JP3957591B2 - ビニル系重合体の製造方法、官能基導入ビニル系重合体の製造方法および該製造方法により得られた官能基導入ビニル系重合体 - Google Patents
ビニル系重合体の製造方法、官能基導入ビニル系重合体の製造方法および該製造方法により得られた官能基導入ビニル系重合体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体の製造方法、官能基導入ビニル系重合体の製造方法および該製造方法により得られた官能基導入ビニル系重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
末端に官能基を有する重合体は、そのもの単独または適当な硬化剤と組み合わせることによって架橋し、耐熱性、耐久性などの優れた硬化物を与えることが知られている。なかでも末端にアルケニル基、水酸基または架橋性シリル基を有する重合体は、それらの代表例である。
【0003】
前記アルケニル基を末端に有する重合体は、ヒドロシリル基含有化合物を硬化剤として用いることにより、または光反応を利用することにより架橋硬化する。
【0004】
また、前記水酸基を末端に有する重合体は、ポリイソシアネートと反応することにより、ウレタン架橋を形成して硬化する。
【0005】
さらに、前記架橋性シリル基を末端に有する重合体は、適当な縮合触媒の存在下、湿分を吸収することにより硬化する。
【0006】
前記のごときアルケニル基、水酸基または架橋性シリル基を末端に有する重合体の主鎖骨格としては、たとえばポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシドなどのポリエーテル系重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレンまたはそれらの水素添加物などの炭化水素系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカプロラクトンなどのポリエステル系重合体などが例示され、主鎖骨格と架橋形式により、それぞれに適する様々な用途に用いられている。
【0007】
前述のイオン重合や縮重合で得られる重合体とは異なる、ラジカル重合で得られるビニル系重合体で末端に官能基を有するものは、まだほとんど実用化されていない。
【0008】
前記ビニル系重合体のなかでも、(メタ)アクリル系重合体は、高い耐候性、透明性など、前記ポリエーテル系重合体、炭化水素系重合体またはポリエステル系重合体では得られない特性を有しており、アルケニル基や架橋性シリル基を側鎖に有するものは高耐候性の塗料などに利用されている。
【0009】
一方、ビニル系重合体の重合制御は、副反応を抑制し、目的の分子量、分子量分布の重合体を得ることが容易ではなく、末端への官能基の導入などは非常に困難である。たとえば、アルケニル基を分子鎖末端に有するビニル系重合体を簡便な方法で得ることができれば、側鎖にアルケニル基を有するものと比較して、硬化物物性が優れた硬化物を得ることができる。
【0010】
しかし、これまで多くの研究者によって、その製造方法が検討されてきたが、それらを工業的に製造する方法はまだ報告されておらず、それらを工業的に製造することは容易でない。
【0011】
たとえば特開平5−255415号公報には、連鎖移動剤としてアルケニル基含有ジスルフィドを用いる、両末端にアルケニル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法が、また、特開平5−262808号公報には、水酸基を有するジスルフィドを用いて、両末端に水酸基を有する(メタ)アクリル系重合体を製造し、さらに水酸基の反応性を利用して両末端にアルケニル基を導入する(メタ)アクリル系重合体の製造方法が開示されているが、これらの方法で両末端に確実にアルケニル基を導入することは容易でない。また、末端に確実に官能基を導入するためには、連鎖移動剤を大量に使用しなければならず、製造工程上問題がある。
【0012】
たとえば、本発明者らは、ビニル系重合体の重合後に、官能基導入剤として重合性の低い官能基を2個以上持つ化合物を添加し、1つの官能基を重合体末端と反応させることにより、重合体末端に官能基を導入する方法を開発している。
【0013】
しかし、前記官能基導入剤の仕込量が、活性末端に対して等量または活性末端より少量の場合、2つの官能基の両方ともが反応し、重合体末端をカップリングしてしまう可能性がある。したがって、重合体の両末端に確実に官能基を導入するためには、重合成長末端に対して官能基導入剤の仕込量が過剰量であることが好ましい。
【0014】
前記例以外にも、官能基含有モノマーや重合停止剤により末端に官能基を導入する際には、反応速度を向上させたり、末端に確実に官能基を導入させるために官能基導入剤を過剰に添加することが好ましい場合がある。過剰に添加した官能基導入剤は、官能基導入後に減圧留去などの方法によって回収されるが、これらの化合物はリサイクルすることが望ましい。とくに官能基導入剤が高価な原料である場合には、これらの化合物をリサイクルすることが製造上、極めて重要な意味を持つ。
【0015】
しかし、ビニル系重合体の重合において重合溶媒を用いる場合、官能基導入剤の減圧留去の際に、官能基導入剤と重合溶媒が混合されて回収される。しかし、官能基導入剤を含んだ重合溶媒は重合溶媒としてリサイクルすることができない。なぜなら、所定の分子量に達する前の主鎖中に官能基が導入されてしまうからである。このため、官能基導入剤と重合溶媒の分離が必要となる。
【0016】
2種以上の化合物の分離に関しては様々な方法が考えられる。晶析分離によるもの、吸着分離など様々な分離法が考えられるが、なかでも一般的な方法は蒸留分離法である。
【0017】
この方法は、2種以上の化合物の沸点差を利用して分離する方法であるが、化合物間の沸点差が小さい場合または共沸組成を持つ場合には、分離が極めて困難となる。つまり、混合した状態で回収された、重合溶媒と官能基導入剤との沸点差が小さい場合または共沸組成を持つ場合には、両者を分離することが極めて困難であり、重合溶媒または官能基導入剤としてリサイクル使用することができないという製造上の問題がある。後述するが、官能基導入剤の1つである1,7−オクタジエンと重合溶媒の1つであるアセトニトリルとは、沸点差が30℃以上であるにも関わらず、共沸組成を持つことを本発明者らは発見している。このような系では、第3物質を添加する共沸蒸留などの特殊な蒸留操作でなければ両者は分離することができず、また、このような第3成分を見つけることは極めて困難である。
【0018】
一方、重合体末端に官能基を確実に1つだけ導入することが容易でない理由として、ラジカル成長末端に官能基導入剤を添加するタイミングの判断が難しいことがあげられる。官能基導入剤を添加した際には重合性モノマーが存在しないことが望ましいが、重合末期には反応速度が次第に低下するため、微量の重合性モノマーが残存する。この時点で重合性モノマーが残存していると、1つの末端に導入される官能基数が制御しにくくなることがある。ラジカル成長末端と官能基導入剤が反応したのちの(官能基を有する)末端は、通常、ラジカル反応活性が低く、新たに別の官能基導入剤と反応する可能性は低い。しかし、ラジカル成長末端と官能基導入剤が反応した時点で反応系中に重合性モノマーが存在すると、このポリマー末端に活性の高い重合性モノマーが付加することは充分考えられる。そして、いったん重合性モノマーが付加すると、その末端はふたたび活性の高いものになり、さらに新たな官能基導入剤と反応することになる。いったんラジカル成長末端と官能基導入剤が反応したのちに、末端に重合性モノマーが付加し、さらに別の官能基導入剤が反応すれば、結果的に、ポリマーの1つの末端に複数の官能基が導入されてしまう。この場合、1つの末端に1つの官能基を導入することは、比較的困難となる。
【0019】
重合末期のモノマー残存率を分析し、常に一定の重合度で官能基導入剤を添加することも可能であるが、常に煩雑な工程分析を必要とする問題があり、また、工程分析を行なわない方法では、重合度が充分に定常に達する非常に長い時間を確保しなければならないという問題がある。
【0020】
このように、重合体末端に確実に1つの官能基を導入するために、官能基導入剤の回収とそれに伴う重合溶媒との分離、およびこれに関連する重合溶媒と官能基導入剤のリサイクル、さらに常に一定の官能基導入率とするために、一定の重合度での官能基導入剤の添加時期判断という、製造上極めて大きな2つの問題を抱えていることがわかる。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重合溶媒と官能基導入剤とをそれぞれ高純度で回収し、またリサイクルすることで重合体末端に官能基を持つ所定分子量の重合体を効率的かつ低コストで製造する方法を提供するためになされたものである。
【0022】
すなわち、本発明は、
重合溶媒中、重合開始剤および重合触媒である遷移金属錯体の存在下、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なってビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒を減圧留去することを特徴とする原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体の製造方法(請求項1)、
重合溶媒中、重合開始剤および重合触媒である遷移金属錯体の存在下、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なってビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒を減圧留去し、ついで官能基導入剤を添加して官能基を導入することを特徴とする官能基導入ビニル系重合体の製造方法(請求項2)、
重合溶媒中、重合開始剤および重合触媒である遷移金属錯体の存在下、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なってビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒を減圧留去し、ついで官能基導入剤を添加して官能基を導入したのち、官能基導入剤または官能基導入剤および官能基導入時の溶媒の混合物を減圧留去することを特徴とする官能基導入ビニル系重合体の製造方法(請求項3)、
減圧留去した重合溶媒を回収し、重合溶媒として再利用する請求項1または2記載の製造方法(請求項4)、
減圧留去した官能基導入剤または官能基導入剤および官能基導入時の溶媒の混合物を回収し、官能基導入剤または官能基導入剤および官能基導入時の溶媒の混合物として再利用する請求項3記載の製造方法(請求項5)、
原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体と官能基導入剤との反応が前記遷移金属錯体により触媒される請求項2または3記載の製造方法(請求項6)、
官能基がビニル系重合体の分子鎖末端に導入される請求項2、3、4、5または6記載の製造方法(請求項7)、
ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である請求項1、2、3、4、5、6または7記載の製造方法(請求項8)、
ビニル系重合体がアクリル酸エステル系重合体である請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の製造方法(請求項9)、
ビニル系重合体がアクリル酸ブチル系重合体である請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の製造方法(請求項10)、
ビニル系重合体の数平均分子量が500〜100000である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の製造方法(請求項11)、
ビニル系重合体の分子量分布の値が1.8未満である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の製造方法(請求項12)、
遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、第9族、第10族または第11族元素である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載の製造方法(請求項13)、
遷移金属錯体の中心金属が、鉄、ニッケル、ルテニウムまたは銅である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13記載の製造方法(請求項14)、
遷移金属錯体の中心金属が銅である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14記載の製造方法(請求項15)、
遷移金属錯体の配位子がポリアミン化合物である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15記載の製造方法(請求項16)、
遷移金属錯体の配位子がトリアミン化合物である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15または16記載の製造方法(請求項17)、および
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16または17記載の製造方法により製造された重合体(請求項18)
に関する。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明1では、重合溶媒中、重合開始剤および重合触媒である遷移金属錯体の存在下、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なってビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒を減圧留去することにより、原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体が製造される。
【0024】
このように、重合溶媒中、重合開始剤および重合触媒である遷移金属錯体の存在下、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なってビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒を減圧留去するため、ビニル系重合体は原子移動ラジカル重合状態を保ったまま、残存するモノマーを実質的に含まない原子移動ラジカル重合状態のビニル系重合体を得ることができる。この結果、得られた原子移動ラジカル重合状態のビニル系重合体に、たとえば官能基導入剤を添加することにより、末端に官能基を導入した官能基導入ビニル系重合体を製造することができ、従来の残存モノマーの存在下で官能基導入剤を添加することにより官能基を導入した場合の官能基が導入された活性末端に重合性の高いモノマーが付加され、ランダム共重合されてしまい、末端の構造を制御しにくく、末端に導入される官能基数が左右されてしまうという問題を解決することができる。また、前記問題を解決するために従来行なわれていた、重合末期のモノマー残存率を分析し、常に一定の重合度で官能基導入剤を添加する場合の煩雑な工程分析や、重合度が充分に定常に達するまでの非常に長い時間を確保しなければならないなどの問題を改善することができる。
【0025】
また、重合溶媒の減圧留去を、たとえば官能基導入剤を添加する前に行なうため、減圧留去により回収されたものには、実質的に重合溶媒およびビニル系モノマーしか含まれておらず、減圧留去により回収されたものの純度が高く、高率でリサイクルすることができる。
【0026】
さらに、重合溶媒およびビニル系モノマーがほぼ完全に留去せしめられているため、たとえばそののち行なわれる官能基導入剤を添加することにより官能基を導入して官能基導入ビニル系重合体を製造する場合の未反応物やこの場合の溶媒などの回収物の純度が高く、リサイクルを高率で行なうことができる。
【0027】
本発明1のように、原子移動ラジカル重合状態を保つように重合開始剤および重合触媒である遷移金属錯体の存在下、ビニル系モノマーを重合させる重合を、リビングラジカル重合の1種である原子移動ラジカル重合という。
【0028】
リビングラジカル重合は、重合速度が大きく、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御が難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量を自由にコントロールすることができる。それゆえ、リビングラジカル重合によると、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができるうえに、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、前記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法として好ましい。
【0029】
なお、リビング重合は、狭義には、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般(広義)には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合のことも含む。本発明における定義も後者である。
【0030】
リビングラジカル重合法は、近年様々なグループにより積極的に研究がなされている。その例としては、たとえばジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカルソサイエティー(J. Am. Chem. Soc.)、1994年、116巻、7943頁に示されているようなコバルトポルフィリン錯体を用いたもの、マクロモレキュルズ(Macromolecules)、1994年、27巻、7228頁に示されているようなニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いたもの、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする「原子移動ラジカル重合」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などがあげられる。
【0031】
リビングラジカル重合法のなかでも、有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物などを開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合させる原子移動ラジカル重合法は、前記リビングラジカル重合法の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン基などを末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。
【0032】
前記原子移動ラジカル重合法については、たとえばマティヤスゼウスキー(Matyjaszewski)ら、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカルソサイエティー(J. Am. Chem. Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュルズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁,サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報,WO97/18247号公報あるいはサワモト(Sawamoto)ら、マクロモレキュルズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁などに記載されている。
【0033】
前記ビニル系重合体の製造に使用するビニル系モノマーとしては、ラジカル重合性単量体である限りとくに制約はなく、各種のものを用いることができる。
【0034】
前記ビニル系モノマーの具体例としては、たとえば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル(環状アルキル基の炭素数5〜50)、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸イソボルニル系エステル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル(アリール基の炭素数6〜50)、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸アラルキルエステル(アラルキル基の炭素数7〜50)、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチルなどの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル(アルコキシ基の炭素数1〜50、アルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸グリシジルなどの(メタ)アクリル酸エポキシ基含有アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸2−アミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜50)、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシランなどの(メタ)アクリル酸アルコキシシリル基含有アルキルエステル(アルコキシ基の炭素数1〜50、アルキル基の炭素数1〜50)、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイド付加数2〜50)、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどの(メタ)アクリル酸含フッ素アルキルエステル(含フッ素アルキルの炭素数1〜50)などの(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸、その塩などのスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルアルコキシシランなどのケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルやジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルやジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレンなどのアルケン類;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコールなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、生成物の物性などの点から、スチレン系モノマーや(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、さらに、本発明における官能基導入反応の反応性の高さやガラス転移点の低さなどからアクリル酸エステル系モノマー、とくにはアクリル酸ブチルが好ましい。
【0035】
前記重合開始剤としては、たとえば有機ハロゲン化物、とくに反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(たとえばα位にハロゲン原子を有するエステル化合物や、ベンジル位にハロゲン原子を有する化合物)、ハロゲン化スルホニル化合物などがあげられる。
【0036】
前記有機ハロゲン化物の具体例としては、たとえば
C6H5−CH2X、C6H5−CHX−CH3、C6H5−C(X)(CH3)2
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)、
R3−CHX−CO2R4、R3−CX(CH3)−CO2R4、
R3−CHX−CO−R4、R3−CX(CH3)−C(O)R4、
(式中、R3、R4は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
などがあげられる。
【0037】
前記開始剤として用いられるハロゲン化スルホニル化合物の具体例としては、たとえば
R3−C6H4−SO2X
(式中、R3は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアラルキル基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
などがあげられる。
【0038】
有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤としてビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なうことにより、一般式(1):
−CX(R1)(R2) (1)
(式中、R1およびR2はビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
に示す末端構造を有するビニル系重合体が得られる。
【0039】
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基とともに重合を開始しない特定の反応性官能基を併せもつ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に特定の反応性官能基を、他方の主鎖末端に一般式(1)に示す末端構造を有するビニル系重合体が得られる。
【0040】
このような特定の反応性官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基などがあげられる。これらの反応性官能基の反応性を利用して1段階または数段階の反応を経ることにより、ビニル系重合体に他の適当な官能基を導入することができる。
【0041】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物にはとくに限定はないが、たとえば一般式(2):
R6R7CX−R8−R9−C(R5)=CH2 (2)
(式中、R5は水素原子またはメチル基、R6、R7は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または他端において相互に連結したもの、R8は−COO−(エステル基)、−CO−(ケト基)またはo−,m−,p−フェニレン基、R9は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基で、1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
で示される化合物が例示される。
【0042】
前記R6、R7の具体例としては、たとえば水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などがあげられる。R6とR7は他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
【0043】
また、前記R9の具体例としては、たとえば直接結合、炭素数1〜20のアルキレン基または1個以上のエーテル結合を含む基があげられる。前記炭素数1〜20のアルキレン基としては、−(CH2)n−(nは0〜20の整数)が例示される。また、前記1個以上のエーテル結合を含む基としては、−O−(CH2)n−、−(CH2)n−O−、−(CH2)n−O−(CH2)m−(m、nはn+m=20を満たす1〜20の整数)があげられる。
【0044】
一般式(2)で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、たとえば
XCH2COO(CH2)nCH=CH2、
CH3CHX−COO(CH2)nCH=CH2、
(CH3)2CX−COO(CH2)nCH=CH2、
CH3CH2CHX−COO(CH2)nCH=CH2、
【0045】
【化1】
【0046】
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)
XCH2COO(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
CH3CHX−COO(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
(CH3)2CX−COO(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
CH3CH2CHX−COO(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
【0047】
【化2】
【0048】
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3CHX−C6H4−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2CHX−C6H4−(CH2)n−CH=CH2、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3CHX−C6H4−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2CHX−C6H4−(CH2)n−O−(CH2)mCH=CH2、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3CHX−C6H4−O−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2CHX−C6H4−O−(CH2)n−CH=CH2、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3CHX−C6H4−O−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2CHX−C6H4−O−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数)
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては、さらに一般式(3):
CH2=C(R5)−R9−CX(R6)−R10−R7 (3)
(式中、R5、R6、R7、R9、Xは前記に同じ、R10は、直接結合、−COO−(エステル基)、−CO−(ケト基)またはo−,m−,p−フェニレン基)
で示される化合物があげられる。
【0049】
R9は直接結合または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいてもよい)であるが、直接結合である場合には、ハロゲン原子の結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物になる。この場合、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R10として−COO−やフェニレン基などを有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R9が直接結合でない場合、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R10としては−COO−、−CO−、フェニレン基が好ましい。
【0050】
一般式(3)で表わされる化合物の具体例としては、たとえば
CH2=CHCH2X、CH2=C(CH3)CH2X、
CH2=CHCHX−CH3、CH2=C(CH3)CHX−CH3、
CH2=CHCX(CH3)2、CH2=CHCHX−C2H5、
CH2=CHCHX−CH(CH3)2、CH2=CHCHX−C6H5、
CH2=CHCHX−CH2C6H5、CH2=CHCH2CHX−CO2R、
CH2=CH(CH2)2CHX−CO2R、
CH2=CH(CH2)3CHX−CO2R、
CH2=CH(CH2)8CHX−CO2R、CH2=CHCH2CHX−C6H5、
CH2=CH(CH2)2CHX−C6H5、
CH2=CH(CH2)3CHX−C6H5、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基)
などがあげられる。
【0051】
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例としては、たとえば
o−,m−,p−CH2=CH−(CH2)n−C6H4−SO2X、
o−,m−,p−CH2=CH−(CH2)n−O−C6H4−SO2X、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)などがあげられる。
【0052】
前記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物にはとくに限定はなく、その例としては、たとえば一般式(4):
R6R7CX−R8−R9−CH(R5)−CH2−[Si(R11)2-b(Y)bO]m−Si(R12)3-a(Y)a (4)
(式中、R5、R6、R7、R8、R9、Xは前記に同じ、R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11またはR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3、bは0、1または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)
で表わされる化合物が例示される。
【0053】
一般式(4)で表わされる化合物の具体例としては、たとえば
XCH2COO(CH2)nSi(OCH3)3、
CH3CHX−COO(CH2)nSi(OCH3)3、
(CH3)2CX−COO(CH2)nSi(OCH3)3、
XCH2COO(CH2)nSi(CH3)(OCH3)2、
CH3CHX−COO(CH2)nSi(CH3)(OCH3)2、
(CH3)2CX−COO(CH2)nSi(CH3)(OCH3)2、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、nは0〜20の整数)
XCH2COO(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
H3CCHX−COO(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
(H3C)2CX−COO(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
CH3CH2CHX−COO(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
XCH2COO(CH2)nO(CH2)mSi(CH3)(OCH3)2、
H3CCHX−COO(CH2)nO(CH2)mSi(CH3)(OCH3)2、
(H3C)2CX−COO(CH2)nO(CH2)mSi(CH3)(OCH3)2、
CH3CH2CHX−COO(CH2)nO(CH2)mSi(CH3)(OCH3)2、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、mは0〜20の整数、nは1〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)2Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CHX−C6H4−(CH2)2Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2CHX−C6H4−(CH2)2Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CHX−C6H4−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2CHX−C6H4−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CHX−C6H4−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2CHX−C6H4−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CHX−C6H4−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2CHX−C6H4−O−(CH2)3−Si(OCH3)3、o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)2−O−(CH2)3−Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CHX−C6H4−O−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2CHX−C6H4−O−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子)
などがあげられる。
【0054】
前記記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては、さらに、一般式(5):
(R12)3-a(Y)aSi−[OSi(R11)2-b(Y)b]m−CH2−CH(R5)−R9−CX(R6)−R10−R7 (5)
(式中、R5、R7、R8、R9、R10、R11、R12、a、b、m、X、Yは前記に同じ)で示される化合物が例示される。
【0055】
前記化合物の具体例としては、たとえば
(CH3O)3SiCH2CH2CHX−C6H5、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CHX−C6H5、
(CH3O)3Si(CH2)2CHX−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)2CHX−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)3CHX−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)3CHX−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)4CHX−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)4CHX−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)9CHX−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)9CHX−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)3CHX−C6H5、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)3CHX−C6H5、
(CH3O)3Si(CH2)4CHX−C6H5、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)4CHX−C6H5、
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基)
などがあげられる。
【0056】
前記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物にはとくに限定はなく、たとえば一般式:
HO−(CH2)n−O−CO−CHX(R)
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、nは1〜20の整数)
で表わされる化合物が例示される。
【0057】
前記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物にはとくに限定はなく、たとえば一般式:
H2N−(CH2)n−OCO−CHX(R)
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、nは1〜20の整数)
で表わされる化合物が例示される。
【0058】
前記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物にはとくに限定はなく、たとえば一般式:
【0059】
【化3】
【0060】
(前記式中、Xは塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、nは1〜20の整数)
で表わされる化合物が例示される。
【0061】
反応性官能基を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。
【0062】
前記開始剤の具体例としては、たとえば
【0063】
【化4】
【0064】
【化5】
【0065】
などがあげられる。
【0066】
前記重合触媒である遷移金属錯体としては、たとえば周期律表第7族、第8族、第9族、第10族または第11族元素、好ましくは第8族、第9族、第10族または第11族元素を中心金属とする金属錯体が用いられる。
【0067】
前記中心金属としては、たとえば鉄、ニッケル、ルテニウム、銅などがあげられ、さらには、たとえば1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄が好ましい。とくに銅が好ましい。
【0068】
前記遷移金属錯体を構成する金属化合物(配位子が配位する前の化合物)の具体例としては、たとえば塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、酢酸第一銅、過塩素酸第一銅などがあげられる。
【0069】
前記遷移金属錯体を構成する金属化合物と配位する配位子としては、たとえば2,2’−ビピリジル 、その誘導体、1,10−フェナントロリン、その誘導体、トリブチルアミンなどのアルキルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミンなどのポリアミン、トリフェニルホスフィンなどがあげられる。これらは単独で使用してもよく2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちではポリアミン、さらにはトリアミンが反応制御の面から好ましい。
【0070】
前記遷移金属錯体を構成する金属化合物として銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、通常、2,2’−ビピリジル 、その誘導体、1,10−フェナントロリン、その誘導体、トリブチルアミンなどのアルキルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラアミンなどのポリアミンなどの配位子が添加され、遷移金属錯体とされる。
【0071】
また、前記遷移金属錯体を構成する金属化合物として二価の塩化ルテニウムを用いる場合、通常、トリフェニルホスフィンなどの配位子が添加され、トリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)などの遷移金属錯体とされる。
【0072】
前記トリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2(PPh3)3)を使用する場合、その活性を高めるためにトリアルコキシアルミニウムなどのアルミニウム化合物を添加するのが好ましい。
【0073】
さらに、前記遷移金属錯体を構成する金属化合物として二価の塩化鉄を用いる場合、通常、トリフェニルホスフィンなどの配位子が添加され、トリストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2(PPh3)3)などの遷移金属錯体とされる。
【0074】
前記溶媒としては、たとえばベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などがあげられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでは、触媒安定性向上の効果などの点から、ニトリル系溶媒が好ましく、アセトニトリルがより好ましい。
【0075】
本発明1においては、重合溶媒中、重合開始剤および重合触媒である遷移金属錯体の存在下、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なってビニル系重合体が製造される。
【0076】
前記重合は、リビング重合であるため、ビニル系モノマーの逐次添加によりブロック共重合体を製造することも可能である。
【0077】
前記重合は、無溶媒または各種の溶媒中で行なうことができるが、本発明1の重合は溶媒中で行なわれる。また、エマルジョン系または超臨界流体CO2を媒体とする系においても重合を行なうことができる。
【0078】
前記重合における重合溶媒、重合開始剤、重合触媒である遷移金属錯体、配位子、ビニル系モノマーの使用割合には、とくに限定はないが、重合開始剤1molに対して、重合触媒0.1〜5mol、さらには0.5〜2molであるのが、重合制御の点から好ましい。遷移金属錯体として銅化合物を使用する場合には、通常の原子移動ラジカル重合の条件では、遷移金属の配位座の数と、配位子の配位する基の数から決定され、ほぼ等しくなるように設定されている。たとえば、通常、2,2’−ビピリジルおよびその誘導体を銅化合物に対して加える量がモル比で2倍であり、ペンタメチルジエチレントリアミンの場合はモル比で1倍である。本発明の場合は、とくに限定されないが、金属原子が配位子に対して過剰になる方が好ましい。配位座と配位する基の比は好ましくは1.2倍以上であり、さらに好ましくは1.4倍以上であり、とくに好ましくは1.6倍以上であり、特別に好ましくは2倍以上である。
【0079】
また、重合開始剤とビニル系モノマーの割合は、製造しようとするビニル系重合体の分子量により異なるため一概に決められないが、通常、重合開始剤1molに対して、ビニル系モノマー5〜1000mol、さらには10〜500molである。さらに溶媒を使用する場合、前記重合溶媒の使用量は、重合系の触媒の溶解量または触媒の分散状態をよくする量であることが好ましく、具体的には、ビニル系モノマー100部に対して、0.1〜300部、さらには1〜100部、最も好ましくは5〜30部である。
【0080】
前記のごとき割合になるように重合容器中に重合溶媒、重合開始剤および重合触媒である遷移金属錯体を仕込み、これらの存在下、ビニル系モノマーを滴下するごとき方法によりビニル系重合体が製造される。
【0081】
前記重合の温度は、室温〜200℃、さらには50〜150℃であるのが、反応制御の面から好ましい。
【0082】
製造されたビニル系重合体は、原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体であるが、原子移動ラジカル重合状態でない状態にした場合の数平均分子量は、通常、500〜100000、分子量分布の値が1.8未満である。
【0083】
前記ビニル系重合体が、(メタ)アクリル系重合体であるのが好ましく、アクリル酸エステル系重合体であるのがさらに好ましく、アクリル酸ブチル系重合体であるのがとくに好ましい。
【0084】
前記(メタ)アクリル系重合体というのは、(メタ)アクリル系モノマー単位を50%以上、さらには80%以上含有し、その他のビニル系モノマー単位を50%以下、さらには20%以下含有する重合体である。
【0085】
また、前記アクリル酸エステル系重合体というのは、アクリル酸エステル系モノマー単位を50%以上、さらには80%以上含有し、その他のモノマー単位を50%以下、さらには20%以下含有する重合体である。
【0086】
さらに、前記アクリル酸ブチル系重合体というのは、アクリル酸ブチル単位を50%以上、さらには80%以上含有し、その他のモノマー単位を50%以下、さらには20%以下含有する重合体である。
【0087】
本発明1では、前記のようにしてビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒が減圧留去せしめられる。この際、重合溶媒とともに、未反応ビニル系モノマーも回収される。
【0088】
前記減圧留去の温度は、150℃以下、のぞましくは100℃以下、さらにのぞましくは80℃以下である。
【0089】
前記回収は、常圧脱揮留去法または減圧脱揮留去法などにより行なうことができる。重合に引き続き、同じ温度で脱揮留去を実施すれば、新たな昇温の必要がなく、製造上も有利である。
【0090】
重合溶媒の脱揮留去は、バッチ式に実施するのが最も簡単であるが、薄膜蒸発機などを使用して連続的に重合溶媒の脱揮留去を行なうのが、製法上有利である。
【0091】
なお、前記重合溶媒の回収後も原子移動ラジカル重合状態を有するビニル系重合体とするためには、重合溶媒の回収の際に、重合触媒の活性低下の原因となる酸素の混入を避けることが必要である。
【0092】
回収された重合溶媒およびビニル系モノマーには、これら以外の成分が実質的に含まれていないため、次回のビニル系重合体の製造原料として、そのままあるいは簡単な処理(たとえばビニル系モノマー含量の調整など)のみでリサイクルすることができる。
【0093】
このようにして製造される原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体に含有される重合溶媒の量は、通常、モノマーに対して重量比で5〜20%程度であり、また、含有される未反応のビニル系モノマーの量は、通常、重量比で1〜5%程度である。
【0094】
本発明2では、前記のごとく、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合によりビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒を減圧留去し、ついで官能基導入剤を添加することにより官能基が導入される。官能基導入剤を添加する際に、官能基導入用溶媒(官能基導入時の溶媒に同じ)を合わせて加えてもよい。
【0095】
前記のごとく、官能基導入剤の添加前に重合溶媒が減圧留去せしめられ、残存するビニル系モノマーも留去せしめられているため、添加された官能基導入剤が原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体と反応する。この結果、ビニル系重合体の末端に官能基導入剤がほぼ1つづつ付加し、1つの官能基が重合体の末端に導入される。
【0096】
なお、前記原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体と官能基導入剤との反応は、リビング的に反応が進行するため、前記原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体に含まれる前記金属錯体により触媒される。
【0097】
前記官能基導入剤の添加前に重合溶媒が減圧留去されるまでは、本発明1と同じであるので説明は省略する。
【0098】
前記官能基導入剤としては、重合性の低い官能基を2つ持つ官能基導入剤を過剰量添加することが、末端に官能基を導入する点から好ましい。
【0099】
前記官能基導入剤の添加量にはとくに限定はないが、重合性の低い官能基を有する化合物を用いるのが好ましいため、反応速度を高めるためには、添加量を増やすことが好ましい。一方、コストを低減するためには、添加量は成長末端に対して等量に近い方が好ましい。それゆえ、状況にあわせて適宜調整するのが好ましい。
【0100】
たとえば、末端にアルケニル基を導入するために重合性の低いアルケニル基を2つ以上持つ化合物を添加する場合の添加量は、重合成長末端に対して2倍程度過剰量であるのが好ましい。等量以下の場合、2つのオレフィンの両方ともが反応し、重合末端をカップリングしてしまう可能性がある。2つのオレフィンの反応性が等しい化合物の場合、カップリングが起こる確率は、過剰に添加する量に応じて統計的に決まってくる。それゆえ、重合末端基の量の1.5倍量以上、さらには3倍量以上、とくには5倍量以上であるのが好ましい。上限は、系内極性の点から、10倍量であるのが好ましい。
【0101】
過剰に添加した官能基導入剤は、回収してリサイクル使用することが工業上極めて大きな意味を持つ。本発明2では、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合によりビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒を減圧留去し、ついで官能基導入剤を添加するため、添加した官能基導入剤が重合溶媒や未反応のビニル系モノマーと混合することがなく、回収物のリサイクルのために官能基導入剤と重合溶媒や未反応のビニル系モノマーとを分離する必要がない。しかし、従来の方法では、官能基導入剤を回収する際に重合溶媒も一緒に回収されるため、両者を分離することが必要になる。
【0102】
前記官能基導入剤としては、原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体に付加する官能基と、該ビニル系重合体に導入したい官能基とを有する化合物である限り特別な限定はないが、具体例としては、たとえば1,7−オクタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、アリルアルコール、ペンテノール、ヘキセノールなどがあげられる。
【0103】
前記官能基導入用溶媒は、重合性の低い官能基を有する官能基導入剤を添加する場合、官能基導入剤の種類によっては、反応系の極性が低下して触媒活性が不充分になる場合がある。このとき、重合性の低い官能基を有する官能基導入剤よりも極性の高い官能基導入用溶媒を添加することで極性を向上させることができ、反応性を向上させることができる。
【0104】
前記官能基導入用溶媒にはとくに限定はないが、好ましい具体例としては、たとえばベンゼン、トルエンなどの炭化水素系化合物;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系化合物;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどのアルコール系化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系化合物;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系化合物、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系化合物などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、重合溶媒として使用した溶媒と同じであってもよいし、異なっていてもよいが、反応後の回収を考慮すると、同じであるほうが好ましい。また、前記官能基導入用溶媒の誘電率としては、官能基導入剤より3以上、さらには5以上、ことには10以上高いことが好ましい。該誘電率が高い方が、より極性改善の効果を見込むことができる。なお、前記誘電率は20℃での値である。
【0105】
前記官能基導入用溶媒のうちでは、触媒安定性を向上させるなどの点から、ニトリル系化合物が好ましく、なかでもアセトニトリルが好ましい。
【0106】
前記官能基導入用溶媒の使用量としては、反応設定時のビニル系単量体100重量部(以下、部という)に対して1〜1000部、さらには5〜500部、とくには10〜100部であるのが好ましく、官能基導入剤100部に対する量としては1〜10000部、さらには10〜1000部であるのが好ましい。官能基導入時の溶媒の使用量が少なすぎると、極性向上の効果が充分発揮されないことがあり、また、多すぎると、重合後、重合体からの回収が困難になるおそれがある。
【0107】
前記官能基が導入されたのち、未反応の官能基導入剤および溶媒の減圧留去などの処理をすることにより、原子移動ラジカル重合状態を保った官能基導入ビニル系重合体が、原子移動ラジカル重合状態を保たない官能基導入ビニル系重合体に変換される。そののち、触媒の除去などの重合体の後処理を実施することにより、原子移動ラジカル重合状態を保たない官能基導入ビニル系重合体を取り出すことができる。
【0108】
本発明3では、官能基導入後、原子移動ラジカル重合状態を保った官能基導入ビニル系重合体を、原子移動ラジカル重合状態を保たない官能基導入ビニル系重合体に変換する前に、過剰な官能基導入剤および官能基導入時溶媒が回収される。
【0109】
前記回収は、通常、減圧留去により行なわれ、重合体の耐熱性に問題がなければ、官能基導入反応温度以上に昇温し、留去速度を向上させることもできる。これらの化合物は反応釜から直接、減圧留去することもできるが、薄膜蒸発器などの連続蒸発方式により効率的に減圧留去することもできる。減圧留去などにより回収された溶媒は、重合溶媒とは別に、官能基導入時の官能基導入剤と官能基導入時溶媒の混合物としてリサイクルすれば、重合溶媒とは区別してリサイクルすることができる。この際、官能基導入により消失した分の官能基導入剤のみを追加すればよい。
【0110】
前記末端に官能基を持つビニル系重合体は、様々な架橋反応を利用した硬化性組成物に使用することができる。
【0111】
たとえば末端にアルケニル基を有する重合体を使用することにより、(A)アルケニル基を有する重合体、(B)ヒドロシリル基含有化合物を含有する硬化性組成物を製造することができる。
【0112】
(A)成分の末端にアルケニル基を有するビニル系重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0113】
(A)成分の分子量にはとくに制限はないが、数平均分子量で約500〜100000、さらには3000〜40000であるのが好ましい。前記分子量が約500未満の場合、ビニル系重合体の本来の特性が発現されにくくなり、約100000をこえる場合、非常に高粘度または溶解性が低くなり、取り扱いが困難になる。
【0114】
前記組成物から得られる硬化物の具体的な用途としては、たとえばシーリング剤、接着剤、粘着剤、弾性接着剤、塗料、粉体塗料、発泡体、電気電子用ポッティング剤、フィルム、成形材料、人工大理石などがあげられる。
【0115】
前述のごとく、本発明によると、末端に官能基を有するビニル系重合体を製造することができるが、その際、重合後に原子移動ラジカル活性を維持したまま重合溶媒を高収率で回収し、リサイクルすることができる。重合溶媒の回収後、官能基導入のために官能基導入剤を添加し、官能基導入後に官能基導入剤を高収率で回収し、リサイクルすることができる。官能基導入の際に溶媒を用いてもよい。すなわち、本発明によると、重合体末端に官能基が制御された状態で導入することができ、また、過剰に仕込んだ官能基導入剤のリサイクルも可能であり、製造上有利に末端に官能基を有する重合体を製造することができる。さらに、得られた末端に官能基を有する重合体は、ヒドロシリル化やエポキシ化などの適当な官能基変換や架橋剤の添加により、硬化性組成物とすることができる。
【0116】
【実施例】
以下に、本発明を具体的な実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0117】
比較例1(アルケニル末端ビニル系重合体の製造)
還流管および攪拌機付500ml丸底フラスコに、CuBr2.51g(17.55mmol)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル33.56mlを加え、オイルバス中、80℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸ブチル335.6ml(2.34mol)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル3.51g(9.76mmol)を加え、さらに、80℃で25分間撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン0.1222ml(0.59mmol)を加え、反応を開始した。反応開始から150分後、1,7−オクタジエン12.9ml(0.0872mol)を添加してさらに360分間撹拌を続けた。また、オクタジエン添加から90分後、180分後、270分後に、ペンタメチルジエチレントリアミンを合計1.22ml追加した。
【0118】
反応混合物に対して体積比で3倍のトルエンを加えて希釈し、固形分を濾別することにより、アルケニル基末端重合体(重合体1)を含む溶液(重合体溶液1’)を得た。
【0119】
重合体1は、GPC測定(ポリスチレン換算)による数平均分子量が30600、分子量分布が1.28であり、重合体1分子あたりに導入された平均のアルケニル基の数を1H NMR分析により求めたところ、2.28個であった。
【0120】
実施例1(アルケニル末端ビニル系重合体の製造)
還流管および攪拌機付500ml丸底フラスコに、CuBr2.51g(17.55mmol)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル33.56mlを加え、オイルバス中、80℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸ブチル335.6ml(2.34mol)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル3.51g(9.76mmol)を加え、さらに、80℃で25分間撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン0.1222ml(0.59mmol)を加え、反応を開始した。反応開始から150分後、80℃で真空ポンプを用いて反応容器を徐々に減圧とし、アセトニトリルおよび未反応のアクリル酸ブチルを回収した(最終的には5Torr(約666.6Pa)まで減圧した)。1時間減圧脱揮を継続し、ポリマー中のアセトニトリルがガスクロマトグラフィーでNDとなったのを確認したうえで、1,7−オクタジエン12.9ml(0.0872mol)と重合時点と等量のアセトニトリルを添加した。1,7−オクタジエンの添加から360分間撹拌を続けた。また、1,7−オクタジエン添加から90分後、180分後、270分後にペンタメチルジエチレントリアミンを合計1.22ml追加した。1,7−オクタジエン添加360分後に、真空ポンプにて反応容器を減圧とし、アセトニトリルおよび未反応の1,7−オクタジエンを回収した。
【0121】
反応混合物に対して体積比で3倍のトルエンを加えて希釈し、固形分を濾別することにより、アルケニル基末端重合体(重合体2)を含む溶液(重合体溶液2’)を得た。
【0122】
重合体2は、GPC測定(ポリスチレン換算)により数平均分子量が31000、分子量分布が1.33であり、重合体1分子あたりに導入された平均のアルケニル基の数を1H NMR分析により求めたところ、2.3個であった。
【0123】
実施例2(アルケニル末端ビニル系重合体の製造)
還流管および攪拌機付100ml丸底フラスコに、CuBr0.375g(2.62mmol)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。実施例1で脱揮回収したアセトニトリル5.0mlを加え、オイルバス中、80℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸ブチル50ml(0.349mol)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.78g(2.18mmol)を加え、さらに、80℃で25分間撹拌した。これにペンタメチルジエチレントリアミン0.0182ml(0.09mmol)を加え、反応を開始した。反応開始から150分後、真空ポンプにて反応容器を減圧とし、アセトニトリルおよび未反応のアクリル酸ブチルを回収した。1時間減圧脱揮を継続し、ポリマー中のアセトニトリルがガスクロマトグラフィーでNDとなったのを確認したうえで、実施例1で脱揮回収した1,7−オクタジエンとアセトニトリルの混合液計11.4mlを添加し、360分間撹拌を続けた。また、1,7−オクタジエンとアセトニトリル混合液の添加から90分後、180分後、270分後にペンタメチルジエチレントリアミンを合計0.0273ml追加した。
【0124】
反応混合物に対して体積比で3倍のトルエンを加えて希釈し、固形分を濾別することにより、アルケニル基末端重合体(重合体3)を含む溶液(重合体溶液3’)を得た。
【0125】
重合体3は、GPC測定(ポリスチレン換算)による数平均分子量が31200、分子量分布が1.42であり、重合体1分子あたりに導入された平均のアルケニル基の数を1H NMR分析により求めたところ、2.6個であった。
【0126】
【発明の効果】
本発明では、原子移動ラジカル重合により製造されるビニル系重合体の重合後に、原子移動ラジカル活性を維持したまま、重合溶媒を減圧留去などの方法で回収し、そののち、官能基導入剤を添加して重合末端に官能基を導入したのち、官能基導入剤を回収・リサイクルすることで、共沸するため分離してリサイクルすることが困難である、重合溶媒と重合性の低い官能基を併せもつ化合物とをそれぞれ別に回収することができ、重合溶媒および官能基導入剤をそれぞれ高収率で回収、リサイクルすることができる。
【0127】
また、本発明では、官能基導入時に溶媒を用いる場合でも、官能基導入剤と溶媒を混合物として回収し、反応により減少した分の官能基導入剤のみを添加し、官能基導入剤と官能基導入時の溶媒を混合物としてリサイクルすることで高収率に両者をリサイクルすることができる。
【0128】
さらに、本発明では、重合溶媒の減圧留去などの方法での回収の際に、微量に残存する重合性モノマーも一緒に回収されるため、官能基導入時の重合性モノマーの存在による官能基導入率のばらつきが抑えられる。
Claims (16)
- 重合溶媒中、重合開始剤、および重合触媒である遷移金属錯体の存在下、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なってビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒を減圧留去し、ついで官能基導入剤を添加して官能基を導入することを特徴とする官能基導入ビニル系重合体の製造方法。
- 重合溶媒中、重合開始剤、および重合触媒である遷移金属錯体の存在下、ビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行なってビニル系重合体を製造したのち、原子移動ラジカル重合状態を保ったまま重合溶媒を減圧留去し、ついで官能基導入剤を添加して官能基を導入したのち、官能基導入剤または官能基導入剤および官能基導入時の溶媒の混合物を減圧留去することを特徴とする官能基導入ビニル系重合体の製造方法。
- 減圧留去した重合溶媒を回収し、重合溶媒として再利用する請求項1または2記載の製造方法。
- 減圧留去した官能基導入剤または官能基導入剤および官能基導入時の溶媒の混合物を回収し、官能基導入剤または官能基導入剤および官能基導入時の溶媒の混合物として再利用する請求項2記載の製造方法。
- 原子移動ラジカル重合状態を保ったビニル系重合体と官能基導入剤との反応が前記遷移金属錯体により触媒される請求項1または2記載の製造方法。
- 官能基がビニル系重合体の分子鎖末端に導入される請求項1、2、3、4または5記載の製造方法。
- ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である請求項1、2、3、4、5または6記載の製造方法。
- ビニル系重合体がアクリル酸エステル系重合体である請求項1、2、3、4、5、6または7記載の製造方法。
- ビニル系重合体がアクリル酸ブチル系重合体である請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の製造方法。
- ビニル系重合体の数平均分子量が500〜100000である請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の製造方法。
- ビニル系重合体の分子量分布の値が1.8未満である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10記載の製造方法。
- 遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、第9族、第10族または第11族元素である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11記載の製造方法。
- 遷移金属錯体の中心金属が、鉄、ニッケル、ルテニウムまたは銅である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12記載の製造方法。
- 遷移金属錯体の中心金属が銅である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13記載の製造方法。
- 遷移金属錯体の配位子がポリアミン化合物である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14記載の製造方法。
- 遷移金属錯体の配位子がトリアミン化合物である請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15記載の製造方法。
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