図1から図6は、本発明の実施例1である閃光発光装置(照明装置)を説明するための図である。図1および図2は閃光発光装置の光源長手方向における断面図、図3は閃光発光装置の光源の長手直交方向における断面図である。図4は閃光発光装置のうち主要光学系を示した外観斜視図、図5は閃光発光装置内に配置される光学部材を光源側から見た斜視図、図6は本実施例の閃光発光装置を備えたカメラの外観斜視図である。なお、図1〜図3では、光源から射出した代表光線の光線トレース図も合わせて示している。
図6に示すように、本実施例の閃光発光装置1はカメラ11の右側上部に配置されている。同図において、撮影レンズを保持するレンズ鏡筒12は、光軸方向に繰り出したり、繰り込んだりすることにより撮影光学系の焦点距離を変更する。カメラ11の上面に設けられたレリーズボタン13は、撮影準備動作(焦点調節動作および測光動作等)および撮影動作(後述する記録媒体への画像データの記録)を開始させるために撮影者によって操作される。
カメラ11内には、CCDやCMOSイメージセンサ等の撮像素子(不図示)が配置されており、この撮像素子は撮影レンズによって形成された光学像を光電変換して出力する。撮像素子から出力された画像データは、所定の画像処理(色処理等)が施された後、記録媒体(不図示)に記録されたり、カメラ11に設けられた表示部(不図示)に送られて撮影画像として表示されたりする。
レリーズボタン13の近傍に配置された操作ボタン14は、カメラで設定される各種のモードを切り替えるために撮影者によって操作される。カメラ11には、外光の明るさを測定する測光装置や物体像を観察するためのファインダー光学系が内蔵されている。ここで、カメラ11の前面には測光装置の窓部15や、ファインダー光学系の窓部16が配置されている。
なお、閃光発光装置を除く他の部材の機能については公知の技術であるので、ここでは詳しい説明は省略する。また、本実施例におけるカメラの構成は上述した構成に限定されるものではない。
次に、本実施例の閃光発光装置を構成する主な部材について、図4および図5を用いて詳しく説明する。
図4において、2は光源となる閃光放電管(キセノン管)であり、円筒形状に形成され、閃光を発する。3は反射傘であり、閃光放電管2から射出した光束のうち装置後方に射出した成分を装置前方に反射させる。反射傘3の内面は、高反射率を有する光輝アルミ等の金属材料で形成されていたり、高反射率の金属蒸着面が形成されていたりする。
4は透明性をもつ光学部材であり、閃光放電管2から射出した光束を、後述するように光路分割させるとともに、所定の配光特性に変換させてから装置外に射出させる。この光学部材4は、アクリル樹脂等の透過率の高い光学用樹脂材料、またはガラス材料で構成されている。5、5’はシリコンゴム等の絶縁材料で形成されたXeブッシュであり、閃光放電管2の両端を保持する。
また、光学部材4のうち光源側の面4aは、図5に示すように、フレネルレンズ面と連続的なレンズ面を組み合わせた複雑な形状に形成されている。すなわち、光学部材4の光源側の面4aのうち、閃光放電管2の発光領域と概ね対向する領域(中央領域)には、光源の長手方向においてフレネルレンズ面が形成されているとともに、光源の長手方向と垂直する方向にも連続的なレンズ面が形成されている。
一方、光学部材4の面4aのうち上記の中央領域の周辺に位置する周辺領域には、光源の長手方向と直交する方向(図5に示す光学部材4の上下方向)にはレンズ効果を持たないレンズ面が形成されている。また、光学部材4の射出面4bは、平面で構成されている。
上述したカメラ11の構成において、操作ボタン14の操作によりカメラのモードを、例えば、「ストロボオートモード」に設定したときには、撮影者のレリーズボタン13の操作に応じて、カメラ11内に設けられた中央演算装置(CPU)は、測光装置で測定された外光の明るさと撮像素子の感度に基づいて閃光発光装置を発光させるか否かを判断する。ここで、CPUが閃光発光装置を発光させると判断したときには、閃光発光装置に対して発光信号を出力し、反射傘3に取り付けられた不図示のトリガーリード線を介して閃光放電管2を発光させる。
閃光放電管2で発光した光束のうち装置前方に射出された成分は、光学部材4に直接入射し、光学部材4で所定の配光特性に変換されてから物体側に照射される。また、装置後方に射出された成分は、反射傘3で反射して装置前方に導かれ、上述した成分と同様に光学部材4を透過して物体側に照射される。
本実施例は、閃光発光装置の射出光軸方向における厚みを薄くすることができるものであり、以下、図1から図3を用いて、閃光発光装置を構成する部材の最適形状の設定方法に関して詳しく説明する。
図3は、本実施例の閃光発光装置のうち中央領域における閃光放電管2の径方向断面図であり、装置上下方向の配光特性を均一化させるための基本的な考え方を示す図である。図3には、閃光放電管2の内径中心部より射出した代表光線の追跡図も同時に示している。なお、図3において、図4で説明した部材と同じ部材については同一符号を付す。
本実施例における光学部材4は、光学部材4の成型条件や閃光放電管2の発する放射熱の影響を考慮して、閃光発光装置の照明光軸方向の厚みを最小にするとともに、装置上下方向の高さも最小とすることができる形状に設定されている。
閃光放電管2の実際の発光現象としては、発光効率を向上させるため、閃光放電管2の内部全体で発光させる場合が多く、閃光放電管2の内部のいずれの発光点からも均一な光が射出していると考えることができる。
しかし、本実施例では、説明を容易にするため、閃光放電管2の内径中心(光源中心)から射出した光束を代表光束と考え、図3ではあえて代表光束のみを示している。すなわち、実際には、図3に示したような代表光束に加え、閃光放電管2の内径中心以外の領域から射出した光束も存在し、この配光特性は全体として図3に示す配光特性に比べて若干広がる方向に変化するが、配光特性の傾向としてはほとんど一致するため、以下この代表光束に従って説明する。
まず、閃光発光装置を構成する部材の特徴的な形状について説明する。
反射傘3は、閃光放電管2に対して装置後方(図3の左側)に配置されており、閃光放電管2の外周に沿った半円筒形状の第1の反射領域3aを有している。第1の反射領域3aを上述したような形状にすることで、光源から射出した光を光源の中心付近に反射させることができ、閃光放電管2のガラスによって照明光を屈折させるといった悪影響を生じにくくすることができる。
しかも、反射傘3のうち第1の反射領域3aでの反射光を、光源から装置前方に直接射出される光とほぼ等価な光とすることができ、反射光成分と直接射出される成分とを同じものとして考えることができる。また、第1の反射領域3aを閃光放電管2に近づけて配置することができるため、閃光発光装置の小型化を図ることができる。
また、反射傘3のうち第1の反射領域3aに隣接する第2の反射領域3b、3b’は、照明光軸に対して所定の傾きをもつ平面で構成されている。このため、光源中心から射出し、第2の反射領域3b、3b’で反射した光束は、光源に再入射することなく光学部材4に導かれることになる。そして、光学部材4を透過した後の光束が一定の角度分布の光束に連続的に変換されるように、光学部材4に入射するようになっている。
なお、本実施例では、第2の反射領域3b、3b’を、照明光軸に対して一定の傾きを持った平面で構成しているが、必ずしも平面で構成する必要はなく、必要とされる照射角度範囲に応じて、任意の凹面や凸面で構成してもよい。ただし、第2の反射領域3b、3b’を平面で構成すれば、反射傘3の加工時における曲げ工程を省略することができるとともに、第2の反射領域3b、3b’での反射率を高めることができる。
次に、本実施例における光学部材4の形状について説明する。
図3の縦断面図において、光学部材4の面4aの中央には、光源からの光束に対して正の屈折力を与える正レンズ面が設けられている。そして、光源中心から射出した光束が、上記の正レンズ面に入射すると、図3に示すように照明光軸を境に装置上下方向(図3の上下方向)に一定の割合で均一に広がるようになっている。
また、光学部材4の面4aは、上記の正レンズ面による屈折力の影響を考慮に入れて、第2の反射領域3bのうち基端側(光源に最も近い側)での反射光成分を照明光軸に対して最も大きな角度で交差するように変換し、第2の反射領域3bのうち先端側(光源から最も離れた側)での反射光成分を照明光軸に対してほぼ平行な光に変換するように構成されている。そして、光学部材4の面4aのうち第2の反射領域3bでの反射光が入射する面は、図3に示すように、中央部から上側周辺部に向かって連続的な面で構成されている。
上記のように構成された光学部材4は、第2の反射領域3bでの反射光成分を装置下側に向かわせるとともに、これらの光成分を連続的かつ均一に分布させることができる。
一方、第2の反射領域3b’は、図3に示すように、照明光軸に対して第2の反射領域3bと対称に形成されており、面4aのうち第2の反射領域3b’での反射光が入射する面は、中央部から下側周辺部に向かって連続的な面で構成されている。
これにより、光学部材4は、第2の反射領域3b’での反射光を装置上側に向かわせるとともに、これらの光成分を連続的かつ均一に分布させることができる。
そして、第2の反射領域3b、3b’での反射光成分を合成することによって、必要とされる照射角度範囲に対して連続的でほぼ均一な配光分布を得ることができる。
また、光源から光学部材4の面4aに直接入射した成分と、反射傘3の第2の反射領域3b、3b’で反射してから面4aに入射した成分との照射角度範囲をほぼ同じ角度で重なり合わせることで、必要とされる照射角度範囲に対してほぼ均一な配光特性を持たせた光束とすることができる。
しかも、光学部材4は、第2の反射領域3bでの反射光を装置下側に向かわせるとともに、第2の反射領域3b’での反射光を装置上側に向かわせているため、光学部材4の射出面4bのうち装置上下方向における開口幅を短くすることができるとともに、閃光発光装置を装置上下方向で小型化することができる。
なお、光源から射出された光束のうち装置後方に向かった光束は、上述したように光源の中心に戻り、これ以降の光線の状態は上記の説明と同様である。
次に、閃光放電管2の長手方向を含む断面において、光学部材4の形状と、閃光放電管2から射出された光線の振る舞いについて図1および図2を用いて説明する。ここで、図1及び図2は、本実施例の閃光発光装置のうち閃光放電管2の長手方向を含む横断面図である。これらの図においては、閃光放電管2の中心から射出した代表光線の光路についても合わせて示しており、図1は屈折によって集光された代表光線を示し、図2は全反射によって集光された代表光線を示す。なお、図1、2において、上述した部材と同じ部材については同一符号を付している。
図1および図2において、光学部材4の面4aのうち中央領域には、フレネルレンズ本来の集光機能を果たすフレネルレンズ部が形成されており、このフレネルレンズ部では、第1の入射面4cおよび第2の入射面4dが交互に形成されている。ここで、第1の入射面4cは、光源からの光束を集光させる機能をもつ領域であり、第2の入射面4dは、光源からの光束を集光させる機能を持たない領域である。
また、光学部材4の面4aのうちフレネルレンズ部の周辺には、反射部4eが形成されている。この反射部4eは、光源から導かれた光束を射出面4b側に反射させる。
従来の照明光学系において、第2の入射面4dに相当する領域は、この領域に入射した光束が全反射によって想定外の方向に向かう迷光となる領域であり、上記の領域を透過させた光束を有効に活用することが困難である。
本実施例の閃光発光装置は、光学部材4の形状と、光学部材4および閃光放電管2の配置を工夫することによって、第2の入射面4dを透過する光束を有効に活用できるようにしている。
すなわち、光学部材4を閃光放電管2の直前に配置するとともに、光学部材4の面4aにおける角度及びピッチ間隔を適宜設定することで、第2の入射面4dに入射する光束についても効率良く物体側に照射させるようにしている。具体的には、第2の入射面4dに入射する光束を光学部材4の側方に設けられた反射部4eに導き、反射部4eで全反射させることで、第2の入射面4dからの入射光を有効照射画角範囲内に照射するようにしている。
以下、本実施例の照明光学系について更に詳細に説明する。本実施例は、照明光軸方向における厚みを薄くすることができる照明光学系であり、かつ、照明光学系の許容された寸法内で照射面の中央部付近を最も明るくするように構成したものである。
照明光学系の寸法範囲内で、照射面の中央部付近を最も明るくするための条件は、射出面4bにおいて照明光軸と平行となる光線を多数存在させることである。
図1および図2は、この状態を光線トレースの形で示したものであり、図1および図2の状態を組み合わせることによって、光学部材4の射出面4bのうちどの部分から射出された光束が照射面の中央部に寄与しているかを判断することができる。これらの図に示すように本実施例では、射出面4bのすべての領域で照明光軸に平行な成分が存在しており、閃光発光装置を薄型化しつつ、照射面の中心部付近を明るくできる構成となっている。
以下、光学部材4の各部分における形状を、光線トレース図を参照しながら説明する。
光学部材4の面4aの中央領域に形成されたフレネルレンズ部は、従来のフレネルレンズの形状とは異なり、第2の入射面4dから入射した光束を光学部材4の側方に導くのに都合のよい形状となっている。
このため、本実施例では、従来のフレネルレンズに比べて、第1の入射面4cの傾斜角度(照明光軸と直交する面に対する傾斜角度)及びピッチ間隔の点が異なっている。すなわち、従来のフレネルレンズでは、球面レンズと等価となるように、第1の入射面4cに相当する面の傾斜角度を中央部分ではなだらかにし、周辺に向かうほど急角度になるようにし、かつ、連続的に角度を変化させるように設定している。また、第2の入射面4dに相当する面の大きさ(フレネルレンズ部の深さ)も中央部分から周辺に向かうにつれて大きくなるように構成されている。
しかし、図1および図2に示すように、本実施例におけるフレネルレンズ部の第1の入射面4cの傾斜角度は、従来例に比べて、光学部材4の中央から比較的急角度に設定されているとともに、中央から周辺領域にかけて第1の入射面4cの傾斜角度が徐々に急になるように設定されている。また、第2の入射面4dの大きさは、面4aの全体にわたってほぼ一定になるように設定されており、第1の入射面4cの幅が光学部材4の中央から周辺に向かうにつれて狭くなるように設定されている。
これにより、本実施例では、光源からの光束のうち第1の入射面4cに入射する光束を、第1の入射面4cの持つ正の屈折力によって集光させるとともに、第2の入射面4dに入射する光束を光学部材4の側方に形成された反射部4eに導くことによって、光源からの光束を分離させている。
光学部材4の第1の入射面4cは、図1および図2に示すように、面4aの中央においても一定以上の傾斜角度を持たせており、従来のフレネルレンズに比べて第2の入射面4dの領域を大きくしている。これにより、面4aの中央に入射した光束についても光学部材4の側方(反射部4e)に導くことができ、閃光放電管2からの光を有効に利用することができる。
次に、光学部材4の第1の入射面4cの具体的な傾斜角度について説明する。第1の入射面4cの傾斜角度を設定するための基本的な考え方は、以下の2点が基本的な考え方になる。すなわち、第1の入射面4cは、屈折による集光効果を持たせるために正の屈折力を持つことと、第2の入射面4dから光学部材4の側方に導かれる光束に対して悪影響を及ぼさないことである。ここで、前者はフレネルレンズとして本来持たなければならない機能であり、後者は本実施例のように薄型の光学系を構成する上で重要となる。
光学部材4の第2の入射面4dから導かれた光束は、基本的に射出面4bで1回全反射した後、反射部4eの方向に導かれる。すなわち、第2の入射面4dから入射した光束を、第1の入射面4cで全反射することなく、射出面4bで1回だけ全反射させるために、第1の入射面4cの傾斜角度が設定される。
上記の条件を満たすためには、第1の入射面4cの傾斜角度を以下のように設定することが望ましい。
まず、反射部4eから遠い位置(光学部材4の中央の位置)にある第2の入射面4dは、この面に入射する光束を光学部材4の側方に導くために、光源からの光束を急角度で屈折させる必要がある。このためには、上記の第2の入射面4dに隣接する第1の入射面4cの傾斜角度を小さくする必要がある。これにより、第2の入射面4dから導かれた光束が第1の入射面4cと干渉するのを防止でき、この光束を光学部材4の側方に導くことができる。
一方、フレネルレンズ部の周辺に位置する第2の入射面4dは、反射部4eとの距離が短いため、この入射面4dに入射する光束を急角度で屈折させなくても反射部4eに導くことができる。このため、上記の第2の入射面4dに隣接する第1の入射面4cの傾斜角度は、フレネルレンズ部の中央に位置する第1の入射面4cの傾斜角度に比べて大きく設定することができる。
上述した条件から、照明光軸と直交する面(以下、基準面とする)に対する第1の入射面4cの傾斜角度θは、以下の範囲内にあることが望ましい。
10° ≦ θ ≦ 45° ・・・(1)
ここで、傾斜角度θが最小となるのは、フレネルレンズ部の中央に位置する第1の入射面4cの傾斜角度である。上記式(1)の下限値は、フレネルレンズ部の中央に位置する第1の入射面4cの傾斜角度を規制するものであり、傾斜角度θが10°未満になると、フレネルレンズ部の中央に位置する第2の入射面4dから反射部4eに導かれる光束が減少してしまい、射出面4bの周辺領域における光量が少なくなってしまう。
一方、傾斜角度θの最大値45°は、フレネルレンズ部の周辺に位置する第1の入射面4cの傾斜角度を規制するものであり、この傾斜角度よりも大きくなると第2の入射面4dで屈折した光束が射出面4bで全反射する前に第1の入射面4cで全反射してしまう成分が増加し、第2の入射面4dから導かれる光束を有効に使うことができなくなってしまう。
上記のような関係から、フレネルレンズ部の中央側に位置する第1の入射面4cの傾斜角度を10°以上とし、フレネルレンズ部の周辺側に位置する第1の入射面4cの傾斜角度を45°以下とし、第1の入射面4cの傾斜角度を中央側から周辺側にかけて、上記の角度範囲内で徐々に増加させることが好ましい。これにより、すべての第2の入射面4dから導かれる光束を射出面4bで全反射させた後、反射部4eに導くことができる。
なお、本実施例では、フレネルレンズ部の中央に位置する第1の入射面4cの傾斜角度が約20°であり、周辺に位置する第1の入射面4cの傾斜角度が約35°となっており、これらの値は上記式(1)を満たすものとなっている。
次に、第2の入射面4dの理想的な傾斜角度(上記の基準面に対する傾斜角度)αについて説明する。
第2の入射面4dの理想的な傾斜角度は、基準面に対して垂直(90°)であることが最も望ましい。これは、第2の入射面4dの傾斜角度が基準面に対して垂直に近ければ近いほど、第1の入射面4cの面積を増やすことができ、第1の入射面4cによる集光効率を高めることができる。
しかも、第2の入射面4dの傾斜角度が90°に近ければ近い程、光源からの光束を大幅な角度変化で屈折させることができ、光源からの光束を効率良く反射部4eに導くことができる。
しかし、樹脂材料を用いて光学部材4を成形する場合には、光学部材4の成形上の理由(例えば、抜き成形によって第2の入射面4dを形成する工程)によって、第2の入射面4dを鏡面に保ったままこの傾斜角度を90°とすることが困難な場合がある。
したがって、上述した第2の入射面4dの機能及び光学部材4の成型性を考慮し、第2の入射面4の傾斜角度αは、以下の範囲にあることが望ましい。
80° ≦ α ≦ 90° ・・・(2)
なお、本実施例では、傾斜角度αを90°としている。
上述した構成とすることで、光学部材4を薄型化しても、第2の入射面4dから入射した光束を効率良く光学部材4の側方(反射部4e)に導くことができる。
ここで、フレネルレンズ部が形成される領域は、閃光放電管2の実質的な発光領域であるアーク長にほぼ対応している。これは、本実施例のように閃光放電管2と光学部材4を極端に接近させた場合には、フレネルレンズ部として必要な領域は、閃光放電管2のアーク長より少し長い範囲だけしか有効に機能しないためである。
本実施例では、光学部材4のうち閃光放電管2の有効アークに対応する領域以外の領域を用いて反射部4eを形成し、この反射部4eによって第2の入射面4dから導かれる光束を装置外に効率良く射出させるようにしている。
一方、従来の照明光学系では、本実施例のような構成をとることはできない。すなわち、従来の閃光発光装置の構成では、閃光放電管とフレネルレンズ部が一定距離だけ離れた状態で配置されているため、第2の入射面4dに相当する面から入射する光束が極端に減少してしまう。しかも、第2の入射面4dに相当する面に入射する光束を、光学部材の側方に導くことはできず、光源からの光束を有効に利用した照明光学系を構成することができない。
次に、図1および図2において、光学部材4の左右の両端に形成された反射部4eの詳細な形状について説明する。
反射部4eは、第2の入射面4dから入射し、射出面4bで全反射することによって光学部材4の側方に導かれた光束を、照明光軸方向の光束に変換させる。反射部4eは、図1および図2に示すように、光学部材4の側方であって、光学部材4のうち閃光放電管2側に位置する面に形成されており、閃光放電管2の有効アーク長の範囲外に位置している。
このように反射部4eを設けることにより、光源から射出したすべての光束を光学部材4のフレネルレンズ部に入射させた状態において、第2の入射面4dから導かれた光束を有効に使うことができる。
ここで、反射部4eのプリズム面(反射面)4e1(図5参照)およびエッジ面(第3の入射面)4e2(図5参照)の傾斜角度はそれぞれ、ほぼ一定角度で形成されているが、このピッチ間隔は均一ではなく、光学部材4の側方側に向かってピッチ間隔が狭くなるように構成されている。これは、光学的に最も広い範囲の光束を光軸方向の光束に変換させるのに都合の良い形状としたためである。
ここで、反射部4eによる具体的な光束の変換について説明する。
第2の入射面4dから入射し、射出面4bで全反射することによって光学部材4の側方に導かれた光束は、光学部材4のフレネルレンズ部の端に位置する面4g又は反射部4eのプリズム面4e1から光学部材4の外側に一旦射出し、隣接する位置にある反射部4eのエッジ面4e2から再入射する。
この動作は、複数のプリズム面4e1のうちいずれかのプリズム面4e1に到達する光束の角度に応じて1回又は2回繰り返される。そして、エッジ面4e2から再入射した光束は、プリズム面4e1で全反射することで射出面4bの周辺領域から射出する。
ここで、反射部4eにおけるプリズム面4e1の基準面に対する傾斜角度(β)や、反射部4eにおけるエッジ面4e2の基準面に対する傾斜角度(γ)は、以下の範囲にあることが望ましい。
35° ≦ β ≦ 55° ・・・(3)
80° ≦ γ ≦ 90° ・・・(4)
ここで、プリズム面4e1の傾斜角度βとしては、射出面4bで全反射した光束を、一旦光学部材4の外側に射出させるとともに、反射部4eのエッジ面4e2から入射した光束に対して射出面4b側に全反射させるような角度とする必要がある。このような条件から、傾斜角度βは45°付近であることが望ましい。
しかし、必要とされる照射角度範囲によっては、この範囲内である程度の自由度を持たせる必要があるため、本実施例ではプリズム面4e1の傾斜角度を、45°を中心にして±10°の余裕を持たせた範囲としている。
また、傾斜角度γに関しては、射出面4bの周辺から射出される面積を最も小さくして集光効率を高めるために、基準面に対してエッジ面4e2を垂直(90°)に形成することが好ましい。
しかし、反射部4eを、樹脂材料を用いて成形するときには、抜きテーパが必要となるため、本実施例では、反射部4fの型成形を考慮に入れて、傾斜角度γを角度80°以上90°以下の範囲内とすることが望ましい。
次に、閃光放電管2と光学部材4の配置関係について説明する。
本実施例では、上述したように光学部材4が、光源である閃光放電管2の至近位置に配置されている。この配置構成は、上述した光学部材4における各種特性(第1の入射面4cによる集光作用および第2の入射面4dにより光源からの光束を光学部材4の側方に導く作用)を得る上で必要な構成である。
以下に、閃光放電管2および光学部材4の理想的な配置関係と理由について説明する。
光学部材4に形成されたフレネルレンズ部は、光源となる閃光放電管2に最も近い位置に配置することが望ましい。これにより、光学部材4を閃光放電管2に近づけた分だけ閃光発光装置を小型化でき、光源から射出した光束をできるだけ多く光学部材4に取り込むことができるからである。
しかし実際には、光源から光束が射出する際には光束の射出と同時に多くの熱が発生するため、本実施例のように樹脂材料で形成した光学部材4を閃光放電管2に最も近い位置に配置した場合には、光学部材4が変形等するおそれがある。
閃光発光装置内の限られたスペース内で断熱効果を持たせるためには、閃光放電管2と光学部材4の間に所定間隔の空間層を形成することが有効である。しかし、光学部材4および閃光放電管2の間の距離を必要以上に長くすることは、上記の光学部材4における各種特性を得ることができなくなってしまう。
一方、光学部材4の側方に形成された反射部4eは、射出面4bで全反射した光束を装置前面に向けて反射させるものであるため、フレネルレンズ部よりも射出面4bに近い位置に形成することができ、フレネルレンズ部よりも閃光放電管2から離れた位置に配置することができる。また、閃光放電管2の両端にはXeブッシュ5、5’が配置されており、上述したようにXeブッシュ5、5’と対向する位置に反射部4eが位置するため、Xeブッシュ5、5’と干渉しない位置に反射部4eを形成する必要がある。
しかし、反射部4eを閃光放電管2から大きく離れた位置に形成すると、光学部材4の厚みが厚くなってしまい、閃光発光装置を薄型化することができなくなってしまう。
以上の点を考慮して、閃光放電管2と光学部材4との距離関係は以下の範囲内にあることが望ましい。
0.1mm ≦ d1 ≦ d2 ≦ 2.5mm ・・・(5)
ここで、d1は光学部材4のフレネルレンズ部と閃光放電管2との最短距離を示し、d2は光学部材4の反射部4eと閃光放電管2との最短距離を示す。
ここで、上記式(5)の最小値である0.1mmは、比較的電気エネルギが少ない場合に、光源からの放射熱によって光学部材4が変形や変色の影響を受けないときの、光学部材4のフレネルレンズ部および閃光放電管2の最短距離である。また、上記式(5)の最大値である2.5mmは、反射部4eによる反射作用と光学部材4の薄型化を実現しつつ、反射部4eおよびXeブッシュ5、5’の干渉を避けるための、反射部4eおよび閃光放電管2の最大距離である。
上記式(5)の条件を満たすように閃光放電管2および光学部材4の位置関係を決定することで、光源からの光を有効に利用することができるとともに、閃光発光装置を薄型化することができる。
なお、本実施例の閃光発光装置では、d1を0.3mm、d2を0.8〜1.8mmに設定しており、何れの値も上記式(5)の範囲内としている。
次に、上述した光学部材4を有する閃光発光装置における集光動作について詳しく説明する。
まず、図1では、第1の入射面4cによって光源から射出した光束を屈折させて集光させた状態を示している。図1に示すように、第1の入射面4cでの屈折作用によって射出面4bから射出される光束の領域は、閃光放電管2のアーク長より若干広い領域となっている。また、第2の入射面4dの傾斜角度を略90°とすることで、第1の入射面4cで屈折した光線に隙間を無くすことができ、射出面4bのうち第1の入射面4cからの光束によって形成される領域が全体にわたって発光することになる。これにより、第1の入射面4cによって光源からの光束を効率良く集光していることになる。
次に、図2では、反射部4eで反射して射出面4bの周辺領域から射出される光線のトレース図を示している。図2に示すように、第2の入射面4dから入射した光束が、反射部4eでの全反射によって装置前面に導かれていることがわかる。
ここで、反射部4eのエッジ面4e2における傾斜角度を上記式(4)を満たすようにすることで、反射部4eのプリズム面4e1で反射した光束に隙間が生じることはなく、射出面4bの周辺領域を用いて効率良く光束を集光させていることが分かる。
特に注目すべき点は、第2の入射面4dから入射した光束が、射出面4bで一度全反射し、光源側へ一度射出した後、再度反射部4eのエッジ面4e2から入射して、プリズム面4e1で全反射した後、射出面4bから射出されるようになっていることである。
ここで特徴的な点は、光学部材4の側方に導いた光束を一度閃光放電管2側に射出させ、その直後に再入射させて反射部4eへ導いている点である。このように1つの光学部材に複数の微細なプリズムを形成し、上述した光束の入・射出を意図的に行わせて、大きな方向変換を行わせるような照明光学系は従来にはなく、このように構成することで薄型化された光学部材4を閃光放電管2の近くに配置しても光源からの光束を大きく方向変換することができる。
なお、本実施例では、第1の入射面4cおよびプリズム面4e1を平面としているが、凹面又は凸面の曲面としてもよい。
また、射出面4bは、照明光軸に対して垂直な平面で構成しているが、第2の入射面4dからの光束を全反射させて光学部材4の側方(反射部4e)に導くことができる形状であれば凹面・凸面等の任意の曲面等の形状でもよく、例えば、閃光発光装置が搭載されるカメラの外観形状に合わせた任意の曲面、例えばトーリック面等で構成することができる。
さらに、第1の入射面4cおよびプリズム面4e1を、図4および図5に示すように、閃光放電管2の長手方向に対して直交する方向(閃光発光装置の上下方向)に延びる形状としたが、必ずしもこの形状に限定されず、例えば、照明光軸に対して回転対称となる輪帯状(装置上下方向に対して曲率をもった形状)のレンズ面としてもよい。
また、光学部材4のうち閃光放電管2の径方向における断面形状は、図3に示すように、正の屈折力を持つような連続的な曲面形状としたが、必ずしもこの形状に限定されず、平面又は不連続な曲面で形成したり、フレネルレンズ等を用いたりしてもよい。
本実施例では、1つの部材である光学部材4にフレネルレンズ部および反射部を形成したが、複数の光学部材を用いてフレネルレンズ部および反射部を形成するようにしてもよい。ただし、本実施例のように1つの部材である光学部材4を用いることで、複数の光学部材を用いた場合に比べて、光学部材を配置する際の位置精度を高めることができる。
また、図1や図2に示すように、第1の入射面4cの傾斜角度を、光学部材4の中心から周辺に向かって徐々に大きくしているが、これに限るものではなく、第1の入射面4cの傾斜角度を上記の式(1)の範囲内とすれば、第1の入射面の傾斜角度をすべて同じ角度にしたり、光学部材4の周辺側に位置する第1の入射面の傾斜角度を他の第1の入射面の傾斜角度よりも小さくしたりすることができる。
次に、本発明の実施例2である閃光発光装置(照明装置)について図7から図13を用いて説明する。
本実施例において、実施例1と異なる点は、光学部材及び反射傘の形状を変形させて、光学性能を向上させた点にある。すなわち、光学部材に形成したフレネルレンズ部を輪帯形状とし配光特性の改善を図るとともに、光学部材の射出面の面積を広げることによりガイドナンバーを上昇させたものである。また、上記の光学部材の特性を生かすために、反射傘の形状を光学部材に合わせて変形している。
図7から図13は本実施例の閃光発光装置を説明するための図である。ここで、図7〜図10は閃光発光装置のうち閃光放電管の長手方向を含む断面図、図11は閃光発光装置のうち閃光放電管の径方向を含む断面図、図12は閃光発光装置のうち主要な構成部材を示す斜視図、図13は光学部材を光源側から見た斜視図である。なお、図8〜図11では、光源から射出した代表光線の光線トレース図も合わせて示している。
図12において、22は光源となる閃光放電管(キセノン管)であり、円筒状に形成され、閃光を発する。23は反射傘であり、閃光放電管22から射出した光束のうち装置後方に射出した成分を装置前方に反射させる。反射傘23の内面は、高反射率を有する光輝アルミ等の金属材料で形成されていたり、高反射率の金属蒸着面が形成されていたりする。
24は透明性をもつ光学部材であり、閃光放電管22から射出した光束を後述するように光路分割させるとともに、所定の配光特性に変換させてから装置外に射出させる。この光学部材24は、アクリル樹脂等の透過率の高い光学用樹脂材料、またはガラス材料で構成されている。また、光学部材24のうち光源側の面には、輪帯形状のフレネルレンズ部が形成されている。
以下、図7から図11を用いて、光学部材4の最適形状の設定方法に関して説明する。
図11は、本実施例の閃光発光装置のうち閃光放電管22の径方向における縦断面図であり、装置上下方向の配光特性を均一化させるための基本的な考え方を示す図である。なお、図12で説明した部材と同じ部材については同一符号を付している。
図11において、23は反射傘であり、光源から射出された光束のうち装置後方に射出された成分を反射させて照明光軸と平行な光束とする。この反射傘23は、閃光放電管22の内径中心を焦点位置とする略放物面形状に形成されている。なお、反射傘23の形状は、これに限るものではなく、楕円形状又は2次曲面形状に形成することができる。
一方、光学部材24は以下に説明するような形状に形成されている。
光学部材24のうち光源側の面の中央部には、光源からやや離れた位置に正の屈折力をもつ球面レンズ部24aが形成されている。これにより、光源からの光束のうち球面レンズ部24aに直接入射する光束は、照明光軸に対して広がる光束に変換される。また、反射傘23で反射して、球面レンズ部24aに入射した光束は、集光するようになっている。
ここで、上述した2つの光束の配光分布を一致させるように、反射傘23および球面レンズ部24aの形状を決定することで、必要とされる配光分布を得ることができる。
一方、光学部材24の光源側の面のうち中央部以外の領域には、図13に示すように輪帯形状のフレネルレンズ部で形成されており、装置の上下・左右以外の方向、例えば照射面内の四隅に対しても均一な配光を得ることができる構成となっている。また、フレネルレンズ部を輪帯状とすることで、実施例1に比べてフレネルレンズ部を加工し易い形状としている。
ここで、図13に示すように、球面レンズ部24aは他の部分よりも落ち込んだ位置に形成されている。すなわち、光源から球面レンズ部24aに直接入射する光束を効率良く集光させながら、後述するように第2の入射面に入射する光束を増加させるようにしている。
次に、閃光放電管22の長手方向における断面における、光学部材24の形状および光線の振る舞いについて図7〜図10を用いて説明する。
図7〜図10は、閃光発光装置のうち閃光放電管22の長手方向を含む断面図であり、図8〜図10では、光源の内径中心から射出される代表光束の軌跡についても合わせて示している。
ここで、図8は、光源から射出した光束のうち球面レンズ部24aにより屈折して集光した成分を示したものであり、図9および図10は、光源から射出した光束のうち光学部材24内で全反射して集光した成分を示したものである。なお、図9および図10では、複雑な光路を取る光線トレース部を分かり易く示すために、各プリズムの光線トレース図を示している。
図7〜10において、24cは光学部材24の光源側に形成された複数の第1の入射面であり、24dは第1の入射面24cに隣接して形成された第2の入射面である。また、24eは第1の反射部であり、プリズム面(反射面)24e1およびエッジ面(第3の入射面)24e2を有している。24gは第2の反射部であり、プリズム面(反射面)24g1およびエッジ面(第3の入射面)24g2を有している。
反射部24e、24gのうち射出光軸に近い位置にある反射部24eは、フレネルレンズ部とほぼ同等の大きさを持っているのに対し、反射部24gは反射部24eよりも小さく形成されている。
以下、本実施例の照明光学系について更に詳細に説明する。
本実施例では、配光特性の向上を図るために光学部材24の光源側の面に球面レンズ部24aや輪帯形状のフレネルレンズ部を形成するとともに、照射面の中央部付近を最も明るくするために、光学部材24の厚みの中で射出面の面積が最大になるように各部の形状を最適化したものである。
まず、閃光発光装置の限られた寸法範囲内で、照射面上の中央部付近を最も明るく構成するための条件としては、射出面24bを広げるとともに、照明光軸と平行となる光線を多数存在させることである。
図8〜図10における光線トレース図から、光学部材の射出面24bのどの部分から射出された光束が照射面の中央部に寄与しているかを判断することができる。図8〜図10に示す光線を組み合わせると、射出面24bのすべての領域で照明光軸に平行な成分が存在しており、薄型という形態を満たしつつ、照射面の中心部付近を明るくできる光学系になっていることがわかる。
以下、光学部材24における各部の詳細な形状について説明する。
まず、図8に示すように、第1の入射面24cは、従来のフレネルレンズの形状とは異なり、第2の入射面24dから入射した光束を光学部材24の側方に導くのに都合のよい形状となっている。特に、本実施例では実施例1に比べて光学部材24の側方に導く光束を増加させるように、以下の方策を採っている。
まず、光学部材24の中央部の球面レンズ部24aにおいては、第2の入射面24dの面積を増加させるために、球面レンズ部24aの位置を閃光放電管22から離れた位置で落とし込み、第2の入射面24dの面積を増加させている。また、照明光軸と直交する面(基準面)に対する第1の入射面24cの傾斜角度を大きくして、第2の入射面24dの面積が増加するようにしている。
一方、本実施例の光学部材24は、実施例1に比べてフレネルレンズ部と反射部24e、24gとで大きな段差を設けず、各面の深さもほぼ一定の割合で変化するように各部の面形状を規制している。このため、光学部材24の中央に位置するフレネルレンズ部から周辺部の反射部24e、24gに至る形状が連続的になり、製作しやすい形状となっている。
また、図示のように、フレネルレンズ部の第1の入射面24cから反射部24e、24gのプリズム面24e1、24g1に至る傾斜角度が徐々に急になるように設定されているとともに、プリズムのピッチ間隔が中央から周辺部に向かうにつれて狭くなるように形成されている。しかも、フレネルレンズ部の中央付近における第1の入射面24cの傾斜角度が、従来のフレネルレンズに比べて大きくなっている。
次に、第1の入射面24c、第2の入射面24d、反射部24e、24gにおけるプリズム面24e1、24g1およびエッジ面24e2、24g2の基準面に対する傾斜角度について説明する。
本実施例においても、実施例1と同様の理由から、先に説明した式(1)〜式(4)の角度範囲を満たすことが望ましい。また、光学部材24および閃光放電管22の配置関係は、上記の式(5)の条件を満たすことが望ましい。本実施例における具体的な数値は以下のようである。
基準面に対する第1の入射面24cの傾斜角度θは、光学部材24の中心から順に、25°、30°、35°の3つの面で構成されている。この形状は、光学部材24の周辺に向かうにつれて徐々に増加させるような角度設定となっており、それぞれ式(1)を満たしている。
基準面に対する第2の入射面24dの傾斜角度αは、実施例1と同様に理想値である90°に設定しており、式(2)を満たしている。
次に、反射部24e、24gであるが、本実施例では、大きな段差を設けずにフレネルレンズ部に連続する形で構成している。ここで、光学部材24のうち閃光放電管22の実質的な発光領域であるアーク長より少し長い領域に対応する領域をフレネルレンズ部とし、このフレネルレンズ部の外側の領域に全反射を行わせるための反射部24e、24gを形成している。
基準面に対するプリズム面24e1、24g1の傾斜角度βは、すべて45°に設定されており、上記の式(3)を満たしている。また、基準面に対するエッジ面24e2、24g2の傾斜角度γは、すべて90°に設定されており、上記の式(4)を満たしている。
さらに、閃光放電管22とフレネルレンズ部との最短距離は0.4mm、閃光放電管22と反射部24e、24gとの最短距離は、0.4mmから1.2mmとなっており、上記の式(5)を満たしている。
このように各面の形状が設定された光学部材24を用いて閃光発光装置の集光動作について説明する。
まず、図8では、光源から射出した光束のうち第1の入射面24cによって屈折され集光された光束の状態を示している。図示のように、第1の入射面24cでの屈折作用によって、閃光放電管22のアーク長よりも若干広い領域で装置前方に向かう成分が存在することがわかる。ここで、第2の入射面24dの傾斜角度を90°としているため、第1の入射面24cで屈折した光線の領域には隙間がなく、この領域においては射出面24bの全面で発光していることがわかる。これにより、光学部材24を薄型化したスペースの中で、光源からの光束を効率良く集光させていることがわかる。
図9は、光学部材24の中心に近い位置にある反射部24eで全反射する成分のみを抽出して示したものである。光線同士の交錯を防ぐため、光学部材24の図中左側には、フレネルレンズ部に最も近い位置にある反射部24eで全反射する成分を示し、光学部材24の図中右側には、フレネルレンズ部に対して次に近い位置にある反射部24eで全反射する成分を示している。
図9の左側における光線トレース図に示すように、2つの反射部24eのうち照明光軸側の反射部24eで全反射される光束は、フレネルレンズ部の中央側に位置する第2の入射面24dから入射した光束であることがわかる。この第2の入射面24dに入射した光束は、射出面24bで全反射し、第1の入射面24cを透過して光学部材24の外に一旦射出した後、再び反射部24eのエッジ面24e2から入射して、プリズム面24e1で全反射して装置前方に導かれることになる。
一方、2つの反射部24eのうち照明光軸から離れた側の反射部24eで全反射される光束は、図9の右側の光線トレース図に示すように、フレネルレンズ部のうち2つの第2の入射面24dから入射した光束であることがわかる。これらの第2の入射面24dに入射した光束は、射出面24bで全反射し、第1の入射面24cを透過して光学部材24の外に一旦射出した後、再び反射部24eのエッジ面24e2から入射して、プリズム面24e1で全反射して装置前方に導かれることになる。
図10は、光学部材24の周辺に位置する反射部24gで全反射する成分のみを抽出して示したものである。図9と同様に、光線同士の交錯を防ぐため、光学部材24のうち図中右側の部分には、3つの反射部24gのうち光学部材24の端側に位置する反射部24gで全反射する成分を示し、光学部材24のうち図中左側の部分には、照明光軸側に位置する反射部24gで全反射する成分を示している。
図10の右側に示すように、照明光軸から離れた位置にある反射部24gで全反射される光束は、フレネルレンズ部の周辺側に位置する3つの第2の入射面24dに入射した光束であることが分かる。また、図10の左側に示すように、照明光軸に近い位置にある反射部24gで全反射される光束は、フレネルレンズ部の中央側に位置する3つの第2の入射面24dに入射した光束であることが分かる。
ここで、第2の入射面24dから入射した光束は、射出面24bで全反射し、反射部24eのプリズム面24e1又は反射部24gのプリズム面24g1から光学部材24の外側に一旦射出した後、他の反射部24gのエッジ面24g2から入射し、このプリズム面24g1で全反射して装置前方に導かれることになる。
図9に示す光束および図10に示す光束を重ね合わせた場合、射出面24bの周辺領域から射出される光線には隙間がなく、上記の周辺領域全面から光束が射出していることが分かる。
次に、本発明の実施例3である閃光発光装置について図14〜図16を用いて説明する。
本実施例は、実施例2に対して光学部材の射出面の形状を変形させたものであり、具体的には、光学部材の射出面を凹面形状としている。ここで、本実施例における光学部材34のうち閃光放電管32の径方向における断面は、実施例2における光学部材(図11)と同じであるため、説明を省略する。以下、本実施例の光学部材のうち閃光放電管の長手方向における断面形状について説明する。
図14から図16は、本実施例の閃光発光装置のうち閃光放電管の長手方向を含む横断面図を示している。ここで、図15および図16では、光源から射出した代表光線の光線トレース図も合わせて示しており、図15は光学部材の屈折によって集光された成分を示し、図16は光学部材の全反射によって集光された成分を示している。
図14において、32は光源となる閃光放電管(キセノン管)であり、円筒状に形成され、閃光を発する。33は反射傘であり、閃光放電管32から射出した光束のうち装置後方に射出した成分を装置前方に反射させる。反射傘33の内面は、高反射率を有する光輝アルミ等の金属材料で形成されていたり、高反射率の金属蒸着面が形成されていたりする。
34は投光性をもつ光学部材であり、閃光放電管32から射出した光束を後述するように光路分割させるとともに、所定の配光特性に変換させてから装置外に射出させる。この光学部材34は、アクリル樹脂等の透過率の高い光学用樹脂材料、またはガラス材料で構成されている。35は、閃光放電管32を保持するためのXeブッシュである。
これらの図において、34cは光学部材34の光源側に形成された第1の入射面であり、34dは第1の入射面34cに隣接して形成された第2の入射面である。また、34eは反射部であり、プリズム面(反射面)34e1およびエッジ面(第3の入射面)34e2を有している。
実施例2における光学部材の形状との相違は、図示のように、光学部材34の射出面が凹面で構成されている点と、閃光放電管32側に形成されたフレネルレンズ部および反射部34eの頂点を結ぶ包絡面もほぼ射出面とほぼ同じ曲率を持った凹面に沿うように構成されていることである。
各反射部34eは、照明光軸に近い部分では大きくフレネルレンズ部とほぼ同等の大きさを持っているのに対し、光学部材34の周辺に向かうにつれて小型化するように構成されている。これは、光学部材34の周辺部に向かった光束に対して、反射部34eで照明光軸方向に変換させた光束を隙間なく発生させるために必要な構成であり、いたずらに射出面34bの形状を大きくすることなく少ない開口面積で効率良く集光を行わせることができる。
また、光学部材34の入射面側におけるプリズムの包絡面を凹面で構成し、閃光放電管32の端子部付近(Xeブッシュ35が配置されている部分)の空間を増すことによって、光学部材34がXeブッシュ35と干渉するのを避けることができる。
以下、本実施例の照明光学系について更に詳細に説明する。
図15および図16の光線トレース図を見ると、光学部材34の射出面34bのうちどの部分から射出された光束が照射面の中央部に寄与しているかを判断することができる。そして、図15および図16に示す光線を組み合わせると、射出面34bのすべての領域で照明光軸に平行な成分が存在しており、薄型かつ射出面を凹面という形態を満たしつつ、照射面の中心部付近を明るくできる光学系になっていることがわかる。
以下、光学部材34における各部の詳細形状について説明する。
まず、図15に示すように、第1の入射面34cは、従来のフレネルレンズの形状とは異なり、第2の入射面34dから入射した光束を光学部材34の側方に導くのに都合のよい形状としている。特に、本実施例では、光学部材34の中央部にシリンドリカルレンズ部34aを形成し、この曲面の位置を閃光放電管32から離れた位置まで落とし込むことにより、第2の入射面34dの面積を増加させている。また、照明光軸と直交する面(基準面)に対する第1の入射面34cの傾斜角度を大きくして、第2の入射面34dの面積が増加するようにしている。
一方、本実施例の光学部材34は、実施例2と同様に、フレネルレンズ部と反射部34eとで大きな段差を設けず、各面の深さもほぼ一定の割合で変化するように各部の面形状を規制している。このため、光学部材34の中央に位置するフレネルレンズ部から周辺の反射部34eに至る形状が連続的になり、製作しやすい形状となっている。
また、図示のように、フレネルレンズ部の第1の入射面34cから反射部34eのプリズム面34e1に至る傾斜角度が徐々に急になるように設定されているとともに、プリズムのピッチ間隔が中央から周辺部に向かうにつれて狭くなるように形成されている。しかも、フレネルレンズ部の中央に位置する第1の入射面24cの傾斜角度が、従来のフレネルレンズに比べて大きくなっている。
本実施例においても、実施例1と同様の理由から、先に説明した式(1)〜式(4)の角度範囲を満たすことが望ましい。また、光学部材34および閃光放電管32の配置関係は、上記の式(5)の条件を満たすことが望ましい。本実施例における具体的な数値は、ほぼ実施例2と同様である。
基準面に対する第1の入射面34cの傾斜角度θは、光学部材34の中心から順に、25°、30°、35°の3つの面で構成されている。この形状は、光学部材34の周辺に向かうにつれて徐々に増加させるような角度設定となっており、それぞれ式(1)を満たしている。
基準面に対する第2の入射面34dの傾斜角度αは、実施例1同様に理想値である90°で設定しており、式(2)を満たしている。
次に、反射部34eであるが、本実施例では、大きな段差を設けずにフレネルレンズ部に連続する形で構成している。ここで、光学部材34のうち閃光放電管32の実質的な発光領域であるアーク長より少し長い領域に相当する領域をフレネルレンズ部の形成領域とし、このフレネルレンズ部の外側の領域に全反射を行わせるための反射部34eの形成領域としている。
基準面に対するプリズム面34e1の傾斜角度βは、すべて45°に設定されており、上記の式(3)を満たしている。また、基準面に対するエッジ面34e2の傾斜角度γは、すべて90°に設定されており、上記の式(4)を満たしている。
さらに、閃光放電管32とフレネルレンズ部との距離は0.4mm〜0.7mm、閃光放電管32と反射部34eとの距離は0.9mm〜2.1mmとなっており、上記の式(5)を満たし、理想的な配置になっている。
このように各面の形状が規定された光学部材34による集光作用について説明する。
まず、図15では、光源から射出した光束のうちシリンドリカルレンズ面34aおよび第1の入射面34cによって屈折され集光された光束の状態を示している。図示のように、第1の入射面34cでの屈折作用によって、閃光放電管32のアーク長より若干広い領域で装置前方に向かう成分が存在することがわかる。ここで、第2の入射面34dの傾斜角度を90°としているため、第1の入射面34cで屈折した光線の領域には隙間がなく、この領域においては射出面34bの全面で発光していることが分かる。これにより、光学部材34を薄型化したスペースの中で、光源からの光束を効率良く集光させていることがわかる。
図16は、光学部材34の反射部34eで全反射する成分のみを抽出して示したものである。図示のように、射出面34bが曲面であるにもかかわらず、光軸中心に向かう光束が隙間なく存在していることがわかる。また、図15に示す光線と、図16に示す光線とを重ね合わせることによって、限られた開口面積のすべての領域から隙間なく光軸方向に向かう光線が存在していることがわかる。
上述した各実施例は、光源として、直管タイプの閃光放電管を用いたが、光源としては、このようなタイプの閃光放電管に限定されるわけではなく、点光源と見なせないある程度長い有効発光部を有するような光源、たとえば、冷陰極管を用いることができる。
また、実施例3では、射出面34bの形状を凹面とした場合について説明したが、射出面形状は凹面に限定されず、任意の弱い曲率を持った曲面で構成することもできる。たとえば、凸面はもとより、凹面と凸面を組み合わせたような波状の面や、曲面を基調とした光学機器の任意の非球面の外観形状にも対応可能である。
なお、上述した実施例では、本発明の照明装置をカメラに搭載した例について説明したが、カメラに限らず携帯型電子機器(例えば、携帯電話)といった電子機器にも搭載することができる。本実施例における照明装置は、照明光軸方向における長さを短くすることができるため、薄型の電子機器にも機器本体を大型化させることなく組み込むことができる。