JP3995176B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミニバン、ワンボックス車等のハイルーフ車などに好適に用いることができる空気入りラジアルタイヤに関し、特に、乗り心地を悪化させることなしにタイヤの偏摩耗を防止することができる空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ミニバン、ワンボックス車等のハイルーフ車は、好適な乗り心地が要求される点で通常の乗用車と変わるところはない。その一方、この種の車両は、重心が高いこともあって、走行中、例えばコーナリング時に、トレッド部のショルダー領域、特に車両の外側のショルダー領域に偏摩耗が発生しやすい。
【0003】
従来、かかる偏摩耗の発生を防止するべく、タイヤ装着時に車両の外側に位置する片側のトレッド溝面積を、車両の内側に位置する側の溝面積よりも小さくした非対称のトレッドパターンを備えた空気入りラジアルタイヤが提供されている。かかるタイヤは、タイヤ装着時に車両の外側に位置する片側のトレッド溝面積が、車両の内側に位置する側の溝面積よりも小さくしたトレッドパターンであるため、車両の外側に位置する片側のトレッド部の剛性が向上し、ショルダー領域における偏摩耗の発生を防止することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ミニバン、ワンボックス車等のハイルーフ車などのタイヤの場合、既述の通り、重心が高いことから、上記の様な非対称のトレッドパターンだけでは必ずしも十分な偏摩耗防止効果を達成することができない。
【0005】
本発明の課題は、乗り心地を悪化させることなしに、タイヤショルダー部における偏摩耗の発生を防止することができる空気入りラジアルタイヤを提供するところにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、
本発明は、トレッド部の溝面積比がタイヤ赤道線を挟んで、両側のトレッド部で異なり、
そのうち、タイヤ装着時に車両の外側に位置する片側のトレッド部の溝面積が、車両の内側に位置する他の片側のトレッド部の溝面積よりも小さい非対称性のトレッドパターンを備えている空気入りラジアルタイヤにおいて、
ベルト層の端部には該ベルト層の端部を被覆するベルト端補強プライが配置されており、
上記ベルト端補強プライは、タイヤ装着時に車両の外側に位置するベルト層の端部にのみ配置したことを特徴とする空気入りラジアルタイヤを採用した。
【0007】
すなわち、本発明者は、上記非対称性のトレッドパターンを備えた空気入りラジアルタイヤについて、耐偏摩耗性を更に改善するべく、車両両側に位置するベルト層の両端部にこれを覆うベルト端補強プライを配置したところ、耐偏摩耗性は改善されたが、乗り心地が悪化した。かかる点につき更に検討を加えたところ、上記非対称性のトレッドパターンを備えた空気入りラジアルタイヤの場合では、上記ベルト層の端部を覆うベルト端補強プライを、タイヤ装着時に車両の外側に位置するベルト層の端部に配置し、タイヤ装着時に車両の内側に位置するベルト層の端部に配置しない構成をとると、予測に反して、乗り心地を悪化させることなしに、タイヤショルダー部における偏摩耗の発生を防止できる知見を得たものである。
【0008】
従って、本発明のタイヤは、上記の構成により、たとえ重心が高いミニバン、ワンボックス車等のハイルーフ車などに適用した場合であっても、乗り心地を悪化させることなしに、タイヤショルダー部における偏摩耗の発生を防止することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る空気入りラジアルタイヤの一実施形態のトレッドパターンを示す概略図、図2は同実施形態に係る空気入りラジアルタイヤの要部概略斜視図である。
【0010】
図1において、1はトレッド部、2はトレッド部1の表面に形成された溝である。またX−X線はタイヤ赤道線を示している。この実施形態のタイヤは、図1に示す様に、トレッド部1の全溝面積比は、タイヤ赤道線(X−X線)を挟んで、両側のトレッド部1aとトレッド部1bで異なっている。
【0011】
トレッド部1aは、タイヤ装着時に車両の外側3に位置するトレッド部であり、トレッド部1bはタイヤ装着時に車両の内側4に位置するトレッド部である。図示の通り、車両の外側3に位置するトレッド部1aの溝面積は、車両の内側4に位置するトレッド部1bの溝面積よりも小さく構成されており、その結果、本実施形態では非対称性のトレッドパターンとなっている。
【0012】
なお、図1において、A−A線は車両の外側3に位置するトレッド部1aの接地端を示し、B−B線は車両の内側4に位置するトレッド部1bの接地端を示している。
【0013】
また、本実施形態のタイヤは、図2に示す様に、ベルト層5の端部に該ベルト層5の端部を被覆するベルト端補強プライ6が配置されている。このベルト端補強プライ6は、タイヤ装着時に車両の外側3に位置するベルト層5の端部5aにのみ配置し、車両の内側4に位置するベルト層5の端部5bには配置していない。
【0014】
従って、本発明の空気入りラジアルタイヤは、タイヤ装着時において車両の外側3に位置するショルダー部のみがベルト端補強領域となる結果、車両の内側4と比較して溝面積比率の小さな外側3のトレッド部1aの剛性と相俟って、車両の外側3に位置するショルダー部の剛性は相乗的に増大すると共に、走行時における外側3のトレッド部1aの動きを抑制することができる。従って、たとえ重心が高いミニバン、ワンボックス車等のハイルーフ車などに適用した場合であっても、走行中、外側3のトレッド部1aのショルダー部に大きく作用する負荷に対して対抗することができ、偏摩耗の発生を抑止することができる。
【0015】
一方、タイヤ装着時に車両の内側4に位置するショルダー部は、非ベルト端補強領域となり、しかも車両の外側3のトレッド部1aと比較して内側4のトレッド部1bは溝面積比率が大きいことから、特に重心が高いミニバン、ワンボックス車等のハイルーフ車などに適用した場合、負荷時に車両の内側4に位置するトレッド部1bの溝断面が収縮されやすく路面の凹凸を吸収し、乗り心地も保持される。
【0016】
本発明のベルト端補強プライ6は、その材質、構造等については格別限定されるものではない。たとえば、ナイロンテキスタイルコードで補強したプライを用い、これを当該コードがタイヤ周方向に平行となる様に配置したものを用いることができる。
【0017】
ベルト端補強プライ6の断面幅aについても特に限定されるものではない。要するに、ベルト端部を被覆できるものであれば差し支えない。ここで、ベルト端補強プライ6の断面幅aとは、図1で示される通り、配置されたベルト端補強プライ6におけるタイヤ回転軸方向の幅で示される。
ただ、ベルト端補強プライ6の断面幅aは、図1に示す通り、ベルト層5の最大断面幅bの3分の1以下であることが望ましい。ベルト端補強プライ6の断面幅aがベルト層5を被覆しながら当該ベルト層の最大断面幅bの3分の1を越えた場合は、乗り心地に悪影響を及ぼすため好ましくない。一方、ベルト端補強プライ6が、外側のベルト層5の端部5aを被覆できない場合はベルト補強が十分ではなく、外側ショルダー部の偏摩耗を防止することは困難である。
【0018】
【実施例】
タイヤサイズ215/65R15の実施例及び比較例1、2の各タイヤを試作して、下記の条件で耐偏摩耗性、乗り心地及び操縦安定性の各項目について試験を行った。
【0019】
各タイヤとも図1に示すトレッドパターンを有している。また、各タイヤともカーカスは、1000デニールの2本撚り、コード密度23本/25mmでラジアル方向に配置したポリエステルコードによって補強されたカーカスプライ2枚で構成されている。またベルトは、2+2×0.25mmのスチールコードをコード密度19本/25mmで補強されたベルト層2枚をタイヤ周方向に対してコード角度21度で交互に重ねて構成した。
【0020】
なお、実施例のタイヤは、タイヤ装着時に車両外側のベルト端部にのみ840デニールの2本撚り、コード密度20本/25mmのナイロンコードで補強されたベルト端補強プライ1枚を、当該コードがタイヤ周方向に平行となる様に配置した。これに対して、比較例1のタイヤはベルト端補強プライをベルト層端部に配置せず、比較例2のタイヤはベルト層の両端部に実施例1に用いたベルト端補強プライを配置した。
【0021】
なお、実施例及び比較例2のいずれのタイヤも、図2に示すベルト端補強プライの幅aは40mm幅であり、ベルト層5の最大幅bの5分の1であって、ベルト端部からタイヤ幅方向に2mm覆うように配置した。
【0022】
(耐偏摩耗試験)
実施例及び比較例の各試作タイヤを装着した国産ミニバン(2400CC)を当社テストコースにて12000kmを完走させた後、当該各4本のタイヤについて車両外側に位置するショルダー部とタイヤセンター部との摩耗量の差を測定し、その測定値の逆数について比較例1のタイヤを100として指数評価した。なお、走行条件は各実施例及び比較例ともに荷重は前輪994kg、後輪950kgであり、2名乗車で、完走までタイヤのローテーションを行わずに行った。この耐偏摩耗性試験の結果を表1に示す。なお、各数値は大きいほど耐偏摩耗性が良好であることを示す。
【0023】
(乗り心地試験)
実施例及び比較例の各試作タイヤを装着した国産ミニバン(2400CC)を実車走行させ、3名のドライバーによるフィーリング試験により評価した。評価は、各ドライバーに試作タイヤの種類をふせて実車走行の後、5点満点により点数を付け、その平均値を比較例1のタイヤを100とした場合の指数評価により行った。この結果を表1に示す。表中の各数値は大きいほど乗り心地が良好であることを示す。
【0024】
(操縦安定性試験)
実施例及び比較例の各試作タイヤを装着した国産ミニバン(2400CC)を実車走行させ、3名のドライバーによるフィーリング試験により評価した。評価は、各ドライバーに試作タイヤの種類をふせて実車走行の後、5点満点により点数を付け、その平均値を比較例1のタイヤを100とした場合の指数評価により行った。この結果を表1に示す。表中の各数値は大きいほど操縦安定性試験が優れていることを示す。
【0025】
【表1】
【0026】
表1の結果より、車両外側に位置するベルト端部のみにベルト端補強プライを配置した実施例のタイヤは、ベルト端補強プライを配置しなかった比較例1のタイヤと比較して、乗り心地をほぼ維持したまま、耐偏摩耗性の向上が認められた。これに対して、車両外側及び内側の両側のベルト端部にベルト端補強プライを設けた比較例2のタイヤの場合、その耐偏摩耗性は実施例タイヤと同等であったが、乗り心地は著しく悪化していた。また、車両外側に位置するベルト端部のみにベルト端補強プライを配置した実施例のタイヤは、片側だけにベルト端補強プライを配置しているため、操縦安定性が懸念されていたが、実車走行においては比較例タイヤより優れており、比較例2のタイヤと比較して遜色のない操縦安定性を発揮することが認められた。
【0027】
また、実施例のタイヤはベルト端補強プライが比較例2のタイヤと比べて、ベルト端補強プライのための材料費が少なくてすみ、しかも片側のベルト層端部にベルト端補強プライを配置する工程を不要とするため作業性も良好であり、コストパフォーマンスが優れている。
【0028】
【発明の効果】
本発明の空気入りラジアルタイヤは、ベルト端補強プライを、タイヤ装着時に車両の外側に位置するトレッド部側のベルト層の端部に配置し、車両の内側に位置するベルト層の端部に配置しない構成であるため、外側のショルダー部の剛性が高くなり、また走行時における外側のトレッド部の動きを抑制する結果、外側のショルダー部における偏摩耗の発生を防止することができる。
【0029】
また、本発明のタイヤは、内側のベルト端部にはベルト端補強プライを配置していないことから、内側のタイヤトレッド部における曲げ剛性は低く維持されており、これにより乗り心地を損なうこともない。しかも、操縦安定性も良好であり、コストパフォーマンスも優れている。
【0030】
従って、格別限定されるものではないが、本発明の空気入りラジアルタイヤは、ミニバン、ワンボックス車等のハイルーフ車などに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る空気入りラジアルタイヤの一実施形態のトレッドパターンを示す概略図である。
【図2】同実施形態に係る空気入りラジアルタイヤの要部概略斜視図である。
【符号の説明】
1 トレッド部
1a トレッド部
1b トレッド部
2 溝
3 外側
4 内側
5 ベルト層
5a 端部
5b 端部
6 ベルト端補強プライ
a ベルト端補強プライの断面幅
b ベルト層の最大断面幅
Claims (1)
- トレッド部の溝面積比がタイヤ赤道線を挟んで、両側のトレッド部で異なり、
そのうち、タイヤ装着時に車両の外側に位置する片側のトレッド部の溝面積が、車両の内側に位置する他の片側のトレッド部の溝面積よりも小さい非対称性のトレッドパターンを備えている空気入りラジアルタイヤにおいて、
ベルト層の端部には該ベルト層の端部を被覆するベルト端補強プライが配置されており、
上記ベルト端補強プライは、タイヤ装着時に車両の外側に位置するベルト層の端部にのみ配置したことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。
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