JP3969035B2 - 耐熱性に優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板 - Google Patents

耐熱性に優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板に係り、例えば二輪車のディスクブレーキに用いて好適な材料に関するものである。なお、本発明にいう成分含有量を表す%はすべて質量%を意味するものとする。
【0002】
【従来の技術】
二輪車のディスクブレーキには、通常、ステンレス鋼が使用されている。そして、かかるディスクブレーキ材料が具備すべき特性としては、耐食性のほか、靱性、耐摩耗性があげられる。ここに、耐摩耗性は、硬度が高くなるに従い向上するが、一方、硬度増加により靱性は低下する。このため、ディスクブレーキの硬さは、これら両者のバランスを考慮して、HV:310〜380の範囲に調整されている。
ところで、こうした用途に使用されるステンレス鋼としては、従来から、13Cr−高Cマルテンサイト系の SU S420J1や SUS 420J2を、焼入れ後、焼戻しすることにより、上記硬度範囲に調整した鋼板が用いられていた。しかし、この場合には、焼入れと焼戻しの2回にわたる熱処理工程が必要なため、製造上の負担が大きかった。
これに対し、最近、特開昭57-198249号公報、特開昭60-106951号公報に示されるような、焼入れのみで適正な硬度を得ることにより、焼戻し処理の不要な、低Cマルテンサイト系ステンレス鋼も多く使用されるようになってきている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した低Cステンレス鋼で製造した二輪車のディスクブレーキは、比較的高級なスポーツバイクや、中型〜大型のオートバイに使用されてきた。これらの二輪車は、より大型化、高性能化が進み、ブレーキの使用環境が一層厳しくなる傾向にあるため、より高いブレーキ性能が要求されるようになってきた。
ディスクブレーキの機能は、言うまでもなく、ディスクとパッドとの摺動摩擦により、車両の運動エネルギーを熱に変換することで車の回転を減速することにある。このため、大型化、高速化した、近年の二輪車においては、従来にもましてディスクブレーキの発熱量が大きくなり、その温度が500〜600℃にまで上昇することもある。
【0004】
したがって、従来から使用されてきた低Cマルテンサイト系ステンレス鋼では、使用状況によっては、焼戻しにより硬度が低下し、軟質化してしまうという問題があった。ディスクブレーキが、このようにして焼戻しを受けて一旦軟質化すると、耐摩耗性は劣化し、所定の性能を維持することができなくなる。このような軟質化への対策としては、例えば、ディスクを厚くして熱容量を大きくする、放熱のためのデザインを工夫する、またディスクの枚数を増やす(シングルディスクからダブルディスクへ)など、ディスク自身が高温にならないような方法も考えられるが、いずれも重量の増大、加工の複雑化に伴うコストアップなどの難点を抱えており、根本的な解決には至っていない。
そこで、本発明は、焼入れのままで使用される低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板において、ディスクブレーキ使用時における昇温により焼戻し軟化されにくく、所定の硬度を維持できるマルテンサイト系ステンレス鋼板を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題の解決に向けて、成分組成について鋭意研究したところ、所定成分の低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板において、Ti,V,Nb,ZrおよびNを適正範囲にすれば、焼もどし軟化抵抗が高まり、所期の効果が得られることを知見した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0006】
すなわち本発明は、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.5%以下、Mn:1.0〜2.5%、Cr:10.0超〜15.0%、Ni:1.0%以下、Cu:0.5%以下を含み、かつ、Ti:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜1.0%、Zr:0.01〜1.0%から選ばれるいずれか1種または2種以上を含有し、さらにNを、 0.03 %以上 ( ただし、 0.03 %を除く ) でかつ上記窒化物形成元素との間で次式;
(Ti+V)×14/50+(Nb+Zr)×14/90
で表される窒化物等量以下の範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、耐熱性に優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板である。
【0007】
また、本発明は、上記発明に記載の成分に加え、さらに、Mo:0.05〜1.0%、B:0.0002〜0.0010%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の成分を、上記範囲に限定した理由について以下に述べる。
C:0.03〜0.10%
Cは、焼入れ後のマルテンサイトの硬度を高め、耐摩耗性を向上させるのに有効な元素である。しかし、C含有量が0.03%以下では、焼入れのみ(戻し処理なし)ではディスクブレーキとしての適性硬度が得られず、一方、0.10%を超えると過剰な硬度となる。したがって、焼入れのみでディスクブレーキの適性硬度を得るには、Cの範囲を0.03〜0.10%とする必要がある。
【0009】
Si:0.5%以下
Siは、フェライト相を安定化させる元素であり、過度に含有すると、焼入れ硬度を低下させるのみならず、靱性にも悪影響を与えるため、その上限は0.5%とする。
【0010】
Mn:1.0〜2.5%
Mnは、高温でのフェライト相の生成を抑制する元素であり、1.0%以上含有することで、硬度の焼入れ温度依存性を小さくし、安定した硬度を得るのに有効である。しかし、過度に添加すると、製造工程での脱スケール性を悪くし、表面性状に悪影響を及ぼすので、その上限を2.5%とする。
【0011】
Cr:10.0超〜15.0%
Crは、耐食性を付与するために、10.0%超えの含有は必要である。しかし、Crを過剰に含有すると焼入れ加熱の温度域でフェライト相が出現し、適正硬度が安定して得られなくなるため、その上限は15.0%とする。
【0012】
Ni:1.0%以下
Niは、Mnと同様に、高温でのフェライト相の生成を抑制する元素であり、焼入れ硬度を安定させる効果を有するが、本発明では、その効果がMnの添加により十分に得られるので、下限は特に規定する必要がなく、製鋼工程での混入レベルとする。一方、Niは高価な元素であり、経済性の観点から、上限を1.0%とする。
【0013】
Cu:0.5%以下
Cuは、Mnと同様に、高温でのフェライト相の生成を抑制する元素であり、焼入れ硬度を安定させる効果があるが、本発明では、その効果がMnの添加により十分に得られるので、下限は特に規定しない。一方、Cuを過剰に含有すると、熱間圧延時に表面割れを生じて表面疵を生じやすく、この表面疵は最終製品に至るまで残り、歩留まりの低下を招くため、また高価な元素でもあるので、その上限を0.5%とする。
【0014】
Mo:0.05〜1.0%
Moは、マルテンサイトの焼戻し軟化抵抗を高め、耐熱性を向上させる効果がある。一方、Moは、過度に含有するとフェライト相を安定化させ、焼入れ硬度を低下させる。よって、1.0%を上限として添加する。また、上記の耐熱性向上効果を発揮させるためには、Moは0.05%以上添加する。
【0015】
B:0.0002〜0.0010%
Bは、焼入れ性を高め、安定した焼入れ硬度を得るのに有効である。一方、過剰のBは、Fe,Crと低融点の化合物を形成し、連続鋳造および熱延工程において熱間割れを生じる。よって、Bは0.0010%を上限として添加する。また、上記の焼入れ硬度を得る効果を発揮させるためには、Bは0.0002%以上含有させる。
【0016】
Ti:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜1.0%、Zr:0.01〜1.0%
Ti,V,Nb,Zrは、焼入れ後、昇温した時の軟質化を抑制する重要な元素である。これら成分の含有量が少ないと、軟質化抑制の効果が得られず、逆に過剰に添加しても、その効果は飽和する。このため、適正な含有範囲は、それぞれTi:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜1.0%、Zr:0.01〜1.0%とする。なお、焼入れ後の靭性を向上させるためには、Nbの添加が特に有効である。
【0017】
N:0.03 %以上 ( ただし、 0.03 %を除く )〜(Ti+V)×14/50+(Nb+Zr)×14/90
焼入れ後の硬度を適正に保ち、かつ、これらの元素による軟質化抑制効果を有効に作用させるには、N添加量を適性含有範囲に調整するとよい。すなわち、0.03 %未満のN量では、上記の軟質化抑制効果が得られず、一方、Ti,V,Nb,Zrの形成する窒化物等量超えのN量では、焼入れ後の硬度がNに依存し、安定した硬度が得られなくなる。よって、Nの上限は(Ti+V)×14/50+(Nb+Zr)×14/90とする。
【0018】
以下の実験1〜4は、N量とTi,V,Nb,Zrとの関係を調査するために行ったものである。
(実験1)
C:0.05%、Si:0.25%、Mn:1.45%、Cr:13.0%、Cu:0.2%、Ni:0.6%、Mo:0.04%、Ti:0.10%、V:0.10%(したがってTi+V:0.20%)として、N量を変化させた鋼群A(N量の少ないものから順に鋼A1〜A12)を溶製し、連続鋳造により200mm厚スラブとし、1150℃に加熱後、熱間圧延により5mmの熱延板とした。この時、熱延終了温度は970℃、巻き取り温度は770℃であった。得られた熱延板を700℃×12時間で焼戻し焼鈍した後、サンプルを採取し、焼入れ処理後の硬度および焼入れ−焼戻し処理後の硬度を調べた。ここで、焼入れは、100mm×100mmサイズのサンプルを切り出し、1000℃で10分保持した後空冷、焼戻しは、600℃で10分保持した後空冷の処理とした。硬度は、断面で板厚中心部においてビッカース硬度HVを測定した。
【0019】
得られた結果を図1に示す。その結果、N:0.005%以上では、焼入れ−焼戻し処理後の硬度の低下(焼入れ処理後の硬度と焼入れ−焼戻し処理後の硬度との差)が少なく、軟質化が抑制されている。また、Ti,Vが形成する窒化物等量以上(N:0.056%以上)の多量のNを含む鋼では、焼入れ処理後の硬度のN量に対する依存性が強くなった。以上の結果より、N:0.005%〜(Ti+V)×14/50とすることで、焼入れ処理後の硬度が安定し、かつ焼戻しでの軟質化も抑制されるといえる。
【0020】
(実験2)
C:0.07%、Si:0.45%、Mn:1.80%、Cr:14.5%、Cu:0.3%、Ni:0.5%、B:0.0003%、Nb:0.20%、Zr:0.10%(したがってNb+Zr:0.30%)として、N量を変化させた鋼群B(N量の少ないものから順に鋼B1〜B12)を溶製し、連続鋳造により200mm厚スラブとし、1100℃に加熱後、熱間圧延して6mmの熱延板とした。この時、熱延終了温度は850℃、巻き取り温度は720℃であった。得られた熱延板を800℃×8時間の焼戻し焼鈍をした後、サンプルを採取し、焼入れ処理後の硬度および焼入れ−焼戻し処理後の硬度を調べた。ここで、焼入れは、100mm×100mmサイズのサンプルを切り出し、1000℃で10分保持した後空冷、焼戻しは、600℃で10分保持した後、空冷処理とした。硬度は、断面で板厚中心部においてビッカース硬度を測定した。
【0021】
得られた結果を図2に示す。図2より、N:0.005%以上では、焼入れ−焼戻し処理後の硬度の低下が少なく、軟質化が抑制されている。また、Nb,Zrが形成する窒化物等量以上(N:0.047%以上)の多量のNを含む鋼では、焼入れ処理後の硬度のN量に対する依存性が強くなった。以上の結果より、N:0.005%〜(Nb+Zr)×14/90とすることで,焼入れ処理後の硬度が安定し、かつ焼戻しでの軟質化が抑制されるといえる。
【0022】
(実験3)
C:0.10%、Si:0.20%、Mn:2.00%、Cr:11.0%、Cu:0.4%、Ni:0.2%、Mo:0.2%、B:0.0007%、Ti:0.07%、V:0.03%、Nb:0.15%、Zr:0.05%(したがって、Ti+V:0.10%、Nb+Zr:0.20%)として、N量を変化させた鋼群C(N量の少ないものから順に鋼C1〜C12)を溶製し、連続鋳造により200mm厚スラブとし、1200℃に加熱後、熱間圧延して4.5mmの熱延板とした。この時、熱延終了温度は770℃、巻き取り温度は650℃であった。得られた熱延板を、840℃×10時間の焼戻し焼鈍した後、サンプルを採取し、焼入れ処理後の硬度および焼入れ−焼戻し処理後の硬度を調べた。ここで、焼入れは、100mm×100mmサイズのサンプルを切り出し、1000℃で10分保持した後空冷、焼戻しは、600℃で10分保持した後空冷の処理とした。硬度は、断面で板厚中心部においてビッカース硬度を測定した。
【0023】
得られた結果を図3に示す。図3から、N:0.005%以上では、焼入れ−焼戻し処理後の硬度の低下が少なく、軟質化が抑制されている。また、Ti,V,Nb,Zrが形成する窒化物等量以上(N:0.059%以上)の多量のNを含む鋼では、焼入れ処理後の硬度の、N量に対する依存性が強くなった。以上の結果より、N:0.005%〜(Ti+V)×14/50+(Nb+Zr)×14/90とすることで、焼入れ処理後の硬度が安定し、かつ焼戻しでの軟質化が抑制されるといえる。
【0024】
このようなN量の変化による硬度の挙動については、必ずしも解明されたわけではないが、おおよそ以下のように考えられる。Ti,V,Nb,Zrはいずれも炭窒化物を形成する元素である。ここで、N含有量が0.005%〜(Ti+V)×14/50+(Nb+Zr)×14/90の適正範囲にある時に形成された窒化物は、焼入れのための加熱でも解離固溶せず、焼き入れ後も析出物のままでマルテンサイト中に残り、また、その後の焼戻し時には転位の回復を抑制し、軟質化を抑制する。しかし、Nが、0.005%に満たない少量の場合には、Ti,V,Nb,Zrのほとんどは窒化物とならず炭化物となる。この炭化物は、焼入れ加熱時に解離固溶し、焼入れ後は、固溶Cとしてマルテンサイトの硬度上昇に寄与するものの、軟質化抑制効果には寄与しない。逆に、N含有量が、窒化物の形成に必要な量を超える過剰の場合には、Nがマルテンサイトに固溶し、硬度を上昇させたものと考えられる。ただし、本発明においては、Nの下限を 0.03 ( ただし、 0.03 %を除く ) とする。
【0025】
(実験4)
上記(実験1)〜(実験3)に使用した鋼群A〜Cのうち、焼戻しで軟質化が抑制された鋼(鋼A4〜A10、鋼B3〜B8、鋼C3〜C9)を選び、焼入れ処理後に、焼入れのままでシャルピー衝撃試験を行った。試験片は、JIS Z 2202に示される4号試験片に準拠した試験片(幅10mm、長さ55mm、2mmVノッチ、開き角45度、先端曲率R=0.25mm)で、板厚は焼入れ処理ままとした。試験方法は、JIS Z 2242に準拠し、試験温度は0℃とした。シャルピー衝撃試験の結果を鋼の成分とともに、表1に示す。本実験に供した焼戻しで軟質化の抑制された鋼は、衝撃試験値が、60J/cm2以上であり、靭性の面からも二輪車ディスクブレーキ用に適した材料であると言える。特に、Nbが添加された鋼は、高い衝撃値が得られ、靭性が優れていることがわかる。
【0026】
【表1】
Figure 0003969035
【0027】
【実施例】
表2に示す成分の鋼D〜Oを溶製し、連続鋳造により200mm厚スラブとして、1150℃に加熱後、熱間圧延により板厚4mmおよび10mmの熱延板とした。この時、熱延終了温度は930℃、巻き取り温度は740℃であった。得られた熱延板を、820℃×10時間の焼戻し焼鈍をした後、サンプルを採取し、焼入れ処理後の硬度および焼入れ−焼戻し処理後の硬度を調べた。ここでの焼入れ処理は、100mm×100mmサイズのサンプルを切り出し、1000℃で10分間保持した後に空冷、焼戻し処理は、600℃で10分保持した後に空冷とした。硬度は、断面で板厚中心部においてビッカース硬度を測定した。
また、焼入れ処理後に、焼入れままの靭性を調査するために、シャルピー衝撃試験を行った。試験片は、JIS Z 2202 に示される4号試験片に準拠した試験片(幅10mm、長さ55mm、2mmVノッチ、開き角45度、先端曲率R=0.25mm)で、板厚は焼入れ処理ままとした。試験方法は、JIS Z 2242 に準拠し、試験温度は0℃とした
【0028】
得られた結果を表3に示す。表3から、発明例である鋼D〜L( ただし、E,G,I,KおよびLは除く )は、焼入れ処理後の硬度が適正範囲にあり、かつ焼戻し処理による軟質化が抑制されて、硬度低下を招かず、適正硬度を維持しているので、二輪車ディスクブレーキ用に適した材料であると言える。さらに、鋼E〜Jの場合について、板厚4mm材と板厚10mm材を比較すると、適正量のBを含む鋼FおよびJは板厚10mm材においても、4mm材と同等な焼入れ硬度が得られ、焼入れ性が向上していることがわかる。これに対して、N量の少ない鋼M(比較例)およびTi,V,Nb,Zrを添加しない鋼O(比較例)は、焼戻し処理により軟質化が著しく、適正硬度を維持できない。また、Nを過剰に添加した鋼N(比較例)は、焼入れ処理後の硬度が高く適正範囲からはずれている。また、表3から、発明例である焼入れ処理後の熱延板は、衝撃試験値が、60J/cm2以上であり、靭性の面からも二輪車ディスクブレーキ用に適した材料であると言える。特に、Nbが添加された鋼は、高い衝撃値が得られ、靭性が優れていることがわかる。
【0029】
【表2】
Figure 0003969035
【0030】
【表3】
Figure 0003969035
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ディスクブレーキ使用中の昇温による焼戻しによる軟質化を効果的に抑制し、かつ硬度低下を抑制することができる、焼入れのままで使用が可能な低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板を得ることができる。また、N含有量とTi,V,Nb,Zrの含有量との関係を適正にすることにより、これら成分が変動した場合でも安定した硬度を得ることができるので、製造性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Ti,V含有マルテンサイト系ステンレス鋼板におけるNと硬度との関係を示すグラフである。
【図2】 Nb,Zr含有マルテンサイト系ステンレス鋼板におけるNと硬度との関係を示すグラフである。
【図3】 Ti,V,Nb,Zr含有マルテンサイト系ステンレス鋼板におけるNと硬度との関係を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.5%以下、Mn:1.0〜2.5%、Cr:10.0超〜15.0%、Ni:1.0%以下、Cu:0.5%以下を含み、かつ、Ti:0.01〜0.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜1.0%、Zr:0.01〜1.0%から選ばれるいずれか1種または2種以上の窒化物形成元素を含有し、さらにNを、 0.03 %以上 ( ただし、 0.03 %を除く ) でかつ上記窒化物形成元素との間で次式;
    (Ti+V)×14/50+(Nb+Zr)×14/90
    で表される窒化物等量以下の範囲で含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする、耐熱性に優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板。
  2. 請求項1に記載の鋼板において、上記成分に加え、さらにMo:0.05〜1.0%、B:0.0002〜0.0010%のうちの1種または2種を含有することを特徴とする、低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼板。
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