JP5316242B2 - 熱処理用鋼材 - Google Patents

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本発明は、所定の形状に加工された鋼材に焼入れ焼戻しやオーステンパー等の熱処理を施すことにより製造される、チェーン部品、ギア部品、クラッチ部品、シートベルト部品等の鋼部品の素材として好適な熱処理用鋼材に関する。
チェーン部品、ギア部品、クラッチ部品、シートベルト部品等の鋼部品には、高強度、高靱性、高疲労特性、耐摩耗特性が要求される。
ここで、耐摩耗特性を向上させる方法としては、鋼中に炭化物等の硬質な物質を分散させる方法や、鋼材に熱処理を施すことによって鋼材の硬さを高める方法が採用されている。
鋼中に炭化物等の硬質な物質を分散させる方法としては、例えば、特許文献1には、炭化物分散浸炭処理を施すことにより、鋼材の耐摩耗性を向上させる方法が開示されている。また、特許文献2には、非常に高価な炭化物生成元素であるTi、Nb、Zr、VおよびWを鋼中に多量に添加することにより、鋼材の耐摩耗性を向上させる方法が開示されている。
鋼材に熱処理を施すことによって鋼材の硬さを高める方法としては、0.2質量%以上という高いC含有量の鋼材に焼入れ焼戻しやオーステンパー等の種々の熱処理を施す方法や、鋼材に浸炭処理を施す方法が採用されている。浸炭処理は製造プロセスが複雑でコスト的に不利であるため、C含有量が0.2質量%以上の鋼材に焼入れ焼戻しやオーステンパー等の種々の熱処理を施す方法が主に採用されている。
上記鋼部品の素材に用いられる鋼材(以下、「熱処理用鋼材」ともいう。)に、C含有量が0.2質量%以上の鋼材を用いる場合は、熱処理用鋼材は本質的に硬質であり加工性に劣る。
一方、熱処理用鋼材には、熱処理を施す前にプレス成形や打抜き等による鋼部品の形状への加工が施される。したがって、熱処理用鋼材には良好な加工性が求められる。例えば、プレス成形や打抜きといった加工を施す場合には、熱処理用鋼材が軟質であることが好ましい。そこで、C含有量が高く本質的に硬質で加工性に劣る鋼材を軟質で加工性の高い熱処理用鋼材とするために、熱延鋼板や冷延鋼板といった鋼材に、鋼材中の炭化物を球状化する長時間の焼鈍(以下、「球状化焼鈍」という。)を施すことがよく行なわれる。
また、鋼部品の形状への加工が施された熱処理用鋼材に熱処理を施すことによって強度を高めて、高強度の鋼部品を得るのであるから、熱処理用鋼材には高い焼入れ性を有することが求められる。熱処理用鋼材の焼入れ性が低いと、本来目的とするマルテンサイトやベイナイトといった低温変態生成相以外に、フェライトやパーライト等の相や組織が熱処理の冷却過程において多く形成されてしまい、所期の特性が得られない場合があるからである。鋼部品の寸法が大きい場合や熱処理に用いる冷却媒体が高温の場合には熱処理における冷却速度が低くなるので、この傾向が特に顕著となる。そこで、焼入れ性を高める作用を有する合金元素を添加した鋼材が用いられることが多い。例えば、JIS G 3311に規定されているクロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロム鋼等である。
また、熱処理において焼入れを施す場合には、さらに焼戻しを施して靭性を向上させる場合が多い。ここで、250〜550℃の焼戻し温度で焼戻しを施すと、強度が低下したにもかかわらず靱性が低下するという焼戻し脆性が生じることがある。この焼戻し脆性は、焼戻しにおいて合金元素が結晶粒界に偏析することにより生じるといわれており、これを抑制する手段としてMoの添加が有効であることが知られている。そこで、焼戻し脆性が生じる温度域で焼戻しを施す場合には、Moを添加した鋼材が用いられることが多い。例えば、JIS G 3311に規定されているクロムモリブデン鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼等である。
また、熱処理においてオーステンパーを施す場合には、オーステンパーが焼入れよりも高温域で冷却を停止して恒温変態させることにより鋼組織をベイナイトとするものであるため、焼入れを施す場合よりもC含有量が高く焼入れ性が高い鋼材、例えばC含有量が0.7〜0.85質量%の高炭素鋼材が用いられることが多いが、特許文献3に開示されている様に、CrおよびMoを含有してC含有量が然程高くない鋼材も使用される場合もある。
以上のように、鋼部品について高強度と高靭性とを具備させるために、その素材となる熱処理用鋼材には、焼入れ性を高めるように、あるいはさらに焼戻し脆化を抑制するように、CrおよびMoを含有する鋼材(以下、「Cr、Mo含有鋼材」ともいう。)が使用される場合がある。
特開平7−138707号公報 特開2000−192197号公報 特公平7−5970号公報
鋼中に炭化物等の硬質な物質を分散させる方法として、特許文献1に開示されている方法では、炭化物分散浸炭処理という特殊な処理を施す必要があるため製造コストが高く、また、特許文献2に開示されている方法では、Ti、Nb、Zr、VおよびWといった高価な元素を多量に添加する必要があるため製造コストが高いという問題がある。また、鋼材に熱処理を施すことによって鋼材の硬さを高める方法として、浸炭処理は上述したように製造コストが高いという問題がある。
したがって、経済性の観点からは、熱処理用鋼材としてC含有量が0.2質量%以上の鋼材を用いて焼入れ焼戻しやオーステンパー等の種々の熱処理を施すことが好ましく、なかでもCr、Mo含有鋼材を用いることが好ましいことになる。
しかしながら、鋼材に熱処理を施すことによって鋼材の硬さを高める方法により確保することができる耐摩耗特性には、熱処理を施す前の鋼材の加工性の観点等から制約があり、より一層の耐摩耗特性の向上が望まれている。
本発明は、上述した従来技術に鑑みてなされたものであり、従来よりも一層の耐摩耗特性が向上された鋼部品の製造を可能にする、熱処理用鋼材を提供することを課題とする。
焼入れ焼戻しやオーステンパー等の熱処理は、鋼部品の形状への加工が施された熱処理用鋼材をAc点以上の温度域に加熱して鋼材中の炭化物を再固溶させ、その後に冷却することにより目的とする鋼組織を得るものである。
本発明者らは、Cr、Mo含有鋼材について、上記熱処理過程における炭化物の再固溶挙動を詳細に調査した。
その結果、Cr、Mo含有鋼材について、CrおよびMoの含有量を所定の範囲とすることにより、鋼中に一般に存在する炭化物の再固溶により十分な焼入性を確保するとともに、Cr、Mo含有鋼材に特有の炭化物の再固溶を著しく抑制することができ、この再固溶されずに残留した炭化物(以下、「残留炭化物」ともいう。)により、鋼部品の耐摩耗特性が著しく向上することを新たに知見した。
すなわち、以下の新たな知見を得たのである。
(A)Cr、Mo含有鋼材に含まれる炭化物には、一般の炭素鋼で観察されるセメンタイト(MC)の他にM23が観察される。ここで、Mは、Cr、Mo、MnおよびFeからなる。
(B)セメンタイトとM23との熱処理中の再固溶挙動を比較すると、M23の方が再固溶が遅延する。したがって、M23を多く含有する鋼材は熱処理後において残留炭化物が多くなりやすい。
(C)M23を多く含有させた鋼材を用いて熱処理後において多くの残留炭化物を有する鋼部品は耐摩耗特性が著しく向上する。
(D)上記耐摩耗特性向上作用を得るには、熱処理用鋼材について、X線回折試験におけるM23の(422)面のピーク強度(I)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(I/Iθ)を0.5以上とすればよく、このようにして得られるCr、Mo含有鋼材は、熱処理における炭化物の再固溶が効果的に抑制され、熱処理後において多くの残留炭化物が確保されるため、得られる鋼部品について良好な耐摩耗特性の確保が可能となる。
なお、熱処理用鋼材は、上述したように、加工性を向上させるために球状化焼鈍が施されて製造される場合が多いが、この球状化焼鈍により球状化された炭化物は、その形状的因子により熱処理における再固溶を抑制する傾向にあり、その傾向は合金元素の含有量が多い鋼板で特に顕著となる。そのため、球状化焼鈍を施したCr、Mo含有鋼材は、熱処理後の残留炭化物が特に多くなる傾向にあり、耐摩耗特性を一層向上させることを可能にする。
本発明は上記新知見に基づいて完成したものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.51%以上0.7%以下、Si:0.19%以上0.5%以下、Mn:0.2%以上1.2%以下、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Cr:0.6%以上1.5%以下、Mo:0.05%以上0.5%以下およびsol.Al:0.2%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、X線回折試験におけるM23C6(ここで、Mは、Cr、Mo、MnおよびFeからなる。)の(422)面のピーク強度(IM)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(IM/Iθ)が0.5以上であることを特徴とする熱処理用鋼材。
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1.0%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする上記(1)に記載の熱処理用鋼材。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.10%未満、Nb:0.10%未満およびV:0.10%未満からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の熱処理用鋼材。
本発明によれば、Cr、Mo含有鋼材について、熱処理中における炭化物の再固溶を効果的に抑制して、耐摩耗特性を向上させる残留炭化物を鋼中に確実に分散させることができる。したがって、本発明に係る熱処理用鋼材を用いることにより、耐摩耗性に優れる鋼部品を得ることができる。
本発明の熱処理用鋼材の化学組成および組織、ならびにその製造方法について以下に説明する。
1.鋼の化学組成
本発明に係る鋼の化学組成について説明する。以下の説明において、鋼の化学組成を示す%は、特に断りがない限り質量%を意味する。
(1)C:0.4%以上0.7%以下
Cは、熱処理後の鋼材の強度を決定する重要な元素である。C含有量が0.4%未満では、熱処理後の鋼材の強度が低く、本発明が対象とする鋼部品に必要とされる高強度が得られない。したがって、C含有量は0.4%以上とする。一方、C含有量が0.7%超では、熱処理後の強度が高くなり過ぎて靱性の劣化が顕著となる。したがって、C含有量は0.7%以下とする。
(2)Si:0.5%以下
Siは、一般に不純物として含有される元素であるが、焼入れ性を向上させる作用を有するので、積極的に含有させてもよい。しかしながら、Si含有量が0.5%超では、熱処理前の鋼材の強度上昇にともなう加工性劣化が顕著になる。したがって、Si含有量は0.5%以下とする。
(3)Mn:0.2%以上1.2%以下
Mnは、焼入れ性を向上させる作用を有する元素であり、熱処理後の鋼材の強度を確保するのに有効な元素である。Mn含有量が0.2%未満では、焼入れ性向上作用を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は0.2%以上とする。一方、Mn含有量が1.2%超では、熱処理前の鋼材の強度上昇にともなう加工性劣化が顕著になったり、熱処理後の鋼材の強度上昇にともなう靱性劣化が顕著になったりする。このため、Mn含有量は1.2%以下とする。好ましくは0.8%以下である。
(4)P:0.05%以下
Pは、不純物として含有される元素であり、熱処理後の鋼材の靱性を低下させる作用を有する。したがって、P含有量は低いほど好ましい。P含有量が0.05%を超えると熱処理後の鋼材の靭性劣化が顕著となる。したがって、P含有量は0.05%以下とする。好ましくは0.03%以下であり、さらに好ましくは0.015%以下である。
(5)S:0.02%以下
Sは、不純物として含有される元素であり、熱処理後の鋼材の靱性を低下させる作用を有する。したがって、S含有量は低いほど好ましい。S含有量が0.02%を超えると熱処理後の鋼材の靭性劣化が顕著となる。したがって、S含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。
(6)Cr:0.6%以上1.5%以下
Crは、Cr、Mo含有鋼材特有の炭化物であるM23の安定性を高め、熱処理後における鋼材の耐摩耗特性を向上させる作用を有する重要な元素である。Cr含有量が0.6%未満では上記作用による効果を充分に得られない場合がある。したがって、Cr含有量は0.6%以上とする。一方、Cr含有量が1.5%超では、熱処理前の鋼材の加工性を向上させるために施す球状化焼鈍において炭化物の球状化が阻害されるため、熱処理前の鋼材の加工性を球状化焼鈍によって向上させることが困難になる。したがって、Cr含有量は1.5%以下とする。好ましくは1.2%以下である。
(7)Mo:0.05%以上0.5%以下
Moは、Cr、Mo含有鋼材特有の炭化物であるM23の安定性を高め、熱処理後における鋼材の耐摩耗特性を向上させる作用を有する重要な元素である。さらに、焼戻し脆性を抑制する作用も有するので、熱処理後の鋼材の靭性を向上させるのに有効な元素である。Mo含有量が0.05%未満では、上記作用による効果を充分に得られない場合がある。したがって、Mo含有量は0.05%以上とする。一方、Mo含有量が0.5%超では、上記作用による効果は飽和していたずらにコスト上昇を招く。したがって、Mo含有量は0.5%以下とする。
(8)sol.Al:0.2%以下
Alは、溶鋼を脱酸する作用を有する元素であるので、積極的に含有させてもよい。しかしながら、sol.Al含有量が0.2%超では、上記作用による効果は飽和していたずらにコスト上昇を招く。また、AlはA点を上昇させる作用を有するので、熱処理に要する加熱条件の高温・長時間化を招いて熱処理を困難にする。したがって、sol.Al含有量は0.2%以下とする。好ましくは0.1%以下である。溶鋼の脱酸にはSiを用いることもできるので、sol.Al含有量の下限は特に規定する必要はない。しかし、脱酸能力はSiよりもAlの方が高いので、sol.Al含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
(9)Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下
CuおよびNiは、任意元素であり、焼入れ性を向上させる作用を有し、熱処理後の鋼材の強度を確保するのに有効であるので、1種または2種を含有させてもよい。しかしながら、それぞれ1.0%を超えて含有させても、上記作用による効果は飽和していたずらにコスト上昇を招く。したがって、それぞれの含有量は1.0%以下とする。
(10)Ti:0.10%未満、Nb:0.10%未満、V:0.10%未満
Ti、NbおよびVは、任意元素であり、焼入れ性を向上させる作用を有し、さらに炭化物や窒化物を形成して熱処理中のオーステナイト粒成長を抑制して熱処理後の鋼材の靭性を向上させる作用を有するので、1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、過剰な含有は微細な炭化物の析出を促し、熱処理前の鋼材の強度上昇にともなう加工性劣化が顕著になる。したがって、それぞれの元素の含有量は0.10%未満とする。好ましくは、0.05%未満である。
(11)その他
C/(Cr×Mo)(ここで、各元素記号は、各元素の鋼中の含有量(単位:質量%)を示す。)の値を3.0未満とすることにより、熱処理後の鋼材について耐摩耗特性の向上に寄与するM23の生成を効果的に促進することができ、Cr、Mo含有鋼材の熱処理中における炭化物の再固溶を効果的に抑制し、残留炭化物を効果的に確保することが容易となる。したがって、C、CrおよびMoは下記式(1)を満足するように含有させることが好ましい。
C/(Cr×Mo)<3.0 (1)
これにより、M23の生成を効果的に促進することが可能となり、熱処理後の鋼材の耐摩耗特性を飛躍的に向上させることが容易になる。
2.X線回折試験におけるM23とセメンタイトとのピーク強度比
本発明では、Cr、Mo含有鋼材特有の炭化物であり、熱処理において再固溶が遅延するM23の生成を促進し、熱処理後において多量の残留炭化物を確保することにより、熱処理後の鋼材について高い耐摩耗特性を具備させることを可能にする。
このため、X線回折試験におけるM23の(422)面のピーク強度(I)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(I/Iθ)を0.5以上とする。前記比(I/Iθ)が0.5未満では、M23の割合が少ないため熱処理における再固溶が促進されてしまい、高い耐摩耗性を確保するための炭化物を確実に鋼中に分散させることが困難となる。
3.製造方法
本発明の熱処理用鋼材は、上記化学組成およびX線回折試験におけるM23とセメンタイトとのピーク強度比を満足するものであれば、如何なる製造方法によって製造されてもかまわない。
例えば、上記化学組成に溶製された溶鋼を、連続鋳造することにより鋼塊とし、あるいは鋳造後に分塊圧延することにより鋼片とし、さらに熱間圧延することにより熱延鋼板として製造することができる。この際の溶製方法等は常法でかまわないが、生産性の観点からは鋳造工程を連続鋳造法とすることが好ましい。熱延鋼板にはさらに焼鈍を施してもよく、酸洗を施してもよい。さらに、冷間圧延を施したのちに焼鈍を施してもよく、焼鈍を施した後に冷間圧延を施してもよい。焼鈍は連続焼鈍によってでも箱焼鈍によってでもよい。
実験用真空炉を用い、表1に示す化学組成の鋼を実験室レベルで溶製した。これらの鋳造した鋳塊を鍛造して20mm厚の熱間圧延用スラブとし、1200℃に均熱した後に熱間圧延を施して4mm厚に仕上げ、ホットストリップミルにおける強制空冷あるいは水スプレーを模擬した冷却条件で600℃まで冷却し、直ちに600℃の温度に保持した炉に投入して炉冷することにより巻取り後の冷却を模擬して熱延鋼板を得た。このようにして得られた熱延鋼板を、Ar雰囲気中で700℃の温度に30時間保持し、その後放冷し、表裏の両面を1mmずつ研削して2mm厚の熱延焼鈍板を作成した。
Figure 0005316242
上記熱延焼鈍板の表面を化学研磨した後、X線回折試験を行いM23の(422)面のピーク強度(I)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(I/Iθ)を調査した。
次いで、上記熱延焼鈍板を20mm×30mmに切断して、Ar雰囲気中で900℃の温度に10〜80分間保持した後、水焼入れした。水焼入れ後の鋼板を切断して断面を鏡面研磨し、さらにピクラールエッチングした後、板厚の1/4深さ位置を2000倍でSEM観察した。画像解析ソフトを用いて撮影したSEM写真を解析し、残留炭化物の面積率の測定を行った。
熱処理前のM23の(422)面のピーク強度(I)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(I/Iθ)、および熱処理後の残留炭化物面積率の変化を表2に示す。さらに加熱中の炭化物の溶解挙動を定量化するため、10分加熱後の残留炭化物面積率に対する80分加熱後の残留炭化物の割合を求めた。
表2に結果を併せて示す。
Figure 0005316242
23の(422)面のピーク強度(I)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(I/Iθ)が0.5以上、すなわちM23の生成が促進されている本発明例では、残留率が全て10%以上であったのに対して、前記比(I/Iθ)が0.5未満、すなわちM23の生成が少ない比較例では10%未満であった。このように、M23の生成を促進することで、熱処理における炭化物の再固溶が抑制され、耐摩耗特性に寄与する残留炭化物を効果的に確保することができる。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.51%以上0.7%以下、Si:0.19%以上0.5%以下、Mn:0.2%以上1.2%以下、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Cr:0.6%以上1.5%以下、Mo:0.05%以上0.5%以下およびsol.Al:0.2%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、X線回折試験におけるM23C6(ここで、MはCr、Mo、MnおよびFeからなる。)の(422)面のピーク強度(IM)とセメンタイトの(211)面のピーク強度(Iθ)との比(IM/Iθ)が0.5以上であることを特徴とする熱処理用鋼材。
  2. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:1.0%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱処理用鋼材。
  3. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.10%未満、Nb:0.10%未満およびV:0.10%未満からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理用鋼材。
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