JP3971289B2 - 樹脂筐体 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、電子機器筐体に関する。具体的には、本発明は、ノートパソコンや携帯電話などの電子機器用の樹脂筐体に関する。
【0002】
近年、ノートパソコン、携帯電話、PDAなどのように電子機器のモバイル化が進んでいる。これに伴い、電子機器の小型軽量化への要望が高まり、特に電子機器の全体質量において大きなウェートを占める(たとえば、ノートパソコンでは現在30%程度)筐体の小型化および薄肉化が必要となっている。
【0003】
一方、電子機器筐体には、外部から加わる荷重や衝撃に耐え得るように高強度であること、内蔵電子部品が生ずる熱を効率良く発散すること、リサイクル性に優れていることなどが要求される。したがって、これらの要求に対処すべく、電子機器筐体としては、金属筐体が採用されるようになってきた。
【0004】
この金属筐体を構成する金属材料としては、機器の軽量化の観点より、マグネシウム(Mg)やアルミニウム(Al)などの軽金属を主成分とする軽合金が注目されている。特にMgは、構造材料として実用され得る単体金属のうち最も比強度が大きく、放熱性についてはAlに匹敵する程に高く、そのうえ比重についてはAlの約7割と小さい、という特長を有する。そのため、Mgを主成分とするMg合金は、電子機器筐体の構成材料として有用である。
【0005】
しかし、Mg合金を用いた金属筐体は、樹脂筐体に比べて生産コストが高い。そのため、強度や熱伝導性において比較的高スペックが要求されていない部分に対してMg合金を用いた金属筐体を使用することは、コスト的に不利である。したがって、比較的高スペックが要求されていない部分は、コスト的に有利な樹脂筐体を採用する方が好ましい。なお、比較的高スペックが要求されない部分としては、たとえば図1に示したように、ノートパソコンの筐体におけるLCDブックカバー(LCD保護部)などが挙げられる。
【0006】
ところで、樹脂筐体において、石油を原料として作られた樹脂を主成分とした材料から構成される樹脂筐体は、原料の石油に限りがあるのに加え、環境への適応性が比較的低く、環境負荷が比較的大きい。そこで、石油を原料として作られた樹脂を主成分とした材料における上述のような問題点を改善するために、天然素材を原料として作られたポリ乳酸を主成分とした生分解性樹脂の電子機器筐体への適用が検討されるようになってきた。筐体の構成材料としてポリ乳酸を主成分とした生分解性樹脂を用いる技術がすでに公知となっている。(たとえば、特許文献1参照。)
【0007】
【特許文献1】
特開2001−244645号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1において開示されている技術では、生分解性樹脂のみによる強度不足を補うために、充填材として高強度繊維やタルクを充填することにより耐衝撃性を高めている。また、延焼を抑制するために、添加剤として水酸化マグネシウムなどの無機塩を添加することにより難燃性を高めている。
【0009】
しかしながら、生分解性樹脂に対して高強度繊維などに加え、粒子状の水酸化マグネシウムなどを混入することは、樹脂、充填材および添加剤などからなる成形材料の流動性を低下させる。そのため、当該成形材料を用いて成形される成形体の成形性が低下する。また、水酸化マグネシウムを添加することにより難燃性を向上させるには、多量に添加する必要性がある。そのため、筐体内に粒子が多量に存在することになり、当該成形材料から得られる筐体は脆くなる。したがって、ポリ乳酸を主成分とした生分解性樹脂を用いた樹脂筐体を小型化および薄肉化が望まれる電子機器筐体として使用するには、未だ改善の余地がある。
【0010】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、Mg合金などを用いて生産される金属筐体よりコスト的に有利な樹脂筐体であって、環境負荷が小さく、かつ高強度、高難燃性有するとともに成形性や脆性に優れた樹脂筐体を提供することを目的とする。
【0011】
【発明の開示】
上記の目的を達成するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0012】
すなわち、本発明によって提供される樹脂筐体は、ポリ乳酸を主成分として含む樹脂と、充填材としてのガラス繊維と、添加剤としてのリン酸系難燃剤との混合物から構成され、前記樹脂としては前記主成分たるポリ乳酸以外にはポリブチレンテレフタレートのみを含むことを特徴としている。
【0013】
ポリ乳酸は、生分解性を有する樹脂である。したがって、ポリ乳酸を主成分とした樹脂を用いて樹脂筐体を作製したことにより、筐体は生分解性を有している。具体的には、当該樹脂筐体は、そのまま地中に埋没しても地中に存在する微生物によって自然に分解される。また、当該樹脂筐体は、燃焼してもダイオキシンなどの有害物質が発生しないのに加え、二酸化炭素の排出量も少ない。そのため、環境負荷が小さく、対環境性に非常に優れている。
【0014】
ポリ乳酸を主成分とした樹脂に充填材としてガラス繊維を加えることにより補強され、曲げ弾性率が向上する。つまり、剛性が大きくなる。また、通常、樹脂にガラス繊維を充填することにより低下する傾向があるアイゾット衝撃強度が、ポリ乳酸を主成分とする樹脂に充填する場合においては大きくなる。つまり、粘弾性が大きくなる。したがって、混合物の剛性および粘弾性がともに高まることにより、強度面においてはより薄肉化した筐体の成形が可能となる。
【0015】
ポリ乳酸を主成分とした樹脂に添加剤としてリン酸系難燃剤を加えることにより、難燃性が向上して延焼が抑制できるとともに、混合物の流動性が向上する。そのため、ガラス繊維を加えることに起因する流動性の低下分が相殺され、混合物の流動性低下は抑制される。したがって、より優れた成形性を確保することができる。また、リン酸系難燃剤は、無機塩からなる難燃剤に比べて少ない量で難燃性の向上が図れる。そのため、無機塩からなる難燃剤のように粒子状のものを多量に加える必要性がない。したがって、粒子状の難燃剤を多量に加えることに起因する脆弱化を抑制することができる。
【0016】
【0017】
【0018】
ポリブチレンテレフタレートは、ポリエステル系でポリ乳酸と似たポリマー構造を有している。そのため、ポリ乳酸とポリブチレンテレフタレートとは、部分相溶性を示す。加えて、ポリブチレンテレフタレートは、結晶性樹脂であり、結晶化速度が大きい。そのため、樹脂の結晶化が促進されることになり筐体の衝撃強度および耐熱性が向上する。また、ポリブチレンテレフタレートは、ポリ乳酸に比べて高い流動性を有している。これにより、樹脂自体の流動性が向上するため、成形性が良くなるとともにガラス繊維などの繊維状充填材の配向性も緩和される。
【0019】
ポリブチレンテレフタレートは、樹脂に占める重量比率が10〜40%であることが好ましい。重量比率が10%未満では、上述のような効果を十分に得ることができない。また、重量比率が40%を超えると、ポリブチレンテレフタレートが生分解性を有していないため樹脂の生分解性の能力が不十分となり好ましくない。
【0020】
好ましくは、ガラス繊維は、ポリ乳酸によりコーティングされている。このような構成にすることにより、樹脂とコーティングされたガラス繊維との相溶性(馴染み)が向上する。相溶性が向上することにより、ガラス繊維による樹脂の補強がより効果的となり、より剛性および粘弾性が向上する。
【0021】
好ましい実施形態としては、樹脂に主成分として含まれるポリ乳酸の分子量は、145000〜200000であり、コーティングに使用するポリ乳酸の分子量は、130000以下である。分子量が比較的小さいポリ乳酸は、粘性が比較的低いので、コーティングをより均一、かつ容易に行うことができる。
【0022】
添加されるガラス繊維の長さは、1〜25mmであり、好ましくは5〜15mmである。繊維長さが大きいほど補強効果が大きく、曲げ弾性率が向上する。つまり、剛性がより大きくなる。繊維長さが1mm未満では、繊維長さによる十分な補強効果が得られず、繊維長さが25mmを超えると流動性の低下が大きく、成形性などの点で好ましくない。
【0023】
好ましい実施形態としては、ガラス繊維の充填量は、5〜40wt%である。充填量が5wt%未満では、ガラス繊維による補強効果が十分に得られない。また、充填量が40wt%を超えると、混合物の比重が大きくなり過ぎるとともに、流動性が低下するため成形性が悪化する。加えて、成形時に繊維が表面に浮いてくるため外観上も悪くなり好ましくない。
【0024】
好ましい実施形態としては、リン酸系難燃剤は、トリフェニルホスフェート、トリクジルホスフェート、レゾルシノールビス、ビスフェノールAビス、レゾルシノールNビスホスフェートからなる群より選ばれる。
【0025】
好ましい実施形態としては、リン酸系難燃剤の添加量は、3〜30wt%である。添加量が3wt%未満では、リン酸系難燃剤による難燃性向上の効果を十分に得ることができない。また、添加量が30wt%を超えると、混合物の流動性が必要以上に良くなり過ぎるため好ましくない。
【0026】
好ましい実施形態としては、混合物は、追加の充填材としてタルクをさらに含んでいる。タルクを混入することにより、結晶化し難いポリ乳酸が、タルクを核として結晶化し易くなる。これにより、ポリ乳酸の結晶化が促進され、筐体の衝撃強度および耐熱性が向上に繋がる。
【0027】
好ましい実施形態としては、タルクの充填量は、5〜40wt%である。充填量が5wt%未満では、タルクを混入することによるポリ乳酸の結晶化促進効果が十分に得られない。また、充填量が40wt%を超えると、混合物の比重が大きくなり過ぎるとともに、流動性の低下に起因して成形性が悪化する。
【0028】
好ましい実施形態としては、混合物は、追加の添加剤としてフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、重金属不活性化剤のうちの少なくとも1つをさらに含んでいる。前記追加の添加剤は、樹脂の熱劣化過程で生じる遊離基を補足し、非ラジカル化することができる。これにより、熱による劣化反応を抑制できるので樹脂の耐熱性が向上する。
【0029】
好ましい実施形態としては、前記追加の添加剤の添加量は、5〜10wt%である。添加量が5wt%未満では、樹脂が熱劣化する際に生じる遊離基を非ラジカル化することができる割合が小さく、十分に耐熱性の向上を図ることができない。また、添加量が10wt%を超えると、対環境性に優れた生分解性樹脂の割合を必要以上に低下させてしまい好ましくない。
【0030】
【実施例】
次に、本発明の実施例を参考例および比較例とともに具体的に説明する。
【0031】
【参考例1】
<成形材料の調製>
ポリ乳酸(商品名:レイシアH100J、三井化学製)およびポリブチレンサクシネート(商品名:ビオノーレ1020、昭和高分子製)からなる樹脂と、平均繊維長さ3mmのガラス繊維(商品名:CS03JAFT592、旭ファイバーガラス製)と、トリクジルホスフェート(商品名:フォスフレックス、アクゾノーベル株式会社製)とを混練機(商品名:KZW15−30MG、テクノベル製)を用いて混練し、成形材料を調整した。樹脂におけるポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとの配合比は、7:3(=ポリ乳酸:ポリブチレンサクシネート、重量比)とした。また、成形材料における樹脂、ガラス繊維およびトリクジルホスフェートの配合比は、80:10:10(=樹脂:ガラス繊維:トリクジルホスフェート、wt%比)とした。成形材料の組成を表1に掲げた。なお、混練機におけるシリンダ温度は、180℃、スクリューの回転数は、150rpmとした。
【0032】
<曲げ強度測定>
上述のようにして得た成形材料から、射出成形により、JIS Z 2204 1号試験片(12mm×127mm×3.2mm)を作成し、曲げ強度を測定した。具体的には、万能試験機(商品名:INSTORON5581、インストロンジャパン製)を使用し、JIS K 7055に準拠して、各試験片について3点曲げ試験を行った。試験条件は、支持2点間距離(スパン)を51.2mmとし、当該支持2点間の略中央に対する負荷の荷重速度を2mm/minとした。その結果を表2に掲げた。
【0033】
<アイゾット衝撃強度測定>
上述のようにして得た成形材料から、射出成形により、JIS Z 2204 2号A試験片(12mm×64mm×3.2mm、ノッチ2.54mm)を作成し、アイゾット衝撃強度を測定した。具体的には、アイゾット衝撃試験機(商品名:B−121202403、東洋精機製)を使用し、JIS K 7110に準拠して、アイゾット衝撃試験を行った。その結果を表2に掲げた。
【0034】
<流動性の評価>
上述のようにして得た成形材料から、図1に示すノートパソコン筐体(265mm×175mm×0.8mm)を射出成形し、その射出成形時における射出圧力を、流動性を示すパラメータとして流動性の良否を評価した。その結果を表2に掲げた。なお、ここでの射出圧力とは、定格圧力に対する実際の射出圧力の割合を百分率で表したものである。
【0035】
<成形性(外観)の評価>
上述のようにして得た成形材料から射出成形した図1に示すノートパソコン筐体(265mm×175mm×0.8mm)の外観を観察することにより、ひけ、ばりなどの発生の程度から成形性の良否を評価した。その結果を表2に掲げた。
【0036】
<難燃性の評価>
上述のようにして得た成形材料から、射出成形により、燃焼試験用試験片(125mm×13mm×1mm)を作成し、燃焼試験を行った。具体的には、UL94垂直燃焼試験法に準拠した方法により、UL燃焼テストチャンバー(商品名:HVUL、東洋精機製)で約2.5cmのバーナー炎を当該試験片に接触させて燃焼試験を行い、有炎燃焼持続時間、無炎燃焼持続時間および無炎燃焼時間に基づき、難燃性を評価した。その結果を表2に掲げた。
【0037】
UL94垂直燃焼試験法は、5本の試験片を用いて行われる。垂直に支持した各試験片の下端にバーナー炎を接炎して10秒間保ち(1回目の接炎)、その後バーナー炎を試験片から離す。離炎後30秒以内に試験片の炎が消えれば、前記下端にバーナー炎をさらに10秒間接炎し(2回目の接炎)、その後バーナー炎を試験片から離す。UL94垂直燃焼試験法の評価は、1回目および2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間および無炎燃焼持続時間の合計、5本の試験片の有炎燃焼持続時間の合計、並びに燃焼落下物(ドリップ)の有無から4段階(V−0,V−1,V−2,該当無し(−))で評価される。V−0の条件は、1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間が10秒以内であること、2回目の有炎燃焼持続時間および無炎燃焼持続時間の合計が30秒以内であること、5本の試験片の有炎燃焼持続時間の合計が50秒以内であること、燃焼落下物がないことである。V−1,V−2の条件は、1回目、2回目ともに有炎燃焼持続時間が30秒以内であること、2回目の有炎燃焼持続時間および無炎燃焼持続時間の合計が60秒以内であること、5本の試験片の有炎燃焼持続時間の合計が250秒以内であることであり、V−2のみ燃焼落下物が許容される。また、前記V−0,V−1,V−2のいずれにも該当しない場合は、該当無しとする。
【0038】
【参考例2】
添加剤をトリクジルホスフェートに代えてトリフェニルホスフェート(商品名:フォスフレックスTPP、アクゾノーベル株式会社製)とした以外は参考例1と同様にして成形材料を調製した。成形材料の組成を表1に掲げた。また、参考例1と同様に、上述のようにして得た成形材料を用いて曲げ強度測定、アイゾット衝撃強度測定、流動性の評価、成形性(外観)の評価および難燃性の評価を行い、その結果を表2に掲げた。
【0039】
【参考例3】
充填材をガラス繊維に代えて平均分子量130000以下のポリ乳酸によりコーティングが施されたガラス繊維とした以外は参考例1と同様にして成形材料を調製した。成形材料の組成を表1に掲げた。また、参考例1と同様に、上述のようにして得た成形材料を用いて曲げ強度測定、アイゾット衝撃強度測定、流動性の評価、成形性(外観)の評価および難燃性の評価を行い、その結果を表2に掲げた。
【0040】
【参考例4】
充填材を平均繊維長さ3mmのガラス繊維に代えて平均繊維長さ10mmのガラス繊維とした以外は参考例1と同様にして成形材料を調製した。成形材料の組成を表1に掲げた。また、参考例1と同様に、上述のようにして得た成形材料を用いて曲げ強度測定、アイゾット衝撃強度測定、流動性の評価、成形性(外観)の評価および難燃性の評価を行い、その結果を表2に掲げた。
【0041】
【比較例1,2】
添加剤としてのトリクジルホスフェートを含まず、成形材料における樹脂およびガラス繊維の配合比を、比較例1では90:10(=樹脂:ガラス繊維、wt%比)、比較例2では80:20(=樹脂:ガラス繊維、wt%比)とした以外は実施例1と同様にして成形材料を調製した。成形材料の組成を表1に掲げた。また、参考例1と同様に、上述のようにして得た各成形材料を用いて曲げ強度測定、アイゾット衝撃強度測定、流動性の評価、成形性(外観)の評価および難燃性の評価を行い、それらの結果を表2に掲げた。
【0042】
【比較例3】
樹脂におけるポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとの配合比を、5:5(=ポリ乳酸:ポリブチレンサクシネート、重量比)としたこと、および充填材としてガラス繊維に代えてタルクとし、成形材料における樹脂、タルクおよびトリクジルホスフェートの配合比を、60:30:10(=樹脂:タルク:トリクジルホスフェート、wt%比)としたこと以外は参考例1と同様にして成形材料を調製した。成形材料の組成を表1に掲げた。また、実施例1と同様に、上述のようにして得た各成形材料を用いて曲げ強度測定、アイゾット衝撃強度測定、流動性の評価、成形性(外観)の評価および難燃性の評価を行い、それらの結果を表2に掲げた。
【0043】
【比較例4】
樹脂におけるポリ乳酸とポリブチレンサクシネートとの配合比を、5:5(=ポリ乳酸:ポリブチレンサクシネート、重量比)としたこと、および充填材としてガラス繊維に代えてタルクとし、成形材料における樹脂、タルクおよびトリフェニルホスフェートの配合比を、60:30:10(=樹脂:タルク:トリフェニルホスフェート、wt%比)としたこと以外は参考例2と同様にして成形材料を調製した。成形材料の組成を表1に掲げた。また、参考例1と同様に、上述のようにして得た各成形材料を用いて曲げ強度測定、アイゾット衝撃強度測定、流動性の評価、成形性(外観)の評価および難燃性の評価を行い、それらの結果を表2に掲げた。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1および表2を参照すると、参考例1〜4の成形材料は、強度を示す曲げ強度とアイゾット衝撃強度、流動性、成形性および難燃性の全ての項目で基準値を満たしている。ここでの基準値とは、成形材料が生分解性を有する範囲で、かつ難燃性がUL94でV−2を達成するように設定された目標値である。そのため、参考例1〜4に示す成形材料を用いて射出成形することにより成形された樹脂筐体は、強度、難燃性および成形性(外観)に優れている。したがって、参考例1〜4の成形材料から得られる樹脂筐体は、高強度かつ高難燃性が要求される電子機器筐体として適用可能である。一方、比較例1,2の成形材料は、強度的に所定の基準を満たしているものの難燃性が乏しく、また比較例3,4の成形材料は、難燃性の基準は満たしているものの強度的に所定の基準値を満たしていない。したがって、比較例1〜4の成形材料から得られる樹脂筐体は、高強度かつ高難燃性が要求される電子機器筐体として適用不可能である。
【0047】
【実施例1〜4】
樹脂中のポリブチレンサクシネートに代えてポリブチレンテレフタレート(商品名:トレコン、東レ製)とした以外は参考例1〜4と同様にして成形材料を調製した。成形材料の組成を表3に掲げた。また、参考例1〜4と同様に、上述のようにして得た成形材料を用いて曲げ強度測定、アイゾット衝撃強度測定、流動性の評価、成形性(外観)の評価および難燃性の評価を行い、その結果を表4に掲げた。
【0048】
【比較例5,6】
添加剤としてのトリクジルホスフェートを含まず、成形材料における樹脂およびガラス繊維の配合比を、比較例5では90:10(=樹脂:ガラス繊維、wt%比)、比較例6では80:20(=樹脂:ガラス繊維、wt%比)とした以外は実施例5と同様にして成形材料を調製した。成形材料の組成を表3に掲げた。また、参考例1と同様に、上述のようにして得た各成形材料を用いて曲げ強度測定、アイゾット衝撃強度測定、流動性の評価、成形性(外観)の評価および難燃性の評価を行い、それらの結果を表4に掲げた。
【0049】
【比較例7,8】
充填材としてガラス繊維に代えてタルクとし、添加剤としてのトリクジルホスフェートを含まず、成形材料における樹脂およびタルクの配合比を、比較例7では90:10(=樹脂:タルク、wt%比)、比較例8では70:30(=樹脂:タルク、wt%比)とした以外は実施例5と同様にして成形材料を調製した。成形材料の組成を表3に掲げた。また、参考例1と同様に、上述のようにして得た各成形材料を用いて曲げ強度測定、アイゾット衝撃強度測定、流動性の評価、成形性(外観)の評価および難燃性の評価を行い、それらの結果を表4に掲げた。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
表3および表4を参照すると、実施例1〜4の成形材料は、強度を示す曲げ強度とアイゾット衝撃強度、流動性、成形性および難燃性の全ての項目で基準値を満たしている。ここでの基準値とは、成形材料が生分解性を有する範囲で、かつ難燃性がUL94でV−0を達成するように設定された目標値である。そのため、実施例1〜4に示す成形材料を用いて射出成形することにより成形された樹脂筐体は、強度、難燃性および成形性(外観)に優れている。したがって、実施例1〜4の成形材料から得られる樹脂筐体は、高強度かつ高難燃性が要求される電子機器筐体として適用可能である。一方、比較例5,6の成形材料は、強度的に所定の基準をほぼ満たしているものの難燃性が乏しく、また比較例7,8の成形材料は、強度的に不十分であるのに加え、成形性および難燃性の基準も満たしていない。したがって、比較例5〜8の成形材料から得られる樹脂筐体は、高強度かつ高難燃性が要求される電子機器筐体として適用不可能である。
【0053】
【0054】
【0055】
【発明の効果】
本発明に係る樹脂筐体は、ポリ乳酸を主成分とした樹脂を含む成形材料により成形されているため生分解性を有している。そのため、環境負荷が小さく、対環境性に非常に優れている。また、前記樹脂にガラス繊維およびリン酸系難燃剤を混合することにより電子機器筐体として必要な強度および難燃性を有する樹脂筐体とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る樹脂筐体の一例として、ノートパソコンのLCDフロントカバーを表す。
Claims (3)
- ポリ乳酸を主成分として含む樹脂と、充填材としてのガラス繊維と、添加剤としてのリン酸系難燃剤との混合物から構成され、前記樹脂としては前記主成分たるポリ乳酸以外にはポリブチレンテレフタレートのみを含むことを特徴とする、樹脂筐体。
- 前記ガラス繊維は、ポリ乳酸によりコーティングされている、請求項1に記載の樹脂筐体。
- 前記樹脂に主成分として含まれるポリ乳酸の分子量は、145000〜200000であり、前記コーティングに使用するポリ乳酸の分子量は、130000以下である、請求項2に記載の樹脂筐体。
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