JP3951622B2 - 液晶装置の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶装置およびその製造方法に関し、特に体積ホログラム構造を有する高分子分散型の液晶装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高分子分散型の液晶表示方式に関する研究が進められている。これは、液晶と高分子からなる複合体の光散乱効果を利用した表示方式であり、この方式に基づく液晶表示装置(Liquid Crystal Display, 以下、LCDと略記することもある)は、高分子分散(PD:Polymer Dispersed)型LCDと総称されている。この高分子分散型LCDには、液晶が微小粒滴として高分子マトリクス中に分散しているタイプ、もしくは液晶の連続相中に高分子が3次元網目状または微小粒滴状に分散しているタイプがある。いずれのタイプにしても、その動作原理は電圧無印加時に液晶分子はランダムに配列しており、入射光は散乱される一方、電圧印加時には液晶分子は電界方向に配列するので、その時の液晶の屈折率と高分子の屈折率を等しく設定しておけば、入射光は散乱されず、透明な外観を呈する、もしくは電圧無印加時に液晶と高分子が配向分散して透明であり、電圧印加時に液晶が電界方向に配列して高分子との屈折率差から散乱を呈する、のいずれかである。このように、高分子分散型の表示方式は光散乱効果に基づいているので、偏光子を必要とせず、これにより視野角が広く、明るい表示が実現できるという特徴を持っている。
【0003】
このことから、一般に画像の明るさが問題とされる反射型LCDの分野においても、近年、上記高分子分散型の一種である体積ホログラムによる干渉反射方式が注目されている。体積ホログラムは、液晶と光重合性材料の混合液から作製され、電場や磁場等の外場の有無や程度に応じて特定波長の光を反射、または透過させるものである。例えば光重合性モノマーとネマティック液晶との混合液に2方向からレーザ光を照射する、いわゆる2光束干渉露光を行い、これら2つのレーザ光の干渉効果を用いて体積ホログラムを作製する方法が今までに提案されている。
【0004】
この場合、混合液内にレーザ光が照射されたときに、2つのレーザ光の干渉により光強度が強くなった空間部分では、モノマーの光重合が充分に進んでポリマーの密度が高くなり、逆に光強度が弱い空間部分では、光強度が強い空間部分にモノマーが引き寄せられる分だけ液晶の方の密度が高くなる。このようにして、ポリマーと液晶の密度の違いによる干渉縞状の周期構造が形成される。この時、何も配向規制力が働いていないときには液晶分子はランダムな方向を向いているが、液晶のランダムな方向に向いた状態での平均的屈折率がポリマーのそれと異なっていれば、屈折率が周期的に変化する構造が形成されることになる。この多層周期構造により、干渉縞の間隔に対応した波長を持つ外光が高い反射率で反射することが知られており、反射型LCDへの適用が可能となる。
【0005】
この種のホログラフィック高分子分散液晶(Holographic Polymer Dispersed Liquid Crystal, 以下、HPDLCと略記する)を反射型LCDに適用した例は、"Reflection Profiles of Holographic Color Reflectors", K.Iwauchi et al., SID'99, p.56,「ホログラフィックPDLC(HPDLC)の光学数値計算」、三村広二他、ディスプレイ・アンド・イメージング 1998,Vol.7,pp.123-128などに発表されている。前者は、ホログラフィック反射カラーフィルターを用いたLCDの例であり、液晶セルの外部にフォトポリマーからなるホログラム素子を設置したものである。後者は、HPDLCを色純度の高い次世代の反射型カラーLCDに応用した例である。
【0006】
HPDLCにおける反射光は、ポリマー層の高屈折率軸(光学軸)方向に電界成分を持つ光であって、ポリマー層からなる干渉縞のピッチに対応した波長を有している。干渉縞構造による反射光の波長λrは、干渉縞のピッチp、ポリマー層の実効的屈折率nを用いて下式(1)で表すことができる。
λr=p/n …(1)
したがって、一つの液晶セル内で部分的に干渉縞のピッチや角度の異なる体積ホログラムを形成すれば、その干渉縞のピッチや入射角に応じた波長を有する反射光が得られることになり、カラー表示が可能となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来、HPDLCを用いた反射型カラーLCDを製造しようとした場合、2光束干渉露光を行う際に基板上の一部の領域にのみ選択的に光を照射した後、前とは異なる他の領域に光を照射し、先に形成した体積ホログラムにおける干渉縞のピッチとは異なるピッチを有する体積ホログラムを基板上の他の領域に形成していた。具体的には、2光束干渉露光を選択的に行う手段として複数枚のフォトマスクを用いるとともに、液晶セルに対する光の照射角度を変えるか、もしくはレーザ光源の波長を変えながら、複数回の2光束干渉露光を行っていた。このように、HPDLCによる反射型カラーLCDは、マスク露光等による分割露光が必要であり、製造プロセスが極めて煩雑なものであった。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、従来より簡単なプロセスによって製造が可能な体積ホログラム構造を有する反射型液晶装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の液晶装置は、少なくとも一方の基板が光透過性を有する一対の基板間に、ポリマーと液晶分子とからなり、前記ポリマーがリッチなポリマー部と前記液晶分子がリッチな液晶部とが周期的に繰り返し形成された干渉縞構造をなし、前記ポリマー部の周期のピッチ、角度の少なくとも一方が異なる複数の体積ホログラム構造部が形成されるとともに、前記複数の体積ホログラム部の間には液晶がリッチな液晶部が介在し、前記各体積ホログラム構造部に対して電界を印加する電界印加手段が備えられたことを特徴とする。なお、ここで言うポリマー部の「角度」とは、液晶装置を断面視した際の層状のポリマー部と基板面とのなす角度のことである。
【0010】
また、本発明の液晶装置の製造方法は、前記液晶部を構成する液晶分子と前記ポリマー部を構成する光重合性のポリマー前駆体とを含む混合液を、これら液晶およびポリマー前駆体を所定方向に配向させた状態として前記一対の基板間に挟持させる工程と、入射光の屈折角が異なる複数の光学素子を平面的に隣接配置してなる光学素子群を、前記混合液を挟持した一対の基板の前記光透過性を有する基板の外面に配置した状態で光を照射して2光束干渉露光を行い、前記混合液中のポリマー前駆体を重合させることにより、前記ポリマー部と前記液晶部とが周期的に繰り返し形成された干渉縞構造をなし、前記ポリマー部の周期のピッチ、角度の少なくとも一方が異なる複数の体積ホログラム構造部を前記一対の基板間に形成する工程とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の液晶装置の動作およびカラー表示の原理については、従来のHPDLCを備えた液晶装置と同様である。
すなわち、体積ホログラム構造部内のポリマー部と液晶部がともに電界無印加時に所定の方向に配向する状態としておけば、電界無印加状態では液晶部とポリマー部の屈折率がほぼ一致し、透明状を呈するので、液晶装置の一方の基板側から入射した光は他方の基板側に透過する。これに対して、電界印加手段により体積ホログラム構造部に電界を印加したときには、ポリマー部とは独立して液晶部(誘電異方性が正の液晶を用いるものとする)の液晶分子のみが電界方向に沿って再配列し、屈折率の異なるポリマー部による干渉縞構造が現れるので、一方の基板側から入射した光の一部が反射し、残りが他方の基板側から透過する。
【0012】
本発明の液晶装置においては、一つの液晶セル内でポリマー部(干渉縞)のピッチや角度の異なる複数の体積ホログラム構造部が存在するので、その干渉縞のピッチや入射角に応じた波長を有する反射光が得られ、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の各色に対応した反射光を作ることでカラー表示が可能になる。例えば2光束干渉露光に用いる入射光をほぼ平面波と近似して、その波長をλi、2方向の光の交差角をθとすると、干渉縞のピッチpは概ね下の(2)式で表される。
p=λi/{2sin(θ/2)} …(2)
交差角θを変えれば、(2)式から明らかなように、干渉縞のピッチpを変えることができる。
【0013】
本発明の液晶装置の製造方法においては、液晶と光重合性ポリマー前駆体を含む混合液を一対の基板間に挟持させたセルに対して、入射光の屈折角が異なる複数の光学素子を平面的に配置した光学素子群を光透過性基板の外面に配置し、この光学素子群を通して2光束干渉露光を行う。すると、ポリマー前駆体は液晶とともに配向した状態で2方向からの光(入射光と参照光)の干渉により光強度(振幅)の大きい箇所でポリマー化し、ポリマー部と液晶部が交互に配置された干渉縞構造を持つ体積ホログラム構造部が形成される。なお、入射光と参照光の波面が重なる領域は一定の領域に限られるので、この領域にポリマー前駆体が引き寄せられる結果、体積ホログラム構造部の周囲の領域は液晶分子がリッチな液晶部となる。
【0014】
2光束干渉露光の際、本発明では複数の光学素子からなる光学素子群を通して露光を行っており、しかも個々の光学素子における入射光の屈折角が異なるので、各光学素子に対応した光重合が起こる領域毎に入射光と参照光の交差角が異なることとなり、その交差角に応じた異なるピッチ、異なる角度の干渉縞構造が形成される。このように、本発明の液晶装置の製造方法によれば、入射光の屈折角が異なる複数の光学素子からなる光学素子群を通して2光束干渉露光を行うようにしたことにより、1回の全面露光を行うだけで液晶装置の画像表示領域内に異なるピッチや角度の干渉縞構造を有する複数の体積ホログラム構造部を同時に形成することができる。これにより、従来のフォトマスクを用いた分割露光が不要となり、製造プロセスの簡略化が図れる。
【0015】
なお、予め液晶およびポリマー前駆体を配向させる手段としては、ラビング法などの従来一般の配向手法を用いることができる。また、本発明で言う「ポリマー前駆体」とは、後に重合化してポリマー層を構成するモノマーもしくはオリゴマーのことである。また、「ポリマー部」、「液晶部」とは、その部位にポリマー前駆体、液晶のいずれか一方しか存在しないというわけではなく、「ポリマー部」は、ポリマー前駆体が重合したことで相対的にポリマー前駆体がリッチとなる部分(密度が高くなった部分)、「液晶部」は、ポリマー前駆体が「ポリマー部」に引き寄せられたことで相対的に液晶分子がリッチとなる部分(密度が高くなった部分)と定義する。
【0016】
本発明の液晶装置の製造方法に用いる光学素子として、長手方向と垂直な方向の断面が弓状の透明柱状体であって、光学素子群を構成する個々の透明柱状体には2光束干渉露光時に湾曲面側から入射する光の焦点距離がそれぞれ異なるものを用いることができる。もしくは、長手方向と垂直な方向の断面が三角形状の透明柱状体であって、光学素子群を構成する個々の透明柱状体には2光束干渉露光時に光が入射する面の傾斜角度がそれぞれ異なるものを用いてもよい。
【0017】
この種の光学素子を用いた場合、各光学素子における入射光の屈折角が異なるようになるので、入射光と参照光の2光束による干渉縞のピッチや角度が場所によって異なる複数の体積ホログラム構造部を容易に形成することができる。2光束干渉露光を行う際、通常はセルの両面からそれぞれ光を入射させるが、断面が三角形状の透明柱状体からなる光学素子を用いる場合には、光の入射方向に三角柱の稜部分が対向するように配置し、2光束干渉露光時に2つの面から光が入射するようにすれば、セルの片面側から光を入射させただけでも2つの面から入射した光がセルの内部で干渉を起こし、通常用いる参照光を用いることなく、体積ホログラム構造部が形成される。したがって、本発明における「2光束干渉露光」とは、セルに対して2方向から光を入射させるものに限らず、1方向から光を入射した時にセル内部で屈折方向が異なる2光束で干渉が起こるものも含んでいる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態を図1〜図5を参照して説明する。
図1は本実施の形態の液晶装置の概略構成を模式的に示す断面図、図2は同、液晶装置を製造する方法を説明するための概略断面図である。図3および図4は本液晶装置の動作を説明するための体積ホログラム構造部の拡大図であって、図3は電圧無印加状態を、図4は電圧印加状態をそれぞれ示している。図5は同液晶装置の製造工程で用いる2光束干渉露光装置の概略構成図である。なお、以下の図面では、図面を見やすくするため、各構成部材の寸法、膜厚等の比率は適宜変えてある。
【0019】
本実施の形態の液晶装置1は、図1に示すように、無アルカリガラス、石英などの光透過性材料からなる一対の基板2,3間に、液晶部4とポリマー部5とが周期的に繰り返し形成された干渉縞構造を持つ複数の体積ホログラム構造部6A,6B,6Cが形成され、複数の体積ホログラム構造部6A,6B,6Cの間には液晶部4が介在している。本実施の形態では、下側基板2を構成する透明基板7の内面側に、マトリクス状に配置された各画素毎に画素スイッチング用の薄膜トランジスタ8(Thin Film Transistor, 以下、TFTと略記する)と、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide, 以下、ITOと略記する)等の透明導電膜からなる画素電極9とが形成され、アクティブマトリクス基板を構成している。そして、複数の体積ホログラム構造部6A,6B,6Cにおいてはポリマー部5間のピッチ(干渉縞のピッチ)および角度が各画素毎に異なっている。なお、このアクティブマトリクス基板は周知のものでよく、実際にはデータ線、走査線等の信号線が存在するが、ここでは図示を省略する。さらに、下側基板2の内面には、TFT8、画素電極9等を覆うように全域にわたって配向膜10が形成されている。
【0020】
一方、上側基板3を構成する透明基板11の内面側には、その全域にITO等の透明導電膜からなる共通電極12、配向膜13が順次形成されており、アクティブマトリクス基板に対して対向配置された対向基板を構成している。
【0021】
また、下側基板2上の画素電極9はTFT8を介してデータ線、走査線等の信号線に接続され、各信号線が駆動回路に接続される一方、上側基板3上の共通電極12は定電圧源(グランド)に電気的に接続されており、これら全体で体積ホログラム構造部6に対して電界を印加するための電界印加手段を構成している。また、双方の基板2,3上の配向膜10,13には、表面にラビング処理が施されたことで液晶に配向規制力を付与する一般の配向膜を用いることができる。
【0022】
各体積ホログラム構造部6A,6B,6Cの内部構造を詳細に見ると、複屈折性を有する多数のポリマー前駆体が重合してできたポリマー前駆体がリッチな部分(ポリマー前駆体の密度が高いポリマー部5)と、液晶分子がリッチな部分(液晶分子の密度が高い液晶部4)とが周期的に繰り返し形成された干渉縞構造を有している。さらに、製造過程における一対の基板2,3上の配向膜10,13の作用により、ポリマー部5を構成するポリマー前駆体と液晶部4を構成する液晶分子は、電圧無印加時にともに一定方向に配向している。ここで用いられる液晶の具体例としては、誘電異方性が正のネマティック液晶TL−202、E8(メルクジャパン社製)などを例示することができ、ポリマー前駆体の具体例としては、ビフェニルメタクリレートなどを例示することができる。また、ポリマー前駆体の混合割合は5−30wt%が良好である。
【0023】
上記構成の液晶装置1を製造する際には、まず、下側基板2となるガラス等の透明基板7の表面に、TFT8、信号線、画素電極9等を形成し、さらに配向膜10を形成し、アクティブマトリクス基板とする。一方、上側基板3となる透明基板11の表面に共通電極12、配向膜13を形成し、対向基板とする。この双方の基板2,3の作成方法は従来一般の方法でよい。そして、これら基板2,3を貼り合わせて空セルを作製した後、液晶とポリマー前駆体との混合液を注入する。なお、混合液中には重合開始剤を添加しておくことが望ましい。この時、液晶分子とポリマー前駆体はともに同方向に配向する。次に、混合液を挟持したセルに対して2光束干渉露光を行う。
【0024】
この際には、セルの片面側(本実施の形態では上側基板の外面側)に、図2に示すようなマイクロレンズアレイ25(光学素子群)を設置する。このマイクロレンズアレイ25は、長手方向(紙面と垂直な方向)と垂直な方向の断面が弓状(全体として蒲鉾型)の透明柱状体からなるマイクロレンズ26A,26B,26Cが複数個配列されたものであり、各マイクロレンズ26A,26B,26Cの湾曲面の曲率が異なり、湾曲面側から入射する光の焦点距離がそれぞれ異なっている。各マイクロレンズ26A,26B,26Cは任意の透明基板27上に接着剤28等により固定されている。例えば、隣接するマイクロレンズ26A,26B,26Cのピッチは10〜100μm、各マイクロレンズ26A,26B,26Cの焦点距離は100μm以上程度である。
【0025】
このように、マイクロレンズアレイ25をセルに密着させた状態で2光束干渉露光を行うが、その際には図5に示すような2光束干渉露光装置15を用いる。この装置は、レーザ光源16と、レーザ光Sを2つに分岐させるビームスプリッタ17と、分岐した各レーザ光をそれぞれセル21に導くミラー18,19と、レーザ光源16とビームスプリッタ17との間に設置されたコリメータ20とから概略構成されている。このような2光束干渉露光装置15を用い、セル21の両面から光(図2における入射光と参照光)を照射すると、ポリマー前駆体は液晶分子とともに配向したままの状態で2方向の光の干渉により光強度(振幅)が大きくなった箇所で重合化する。
【0026】
ここで、2光束干渉露光に用いる入射光をほぼ平面波と近似して、その波長をλi、入射光と参照光との交差角をθとすると、干渉縞のピッチpは概ね下の(2)式で表される。
p=λi/{2sin(θ/2)} …(2)
(2)式から明らかなように、交差角θを変えれば、それに伴い干渉縞のピッチpを変えることができる。
なお、図2においては入射光がマイクロレンズを透過した後の波面の例を符号Hの破線で示す。
【0027】
ところが、本実施の形態の場合、マイクロレンズアレイ25を通して露光を行っており、しかもマイクロレンズアレイ25を構成する各マイクロレンズ26A,26B,26Cの焦点距離が異なっているので、各マイクロレンズ26A,26B,26Cを透過した後の入射光の波面の形状が異なり、交差角θが実質的に異なっているのと等価になる。その結果、入射光の波面と参照光の波面が重なり合う空間領域でポリマー前駆体が重合し、干渉縞構造を持つ体積ホログラム構造部6A,6B,6Cが形成されるが、その際、各マイクロレンズ26A,26B,26Cに対応する領域毎に干渉縞のピッチおよび角度が異なるものとなる。以上の工程により、本実施の形態の液晶装置1が完成する。
【0028】
本実施の形態の液晶装置1では、例えば図3に示すように、各体積ホログラム構造部6A,6Bを電界無印加状態としたときには、液晶分子とポリマー前駆体が同方向に配向した状態であり、液晶部4とポリマー部5の屈折率がほぼ一致して透明状を呈するので、上側基板3側から入射した光は下側基板2側から透過する。これに対して、図4に示すように、電界印加手段30を用いて体積ホログラム構造部6A,6Bに電界を印加したときには、ポリマー部5とは独立して液晶部4の液晶分子のみが電界方向に沿って立ち上がり、ポリマー部5による干渉縞構造が現れるので、上側基板3側から入射した光の一部が反射し、残りの一部が下側基板2側に透過する。
【0029】
この時、例えば体積ホログラム構造部6A,6Bによって干渉縞のピッチ、角度が異なっており、体積ホログラム構造部6AのピッチがPA、体積ホログラム構造部6BのピッチがPBであったとすると、簡単に干渉縞に垂直な入射光を仮定すると、体積ホログラム構造部6Aからは上記(1)式よりピッチPAに対応した波長λAを持つ光が反射され、体積ホログラム構造部6BからはピッチPBに対応した波長λBを持つ光が反射される。
【0030】
本実施の形態の場合、使用する液晶材料とポリマー前駆体を決めれば液晶部4およびポリマー部5の屈折率がそれぞれ決まり、(2)式に基づいて干渉縞のピッチを所定の値に制御すれば、(1)式から反射光の波長が制御できるという関係にあるので、使用する液晶材料とポリマー前駆体を決定した上で、逆に反射光の波長がR、G、Bの各波長に相当するように各体積ホログラム構造部6A,6B,6Cの干渉縞のピッチを制御する。具体的には、例えば液晶にシアノビフェニル液晶からなる液晶組成物を用い、ポリマー前駆体にビフェニルメタクリレートを用いることとし、液晶とポリマーの屈折率を考慮して体積ホログラム構造部6A,6B,6Cの干渉縞のピッチを1000nm程度、830nm程度、650nm程度の3種類に設定すれば、R、G、Bの各色に対応した反射光が得られる。このようにして、本実施の形態の液晶装置によりカラー表示を実現することができる。
【0031】
本実施の形態の液晶装置1を製造する際には、マイクロレンズアレイ25を通して2光束干渉露光を行っており、しかも個々のマイクロレンズ26A,26B,26Cの焦点距離が異なるので、各マイクロレンズ26A,26B,26Cを透過した光重合が起こる領域毎に入射光と参照光の交差角θが実効的に異なることとなり、その交差角θに応じた異なるピッチ、角度の干渉縞構造が形成される。このように、本実施の形態の液晶装置1の製造方法によれば、焦点距離が異なる複数のマイクロレンズ26A,26B,26Cからなるマイクロレンズアレイ25を通して2光束干渉露光を行うようにしたことにより、一括全面露光を行うだけで液晶装置1の画像表示領域内に異なるピッチ、角度の干渉縞構造を有する複数の体積ホログラム構造部6A,6B,6Cを同時に形成することができ、カラー表示が可能な反射型液晶装置を実現することができる。これにより、従来のフォトマスクを用いた分割露光が不要となり、製造プロセスの簡略化が図れる。
【0032】
また、本実施の形態の体積ホログラム構造部6A,6B,6Cにおいては、流動性を持った液晶部4がポリマー部5の間を埋める構造となっており、液晶がポリマー間の収縮を抑制するため、従来のHPDLCを用いた液晶装置におけるフォトポリマーのような収縮が起こらない。また、フォトポリマーを用いた場合の後加熱処理も不要となる。
【0033】
なお、上記の例では、液晶部4およびポリマー部5を一対の基板2,3間で一定方向を向くように配向させたが、この配向に代えて、体積ホログラム構造部が一対の透明基板2,3間にわたってねじれ(ツイスト)構造を採るようにしても良い。具体的には、カイラル成分としてR1011(メルクジャパン社製)を液晶とポリマー前駆体の混合体に微量添加することによって、任意のツイスト角を持ったねじれ構造を実現することができる。ねじれ構造を採用することにより、反射特性の偏光依存性を小さくすることができる。
【0034】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態を図6を用いて説明する。
本実施の形態の液晶装置の基本構成は第1の実施の形態と同様であり、異なる点は2光束干渉露光時に用いる光学素子の形態のみである。よって、以下の説明ではその部分を中心に説明する。また、図6は本実施の形態の液晶装置に光学素子を密着させた状態を示す断面図であるが、第1の実施の形態で用いた図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0035】
本実施の形態の液晶装置は、図6に示すように、下側基板2を構成する透明基板7の内面に各画素に対応してITO等の透明導電膜からなる画素電極(電圧印加手段)9が形成され、全面に配向膜10が形成されている。上側基板3を構成する透明基板11の内面には、共通電極12(電圧印加手段)と配向膜13が順次形成されている。本実施の形態の場合、一対の基板2,3間に挟持された液晶部4とポリマー部5からなる各体積ホログラム部6A,6B,6Cは、第1の実施の形態と同様、多数のポリマー部5と液晶部4とが周期的に形成された干渉縞構造を有している。そして、各体積ホログラム構造部6A,6B,6Cを構成するポリマー部5(干渉縞)のピッチ、角度が、体積ホログラム構造部6A,6B,6C間で異なっている。用いる液晶材料、ポリマー前駆体などは第1の実施の形態と同様である。
【0036】
上記構成の液晶装置を製造する際には、上側基板3となる透明基板11の表面に共通電極12、配向膜13を形成する一方、下側基板2となる透明基板7の表面にTFT(図示略)、信号線(図示略)、画素電極9等を形成し、配向膜10を形成する。そして、これら基板2,3を貼り合わせて空セルを作製した後、液晶とポリマー前駆体との混合液を注入する。以上の工程までは第1の実施の形態と同様である。
【0037】
次に、混合液が挟持されたセルに対して2光束干渉露光を行うが、第1の実施の形態では蒲鉾型のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイを用いたのに対し、本実施の形態では図6に示すように、長手方向と垂直な方向の断面が直角三角形状の透明柱状体からなる複数のマイクロレンズ32A,32B,32C(光学素子)を隣接配置したマイクロレンズアレイ33(光学素子群)を用いる。このマイクロレンズアレイ33は、各マイクロレンズ32A,32B,32Cの断面形状である直角三角形の斜辺が入射光に対向するように配置したものであり、2光束干渉露光時にはこの斜面から光が入射する。さらに、各マイクロレンズ32A,32B,32Cの光入射面の傾斜角度がレンズによって異なっている。用いる2光束干渉露光装置は第1の実施の形態と同じものである。
【0038】
本実施の形態の場合、上記のようなマイクロレンズアレイ33を通して露光を行っており、しかもマイクロレンズアレイ33を構成する各マイクロレンズ32A,32B,32Cの光入射面の傾斜角度が異なっているので、各マイクロレンズ32A,32B,32Cを透過した後の入射光と参照光の交差角θが各マイクロレンズ32A,32B,32Cに対応する領域によって異なっている。その結果、入射光の波面と参照光の波面が重なり合う空間領域でポリマー前駆体が重合し、干渉縞構造を持つ体積ホログラム構造部6A,6B,6Cが形成される際に、各マイクロレンズ32A,32B,32Cに対応する体積ホログラム構造部6A,6B,6C毎に干渉縞のピッチ、角度が異なるものとなる。以上の工程により、本実施の形態の液晶装置が完成する。
【0039】
本実施の形態の液晶装置の製造方法においても、一括全面露光を行うだけで液晶装置の画像表示領域内に異なるピッチ、角度の干渉縞構造を有する複数の体積ホログラム構造部6A,6B,6Cを同時に形成することができるので、従来のフォトマスクを用いた分割露光が不要となり、製造プロセスの簡略化が図れる、という点で第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0040】
[第3の実施の形態]
以下、本発明の第3の実施の形態を図7を用いて説明する。
本実施の形態の液晶装置の基本構成は第1、第2の実施の形態と同様であり、異なる点は2光束干渉露光時に用いる光学素子の形態のみである。よって、以下の説明ではその部分を中心に説明する。また、図7は本実施の形態の液晶装置に光学素子を密着させた状態を示す断面図であるが、第1の実施の形態で用いた図2と共通の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0041】
本実施の形態の液晶装置は、図7に示すように、下側基板2を構成する透明基板7の内面にR(赤)、G(緑)、B(青)の各画素に対応してITO等の透明導電膜からなる画素電極(電圧印加手段)9が形成され、全面に配向膜10が形成されている。上側基板3を構成する透明基板11の内面には、共通電極12(電圧印加手段)と配向膜13が順次形成されている。本実施の形態の場合、一対の基板2,3間に挟持された液晶部とポリマー部からなる各体積ホログラム部6A,6Bは、第1の実施の形態と同様、多数のポリマー部5と液晶部4とが周期的に形成された干渉縞構造を有している。そして、各体積ホログラム構造部6A,6Bを構成するポリマー部5(干渉縞)のピッチが体積ホログラム構造部6A,6B間で異なっている。用いる液晶材料、ポリマー前駆体などは第1の実施の形態と同様である。
【0042】
上記構成の液晶装置を製造する際には、上側基板3となる透明基板11の表面に共通電極12、配向膜13を形成する一方、下側基板2となる透明基板7の表面にTFT(図示略)、信号線(図示略)、画素電極9等を形成し、配向膜10を形成する。そして、これら基板2,3を貼り合わせて空セルを作製した後、液晶とポリマー前駆体との混合液を注入する。以上の工程までは第1、第2の実施の形態と同様である。
【0043】
次に、混合液が挟持されたセルに対して2光束干渉露光を行うが、第1の実施の形態では蒲鉾型のマイクロレンズからなるマイクロレンズアレイを用いたのに対し、本実施の形態では第2の実施の形態と同様、断面が三角形状の透明柱状体からなる複数のマイクロレンズ35A,35B,35C(光学素子)を隣接配置したマイクロレンズアレイ36(光学素子群)を用いる。しかしながら、第2の実施の形態では各マイクロレンズの断面形状が直角三角形状であって、斜面が入射光側に向くように配置されていたのに対し、本実施の形態では各マイクロレンズ35A,35B,35Cの断面形状が二等辺三角形状であって、二等辺三角形の頂点が入射光側に向くように配置されている。したがって、第2の実施の形態では光入射面が1面のみであったのに対し、本実施の形態では二等辺三角形の2つの斜辺に相当する2面から光が入射される構成となっている。さらに、各マイクロレンズ35A,35B,35Cの光入射面の傾斜角度がそのレンズ毎に異なっている。
【0044】
上記のようなマイクロレンズアレイ36を通して露光を行うが、本実施の形態の場合、各マイクロレンズ35A,35B,35Cに対して光入射面が2つあり、複数のマイクロレンズ35A,35B,35Cを山と谷の連なりと見たときに一つの谷を構成する2つの斜面からの入射光が屈折して重なり合い、ここで干渉縞が発生する。したがって、本実施の形態においては、第1、第2の実施の形態におけるセル裏面側から入射させる参照光を不要とすることができる。しかも、マイクロレンズアレイ36を構成する各マイクロレンズ35A,35B,35Cの光入射面の傾斜角度がレンズ毎に異なっているので、各マイクロレンズ35A,35B,35Cを透過する2つの屈折光の交差角θが各レンズに対応する領域によって異なっている。その結果、2つの屈折光の波面が重なり合う空間領域でポリマー前駆体が重合し、干渉縞構造を持つ体積ホログラム構造部6A,6Bが形成される際に、各マイクロレンズに対応する体積ホログラム構造部毎に干渉縞のピッチが異なるものとなる。以上の工程により、本実施の形態の液晶装置が完成する。
【0045】
本実施の形態の液晶装置の製造方法においても、一括全面露光を行うだけで液晶装置の画像表示領域内に異なるピッチの干渉縞構造を有する複数の体積ホログラム構造部6A,6Bを同時に形成することができるので、従来のフォトマスクを用いた分割露光が不要となり、製造プロセスの簡略化が図れる、という点で第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。その他、2光束干渉露光時に参照光を不要にでき、露光作業が容易になるという本実施の形態に特有の効果が得られる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施の形態においては光学素子として断面が弓状、三角形状の柱状体を用いたが、その他、種々の形状のものを用いることができる。また、上記実施の形態で挙げた液晶やポリマー前駆体の具体的な材料、ポリマー部の周期のピッチ等の具体的な数値等に関しては適宜変更が可能なことは言うまでもない。
【0047】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、入射光の屈折角が異なる複数の光学素子からなる光学素子群を通して2光束干渉露光を行うことにより、一括全面露光を行うだけで液晶装置の画像表示領域内に異なるピッチ、角度の干渉縞構造を有する複数の体積ホログラム構造部を同時に形成することができ、カラー表示が可能な反射型液晶装置を実現することができる。これにより、従来のフォトマスクを用いた分割露光が不要となり、製造プロセスの簡略化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態の液晶装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【図2】 同、液晶装置を製造する方法を説明するための図であり、液晶装置に光学素子を密着させた状態を示す断面図である。
【図3】 本液晶装置の動作を説明するための体積ホログラム構造部の拡大図であって、電圧無印加状態を示している。
【図4】 同図であって、電圧印加状態を示している。
【図5】 同、液晶装置の製造工程で用いる2光束干渉露光装置の概略構成図である。
【図6】 本発明の第2の実施の形態の液晶装置の製造方法を説明するための図であり、液晶装置に光学素子を密着させた状態を示す断面図である。
【図7】 本発明の第3の実施の形態の液晶装置の製造方法を説明するための図であり、液晶装置に光学素子を密着させた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 液晶装置
2 下側基板
3 上側基板
4 液晶部
5 ポリマー部
6A,6B,6C 体積ホログラム構造部
7,11 透明基板
9 画素電極(電界印加手段)
12 共通電極(電界印加手段)
15 2光束干渉露光装置
25,33,36 マイクロレンズアレイ(光学素子群)
26A,26B,26C,32A,32B,32C,35A,35B,35Cマイクロレンズ(光学素子)
30 電界印加手段
Claims (4)
- ポリマーと液晶分子とからなり、前記ポリマーがリッチなポリマー部を構成する光重合性のポリマー前駆体と前記液晶分子がリッチな液晶部を構成する液晶分子とを含む混合液を、これらポリマー前駆体および液晶分子を所定方向に配向させた状態として一対の基板間に挟持させる工程と、画素毎に入射光の屈折角が異なる複数の光学素子を平面的に隣接配置してなる光学素子群を、前記混合液を挟持した一対の基板の光透過性を有する基板の外面に配置した状態で光を照射して2光束干渉露光を行い、前記混合液中のポリマー前駆体を重合させることによって、前記ポリマー部と前記液晶部とが周期的に繰り返し形成された干渉縞構造をなし、前記ポリマー部の周期のピッチ、角度の少なくとも一方が前記画素毎に異なる複数の体積ホログラム構造部を前記一対の基板間に形成する工程とを有することを特徴とする液晶装置の製造方法。
- 前記光学素子として長手方向と垂直な方向の断面が弓状の透明柱状体を用い、前記光学素子群を構成する個々の透明柱状体は、2光束干渉露光時に湾曲面側から入射する光の焦点距離がそれぞれ異なることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造方法。
- 前記光学素子として長手方向と垂直な方向の断面が三角形状の透明柱状体を用い、前記光学素子群を構成する個々の透明柱状体は、2光束干渉露光時に光が入射する面の傾斜角度がそれぞれ異なることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置の製造方法。
- 前記断面が三角形状の各透明柱状体は、2光束干渉露光時に光が入射する2つの面を有し、参照光を用いることなく前記光学素子群に光を入射させて2光束干渉露光を行うことを特徴とする請求項3に記載の液晶装置の製造方法。
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