JP3928407B2 - 開環重合体および開環重合体水素化物の製造方法 - Google Patents

開環重合体および開環重合体水素化物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノルボルネン系開環重合体および該重合体水素化物の新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含むノルボルネン系モノマーの開環重合体およびその水素化物は、耐熱性、電気特性、低吸水性などに優れた極性官能基含有ポリマーとして注目されている。また、該ポリマーは、金属やガラスなどの無機材料に対する密着性に優れ、酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、着色剤、硬化剤、難燃剤などの有機材料との相溶性にも優れるため、広範な複合材料用途への利用が期待されている。
【0003】
かかる極性官能基含有ポリマーを製造する方法としては、例えば、エステル基を含有するノルボルネン系モノマーを開環重合した後、場合によってはさらに水素化した後、ポリマー中に導入されたエステル基を加水分解する方法(特開平5−97978、特開2001−139776);カルボン酸無水物基を含有するノルボルネン系モノマーを開環重合した後、場合によってはさらに水素化した後、ポリマー中に導入されたカルボン酸無水物基を加水分解または加アルコール分解する方法(特開平11−130843);などが知られている。
【0004】
しかしながら、前記公知法は、いずれもヒドロキシル基またはカルボキシル基に変換可能な前駆置換基を有するノルボルネン系モノマーを重合した後、場合によってはさらに水素化した後に、該前駆置換基をヒドロキシル基またはカルボキシル基に変換する方法である。従って、製造工程数が多くなり、製造装置も複雑になるという問題を有していた。そこで、前駆置換基を有するモノマーを経由することなく、ヒドロキシル基またはカルボキシル基を含むノルボルネン系モノマーを、直接的に開環重合する方法の開発が望まれていた。
【0005】
このような課題を解決する方策の一つとして、近年報告された官能基に対して安定性の高いルテニウム化合物を用いるノルボルネン系モノマーの開環重合法(WO93/20111号公報など)があり、例えば、WO99/51344号公報には、5−カルボキシ−2−ノルボルネンの重合例が記載されている。
【0006】
しかし、本発明者らの知見によると、一般に入手可能な5−ヒドロキシメチル−2−ノルボルネン、5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン、5−カルボキシ−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシ−2−ノルボルネンなどの、ノルボルネン環の5位または6位にヒドロキシルメチル基またはカルボキシル基を有するモノマーを、ルテニウム化合物(触媒)を用いて重合しようとしても、それらのモノマーの重合活性は低く、多量の触媒を使用する必要があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来技術の問題点と実情に鑑み、本発明の目的は、ヒドロキシル基またはカルボキシル基に変換可能な前駆置換基を有するモノマーを用いることなく、ヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系モノマーを開環重合させて、ノルボルネン系開環重合体およびその水素化物を効率よく、工業的有利に製造する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、5−ヒドロキシメチル−2−ノルボルネン、5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン、5−カルボキシ−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシ−2−ノルボルネンのような、ノルボルネン環の5位または6位にヒドロキシメチル基またはカルボキシル基が結合したモノマーにはエンド体およびエキソ体の立体異性体が存在するが、エンド体のみが特異的にルテニウム触媒の重合活性を阻害することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のノルボルネン系開環重合体の製造方法は、ルテニウム系メタセシス触媒の存在下、ルテニウム化合物の存在下、ヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系モノマーを開環重合させるに際し、(1)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、1個の炭素原子を介してヒドロキシル基が結合し、またはカルボキシル基が直接結合し、かつエンド体とエキソ体の総量に対するエキソ体含有量が90重量%以上であるモノマー;(2)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、直接または2〜10個の炭素原子を含む置換基を介してヒドロキシル基が結合したモノマー;および(3)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、1〜10個の炭素原子を含む置換基を介してカルボキシル基が結合したモノマー;からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを用いることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系開環重合体水素化物の製造方法は、上記の方法によりノルボルネン系開環重合体の製造する工程(A)と、該重合体の炭素−炭素二重結合を水素化する工程(B)とを含むものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、ノルボルネン系モノマー、ルテニウム系メタセシス触媒、ノルボルネン系開環重合体の製法、ノルボルネン系開環重合体水素化物の製法の項目に分けて詳細に説明する。
【0012】
なお、本発明に用いられるノルボルネン系モノマーを「モノマー」と、ルテニウム系メタセシス触媒を「ルテニウム触媒」または「触媒」と略記することがある。また、ノルボルネン系開環重合体を「重合体」と、ノルボルネン系開環重合体水素化物を「水素化物」と略記することもある。
【0013】
(ノルボルネン系モノマー)
本発明のノルボルネン系開環重合体の製造方法、および該重合体水素化物の製造方法においては、ヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系モノマーが用いられる。ここでノルボルネン系モノマーとは、分子内にノルボルネン環構造を有するモノマーをいう。該ノルボルネン環構造においては、橋頭部炭素原子のいずれか一方の位置番号を1位として、2位および3位の炭素原子が炭素−炭素二重結合により互いに結合し、その5位または6位炭素原子にヒドロキシル基またはカルボキシル含有置換基が結合している。
【0014】
そして、本発明に用いられるモノマーは、(1)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、1個の炭素原子を介してヒドロキシル基が結合し、またはカルボキシル基が直接結合し、かつエンド体とエキソ体の総量に対するエキソ体含有量が90重量%以上であるモノマー;(2)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、直接または2〜10個の炭素原子を含む置換基を介してヒドロキシル基が結合したモノマー;および(3)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、1〜10個の炭素原子を含む置換基を介してカルボキシル基が結合したモノマー;からなる群より選択される。
【0015】
前記(1)に属するモノマーは、エンド体とエキソ体の総量に対するエキソ体含有量が90重量%以上であることが必須である。エキソ体含有量が90重量%未満の場合、本発明の目的を達成することは困難である。前記(2)および前記(3)に属するモノマーについては、エンド体とエキソ体の総量に対するエキソ体含有量は特に限定されない。
【0016】
前記(1)のモノマーは、(1−a)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に1個の炭素原子を介してヒドロキシル基が結合し、かつエンド体とエキソ体の総量に対するエキソ体含有量が90重量%以上であるモノマー;および(1−b)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子にカルボキシル基が直接結合し、かつエンド体とエキソ体の総量に対するエキソ体含有量が90重量%以上であるモノマー;の2つのモノマー群からなる。
【0017】
前記(1−a)において、ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子とヒドロキシル基の間に介在する1個の炭素原子は、メチレン基(−CH−)のみならず、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子またはケイ素原子を含む炭素数1〜10の炭化水素基が該メチレン基に置換していてもよい。
【0018】
前記(1−a)としては、例えば、5−ヒドロキシメチル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ヒドロキシメチル−2−ノルボルネン、5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。前記(1−b)としては、例えば、5−カルボキシ−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−カルボキシ−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0019】
かかる前記(1)に属するモノマーのエキソ体含有量をエキソおよびエンド体の全量に対して90重量%以上にする方法は特に限定されない。例えば、分別結晶法や精密蒸留法によるエンド体の除去、エンド体のエキソ体への異性化反応など工業的に通常用いられる方法に従って、エキソ体含有量を90重量%以上にすればよい。
【0020】
前記(2)に属するモノマーであって、ヒドロキシル基がノルボルネン環に直接結合したものとしては、5−ヒドロキシ−2−ノルボルネン、5,6−ジヒドロキシ−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0021】
前記(2)に属する、2〜10個の炭素原子を含む置換基を介してヒドロキシル基が結合したモノマーにおいて、ノルボルネン環とヒドロキシル基との間に介在する2〜10個の炭素原子を含む置換基は、単にアルキレン基を示すのみならず、アルキレンカルボニル基、アルキレンカルボニルアルキレン基、アルキレンオキシカルボニル基、アルキレンオキシカルボニルアルキレン基、アルキレンアミノ基、アルキレンアミド基、アルキレンイミド基なども含むものである。また、かかる介在基には、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子またはケイ素原子を含む炭素数1〜10の炭化水素基が置換していてもよい。
【0022】
このようなヒドロキシル基含有ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、5−ヒドロキシエチル−2−ノルボルネン、5,6−ジヒドロキシエチル−2−ノルボルネン、5−(3−ヒドロキシプロピル)−2−ノルボルネン、5−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−2−ノルボルネン、5−ヒドロキシエトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−ヒドロキシエトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−ヒドロキシプロポキシカルボニル−2−ノルボルネン、5―メチル−5−ヒドロキシプロポキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジ(ヒドロキシエトキシカルボニル)−2−ノルボルネン、N−ヒドロキシ−2−ノルボルネン−5,6−ジカルボキシイミド、N−ヒドロキシエチル−2−ノルボルネン−5,6−ジカルボキシイミド、N−(p−ヒドロキシフェニル)−2−ノルボルネン−5,6−ジカルボキシイミドなどが挙げられる。
【0023】
さらに、該ヒドロキシル基含有ノルボルネン誘導体にシクロペンタジエンがディールズ・アルダー付加したテトラシクロドデセン誘導体、8−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−ヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,8−ジヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなども挙げることができる。
【0024】
前記(3)に属するモノマーとしては、5−カルボキシメチル−2−ノルボルネン、5,6−ジカルボキシメチル−2−ノルボルネン、5−カルボキシエチル−2−ノルボルネン、5−(p−カルボキシフェニル)−2−ノルボルネン、5−(4−カルボキシシクロヘキシル)−2−ノルボルネン、N−カルボキシ−2−ノルボルネン−5,6−ジカルボキシイミド、N−カルボキシメチル−2−ノルボルネン−5,6−ジカルボキシイミドなどのカルボキシル基含有ノルボルネン誘導体が挙げられる。
【0025】
さらに、該カルボキシル基含有ノルボルネン誘導体にシクロペンタジエンがディールズ・アルダー付加したテトラシクロドデセン誘導体、8−カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジカルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなども挙げることができる。
【0026】
本発明における重合反応は、前記(1)〜(3)の群から選択されるモノマーの単独重合のみならず、2種以上の共重合を含むものである。また、前記(1)〜(3)の群から選択されるモノマーと共重合可能な他の任意のモノマーとの共重合をも含むものである。
【0027】
そのような他の任意モノマーとしては、例えば、2−ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−シクロへキシル−2−ノルボルネン、5−シクロへキセニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどの置換基を有しないあるいは置換基として炭化水素基を有するノルボルネン系モノマー;
【0028】
5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、2−ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸無水物、2−ノルボルネン−5,6−ジカルボン酸イミド、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどの官能基を有するモノマー;シクロペンテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン類;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエンなどのジオレフィン類;などが挙げられる。
【0029】
(ルテニウム系メタセシス触媒)
ノルボルネン系開環重合体の製造方法においては、公知のルテニウム系メタセシス触媒が用いられる。該触媒は、中心金属としてルテニウムが存在し、開環メタセシス重合活性を示すものであれば特に限定されない。通常、ルテニウムに中性の電子供与性配位子が配位し、好ましくは更にアニオン性配位子が配位し、より好ましくは更にルテニウム−カルベン結合を有するものである。また、前記アニオン性配位子とは別に、対アニオンが存在していてもよい。
【0030】
ここで「中性の電子供与性配位子」とは、中心金属であるルテニウムから引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子をいう。また、「アニオン性配位子」とは、ルテニウムから引き離されたときに負の電荷を持つ配位子である。「対アニオン」とは、ルテニウム陽イオンとイオン対を形成する陰イオンをいい、こうした対を形成できる陰イオンであれば特に限定されない。
【0031】
中性の電子供与性配位子としては、酸素、水、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エ−テル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、ホスフィナイト類、ホスファイト類、スチビン類、スルホキシド類、チオエーテル類、アミド類、芳香族炭化水素類、ジオレフィン類(環状であってもよい)、オレフィン類(環状であってもよい)、イソシアニド類、チオシアネ−ト類、複素環式カルベン化合物などが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、ビピリジンなどのピリジン類、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンなどのホスフィン類、p−シメンなどの芳香族炭化水素類、シクロペンタジエンなどの環状ジオレフィン類、1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデンなどの複素環式カルベン化合物が好ましい。
【0033】
アニオン性配位子としては、F、Br、Cl、Iなどのハロゲン、ヒドリド、アセチルアセトナート基などのジケトナート基、シクロペンタジエニル基、アリル基、アルケニル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボキシル基、カルボキシル基、アルキルまたはアリールスルフォネート基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基などが挙げられる。これらの中でも、ハロゲン、シクロペンタジエニル基、アリル基、アルキル基、アリール基が好ましい。
【0034】
対アニオンとしては、BF 、B(C 、PF 、SbF 、ClO 、IO 、p−トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオンなどが挙げられる。これらの中でも、BF 、B(C 、PF 、SbF が好ましい。
【0035】
かかるルテニウム触媒の代表例としては、下記式(1)〜(3)で表されるものが挙げられる。
【0036】
【化1】
Figure 0003928407
【0037】
(式(1)中、Lは互いに独立に任意の中性電子供与性配位子を表わし、Yは互いに独立に任意のアニオン性配位子を示す。Lおよび/またはYの2個、3個または4個は互いに結合して多座キレート配位子を形成してもよい。a、bは1〜4の整数で、xは1〜6の整数である。)
【0038】
前記式(1)、つまりルテニウムに中性の電子供与性配位子が配位した触媒、または更にアニオン性配位子が配位した触媒としては、例えば、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム、クロロ(シクロペンタジエニル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、シス−ジクロロビス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム・二水和物、ジクロロビス〔(p−シメン)クロロルテニウム〕〕、ジクロロ(2,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエン−1,8−ジイル)ルテニウムなどが挙げられる。
【0039】
【化2】
Figure 0003928407
【0040】
(式(2)中、Lは互いに独立に中性の電子供与性配位子を表し、Yは互いに独立にアニオン性の配位子を表す。Qは互いに独立して水素または炭素数1〜20個の炭化水素基(ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、珪素原子、リン原子、硫黄原子を含んでいてもよい)を表す。c、d、yはそれぞれ1〜4の整数を表し、eは0または1を表す。)
【0041】
前記式(2)におけるQとしては、例えば、水素、アルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アルキリデン基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基などが挙げられる。これらの中でも、アルキル基、アルキリデン基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基が好ましい。
【0042】
前記式(2)、つまりルテニウム−カルベン結合を有する触媒としては、例えば、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)−3,3−ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)t−ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリン−2−イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0043】
【化3】
Figure 0003928407
【0044】
(式(3)中、Lは互いに独立に中性電子供与性配位子を表し、Yは互いに独立にアニオン性配位子を表す。Xは対アニオンを表す。f、gは1〜4の整数を表し、zは1または2である。)
【0045】
前記式(3)、つまり更に対アニオンを有するで触媒としては、例えば、[(p−シメン)(CHCN)Ru](BF、[(C)(CHCN)(Cl)Ru](BF)、[(C)(CHCN)Ru](PF、[(CHCN)(Cl)(2,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエン−1,8−ジイル)Ru](BF)、[(CHCN)(2,7−ジメチルオクタ−2,6−ジエン−1,8−ジイル)Ru](BFなどが挙げられる。
【0046】
前記式(1)〜(3)で表わされる触媒の中でも、式(2)が高い重合活性を示すので、好ましく用いられる。また、式(1)〜(3)で表わされる触媒の重合活性を高める方法として、ピリジン類、ホスフィン類、中性の電子供与性化合物(例えば、1,3−ジイソプロピルイミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデンなどの複素環式カルベン化合物)などをルテニウム金属に対して、重量比で1〜100倍の割合で添加して併用することができる。
【0047】
さらに、式(1)〜(3)で表される触媒の重合活性を高める別の方法として、例えば、NCHCOOEtなどのジアゾ化合物、フェニルアセチレンなどのアセチレン化合物またはEtSiH、PhMeSiHなどのシリル化合物を、ルテニウム金属に対して、重量比で1〜100倍の割合で添加することもできる。Etはエチル基、Phはフェニル基、Meはメチル基である。
【0048】
(ノルボルネン系開環重合体の製法)
本発明の開環メタセシス重合は、溶媒の存在下または不存在下で行うことができる。重合反応終了後、生成した重合体を単離せずに、そのまま水素化反応を行う場合は、溶媒中で重合する方が好ましい。溶媒は生成する重合体を溶解し、かつ重合反応を阻害しない溶媒であれば特に限定されない。
【0049】
重合反応溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素;
【0050】
ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどの含窒素系炭化水素;ジエチルエ−テル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ−テル類;アセトン、エチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、安息香酸メチルなどのエステル類;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン系炭化水素;などが挙げられる。
【0051】
かかる溶媒の中でも、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル類、ケトン類、エステル類を使用するのが好ましい。溶媒中のノルボルネン系モノマーの濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは2〜45重量%、さらに好ましくは5〜40重量%である。モノマー濃度が1重量%未満では重合体の生産性が悪くなることがあり、50重量%を超えると重合後の粘度が高すぎて、その後の水素化などが困難となることがある。
【0052】
重合触媒の使用量は、触媒中の金属ルテニウムに対するモノマーのモル比で、金属ルテニウム:単量体=1:100〜1:2,000,000、好ましくは1:500〜1:1,000,000、より好ましくは1:1,000〜1:500,000である。触媒量が前記モル比よりも多すぎると触媒除去が困難となることがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られないことがある。
【0053】
重合触媒は溶媒に溶解して反応系に添加してもよいし、溶解せずにそのまま添加してもよい。触媒溶液を調製する溶媒としては、前記重合反応溶媒と同様の溶媒が挙げられる。
【0054】
重合温度は特に制限はないが、通常、−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜180℃、より好ましくは−30℃〜160℃、さらに好ましくは0℃〜140℃である。重合時間は、通常1分〜100時間であり、反応の進行状況に応じて適宜調節することができる。
【0055】
かかる重合反応においては、重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤を用いることができる。そのような分子量調整剤としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのα−オレフィン;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレートなど酸素含有ビニル化合物;アクリロ二トリル、アクリルアミドなどの窒素含有ビニル化合物などが挙げられる。モノマーに対して、分子量調整剤を0.1〜100モル%使用することにより、所望の分子量を有する重合体を得ることができる。
【0056】
(ノルボルネン系開環重合体水素化物の製法)
本発明のヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系開環重合体水素化物の製造方法は、前述の方法によりノルボルネン系開環重合体の製造する工程(A)と、該重合体の炭素−炭素二重結合を水素化する工程(B)とを含むものである。
【0057】
前記工程(B)の水素化反応は、水素化触媒の存在下に水素を導入し、ノルボルネン系開環重合体の主鎖中の炭素−炭素二重結合を飽和単結合に変換する反応である。水素化触媒は特に限定されず、オレフィン化合物の水素化に際して一般的に使用されているものを適宜採用すればよい。
【0058】
そのような水素化触媒としては、例えば、酢酸コバルトとトリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナートとトリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリドとn−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリドとsec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネートとジメチルマグネシウムのような遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなるチーグラー系触媒;
【0059】
前記式(1)〜(3)で示されるルテニウム触媒、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、特開平7−2929、特開平7−149823、特開平11−209460、特開平11−158256、特開平11−193323、特開平11−209460などに記載されるルテニウム化合物からなる貴金属錯体触媒;などの均一系触媒が挙げられる。
【0060】
また、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムなどの金属を、カーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させた不均一触媒、例えば、ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナなどを用いることもできる。
【0061】
これらの水素化触媒の中でも、ノルボルネン系開環重合体に含有される極性官能基が変性するなどの副反応が起きず、該重合体中の炭素−炭素二重結合を選択的に水素化できる点から、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属錯体触媒およびパラジウム/カーボンなどのパラジウム担持触媒が好ましく、前記式(1)〜(3)で示されるルテニウム触媒、パラジウム担持触媒がより好ましい。
【0062】
前記式(1)〜(3)で示されるルテニウム触媒は、前記工程(A)の重合反応に用いられるので、重合反応終了後、該触媒をそのまま水素化触媒として使用することが好ましい。このように重合反応と水素化反応を連続的に行う場合、エチルビニルエーテルなどのビニル化合物やα−オレフィンなどの触媒改質剤を添加して該触媒を活性化させてから、水素化反応を開始することも好まく採用される。また、別種の水素化触媒を併用することもできる。
【0063】
水素化反応は、通常、有機溶媒中で実施する。有機溶媒は生成する水素化物の溶解性により適宜選択することができ、前記重合溶媒と同様の有機溶媒を使用することができる。したがって、重合反応後、溶媒を入れ替えることなく、そのまま水素化触媒を添加して反応させることもできる。
【0064】
水素化反応条件は、使用する水素化触媒の種類に応じて適宜選択すればよい。反応温度は、通常−20〜250℃、好ましくは−10〜220℃、より好ましくは0〜200℃である。−20℃未満では反応速度が遅くなり、逆に250℃を超えると副反応が起こりやすくなる。水素の圧力は、通常0.01〜10.0MPa、好ましくは0.05〜8.0MPa、より好ましくは0.1〜5.0MPaである。水素圧力が0.01MPa未満では水素化速度が遅くなり、10.0MPaを超えると高耐圧反応装置が必要となる。
【0065】
水素化反応の時間は、水素化率をコントロールするために適宜選択される。反応時間は、通常0.1〜50時間の範囲であり、重合体中の主鎖の炭素−炭素二重結合のうち50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上を水素化することができる。
【0066】
このようにして得られるヒドロキシル基またはカルボキシル基を含むノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物は、耐熱性や電気特性などに優れる。従って、プラスチックレンズ、球形レンズ、非球形レンズ、複写機レンズ、ビデオカメラコンバータレンズ、光ディスク用ピックアップレンズ、車両部品用レンズなどの耐熱性光学部品材料;半導体封止用材料、半導体アンダーフィルム用材料、半導体保護膜用材料、液晶封止用材料、回路基材材料、回路保護用材料、平坦化膜材料電気絶縁膜材料などの電子部品用材料;などの用途に好適に使用することができる。
【0067】
【実施例】
以下に、実施例と比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(1)分子量は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値として測定した。
(2)重合体中の単量体組成比は、プロトンNMRスペクトルにより測定した。
(3)水素化率は、プロトンNMRスペクトルにより測定した。
【0068】
[実施例1]
攪拌機付きガラス反応器に、テトラヒドロフラン360部、5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン(5位および6位置換基ともにエキソ体>98重量%)46.3部、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン48.0部、および1−ヘキセン0.29部を仕込んだ。テトラヒドロフラン40部に溶解した(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.05部を添加して、70℃で重合を行った。2時間後、重合反応液を多量のイソプロパノールに注いで固形分を析出させ、濾別洗浄後、40℃で18時間減圧乾燥して開環メタセシス重合体を得た。
【0069】
得られた重合体の収量は64部(収率=68%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=32,100、重量平均分子量(Mw)=59,500であった。重合体中の単量体組成比は5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン(5位および6位置換基ともにエキソ体>98%)/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン=52/48(モル/モル)であった。
【0070】
[比較例1]
前記実施例1の5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン(5位置および6位置換基ともにエキソ体>98重量%)を、5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン(5位および6位置換基ともにエンド体>98重量%)に代えたこと以外は、実施例1と同様に重合した。得られた重合体の収量は1部(収率=1%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=8,100、重量平均分子量(Mw)=19,200であった。重合体中の単量体組成比は5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン(5位および6位置換基ともにエンド体>98%)/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン=24/76(モル/モル)であった。
【0071】
[実施例2]
前記実施例1の5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン(5位および6位置換基ともにエキソ体>98%)46.3部を5−ヒドロキシ−2−ノルボルネン(5位置換基のエンド体/エキソ体比=77/23)33.0部に代え、1−ヘキセンの仕込み量を0.51部に代えたこと以外は、実施例1と同様に重合した。得られた重合体の収量は79部(収率=98%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=16,300、重量平均分子量(Mw)=33,000であった。重合体中の単量体組成比は5−ヒドロキシ−2−ノルボルネン/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン=50/50(モル/モル)であった。
【0072】
[実施例3]
前記実施例1の5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン(5位および6位置換基ともにエキソ体>98%)46.3部を5−ヒドロキシエチル−2−ノルボルネン(5位置換基のエンド体/エキソ体比=74/26)46.8部に代え、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン48.0部をジシクロペンタジエン39.7部に代えたこと以外は、実施例1と同様に重合した。得られた重合体の収量は68部(収率=79%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=26,200、重量平均分子量(Mw)=75,500であった。重合体中の単量体組成比は5−ヒドロキシエチル−2−ノルボルネン/ジシクロペンタジエン=51/49(モル/モル)であった。
【0073】
[比較例2]
前記実施例3の5−ヒドロキシエチル−2−ノルボルネン(エンド/エキソ比=74/26)46.8部を、5−ヒドロキシメチル−2−ノルボルネン(5位置換基のエンド体/エキソ体比=72/28)37.2部に代えたこと以外は、実施例3と同様に重合した。得られた重合体の収量は6部(収率=8%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=21,100、重量平均分子量(Mw)=57,300であった。重合体中の単量体組成比は5−ヒドロキシメチル−2−ノルボルネン/ジシクロペンタジエン=50/50(モル/モル)であった。
【0074】
[実施例4]
前記実施例1の5,6−ジヒドロキシメチル−2−ノルボルネン(5位および6位置換基ともにエキソ体>98重量%)46.3部を、5−ヒドロキシエトキシカルボニル−2−ノルボルネン(5位置換基のエンド体/エキソ体比=77/23)61.8部に代えたこと以外は、実施例1と同様に重合した。得られた重合体の収量は77部(収率=70%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=26,500、重量平均分子量(Mw)=60,000であった。重合体中の単量体組成比は5−ヒドロキシエトキシカルボニル−2−ノルボルネン/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン=54/46(モル/モル)であった。
【0075】
上記重合体100部をテトラヒドロフラン400部に溶解した後、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、次いでビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)ジクロリド0.05部及びエチルビニルエーテル0.39部をテトラヒドロフラン20部に溶解した水素化触媒溶液を添加し、水素圧4.5MPa、120℃で6時間水素化反応を行った。反応終了後、反応液を多量のイソプロパノールに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、90℃で18時間減圧乾燥した。得られた水素化物の分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=27,800、重量平均分子量(Mw)=61,800であった。ヒドロキシ基およびエステル基が完全に保存され、主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることをプロトンNMRにより確認した。
【0076】
[実施例5]
攪拌機付きガラス反応器に、テトラヒドロフラン360部、8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン74.8部、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン25.2部、および1−ヘキセン4.4部を仕込んだ。テトラヒドロフラン40部に溶解した(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.04部を添加して、70℃で重合を行った。2時間後、重合反応液を多量のn−ヘキサンに注いで固形分を析出させ、濾別洗浄後、40℃で18時間減圧乾燥し開環メタセシス重合体を得た。該重合体の収量は91部(収率=91%)であった。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=3,210、重量平均分子量(Mw)=4,990であった。重合体中の単量体組成比は8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン=71/29(モル/モル)であった。
【0077】
上記重合体100部をテトラヒドロフラン400部に溶解した後、攪拌機付きオートクレーブに仕込み、次いで10%パラジウム/カーボン5部を添加し、水素圧4.5MPa、60℃で6時間水素化反応を行った。反応終了後、反応液を多量のn−ヘキサンに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、90℃で18時間減圧乾燥した。水素化物の分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=4,070、重量平均分子量(Mw)=6,160であった。カルボキシル基が完全に保存され、主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることをプロトンNMRにより確認した。
【0078】
[比較例3]
前記実施例5の8−カルボキシ−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン74.8部を、5−カルボキシ−2−ノルボルネン(エンド/エキソ比=82/18)38.7部に代えたこと以外は実施例5と同様にして重合した。しかし、重合体は得られなかった。
【0079】
[実施例6]
攪拌機付きオートクレーブに、テトラヒドロフラン360部、8−ヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン61.2部、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン48.0部、および1−ヘキセン0.29部を仕込んだ。テトラヒドロフラン40部に溶解した(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド0.05部を添加して、70℃で2時間重合を行った。
重合反応溶液の一部を採取して実施例1と同様にして分析したところ、収率は95%で、分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=29,200、重量平均分子量(Mw)=57,700であった。重合体中の単量体組成比は、8−ヒドロキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン/テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン50/50(モル/モル)であった。
【0080】
続いて、オートクレーブにテトラヒドロフラン20部に溶解したビニルエチルエーテル0.39部を添加し、水素圧4.5MPa、120℃で6時間水素化反応を行った。水素化反応液を多量のイソプロパノールに注いでポリマ−を完全に析出させ、濾別洗浄後、90℃で18時間減圧乾燥した。分子量(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)=31,200、重量平均分子量(Mw)=60,100であった。ヒドロキシ基が完全に保存され、主鎖中の炭素−炭素二重結合の99%以上が水素化されていることをプロトンNMRにより確認した。
【0081】
【発明の効果】
本発明の開環重合体および開環重合体水素化物の製造方法は、ヒドロキシル基またはカルボキシル基に変換可能な前駆置換基を有するノルボルネン系モノマーを用いることなく、ヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系開環重合体およびその水素化物を極めて効率よく、工業的有利に製造することができるという効果を奏する。

Claims (4)

  1. 下記式(1)で表されるルテニウム系メタセシス触媒の存在下、ヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系モノマーを開環重合させるに際し、(1)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、1個の炭素原子を介してヒドロキシル基が結合し、またはカルボキシル基が直接結合し、かつエンド体とエキソ体の総量に対するエキソ体含有量が90重量%以上であるモノマー;(2)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、直接または2〜10個の炭素原子を含む置換基を介してヒドロキシル基が結合したモノマー;および(3)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、1〜10個の炭素原子を含む置換基を介してカルボキシル基が結合したモノマー;からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを用い、かつ、前記ルテニウム系メタセシス触媒中の金属ルテニウムに対する前記モノマーの比率が、モル比で、金属ルテニウム:単量体=1:1,000〜1:500,000であることを特徴とするノルボルネン系開環重合体の製造方法。
    Figure 0003928407
    (式(1)中、L は互いに独立に任意の中性電子供与性配位子を表わし、Y は互いに独立に任意のアニオン性配位子を示す。L および/またはY の2個、3個または4個は互いに結合して多座キレート配位子を形成してもよい。a、bは1〜4の整数で、xは1〜6の整数である。)
  2. 下記式(2)で表されるルテニウム系メタセシス触媒の存在下、ヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系モノマーを開環重合させるに際し、(1)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、1個の炭素原子を介してヒドロキシル基が結合し、またはカルボキシル基が直接結合し、かつエンド体とエキソ体の総量に対するエキソ体含有量が90重量%以上であるモノマー;(2)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、直接または2〜10個の炭素原子を含む置換基を介してヒドロキシル基が結合したモノマー;および(3)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、1〜10個の炭素原子を含む置換基を介してカルボキシル基が結合したモノマー;からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを用い、かつ、前記ルテニウム系メタセシス触媒中の金属ルテニウムに対する前記モノマーの比率が、モル比で、金属ルテニウム:単量体=1:1,000〜1:500,000であることを特徴とするノルボルネン系開環重合体の製造方法。
    Figure 0003928407
    (式(2)中、L は互いに独立に中性の電子供与性配位子を表し、Y は互いに独立にアニオン性の配位子を表す。Qは互いに独立して水素または炭素数1〜20個の炭化水素基(ハロゲン原子、窒素原子、酸素原子、珪素原子、リン原子、硫黄原子を含んでいてもよい)を表す。c、d、yはそれぞれ1〜4の整数を表し、eは0または1を表す。)
  3. 下記式(2)で表されるルテニウム系メタセシス触媒の存在下、ヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系モノマーを開環重合させるに際し、(1)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、1個の炭素原子を介してヒドロキシル基が結合し、またはカルボキシル基が直接結合し、かつエンド体とエキソ体の総量に対するエキソ体含有量が90重量%以上であるモノマー;(2)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に、直接または2〜10個の炭素原子を含む置換基を介してヒドロキシル基が結合したモノマー;および(3)ノルボルネン環の5位または6位の炭素原子に 、1〜10個の炭素原子を含む置換基を介してカルボキシル基が結合したモノマー;からなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを用い、かつ、前記ルテニウム系メタセシス触媒中の金属ルテニウムに対する前記モノマーの比率が、モル比で、金属ルテニウム:単量体=1:1,000〜1:500,000であることを特徴とするノルボルネン系開環重合体の製造方法。
    Figure 0003928407
    (式(2)中、L は互いに独立に中性の電子供与性配位子を表し、Y は互いに独立にアニオン性の配位子を表す。Qは互いに独立して、水素、アルケニル基、アルキニル基、アルキル基、アルキリデン基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基およびアルキルスルフィニル基から選択されるものを表す。c、d、yはそれぞれ1〜4の整数を表し、eは0または1を表す。)
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法によりノルボルネン系開環重合体を製造する工程(A)と、該重合体の炭素−炭素二重結合を水素化する工程(B)とを含む、ヒドロキシル基またはカルボキシル基含有ノルボルネン系開環重合体水素化物の製造方法。
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