JP3951901B2 - 中空状ナノファイバーの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い表面積、高い弾性ヤング率、高い引っ張り強さ及び高い導電性を有する炭素を主成分とする中空状ナノファイバーの製造方法に係る。より特定的には、本発明は従来の費用のかかる黒鉛化温度(約2900℃)を必要とすることなく、安価で入手し易い炭化水素化合物から触媒反応により成長させた炭素を主成分とする中空状の黒鉛化されたナノファイバーの製造方法に関する。更に特定的には、カーボンナノチューブと定義される領域のナノファイバーの製造法に関わる。
【0002】
【従来の技術】
カーボンナノチューブは、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有しており、一層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。
【0003】
カーボンナノチューブを製造する方法としては、アーク放電法及び化学蒸着法(CVD)による方法が知られている。アーク放電法は、真空中又は不活性気体雰囲気中で炭素棒を電極とし、高電圧・高電流のアーク放電を行い、カーボンナノチューブを製造するものであり、カーボンナノチューブは陰極堆積物中にグラファイト、カーボンナノパーティクルなどと一緒に得られる。CVDによる方法は、鉄、ニッケルなどの金属微粒子の存在下で原料ガスを数百度で反応させて、カーボンナノチューブを製造するものである。この場合、原料ガスとしては、ベンゼン、トルエン、オルトメチルジアリルケトン、アセチレン、エチレン、メタン等が用いられる。アーク放電法により作られたカーボンナノチューブは、グラファイト層の欠陥の少ないナノチューブが得られるが、アモルファスカーボンなどの不純物が多い。CVD法では、不純物が少なく、しかも安価にカーボンナノチューブを製造できるが、生成したカーボンナノチューブはグラファイト層に欠陥が多く、2900℃程度の熱処理をしないと、欠陥の少ないグラファイト層が形成されないものがほとんどである。
【0004】
それを、解決する手段として、篠原らはY型ゼオライトにコバルトとバナジウムを担持させた触媒を用いて、欠陥の少ない多層カーボンナノチューブが製造できることを報告している(非特許文献1)。また、K.HernadiらはY型ゼオライトやシリカに鉄やコバルトを担持した触媒を用い、様々な炭素源を用いて多層カーボンナノチューブが製造できることを報告している(非特許文献2)。
【0005】
しかしながら、生成するカーボンナノチューブの量は少なく、大量合成できる技術が望まれていた。特に、単層カーボンナノチューブや2層カーボンナノチューブといった細いカーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブよりも生成量が少なく、大量合成できる技術が望まれていた。
【0006】
【非特許文献1】
ケミカル・フィジックス・レターズ(Chemical Physics Letters 303(1999) 117-124)
【0007】
【非特許文献2】
アプライド・キャタリス・エー:ジェネラル(Applied Catalysis A:General 199(2000)245-255)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高収率でカーボンナノチューブを含む炭素を主成分とする中空状ナノファイバーが得られる製造方法を提供することをその課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。操作が簡便な化学蒸着法(CVD法)を用い、無機多孔体を支持体とし、その支持体表面に特定の金属が担持されていることを特徴とする固体触媒と炭素数4以上の脂肪族炭化水素化合物を500〜1200℃で接触させることにより、非常に高収率でアモルファスカーボンの生成が少なく、グラファイト層の欠陥が少ない良質のカーボンナノチューブが大量に得られることを見出し、本発明に至った。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳述する。本発明の方法は、無機多孔体を支持体とし、その支持体表面にFeおよび/またはCoを必須成分として含む金属が担持されていることを特徴とする固体触媒と炭素数4以上の脂肪族炭化水素化合物を接触させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明における脂肪族炭化水素化合物とは、炭素原子と水素原子のみで構成される脂肪族化合物であり、その構造は特に限定はなく、炭素原子が直鎖につながっていても枝分かれ構造をとっていても環状構造をとっていてもよい。また、炭素炭素結合も飽和結合であっても不飽和結合を含んでいても良い。さらにはテルペンなどに代表される光学活性炭化水素化合物であっても良い。
【0012】
炭素数4以上の脂肪族炭化水素化合物としては例えば、n−ブタン、ブタジエン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロパン、n−ペンタン、2−メチルブタン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、メチルシクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、2−メチルへキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロオクタン、1,1−ジメチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、イソプロピルシクロヘキサン、1−ノネン、プロピルシクロヘキサン、2,3−ジメチルヘプタン、n−デカン、ブチルシクロヘキサン、シクロデカン、1−デセン、ピネン、ピナン、リモネン、メンタン、n−ウンデカン、1−ウンデセン、n−ドデカン、シクロドデセン、1−ドデセン、n−トリデカン、1−トリデセン、n−テトラデカン、1−テトラデセン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、エイコサン、ドコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン又はこれらの混合物などを挙げることができ、常圧で蒸気にするためには炭素数4〜20の脂肪族炭化水素化合物である、n−ブタン、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、シクロオクタン、1−オクテン、n−ノナン、1−ノネン、プロピルシクロヘキサン、n−デカン、シクロデカン、1−デセン、n−ウンデカン、1−ウンデセン、n−ドデカン、シクロドデセン、1−ドデセン、n−トリデカン、1−トリデセン、n−テトラデカン、1−テトラデセン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、エイコサン又はこれらの混合物がより好ましく、炭素数5以上の常温で液体の脂肪族炭化水素である、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン又はこれらの混合物が取り扱いやすく特に好ましい。
【0013】
本発明における固体触媒としては、金属を担持するために無機物で構成された多孔質な組成物を用いる。無機物とは、例えばカーボン、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、等炭化水素を主成分としていない物質のことである。本発明では珪素のような炭素属元素も金属元素と定義する。
【0014】
本発明における無機多孔体は、特に限定されないがゼオライトまたは金属酸化物が好ましい。ゼオライトとは、分子サイズの細孔径を有した結晶性金属酸化物である。分子サイズとは、世の中に存在する分子のサイズの範囲であり、一般的には、0.2から2nm程度の範囲を意味する。ゼオライトとは、結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、あるいは結晶性メタロアルミノフォスフェート等で構成された結晶性マイクロポーラス物質のことである。
【0015】
結晶性シリケート、結晶性アルミノシリケート、結晶性メタロシリケート、結晶性アルミノフォスフェート、結晶性メタロアルミノフォスフェートの種類は特に制限がなく、例えば、アトラス オブ ゼオライト ストラクチュア タイプス(マイヤー、オルソン、バエロチャー、ゼオライツ、17(1/2)、1996)(Atlas of Zeolite Structure types(W. M. Meier, D. H. Olson, Ch. Baerlocher, Zeolites, 17(1/2), 1996))に掲載されている構造をもつ結晶性無機多孔性物質が挙げられる。
【0016】
その他の無機多孔体としては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、ケイ酸塩、珪藻土、アルミノシリケート、層状化合物、グラファイト、リン酸アルミニウムなどを組成物とする多孔体や活性炭などを挙げることができる。
【0017】
無機多孔体とは、メソポア、ミクロポア(マイクロポア)を有する無機物で、比表面積が300m2/g以上のアルミナ組成物や比表面積が500m2/g以上のシリカ組成物、シルカアルミナ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等で構成された多孔体が好ましい。メソポア、ミクロポアの有無は、77Kでの窒素の吸着で知ることができる。中でも、均一なポアを有している方が、担持された金属の粒径がそろいやすいので好ましい。特に規則正しく三次元結晶構造を有し、サブナノメーターサイズの均一細孔(ミクロポア)を有するゼオライトが、均一に金属触媒を担持できるので好ましい。
【0018】
三次元結晶構造とは、骨格となる原子が規則正しく三次元的網目構造になるように結合した結晶性の組成物であり、結晶構造であるかどうかはX線回折により確認することができる。
【0019】
理由は明らかではないが、無機多孔体を用いた場合のみ本発明の効果は現れる。
【0020】
比表面積とは、多孔体1g当たりの表面積であり、その測定方法は液体窒素温度(77K)における窒素吸着挙動を測定する方法で行われ、BET吸着等温式やラングミュア吸着等温式から比表面積を求めることができる。ミクロポア、メソポアの有無は77Kでの窒素の吸着等温線のタイプで判断できる。BDDTの分類(近藤、石川、安部著「吸着の科学」、丸善(1991)、32ページ参照)によるI型、IV型の吸着等温線であれば、ミクロポア、メソポアが存在すると判断する。
【0021】
本発明において、固体触媒は、無機多孔体の表面にCoおよび/またはFeを必須成分として含む金属が担持されていることが必須である。本発明では、触媒として使用されるときに金属状態になっているかどうか調べることができないので、金属とは広く金属を含む化合物という意味でとらえて良い。金属の種類は、遷移金属元素が好ましく用いられ、中でも、V,Mo,Fe,Co,Ni,Pd等は特に好ましく用いられるが、本発明では、Coおよび/またはFeを必須成分として含む金属とする。金属は1種類だけ担持されていても、2種類以上担持されていてもかまわないが、2種類以上担持させる方がより好ましい。2種類の場合は、Coと他の金属の組み合わせが特に好ましい。CoとFe,Ni,V,Moの組み合わせが最も好ましい。更に第3成分を添加することも好ましく行われる。金属の担時量は無機多孔体に対して0.1重量%〜10.0重量%が好ましく、0.5重量%〜5.0重量%がより好ましい。無機多孔体表面への金属担持方法は、特に限定されないが、例えば、担持したい金属の塩を溶解させた水や非水溶液中(例えばエタノール溶液)に、無機多孔体を含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させ、空気中や不活性ガス中で高温(300〜600℃)で加熱することによって、無機多孔体表面に金属を担持することができる含浸法や、金属塩の水溶液またはアルコール量をなるべく少なくし、無機多孔体の細孔内に、該水溶液を吸着させ、余分な水溶液またはアルコールはろ過などで除去して乾燥させる平衡吸着法や、金属カチオンと無機多孔体のカチオンを水溶液中で交換するイオン交換法などが用いられる。担持される金属の大きさは、数nm〜数10nmの範囲である。好ましくは、1nm〜20nmであり、特に好ましくは、1〜10nmである。金属塩溶液の濃度を制御することによって、金属の大きさは制御することが可能である。金属の大きさは、触媒サンプルを超薄切片法で切り出し、透過型電子顕微鏡で観察することにより測定できる。
【0022】
本方法では、無機多孔体を支持体とし、その支持体表面に金属が担持されていることを特徴とする触媒と炭素数4以上の炭化水素化合物を500℃〜1200℃で接触させる。接触させる温度は、500℃〜1200℃であり、さらに好ましくは600℃〜1000℃であり、特に600℃〜800℃がより好ましい。温度が低いとナノファイバーの収率が悪く、温度が高いと使用する反応器の材質に制限が出ると共に、ナノファイバー同士の接合が始まってしまい、ナノファイバーの形状のコントロールが困難になる。また、無機多孔体の耐熱性を超えてしまうと無機多孔体の構造が保持できなくなり、ナノファイバーが生成できなくなる。
【0023】
接触のさせ方は、特に限定されないが、例えば、管状炉に設置された石英製の反応管内に、本発明の触媒を置き、加熱下で脂肪族炭化水素のガスを流すことにより達成できる。固体触媒と脂肪族炭化水素化合物の接触方法は、上記のような方法でも触媒を噴霧する方法でもかまわない。脂肪族炭化水素化合物以外のガスは、窒素、アルゴン、水素、ヘリウム等が好ましく使用される。これらのガスは、脂肪族炭化水素化合物ガスの濃度のコントロールやキャリアーガスとして効果があり、固体触媒に供給される時の脂肪族炭化水素以外のガスの組成は、供給される全ガス量の0〜99.9%であり、より好ましくは50〜99.5%であり、さらに好ましくは70〜99%である。
【0024】
本発明における発火点とは、発火温度とも呼ばれる温度のことであり、可燃性物質を空気と接触した状態で、これに火炎などで点火することなく、外部より加熱した場合に自然発火を起こす最低の温度である。発火温度の測定法としては、脂肪族炭化水素化合物が常圧で気体の場合は同心管法で求められる。これは、同心管にあらかじめ一定温度の加熱した可燃性ガスと空気を別々に流し、同心管の先端で混合して発火の有無を測定するものである。脂肪族炭化水素化合物が常圧で液体の場合は、一定温度に加熱した容器中に可燃性液体を落下させて発火の有無を測定するものである。このような方法で測定された脂肪族炭化水素の発火点はその分解温度に深く関係し、発火点が低ければ低いほど、脂肪族炭化水素の分解が容易に起こる。そのため、発火点の低い脂肪族炭化水素を無機多孔体の表面に金属を担持した固体触媒と接触させた場合に容易に反応して中空状のナノファイバーが生成しやすくなるので好ましい。特に脂肪族炭化水素化合物は炭素数が増加するに従って発火点が下がる傾向にある。そのため、脂肪族炭化水素化合物の発火点は500℃以下が好ましく、450℃以下が特に好ましい。従って、脂肪族炭化水素化合物の炭素数は4以上が好ましく、より好ましくは炭素数5以上である。
【0025】
得られた炭素を主成分とする中空状ナノファイバーは、中空状であれば特に制限はない。中空状であることは、透過型電子顕微鏡で確認することができる。これらは一般的にはカーボンナノチューブと定義されるものも含まれる。多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブともに炭素を主成分とする中空状ナノファイバーに含まれる。
【0026】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。もっとも、下記の実施例は例示のために示すものであって、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。
【0027】
実施例や比較例で、用いる脂肪族炭化水素化合物の量は、供給した脂肪族炭化水素中に含まれる炭素重量が0.19gとなるように供給量と供給時間を調整した。また、炭素を主成分とする中空状ナノファイバーの得られ易さを求める指標として、触媒当たりの重量増加率を用いて比較した。これは単位触媒量当たりに生成する炭素を主成分とする中空状ナノファイバーの割合を求めたものであり、次の式から求められる。
【0028】
触媒当たりの重量増加率=(生成量−触媒量)/触媒量
この値が大きければ大きいほど効率良く炭素を主成分とする中空状ナノファイバーが得られることになる。
【0029】
生成された炭素を主成分とする中空状ナノファイバーは、中空状であれば特に制限はない。ナノファイバーが中空状であることは、透過型電子顕微鏡で確認することができる。本発明から得られる中空状ナノファイバーは、中空状ナノファイバーの壁を欠陥の少ないグラファイト層で形成することができる。このように欠陥の少ないグラファイト層からなることは、高分解能透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
【0030】
上記のような極細の中空状ナノファイバーは、一般的にカーボンナノチューブと定義される。多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブは、ともに炭素を主成分とする中空状ナノファイバーに含まれる。
【0031】
また、本発明は、カーボンナノチューブの主成分が単層カーボンナノチューブであることを特徴とする中空状ナノファイバーの製造方法に関するものである。本発明では、特に単層カーボンナノチューブを高収率で得ることができる。本発明において、特にUSY型のような結晶性ハイシリカゼオライトを支持体として、800℃以上で中空状ナノファイバーを製造すると、単層カーボンナノチューブを得ることができる。
【0032】
また、本発明は、カーボンナノチューブの主成分が2から5層カーボンナノチューブであることを特徴とする中空状ナノファイバーの製造方法に関するものである。本発明では、特に2層から5層カーボンナノチューブを高収率で得ることができる。本発明において、特にTS−1のような結晶性チタノシリケートゼオライトを支持体として、800℃以上で中空状ナノファイバーを製造すると、2層から5層のカーボンナノチューブ、特に2層カーボンナノチューブのバンドルや一部が3層以上になった2層カーボンナノチューブを得ることができる。このような2層から5層のカーボンナノチューブ、特に2層カーボンナノチューブのバンドルは、2層カーボンナノチューブ同士の間隙を利用した吸着剤などとして利用することができる。
【0033】
また、2層から5層のカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブより耐久性に優れ、しかも一般に得られる多層カーボンナノチューブより細い。また、本発明で得られるカーボンナノチューブは、グラファイト化度が高く、炭素六員環配列の乱れが少ないため、有効な電子放出材料となりうる。本発明にあるカーボンナノチューブを含む電子放出材料をフィールドエミッションの電子源に用いた場合、直径が細いため、電荷の集中が起こりやすく、印加電圧を低く抑えることができる。また、単層カーボンナノチューブに比べ耐久性も高く、フィールドエミッションディスプレイの寿命を高めることができる。耐久性の点では総数が多い方が好ましく、2層から5層カーボンナノチューブが好んで用いられる。また、3層から5層カーボンナノチューブは、耐久性と印加電圧の低さから最も好んで用いられる。
【0034】
【実施例】
[NaYゼオライトへの金属塩の担持]
無水塩化第二鉄(片山化学社製)0.73g、塩化コバルト六水和物(関東化学社製)1.01gをイオン交換水40mlに溶かし、10.0gのNaYゼオライト粉末(東ソー社製HSZ-310NAA Lot.No.GZ-143-3-5 比表面積850m2/g)を加え、超音波洗浄機で30分間処理し、120℃恒温下で水を除去して、ゼオライトの表面に金属を担持した固体触媒を得た。
【0035】
[ZSM−5ゼオライトへの金属塩の担持]
無水塩化第二鉄(片山化学社製)0.73g、塩化コバルト六水和物(関東化学社製)1.01gをイオン交換水40mlに溶かし、10.0gのZSM−5ゼオライト粉末(比表面積650m2/g)を加え、超音波洗浄機で30分間処理し、120℃恒温下で水を除去して、ゼオライトの表面に金属を担持した固体触媒を得た。
【0036】
[USY型ゼオライトへの金属塩の担持]
酢酸第一鉄(アルドリッチ社製)0.08gと酢酸コバルト4水和物(ナカライテスク)社製)0.11gとをエタノール(ナカライテスク社製)7mlに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁した。この懸濁液に東ソー製USY型ゼオライト粉末(HSZ−390HUA)を1.0g加え、超音波洗浄機で10分間処理し、60℃の恒温下でエタノールを除去して、USY型ゼオライト粉末に金属塩が担持された触媒を得た。
【0037】
[TS−1型ゼオライトへの金属塩の担持]
酢酸第一鉄(アルドリッチ社製)0.08gと酢酸コバルト4水和物(ナカライテスク)社製)0.11gとをエタノール(ナカライテスク社製)7mlに加え、超音波洗浄機で10分間懸濁した。この懸濁液にエヌイーケムキャット製TS−1型ゼオライト粉末を1.0g加え、超音波洗浄機で10分間処理し、60℃の恒温下でエタノールを除去して、TS−1型ゼオライト粉末に金属塩が担持された触媒を得た。
【0038】
[無多孔シリカへの金属塩の担持]
無水塩化第二鉄(片山化学社製)0.73g、塩化コバルト六水和物(関東化学社製)1.01gをイオン交換水40mlに溶かし、10.0gのシリカ(キャボシルM−5 比表面積200m 2 /g)を加え、超音波洗浄機で30分間処理し、120℃恒温下で水を除去して、シリカの表面に金属を担持した固体触媒を得た。
【0039】
[シリカゲルへの金属塩の担持]
無水塩化第二鉄(片山化学社製)0.73g、塩化コバルト六水和物(関東化学社製)1.01gをイオン交換水40mlに溶かし、10.0gのシリカゲル(富士シリシア製 RD型 比表面積720m2/g)を加え、超音波洗浄機で30分間処理し、120℃恒温下で水を除去して、シリカゲルの表面に金属を担持した固体触媒を得た。
【0040】
[ナノファイバーの合成]
(実施例1)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.026g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−ペンタン(東京化成工業社製)を0.93ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で24分間供給した後、n−ペンタンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.084gあり、触媒当たりの重量増加率は2.21であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0041】
(実施例2)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.026g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでシクロペンタン(東京化成工業社製)を0.76ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で24分間供給した後、シクロペンタンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.110gあり、触媒当たりの重量増加率は3.19であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0042】
(実施例3)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.025g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−ヘキサン(和光純薬社製)を1.03ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で20分間供給した後、n−ヘキサンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.126gあり、触媒当たりの重量増加率は4.07であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0043】
(実施例4)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.030g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでシクロヘキサン(和光純薬社製)を0.87ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で20分間供給した後、シクロヘキサンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.129gあり、触媒当たりの重量増加率は3.34であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0044】
(実施例5)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.024g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでシクロヘキセン(東京化成工業社製)を1.63ml/時(ガス状態で6.0ml/分)で10分間供給した後、シクロヘキセンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.076gあり、触媒当たりの重量増加率は2.10であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0045】
(実施例6)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.026g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーで2−メチルペンタン(ナカライテスク社製)を1.06ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で20分間供給した後、2−メチルペンタンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.099gあり、触媒当たりの重量増加率は2.81であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0046】
(実施例7)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.025g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−ヘプタン(東京化成工業社製)を1.18ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で17分間供給した後、n−ヘプタンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.100gあり、触媒当たりの重量増加率は2.97であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0047】
(実施例8)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.026g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでイソオクタン(東京化成工業社製)を1.33ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で15分間供給した後、イソオクタンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.053gあり、触媒当たりの重量増加率は1.55であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0048】
(実施例9)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.026g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−オクタン(キシダ化学社製)を0.65ml/時(ガス状態で1.5ml/分)で30分間供給した後、n−オクタンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.096gあり、触媒当たりの重量増加率は4.01であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0049】
(実施例10)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.026g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−ノナン(ナカライテスク社製)を0.72ml/時(ガス状態で1.5ml/分)で26分間供給した後、n−ノナンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.124gあり、触媒当たりの重量増加率は4.39であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0050】
(実施例11)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.026g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−デカン(東京化成工業社製)を0.78ml/時(ガス状態で1.5ml/分)で24分間供給した後、n−デカンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.066gあり、触媒当たりの重量増加率は2.57であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0051】
(実施例12)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.026g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−ドデカン(東京化成工業社製)を0.91ml/時(ガス状態で1.5ml/分)で20分間供給した後、n−ドデカンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.109gあり、触媒当たりの重量増加率は3.64であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0052】
(実施例13)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.022g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−テトラデカン(東京化成工業社製)を0.70ml/時(ガス状態で1.0ml/分)で26分間供給した後、n−テトラデカンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.082gあり、触媒当たりの重量増加率は2.82であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0053】
(実施例14)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したZSM−5を0.017g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−ヘキサン(和光純薬社製)を1.03ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で20分間供給した後、n−ヘキサンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.053gあり、触媒当たりの重量増加率は2.14であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0054】
(実施例15)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したシリカゲルを0.014g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−ヘキサン(和光純薬社製)を1.03ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で20分間供給した後、n−ヘキサンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.034gあり、触媒当たりの重量増加率は1.43であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0055】
(実施例16)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したUSY型ゼオライトを0.017g取り、石英管を電気炉に設置して、アルゴンを60ml/分で供給した。電気炉の中心温度を800℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−ヘキサン(和光純薬社製)を0.17ml/時(ガス状態で0.5ml/分)で20分間供給した後、n−ヘキサンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.009gあり、触媒当たりの重量増加率は0.36であった。日立製透過型電子顕微鏡で生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が2nm以下の単層カーボンナノチューブが主成分であることがわかった。また、ナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0056】
(実施例17)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したTS−1型ゼオライトを0.017g取り、石英管を電気炉に設置して、アルゴンを60ml/分で供給した。電気炉の中心温度を800℃に加熱し、マイクロフィーダーでn−ヘキサン(和光純薬社製)を0.17ml/時(ガス状態で0.5ml/分)で20分間供給した後、n−ヘキサンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.012gあり、触媒当たりの重量増加率は0.48であった。日立製透過型電子顕微鏡で生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が10nm以下の2層〜5層カーボンナノチューブが主成分であることがわかった。また、ナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0057】
(比較例1)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.045g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を800℃に加熱し、メタンガス(日本酸素製)を6.0ml/分で60分間供給した後、メタンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.045gあり、触媒当たりの重量増加率は0.0であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんどが非晶質のカーボン質が堆積物で、中空状ナノファイバーは生成しなかった。
【0058】
(比較例2)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.046g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、アセチレンガス(竹中高圧工業社製)を6.0ml/分で30分間供給した後、アセチレンガスの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.098gあり、触媒当たりの重量増加率は1.11であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんど非晶質のカーボン質の堆積は無く、外径が30nm以下の10層程度の多層カーボンナノチューブを主成分とする細い中空状ナノファイバーであることがわかった。高分解能透過型電子顕微鏡で中空状ナノファイバーを観察したところナノファイバーの壁はグラファイト層で構成されていた。
【0059】
(比較例3)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持したNaYゼオライトを0.037g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を800℃に加熱し、マイクロフィーダーでベンゼン(片山化学社製)を1.56ml/時(ガス状態で6.0ml/分)で10分間供給した後、ベンゼンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.039gあり、触媒当たりの重量増加率は0.07であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんどが非晶質のカーボン質が堆積物で、ファイバー状のものは生成しなかった。
【0060】
(比較例4)
内径30mmの石英管の中央部に石英プレート上に金属塩を担持した無多孔シリカを0.007g取り、石英管を電気炉に設置して、窒素を30ml/分で供給した。電気炉の中心温度を700℃に加熱し、マイクロフィーダーでヘキサン(和光純薬社製)を1.03ml/時(ガス状態で3.0ml/分)で20分間供給した後、ヘキサンの供給を止め、温度を室温まで冷却した。得られた生成物は0.008gあり、触媒当たりの重量増加率は0.14であった。日本電子データム(株)走査電子顕微鏡JSM−6301NFで生成物を観察したところ、ほとんどが非晶質のカーボン質が堆積物で、ファイバー状のものは生成しなかった。
【0061】
以上の結果をまとめて表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【発明の効果】
本発明方法によると、炭素数4以上の脂肪族炭化水素化合物を無機多孔体の表面に金属を担持した固体触媒と500〜1200℃で接触させると、ほとんど非晶質のカーボン質が堆積無く、非常に質の良い細い黒鉛質の中空状ナノファイバーが大量に得られる。
Claims (10)
- 炭素数4以上の脂肪族炭化水素化合物と、無機多孔体の表面にFeおよび/またはCoを必須成分として含む金属を担持した固体触媒を500〜1200℃で接触させることを特徴とする単層カーボンナノチューブを主成分とする中空状ナノファイバーの製造方法。
- 炭素数4以上の脂肪族炭化水素化合物と、無機多孔体の表面にFeおよび/またはCoを必須成分として含む金属を担持した固体触媒を500〜1200℃で接触させることを特徴とする2層〜5層のカーボンナノチューブを主成分とする中空状ナノファイバーの製造方法。
- 無機多孔体の主成分が金属酸化物であることを特徴とする請求項1または2記載の炭素を主成分とする中空状ナノファイバーの製造方法。
- 無機多孔体がゼオライトであることを特徴とする請求項1記載の炭素を成分とする中空状ナノファイバーの製造方法。
- 無機多孔体が結晶性ハイシリカゼオライトである請求項1、3〜4のいずれか記載の中空状ナノファイバーの製造方法。
- 無機多孔体が結晶性チタノシリケートゼオライトである請求項2〜4のいずれか記載の中空状ナノファイバーの製造方法。
- 炭素数4以上の脂肪族炭化水素化合物と、ゼオライト、シリカゲル、アルミナ、シリカアルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、珪藻土、アルミノシリケート(ゼオライトを除く)、層状化合物、グラファイト、リン酸アルミニウム、活性炭から選ばれる無機多孔体の表面にFeおよび/またはCoを必須成分として含む金属を担持した固体触媒を500〜1200℃で接触させることを特徴とする炭素を主成分とする中空状ナノファイバーの製造方法。
- 炭素を主成分とする中空状ナノファイバーがカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項7記載の中空状ナノファイバーの製造方法。
- 中空状ナノファイバーが単層カーボンナノチューブまたは2〜5層のカーボンナノチューブを主成分とすることを特徴とする請求項8記載の中空状ナノファイバーの製造方法。
- 炭素数4以上の脂肪族炭化水素化合物の発火点が500℃以下である請求項1〜9のいずれか1項記載の炭素を主成分とする中空状ナノファイバーの製造方法。
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