JP3952687B2 - 自動車のサスペンション装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、後輪を車体に懸架する自動車のサスペンション装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平7−315245号公報に示されるように、後輪用のサスペンション部材と、ディファレンシャル(差動歯車装置)とが取り付けられるサスペンションクロスメンバを、その側端部の前後二個所に設けられた弾性マウント部(円筒状の取付部)により、車体のリヤサイドフレームに取り付けることが行われている。
【0003】
また、例えば特開平4−238781号公報に示されるように、車体前部に配設されたパワーユニットと、車体後部に配設されたディファレンシャルとを剛体フレーム(パワープラントフレーム)で連結することにより、自動車の走行時に、駆動輪となる後輪から入力されたトルク反力に応じてディファレンシャルがワインドアップするのを効果的に抑制することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように車体前部に配設されたパワーユニットと、車体後部に配設されたディファレンシャルとを連結する剛体フレームを備えた自動車において、上記ディファレンシャルが取り付けられるサスペンションクロスメンバの前後両端部を、ゴム製ブッシュ等を有する弾性マウント部により車体に支持させた場合には、自動車の走行時に、上記剛体フレームを介してディファレンシャルに伝達されたパワーユニットのロール変位等に応じて上記サスペンションクロスメンバが揺動変位するのを効果的に抑制することができず、後輪のホイールアライメントが変化して走行安定性が低下し易いという問題がある。
【0005】
上記サスペンションクロスメンバの揺動変位を抑制して自動車の走行安定性を向上させるために、サスペンションクロスメンバを車体に取り付ける弾性マウント部のばね定数を大きな値に設定し、あるいは金属製ブッシュを有する剛性マウント部により、サスペンションクロスメンバを車体に対して強固に取り付けることも行われているが、このように構成した場合には、自動車の走行時に後輪等から車体に伝達される振動および騒音を効果的に低減することができず、自動車の乗り心地が悪くなることが避けられないという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、自動車の乗り心地を低下させることなく、パワーユニットの作動時にサスペンションクロスメンバが揺動変位するのを効果的に抑制することができる自動車のサスペンション装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、車体前部に配設されたパワーユニットを車体後部に配設されたディファレンシャルに連結する剛体フレームと、上記ディファレンシャルを支持するサスペンションクロスメンバと、このサスペンションクロスメンバを車体に取り付けるために車体前後方向に配設された複数個の弾性マウント部とを備え、この弾性マウント部を予圧縮した状態で、上記サスペンションクロスメンバと車体との間に設置するとともに、前方側の弾性マウント部の予圧縮量を、後方側の弾性マウント部よりも小さくしたものである。
【0008】
上記構成によれば、自動車の走行時に、後輪からサスペンションクロスメンバに入力された振動が弾性マウント部において遮断され、この振動が車室内に伝達されることが防止される。また、上記ディファレンシャルを支持するサスペンションクロスメンバに設けられた複数個の弾性マウント部が予圧縮されるとともに、前方側の弾性マウント部の予圧縮量を、後方側の弾性マウント部よりも小さく設定された状態でサスペンションクロスメンバと車体との間に設置されているため、パワーユニットの作動時に、剛体フレームを介してディファレンシャルに伝達された上記パワーユニットのロール変位等に対する上記サスペンションクロスメンバの支持剛性が、予圧縮量の大きい後方側の弾性マウント部において充分に確保されるとともに、自動車の走行時に、後輪から入力された振動が、予圧縮量の小さい前方側の弾性マウント部において遮断されて車室内に上記振動が伝達されることが効果的に防止されることになる。
【0009】
請求項2に係る発明は、車体前部に配設されたパワーユニットを車体後部に配設されたディファレンシャルに連結する剛体フレームと、上記ディファレンシャルを支持するサスペンションクロスメンバと、このサスペンションクロスメンバを車体に取り付けるために車体前後方向に配設された三個の弾性マウント部とを備え、この弾性マウント部を予圧縮した状態で、上記サスペンションクロスメンバと車体との間に設置するとともに、前方側の弾性マウント部の予圧縮量を最も小さくしたものである。
【0010】
上記構成によれば、パワーユニットの作動時に、剛体フレームを介してディファレンシャルに伝達された上記パワーユニットのロール変位等が、車体前後方向の三個所に設けられた弾性マウント部において効果的に支持されるとともに、自動車の走行時に、後輪から入力された振動が、予圧縮量が最も小さい前方側の弾性マウント部において遮断されて車室内に上記振動が伝達されることが効果的に防止されることになる。
【0011】
請求項3に係る発明は、上記請求項1または2に記載の自動車サスペンション装置において、ディファレンシャルをサスペンションクロスメンバに取り付けるための弾性マウント部を備え、このディファレンシャル用の弾性マウント部のばね常数を、予圧縮状態で設置されたサスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部のばね常数よりも小さな値に設定したものである。
【0012】
上記構成によれば、パワーユニットの作動時に、剛体フレームを介してディファレンシャルに伝達された上記パワーユニットのロール変位等が、上記ディファレンシャル用の弾性マウント部において遮断されるため、上記ロール変位等に応じたサスペンションクロスメンバの揺動変位が、さらに効果的に防止されるとともに、後輪からサスペンションクロスメンバに入力された振動が、上記ディファレンシャル用の弾性マウント部において遮断され、パワーユニットに伝達されることが防止されることになる。
【0013】
請求項4に係る発明は、上記請求項1または2に記載の自動車サスペンション装置において、サスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部に設けられた弾性マウント体を上下方向に圧縮することにより予圧縮力を付与したものである。
【0014】
上記構成によれば、サスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部に上下方向の予圧縮力が付与されることにより、上記弾性マウント部の上下方向における弾性係数が、水平方向に比べて大きな値に設定されるため、パワーユニットのロール変位等に対する上記サスペンションクロスメンバの支持剛性が充分に確保されるとともに、自動車の走行時に、後輪からサスペンションクロスメンバに入力された水平方向の振動が上記弾性マウント部において効果的に遮断されることになる。
【0015】
請求項5に係る発明は、上記請求項1または2に記載の自動車サスペンション装置において、車体前後方向に配設された3個の弾性マウント部のうち、中央および後方側に位置する弾性マウント部材の設置部に、サスペンション部材を配設したものである。
【0016】
上記構成によれば、車体前後方向の三個所に設けられた3個の弾性マウント部のうち中央および後方側に位置する弾性マウント部の設置部に、サスペンション部材を配設したため、自動車の旋回時等に上記サスペンション部材に入力された振動等が、上記サスペンションクロスメンバの側端部中央および後方側に配設された上記弾性マウント部において安定して支持されるとともに、車室に最も近い上記弾性マウント部において上記振動等が遮断されることにより、車室内に振動が伝達されることが効果的に防止される。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係る自動車のサスペンション装置を有するシャーシ構造を示し、同図において、1はフロントサスペンション、2はリヤサスペンション、3はパワートレインである。このパワートレイン3は、エンジンおよびトランスミッションからなるパワーユニット4と、このパワーユニット4によって回転駆動されるプロペラシャフト5と、このプロペラシャフト5の駆動力を後輪6の駆動軸7に伝達するディファレンシャル8とを有している。また、車体前部に配設された上記パワーユニット4と、車体後部に配設された上記ディファレンシャル8とが、断面コ字状部材、角パイプ材または丸パイプ材等からなる剛体フレーム9によって連結されている。
【0018】
図2および図3に示すように、車体後部には、車体の前方側に延びる左右一対のリヤサイドフレーム11と、このリヤサイドフレーム11に取り付けられた後輪6用のサスペンションクロスメンバ12とが設けられている。また、上記サスペンションクロスメンバ12には、後輪6を支持するロアアーム13,アッパアーム14およびトーコントロールリンク15からなるサスペンションアームと、ショックアブソーバ16とが支持されている。
【0019】
上記サスペンションクロスメンバ12は、車幅方向に延びる横架部17と、この横架部17の側端部から車体の後方に延びる側方部18とにより、平面から見てU字状に形成され、上記側方部18には、リヤサイドフレーム11に対して上記サスペンションクロスメンバ12を取り付けるための第1〜第3弾性マウント部19〜21が、車体前後方向の三個所に配設されている。上記第1〜第3弾性マウント部19〜21は、その取付中心A〜Cにより、車体の側面視において三角形が構成されるように配設されている。
【0020】
上記サスペンションクロスメンバ12用の第1〜第3弾性マウント部19〜21は、図4に示すように、円筒状のゴム製ブッシュからなる弾性マウント体22と、この弾性マウント体22の中心部に挿入されて固着されたスペーサ23と、上記弾性マウント体22に外嵌されたリテーナ24とが設けられている。
【0021】
そして、上記サスペンションクロスメンバ12に設けられた取付部25が上記第1〜第3弾性マウント部19〜21のリテーナ24に固着されるとともに、この第1〜第3弾性マウント部19〜21が取付ボルト27および取付板28によってリヤサイドフレーム11の下面に固定されることにより、上記第1〜第3弾性マウント部19〜21を介してサスペンションクロスメンバ12がリヤサイドフレーム11に連結されるように構成されている。
【0022】
上記弾性マウント体22の上下両端部には、図5に示すように、スペーサ23の端部よりも所定量だけ外方側に突出する突部29,30がそれぞれ設けられている。そして、上記両突部29,30が取付ボルト27の締着力に応じ、上記リヤサイドフレーム11および取付板28にそれぞれ圧接されて上下方向に圧縮されることにより、上記弾性マウント部19〜21がそれぞれ予圧縮された状態で、サスペンションクロスメンバ12とリヤサイドフレーム11との間に設置されるようになっている。
【0023】
また、車体の前方側に位置する第1弾性マウント部19の予圧縮量は、中央部および後方側に位置する第2,第3弾性マウント部20,21よりも小さな値に設定されることにより、上記第1弾性マウント部19のばね定数が最も小さくなるように構成されている。さらに、上記弾性マウント部19〜21の弾性マウント体22には、図6に示すように、空隙部31が前後に形成されるとともに、補強部材32が左右に埋設されることにより、車体前後方向のばね定数が、車体の左右方向に比べて相対的に小さな値に設定されている。
【0024】
上記ディファレンシャル8には、図2に示すように、車幅方向に延びる左右一対の支持アーム32が突設され、この支持アーム32の先端部に設けられたボス部33が弾性マウント部34を介してサスペンションクロスメンバ12に取り付けられている。上記弾性マウント部34には、図7に示すように、円筒状のゴム製ブッシュからなる弾性マウント体35と、この弾性マウント体35の中心部に挿入されて固着されたスペーサ36と、上記弾性マウント体35に外嵌されたリテーナ37とが設けられている。
【0025】
そして、上記支持アーム32の先端部が弾性マウント部34のリテーナ37に固着されるとともに、上記サスペンションクロスメンバ12に設けられた前後一対の取付ブラケット38の間に上記弾性マウント部34が設置された状態で、取付ボルト39によって上記取付ブラケット38に固定されることにより、この弾性マウント部34を介して上記ディファレンシャル8がサスペンションクロスメンバ12に取り付けられるようになっている。
【0026】
上記ディファレンシャル8用の弾性マウント部34は、その弾性マウント体35が予圧縮されることなく、上記支持アーム32とサスペンションクロスメンバ12との間に設置されるとともに、上記スペーサ36およびリテーナ37の軸芯が車体の前後方向に設置され、上記リテーナ37に固着された支持アーム32の先端部が前後方向に容易に変位するように構成されることにより、上記ディファレンシャル8用の弾性マウント部34の前後方向におけるばね定数が、上記サスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部19〜21の前後方向におけるばね定数よりも小さな値に設定されている。
【0027】
上記のように車体前部に配設されたパワーユニット4と、車体後部に配設されたディファレンシャル8とを連結する断面コ字状部材、角パイプ材または丸パイプ材等からなる剛体フレーム9と、上記ディファレンシャル8を支持するサスペンションクロスメンバ12と、このサスペンションクロスメンバ12をリヤサイドフレーム11からなる車体に取り付けるための弾性マウント部19〜21とを設けた場合には、後輪6からサスペンションクロスメンバ12に入力された振動を上記弾性マウント部19〜21において遮断することにより、上記振動が車室内に伝達されるのを効果的に防止できるとともに、後輪6から入力されたトルク反力に応じてディファレンシャル8がワインドアップするのを上記剛体フレーム9により効果的に抑制することができる。
【0028】
そして、上記のように弾性マウント部19〜21を予圧縮した状態で上記サスペンションクロスメンバ12とリヤサイドフレーム11との間に設置したため、上記パワーユニット4の作動時に、剛体フレーム9を介してディファレンシャル8に伝達されたパワーユニット4のロール変位等に対する上記サスペンションクロスメンバ12の支持剛性を充分に確保して、上記サスペンションクロスメンバ12が揺動変位することによるホイールアライメントの変化を効果的に抑制できるため、普通乗用車が有する優れた乗り心地と、スポーツカーが有する走行安定性とが同時に得られるという利点がある。
【0029】
特に、上記剛体フレーム9を角パイプ材または丸パイプ材等の閉断面部材により形成した場合には、剛体フレーム9がねじれ変形することによる放射音の発生を防止できるという利点を有する反面、上記パワーユニット4のロール変位等が上記剛体フレーム9を介してパワーユニット4に伝達され易いという欠点があるため、上記弾性マウント部19〜21を予圧縮した状態で上記サスペンションクロスメンバ12と車体との間に設置することによる上記効果が顕著に得られることになる。
【0030】
上記実施形態では、ディファレンシャル8をサスペンションクロスメンバ12に取り付けるため弾性マウント部34を設けるとともに、そのばね定数を、予圧縮状態で設置されたサスペンションクロスメンバ12用の弾性マウント部19〜21のばね定数よりも小さな値に設定したため、剛体フレーム9を介してディファレンシャル8に伝達されたパワーユニット4のロール変位を上記弾性マウント部34において遮断することにより、上記サスペンションクロスメンバ12の揺動変位を、さらに効果的に防止できるとともに、自動車の走行時に、後輪6からサスペンションクロスメンバ12に入力された振動を、上記ディファレンシャル8用の弾性マウント部34において遮断し、上記振動がパワーユニット4に伝達されるのを防止できるという利点がある。
【0031】
また、上記実施形態に示すように、サスペンションクロスメンバ12用の弾性マウント部19〜21に設けられた弾性マウント体22を上下方向に圧縮することにより予圧縮力を付与した構成によれば、上記弾性マウント部19〜21の上下方向における弾性係数を、水平方向に比べて大きな値に設定することにより、パワーユニット4のロール変位等に対する上記サスペンションクロスメンバ12の支持剛性を充分に確保することができるとともに、自動車の走行時に、後輪6からサスペンションクロスメンバ12に入力された水平方向の振動を上記弾性マウント部19〜21において遮断し、上記ディファレンシャル8およびパワーユニット4に上記振動が伝達されるのを効果的に防止することができる。
【0032】
そして、上記のように車体前後方向に複数の弾性マウント部19〜21を配設するとともに、車室に近い前方側の弾性マウント部19の予圧縮量を、後方側の弾性マウント部20,21よりも小さくした場合には、予圧縮量が大きいためにばね定数が大きな値に設定された後方側の弾性マウント部20,21によりサスペンションクロスメンバ12の支持剛性を充分に確保しつつ、自動車の走行時に、予圧縮量の小さい上記第1弾性マウント部19により、後輪6から入力された振動を遮断して車室内に上記振動が伝達されるのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0033】
なお、上記実施形態に示すように車体前後方向の三個所に弾性マウント部19〜21を配設した場合において、サスペンションクロスメンバ12の支持剛性を充分に確保しつつ、自動車の走行時に後輪6から入力された振動が車室内に伝達されるのを防止し得るようにするためには、上記第1弾性マウント部19の予圧縮量を、最も小さな値に設定することが好ましいが、中央部の第2弾性マウント部20および後方側の第3弾性マウント部21のばね定数については、いずれを大きくしてもよく、両者を同じ値に設定してもよい。
【0034】
また、上記のようにリヤサイドフレーム11からなる車体に対してサスペンションクロスメンバ12を取り付けるための第1〜第3弾性マウント部19,20,21を、車体前後方向の三個所に設けるとともに、これらの弾性マウント部19〜21を、車体の側面視において三角形を構成するように配設した場合には、自動車の旋回時に、上記サスペンションクロスメンバ12を変形させる方向に作用するモーメント荷重や、車体をロール変位させようとする荷重を、上記第1〜第3弾性マウント部19,20,21において効果的に支持できるという利点がある。
【0035】
例えば、上記サスペンションクロスメンバ12を前後二個所の弾性マウント部によりリヤサイドフレーム11に支持させるように構成した場合には、上記両弾性マウント部が一直線上に配列されるため、自動車の旋回時に、車体に対して作用する遠心力と、これに対応して後輪6に作用する反力とにより、上記両弾性マウント部の配列軸線を支点にしてサスペンションクロスメンバ12を揺動変位させる方向に作用するモーメント荷重を安定して支持することができず、上記サスペンションクロスメンバ12が大きく揺動変位することにより、ホイールアライメントが変化することが避けられない。
【0036】
これに対して上記のように第1〜第3弾性マウント部19,20,21を、車体の側面視において三角形を構成するように配設した場合には、自動車の旋回時に、上記第1〜第3弾性マウント部19,20,21のうちの二つを結ぶ軸線を支点にして作用する上記モーメント荷重が、残りの一つの弾性マウント部において支持されるため、上記サスペンションクロスメンバ12が揺動変位することに起因したホイールアライメントの変化を効果的に抑制することができる。
【0037】
また、上記実施形態に示すように、車体前後方向の三個所に設けられた第1〜第3弾性マウント部19〜21のうち中央および後方側に位置する第2,第3弾性マウント部20,21の設置部に、上記ロアアーム13、アッパアーム14、トーコントロールリンク15およびショックアブソーバ16からなるサスペンション部材を配設した場合には、自動車の旋回時等に後輪6から上記サスペンション部材に入力された振動等を、上記サスペンションクロスメンバ12の側端部中央および後方側に配設された上記第2,第3弾性マウント部20,21において安定して支持することができるとともに、車室に最も近い上記第1弾性マウント部19において上記振動等を遮断することにより、車室内に振動が伝達されるのを効果的に防止できるという利点がある。
【0038】
特に、上記サスペンションクロスメンバ12用の第1〜第3弾性マウント部19〜21に設けられた弾性マウント体22の前後に空隙部31を設けるとともに、補強部材32を左右に設ける等により、上記第1〜第3弾性マウント部19〜21の前後方向におけるばね定数を、左右方向よりも小さな値に設定した場合には、サスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部19〜21の左右方向におけるばね定数が比較的に大きな値に設定され、サスペンションクロスメンバ12の左右移動が抑制されて走行安定性が確保されるとともに、サスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部19〜21の前後方向におけるばね定数が比較的に小さな値に設定され、後輪6の前後振動が上記サスペンションクロスメンバ12から車体側に伝達されることが効果的に抑制されるという利点がある。
【0039】
また、上記のように車幅方向に延びるロアアーム13とアッパアーム14とトーコントロールリンク15とによりサスペンションアームを構成し、かつ車体前後方向の三個所に配設されたサスペンションクロスメンバ12用の弾性マウント部19〜21のうち前方側に位置する第1弾性マウント部19の予圧縮量を最も小さな値に設定することにより、そのばね定数を小さくした場合には、車体の前後方向における上記サスペンションアームの設置範囲がコンパクトに形成されることにより車室内スペースを充分に確保されるように構成された自動車において、後輪6からサスペンションクロスメンバ12に入力された振動等を、車体側に車室に近い上記第1弾性マウント部19において遮断することができるため、自動車の乗り心地を効果的に向上させることができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明は、車体前部に配設されたパワーユニットを車体後部に配設されたディファレンシャルに連結する剛体フレームと、上記ディファレンシャルを支持するサスペンションクロスメンバと、このサスペンションクロスメンバを車体に取り付けるために車体前後方向に配設された複数個の弾性マウント部とを備え、この弾性マウント部を予圧縮した状態で、上記サスペンションクロスメンバと車体との間に設置するとともに、前方側の弾性マウント部の予圧縮量を、後方側の弾性マウント部よりも小さくしたため、上記マウント部に弾性マウント体を設けることにより、自動車の走行時に後輪から入力された振動および騒音が車体側に伝達されるのを防止して優れた乗り心地が得られるように構成した場合においても、パワーユニットの作動時に、剛体フレームを介してディファレンシャルに伝達された上記パワーユニットのロール変位等に対する上記サスペンションクロスメンバの支持剛性を、予圧縮量の大きい後方側の弾性マウント部において充分に確保することができ、上記サスペンションクロスメンバが揺動変位することに起因するホイールアライメントの変化を効果的に抑制して、普通乗用車が有する優れた乗り心地と、スポーツカーが有する走行安定性とが同時に得られるという利点がある。
【0041】
また、請求項2に係る発明は、車体前部に配設されたパワーユニットを車体後部に配設されたディファレンシャルに連結する剛体フレームと、上記ディファレンシャルを支持するサスペンションクロスメンバと、このサスペンションクロスメンバを車体に取り付けるために車体前後方向に配設された三個の弾性マウント部とを備え、この弾性マウント部を予圧縮した状態で、上記サスペンションクロスメンバと車体との間に設置するとともに、前方側の弾性マウント部の予圧縮量を最も小さくしたため、パワーユニットの作動時に、剛体フレームを介してディファレンシャルに伝達された上記パワーユニットのロール変位等を、車体前後方向の三個所に設けられた弾性マウント部において効果的に支持することができるとともに、自動車の走行時に、後輪から入力された振動が、予圧縮量が最も小さい前方側の弾性マウント部において遮断されて車室内に上記振動が伝達されるのを効果的に防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 車体のシャーシ構造を示す平面図である。
【図2】 本発明に係る自動車サスペンション装置の実施形態を示す底面図である。
【図3】 本発明に係る自動車サスペンション装置の実施形態を示す側面図である。
【図4】 サスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部の具体的構成を示す側面断面図である。
【図5】 弾性マウント体の具体的構成を示す側面断面図である。
【図6】 弾性マウント体の具体的構成を示す平面断面図である。
【図7】 ディファレンシャル用の弾性マウント部の具体的構成を示す平面断面図である。
【符号の説明】
4 パワーユニット
6 後輪
8 ディファレンシャル
9 剛性フレーム
11 リヤサイドフレーム(主体)
12 サスペンションクロスメンバ
19,20,21 サスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部
34 ディファレンシャル用マウント部
Claims (5)
- 車体前部に配設されたパワーユニットを車体後部に配設されたディファレンシャルに連結する剛体フレームと、上記ディファレンシャルを支持するサスペンションクロスメンバと、このサスペンションクロスメンバを車体に取り付けるために車体前後方向に配設された複数個の弾性マウント部とを備え、この弾性マウント部を予圧縮した状態で、上記サスペンションクロスメンバと車体との間に設置するとともに、前方側の弾性マウント部の予圧縮量を、後方側の弾性マウント部よりも小さくしたことを特徴とする自動車のサスペンション装置。
- 車体前部に配設されたパワーユニットを車体後部に配設されたディファレンシャルに連結する剛体フレームと、上記ディファレンシャルを支持するサスペンションクロスメンバと、このサスペンションクロスメンバを車体に取り付けるために車体前後方向に配設された三個の弾性マウント部とを備え、この弾性マウント部を予圧縮した状態で、上記サスペンションクロスメンバと車体との間に設置するとともに、前方側の弾性マウント部の予圧縮量を最も小さくしたことを特徴とする自動車のサスペンション装置。
- ディファレンシャルをサスペンションクロスメンバに取り付けるための弾性マウント部を備え、このディファレンシャル用の弾性マウント部のばね常数を、予圧縮状態で設置されたサスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部のばね常数よりも小さな値に設定したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車のサスペンション装置。
- サスペンションクロスメンバ用の弾性マウント部に設けられた弾性マウント体を上下方向に圧縮することにより予圧縮力を付与したことを特徴とする請求項1または2に記載の自動車のサスペンション装置。
- 車体前後方向に配設された3個の弾性マウント部のうち、中央および後方側に位置する弾性マウント部材の設置部に、サスペンション部材を配設したことを特徴とする請求項2記載の自動車のサスペンション装置。
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