JP3956250B2 - 噴流はんだ槽 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント基板、特にチップ部品搭載のプリント基板を溶融はんだではんだ付けするに適した噴流はんだ槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時の電子機器は、軽薄短小の傾向から非常に小型化されてきており、それに使用する電子部品も小型となってきている。この小型の電子部品はチップ部品と呼ばれており、チップ部品をプリント基板に実装するには一般にソルダペーストではんだ付けすることにより行っている。このソルダペーストとは、粉末はんだとクリーム状のフラックスを混練して作製したものであるが、粉末はんだの製造やフラックスとの混練作業に多大な手間がかかるため、材料費が非常に高価となっている。従って、テレビ、ビデオ、ラジカセのように比較的安価な家電製品のプリント基板にチップ部品を実装する場合、ソルダペーストを用いてはんだ付けしていたのでは価格が高騰となってしまう。そこで家電製品のプリント基板にチップ部品を実装する場合は材料費が安価で、しかも大量生産が可能な浸漬はんだ付け法で行っている。
【0003】
浸漬はんだ付け法とは、プリント基板をフラクサー、プレヒーター、噴流はんだ槽、冷却機、等の処理装置が設置された自動はんだ付け装置ではんだ付けする方法である。
【0004】
ここで自動はんだ付け装置によるプリント基板のはんだ付けについて簡単に説明する。
【0005】
自動はんだ付け装置では、プリント基板を自動はんだ付け装置の搬送装置で搬送しながらフラクサーでフラックス塗布、プリヒーターで予備加熱、噴流はんだ槽で溶融はんだの付着、冷却機でプリント基板に付着した溶融はんだの冷却を行うようになっている。
【0006】
自動はんだ付け装置の噴流はんだ槽には、荒れた波を噴流する一次噴流ノズルと穏やかな波を噴流する二次噴流ノズルが設置されている。この一次噴流ノズルの荒れた波は溶融はんだの侵入しにくい箇所に溶融はんだを侵入させて未はんだをなくすものであり、二次噴流ノズルの穏やかな波は一次噴流ノズルの荒れた波で形成されたブリッジやツララ等を修正するものである。
【0007】
ところでチップ部品をプリント基板のはんだ付け面に搭載して浸漬法ではんだ付けした場合、チップ部品が直方体であるため、プリント基板のはんだ付け部であるパターンとチップ部品の電極部が直角の隅部となってしまう。プリント基板のはんだ付け部がこのように隅部となったプリント基板を噴流はんだ槽ではんだ付けすると、ノズルから噴流する溶融はんだが隅部に侵入できず未はんだとなってしまうことがあった。そのためチップ部品を搭載したプリント基板のはんだ付けでは、荒れた波を作る噴流はんだ槽が必ず必要なものであった。
【0008】
従来より、荒れた波を作る噴流ノズルは多数提案されていた。荒れた波を作る例としては、ノズル内で外部からの動力により揺動体を回転させたり往復動させたりするもの(特公昭62−46270号、特公平5−85262号)、ノズル内に多孔板を設置したもの(特公昭63−150636号)、ノズル内に両端を引っ張りバネで保持したもの(特公平1−59073号)等がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
これらの噴流はんだ槽は、チップ部品を搭載したプリント基板に対して未はんだの解消に効果はあるものの別の問題を生じるものであった。例えば外部から動力で遊動体を動かして荒れた波を作るノズルは、モーターを熱いはんだ槽近くに設置するため、モーターの寿命が短くなったり、はんだ槽の温度変化によりモーターの回転数が変化して噴流状態が変わってしまったりすることがあった。
【0010】
またノズルに多孔板を設置した噴流はんだ槽では、多孔板の穴にはんだの酸化物が付着しやすく、長時間使用している間に穴の大きさが変わるため、やはり噴流状態も変わってしまうことがあった。
【0011】
ノズル内に設置した遊動体をバネで保持した噴流ノズル(以下、バネ遊動式噴流ノズルという)は、遊動体が常に噴流するはんだで動かされているため、遊動体に酸化物が付着しにくく、しかも外部から動力を必要としないためモーターの回転数の変化による噴流状態の変化が起こらないないという他の噴流はんだ槽にない優れた特長を有している。
【0012】
しかしながら、従来のバネ遊動式噴流はんだ槽は、チップ部品の隅部へのはんだの侵入が充分ではなく、近時のようにチップ部品が高密度に実装されたプリント基板では未はんだを発生させることが稀にあった。本発明はバネ遊動式噴流ノズルにおいて、従来のものよりもチップ部品隅部への溶融はんだの侵入がしやすく、高密度実装のプリント基板でも完全に未はんだを無くすことができるという噴流はんだ槽を提供するこにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来のバネ遊動式噴流ノズルにおいて未はんだができる原因について鋭意研究を重ねた結果、遊動体が単なる棒状であったため、遊動体の近くを流れる溶融はんだは遊動体に対する影響が少なく、その結果ノズルから噴流する波があまり荒れないことが分かった。
【0014】
そこで本発明者は、溶融はんだの遊動体に対する影響を高めることができれば、ノズルから噴流する溶融はんだの波は大きく荒れることに着目して本発明を完成させた。
【0015】
本発明は、一次噴流ノズルと二次噴流ノズルが設置され、一次噴流ノズルにはノズル内に長手方向にわたって棒状の遊動体が設置されていて、しかも該遊動体の両端がバネで保持されている噴流はんだ槽において、前記遊動体には遊動体の両側を通過する溶融はんだの勢いを相違させることにより遊動体を大きく動かすことのできる多数の凹凸がノズルの巾方向に向けて両側に互い違いに付されていることを特徴とする噴流はんだ槽である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明で遊動体に付す凹凸は、図1〜4に示すように棒状の遊動体の両側に互い違いに溝を刻設したもの、或いは図5、6に示すように棒状の遊動体を互い違いに屈曲させたもの等が採用できる。棒状の遊動体を互い違いに屈曲させたものは、片側に出た山部が凸部、片側に引っ込んだ谷部が凹部となり、ノズルの巾方向に向かって両側に山部と谷部が互い違いに形成されている。
【0017】
本発明で遊動体を保持するバネは、遊動体を張設する引っ張りバネ、或いは遊動体の上下方向への動きを拘束し横方への動きだけを行うことができる板バネでもよい。板バネを用いる場合は、波状にした板バネを縦方向にしたり、縦方向にした板バネの一端を自由状態にして横方の動きだけを行わしめるようにするとよい。
【0018】
また本発明で使用する遊動体は、断面が丸でもよいが、その他断面が矩形、楕円形、三角形、菱形等如何なる形状のものでも使用可能である。
【0019】
【実施例】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。図1は本発明噴流はんだ槽の一次噴流ノズルの一部破断斜視図、図2は本発明噴流はんだ槽に使用する遊動体の拡大斜視図、図3は同平面図、図4は同側面断面図、図5は他の実施例に使用する遊動体の平面図、図6は同側面断面図である。
【0020】
噴流はんだ槽には、一次噴流ノズル1と図示しない二次噴流ノズルが設置されている。一次噴流ノズル1のノズル2は、長手方向両側にある一対のノズル板3、3とその両端にある一対の側板4、4から構成されている。
【0021】
側板4、4にはノズル上端から少し下がったところ、即ちノズル内となるところに穴5、5が穿設されている。該穴と一致した側板4の外側には取り付け板6、6を介してバネケース7、7が設置されている。
【0022】
バネケース7はコ字型で端部の開放した部分が穴5と一致し、もう一方の端部には穴が穿設され、該穴には穴の径よりも少し小径のネジ8が摺動自在に挿入されている。ネジ8の先端には引っ張りバネ9が係合されており、バネケース7の外側には位置決めナット10が螺入されている。
【0023】
ノズル2内には長手方向に遊動体11が設置されている。遊動体11は両端が側板4の穴5を挿通してバネケース7内まで挿入されており、遊動体11の端部は前述引っ張りバネ9に係合されている。遊動体11には、ノズルの巾方向に向けて互い違いに切り溝12が刻設されている。
【0024】
次に上記構成から成る本発明の噴流はんだ槽の噴流状態を説明する。
【0025】
溶融はんだがノズル2の下方から噴流されると、溶融はんだは遊動体11の両側を通過して上方に流動する。この流動する溶融はんだは遊動体11の溝12内と溝以外の丸い部分に沿って通過する。このとき溝12内を通過する溶融はんだは丸い部分に沿って通過する溶融はんだよりも速度が速いため、丸い部分に沿って通過する溶融はんだよりも高く噴流する。
【0026】
また溝11内を通過する溶融はんだと丸い部分に沿って通過する溶融はんだとは勢いが相違するため遊動体を横方に押す力も一様となっていない。これが遊動体の両側で起こるため遊動体は従来の単なる棒状のものよりも大きく動かされるようになり、その大きな動きにより溶融はんだも大きく荒れるようになる。
【0027】
ここで本発明の噴流はんだ槽と従来のバネ遊動式噴流ノズルを設置した噴流はんだ槽でプリント基板のはんだ付けを行った実験について説明する。はんだ付けするプリント基板は、はんだ付け箇所が2,000個所でチップ部品が200個搭載されたものであり、このプリント基板100枚のはんだ付けを行った。従って、プリント基板100枚のはんだ付け箇所は200,000箇所となる。本発明の噴流はんだ槽は、一次噴流ノズルのノズル巾が12mm、遊動体が直径6mmの丸棒に深さ2mm、横幅5mmの溝を5mm間隔で両側に互い違いに刻設したものである。また比較例の噴流はんだ槽は、一次噴流ノズルのノズル巾が8mm、遊動体が直径3mmの丸棒である。
【0028】
実験結果、本発明の噴流はんだ槽では未はんだが52個所、即ち52/200,000で0.0026%であったが、従来のバネ遊動式噴流ノズルを設置した噴流はんだ槽では未はんだ箇所が144個、即ち144/200,000で0.0072%であり、本発明の噴流はんだ槽は、不良率が従来のものよりも極めて少なくなっていることが分かる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の噴流はんだ槽はチップ部品を高密度に搭載したプリント基板のはんだ付けでも、チップ部品の隅部に溶融はんだを侵入させて未はんだを極端に少なくできるという信頼性に優れたはんだ付け部が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明噴流はんだ槽の一次噴流ノズルの一部破断斜視図
【図2】本発明噴流はんだ槽に使用する遊動体の拡大斜視図
【図3】図2の平面図
【図4】図2の側面断面図
【図5】他の実施例に使用する遊動体の平面図
【図6】図5の側面断面図
【符号の説明】
1 一次噴流ノズル
2 ノズル
3 ノズル板
4 側板
5 穴
7 バネケース
8 調節ネジ
9 バネ
11 遊動体
12 溝
Claims (3)
- 一次噴流ノズルと二次噴流ノズルが設置され、一次噴流ノズルにはノズル内に長手方向にわたって棒状の遊動体が設置されていて、しかも該遊動体の両端がバネで保持されている噴流はんだ槽において、前記遊動体には遊動体の両側を通過する溶融はんだの勢いを相違させることにより遊動体を大きく動かすことのできる多数の凹凸がノズルの巾方向に向けて両側に互い違いに付されていることを特徴とする噴流はんだ槽。
- 前記遊動体に付された凹凸は、遊動体の両側を互い違いに刻設した溝であることを特徴とする請求項1記載の噴流はんだ槽。
- 前記遊動体に付された凹凸は、遊動体を互い違いに屈曲させて形成された山部と谷部であることを特徴とする請求項1記載の噴流はんだ槽。
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