JP3960341B2 - 熱加工制御型590MPa級H形鋼及びその製造方法 - Google Patents

熱加工制御型590MPa級H形鋼及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱加工制御型590MPa級H形鋼及びその製造方法に関し、詳しくは、建築、土木及び海洋構造物等の分野で使用され、熱加工制御(以下、「TMCP」という。)技術の適用によって、母材について、降伏点が440〜540MPa、引張強さが590〜740MPa、降伏比が80%以下の引張強度特性を有するとともに、母材及び溶接熱影響部(以下、「HAZ」という。)について、いずれも、Vノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上の衝撃特性を有するTMCP型590MPa級H形鋼及びその製造方法に関する。
近年、建築物の高層化や海洋構造物を始めとする各種構造物の大型化に伴って、従来よりも性能に優れたH形鋼が要求されている。すなわち、従来よりも高強度のH形鋼や、従来よりも高強度かつ断面内における機械的性質の変化が小さく溶接性にも優れたH形鋼に対する産業界からの要望が大きくなっている。
こうした要望に対して、特許文献1に、冷却ままで板厚方向の機械的性質の差が少ない肉厚40mm以上の厚肉H形鋼の製造方法として、特定の化学組成からなる鋼片に対して特定の条件での加熱、圧延及び冷却を施す「板厚方向の機械的特性差の小さいH形鋼の製造方法」が開示されている。
また、特許文献2に、圧延後の冷却速度に制約のない、フランジ厚み方向及びロット間などでの材質バラツキが少なく、しかも溶接性に優れた高強度高靱性のH形鋼の製造方法として、特定の化学組成からなる鋼素材を特定の条件で加熱、圧延や冷却を行う「材質ばらつきが少なくかつ溶接性に優れるH形鋼の製造方法」が開示されている。
特開平6−145786号公報
特開平10−72620号公報
前述の特許文献1で提案された技術は、肉厚(1/4)t〜表面の硬さ上昇を制御することが肉厚方向の硬さ分布の均一化には重要であって、そのためには(1/4)t部の温度履歴を制御することが有効であるとの知見に基づくもので、降伏点が295〜415MPa、引張強さが490〜610MPa、降伏比が80%以下という引張強度特性が要求される490MPa級のH形鋼やそれを下回る強度レベルのH形鋼の製造には有効である。しかしながら、より大きな強度が要求される590MPa級のH形鋼の製造には適さないものであった。
特許文献2で提案された技術によれば、590MPa級のH形鋼を製造することができるものの、所望の特性を確保するために鋼が含有するC量を、0.001〜0.040質量%という極端に低い値に制限する必要があるので、溶接時に母材の希釈によって溶接金属の特性を確保することが難しくなる。したがって、溶接のための特殊な専用ワイヤが必要になってコストが嵩むという問題があった。
そこで、本発明の目的は、溶接のための特殊な専用ワイヤを必要としないTMCP型の590MPa級H形鋼及びその製造方法、なかでも断面内における機械的性質の変化が小さく、しかも、溶接性にも優れたTMCP型の590MPa級H形鋼及びその製造方法を提供することである。
なお、上記の「断面内における機械的性質の変化が小さい」とは、具体的にはHvmax及びHvminをそれぞれ、フランジ幅1/4の部位における厚さ方向でのビッカース硬さの最大値及び最小値として、「△Hv=Hvmax−Hvmin」で表される△Hvの値が50以下であることをいう。
また、「590MPa級H形鋼」とは、機械的性質として、母材について、降伏点が440〜540MPa、引張強さが590〜740MPa、降伏比が80%以下の引張強度特性を有するとともに、母材及びHAZについて、いずれも、Vノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上の衝撃特性を有するものを指す。そして、△Hvが上記の条件を満たせば、本発明の対象とするH形鋼の断面内において、規定サイズの試験片採取が困難な板の最表層位置を含めて、降伏点が440〜540MPa、引張強さが590〜740MPa、降伏比が80%以下の引張強度特性及びVノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーで47J以上の衝撃特性を得ることが可能である。
また、「溶接性に優れる」とは、溶接割れが起こりにくいことに加えて、溶接欠陥が生じ難いことをいう。
本発明者らは、溶接のための特殊な専用ワイヤを必要とせず、しかも、前記した各種特性を備える590MPa級H形鋼を得るために、種々の検討を行った。その結果、下記(a)〜(i)の知見を得た。
(a)C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、V、Nb、Ti及びAlの含有量を厳密に制御するとともに、不純物としてのP、S、N、O(酸素)及びHの含有量を厳密に規制した鋼にTMCP技術を適用することによって、H形鋼に所望の機械的性質、つまり、440〜540MPaの降伏点、590〜740MPaの引張強さ、80%以下の降伏比という母材における引張強度特性、更には、Vノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上という母材及びHAZにおける衝撃特性を安定して具備させることができる。なお、上記の場合には、特殊な専用ワイヤを用いなくても所望の特性を確保することができる。
(b)上記不純物としてのHの含有量を厳密に規制することは、溶接欠陥の防止にも必要である。
(c)良好な、母材の衝撃特性及び溶接部、なかでもHAZの衝撃特性を確保するためには、Nb及びTiの炭窒化物を分散させることが必要である。そして、前記不純物としてのOの含有量を厳密に規制することによって、上記炭窒化物の分散が促進される。
(d)いわゆる「音響異方性」を劣化させずに所望の機械的性質を得るためには、主たる組織をベイナイト組織とする必要があり、そのためには、圧延中のオーステナイト組織の再結晶を抑制する元素である上述のNb、Tiに加えてMoやBなどの含有量も制御する必要がある
なお、「音響異方性」とは、圧延方向と圧延直角方向とで材料内部の不健全部からの反射音波の伝播速度(すなわち、音速)が異なることをいう。建築構造物における溶接部の健全性を保証するための、JIS Z 3060(2002)等で規定された斜角法超音波探傷試験(以下、「斜角UST」という。)で測定される。この「音響異方性」が大きい場合、斜角USTにおける不健全部の位置及び大きさの判断に狂いが生じ、溶接部の合否判定の信頼性を損ね、また、溶接欠陥部の補修作業に支障をきたすことになる。
(e)母材に所望の引張強度特性を一層安定して具備させるとともに、溶接割れを安定して防止するためには、既に述べた元素の含有量の制御に加えて下記(1)式で表されるPcmの値を制御する必要がある

Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B・・・・(1)。
(f)圧延によって伸延したA系介在物を少なくすることで、安定した母材の衝撃特性及び溶接部の衝撃特性を確保することができる。更に、A系介在物を少なくすることは溶接金属から拡散してくる水素のトラップサイトの減少につながるので、伸延したA系介在物の応力集中作用による溶接欠陥の発生抑止にも有効である。
(g)Nb及びTiの炭窒化物の分散状態を適正化し、また、TMCP技術を適用することによって、所望の機械的性質をH形鋼に安定して具備させるためには、特定の範囲の鋳込み速度で鋼塊を製造すればよい。
(h)特定の鋳込み速度で鋳込んだ鋼塊或いは前記鋼塊から作製した鋼片に対して、加熱温度、累積圧下率、圧延終了温度、冷却開始温度、冷却停止温度及び冷却速度を特定の条件としたTMCP技術を適用することによって、H形鋼に所望の機械的性質を極めて安定して具備させることができる。
(i)本発明の対象とするH形鋼の断面内において、前記した△Hvの値が50以下であれば、本発明の対象とするH形鋼の断面内において、規定サイズの試験片採取が困難な板の最表層位置を含めて、降伏点が440〜540MPa、引張強さが590〜740MPa、降伏比が80%以下の引張強度特性及びVノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーで47J以上の衝撃特性を得ることが可能である。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)に示す熱加工制御型590MPa級H形鋼及び(2)に示す熱加工制御型590MPa級H形鋼の製造方法にある。
(1)質量%で、C:0.041〜0.06%、Si:0.03〜0.6%、Mn:0.3〜1.6%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Cu:0.1〜0.5%、Ni:0.1〜1.5%、Cr:0.11〜1.0%、Mo:0〜0.29%、V:0.005〜0.10%、Nb:0.005〜0.039%、Ti:0.005〜0.03%、B:0〜0.0005%、Al:0.003〜0.049%、N:0.008%以下、O:0.004%以下、H:0.0001%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記(1)式で表されるPcmの値が0.15〜0.21である化学組成を有し、A系介在物の清浄度が0.04%以下、長辺の長さが10〜400nmの寸法のNb及びTiの炭窒化物の分布密度が105〜107個/mm2、かつ組織に占めるベイナイトの割合が70〜100%で、しかも、下記(2)式で表される△Hvの値が50以下、下記(3)式で表されるVRの値が0.98〜1.02であることを特徴とする熱加工制御型590MPa級H形鋼。
Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B・・・・(1)
△Hv=Hvmax−Hvmin・・・・(2)
VR=VL/VC・・・・(3)
なお、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。また、(2)式におけるHvmax及びHvminは、それぞれ、フランジ幅1/4の部位における厚さ方向でのビッカース硬さの最大値及び最小値を表す。更に、(3)式におけるVL及びVCは、それぞれ、フランジ幅1/4の部位における圧延方向の音速及びフランジ幅方向の音速を表す。
(2)0.5〜1m/min(但し、1m/minを除く)の鋳込み速度で鋳込んだ鋼塊或いは前記鋼塊から作製した鋼片を1000〜1350℃の温度域の温度に加熱した後、フランジ幅1/4の部位における950℃以下の温度域における真歪での累積圧下率が0.3以上、熱間圧延終了温度が850〜700℃の温度域の温度となるように熱間圧延した後、冷却開始温度が850〜700℃、冷却停止温度が650〜200℃、冷却速度が0.5〜15℃/sとなるように冷却することを特徴とする上記(1)に記載の熱加工制御型590MPa級H形鋼の製造方法。
以下、上記 (1)の熱加工制御型590MPa級H形鋼及び(2)の熱加工制御型590MPa級H形鋼の製造方法に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」及び「本発明()」という。また、総称して「本発明」ということがある。
なお、本発明でいうHの含有量は、昇温脱離ガス分析装置を用いて、10℃/minの昇温速度で測定した、常温から650℃までの放出水素量を指す。また、ビッカース硬さは、試験力を98.07Nとして圧延方向に垂直な断面上で、鋼の表面(圧延ロールと接触する面)からフランジ、ウェブの厚さ方向に1mmピッチで測定した場合の値を指す。なお、フランジ幅、ウェブ高さ方向のピッチは50mm以下とする。
また、本明細書でいう「熱加工制御型」(「TMCP型」)とは、低温域での圧下やオンラインでの冷却を活用することにより、通常よりも少ない合金元素量で所定の機械的性質を得て、溶接性にも優れていることを指す。
本発明のTMCP型590MPa級H形鋼は、降伏点が440〜540MPa、引張強さが590〜740MPa、降伏比が80%以下の引張強度特性を有するとともに、母材及びHAZについて、いずれも、Vノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上の衝撃特性を有し、しかも、溶接のための特殊な専用ワイヤを必要とせず、断面内における機械的性質の変化が小さく、溶接性にも優れているので、高層建築物や海洋構造物を始めとする各種の大型構造物に用いることができる。このTMCP型590MPa級H形鋼は、本発明の製造方法によって、比較的容易に得ることができる。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、化学成分の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.041〜0.06%
Cは、母材及び溶接部の強度を高める作用を有する。しかし、その含有量が0.041%未満では添加効果に乏しいばかりか、溶接時に母材の希釈によって溶接金属の特性を確保することが難しくなる。一方、Cの含有量が多くなり、特に、Cの含有量が0.06%を超えると、母材及び溶接部の靱性が低下し、また、溶接割れが発生しやすくなる。したがって、Cの含有量を0.041〜0.06%とした。
Si:0.03〜0.6%
Siは、母材及び溶接部の強度を確保する作用を有する。しかしながら、その含有量が0.03%未満では添加効果に乏しい。一方、Siの含有量が多くなり、特に、Siの含有量が0.6%を超えると、溶接割れの発生が多くなり、また、溶接部靱性の低下、なかでもHAZ靱性の低下をきたす。したがって、Siの含有量を0.03〜0.6%とした。
Mn:0.3〜1.6%、
Mnは、母材及び溶接部の強度と靱性を確保する上で不可欠な元素である。しかしながら、Mnの含有量が0.3%未満では十分な添加効果が得られない。一方、Mnの含有量が多くなり、特に、Mnの含有量が1.6%を超えると、焼入れ性が高くなり過ぎて溶接性が低下し、また、溶接部靱性の低下、なかでもHAZ靱性の低下をきたす。したがって、Mnの含有量を0.3〜1.6%とした。
P:0.03%以下
Pは、不純物として鋼中に不可避的に存在する元素で、粒界に偏析して靱性の低下をきたし、更に、溶接時に高温割れを生じさせる。特に、その含有量が0.03%を超えると、靱性の低下と溶接時の高温割れ発生が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.03%以下とした。なお、Pは少ないほど好ましい不純物であるため、その下限は特に規定するものではない。
S:0.015%以下
Sは、多すぎると中心偏析を助長し、また、延伸したMnSの多量生成の原因となるので、母材の機械的性質及び溶接部、なかでもHAZの機械的性質の劣化を招く。特に、その含有量が0.015%を超えると、母材及び溶接部の機械的性質の劣化が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.015%以下とした。なお、Sは少ないほど好ましい不純物であるため、その下限は特に規定するものではない。
Cu:0.1〜0.5%
Cuは、強度及び耐食性を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が0.1%未満では添加効果に乏しい。一方、Cuの含有量が0.5%を超えると熱間加工時の表面割れが起こりやすくなる。したがって、Cuの含有量を0.1〜0.5%とした。
Ni:0.1〜1.5%
Niは、母材の靱性を高める作用を有し、その含有量を0.1%以上とすれば、確実な母材の靱性向上効果が得られる。また、Niの含有量が0.1%以上の場合には、焼入れ性向上効果も得られる。しかし、その含有量が1.5%を超えると、鋼塊を鋳込む際に、なかでも、連続鋳造を行う際に、表面疵が発生しやすくなることがある。したがって、Niの含有量を0.1〜1.5%とした。なお、上述のとおり0.1〜0.5%のCuを含有させる本発明において、強度及び耐食性確保のために添加するCuの量が多く、特に含有量で0.2%以上になるような場合には、圧延時の表面割れを防止するために、Niの含有量を上記Cuの含有量の1/2以上とすることが望ましい。
Cr:0.11〜1.0%
Crは、焼入れ性を高める作用を有する。この効果を確実に得るためには、Crの含有量を0.11%以上とする必要がある。しかしながら、その含有量が1.0%を超えると、溶接部靱性、なかでもHAZ靱性の低下が生じる。したがって、Crの含有量を0.11〜1.0%とした。
Mo:0〜0.29%
Moの添加は任意である。添加すれば、強度を高める作用を有する。しかしながら、Moの含有量が多くなり、特に、Moの含有量が0.29%を超えると、溶接性の低下を招いたり音響異方性が大きくなったりすることがある。したがって、Moの含有量を0〜0.29%とした。
V:0.005〜0.10%
Vは、強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が0.005%未満では十分な強化作用が得られない。一方、Vの含有量が多くなり、特に、Vの含有量が0.10%を超えると、靱性及び溶接性の低下をきたす場合がある。したがって、Vの含有量を0.005〜0.10%とした。
Nb:0.005〜0.039
Nbは、強度及び靱性を向上させる作用を有する。しかしながら、その含有量が0.005%未満では前記の効果が得られない。一方、Nbの含有量が0.039%を超えると、母材における強度と靱性の向上効果が飽和するばかりか、溶接部靱性、なかでもHAZ靱性の著しい低下を招く。更に、音響異方性も極めて大きくなる。したがって、Nbの含有量を0.005〜0.039%とした。
Ti:0.005〜0.03%
Tiは、鋼塊、なかでも鋳片の表面性状を改善する作用を有する。Tiには、溶接部靱性、なかでもHAZ靱性を高める作用もある。これらの効果を得るためには、その含有量を0.005%以上とする必要がある。しかしながら、Tiの含有量が0.03%を超えると、母材の靱性低下が生じるし、溶接部靱性、なかでもHAZ靱性が却って低下する場合もある。更に、音響異方性が大きくなることもある。したがって、Tiの含有量を0.005〜0.03%とした。
B:0〜0.0005%
Bの添加は任意である。添加すれば、焼入れ性を向上させて強度を高める作用を有する。しかしながら、その含有量が0.0005%を超えると、母材の靱性低下が生じたり、溶接部靱性、なかでもHAZ靱性が低下したりすることがある。更に、音響異方性が大きくなることもある。したがって、Bの含有量を0〜0.0005%とした。
Al:0.003〜0.049%
Alは、製鋼時の脱酸に有効な元素である。Alには結晶粒の微細化作用もある。前記の効果はAlの含有量が0.003%以上で得られる。しかしながら、Alの含有量が多くなり、特に、Alの含有量が0.049%を超えると、介在物の生成量が多くなって靱性の低下をきたす。したがって、Alの含有量を0.003〜0.049%とした。
N:0.008%以下
Nは、多量に存在すると溶接部靱性、なかでもHAZ靱性の低下を招く。特に、その含有量が0.008%を超えると、溶接部靱性の劣化ばかりか母材靱性の劣化も避けられない。したがって、Nの含有量を0.008%以下とした。なお、Nは少ないほど好ましい不純物であるため、その下限は特に規定するものではない。
O:0.004%以下
O(酸素)は、鋼中に不可避的に含まれる不純物である。Oの含有量が多くなり、特に、Oの含有量が0.004%を超えると、母材及び溶接部の靱性や延性の低下を招く。したがって、Oの含有量を0.004%以下とした。なお、Oは少ないほど好ましい不純物であるため、その下限は特に規定するものではない。
H:0.0001%以下
Hは、鋼中に不可避的に含まれる不純物であり、水素脆化や溶接欠陥の原因となる。Hの含有量が多くなり、特に、Hの含有量が0.0001%を超えると、水素脆化や溶接欠陥が発生しやすくなる。したがって、Hの含有量を0.0001%以下とした。Hは少ないほど好ましい不純物であるため、その下限は特に規定するものではない。
既に述べたように、本発明でいうHの含有量は、昇温脱離ガス分析装置を用いて、10℃/minの昇温速度で常温から650℃まで昇温した場合の放出水素量を指す。なお、上記の水素脆化は、鋼中のH濃度(H含有量)が鋼種や付加応力に依存する臨界水素濃度を超えた時に発生する現象である。
Pcm:0.15〜0.21
前記(1)式で表されるPcmの値が0.15以上の場合、母材に所望の引張強度特性、つまり、440〜540MPaの降伏点、590〜740MPaの引張強さ及び80%以下の降伏比という引張強度特性を安定して具備させることができる。
なお、Pcmの値が大きすぎると、溶接割れが発生しやすくなるので、Pcmの値は、安定かつ確実に溶接割れの発生を防止するという観点から、0.21以下とする必要がある。
上記の理由から、本発明()に係るTMCP型590MPa級H形鋼は、上述した範囲のCからHまでの元素を含有し、残部はFe及び不純物からなり、前記(1)式で表されるPcmの値が0.15〜0.21である化学組成を有することと規定した。
(B)A系介在物
圧延によって伸延したA系介在物を少なくすることで、安定した母材の衝撃特性及び溶接部の衝撃特性を確保することができる。また、A系介在物を少なくすることは溶接金属から拡散してくる水素のトラップサイトの減少につながるため、伸延したA系介在物の応力集中作用による溶接欠陥の発生抑止にも有効である。特に、A系介在物の量がその清浄度で0.04%以下の場合に、安定した母材の衝撃特性及び溶接部の衝撃特性を確保することができ、また、溶接欠陥の発生を安定して抑止することが可能である。
上記の理由から、本発明()に係るTMCP型590MPa級H形鋼は、A系介在物の清浄度を0.04%以下と規定した。
なお、A介在物の清浄度は、JIS G 0555(1998)の「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」に記載のように、測定視野数を60、倍率を400倍として光学顕微鏡観察するいわゆる「点算法」によって測定すればよい。
(C)ミクロ組織
主たる組織をベイナイト組織とすることによって、音響異方性を劣化させることなく、本発明(1)に係るTMCP型590MPa級H形鋼に所望の機械的性質を具備させることができる。特に、組織に占めるベイナイトの割合を70%以上とすることによって、音響異方性が小さく、しかも、所望の機械的性質、つまり、440〜540MPaの降伏点、590〜740MPaの引張強さ、80%以下の降伏比という母材における引張強度特性と、Vノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上という母材及び溶接部における衝撃特性とを安定して備えるTMCP型590MPa級H形鋼を得ることができる。なお、組織に占めるベイナイトの割合が100%、換言すれば、ベイナイトの単相組織であってもよい。
上記の理由から、本発明()に係るTMCP型590MPa級H形鋼は、組織に占めるベイナイトの割合が70〜100%であることと規定した。
或る相が組織に占める体積割合は面積割合に等しいことが知られている。このため、上記の組織に占めるベイナイトの割合には、光学顕微鏡など通常のミクロ組織観察手段によって測定した面積割合を用いればよい。
なお、良好な、母材の衝撃特性及び溶接部、なかでもHAZの衝撃特性を確保するためには、Nb及びTiの炭窒化物を分散させることが必要であり、特に、厚さが200nmの薄膜試料の透過型電子顕微鏡による写真において、長辺の長さが10〜400nmの寸法のNb及びTiの炭窒化物の分布密度が10〜10個/mmの範囲にある場合に前記の効果が大きい。
(D)フランジ幅1/4の部位における厚さ方向でのビッカース硬さ
前記(2)式で表される△Hvの値が50以下の場合、機械的性質の変化が小さいTMCP型590MPa級H形鋼を得ることができる。
なお、厚さ方向のビッカース硬さをフランジ幅1/4の部位で測定するのは、JIS G
3136(2005)に規定された「建築構造用圧延鋼材」におけるH形鋼の試験片採取位置に準拠したものである。
上記の理由から、本発明()に係るTMCP型590MPa級H形鋼は、フランジ幅1/4の部位における厚さ方向でのビッカース硬さの最大値及び最小値の差である前記(2)式によって表される△Hvの値が50以下であることと規定した。
なお、既に述べたように、ビッカース硬さは、試験力を98.07Nとして圧延方向に垂直な断面上で、鋼の表面(圧延ロールと接触する面)からフランジ、ウェブの厚さ方向に1mmピッチで測定した場合の値を指す。なお、フランジ幅、ウェブ高さ方向のピッチは50mm以下とする。
(E)フランジ幅1/4の部位における音響異方性
本発明に係るH形鋼では、部位の違いによる音響異方性ばらつきも小さいので、代表位置として、フランジ幅1/4の部位における音響異方性を調査すれば良い。
建築構造物における溶接部の健全性を保証するために、JIS Z 3060(2002)等で規定された斜角USTによって溶接欠陥の有無が調査されるが、素材に音響異方性が存在すると、溶接欠陥の診断が困難になってしまう。
しかしながら、本発明に係るH形鋼の場合には、通常の方法で圧延されたものであっても、その圧延形態から、フランジ幅1/4の部位における前記(3)式で表されるVRの値が0.98〜1.02を満たしておりさえすれば、全領域に亘る音響異方性が小さいので、建築構造物における溶接部の健全性を保証することができる。
したがって、本発明()に係るTMCP型590MPa級H形鋼は、フランジ幅1/4の部位における圧延方向の音速VLとフランジ幅方向の音速VCとの比である前記(3)式で表されるVRの値が0.98〜1.02であることと規定した。
なお、本発明(1)に係るTMCP型590MPa級H形鋼は、例えば、本発明()に係る製造方法によって製造することができる。
(F)鋼の鋳込み
前述の(A)項で述べた化学組成を有する鋼を、0.5〜1m/min(但し、1m/minを除く)の鋳込み速度で鋳込むことによって、表面及び内部の性状の良好な鋼塊が得られ、また、適正なNb及びTiの炭窒化物の分散状態が得られる。そして、上記鋳込み速度で鋳込んだ鋼塊或いは前記鋼塊から作製した鋼片を素材とし、それにTMCP技術を適用することによって、本発明に係るTMCP型590MPa級H形鋼に所望の機械的性質を安定して具備させることができる。すなわち、440〜540MPaの降伏点、590〜740MPaの引張強さ、80%以下の降伏比という母材における引張強度特性と、Vノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上という母材及びHAZにおける衝撃特性とを安定して備えるTMCP型590MPa級H形鋼を得ることができる。
このため、本発明()に係るTMCP型590MPa級H形鋼の製造方法は、TMCP技術を適用する素材として、0.5〜1m/min(但し、1m/minを除く)の鋳込み速度で鋳込んだ前述の(A)項で述べた化学組成を有する鋼塊或いは前記鋼塊から作製した鋼片を用いることとした。
(G)TMCP条件
前記(F)項で述べた鋳込み速度で鋳込んだ鋼塊或いは前記鋼塊から作製した鋼片は、熱間圧延に際して、1000〜1350℃の温度域に加熱するのがよい。上記の加熱温度条件とすることで、Nb、Vなどが基地に固溶するので最終製品の強度増大が図れ、また、結晶粒の粗大化が防止されるので良好な靱性が確保される。
上記の加熱後は、熱間圧延機にかけて所定の形状及び寸法に圧延して制御冷却する。この熱間圧延は、フランジ幅1/4の部位における950℃以下の温度域における真歪での累積圧下率が0.3以上、熱間圧延終了温度が850〜700℃の温度域の温度となるように行うのがよい。また、制御冷却は、冷却開始温度が850〜700℃、冷却停止温度が650〜200℃、冷却速度が0.5〜15℃/sとなるように行うのがよい。上記の条件で、圧延及び制御冷却することによって、製品に所望の機械的性質、つまり、440〜540MPaの降伏点、590〜740MPaの引張強さ、80%以下の降伏比という母材における引張強度特性と、Vノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上という母材及びHAZにおける衝撃特性が安定して確保される。
このため、本発明()に係るTMCP型590MPa級H形鋼の製造方法は、前記(F)項で述べた鋳込み速度で鋳込んだ鋼塊或いは前記鋼塊から作製した鋼片を1000〜1350℃の温度域の温度に加熱した後、フランジ幅1/4の部位におけるオーステナイト域での累積圧下率が50%以上、950℃以下の温度域における真歪での累積圧下率が0.3以上、熱間圧延終了温度が850〜700℃の温度域の温度となるように熱間圧延した後、冷却開始温度が850〜700℃、冷却停止温度が650〜200℃、冷却速度が0.5〜15℃/sとなるように冷却することとした。
なお、既に述べたように、この本発明()の方法によって、本発明(1)に係るTMCP型590MPa級H形鋼を比較的容易に得ることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に含まれる。
表1〜3に示す化学組成を有する鋼1〜27、鋼29〜36、鋼38〜44、鋼46〜53及び鋼55〜57を転炉で溶製した。鋼1〜27、鋼29〜36及び鋼38は化学組成が本発明(1)で規定する範囲内にある本発明例の鋼、鋼39〜44、鋼46〜53及び鋼55〜57は成分のいずれかが本発明(1)で規定する含有量の範囲から外れた比較例の鋼である。なお、表1〜3には前記(1)式で表されるPcmの値を併記した。
Figure 0003960341
Figure 0003960341
Figure 0003960341
各鋼は溶製後、連続鋳造法によって表4及び表5に示す鋳込み速度で、厚さ250mmのスラブに鋳造した。
このようにして得たスラブを圧延開始前に表4及び表5に示す温度で加熱した。なお、スラブ全体がほぼ均一に加熱されているため、表4及び表5においては、加熱炉から抽出した際のスラブ側面中央での表面温度の測定値を「スラブ加熱温度」とした。
加熱炉から抽出したスラブに、表4及び表5に示す条件で、孔型圧延を用いた粗圧延、エッジャー圧延機と粗ユニバーサル圧延機を用いた中間圧延、及び仕上ユニバーサル圧延機を用いた仕上圧延を行い、次いで、制御冷却を実施した。なお、制御冷却は水冷で行った。水冷開始温度、水冷パス回数、水冷停止温度及び冷却速度の詳細は、表4及び表5に示すとおりである。
なお、圧延時の温度には、フランジ幅1/4の部位におけるフランジ外表面温度の長手方向平均値を用いた。また、冷却速度は、水冷開始時の温度、水冷開始から水冷終了後に復熱を完了するまでの時間及び前記復熱を完了した時の温度から計算した。
Figure 0003960341
Figure 0003960341
上記の制御冷却後、大気中放冷して表4及び表5に示す20〜80mmのフランジ厚さを有するH形鋼を製造した。なお、表6に、H形鋼のフランジ厚さに対する具体的な製品寸法を示す。
Figure 0003960341
このようにして得た各H形鋼について、組織、A系介在物の清浄度、音響異方性、機械的性質及び溶接性を調査した。
組織調査として、先ず、ベイナイトが組織に占める割合を測定した。すなわち、フランジ幅1/4の部位の厚さ方向1/4の位置から採取した試験片を、圧延方向とフランジ幅方向を含む面で鏡面研磨した後、ナイタルで腐食し、光学顕微鏡の倍率を500倍として、100μm×100μmの正方形の10視野を観察し、観察によって得られた像を画像解析することによって、組織に占めるベイナイトの割合を調査した。
組織調査として、次に、Nb及びTiの炭窒化物の分布密度を、透過型電子顕微鏡写真から求めることも行った。すなわち、フランジ幅1/4の部位の厚さ方向1/4の位置から採取した試験片を、厚さが200nmの薄膜試料に加工した後、透過型電子顕微鏡の倍率を100000倍として、500nm×500nmの正方形の10視野を写真撮影し、それらの写真を画像解析して、Nb及びTiの炭窒化物の分布密度を求めた。
A介在物の清浄度は、JIS G 0555(1998)の「鋼の非金属介在物の顕微鏡試験方法」に準拠して求めた。すなわち、フランジ幅1/4の部位から採取した試験片(厚さ方向20mm、幅方向10mm、圧延方向15mmの直方体。フランジ厚さが20mmの場合は、全厚。フランジ厚さが60mm、80mmの場合は厚さ方向1/4の位置から採取。)を圧延方向に平行な面積が300mmの被検面について鏡面研磨し、測定視野数を60、倍率を400倍として光学顕微鏡観察することによって、A介在物の清浄度を測定した。
音響異方性は、JIS Z 3060(2002)「鋼溶接部の超音波探傷試験方法」に従って、H形鋼のフランジ幅1/4の部位における圧延方向の音速VL及びフランジ幅方向の音速VCの比を調査した。
機械的性質は、母材について、ビッカース硬さ、引張強度特性及び衝撃特性を調査し、また、溶接部について衝撃特性を調査した。
すなわち、フランジ幅1/4の部位において、試験力を98.07Nとして厚さ方向に垂直な断面上で、鋼の表面(圧延ロールと接触する面)からフランジ、ウェブの厚さ方向に1mmピッチで、フランジ幅、ウェブ高さ方向のピッチは50mmで、ビッカース硬さを測定し、前記(2)式で表される△Hvを求めた。
また、JIS Z 2201(1998)に記載の引張試験片を採取し、室温で引張試験を行って降伏点(YP。但し、0.2%耐力を用いた。)と引張強さ(TS)を測定し、降伏比(YR)を求めた。なお、フランジ厚さが60mmと80mmの場合、フランジ幅1/4の部位から圧延方向と平行に採取した4号試験片を用いた。また、フランジ厚さが20mmの場合、1A号試験片(全厚試験片)を用いた。
母材の衝撃特性は、フランジ幅1/4の部位の厚さ方向1/4の位置及びフィレット位置から、いずれも、圧延方向と平行にJIS Z 2242(2005)に記載のVノッチ試験片を採取し、0℃でシャルピー衝撃試験を行った場合の吸収エネルギーで評価した。
HAZの衝撃特性は、H形鋼のフランジ部と590MPa級用の溶接ワイヤを用いて、COガスシールドのMAG溶接を実施して調査した。なお、継手形状は、45゜レ型開先の平継手とし、入熱が30kJ/cmで最大パス間温度が250℃及び入熱が50kJ/cmで最大パス間温度が550℃の各条件について、多パス溶接を実施した。上記の各条件で溶接後、レ型開先の垂直側の表面下10mmで、ボンド部から母材側に1mmの部位にノッチ先端が位置するVノッチ試験片を採取し、0℃でシャルピー衝撃試験を行った場合の吸収エネルギーによってHAZの衝撃特性を評価した。
溶接性は、各H形鋼のフランジ部を切断して作成した鋼板を用いて、JIS Z 3158(1993)の規定に準拠した斜めy型溶接割れ試験を実施し、割れ発生の有無で各H形鋼の溶接割れ感受性を評価した。なお、溶接割れ試験はいずれも、590MPa級用の極低水素タイプの外径が4.0mmの溶接ワイヤを用い、SiOが30%、CaOが15%、MgOが15%及びAlが40%からなるフラックスを用いて、サブマージ溶接により、平均入熱を50kJ/cmとして溶接した。試験は温度25℃、湿度60%の雰囲気で、試験片初期温度25℃の条件で実施した。
表7〜9に、上記の各試験結果を示す。なお、上記の表7〜9の「0℃での吸収エネルギー」欄において、母材については、フランジ幅1/4の部位の厚さ方向1/4の位置からVノッチ試験片を採取した場合及びフィレット位置からVノッチ試験片を採取した場合を、それぞれ、「vE0(B1)」及び「vE0(B2)」と表記した。また、HAZについては、溶接条件が、入熱が30kJ/cmで最大パス間温度が250℃の場合及び入熱が50kJ/cmで最大パス間温度が550℃の場合を、それぞれ、「vE0(W1)」及び「vE0(W2)」と表記した。
Figure 0003960341
Figure 0003960341
Figure 0003960341
表7〜9から、本発明のTMCP型H形鋼は、降伏点が440〜540MPa、引張強さが590〜740MPa、降伏比が80%以下の引張強度特性を有するとともに、母材及びHAZについて、いずれも、Vノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上の衝撃特性を有しており、590MPa級H形鋼に要求される機械的性質を満たすことが明らかある。
本発明のTMCP型590MPa級H形鋼は、降伏点が440〜540MPa、引張強さが590〜740MPa、降伏比が80%以下の引張強度特性を有するとともに、母材及びHAZについて、いずれも、Vノッチ試験片を用いた0℃でのシャルピー吸収エネルギーが47J以上の衝撃特性を有し、しかも、溶接のための特殊な専用ワイヤを必要とせず、断面内における機械的性質の変化が小さく、溶接性にも優れているので、高層建築物や海洋構造物を始めとする各種の大型構造物に用いることができる。このTMCP型590MPa級H形鋼は、本発明の製造方法によって、比較的容易に得ることができる。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.041〜0.06%、Si:0.03〜0.6%、Mn:0.3〜1.6%、P:0.03%以下、S:0.015%以下、Cu:0.1〜0.5%、Ni:0.1〜1.5%、Cr:0.11〜1.0%、Mo:0〜0.29%、V:0.005〜0.10%、Nb:0.005〜0.039%、Ti:0.005〜0.03%、B:0〜0.0005%、Al:0.003〜0.049%、N:0.008%以下、O:0.004%以下、H:0.0001%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記(1)式で表されるPcmの値が0.15〜0.21である化学組成を有し、A系介在物の清浄度が0.04%以下、長辺の長さが10〜400nmの寸法のNb及びTiの炭窒化物の分布密度が105〜107個/mm2、かつ組織に占めるベイナイトの割合が70〜100%で、しかも、下記(2)式で表される△Hvの値が50以下、下記(3)式で表されるVRの値が0.98〜1.02であることを特徴とする熱加工制御型590MPa級H形鋼。
    Pcm=C+(Si/30)+(Mn/20)+(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+(Mo/15)+(V/10)+5B・・・・(1)
    △Hv=Hvmax−Hvmin・・・・(2)
    VR=VL/VC・・・・(3)
    なお、(1)式中の元素記号は、その元素の質量%での鋼中含有量を表す。また、(2)式におけるHvmax及びHvminは、それぞれ、フランジ幅1/4の部位における厚さ方向でのビッカース硬さの最大値及び最小値を表す。更に、(3)式におけるVL及びVCは、それぞれ、フランジ幅1/4の部位における圧延方向の音速及びフランジ幅方向の音速を表す。
  2. 0.5〜1m/min(但し、1m/minを除く)の鋳込み速度で鋳込んだ鋼塊或いは前記鋼塊から作製した鋼片を1000〜1350℃の温度域の温度に加熱した後、フランジ幅1/4の部位における950℃以下の温度域における真歪での累積圧下率が0.3以上、熱間圧延終了温度が850〜700℃の温度域の温度となるように熱間圧延した後、冷却開始温度が850〜700℃、冷却停止温度が650〜200℃、冷却速度が0.5〜15℃/sとなるように冷却することを特徴とする請求項1に記載の熱加工制御型590MPa級H形鋼の製造方法。
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