JP3998957B2 - 射出成形同時加飾用シート及び加飾成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種物品の表面加飾に使用される射出成形同時加飾用シートと、それを用いた加飾成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、樹脂成形物の表面を加飾した加飾成形品が各種用途で使用されている。例えば、特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に開示の射出成形同時加飾方法等では、射出成形同時加飾用シートを射出成形の雌雄両型間に配置した後、溶融樹脂をキャビティ内に射出充填し固化させることで、樹脂成形物の成形と同時にその表面に射出成形同時加飾用シートを接着積層して一体化した加飾成形品を得る方法を開示している。
【0003】
また、樹脂成形物に使用する樹脂材料としては、一般的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が多かった。この為、射出成形同時加飾用シートも、その裏面側は、これら樹脂との密着性や成形性等を考慮して、ABS樹脂シート等が多用されてきた。
一方、加飾成形品の意匠として塗装感が要求される場合には、透明性に優れ、また成形性や耐候性、耐擦傷性等も良好であるアクリル樹脂を用いた透明樹脂シートが表面シートとして使用されてきた。そして、絵柄意匠も表現する為には、成形性や密着性が良い点で、アクリル樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体をバインダー樹脂に用いた絵柄インキ層を印刷形成する事が多かった。
【0004】
例えば、特開2001−232660号公報では、表面側から順に、アクリル樹脂からなる透明な表面シート、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物からなる絵柄インキ層、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物からなる接着剤層、ABS樹脂から成る着色隠蔽性の基材シートを積層した構成の射出成形同時加飾用シートが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の様に、アクリル樹脂の表面シートとABS樹脂の基材シートを用いた構成の射出成形同時加飾用シートを、樹脂成形物表面に射出成形同時加飾方法等で積層して加飾成形品とすると、射出成形同時加飾用シート層内での層間密着性が必ずしも十分とは言えない場合があった。
【0006】
すなわち、本発明の課題は、射出成形同時加飾方法に適用し得る射出成形同時加飾用シートとして、アクリル樹脂の表面シートとABS樹脂の基材シート間に、絵柄インキ層、接着剤層を設けた構成にて、層間密着性を向上させる事である。また、この様な射出成形同時加飾用シートが密着性良く積層した如き加飾成形品を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の射出成形同時加飾用シートでは、透明アクリル樹脂から成る表面シートの裏面に、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層、及び、ブタジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る基材シートを、この順に積層して成る構成とした。
【0008】
この様に、特定材料の表面シート、特定材料の絵柄インキ層及び接着剤層を、ブタジエン比率を特定したABS樹脂による特定材料の基材シートと組合わせた構成とすることで、射出成形同時加飾用シート層内での層間密着性が良好となる。また、射出成形同時加飾用シートの基本性能として必要な相応の成形性も得られる。そして、表面シートは透明アクリル樹脂である為に、その透明性によって塗装感が得られ、また、基材シートはABS樹脂である為に、ABS樹脂の樹脂成形物への密着性も得られる。
【0009】
また、本発明の射出成形同時加飾用シートは、透明アクリル樹脂から成る表面シートの裏面に、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層、ブタジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第1基材シート、及び、ブタジエン成分の比率が20質量%以上のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第2基材シートとを、この順に積層して成る構成とした。
【0010】
この様に、特定材料の表面シート、特定材料の絵柄インキ層及び接着剤層を、ブタジエン比率を特定したABS樹脂による特定材料の基材シートと組合わせた構成とすることで、射出成形同時加飾用シート層内での層間密着性が良好となる。しかも、第1基材シートのABS樹脂はブタジエン比率が低い為に成形性がその分低下するが、それによる深絞り成形性の低下を補償する為に、ブタジエン比率20質量%以上のABS樹脂からなる第2基材シートを更に積層して、第2基材シートの方で成形性を出す様にしてある為、深絞り成形性も良い。従って、層間密着性と深絞り成形性が両立する。そして、表面シートは透明アクリル樹脂である為に、その透明性によって塗装感が得られ、また、基材シートはABS樹脂である為に、ABS樹脂製の樹脂成形物への密着性も得られる。
【0011】
また、本発明の加飾成形品は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る樹脂成形物の表面に、ブタジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る基材シート、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、透明アクリル樹脂から成る表面シートを、この順に積層して成る構成の成形品とした。
なお、本加飾成形品の構成は、請求項1に該当する前記射出成形同時加飾用シートを、樹脂成形物に積層することで得られる構成である。
【0012】
この様に、ABS樹脂の樹脂成形物上に、ブタジエン比率を特定したABS樹脂による特定材料の基材シートを、特定材料の絵柄インキ層及び接着剤層、特定材料の表面シートと組合わせて積層した構成とすることで、樹脂成形物も含めて各層間の層間密着性が良好となる。しかも、樹脂成形物上の各層を加飾用シートとして樹脂成形物に積層して形成する際に、加飾用シートの基本性能としての成形性も得られ、絞り部分も加飾された加飾成形品が可能である。また、表面シートは透明アクリル樹脂である為に塗装感も得られる。
【0013】
また、本発明の加飾成形品は、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る樹脂成形物の表面に、基材シートとしてブタジエン成分の比率が20質量%以上のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第2基材シート、及びブタジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第1基材シート、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、透明アクリル樹脂から成る表面シートを、この順に積層して成る構成の成形品とした。なお、本加飾成形品の構成は、請求項1に該当する前記射出成形同時加飾用シートを、樹脂成形物に積層することで得られる構成である。
【0014】
この様に、ABS樹脂の樹脂成形物上に、ブタジエン比率を特定したABS樹脂による特定材料のしかも2層構成とした基材シートを、特定材料の絵柄インキ層及び接着剤層、特定材料の表面シートと組合わせて積層した構成とすることで、樹脂成形物も含めて各層間の層間密着性が良好となる。しかも、樹脂成形物上の各層を加飾用シートとして樹脂成形物に積層して形成する際に、加飾用シートの成形性も良く、絞り部分も加飾された加飾成形品が可能である。更に、基材シートはブタジエン比率を異にする第1基材シートと第2基材シートとの2層構成としてあるので、成形性が向上し深絞り成形性も良好なので、深絞り部分が加飾された加飾成形品も可能である。また、表面シートは透明アクリル樹脂である為に、その透明性によって塗装感が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
概要:
先ず、本発明の射出成形同時加飾用シートの構成を、図1及び図2の断面図で例示する。図1に示す射出成形同時加飾用シートSは、表側から順に、透明アクリル樹脂の表面シート1、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層2、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層3、そして、ブタジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(以下、単にABS樹脂とも呼ぶ。)から成る基材シート4が、積層された構成の積層シートである。
【0017】
一方、図2に示す射出成形同時加飾用シートSは、表側から順に、透明アクリル樹脂の表面シート1、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層2、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層3、そして、2層構成の基材シート4として該接着剤層3側のブタジエン成分の比率が20質量%未満のABS樹脂から成る第1基材シート4Aと、ブタジエン成分の比率が20質量%以上のABS樹脂から成る第2基材シート4Bが、積層された構成の積層シートである。
【0018】
次に、本発明の加飾成形品の構成を、図3の断面図で例示する。図3で示す加飾成形品Pは、ABS樹脂から成る樹脂成形物5の表面に、図1或いは図2の断面図で例示の如き構成の射出成形同時加飾用シートSが、その基材シート側が樹脂成形物側となる向きで積層された如き構成の加飾成形品である。同図では、この射出成形同時加飾用シートSの部分の層構成の図示は省略してあるが、その部分は、図1或いは図2の断面図で例示の射出成形同時加飾用シートSと同様である。
【0019】
以上の様な構成とすることで、射出成形同時加飾用シート層内、或いは更に樹脂成形物も含めて、層間密着性が得られる。しかも、基材シートを特定の2層構成とする形態では、ブタジエン比率低下による成形性低下を補い、深絞り成形性も良好となり、層間密着性と深絞り成形性とが両立するのである。以下更に、射出成形同時加飾用シート、加飾成形品について詳述する。
【0020】
射出成形同時加飾用シート:
先ず、射出成形同時加飾用シートから説明する。
【0021】
〔表面シート〕
表面シート1は、透明なアクリル樹脂からなる樹脂シートを用いることができる。透明なアクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味〕を単体又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0022】
表面シートに透明アクリル樹脂を使用することで、アクリル樹脂が備えた優れた透明性によって、塗装感、或いは表面艶等の高級感溢れる意匠性を付与出来る。また、表面シートにポリオレフィン系樹脂シート等を使用する場合に比べて、耐候性及び耐擦傷性等の表面物性も良好にできる利点もある。
【0023】
なお、表面シートの透明性は、通常は無着色透明とするが、必要に応じ適宜、着色剤をアクリル樹脂中に添加して、着色透明としても良い。また、半透明としても良い。なお、着色剤としては、後述絵柄インキ層で列記する如き公知のものが使用できる。
また、表面シートの厚みは特に制限は無いが、通常50〜250μm程度とする。
【0024】
また、表面シートの樹脂中には、必要に応じて、適宜、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の滑剤、シリカ、球状α−アルミナ、鱗片状α−アルミナ等の粒子からなる減摩剤、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム等の粒子からなる充填剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、微粒子酸化セリウム系等の紫外線吸収剤やヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤等の各種添加剤を、物性調整の為に添加しても良い。但し、表面シートが不透明とならない範囲内で添加する。
【0025】
〔絵柄インキ層〕
絵柄インキ層2は、絵柄等を表現する為に印刷等によって形成した層であり、絵柄インキ層2は、バインダーの樹脂に特定の樹脂を使用する。すなわち、バインダーの樹脂に、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物を使用する。この様な特定樹脂を使用する事で、絵柄インキ層が接する特定樹脂からなる表面シート及び接着剤層、ひいては、該接着剤層が接する特定樹脂からなる基材シートと本絵柄インキ層との密着性が良好となる。この結果、射出成形同時加飾用シート層内での層間密着性が良好となる。なお、絵柄インキ層のバインダーの樹脂中の、アクリル樹脂は透明アクリル樹脂からなる表面シートとの密着性向上に寄与し、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は印刷適性や成形適性向上に寄与する。
【0026】
上記アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂、或いは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の分子中にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させて得られるアクリルポリオール等のアクリル樹脂を、単体又は2種以上混合して使用する。アクリルポリオールを用いた場合には、必要に応じて、2,4−トリレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネートを添加して架橋しても良い。なお、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0027】
また、上記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられる。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、必要に応じ、更にマレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等のカルボン酸を共重合させたものでも良い。
【0028】
なお、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合割合は、アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体=1/9〜9/1(質量比)程度で使用する。
但し、特にこの絵柄インキ層及び後述接着剤層は、アクリル樹脂の表面シート、或いはABS樹脂の基材シートと接する為に、密着性の観点からは、アクリル樹脂の比率の方を多めとする方が好ましい。但し、成形性の観点からは、柔軟な塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の方を多めとする方が好ましい。
【0029】
なお、絵柄インキ層のバインダーの樹脂としては、副成分の樹脂として、必要に応じて、適宜、上記以外のその他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性や2液硬化型等のウレタン樹脂等の樹脂を併用しても良い。
【0030】
絵柄インキ層2は、バインダーの樹脂を上記特定樹脂から構成する他は、基本的には特に制限は無い。絵柄インキ層2は、通常は印刷インキ又は塗料で、公知の印刷又は塗工法(塗工法は全ベタ柄のとき)等の形成方法により、表面シート1の基材シート4側の面に対して形成する。なお、印刷法を例示すれば、グラビア印刷、活版印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、インキジェット印刷等である。
【0031】
また、上記印刷インキ(或いは塗料)に用いる着色剤は公知の染料や顔料で良く、例えばチタン白、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、黄鉛、コバルトブルー等の無機顔料、アニリンブラック、フタロシアニンブルー、イソインドリノンイエロー、キナクリドンレッド等の有機顔料、アルミニウム箔粉等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母箔粉等の真珠光沢(パール)顔料、その他染料等を用いる。絵柄インキ層の絵柄は、木目、石目、布目、砂目、皮絞模様、幾何学模様、文字、記号、全面ベタ等と任意である。
【0032】
なお、絵柄インキ層としては、木目柄等の絵柄による装飾目的の層の他に、導電体層、磁性体層等の機能性層でも良い。例えば、導電体層では、上記特定樹脂のバインダー中に含有させる材料として、着色剤の代わりに銀粉等の導電性粉末を分散させる。また、磁性体層の場合には、着色剤の代わりに、酸化鉄(γ−Fe2O3)等から成る磁性体粉末を分散させる。
すなわち、本発明に於ける加飾とは、絵柄インキ層によって、機能性層、或いは目視不可能な模様等を付与することも包含する。なお、目視不可能な模様の例としては、可視光に対しては透明で紫外線照射で蛍光を発する蛍光インキで印刷した絵柄、赤外線吸収性インキで印刷したバーコード等である。
【0033】
〔接着剤層〕
接着剤層3は、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物からなる構成とする。これら樹脂は、絵柄インキ層のバインダーの樹脂と同じ樹脂である。従って、これにら樹脂については、前記絵柄インキ層のバインダーの樹脂として説明したので、説明は省略する。但し、両樹脂の内容、及び両樹脂の混合比率は絵柄インキ層と完全同一にする必要は無い。接着性、印刷・塗工適性等に応じた適宜内容とすれば良い。接着剤層は、絵柄インキ層が形成された表面シートを基材シートに熱融着で接着積層し易い様にする為に設ける。接着剤層は、絵柄インキ層2形成済みの表面シート1の絵柄インキ層の面、或いは、基材シート4の表面シート1側とする面に形成すれば良い。なお、わざわざ絵柄インキ層と同じ樹脂系の接着剤層を設けるのは、部分的に設けられるために、或いは着色剤等をバインダーの樹脂中に含有する為に低下気味となる絵柄インキ層の接着性を、この接着剤層で補う為である。なお、接着剤層は、上記特定樹脂を含むインキ(或いは塗液)を用いて、公知の印刷法(或いは塗工法)で形成すれば良い。接着剤層の厚みは特に制限はないが、例えば5〜20μm程度である。
【0034】
〔基材シート〕
基材シート4としては、ブタジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)から成る樹脂シートを用いる。基材シートにABS樹脂を使用する事で、ABS樹脂からなる樹脂成形物に対する射出成形同時加飾用シートの密着性が得られ、且つ、基材シートのABS樹脂を特定ブタジエン比率の樹脂とすることで、射出成形同時加飾用シート層内の層間密着性も向上する。
【0035】
すなわち、本発明に於いては、絵柄インキ層及び接着剤層の樹脂成分であるアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合樹脂に対して、ABS樹脂からなる基材シートの密着性(接着性)を向上させる為、基材シートに用いるABS樹脂のブタジエン比率を低めに抑える。実験の結果、具体的には、該ブタジエン比率を20質量%未満とすると良好な密着性が得られる。但し、該ブタジエン比率が低すぎると、基材シートの成形性が低下すると共に、基材シートの耐衝撃性も低下する。この点を考慮して、該ブタジエン比率は10質量%以上確保した方が好ましい。
【0036】
なお、射出成形同時加飾用シートで加飾するABS樹脂からなる樹脂成形物の被加飾面が、平面乃至は低絞り比の場合は、該ブタジエン比率は20質量%未満でも問題は無い。しかし、該被加飾面が深絞りとなると、被加飾面への形状追従性の低下が目立つ様になる。
【0037】
なお、ここで、深絞りとは、絞り比が面積比(成形後のシート面積/成形前のシート面積)で2程度以上、或いは寸法比(成形後のシート上の2点間の距離/成形前のシート上の2点間の距離)で1.4程度以上の場合を言う。
【0038】
ところで、ABS樹脂のシートを、成形品の被加飾面が深絞りの場合に於いても十分な成形性、つまり深絞り成形性を得る為には、実験の結果、ABS樹脂のブタジエン比率は20質量%以上とると良いことが判明した。しかし、これは前記の如き基材シートと接着剤層(ひいては絵柄インキ層)との密着性向上(これは、本発明が解決すべき課題である)の為の条件と矛盾する。
そこで、本発明の射出成形同時加飾用シートを、成形品の深絞り形状の被加飾面に対して積層する場合に於いても、接着剤層(ひいては絵柄インキ層)と基材シートとの密着性、及び成形性(形状追従性)が両立する好ましい態様を模索した結果、以下の構成を見出した。
【0039】
すなわち、ABS樹脂から成る基材シート4を、接着剤層と接する側に位置する第1基材シート4A、及び樹脂成形物側に接する側に位置する第2基材シート4Bとの2層積層体とした(図2参照)。
そして、第1基材シートについては、ABS樹脂のブタジエン比率を20質量%未満とする。それによって、(第1)基材シートと接着剤層(ひいては絵柄インキ層)との密着を十分確保する。もちろん、第1基材シートと第2基材シートとの密着性は、同じ樹脂同士の為、十分確保される。
一方、第2基材シートのブタジエン比率は20質量%以上とする。それによって、深絞り形状となる被加飾面に対する(深絞り)成形性を確保する。もちろん、第2基材シート自体そのものは、本発明特定組成の接着剤層(ひいては絵柄インキ層)との密着性は低下するが、第2基材シートは接着剤層と接することは無い為、これは全く問題無い。
よって、この様な基材シートの構成によって、本来矛盾する前記密着性と前記成形性とが両立するのである。
【0040】
なお、第1基材シートと第2基材シートとの厚み比は、成膜適性等の観点から、〔第1基材シート/第2基材シート〕=1/9〜9/1の範囲であり、通常1対1程度を基準とする。しかし、前記密着性の方を重視する場合は、第1基材シートの方を厚くする。また、特に前記成形性の方を重視する場合は、第2基材シートの方を厚くする。第1基材シート及び第2基材シートとの総厚は、基材シートを1層のみとする形態の場合と同様であり、成形性、コスト等の観点から、通常50〜500μm程度である。
【0041】
なお、1層或いは上記の如き第1及び第2の2層構成とする基材シートは、無着色でも良いが、通常は着色剤を添加して着色隠蔽性とする。それは、射出成形同時加飾用シートの被着体である樹脂成形物の色を隠蔽したり、絵柄インキ層による意匠表現の基調色を担わせたりする為である。
【0042】
上記着色剤としては、例えば、白色顔料を使用すれば良い。該白色顔料としては、例えば、チタン白、亜鉛華、三酸化二アンチモン等を用いる。なかでも、チタン白が隠蔽性、耐候性、耐熱性、その他物性の点で好ましい。また、必要に応じて更に、絵柄インキ層の絵柄の基調色となる着色剤を添加しても良い。この着色剤としては、前記絵柄インキ層で述べた公知の各種顔料や染料等を使用すれば良い。また、着色隠蔽性とする為には、黒色顔料(例えばカーボンブラック、鉄黒等)も、絵柄インキ層の発色を阻害しない範囲で加えることができる。
【0043】
なお、基材シートが第1基材シートと第2基材シートとの2層構成の場合は、これら両基材シートの色や隠蔽性は同一としてもよいが、異にしても良い。例えば、絵柄インキ層側の第1基材シートは白色顔料及び更にその他有彩色の着色剤を添加した着色隠蔽性として、裏面側の第2基材シートは黒色顔料を添加した黒色隠蔽性とする等である。基材シートを黒色とする事で、加飾成形品に於いて、射出成形同時加飾用シート切断端面の基材シート部分を目立ち難くすることが出来る。
【0044】
なお、基材シート中に、着色剤の他、必要に応じ適宜、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤等の公知の各種添加剤を添加しても良い。
また、基材シートの表面や裏面等の他層と接する面には、必要に応じ適宜、他層との密着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー塗工等の易接着処理を施しても良い。
【0045】
〔各層の積層法〕
なお、射出成形同時加飾用シートの各層を積層して積層シートとするには、例えば、図1(A)の如き層構成の場合は、例えば、次の様にすれば良い。透明アクリル樹脂の表面シート1の裏面に絵柄インキ層2を印刷し、更に続いて接着剤層3を塗工又は印刷して形成した印刷シートを用意する。そして、この印刷シートと本発明特定のABS樹脂からなる基材シート4とを、前記印刷シートの接着剤層の熱融着によって積層すれば良い。また、基材シートが2層構成の場合は、第1基材シート4Aと第2基材シート4Bとをそれぞれ用意し、これら両基材シート4A及び4B同士を、熱融着法で、或いは間にウレタン樹脂系接着剤等を用いたドライラミネーション法によって、貼り合わせて積層シートとなった基材シート4とする。或いは、両基材シート4A及び4Bを、2層共押出法によってシート成膜と同時に積層して積層シートとする。そして、後は、前記同様に印刷シートとこの積層シートとを印刷シート上の接着剤層の熱融着によって、積層すれば良い。
【0046】
〔射出成形同時加飾用シートの被着体と積層法〕
本発明の射出成形同時加飾用シートは、射出成形同時加飾方法に適用して、樹脂成形物からなる被着体に積層し加飾する用途に用いる。被着体の樹脂成形物はとしては、好適には、本射出成形同時加飾用シートとの密着性が得られる点で、ABS樹脂からなる樹脂成形物である。
【0047】
しかし、変則的な使用法とはなるが、その他の加飾方法への適用を制限するものでは無い。例えば、真空成形積層方法〔特公昭56−45768号公報(オーバーレイ法)、特公昭60−58014号公報(真空プレス法)等参照〕、ラッピング加工方法(特公昭61−5895号公報、特公昭56−23771号公報等参照)等である。但し、これらの他の加飾方法では、既に有形物の被着体に積層する関係上、射出成形同時加飾用シートを被着体に接着させる為の接着剤を、被着体或いは加飾用シートに施す必要がある。これに対して、射出成形同時加飾方法の場合では、この様な接着剤無しに被着体に加飾用シートを積層できる上、被着体の形状発現(成形)と同時に加飾でき生産性に優れる等の利点がある。
【0048】
なお、被着体の形状は、少なくともその加飾面は射出成形同時加飾用シートの成形性を活かせる様な形状が好適であるが、被着体の全体形状としては、射出成形同時加飾用シートをその加飾面に積層できる形状であればよく、板状(平板、曲面板)、柱状、三次元立体物等と任意である。
【0049】
加飾成形品:
次に、本発明の加飾成形品は、図3の断面図でその一形態を例示する如く、上述した如き構成の射出成形同時加飾用シートSが樹脂成形物5の表面に積層された如き層構成の成形品である。なお、同図では、射出成形同時加飾用シートSのシート内層構成の図示は省略してあるが、この部分は図1や図2の断面図で例示如き構成であり、その表面シート1に対して基材シート4側を樹脂成形物5側を向く様にして樹脂成形物5上に積層された構成である。
なお、樹脂成形物5上への射出成形同時加飾用シートSの積層は、好適には射出成形同時加飾方法によって行える。
【0050】
〔樹脂成形物〕
本発明の加飾成形品に於ける樹脂成形物5の樹脂としては、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)である。但し、前述射出成形同時加飾用シートの場合と異なり、シート成形性は考慮する必要が無いので、そのブタジエン比率は特に問わない。従って、樹脂成形物に用いるABS樹脂としては、耐熱性、射出成形同時加飾用シートとの密着性、射出成形適性、コスト等の加飾成形品の要求性能に応じて、公知の各種グレードのABS樹脂を使用すれば良い。
また、樹脂成形物の樹脂中には、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤には、前述絵柄インキ層で述べた如き公知の着色剤を使用すれば良い。また、樹脂中には、必要に応じ適宜、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機物粉末、ガラス繊維等の充填剤、安定剤、滑剤、エラストマー等の公知の各種添加剤を含有させる。
【0051】
〔成形品形状〕
なお、加飾成形品は、通常、射出成形同時加飾用シートの積層面が凹凸面等と非平面の立体物である。しかし、本発明の加飾成形品としては、射出成形同時加飾用シートの積層面は平面だが他の面が非平面の立体物、積層面が平面となる板状物を排除するものではない。また、加飾成形品の全体形状は、板状(平板、曲面板)、柱状、三次元立体物等と任意である。
【0052】
射出成形同時加飾方法:
ここで、前述射出成形同時加飾用シートの用途、或いは上述加飾成形品の製造方法として好適な加飾方法である、射出成形同時加飾方法について、更に詳述しておく。
【0053】
射出成形同時加飾方法は、積層形態と転写形態の2方式に大別されるが、本発明で関係するのは、このうち積層形態の加飾方法である。積層形態の射出成形同時加飾方法は、特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載されるように、射出成形同時加飾用シートを射出成形の雌雄両型間に配置した後、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、樹脂成形物の成形と同時にその表面に射出成形同時加飾用シートを積層して加飾して加飾成形品を得る方法である。
【0054】
射出成形同時加飾方法では、射出成形同時加飾用シートの予熱無しの場合でも、射出樹脂による熱圧を射出成形同時加飾用シートが受ける。従って、射出成形同時加飾用シートが備えた成形性を享受する為には、射出成形同時加飾用シートの予備成形は行う形態でも行わない形態でも、いずれでも良い。また、射出成形同時加飾用シートの予熱は、行っても良く、行わなくても良い。なお、通常は、射出成形同時加飾用シートの成形性を最大限享受する為に、予備成形時には射出成形同時加飾用シートは予熱する。
【0055】
なお、もちろんの事だが、射出成形同時加飾用シートの絞りが大きい場合は、予備成形を行うのが好ましい。一方、射出成形同時加飾用シートの絞りが少ない場合は、射出される流動状態の樹脂の樹脂圧と樹脂熱で射出成形同時加飾用シートを成形しても良い。この際、絞りが浅ければ、予備成形無しで樹脂射出と同時に型内に充填される流動状態の樹脂の樹脂圧と樹脂熱のみで射出成形同時加飾用シートを成形しても良い。また、樹脂圧と樹脂熱で射出成形同時加飾用シートを成形する場合でも、射出成形同時加飾用シートの加熱は射出樹脂の樹脂熱のみを利用し予熱はしない事もある。また、射出成形同時加飾用シートの予備成形は、通常は、射出成形型を真空成形型と兼用して行うが(インライン予備成形)、型間に射出成形同時加飾用シートを供給する前に、射出成形型外部で別の真空成形型で射出成形同時加飾用シートを真空成形する様な予備成形(オフライン予備成形)でも良い。但し、予備成形は、射出成形型と真空成形型とを兼用して行う形態が効率的且つ精度良く射出成形同時加飾用シートを積層できる点で好ましい。しかし、予備成形済みの射出成形同時加飾用シートを予め別の場所で纏めて製造しておく場合等では、予備成形はオフライン予備成形の形態が好ましい。なお、本発明の説明に於いて真空成形とは真空圧空成形も包含する。
【0056】
図4の概念図によって、射出成形同時加飾方法を、その或る一形態で説明する。同図に示す形態では、射出成形型とは別の型である真空成形型で、射出成形同時加飾用シートを加熱し軟化させて予備成形した後に、成形された射出成形同時加飾用シートを射出成形型に挿入後、型締めして樹脂を射出する、オフライン予備成形による形態である。次に、この図4を用いて、この形態での射出成形同時加飾方法を更に説明する。
また、この形態は、上記した射出成形同時加飾用シートの予備成形、予熱の各種組合わせ形態の中で、射出成形同時加飾用シートの絞りが深い場合に、より好ましい形態である。
【0057】
先ず、図4(A)の如く、型面に吸引孔31等の吸引手段を有する真空成形型Mvを用いて、ヒータ32で加熱軟化させた射出成形同時加飾用シートを真空成形により予備成形する。なお、真空成形型Mvは、鉄やアルミニウム等の金属、或いはセラミックス等からなる。また、射出成形同時加飾用シートSは適宜枠状のシートクランプ33で固定する。この際、射出成形同時加飾用シートの基材シート側は、射出樹脂側(図面上方)となる向きとする。また、ヒータ32による加熱軟化は、例えば非接触の輻射加熱とするが、接触による伝導加熱でも良い。そして、予備成形は、吸引孔から吸引して真空成形して、射出成形同時加飾用シートを真空成形型Mvの型面に沿わせ真空成形する。なお、真空成形は圧空も併用する真空圧空成形でも良く、これも包含する。
【0058】
次いで、予備成形された射出成形同時加飾用シートSを、図4(B)の如く、一対の射出成形型MaとMbとの間に供給する。ここでは射出成形型Maの方は射出ノズルと連通する湯道(ランナー)及び湯口(ゲート)を有し、射出成形型Mbはそのキャビティ面が前記予備成形型Mvの型面と同一又は略同一形状を成し、予備成形済の射出成形同時加飾用シートを固定する型となる。これらの型は鉄等の金属、或いはセラミックスからなる。型開き状態に於いて両型Ma、Mb間に射出成形同時加飾用シートSを供給し、型Mbに射出成形同時加飾用シートSを枠状のシートクランプ34で押圧する等して固定する。この際、射出成形同時加飾用シートの基材シート側は、図面右側の射出樹脂側となる様にする事はもちろんである。次いで、図4(C)の如く両型を型締めし、両型で形成されるキャビティに加熱熔融状態等の流動状態の樹脂を充填する。そして、樹脂が冷却等によって固化した後、型開きして成形物を取り出す。また、射出成形同時加飾用シートの不要部分がある場合は、それを適宜トリミングすれば、図3の断面図で示した如き、樹脂成形物5の表面に射出成形同時加飾用シートSが積層した構成の加飾成形品Pが得られるという、加飾方法である。
【0059】
射出成形同時加飾用シート及び加飾成形品の用途:
なお、上述した射出成形同時加飾用シートで表面加飾した加飾成形品等の加飾物品の用途は、任意であるが、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器等である。
【0060】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳述する。
【0061】
〔実施例1〕
図1の断面図で示す如き射出成形同時加飾用シートSを次の様にして作製した。先ず、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を主成分とする厚さ125μmで無色の透明アクリル樹脂シートを表面シート1として用意した。そして、この表面シートの裏側とする面に、バインダーの樹脂にアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との6対4質量比の混合物を用い、着色剤にキナクリドンレッド、イソインドリノン、フタロシアニンブルー、及びカーボンブラックを用いた着色インキで、木目柄の絵柄インキ層2をグラビア印刷法で形成し、更にその上に、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との6対4質量比の混合樹脂を用いた塗液をグラビアロールコート法で全面に厚さ5μmの接着剤層3を形成して、印刷シートを作製した。
【0062】
次に、基材シート4として、カーボンブラック添加による着色で黒色隠蔽性とした厚さ200μmのABS樹脂シート(ブタジエン比率は12質量%)を、印刷シートの接着剤層3側と重ねて、輪転式熱プレス機にて、これら両シートを熱融着により積層して、図1の如き構成の射出成形同時加飾用シートSを作製した。
【0063】
そして、上記射出成形同時加飾用シートSを、図4の概念的な説明図で示した如きオフライン予備成形の態様を採用した射出成形同時加飾方法によって、射出樹脂としてはABS樹脂を使用して、樹脂成形物の表面にその成形と同時に積層一体化して、図3の断面図の如き、射出成形同時加飾用シートSが樹脂成形物5に積層された加飾成形品Pを得た。なお、射出成形同時加飾用シートの内容及び評価結果は、表1及び表2に纏めて示す。
【0064】
なお、射出成形同時加飾用シートの真空成形は、図4(A)の様に、射出成形の雌型Mbと同じキャビティ面を有するが、該雌型Mbとは別体の真空成形型Mv上に、赤外線輻射式熱盤からなるヒータ32にて、非接触状態で射出成形同時加飾用シートSを120℃に加熱軟化させ、真空成形型Mvに穿設した吸引孔31から真空吸引して、真空成形型Mvのキャビティ面上に予備成形し、冷却させて、予備成形済みの射出成形同時加飾用シートを脱型した。そして、図4(B)の様に、この予備成形済みの射出成形同時加飾用シートSを、その基材シート側が射出成形用の雄型Ma側を向く様にして、シートクランプ34で射出成形用の雌型Mbに装着した後、図4(C)の様に、雌雄両型を型締めし、雌雄両型で形成されるキャビティ内に、ノズル温度220℃で加熱熔融したABS樹脂を射出充填し冷却固化させると共に、該射出成形同時加飾用シートと一体化させた加飾成形品とした後、雌雄両型を型開きし、該加飾成形品を取り出した。
【0065】
また、射出成形型の型温度は、30℃と50℃の2種類で行った。また、真空成形型(射出成形型も同様)の絞り比は、面積絞り比で1.1と3.2の2種類とした。
【0066】
〔実施例2〕
実施例1において、基材シートに用いたABS樹脂のブタジエン比率を、15質量%に変更した他は、実施例1と同様にして射出成形同時加飾用シートを作製した。そして、実施例1同様に加飾成形品を作製した。
【0067】
〔実施例3〕
実施例1において、基材シートに用いたABS樹脂のブタジエン比率を、18質量%に変更した他は、実施例1と同様にして射出成形同時加飾用シートを作製した。そして、実施例1同様に加飾成形品を作製した。
【0068】
〔比較例1〕
実施例1において、基材シートに用いたABS樹脂のブタジエン比率を、20質量%に変更した他は、実施例1と同様にして射出成形同時加飾用シートを作製した。そして、実施例1同様に加飾成形品を作製した。
【0069】
〔比較例2〕
実施例1において、基材シートに用いたABS樹脂のブタジエン比率を、25質量%に変更した他は、実施例1と同様にして射出成形同時加飾用シートを作製した。そして、実施例1同様に加飾成形品を作製した。
【0070】
〔実施例4〕
図2の断面図で示す如き、2層構成の基材シートを用いた射出成形同時加飾用シートSを作製した。具体的には、2層構成の基材シート4として、先ず、ブタジエン比率15質量%のABS樹脂に弁柄を添加して茶褐色に着色した隠蔽性の厚さ100μmの第1基材シート4Aと、ブタジエン比率25質量%のABS樹脂にカーボンブラックを添加して黒色に着色した隠蔽性の厚さ100μmの第2基材シート4Bとを先ず用意した(表2参照)。
そして、実施例1と同様にして、表面シートに絵柄インキ層及び接着剤層を形成して作製した印刷シートに対して、その接着剤層側に、上記第1基材シート及び第2基材シートをこの順に重ね、輪転式熱プレス機にてこれらを熱融着させて積層し、図2の如き射出成形同時加飾用シートSを得た。そして、この射出成形同時加飾用シートを用いて、実施例1同様に加飾成形品を作製した。
【0071】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた射出成形同時加飾用シート及び加飾成形品にて、成形性、及び密着性を評価したところ、表1及び表2に示す如き結果となった。なお、成形性、密着性は、次の様にして評価した。
【0072】
(1)成形性:射出成形同時加飾用シートの予備成形時の真空成形型への形状追従性不全、及びそれに起因する加飾成形品表面の皺、歪み、破れの発生が目視で認められれば、不良(×)、認められなければ良好(○)と評価した。なお、この加飾成形品上での成形性評価については、射出成形型の型温度は30℃の場合で行った。また、成形性は、面積比による絞り比が、1.1と3.2となるそれぞれの部分で評価した。
【0073】
(2)密着性:碁盤目テープ法によって層間密着性を評価した。具体的には、加飾成形品の状態で、射出成形同時加飾用シートの表面から基材シートの表面にまで達する傷をカッタナイフで縦横に2mm間隔で碁盤目状に11本×11本直交させて刻み込み、縦横合計100個の碁盤目状の桝目を形成する。次いで、傷の表面から、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製、「セロテープ」(登録商標)25mm幅、産業用)を貼着した後、テープを剥離する。そして、表面シート部分の枡目が剥がれずに残留した個数N(0≦N≦100)の、全桝目数100個に対する割合、N/100として評価する。N数が多いほど密着性が良い。なお、この密着性は、射出成形型の型温度が30℃の場合と50℃の場合の両方で評価した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表1の如く、実施例1〜実施例3は、それぞれ密着性は100/100と良好で、また成形性は、それぞれ面積絞り比が3.2の部分は不良となったが、面積絞り比1.1の場合では良好となり、深絞り成形性を要求しなければ、成形性は十分な性能であった。そして、基材シートを2層構成とした実施例4では、表2の如く、面積絞り比が3.2となる深絞り成形性も含めて全て良好となった。
一方、比較例1及び比較例2は、表1の如く、成形性が面積絞り比3.2でも良好となるものの、密着性が実施例より低下した。
【0077】
【発明の効果】
(1)本発明の射出成形同時加飾用シートによれば、射出成形同時加飾用シート層内での層間密着性が良好で、なお且つ成形性も得られる。また、ABS樹脂の樹脂成形物に対する密着性も得られる。また、塗装感も得られる。
(2)更に、基材シートをブタジエン比率を特定した2層構成とすれば、成形性は向上して深絞り成形にも対応可能となり、層間密着性と深絞り成形性が両立する。
(3)本発明の加飾成形品によれば、基材シートが単層構成に場合では、樹脂成形物も含めて各層間の層間密着性が良好となる。しかも、樹脂成形物上の各層を加飾用シートとして樹脂成形物に積層して形成する際に、加飾用シートの成形性も得られ、絞り部分も加飾された加飾成形品が可能となる。また、塗装感も得られる。
(4)また、基材シートが2層構成の加飾成形品の場合では、上記効果に加えて、樹脂成形物上の各層を加飾用シートとして樹脂成形物に積層して形成する際に、加飾用シートの成形性が向上して深絞り成形性も良好となるので、深絞り部分が加飾された加飾成形品も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出成形同時加飾用シートの一形態を例示する断面図。
【図2】本発明の射出成形同時加飾用シートの別の一形態を示する断面図。
【図3】本発明の加飾成形品の一形態を例示する断面図。
【図4】本発明の射出成形同時加飾用シートの一適用例として、射出成形同時加飾方法をその一態様で説明する概念図。
【符号の説明】
1 表面シート
2 絵柄インキ層
3 接着剤層
4 基材シート
4A 第1基材シート
4B 第2基材シート
5 樹脂成形物
31 吸引孔
32 ヒータ
33 シートクランプ
34 シートクランプ
Ma 射出成形型(雄型)
Mb 射出成形型(雌型)
Mv 真空成形型
D 加飾成形品
S 射出成形同時加飾用シート
Claims (2)
- 透明アクリル樹脂から成る表面シートの裏面に、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層、ブタジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第1基材シート、及び、ブタジエン成分の比率が20質量%以上のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第2基材シートとを、この順に積層して成る、射出成形同時加飾用シート
- アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る樹脂成形物の表面に、基材シートとしてブタジエン成分の比率が20質量%以上のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第2基材シート、及びブタジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第1基材シート、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、透明アクリル樹脂から成る表面シートを、この順に積層して成る加飾成形品。
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