JP3988435B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、冷凍、空調機等に使用されるスクロール圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は例えば特開2000−337276号公報に技術が示されている従来のスクロール形冷媒圧縮機の圧縮機構部縦断面図である。図において1は固定スクロール、1a は固定スクロール1の台板部、1bは固定スクロール1の板状渦巻歯、2は揺動スクロール、2aは揺動スクロール2の台板部、2bは揺動スクロール2の板状渦巻歯、また、揺動スクロール板状渦巻歯2bが存在する面と反対側の中心部分に揺動軸受2cが配設されている。また、前記反対側の端面はスラスト面2dを構成している。揺動スクロール2は揺動軸受2cを介して主軸4の偏心部4aと係合している。偏心部4aは主軸4の中心線に対して図中rで示した量だけ偏心しており、rの量は下記式で規定されている。
r=1/2P−1/2(To+Tf)
P:渦巻ピッチ(歯側面間距離)、To:揺動スクロール渦巻歯厚、
Tf:固定スクロール渦巻歯厚
【0003】
揺動スクロール2は主軸4の回転とオルダム継手6による自転抑制のために固定スクロール1に対して揺動運動を行うことで流体の圧縮作用が行われている。主軸4はコンプライアントフレーム3との間に摺動材を介した主軸受3bで径方向に支持されている。主軸4にはロータ8が嵌合されており、ロータ8とステータ9によるモーターの回転力で駆動される。ロータ7の外径8aとステータ9の内径9aは回転時にロータとステータが接触しないための半径隙間10を有している。3aは揺動スクロール2のスラスト面2dを軸方向に支承するコンプライアントフレーム3のスラスト面である。コンプライアントフレーム3は運転中の主軸負荷を主軸受3bで径方向に支持しているが、その負荷をガイドフレーム5で支持するためにコンプライアントフレームには上嵌合円筒面3cおよび下嵌合円筒面3dが設けられ、それぞれがガイドフレーム5に配設された上嵌合円筒面5aおよび下嵌合円筒面5bに、半径方向に微小な隙間を持って嵌め合わされており、コンプライアントフレームとガイドフレームの上下両嵌合円筒面での両者のクリアランスはほぼ等しくなるように設定されている。
【0004】
運転中のコンプライアントフレーム3は半径方向には主軸受が主軸より受ける負荷方向にその隙間分だけ移動し、その主軸受負荷方向で上下両嵌合円筒面3c,3dがそれぞれ係合するガイドフレーム5の上下嵌合円筒面5a,5bと接している。主軸受負荷方向は1回転中360度連続的に変化するので、コンプライアントフレーム3はガイドフレーム5内で微小な揺動公転運動をする。また、このコンプライアントフレームの半径方向の移動により、ロータとステータの半径隙間10は移動量分減少することになる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来のスクロール圧縮機はコンプライアントフレームには上嵌合円筒面3cおよび下嵌合円筒面3dが設けられ、それぞれがガイドフレーム5に配設された上嵌合面5aおよび下嵌合面5bに、半径方向に隙間を持って嵌め合わされているが、その隙間分、コンプライアントフレームは主軸受から負荷を受けた方向に移動する。これにより相対的に主軸と軸受を介して嵌合された揺動スクロールも径方向に移動し、このために揺動スクロールの渦巻は固定スクロールの渦巻に対して側面隙間を広げるために、スクロール圧縮室の渦巻側面からの漏れが増加して性能低下を生じる問題があり、更に前記隙間によるコンプライアントフレームの移動により主軸に嵌合されたロータの軸心が移動して、ロータの外径とステータの内径が接触する問題があった。
【0006】
また、コンプライアントフレームとガイドフレームの上下両嵌合円筒面での両者のクリアランスはほぼ等しくなるように設定されているが、大量工業生産品であるスクロール圧縮機では、コンプライアントフレームとガイドフレームの上下両嵌合円筒面のクリアランスを全数において上下全く等しく作成することは困難で、一定の公差範囲において上嵌合円筒面と下嵌合円筒面のクリアランスは異なり、場合によって、運転中にコンプライアントフレームとガイドフレームは上または下の嵌合円筒面のどちらか一方が接触し、他方は非接触となるので、軸系の振動や騒音が変わったり、渦巻歯先接触力の増大に伴う性能の低下や歯先接触部の摩耗の増大を招く問題があった。
【0007】
また、運転中のコンプライアントフレーム3は半径方向には主軸受が主軸より受ける負荷方向にその隙間分だけ移動し、その主軸受負荷方向で上下両嵌合円筒面3c,3dがそれぞれ係合するガイドフレーム5の上下嵌合円筒面5a,5bと接し、主軸受負荷方向は1回転中360度連続的に変化するので、コンプライアントフレーム3はガイドフレーム5内で微小な揺動公転運動をするが、コンプライアントフレーム自体がガイドフレームに対して自転運動をすると、ガイドフレーム5の上下嵌合円筒面5a,5bと係合する部分で摩擦損失を発生し、また摩耗を生じる問題があった。さらにコンプライアントフレームの主軸受と主軸の相対回転速度が低下することで、主軸受けの油膜厚さが低下し、軸受負荷能力が低下する問題があった。
【0008】
この問題を解消するために、従来のスクロール圧縮機ではガイドフレームとコンプライアントフレームの間にて、ガイドフレームに挿入されたリーマピンと係合してコンプライアントフレームの自転を規制する自転防止構造をリーマピンとリーマ穴の組み合わせで構成しているが、リーマピンとリーマ穴の直径クリアランスが小さく、運転中のガス圧縮荷重をリーマピンのみで受けてしまう状態が発生し、コンプライアントフレームのガイドフレーム内でのスムーズな微小揺動公転運動を阻害するとともに、リーマピンとリーマ穴の摩耗を増加する問題があった。さらに、複数のリーマピンとリーマ穴の組合せで構成される自転防止機構を用いると1回転中の不連続な接触点の移動回数が増加し、騒音の増加を招く問題点を有していた。また、リーマピンがコンプライアントフレームとガイドフレームの双方のリーマ穴に対して隙間を有する状態では、リーマピンがリーマ穴に対して傾斜するために、穴の入り口部で片当り状態となってピンと穴の双方の摩耗が増加する問題点を有していた。
【0009】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので信頼性が高く圧縮室の漏れの少ない効率の良いスクロール圧縮機を得ることにある。また本発明は大量生産しても長期的に安定した動作を維持する品質の高いスクロール圧縮機の構造を得ることにある。また本発明は運転状況が変化するなど長期の使用に対しても回転部分と固定部分との接触などのトラブルを起さない信頼性の高い圧縮機の構造を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる請求項1記載のスクロール圧縮機は、密閉容器内に設けられ、それぞれ台板上の板状渦巻歯が圧縮室を形成するように互いに組み合わされた固定スクロールと揺動スクロールと、この揺動スクロールを揺動させる主軸に回転力を与えるロータとステータを有するモーターと、揺動スクロールを軸線方向に支持するスラスト軸受及び主軸を半径方向に支持する主軸受を有し、外周に互いに独立した第1の嵌合円筒面及びこの第1の嵌合円筒面よりも前記モータ側に設けた第2の嵌合円筒面の2つの嵌合円筒面を有するコンプライアントフレームと、密閉容器に固定され、このコンプライアントフレームの2つの嵌合面のそれぞれと嵌め合わされる互いに独立した第1の嵌合円筒面及び第2の嵌合円筒面を内周に有し、コンプライアントフレームをこれら2つの嵌合円筒面により半径方向に支持するガイドフレームと、を備え、ガイドフレームの第1の嵌合円筒面とコンプライアントフレームの第1の嵌合円筒面が嵌め合う第1の嵌合部における両嵌合円筒面間の第1の直径隙間を、第1の嵌合部よりモータ側に設けられ、ガイドフレームの第2の嵌合円筒面とコンプライアントフレームの第2の嵌合円筒面が嵌め合う第2の嵌合部における両嵌合円筒面の第2の直径隙間より小さく設定したものである。
【0011】
この発明に係わる請求項2記載のスクロール圧縮機は、第1の嵌合部における両嵌合円筒面間の第1の直径隙間を、モーターのロータ外径とステータ内径の寸法差である直径隙間以下に設定したものである。
【0012】
この発明に係わる請求項3記載のスクロール圧縮機は、揺動スクロールに設けられ、主軸の揺動軸部と係合して揺動スクロールに揺動を伝達する揺動軸受を備え、揺動軸部中心と主軸中心の距離である偏心量が、固定スクロールと揺動スクロールの渦巻形状で規定される揺動半径よりも、揺動軸受直径クリアランス、主軸受直径クリアランス及び第1の嵌合部における両嵌合円筒面間の第1の直径隙間の三者の和の半分を越えない範囲で大きく設定されているものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明の実施例をスクロール圧縮機の図について説明する。従来例のものと同一部分は同一符号を付して説明を省略する。図1は本発明の形態におけるスクロール形冷媒圧縮機の圧縮機構部縦断面図である。図において1は密閉容器20に固定された固定スクロール、1a は固定スクロール1の台板部、1bは固定スクロール1の板状渦巻歯、2は揺動スクロール、2aは揺動スクロール2の台板部、2bは揺動スクロール2の板状渦巻歯、また、揺動スクロール板状渦巻歯2bが存在する面と反対側の中心部分に揺動軸受2cが配設されている。また、反対側の端面はスラスト面2dを構成している。揺動スクロール2は揺動軸受2cを介して揺動部を形成する主軸4の偏芯部4aと係合しており、主軸4の回転とオルダム継手6による自転抑制のために固定スクロール1に対して揺動運動を行うことで固定スクロール1の板状渦巻波1bと揺動スクロール2の板状渦巻歯2bの組合せで形成される圧縮室内で流体の圧縮作用が行われている。
【0019】
4はコンプライアントフレーム3との間に摺動材を介した主軸受3bで径方向に支持されている主軸、4aは揺動軸部を形成する主軸偏心部、5はコンプイアントフレーム3を支持するガイドフレーム、7はリーマピン、8は主軸4を回転させるモーターのロータ、9はロータ8に駆動力を与える密閉容器20に固定されたステータ、10はモーターの固定部部であるステータと回転部分であるロータの間の半径隙間、21は圧縮室に低温低圧の冷媒を供給する吸入管、22は密閉容器20内の圧縮された高圧の冷媒を冷凍サイクルに吐出する吐出管、23はモーターなどの電気的な接続を行う端子部、24は主軸4を主軸受け3bと反対側で支持するサブフレーム26に設けられた下部軸受である。なお主軸受け3bにより回転部分、すなわち揺動スクロール2やモーターのロータ8などを支持できる場合は下部軸受を省略しても良い。外部の冷凍サイクルを循環した冷媒は吸入管21から圧縮機の密閉容器20の内部の圧縮室に吸入され、上部中心の吐出口から高温高圧の状態で容器内に吹出され、吐出管22から冷凍サイクルに吐出される。なお横軸のスクロール圧縮機においても主たる構造は図1と同様で揺動スクロール2を含めた回転部分は主軸受3bと下部軸受24にて保持されるが、図1の底面付近に記載してある油だまりの位置が密閉容器20の横方向となるためこの油だまりから各軸受けへの潤滑油を導く油ポンプなどの構造が異なることになる。
【0020】
3cはガイドフレーム上嵌合円筒面5aと対向する位置に設けられ隙間を置いてガイドフレームにて半径方向を支持されているコンプライアントフレーム上嵌合円筒面、3dはガイドフレーム下嵌合円筒面5bと対向する位置に設けられ隙間を置いてガイドフレームにて半径方向を支持されているコンプライアントフレーム下嵌合円筒面、3eはガイドフレーム半径方向平面5cと対向する位置に設けられ隙間を置いてガイドフレームにて軸方向を支持されているコンプライアントフレーム半径方向平面、5dはガイドフレームリーマ穴である。密閉容器20に固定されたガイドフレーム5の上にコンプライアントフレーム3が載せられ、シールリング25で図では上下に仕切られた間の空間に圧縮室からの中間圧力を導入してコンプライアントフレーム3及びコンプライアントフレームスラスト面3aと揺動スクロールスラスト面2dを介して揺動スクロール2の圧縮室を押し上げている。これにより固定スクロール1と揺動スクロール2の双方の渦巻歯からの圧縮された冷媒の漏れを抑えて効率の良い装置が得られる。
【0021】
図1の構造でガイドフレーム5に軸方向を支承されたコンプライアントフレーム3はスラスト面3aを有する。コンプライアントフレーム3は運転中の主軸負荷を主軸受3bで径方向に支持しているが、その負荷をガイドフレーム5で支持するためにコンプライアントフレームには上嵌合円筒面3cおよび下嵌合円筒面3dが設けられ、それぞれがガイドフレーム5に配設された上嵌合面5aおよび下嵌合面5bに、半径方向に微小な隙間を持って嵌め合わされており、コンプライアントフレームとガイドフレームの上下両嵌合円筒面での両者の直径クリアランスの少なくとも一方を、前記ロータとステータの直径隙間以下に設定している。なおここではガイドフレーム上嵌合円筒面5aとコンプライアントフレーム上嵌合円筒面3cから成るそれぞれの係合面で係合する上嵌合部と、ガイドフレーム半径方向平面5cと面5aとコンプライアントフレーム下嵌合円筒面3dから成るそれぞれの係合面で係合する下嵌合部の上下2箇所でコンプライアントフレームの半径方向の動きをガイドフレームが支持する構造で説明したが、上下2ヶ所に限る必要が無く、上下2ヶ所をまとめて1箇所としても、あるいは更に2以上の複数設けても、このような円筒面の直径クリアランスをモーターの空隙、すなわち直径隙間以下にすることにより接触などのトラブルを防ぐことが出来る。この寸法比較に機械加工公差を含めることによりいたずらに精度を上げなくとも品質の良い量産品が可能になる。更に係合面が完全な円筒で無くとも、すなわち一方を波状や局部的な支持体であっても、回転する軸荷重を支持できる構造であれば良いことは当然である。これにより各部の接触による不具合を防止でき品質に問題がない長期使用に耐える構造を得ることが出来る。更に横軸で且つ下方への撓みの大きな機械ではこの偏心量を含めてもよいことは当然である。
【0022】
運転中のコンプライアントフレーム3は半径方向には主軸受が主軸4より受ける負荷方向にその隙間分だけ移動し、これにより相対的に主軸4と揺動軸受け2cを介して嵌合された揺動スクロール2も径方向に移動し、揺動スクロールの渦巻歯2bは固定スクロールの渦巻歯1bに対して側面隙間を広げるために、スクロール圧縮室の渦巻側面からの漏れが増加して性能低下を生じるためにその移動隙間量はできるだけ小さいことが望ましい。更にコンプライアントフレーム3の移動により主軸4に嵌合されたモーターのロータ8の軸心が移動して、ロータ8の外径とステータ9の内径が接触することを回避できるクリアランス設定値として、コンプライアントフレーム3とガイドフレーム5の上下両嵌合円筒面での両者の直径クリアランスの少なくとも一方を、前記ロータとステータの直径隙間以下に設定することにより信頼性の高いスクロール圧縮機の構造が得られる。
【0023】
また、上記のコンプライアントフレーム3とガイドフレーム5の嵌合円筒面でのクリアランスによる径方向への揺動スクロールの移動量を見込んで、主軸の揺動軸部と主軸中心の距離(偏心量)を、固定スクロールと揺動スクロールの渦巻形状で規定される揺動半径よりも、揺動軸受直径クリアランスと主軸受直径クリアランス及びコンプライアントフレームとガイドフレームとの嵌合円筒面の直径最小クリアランスの三者の和の半分を越えない範囲で大きく設定するものである。つまり偏心部4aは主軸4の中心線に対して図中rで示した量だけ偏心しており、rの量は下記式で規定されたr0に対して+αの量を設定する。
r0=1/2P−1/2(To+Tf)
P:渦巻ピッチ、To:揺動スクロール渦巻歯厚、Tf:固定スクロール渦巻歯厚
r=r0+α
0≦α≦1/2(揺動軸受直径クリアランス+主軸受直径クリアランス+コンプライアントフレームとガイドフレームとの嵌合円筒面の直径最小クリアランス)
【0024】
偏心量r0+αの上限値は軸が回転により揺動スクロールの渦巻側面と固定スクロールの渦巻側面が干渉しても、径方向の軸受隙間およびコンプライアントフレームとガイドフレームの径方向隙間分は移動可能であり、軸がロックされない最大値に規定されている。αの下限値は性能が低下しない下限値として0に設定している。このように偏心量を設定することにより、コンプライアントフレームとガイドフレームの嵌合円筒面でのクリアランスによる径方向への揺動スクロールの移動量を見込んだ分、揺動スクロールと固定スクロールの渦巻側面隙間を低減でき、性能の良好なスクロール圧縮機を得ることができる。なお係合する2つの面間の直径最小クリアランスとしているのはロックされない限度としてであり、2箇所の嵌合部分があればそのうち最も条件のきつい、すなわちロックされやすい小さな寸法の方を選択すれば良い。なおこの条件は横軸のスクロールであっても同じである。
【0025】
図2はスクロール形冷媒圧縮機の圧縮機構部縦断面図である。図1、図2において1は固定スクロール、1a は固定スクロール1の台板部、1bは固定スクロール1の板状渦巻歯、2は揺動スクロール、2aは揺動スクロール2の台板部、2bは揺動スクロール2の板状渦巻歯、また、揺動スクロール板状渦巻歯2bが存在する面と反対側の中心部分に揺動軸受2cが配設されている。また、反対側の端面はスラスト面2dを構成している。揺動スクロール2は揺動軸受2cを介して主軸4の偏芯部4aと係合しており、偏心部4aは主軸4の中心線に対して図中rで示した量だけ偏心している。図2はこのような構造で、かつコンプライアントフレーム3とガイドフレーム5の上または下嵌合円筒面の一方が接触した場合の圧縮機構部に働く力の釣合いを示す模式図である。
【0026】
図2において、Fgは揺動スクロールに作用するラジアル方向のガス圧縮荷重、L1,L2はコンプライアントフレームとガイドフレームの上または下側の嵌合円筒面がどちらか一方が接触した場合のラジアル方向の反力作用点と揺動スクロールに作用するラジアル方向のガス圧縮荷重Fgの作用点からのそれぞれの距離、Ftは揺動スクロールまたは固定スクロールの渦巻歯先の接触力、LはFtの作用位置とコンプライアントフレーム軸心のラジアル方向の距離を示す。図1、図2の構造で、コンプライアントフレーム3は運転中のガス圧縮荷重Fgとその反力および歯先接触力Ftによるモーメントがバランスする関係を保つため、下記のモーメントの釣合い式が成り立つ。
:上嵌合円筒面で接触した場合
Fg*L1=Ft*L--- ▲1▼
Ft=Fg*L1/L--- ▲2▼
:下嵌合円筒面で接触した場合
Fg*L2=Ft*L--- ▲3▼
Ft=Fg*L2/L--- ▲4▼
【0027】
上式において、歯先接触力Ftを上嵌合円筒面で接触した場合と下嵌合円筒面で接触した場合で比較するには▲2▼式と▲4▼式を比較すればよく、式中、L2>L1であるので、歯先接触力Ftは下嵌合円筒面で接触した場合のほうが大きくなることが明らかである。このように下嵌合円筒面のみで接触する場合は上嵌合円筒面で接触した場合と比較して歯先接触力の増大に伴う性能の低下や歯先接触部の摩耗の増大を招くので、上嵌合円筒面のクリアランスを下嵌合円筒面のクリアランスより小さくして先に上嵌合円筒面が接触するようにしておけば良い。すなわちモーター側ではなく圧縮室側の係合面を先に接触させる。この関係は横軸機でも同様である。これにより渦巻歯の歯先接触力を過大にし磨耗を増やすことなく効率の向上を図ることが出来る。
【0028】
運転中のコンプライアントフレーム3は半径方向には主軸受が主軸より受ける負荷方向にその隙間分だけ移動し、その主軸受負荷方向で上下両嵌合円筒面3c,3dがそれぞれ係合するガイドフレーム5の上下嵌合円筒面5a,5bと接し、主軸受負荷方向は1回転中360度連続的に変化するので、コンプライアントフレーム3はガイドフレーム5内で微小な揺動公転運動をするが、コンプライアントフレーム自体がガイドフレームに対して自転運動をすると、ガイドフレーム5の上下嵌合円筒面5a,5bと係合する部分で摩擦損失を発生し、また摩耗を生じる。さらにコンプライアントフレームの主軸受と主軸の相対回転速度が低下することで、主軸受けの油膜厚さが低下し、軸受負荷能力が低下する。これらの対策としてコンプライアントフレームとガイドフレームの係合面である上下両嵌合部分のクリアランスを決定する。揺動スクロール2は主軸4の回転とオルダム継手6による自転抑制のために固定スクロール1に対して揺動運動を行うことで流体の圧縮作用が行われている。主軸4はコンプライアントフレーム3との間に摺動材を介した主軸受3bで径方向に支持されている。3aは揺動スクロール2のスラスト面2dを軸方向に支承するコンプライアントフレーム3のスラスト面である。コンプライアントフレーム3は運転中の主軸負荷を主軸受3bで径方向に支持しているが、その負荷をガイドフレーム5で支持するためにコンプライアントフレームには上嵌合円筒面3cおよび下嵌合円筒面3dが設けられ、それぞれがガイドフレーム5に配設された上嵌合面5aおよび下嵌合面5bに、半径方向に微小な隙間を持って嵌め合わされており、コンプライアントフレームとガイドフレームの上下両嵌合円筒面での両者のクリアランスは上嵌合円筒部が下嵌合円筒部よりも小さくなるように設定されている。
【0029】
運転中のコンプライアントフレーム3は半径方向には主軸受が主軸より受ける負荷方向にその隙間分だけ移動し、その主軸受負荷方向で上下両嵌合円筒面3c,3dがそれぞれ係合するガイドフレーム5の上下嵌合円筒面5a,5bに接近するが、上嵌合円筒部の隙間のほうが、下嵌合円筒部の隙間より小さいので、上嵌合円筒部は接触してコンプライアントフレームに反力を与えるが、下嵌合円筒部は非接触の状態を保つ。したがって、歯先接触力Ftは上式(1)の▲2▼で示すように、下嵌合円筒部で接触した場合に比較して小さな値を維持でき、歯先の接触力の増加に伴う性能低下や歯先の摩耗増加といった問題を解消できる。なお、式(1)より明らかなように、上側の嵌合円筒面が接触した場合のラジアル方向の反力作用点と揺動スクロールに作用するラジアル方向のガス圧縮荷重Fgの作用点からの距離L1が小さくなるほど、歯先接触力Ftを低減できる。これはラジアル方向の反力作用点がスクロール渦巻歯のガス圧縮荷重負荷部分にできるだけ近い位置であること、つまり揺動スクロールまたは固定スクロールの渦巻歯の高さの中央位置に嵌合円筒面を有して、ラジアル方向の反力作用点を渦巻歯に負荷されるガス荷重の作用点と一致させる形態が力学的には理想的である。
【0030】
次にフレコンスクロールの自転対策を検討する。図3は本発明におけるリーマピンによる自転防止構造の説明図である。図1の如くスクロール圧縮機ではガイドフレームの上嵌合円筒面と下嵌合円筒面との間に半径方向の平面を設け、該平面にリーマ穴を設け、リーマピンを挿入するとともに、コンプライアントフレームの上嵌合円筒面と下嵌合円筒面との間にも半径方向の平面を設け、リーマ穴をガイドフレームのリーマ穴と相対する平面に設け、ガイドフレームに挿入されたリーマピンと係合してコンプライアントフレームの自転を規制する自転防止構造をリーマピンとリーマ穴の組み合わせで構成している。このリーマピンとリーマ穴の直径クリアランスがコンプライアントフレームとガイドフレームの上下嵌合直径クリアランスより小さいと、運転中のガス圧縮荷重をリーマピンのみで受けてしまう状態が発生し、コンプライアントフレームのガイドフレーム内でのスムーズな微小揺動公転運動を阻害するとともに、リーマピンとリーマ穴の摩耗を増加する。更にリーマピンとリーマ穴の直径クリアランスがコンプライアントフレームとガイドフレームの上下嵌合直径クリアランスより大きい場合においても一対のリーマピンとリーマ穴の組合せに対して1回転に1回の不連続な接触点の移動を生じるため、複数のリーマピンとリーマ穴の組合せで構成される自転防止機構を用いると1回転中の不連続な接触点の移動回数が増加し、騒音の増加を招く。
【0031】
図3はリーマピンによる自転防止構造の要部断面図であり、3eはコンプライアントフレームの半径方向の平面、3fはコンプライアントフレームのリーマ穴、5cはガイドフレームの半径方向の平面、5dはガイドフレームのリーマ穴、7はリーマピンである。図3(a)はリーマ穴3f,5dの直径隙間に対してリーマピン7の直径隙間が小さく、圧入されていない状態を示す。この場合、リーマピンはリーマ穴の中で傾くために、穴の入り口部で部分的に接触し、接触面圧が増加ずるために、リーマ穴、リーマピン双方の摩耗が増加する。図3(b)の様に、リーマピン7はガイドフレームのリーマ穴5dに対して圧入され、コンプライアントフレームのリーマ穴3fに対しては所定の直径隙間を有する寸法関係を設定されている。この場合、リーマピン7はガイドフレームのリーマ穴5dに圧入されているため、運転中に傾くことが無く、コンプライアントフレームのリーマ穴3fに対しても平行に接触するため、リーマピンとリーマ穴の片当りが防止でき、双方の摩耗が増加することが無い。
【0032】
リーマピン7とリーマ穴3f,5dの直径クリアランスの総和がコンプライアントフレームとガイドフレームの上下嵌合円筒面部の隙間の最小値より大きい場合、運転中のガス圧縮荷重をリーマピンですべて支持する状態が生じないし、リーマピンおよびリーマ穴には過剰な力が負荷されないために摩耗が増大したり、コンプライアントフレームの嵌合円筒面の接触点の移動が不連続になることで、揺動スクロールの挙動が不安定になり、性能の低下や騒音の増大をもたらすという問題を解消できる。このように本発明ではリーマピン7とリーマ穴3f,5dの直径クリアランスの総和をコンプライアントフレームとガイドフレームの上下嵌合円筒面部の隙間の最小値より大きく設定したので、このような問題が発生することは無い。上記説明ではコンプライアントフレームとガイドフレームの両方にリーマ穴を設ける構造を説明したが少なくとも一方に上記説明の隙間を有するリーマ穴を設けておけば良く、その場合他方にはリーマピンを固定する構造など自由に選択できる。
【0033】
図4はコンプライアントフレームの嵌合円筒部と自転防止機構であるリーマピンの接触点を示す模式図である。本発明のスクロール圧縮機の主軸受負荷方向は主軸の回転に伴うガス圧縮荷重の発生により、1回転中360度連続的に変化するので、コンプライアントフレームはガイドフレーム内で微小な揺動公転運動をし、自転防止機構であるリーマピンとリーマ穴の径方向の接触点位置も主軸の回転に伴って移動する。図4(a)はリーマピンが2本の場合、図4(b)はリーマピンが1本の場合のリーマピンの径方向接触点位置を示す。図中▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼の番号は嵌合円筒部の接触点の移動範囲を示し、このときのリーマピンの接触点の移動を図中のリーマピン接触点図にて示す。図4(a)において、2本のリーマピンにおいて接触点はピンAにおいては▲1▼→▲2▼→▲1▼と主軸の1回転毎に1回、不連続に移動し、ピンBにおいても▲3▼→▲4▼→▲3▼のように主軸の1回転毎に1回、不連続に移動する。ピンAとピンBの不連続な接触点の移動は主軸の回転角度で180度ずれて発生するため、結局このような2本のリーマピンを有する自転防止機構においては、主軸の1回転中に2回のリーマピンの半径方向接触点の不連続な移動が発生することになる。
【0034】
これに対してリーマピンが1本の自転防止機構の場合では、図4(b)に示すようにリーマピン上の半径方向接触点の不連続な移動は図に説明するように主軸の1回転中に1回のみである。以上のようにガイドフレームの自転防止構造を一本のリーマピンとリーマ穴の組み合わせで構成することで、リーマピンとリーマ穴の半径方向の不連続な接触点の移動を最小にすることができ、コンプライアントフレームの挙動が安定した、性能・騒音の良好なスクロール圧縮機を得ることができる。しかしながら1本のリーマピンの場合は軸の特定方向で接触点が不連続になり軸系の振動や異常音が発生する場合も懸念され、そのような場合には図4(a)のように対称的な回転角位置にリーマピンを設けることが望ましい場合も存在する。なお以上の説明でリーマピン7はコンプライアントフレーム3やガイドフレーム5の半径方向の平面部分に設ける説明をしてきたが、自転防止のためには半径方向でない双方の係合面、すなわち嵌合円筒部に垂直方向にリーマ穴を設け、この結果リーマピンの軸方向を半径方向に配置しても良い。この構造の場合でもリーマピン7とリーマ穴3f,5dの直径クリアランスの総和をコンプライアントフレームとガイドフレームの上下嵌合円筒面部の隙間の最小値より大きく設定すれば上記のような問題が発生することは無い。以上説明したリーマピンとリーマ穴の関係は横軸機でも同様の効果が得られる。
【0035】
この発明に係わる冷媒圧縮機はガイドフレームの上嵌合円筒面とコンプライアントフレームの上嵌合円筒面が係合される上嵌合部における両上嵌合円筒面間の直径隙間およびガイドフレームの下嵌合円筒面とコンプライアントフレームの下嵌合円筒面が係合される下嵌合部における両下嵌合円筒面の直径隙間の少なくとも一方を、前記ロータとステータの直径隙間以下に設定した。また、この発明に係わる冷媒圧縮機は主軸の揺動軸部と主軸中心の距離(偏心量)を、固定スクロールと揺動スクロールの渦巻形状で規定される揺動半径よりも、揺動軸受直径クリアランスと主軸受直径クリアランス及びコンプライアントフレームとガイドフレームとの嵌合円筒面の直径最小クリアランスの三者の和の半分を越えない範囲で大きく設定した。また、この発明に係わる冷媒圧縮機はコンプライアントフレームの2つの係合円筒面のそれぞれと係合する互いに独立した上嵌合円筒面及び下嵌合円筒面を内周に有し、コンプライアントフレームをこれら2つの係合円筒面により半径方向に支持するガイドフレームと、を備え、ガイドフレームの上嵌合円筒面と下嵌合円筒面との間に半径方向の平面を設けるとともに、該平面にリーマ穴を設け、リーマピンを挿入するとともに、コンプライアントフレームの上嵌合円筒面と下嵌合円筒面との間にも半径方向の平面を設けるとともに、リーマ穴をガイドフレームのリーマ穴と相対する平面に設け、ガイドフレームに挿入されたリーマピンと係合してガイドフレームの自転を規制する自転防止構造をリーマピンとリーマ穴の組み合わせで構成し、リーマピンとリーマ穴の係合部の直径隙間をコンプライアントフレームとガイドフレームの上嵌合円筒部及び下嵌合円筒部の最大直径隙間より大きく設定した。また、この発明に係わる冷媒圧縮機はリーマピンをコンプライアントフレームまたはガイドフレームのいづれか一方に圧入し、圧入されていない側のリーマ穴とリーマピンの直径隙間はガイドフレームの上または下嵌合円筒面とコンプライアントフレームの上または下嵌合円筒面が係合される上または下嵌合部における両嵌合円筒面の最大直径隙間より大きく設定した。また、この発明に係わる冷媒圧縮機はガイドフレームの自転防止構造
を一対のリーマピンとリーマ穴の組み合わせで構成した。
【0036】
以上説明した通り、本発明のスクロール圧縮機は、ガイドフレームの上下嵌合円筒面とコンプライアントフレームの上下嵌合円筒面が係合される嵌合部における嵌合円筒面の上下直径隙間の少なくとも一方を、前記ロータ外径とステータ内径の寸法差である直径隙間以下に設定したしたので、コンプライアントフレームの移動により主軸に嵌合されたロータの軸心が移動して、ロータの外経とステータの内径が接触することのない、渦巻側面からの漏れが小さなく性能の良好なスクロール圧縮機を得ることができる。
【0037】
本発明のスクロール圧縮機は、主軸の揺動軸部中心と主軸中心の距離である偏心量が、固定スクロールと揺動スクロールの渦巻形状で規定される揺動半径よりも、揺動軸受直径クリアランスと主軸受直径クリアランス及びコンプライアントフレームとガイドフレームとの嵌合円筒面の最小直径クリアランスの三者の和の半分を越えない範囲で大きく設定されていることにより、コンプライアントフレームとガイドフレームの嵌合円筒面でのクリアランスによる径方向への揺動スクロールの移動が生じても揺動スクロールと固定スクロールの渦巻側面隙間が増加することを低減でき、性能の良好なスクロール圧縮機を得ることができる。
【0038】
本発明のスクロール圧縮機は、ガイドフレームの上嵌合円筒面とコンプライアントフレームの上嵌合円筒面が係合される上嵌合部における両上嵌合円筒面間の直径隙間がガイドフレームの下嵌合円筒面とコンプライアントフレームの下嵌合円筒面が係合される下嵌合部における両下嵌合円筒面の直径隙間より小さく設定したことにより、渦巻歯先接触力が小く、性能が良好で歯先の摩耗が少ない信頼性の高いスクロール圧縮機を得ることができる。
【0039】
本発明のスクロール圧縮機はガイドフレームに挿入されたリーマピンと係合してコンプライアントフレームの自転を規制する自転防止構造をリーマピンとリーマ穴の組み合わせで構成し、リーマピンとリーマ穴の係合部の直径隙間をコンプライアントフレームとガイドフレームの上嵌合円筒部及び下嵌合円筒部の最大直径隙間より大きく設定したので、運転中のガス圧縮荷重をリーマピンですべて支持する状態が生じ、リーマピンおよびリーマ穴には過剰な力が負荷されるために摩耗が増大したり、コンプライアントフレームの嵌合円筒面の接触点の移動が不連続になることで、揺動スクロールの挙動が不安定になり、性能の低下や騒音の増大をもたらすという問題を生じない、性能が良好で信頼性の高いスクロール圧縮機を得ることができる。
【0040】
本発明のスクロール圧縮機はリーマピンはコンプライアントフレームまたはガイドフレームのいづれか一方に圧入され、圧入されていない側のリーマ穴とリーマピンの直径隙間は前記ガイドフレームの上または下嵌合円筒面と前記コンプライアントフレームの上または下嵌合円筒面が係合される上または下嵌合部における両嵌合円筒面の最大直径隙間より大きく設定したので、リーマピンは運転中に傾くことが無く、リーマピンとリーマ穴の片当りが防止でき、双方の摩耗の少ない信頼性の高いスクロール圧縮機を得ることができる。
【0041】
本発明のスクロール圧縮機はガイドフレームの自転防止構造を一対のリーマピンとリーマ穴の組み合わせで構成したので、リーマピンとリーマ穴の半径方向の不連続な接触点の移動を最小にすることができ、コンプライアントフレームの挙動が安定した、性能、騒音の良好なスクロール圧縮機を得ることができる。
【0042】
【発明の効果】
この発明に係わる請求項1記載のスクロール圧縮機は、密閉容器内に設けられ、それぞれ台板上の板状渦巻歯が圧縮室を形成するように互いに組み合わされた固定スクロールと揺動スクロールと、この揺動スクロールを揺動させる主軸に回転力を与えるロータとステータを有するモーターと、揺動スクロールを軸線方向に支持するスラスト軸受及び主軸を半径方向に支持する主軸受を有し、外周に互いに独立した第1の嵌合円筒面及びこの第1の嵌合円筒面よりも前記モータ側に設けた第2の嵌合円筒面の2つの嵌合円筒面を有するコンプライアントフレームと、密閉容器に固定され、このコンプライアントフレームの2つの嵌合面のそれぞれと嵌め合わされる互いに独立した第1の嵌合円筒面及び第2の嵌合円筒面を内周に有し、コンプライアントフレームをこれら2つの嵌合円筒面により半径方向に支持するガイドフレームと、を備え、ガイドフレームの第1の嵌合円筒面とコンプライアントフレームの第1の嵌合円筒面が嵌め合う第1の嵌合部における両嵌合円筒面間の第1の直径隙間を、第1の嵌合部よりモータ側に設けられ、ガイドフレームの第2の嵌合円筒面とコンプライアントフレームの第2の嵌合円筒面が嵌め合う第2の嵌合部における両嵌合円筒面の第2の直径隙間より小さく設定したので、渦巻歯の歯先接触力を必要以上に掛けずに小さくし、性能が良好で歯先の摩耗が少ない信頼性の高いスクロール圧縮機が得られる。
【0043】
この発明に係わる請求項2記載のスクロール圧縮機は、第1の嵌合部における両嵌合円筒面間の第1の直径隙間を、モーターのロータ外径とステータ内径の寸法差である直径隙間以下に設定したので、コンプライアントフレームの移動による圧縮室の渦巻側面からの漏れが小さく性能が良好な、そしてコンプライアントフレームの移動による主軸に嵌合されたロータの軸心の移動により、ロータの外径とステータの内径が接触することのない信頼性の高いスクロール圧縮機を得ることができる。
【0044】
この発明に係わる請求項3記載のスクロール圧縮機は、揺動スクロールに設けられ、主軸の揺動軸部と係合して揺動スクロールに揺動を伝達する揺動軸受を備え、揺動軸部中心と主軸中心の距離である偏心量が、固定スクロールと揺動スクロールの渦巻形状で規定される揺動半径よりも、揺動軸受直径クリアランス、主軸受直径クリアランス及び第1の嵌合部における両嵌合円筒面間の第1の直径隙間の三者の和の半分を越えない範囲で大きく設定されているので、コンプライアントフレームの移動による固定スクロールと揺動スクロールの渦巻側面隙間の増加を低減し、すなわち固定スクロールと揺動スクロールの渦巻側面隙間を低減でき、性能の良好なスクロール圧縮機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスクロール圧縮機の構造断面図である。
【図2】 本発明のスクロール圧縮機の上または下嵌合円筒面の一方が接触した場合の圧縮機構部に働く力の釣合いを示す模式図である。
【図3】 本発明のスクロール圧縮機のリーマピンによる自転防止構造の要部断面図である。
【図4】 本発明のスクロール圧縮機のコンプライアントフレームの嵌合円筒部と自転防止機構であるリーマピンの接触点を示す模式図である。
【図5】 従来のスクロール圧縮機の圧縮機構部縦断面図である。
【符号の説明】
1 固定スクロール、 1b 固定スクロール板状渦巻歯、 2 揺動スクロール、 2b 揺動スクロール板状渦巻歯、 2c 揺動軸受、 2d スラスト面、 3 コンプライアントフレーム、 3b 主軸受、 3c コンプライアントフレーム上嵌合円筒面、 3d コンプライアントフレーム下嵌合円筒面、 3f コンプライアントフレームリーマ穴、 4 主軸、 5 ガイドフレーム、 5a ガイドフレーム上嵌合円筒面、 5b ガイドフレーム下嵌合円筒面、 5d ガイドフレームリーマ穴、 6 オルダムリング、 7 リーマピン、 8 ロータ、 9 ステータ、 10 半径隙間、 20 密閉容器、 21 吸入管、 22 吐出管、 23 端子部、 24 下部軸受、 25 シールリング、 26 サブフレーム。
Claims (3)
- 密閉容器内に設けられ、それぞれ台板上の板状渦巻歯が圧縮室を形成するように互いに組み合わされた固定スクロールと揺動スクロールと、この揺動スクロールを揺動させる主軸に回転力を与えるロータとステータを有するモーターと、前記揺動スクロールを軸線方向に支持するスラスト軸受及び前記主軸を半径方向に支持する主軸受を有し、外周に互いに独立した第1の嵌合円筒面及びこの第1の嵌合円筒面よりも前記モータ側に設けた第2の嵌合円筒面の2つの嵌合円筒面を有するコンプライアントフレームと、前記密閉容器に固定され、このコンプライアントフレームの2つの嵌合面のそれぞれと嵌め合わされる互いに独立した第1の嵌合円筒面及び第2の嵌合円筒面を内周に有し、前記コンプライアントフレームをこれら2つの嵌合円筒面により半径方向に支持するガイドフレームと、を備え、前記ガイドフレームの第1の嵌合円筒面と前記コンプライアントフレームの第1の嵌合円筒面が嵌め合う第1の嵌合部における両嵌合円筒面間の第1の直径隙間を、前記第1の嵌合部より前記モータ側に設けられ、前記ガイドフレームの第2の嵌合円筒面と前記コンプライアントフレームの第2の嵌合円筒面が嵌め合う第2の嵌合部における両嵌合円筒面の第2の直径隙間より小さく設定したことを特徴とするスクロール圧縮機。
- 前記第1の嵌合部における両嵌合円筒面間の第1の直径隙間を、前記モーターのロータ外径とステータ内径の寸法差である直径隙間以下に設定したことを特徴とする請求項1記載のスクロール圧縮機。
- 前記揺動スクロールに設けられ、前記主軸の揺動軸部と係合して前記揺動スクロールに揺動を伝達する揺動軸受を備え、前記揺動軸部中心と前記主軸中心の距離である偏心量が、前記固定スクロールと前記揺動スクロールの渦巻形状で規定される揺動半径よりも、揺動軸受直径クリアランス、主軸受直径クリアランス及び前記第1の嵌合部における両嵌合円筒面間の第1の直径隙間の三者の和の半分を越えない範囲で大きく設定されていることを特徴とする請求項1または2記載のスクロール圧縮機。
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