTなどのポリエステル繊維、耐熱性等の点からはPPSやPEEKが好適である。
【0023】
織組織としては、ドライヤーカンバスに一般に用いられる緯1重織組織、ならびに、緯2重織、緯2.5重織もしくは緯3重織以上の斜文織を始めとする、経1重や経2重などの織組織が適用可能である。例えば、緯2重織、緯2.5重織もしくは緯3重織の1/3正則斜文や1/3破れ斜文が好ましく適用可能である。
【0024】
さらに、経糸を浮き構造として表面の平坦度を向上させ、カンバスの流れ方向すなわち経糸方向での湿紙への接触面積を増加させたものが好ましく、少なくとも接紙面側表面に経糸が長浮きする緯2重または緯1重の斜文織組織を好適とする。経糸が長浮きする織組織とは、経糸が緯糸を2本以上跨いで組織するものをいい、前記少なくとも接紙面側表面に経糸が長浮きする緯2重の斜文織組織では、図1(A)(B)に示すような、接紙面側表面において経糸が多く表出する2/2正則斜文や2/2破れ斜文{図1(A)}、3/3正則斜文や3/3破れ斜文{図1(B)}、3/3急斜文や3/3急破れ斜文{図1(B)}などの織組織を用いることができる。また、図1(C)(D)に示すような、接紙面側表面において経糸が多く表出するようにした2/1正則斜文や2/1破れ斜文{図1(C)}、3/1正則斜文や3/1破れ斜文{図1(D)}、3/1急斜文や3/1急破れ斜文{図1(D)}などの緯1重の斜文織組織を用いることができる。
【0025】
本発明の製紙機械用ドライヤーカンバスは、合成繊維織物より成る製紙機械用ドライヤーカンバスであって、経糸に、厚さ寸法が幅寸法より小さい四角形に内接し、連続する曲線、または、直線および連続する曲線から成る厚さ方向に直線部の無い断面形状を有し、かつ、前記四角形に内接する正規の楕円形の面積より大きい断面積を有する合成繊維モノフィラメントを用い、経糸充填率を130%〜175%の範囲内としたことを特徴とする。
【0026】
ここで、「厚さ方向寸法が幅方向寸法より小さい四角形に内接し、連続する曲線、または、直線および連続する曲線から成る厚さ方向に直線部の無い断面形状を有し、かつ、前記四角形に内接する数学的に定義される正規の楕円形の面積より大きい断面積を有する合成繊維モノフィラメント」とは、図2(A)に示すような、短径aおよび長径bを有する断面が数学的に定義される正規の楕円形のものは含まず、加えて、断面四角形の四隅を滑らかに面取りしただけの断面形状も、厚さ方向に直線部が残るため本発明の「厚さ方向に直線部のない断面形状」から除外され、図2(B)、図2(C)および図2(D)のような断面形状を有するものを言う。つまり、その外形線が連続する曲線で構成される場合は、1本もしくは2本の連続する曲線から構成され、その外形線が直線および連続する曲線で構成される場合は、1本の直線および1本の連続する曲線から構成される断面形状を有するものである。また、その外形線が内側に湾曲せず、その外形が凹部を持たない断面形状が好ましい。
【0027】
すなわち、図2(B)は、幅寸法Xおよび厚さ寸法Yを有する四角形に内接し、断面においてその外形を表す曲線が連続する1本の曲線mからなり、外接四角形の4辺の各辺に含まれる各1点、例えば中点c、c’、d、d’を通り、図2(A)の数学的に定義される正規の楕円形よりも、より外接四角形の側に近接し、より大きい断面積を有している断面形状である。または、図2(C)は、同じく幅方向Xおよび厚さ寸法Yを有する四角形に内接し、断面においてその外形を表す曲線が連続する2本の曲線k、lからなり、曲線kが外接四角形の4辺のうちの3辺に含まれる各1点、例えば中点c、d、c’を通り、曲線lが外接四角形の4辺のうちの3辺に含まれる各1点、例えば中点c、d’、c’を通り、図2(A)の数学的に定義される正規の楕円形よりも、より外接四角形の側に近接し、より大きい断面積を有している断面形状である。また、図2(D)は、前記図2(B)に近似し、1本の曲線nおよび外接四角形の幅方向の辺(長辺)に重畳する位置に1本の直線pを有する断面形状であって、図2(A)の数学的に定義される正規の楕円形よりも、より外接四角形の側に近接し、より大きい断面積を有している断面形状である。この場合、直線部pの長さ寸法Zは幅方向寸法Xの1/2〜3/4が好適である。
【0028】
以下、本発明においてはこれらの形状を「厚さ方向に直線部のない断面形状」と略称する。
【0029】
本発明によれば、カンバスの経糸に、前記「厚さ方向に直線部のない断面形状」のモノフィラメント21〜23を用いることにより、例えば図6(B)に示すように、厚さ方向に直線部のない側面の滑らかな曲面形状が効果的に作用して、従来、図6(A)に示す経糸70が断面四角形モノフィラメントの場合に問題であった、隣り合ったモノフィラメントの側面同士が互いに干渉し合って希望の高い経糸充填率を確保することが困難であった問題が解消される。
【0030】
本発明のドライヤーカンバスの経糸に用いる「厚さ方向に直線部のない断面形状」のモノフィラメントは、上述のように、数学的に定義される正規の断面楕円形を含まず、その外形を表す線が外接四角形により近接しているから、その断面積は外接四角形の幅寸法をX、厚さ寸法をYとした時、(断面四角形の断面積=XY)>(「厚さ方向に直線部のない断面形状」の断面積)>(数学的に定義される正規の断面楕円形の断面積=πXY/4≒0.79XY)であり、数学的に定義された正規の楕円形モノフィラメントよりも断面積が大きい。そのため、糸1本あたりの強力を高く維持でき、ドライヤーカンバスの経糸方向の強力を高く維持することが可能となる。
【0031】
本発明のドライヤーカンバスの経糸に用いる「厚さ方向に直線部のない断面形状」のモノフィラメントの断面積の範囲は、上記のように外接四角形の断面積(XY)未満であって、その四角形に内接する正規の楕円系の断面積(≒0.79XY)を超える範囲となるが、好ましい範囲としては断面積が0.79XYを超え、0.96XY以下の範囲、より好ましい範囲としては最小値が0.81XY、最大値が0.89XYの範囲とする。
【0032】
すなわち、その最小値に相当する断面積を有する断面形状としては、例えば、外接四角形の厚さ寸法Yと幅寸法Xとの比が1:1.25の場合において、その断面の厚さ方向下側(もしくは上側)が数学的に定義される正規の楕円形状で、かつ、厚さ方向上側(もしくは下側)が外接四角形の上側(もしくは下側)の2隅を厚さ寸法Yの1/2に相当する半径で滑らかに面取りした形状に相当した断面積を有する断面形状を例示できる。また、その最大値に相当する断面積を有する断面形状としては、例えば、外接四角形の厚さ寸法Yと幅寸法Xとの比が1:2.0の場合において、外接四角形の4隅を厚さ寸法の1/2に相当する半径で滑らかに面取りした形状に相当する断面積を有する断面形状を例示できる。あるいは、例えば、図2(C)に示す断面形状において、中点c、d、c’を通る高次関数(例えば、Y=Z・XW ただし、Zは実数、wは自然数)で表現できる1本の連続する曲線kと、中点c、d、c’を通る同じく高次関数で表現できる他の1本の連続する曲線lとからなる外形を有する断面形状を例示できる。
【0033】
上記に例示した断面積の範囲を有する「厚さ方向に直線部のない断面形状」のモノフィラメントをカンバスの経糸に用いれば、経糸1本当たりの強力が少なくとも同じ材質からなる外接四角形の強力の79%を超え96%以下の範囲を確保することが可能であるので、経糸の充填率を外接四角形の断面形状のモノフィラメントの場合の上限125%もしくは130%に対して、1/0.79倍を超え,1/0.96倍以下の範囲、すなわち、130%以上,158%未満、もしくは137%以上,165%未満、または130%以上,165%未満の範囲内で外接四角形との断面積比に相応する経糸充填率に設定すれば、外接四角形の断面形状のモノフィラメントを経糸に用いた場合と同等の経糸方向強力を達成することが可能となる。
【0034】
また、好ましくは、経糸1本当たりの強力が少なくとも同じ材質からなる外接四角形の強力の81%以上,89%以下の範囲を確保することが可能であるので、前記同様に、経糸の充填率を外接四角形の断面形状のモノフィラメントの場合の1/0.89倍以上,1/0.81倍以下の範囲、すなわち、140%以上,154%以下、もしくは146%以上,160%以下、または140%以上,160%以下の範囲内で外接四角形との断面積比に相応する経糸充填率に設定すれば、外接四角形の断面形状のモノフィラメントを経糸に用いた場合と同等の経糸方向強力を達成することが可能となる。また、経糸充填率を少なくとも160%を超える範囲に設定すれば、外接四角形の断面形状のモノフィラメントを経糸に用いた場合よりも大きい経糸方向の強力とすることも可能である。
【0035】
なお、経糸充填率の上限を175%とするのは、適用する織組織およびモノフィラメント経糸の剛性によっては、経糸充填率がこれ以上になると経糸が重なり合い、カンバスとして実用できる表面の平滑性を得るのが困難になるためである。
【0036】
本発明の実施に当たっては、経糸に用いる前記「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメントが内接する外接四角形の厚さ寸法×幅寸法が0.25mm〜0.35mm×0.40mm〜0.70mmの範囲内とする。さらに、外接四角形の厚さ寸法と幅寸法の比が1:1.25〜1:2の範囲内とするのが好ましい。1:2を上限とするのは、カンバス幅方向での経糸本数が減少して製織時および使用時の経糸当たりの張力負担が過大となるのを回避するためである。経糸および緯糸をモノフィラメントで構成したドライヤーカンバスは、マルチフィラメントや紡績糸から成るものに比べてクッション性が劣るため、使用時の経糸方向のテンションをそれらカンバスよりも高めに設定して、湿紙との密着性を向上させ湿紙の乾燥効率を高める傾向にあり、また抄紙機乾燥部へギヤレスドライヤーが配設される場合もあり、このような場合、カンバスへの張力負荷max3kg/cmを基準にするが、経糸の摩耗および熱劣化に対応して安定な操業と耐久性を確保するためには、経糸当たりの張力負担が少なくなる様に配慮することが必要である。一方、「厚さ方向に直線部のない断面形状」の有する断面幅方向の平坦さを有効に発揮させるため、1:1.25をその下限とする。
【0037】
緯糸には、少なくとも接紙面側および/または反接紙面側にモノフィラメントを用いる。緯糸の断面形状は、円形や楕円形の他、三角形、正方形、長方形、四角形、六角形、八角形などの多角形状、およびこれらの形状を一部変更したものも利用可能である。また、他の緯糸には、細繊度モノフィラメント、マルチフィラメント糸、もしくは紡績糸から成る引揃え糸もしくは撚り合わせ糸から成る糸条、およびつる巻き状もしくはコイル状の芯−鞘構造を有するカバードヤーン等を用いることができるが、カンバスへの紙粉や填料による汚れ付着防止や付着した汚れ除去の観点から、接紙面側緯糸および反接紙面側緯糸をモノフィラメントで構成するのが良い。
【0038】
さらに、本発明の製紙機械用ドライヤーカンバスは、その緯糸の少なくとも一層に乾熱収縮率の高いモノフィラメントを用いて、経糸の充填率を130%〜175%の範囲内としたことを特徴とする。
【0039】
経糸の充填率を高くするには、製織時の経糸密度の設定による他、ヒートセット加工時の緯糸方向の収縮量が多くなるような加工条件ならびに乾熱収縮率の高い緯糸を選定して用いる。乾熱収縮率の高い緯糸を用いる場合には、緯糸の少なくとも一層に用いる。全ての緯糸層に用いる方が経糸の充填率を高くすることができる。また、接紙面側の緯糸に用いるのが、湿紙への接触面積を増加させる上で好ましい。乾熱収縮率の高い緯糸を用いる場合は、経糸の充填率130%〜175%の範囲、好適には140%〜175%の範囲、より好適には150%〜175%の範囲が実現可能となる。
【0040】
本発明の実施に当たり緯糸に用いる乾熱収縮率の高いモノフィラメントとは、160℃において12%〜26%、180℃において14%〜30%の範囲、より好適には160℃において12%〜22%、180℃において14%〜24%の範囲の乾熱収縮率を有するものを言い、ドライヤーカンバス用に一般に入手可能なものである。例えば、ポリエステルモノフィラメントでは、Shakespeare社製のPX−405が上市され入手可能である。また、PPSモノフィラメントでは、特開平5−195318号公報に開示されたもの等がある。
【0041】
本発明の実施において、緯糸に用いるモノフィラメントは、緯2重織、緯2.5重織もしくは緯3重織以上の織組織の場合には、接紙面側緯糸および/または反接紙面側緯糸のそれぞれに、例えば、直径寸法が0.30mm〜1.20mmの範囲内にある断面円形モノフィラメントを使用出来るが、前記経糸の寸法範囲に対して、直径寸法が0.40mm〜0.80mmの範囲内にある断面円形モノフィラメントを用いるのが望ましい。また、前記直径寸法が0.40mm〜0.80mmの緯糸の寸法範囲に対して、12本×2重/2.54cm〜39本×2重/2.54cmの範囲内、好適には13本×2重/2.54cm〜25本×2重/2.54cmの範囲内の緯糸密度が適用できる。
【0042】
また、緯1重織の織組織の場合には、緯糸に、例えば、直径寸法が0.40mm〜1.50mmの範囲内にある断面円形モノフィラメントを使用出来るが、直径寸法が0.60mm〜1.00mmの範囲内にある断面円形モノフィラメントを用いるのが望ましく、また、前記直径寸法が0.60mm〜1.00mmの緯糸の寸法範囲に対して、12本/2.54cm〜35本/2.54cmの範囲内、好適には15本/2.54cm〜30本/2.54cmの範囲内の緯糸密度が適用できる。
【0043】
前記緯糸の寸法および/または密度は、接紙面側緯糸と反接紙面側緯糸とで異なるものでも適用可能であることは勿論である。
【0044】
前記の緯糸密度の下限は、用いられる用途において必要な表面の平滑性、緯糸方向の剛性、走行安定性、形態保持持性などを満たすと共に、必要な通気度範囲の上限を得るための下限値である。また、前記の緯糸密度の上限は、前記経糸および緯糸の寸法範囲における最小値のもとにカンバス流れ方向に配列することが出来る緯糸本数の上限から得られる。このような高い緯糸密度を達成するためには、ヒートセット加工時の経糸方向の収縮量が多くなるように、製織時および加工時の張力条件や温度条件を適宜好適に設定する。さらには、例えば経糸に乾熱収縮率の高いモノフィラメントを選定して用いることが出来る。
【0045】
本発明では、経糸に、「厚さ方向に直線部のない断面形状」のモノフィラメントを用いて、経糸充填率を130%〜175%の範囲内高くすることが可能であるため、上記緯糸密度の設定範囲と相俟って、良好な表面平滑性と広い通気度範囲が達成可能であると同時に、カンバス幅方向の剛性を確保することが出来る。すなわち、高い経糸充填率と高い緯糸密度により、従来よりもさらに低い通気度が実現可能となる。また、高い通気度範囲を得るために低い緯糸密度をとる場合にも、経糸充填率が高いため、表面平滑性を良好に維持できる。また、湿紙と接触する接紙面側表面における接触点の密度が高くなり、湿紙を均一に押圧力できて、湿紙の乾燥ムラの発生をより少なくすることが可能となる。
【0046】
カンバス幅方向の剛性は、通常、緯糸のカンバス厚さ方向の寸法が大なるほど向上するが、本発明は、経糸の「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメントを、その長径方向がカンバス幅方向となるように配設して用いることにより、同等の断面積を有する断面円形モノフィラメントを経糸に用いる場合よりも経糸の厚さ方向寸法を小さくできるので、要求されるカンバスの厚さ寸法の範囲内で緯糸の厚さ方向寸法を増加させ得るので、その分、カンバス幅方向の剛性の向上が図れる。
【0047】
さらに、本発明は、「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメントを経糸に用いることにより、経糸の充填率を高く設定してカンバスの幅方向に隣り合った経糸が充分に密着する様に構成したものであるから、カンバスの幅方向での撓みに対する自由度を減少させる作用を生じ、前記直径寸法範囲のモノフィラメント緯糸の有する剛性と相俟って、経糸に断面円形や断面四角形モノフィラメントを用いた場合に比べてその幅方向の剛性を向上させることが可能となる。それにより、カンバス幅寸法が9m以上の要求にも対応が可能な幅方向の剛性を得ることが可能となる。
【0048】
さらに本発明は、前記「厚さ方向に直線部のない断面形状」の経糸が断面円形の緯糸に当接する場合に、滑らかな曲面で形成される断面形状が効果的に作用して、断面四角形の経糸が断面円形の緯糸に当接する場合よりも、経糸を緯糸との交錯部でより深く交錯させ得ることを利用して、カンバスの厚さの低減を図るものである。
【0049】
すなわち、例えば、緯糸に掛かる単位長さ当たりの張力Tに基づく当接力Pが作用する際に、断面四角形の経糸が断面円形の緯糸に当接する場合と、前記「厚さ方向に直線部のない断面形状」の経糸が断面円形の緯糸に当接する場合とでは、カンバス厚さ方向に投影した当接部分の面積Aが前者の場合より後者の場合の方が小さくなるため、ならびに、当接力Pの大きさに関係する当接部分の面積Aの大きさの変化割合が前者の場合よりも後者の場合の方が大きくなるため、当接力Pと当接部分の面積Aに基づく単位面積当たりの当接圧Pが、断面楕円形状の経糸の場合の方がより大きくなり、経糸を緯糸との交錯部でより深く交錯させることができて、カンバスの厚さを低減出来るようになる。
【0050】
本発明では、経糸に、厚さ寸法×幅寸法が0.25mm〜0.35mm×0.40mm〜0.70mmの範囲内の外接四角形に内接する前記断面積の範囲の「厚さ方向に直線部のない断面形状」のポリエステルモノフィラメントを用い、緯糸に、直径寸法が0.40mm〜0.80mmの範囲の断面円形ポリエステルモノフィラメントを用い、経糸充填率が125%〜175%の範囲、緯糸密度が12本×2重/2.54cm〜39本×2重/2.54cmの範囲とした緯2重斜文織の織組織のドライヤーカンバスを各種試作した結果に基づいて、厚さ寸法が1.30mm〜1.80mmの範囲内のカンバスが得られることを確認した。
【0051】
また、経糸に、厚さ寸法×幅寸法が0.25mm〜0.35mm×0.40mm〜0.70mmの範囲内の外接四角形に内接する前記断面積の範囲の「厚さ方向に直線部のない断面形状」のポリエステルモノフィラメントを用い、緯糸に、直径寸法が0.60mm〜1.00mmの範囲の断面円形ポリエステルモノフィラメントを用い、経糸充填率が125%〜175%の範囲、緯糸密度が12本/2.54cm〜35.0本/2.54cmの範囲とした緯1重斜文織の織組織のドライヤーカンバスを各種試作した結果に基づいて、厚さ寸法が1.00mm〜1.60mmの範囲内のカンバスが得られることを確認した。
【0052】
従って、本発明によれば、例えば上質紙や塗工用原紙の抄紙のような、高度な品位水準が要求される用途において好適に使用できる良好な表面平滑性を有し、かつ、経糸方向の柔軟性と緯糸方向の剛性を兼ね備えた製紙機械用ドライヤーカンバスを実現可能である。
【0053】
さらに、シングルランのカンバス方式やシリンダーが単列配置された形式の乾燥部に適用可能な1.80mm以下の厚さであって、かつ、例えばカンバス幅寸法が9m以上、抄速max1,500m/min.以上の広幅・高速の抄紙機にも適用可能な、優れた形態保持特性や走行安定性、並びに広い通気度調整範囲を有する製紙機械用ドライヤーカンバスを実現可能である。
【0054】
なお、本発明の実施に係わる各試験の方法については、以下による。
▲1▼乾熱収縮率
原糸を300mmの長さにカットした5本の試料を熱風乾燥機中で20分間処理する。取り出した試料を標準状態(温度20℃、相対湿度65%)の室内に約30分以上放置してからその長さを測定して、次式で求めた5本の試料の平均値で表す。
乾熱収縮率(%)={(300(mm)−処理後の長さ(mm) )/300(mm) }×100(%)
【0055】
▲2▼通気度
JIS L−1096:1999 「一般織物試験方法」における通気性の測定に用いるフラジール形法に準拠した測定装置を用い、規定の測定面積を有する空気孔を介して規定の圧力(125Pa)のもとで単位時間(1分間)当たりに試験片を通過した空気量、すなわち通気度(cm3/ cm2・分)を測定する。
【0056】
▲3▼3点曲げ剛性
図3の装置により幅寸法が3cm(図3の紙面表裏方向の寸法)の試料42の両端を100mmだけ離間させて固定配置した直径寸法20mmのローラー43,43に係止し、試料42の中央部を直径寸法10mmの丸棒44と荷重計(図示せず)を介して上方に引張る。丸棒44の引上げ量と共に荷重計の表示値は増大していくが、ある程度引上げると荷重計の表示値は増大しなくなる。この時の最大荷重を剛性値と称し、単位cN/3cmで表す。
【0057】
経糸方向の3点曲げ剛性を測定する場合は、試料42の長手方向(幅寸法3cmと直角方向)を経糸方向に、緯糸方向の3点曲げ剛性を測定する場合は、試料42の長手方向を緯糸方向とする。
【0058】
▲4▼ズレ角度
図4(B)(C)はズレ角度測定装置50であって、固定支柱54の上端部と基端部に横アーム55,56の一端が、それぞれ枢支ピン59にて上下揺動可能に取り付けられ、横アーム55,56の他端は連結アーム57でリンク状に連結され、常時は上側の横アーム55が固定水平アーム60にピン61にて固定されている。また、上端側の横アーム55の基部には、その傾斜角度を指示する指針58が取り付けてある。
【0059】
横アーム55および固定水平アーム60で、所定長、所定幅の試料Sの上端を固定し、下端に試料Sの幅1cm当たり1kgの荷重Wを懸垂する。この状態で下側の横アーム56に試料Sの下端を固定し、その後、荷重Wを取り去る。このようにして、図4(B)のごとく試料Sを固定し、ピン61を引き抜き、図4(C)のごとく下向きのモーメントをかける。この状態で一定時間放置後、図4(A)のズレの寸法x1(加熱前)を指針58により測定し、その状態のまま温度130℃で一定時間熱処理を行う。その後、再度、ズレの寸法x2(加熱後)を指針58により測定する。
【0060】
ズレ角度θ1(加熱前),θ2(加熱後)の計算は、図4(A)のごとく、横アーム55に固定された指針58が横切った位置での目盛の読みから得たズレの寸法x(mm)、枢支ピン59の中心点から指針58の先端までの長さをL(=120mm)より、次式で計算される。
【0061】
tanθ=x/120, θ=tan−1(x/120)
上記により求めたズレ角度θから、ドライヤーカンバスの走行時における織組織のズレを推定し、ドライヤーカンバスの形態保持特性や走行安定性の評価に用いる。
【0062】
▲5▼静摩擦係数および動摩擦係数
図5は摩擦係数測定装置30を示す。すなわち、図5に示すように固定した接触部材31上で錘32により試料Sに垂直方向に荷重Wを加えた状態で、ワイヤ33および滑車34により矢印方向に走行させた時(速度50mm/分)、動き始めた時の静摩擦力F1と、動き始めた以後移動させるための動摩擦力F2を測定し、静摩擦力F1および動摩擦力F2と荷重(W=5kg)とに基づいて、摩擦係数(μ)=摩擦力(F)/荷重(W)の関係式から、静摩擦係数μ1および動摩擦係数μ2を算出した。
【0063】
試料Sとしては、幅寸法10cm、長さ寸法15cmのものに用い、経糸方向の摩擦係数を求める場合は試料の長さ方向を経糸方向とし、緯糸方向の摩擦係数を求める場合は試料の長さ方向を緯糸方向とする。試料Sを走行させる方向は、試料の長さ方向とする。
【0064】
(実施例)
次に、本発明の実施例および実施例に対する比較例について、表1〜表6に基づいて説明する。
各表において、「TM」はポリエステルモノフィラメント、「PS」は接紙面側、「BS」は反接紙面側、「高収縮糸」は乾熱収縮率の高いモノフィラメントを表す。また、「本発明断面」は本発明の「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメントの断面形状を表し、「断面積比」は正規の楕円形の断面積に対する断面積比を表す。
【0065】
【表1】
Figure 0004010866
【0066】
(実施例1)
実施例1のドライヤーカンバス100を、表1に示す仕様に基づいて製作した。
すなわち、経糸101に、断面寸法が厚さ0.30mm×幅0.46mmの四角形に内接し、外形が連続する1本の曲線から成り、数学的に定義される正規の楕円の断面積に対する断面積比が0.86の断面積を有する「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメント{図2(B)の断面形状21}、緯糸102に直径寸法が0.70mmの断面円形ポリエステルモノフィラメントを用い、接紙面側が2/2破れ斜文の緯2重織組織{図7(A)に示す織組織}を用いて、経糸充填率135.1%、緯糸密度16.8本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.79mm、通気度12,460cm3/ cm2・分であった。
【0067】
(実施例2)
実施例2のドライヤーカンバス110を、表1に示す仕様に基づいて製作した。
すなわち、実施例1と同じ経糸101、緯糸102および織組織を用いて、経糸充填率141.5%、緯糸密度16.1本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.77mm、通気度8,950cm3/ cm2・分であった。
【0068】
(実施例3)
実施例3のドライヤーカンバス120を、表1に示す仕様に基づいて製作した。
すなわち、実施例1と同じ経糸101、緯糸102および織組織を用いて、経糸充填率141.8%、緯糸密度17.6本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.70mm、通気度4,420cm3/ cm2・分であった。
【0069】
実施例1〜3では、緯糸に、前記乾熱収縮率の高いモノフィラメントを用いずに、それよりも低い乾熱収縮率(160℃で3.8%、180℃で7%)のポリエステルモノフィラメントを用いたが、経糸に「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメントを用いたので、経糸充填率を135.1%〜141.8%とすることができて、カンバス幅方向の表面平滑性が良好となった。また、接紙面側に経糸が長浮きする2/2破れ斜文緯2重織の織組織を用いたので、カンバス流れ方向の表面平滑性も良好、かつ、湿紙への接触面積を増加することが出来た。
【0070】
【表2】
Figure 0004010866
【0071】
(実施例4)
実施例4のドライヤーカンバス130を、表2に示す仕様に基づいて製作した。
すなわち、実施例1と同じ経糸101および織組織を用い、緯糸102に直径寸法が0.70mmの断面円形の乾熱収縮率の高いポリエステルモノフィラメントを用いて、経糸充填率152.7%、緯糸密度17.4本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.73mm、通気度4,300cm3/ cm2・分であった。
【0072】
(実施例5)
実施例5のドライヤーカンバス140を、表2に示す仕様に基づいて製作した。
すなわち、実施例1と同じ経糸101および織組織を用い、緯糸102に実施例4と同じく直径寸法が0.70mmの断面円形の乾熱収縮率の高いポリエステルモノフィラメントを用いて、経糸充填率153.5%、緯糸密度22.0本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.75mm、通気度1,495cm3/ cm2・分であった。
【0073】
(実施例6)
実施例6のドライヤーカンバス150を、表2に示す仕様に基づいて製作した。
すなわち、経糸101に、断面寸法が厚さ0.25mm×幅0.50mmの四角形に内接し、外形が連続する1本の曲線から成り、数学的に定義される正規の楕円の断面積に対する断面積比が0.86の断面積を有する「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメント{図2(B)の断面形状21}、緯糸102に直径寸法が0.60mmの断面円形の乾熱収縮率の高いポリエステルモノフィラメントを用い、接紙面側が2/2破れ斜文の緯2重織組織{図7(A)に示す織組織}を用いて、経糸充填率155.0%、緯糸密度25.5本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.53mm、通気度1,395cm3/ cm2・分であった。
【0074】
【表3】
Figure 0004010866
【0075】
(実施例7)
実施例7のドライヤーカンバス160を、表3に示す仕様に基づいて製作した。
すなわち、経糸161に、断面寸法が厚さ0.35mm×幅0.46mmの四角形に内接し、外形が連続する1本の曲線から成り、数学的に定義される正規の楕円の断面積に対する断面積比が0.81の断面積を有する「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメント{図2(B)の断面形状21}、緯糸162に直径寸法が0.70mmの断面円形の乾熱収縮率の高いポリエステルモノフィラメントを用い、接紙面側が1/3破れ斜文の緯2重織組織{図7(B)に示す織組織}を用いて、経糸充填率155.6%、緯糸密度15.8本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.77mm、通気度9,968cm3/ cm2・分であった。
【0076】
(実施例8)
実施例8のドライヤーカンバス170を、表3に示す仕様に基づいて製作した。
すなわち、経糸161に、断面寸法が厚さ0.35mm×幅0.46mmの四角形に内接し、外形が連続する1本の曲線から成り、数学的に定義される正規の楕円の断面積に対する断面積比が0.89の断面積を有する「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメント{図2(B)の断面形状21}、ならびに、実施例7と同じ緯糸162および織組織を用いて、経糸充填率158.1%、緯糸密度16.3本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.79mm、通気度8,110cm3/ cm2・分であった。
【0077】
実施例4〜8では、経糸に「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメントを用いると共に、緯糸に乾熱収縮率が160℃で12.1%、180℃で19.0%の乾熱収縮率の高いモノフィラメントを用いたので、経糸充填率を152.7%〜158.1%と実施例1〜3の場合よりも高く出来て、カンバス幅方向の表面平滑性がより良好となった。加えて、実施例4〜6では、接紙面側に経糸が長浮きする2/2破れ斜文緯2重織の織組織を用いたので、カンバス流れ方向の表面平滑性も良好、かつ、湿紙への接触面積を増加させることが出来た。
【0078】
また、実施例1〜8では、上記の構成により、緯2重の斜文織組織において通気度が1,395cm3/ cm2・分〜12,460cm3/ cm2・分の範囲の低い通気度を含む広い通気度調整範囲を得ることが確認できた。
【0079】
(実施例9)
実施例9のドライヤーカンバス180を、表3に示す仕様に基づいて製作した。
すなわち、経糸181に実施例1と同じ経糸を用い、緯糸182に直径寸法が0.80mmの断面円形の乾熱収縮率の高いポリエステルモノフィラメントを用い、接紙面側に経糸が長浮きする2/2破れ斜文の緯1重織組織{図8(A)に示す織組織}を用いて、経糸充填率135.6%、緯糸密度15.5本/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.33mm、通気度6,030cm3/ cm2・分であった。
【0080】
【表4】
Figure 0004010866
【0081】
(実施例10)
実施例10のドライヤーカンバス190を、表4に示す仕様に基づいて製作した。すなわち、経糸191および緯糸192に実施例9と同じ経糸および緯糸を用い、接紙面側に経糸が長浮きする3/1破れ斜文の緯1重織組織{図8(B)に示す織組織}を用いて、経糸充填率139.5%、緯糸密度15.7本/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.30mm、通気度5,885cm3/ cm2・分であった。
【0082】
実施例9〜10では、経糸に「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメントを用いると共に、緯糸に乾熱収縮率(160℃で12.1%、180℃で19.0%)の乾熱収縮率の高いモノフィラメントを用いたので、経糸充填率を高くすることが出来て、カンバス幅方向の表面平滑性がより良好となった。また、接紙面側に経糸が長浮きする2/2若しくは3/1破れ斜文緯1重織の織組織を用いたので、カンバス流れ方向の表面平滑性も良好、かつ、湿紙への接触面積を増加させることが出来た。
【0083】
【表5】
Figure 0004010866
【0084】
(比較例1)
比較例1のドライヤーカンバス300を、表5に示す仕様に基づいて製作した。すなわち、経糸101に直径寸法が0.40mmの断面円形ポリエステルモノフィラメント、緯糸102に直径寸法が0.60mmの断面円形ポリエステルモノフィラメントを用い、接紙面側が2/2破れ斜文の緯2重織組織{図7(A)に示す織組織}を用いて、経糸充填率131.3%、緯糸密度17.4本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.89mm、通気度15,612cm3/ cm2・分であった。
【0085】
(比較例2)
比較例2のドライヤーカンバス310を、表5に示す仕様に基づいて製作した。すなわち、経糸101に直径寸法が0.30mmの断面円形ポリエステルモノフィラメント、緯糸102に直径寸法が0.60mm、乾熱収縮率が160℃で12.1%、180℃で19.0%の乾熱収縮率の高い断面円形ポリエステルモノフィラメントを用い、接紙面側が2/2破れ斜文の緯2重織組織{図7(A)に示す織組織}を用いて、経糸充填率148.2%、緯糸密度18.3本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.59mm、通気度9,114cm3/ cm2・分であった。
【0086】
比較例2のドライヤーカンバスは、上質紙や塗工用原紙の抄紙のような高度な品位水準が要求される用途の抄紙機乾燥部に従来から使用実績の有る、良好な表面平滑性を有するドライヤーカンバスである。
【0087】
(比較例3)
比較例3のドライヤーカンバス320を、表5に示す仕様に基づいて製作した。すなわち、経糸101に寸法が厚さ0.30mm×幅0.55mmの断面四角形ポリエステルモノフィラメント、緯糸102に直径寸法が0.80mm、乾熱収縮率が160℃で12.1%、180℃で19.0%の乾熱収縮率の高い断面円形ポリエステルモノフィラメントを用い、接紙面側が2/2破れ斜文の緯2重織組織{図7(A)に示す織組織}を用いて、経糸充填率115.4%、緯糸密度14.0本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法2.06mm、通気度11,310cm3/ cm2・分であった。
【0088】
【表6】
Figure 0004010866
【0089】
(比較例4)
比較例4のドライヤーカンバス330を、表6に示す仕様に基づいて製作した。すなわち、経糸101に寸法が厚さ0.30mm×幅0.55mmの断面四角形ポリエステルモノフィラメント、緯糸102に直径寸法が0.70mm、乾熱収縮率が160℃で12.1%、180℃で19.0%の乾熱収縮率の高い断面円形ポリエステルモノフィラメントを用い、接紙面側が2/2破れ斜文の緯2重織組織{図7(A)に示す織組織}を用いて、経糸充填率119.9%、緯糸密度16.9本×2重/2.54cmに製作した。製作したドライヤーカンバスは、厚さ寸法1.76mm、通気度4,550cm3/ cm2・分であった。
【0090】
なお、比較例3および比較例4のドライヤーカンバスは、例えば、カンバス幅寸法が9m以上、抄速max1,500m/min.以上の広幅・高速の抄紙機乾燥部に従来から使用実績の豊富なドライヤーカンバスである。
(流れ方向および幅方向の剛性の確認)
上記の実施例1〜10および比較例1〜4のドライヤーカンバスのカンバス流れ方向(経糸方向)およびカンバス幅方向(緯糸方向)の剛性を前記の図3に示す3点曲げ剛性の試験方法により確認した。
【0091】
測定は、各カンバスについてサンプル数3にて行い、測定結果を表7に示した。
【0092】
【表7】
Figure 0004010866
【0093】
各表において、3点曲げ剛性のPS(もしくはBS)とは、試料に加重を掛けて引っ張り上げる方向がPS(もしくはBS)の場合をPS(もしくはBS)と表現する。したがって、カンバス使用時にシリンダー上で湿紙に押圧している状態は、前記のBS方向に加重を掛けて引っ張り上げる場合に相当する。
【0094】
経糸方向の3点曲げ剛性の測定結果は、荷重方向がPSの場合には、実施例1で88cN/3cm、実施例2で82cN/3cm、実施例3で87cN/3cm、実施例4で100cN/3cm、実施例5で110cN/3cm、実施例6で54cN/3cm、実施例7で88cN/3cm、実施例8で92cN/3cm、実施例9で95cN/3cm、実施例10で97cN/3cmであった。一方、比較例1では150cN/3cm、比較例2では99cN/3cm、比較例3では101cN/3cm、比較例4では109cN/3cmであった。
【0095】
また、荷重方向がBSの場合には、実施例1で82cN/3cm、実施例2で75cN/3cm、実施例3で83cN/3cm、実施例4で95cN/3cm、実施例5で108cN/3cm、実施例6で53cN/3cm、実施例7で88cN/3cm、実施例8で92cN/3cm、実施例9で95cN/3cm、実施例10で97cN/3cmであった。一方、比較例1では117cN/3cm、比較例2では76cN/3cm、比較例3では85cN/3cm、比較例4では96cN/3cmであった。
【0096】
したがって、経糸方向の3点曲げ剛性が、緯2重の斜文織組織では110cN/3cm以下、緯1重の斜文織組織では100cN/3cm以下であり、経糸方向の柔軟性が良好であることが確認された。
【0097】
さらに、本発明のドライヤーカンバスと、織組織が同じ緯2重の斜文織組織であって、カンバス厚さ方向の寸法が同値で同じ材質のポリエステルモノフィラメントを経糸に用い、ほぼ同等の通気度およびほぼ同等もしくはより小さい経糸充填率を有する従来のドライヤーカンバスとを比較した場合、すなわち、実施例2と比較例2、実施例1と比較例3、もしくは、実施例3および実施例4と比較例4を比較した場合、実施例は比較例よりも経糸方向の3点曲げ剛性が小さく、経糸方向の柔軟性が極めて良好であることが判った。
【0098】
次に、緯糸方向の3点曲げ剛性の測定結果は、荷重方向がPSの場合には、実施例1で935cN/3cm、実施例2で880cN/3cm、実施例3で969cN/3cm、実施例4で1,076cN/3cm、実施例5で1,291cN/3cm、実施例6で505cN/3cm、実施例7で857cN/3cm、実施例8で884cN/3cm、実施例9で602cN/3cm、実施例10で609cN/3cmであった。一方、比較例1では627cN/3cm、比較例2では662cN/3cm、比較例3では889cN/3cm、比較例4では862cN/3cmであった。
【0099】
また、荷重方向がBSの場合には、実施例1で929cN/3cm、実施例2で881cN/3cm、実施例3で975cN/3cm、実施例4で1,074cN/3cm、実施例5で1,289cN/3cm、実施例6で504cN/3cm、実施例7で856cN/3cm、実施例8で885cN/3cm、実施例9で602cN/3cm、実施例10で609cN/3cmであった。一方、比較例1では665cN/3cm、比較例2では668cN/3cm、比較例3では931cN/3cm、比較例4では903cN/3cmであった。
【0100】
したがって、緯糸方向の3点曲げ剛性が、緯2重の斜文織組織では500cN/3cm以上、緯1重の斜文織組織では500cN/3cm以上であり、緯糸方向の剛性が高いことが確認された。
【0101】
さらに、本発明のドライヤーカンバスと、織組織が同じ緯2重の斜文織組織であって、カンバス厚さ方向の寸法が同値で同じ材質のポリエステルモノフィラメントを経糸に用い、ほぼ同等の通気度を有する従来のドライヤーカンバスとを比較した場合、すなわち、実施例2と比較例2、実施例1と比較例3、もしくは、実施例3および実施例4と比較例4とを比較した場合、実施例は比較例よりも緯糸方向の3点曲げ剛性が大きく、緯糸方向の3点曲げ剛性が高いことが判った。
(走行安定性の評価)
上記の実施例1〜10および比較例1〜4のドライヤーカンバスの加熱前および加熱後のズレ角度(θ1,θ2)を前記のズレ角度の試験方法により測定して、カンバス走行時の織組織のズレを推定し、形態安定特性と走行安定性を評価した。
【0102】
測定は、各カンバスについてサンプル数3にて行い、測定結果を表8に示した。
【0103】
【表8】
Figure 0004010866
【0104】
その結果、本発明のドライヤーカンバスと、同じ材質のポリエステルモノフィラメントを経糸に、および、同じ材質の乾熱収縮率の高い断面円形ポリエステルモノフィラメントを緯糸に用い、ほぼ同程度の通気度を有する緯2重の斜文織組織から成る従来のドライヤーカンバスとを比較した場合、すなわち、実施例7および実施例8と比較例2とを比較した場合、加熱前のズレ角度(θ1)は実施例7で1.2°、実施例8で1.1°、比較例2で1.0°、および加熱後のズレ角度(θ2)は実施例7で2.5°、実施例8で2.4°、比較例2で2.6°であり、加熱前および加熱後のズレ角度は共に、実施例は比較例とほぼ同等であった。
【0105】
また、本発明のドライヤーカンバスと、織組織が同じ緯2重の斜文織組織であって、カンバス厚さ方向の寸法が同値で同じ材質のポリエステルモノフィラメントを経糸に、および、同じ断面形状で同じ材質の乾熱収縮率の高い断面円形ポリエステルモノフィラメントを緯糸に用い、ほぼ同程度の通気度を有する従来のドライヤーカンバスとを比較した場合、すなわち、実施例4と比較例4とを比較した場合、加熱前のズレ角度(θ1)は実施例4で1.0°、比較例4で1.0°、および加熱後のズレ角度(θ2)は実施例4で2.4°、比較例4で2.5°であって、加熱前および加熱後のズレ角度は共に、実施例は比較例とほぼ同等もしくはより小さな値であった。
【0106】
したがって、本発明のドライヤーカンバスは、ほぼ同程度の通気度を有する、従来から使用実績の豊富なドライヤーカンバス(比較例2)と比べて、特には、断面四角形モノフィラメントを経糸に用い、同じ織組織であって、ほぼ同程度の通気度を有する、従来から広幅・高速の抄紙機乾燥部に使用実績の豊富なドライヤーカンバス(比較例4)と比べて、走行時の織組織のズレはほぼ同等であり、形態安定特性と走行安定性に優れることが判った。
(流れ方向および幅方向の表面平滑性の評価)
上記の実施例1〜6および比較例1〜4のドライヤーカンバスの流れ方向(経糸方向)および幅方向(緯糸方向)の静摩擦係数および動摩擦係数を前記の試験方法により測定して、流れ方向および幅方向の表面平滑性を評価した。
【0107】
測定は、各カンバスについてサンプル数3にて行い、測定結果を表9に示した。
【0108】
【表9】
Figure 0004010866
【0109】
その結果、本発明のドライヤーカンバスと、織組織が同じ緯2重の斜文織組織であって、カンバス厚さ方向の寸法が同値で同じ材質のポリエステルモノフィラメント経糸、および、同じ断面形状で同じ材質の断面円形ポリエステルモノフィラメント緯糸を用い、ほぼ同程度の通気度を有する従来のドライヤーカンバスとを比較した場合、すなわち、実施例1と比較例3、もしくは、実施例3と比較例4とを比較した場合、経糸方向の静摩擦係数は、実施例1で0.177、実施例3で0.170、比較例3で0.201、比較例4で0.200であり、経糸方向の動摩擦係数は、実施例1で0.257、実施例3で0.278、比較例3で0.290、比較例4で0.285であり、また、緯糸方向の静摩擦係数は、実施例1で0.177、実施例3で0.180、比較例3で0.207、比較例4で0.200であり、緯糸方向の動摩擦係数は、実施例1で0.285、実施例3で0.248、比較例3で0.319、比較例4で0.311であって、カンバスの流れ方向(経糸方向)およびカンバスの幅方向(緯糸方向)について、静摩擦係数および動摩擦係数共に、実施例は比較例に比べて非常に良好な結果であった。
【0110】
また、本発明のドライヤーカンバスと、織組織が同じ緯2重の斜文織組織であって、カンバス厚さ方向の寸法が同値で同じ材質のポリエステルモノフィラメント経糸、および、同じ断面形状で同じ材質の乾熱収縮率の高い断面円形ポリエステルモノフィラメント緯糸を用い、ほぼ同等の通気度を有する従来のドライヤーカンバスとを比較した場合、すなわち、実施例2と比較例2、もしくは、実施例4と比較例4とを比較した場合、経糸方向の静摩擦係数は、実施例2で0.175、実施例4で0.165、比較例2で0.203、比較例4で0.200、経糸方向の動摩擦係数は、実施例2で0.282、実施例4で0.254、比較例2で0.294、比較例4で0.285、緯糸方向の静摩擦係数は、実施例2で0.176、実施例4で0.173、比較例2で0.214、比較例4で0.200、緯糸方向の動摩擦係数は、実施例2で0.268、実施例4で0.247、比較例2で0.275、比較例4で0.311であって、カンバスの流れ方向(経糸方向)およびカンバスの幅方向(緯糸方向)について、静摩擦係数および動摩擦係数共に、実施例は比較例に比べて非常に良好な結果であった。
【0111】
したがって、本発明のドライヤーカンバスは、ほぼ同程度の通気度を有する、経糸に断面四角形ポリエステルモノフィラメントを配した表面平滑性が良好な従来のカンバス(比較例3、比較例4)に比べて、さらには、ほぼ同等の通気度を有する、経糸に細い線径の円形断面ポリエステルモノフィラメントを高密度に配した、高度な品位水準が要求される用途に適する従来のカンバス(比較例2)に比べて、流れ方向および幅方向の両方向で優れた表面平滑性を有するカンバスであることが確認された。
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、合成繊維織物より成る製紙機械用ドライヤーカンバスにおいて、経糸に、厚さ寸法が幅寸法より小さい四角形に内接し、連続する曲線、または、直線および連続する曲線から成る厚さ方向に直線部の無い断面形状を有し、かつ、前記四角形に内接する正規の楕円形の面積より大きい断面積を有する「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメントを用い、経糸充填率を130%〜175%という高い範囲内としたので高度な品位水準が要求される用途において使用実績の有る従来のドライヤーカンバスに比べて表面平滑性に優れ、例えば上質紙や塗工用原紙の抄紙のような高度な品位水準が要求される用途に好適に使用できる製紙機械用ドライヤーカンバスを実現することが出来る。
【0113】
さらに、本発明によれば、シングルランのカンバス方式やシリンダーが単列配置された形式の乾燥部に適用可能な厚さも達成可能であると同時に、広幅・高速の抄紙機にも適用可能な広幅・高速の抄紙機乾燥部に使用実績の豊富な従来のドライヤーカンバスに比べて、極めて良好な経糸方向の柔軟性と緯糸方向の充分な剛性を兼ね備え、かつ、例えば、カンバス幅寸法が9m以上、抄速max1,500m/min.以上の条件を含む優れた形態保持特性や走行安定性、ならびに広い通気度調整範囲を有する製紙機械用ドライヤーカンバスを実現することが出来る。
【0114】
加えて、前記「厚さ方向に直線部のない断面形状」モノフィラメントを経糸に用いることにより、経糸1本当たりの強力が少なくとも同じ材質からなる外接四角形の強力の79%を越え96%以下の範囲を確保出来るので、130%以上175%以下の経糸充填率の範囲内で外接四角形との断面積比に相応する経糸充填率に設定することにより、外接四角形の断面形状のモノフィラメントを経糸に用いた場合と同等もしくはそれ以上の経糸方向強力を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用し得るカンバスの織組織の各種形態の経糸方向断面から表した概略説明図を示すもので、
(A)は接紙面側表面において経糸が多く表出する2/2正則斜文や2/2破れ斜文緯2重織の織組織、
(B)は接紙面側および反接紙面側の経糸が長浮きする3/3正則斜文や3/3破れ斜文、3/3急斜文や3/3急破れ斜文緯2重織の織組織、
(C)は接紙面側表面において経糸が多く表出する2/1正則斜文や2/1破れ斜文緯1重織の織組織、
(D)は接紙面側表面において経糸が多く表出する3/1正則斜文や3/1破れ斜文、3/1急斜文や3/1急破れ斜文緯1重織の織組織である。
【図2】(A)は断面形状が楕円形状の経糸の断面図、
(B)は本発明に係る断面形状を有する経糸の一例の断面図、
(C)は本発明に係る断面形状を有する経糸の異なる例の断面図、
(D)は本発明に係る断面形状を有する経糸のさらに他の例の断面図である。
【図3】ドライヤーカンバスの3点曲げ剛性の試験方法の説明図である。
【図4】(A)はドライヤーカンバスのズレ角度測定方法の説明図、
(B)はドライヤーカンバスのズレ角度測定装置における荷重時の斜視図、
(C)はドライヤーカンバスのズレ角度測定装置におけるズレ角度測定時の斜視図である。
【図5】ドライヤーカンバスの摩擦係数測定装置の概略構成図である。
【図6】(A)は従来の断面形状が四角形状の経糸を用いたカンバスの接紙面側における要部拡大断面の説明図、
(B)は本発明の断面形状を有する経糸を用いたカンバスの接紙面側における要部拡大断面の説明図である。
【図7】本発明の実施例および比較例に用いた各織組織の経糸方向断面からの概略説明図を示すもので、
(A)は接紙面側が2/2破れ斜文の緯2重織組織のカンバス織組織、
(B)は接紙面側が1/3破れ斜文の緯2重織組織のカンバス織組織である。
【図8】本発明の実施例に用いた各織組織の経糸方向断面からの概略説明図を示すもので、
(A)は接紙面側の経糸が長浮きする2/2破れ斜文の緯1重織組織のカンバス織組織、
(B)は接紙面側の経糸が長浮きする3/1破れ斜文の緯1重織組織のカンバス織組織である。
【符号の説明】
10,100,110,120,130,140,150,160,170,180,190,300,310,320,330 ドライヤーカンバス
11,101,161,181,191 経糸
12,102,162,182,192 緯糸
13 接紙面側
14 反接紙面側
20 数学的に定義される正規の楕円形状
21,22 厚さ寸法が幅寸法より小さい四角形に内接し、連続する曲線から成る、かつ、前記四角形に内接する正規の楕円形の面積より大きい断面積を有する断面形状、
23 厚さ寸法が幅寸法より小さい四角形に内接し、直線および連続する曲線から成る厚さ方向に直線部の無い、かつ、前記四角形に内接する正規の楕円形の面積より大きい断面積を有する断面形状
30 摩擦係数測定装置
50 ズレ角度測定装置
70 経糸
71 カンバス表面
PS 接紙面側
BS 反接紙面側
X 幅寸法
Y 厚さ寸法
Z 直線部の長さ寸法
m,k,l,n 曲線
p 直線

Claims (6)

  1. 合成繊維織物より成る製紙機械用ドライヤーカンバスであって、経糸に、厚さ寸法が幅寸法より小さい四角形に内接し、連続する曲線、または、直線および連続する曲線から成る厚さ方向に直線部の無い断面形状を有し、かつ、前記四角形に内接する正規の楕円形の面積より大きい断面積を有する合成繊維モノフィラメントを用い、経糸充填率を130%〜175%の範囲内としたことを特徴とする製紙機械用ドライヤーカンバス。
  2. 経糸に用いる前記合成繊維モノフィラメントが、厚さ寸法×幅寸法が0.25mm〜0.40mm×0.35mm〜0.80mmの範囲内にある四角形に内接する前記厚さ方向に直線部の無い断面形状を有することを特徴とする請求項1に記載の製紙機械用ドライヤーカンバス。
  3. 経糸に用いる前記厚さ方向に直線部の無い断面形状を有するモノフィラメントが、厚さ寸法:幅寸法の比が1:1.25〜1:2の範囲内の四角形に内接し、かつ、内接する前記四角形の断面積の0.79倍を超え0.96倍以下の範囲内の断面積を有することを特徴とする請求項1または2に記載の製紙機械用ドライヤーカンバス。
  4. 前記緯糸の少なくとも一層に乾熱収縮率の高いモノフィラメントを用いたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の製紙機械用ドライヤーカンバス。
  5. 緯2重斜文織の織組織から成り、少なくとも接紙面側緯糸および/または反接紙面側緯糸に、直径寸法が0.40mm〜0.80mmの範囲内にある断面円形モノフィラメントを用い、厚さ寸法が1.30mm〜1.80mmの範囲内であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の製紙機械用ドライヤーカンバス。
  6. 少なくとも接紙面側表面に経糸が長浮きする緯1重斜文織の織組織から成り、緯糸に、直径寸法が0.60mm〜1.00mmの範囲内にある断面円形モノフィラメントを用い、厚さ寸法が1.00mm〜1.60mmの範囲内であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の製紙機械用ドライヤーカンバス。
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