JP3928329B2 - ポリアミドイミド樹脂組成物及び被膜形成材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂組成物及びこれを用いて得られる被膜形成材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子部品の分野においては、小型化、薄型化及び高速化への対応から、耐熱性、電気特性及び耐湿性に優れる樹脂としてエポキシ樹脂に代わり、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂等が使用されている。しかし、これらの樹脂は、樹脂構造が剛直であり、薄膜基材に用いた場合、硬化後の基材が大きく反り、硬化膜は柔軟性に欠け、屈曲性に劣る問題があった。
【0003】
そこで、樹脂を可とう化及び低弾性率化したポリアミドイミド樹脂が種々提案されている。しかし、従来、ワニス化のための溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン等の高沸点含窒素系極性溶媒が用いられているため、硬化時には200℃以上の高温硬化が必要となり、電子部材の熱劣化が生じる問題があった。また、基材へワニスを塗工した後、放置が長くなった場合、吸湿による塗膜の白化及びボイドが生じ、作業条件が煩雑になる問題がある。
【0004】
一方、非含窒素系極性溶媒に可溶であり、低反り性及び柔軟性を有する樹脂として例えば、特開平7-304950号公報、特開平8-333455号公報等にポリイミドシロキサンが開示されている。これらのポリイミドシロキサンは、低弾性率化のため、高価なジメチルシロキサン結合を有するジアミンを出発原料として用いており、経済性に劣っている。また、シロキサンの変性量の増加に伴い、封止材との密着性、耐溶剤性、耐薬品性(耐ハンダフラックス性)が低下する問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解消し、低反り性、柔軟性、封止材との密着性、耐溶剤性及び耐薬品性に優れ、しかも非含窒素系極性溶媒に可溶で低温硬化性を有し、耐熱性、電気特性、耐湿性、作業性及び経済性に優れるポリアミドイミド樹脂組成物及びそれを用いた優れた前記特性を有する被膜形成材を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)一般式(I)
【化3】
(式中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数を示し、Yは三価の有機基を示す)
で表される繰り返し単位を有するポリアミドイミド樹脂を含有してなるポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
【0007】
また本発明は、(A)(a)酸無水物基を1つ有する3価以上のポリカルボン酸又はその誘導体及び(b)一般式(II)
【化4】
(式中、複数個のRは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、複数個のXは、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基又はアリーレン基を示し、m及びnは、それぞれ独立に1〜20の整数を示す)で表されるジイソシアネートを必須成分として反応させて得られるポリアミドイミド樹脂を含有してなるポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
【0008】
また本発明は、前記(A)成分が、さらに(c)成分として(b)成分以外のポリイソシアネート化合物を反応成分として得られるものであるポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
また本発明は、有機溶媒として非含窒素系極性溶媒を含む前記のポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
【0009】
また本発明は、前記(A)成分のポリアミドイミド樹脂を製造する際の(b)成分及び(c)成分の配合割合が(b)成分及び(c)成分の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1であり、(b)及び(c)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分のカルボキシル基及び酸無水物基の総数の比が0.6〜1.4であるポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
【0010】
また本発明は、前記(A)ポリアミドイミド樹脂100重量部並びに(B)エポキシ樹脂1〜50重量部を含有してなるポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
また本発明は、前記エポキシ樹脂(B)が、エポキシ基を3個以上有するアミン型エポキシ樹脂であるポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
さらに本発明は、前記の何れかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物を含む被膜形成材料に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、前記の様な(A)ポリアミドイミド樹脂を必須成分として含有する。
前記一般式(I)において、Yは三価の有機基であるが、一般にイソシアネート化合物やアミン化合物と反応してポリアミドイミド樹脂を形成する三価のトリカルボン酸無水物の残基である。
【0012】
本発明における(A)成分のポリアミドイミド樹脂の製造には一般に(a)成分として酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸又はその誘導体が用いられる。この例としては、特に制限はないが、イソシアネート基と反応しうる酸無水物基を有するものであればよく、例えば、一般式(III)及び(IV)
【化5】
(式中、R′は水素、炭素数1〜10のアルキル基又はフェニル基を示し、Yは−CH2−、−CO−、−SO2−又は−O−を示す)
で表されるトリカルボン酸無水物及びその誘導体を使用することができる。密着性、コスト面などを考慮すれば、トリメリット酸無水物が特に好ましい。
【0013】
また、上記のポリカルボン酸又はその誘導体の他に必要に応じて、テトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−スルホニルジフタル酸二無水物、m−タ−フェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス〔4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス〔4−(2,3−又は3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−〔2,2,2〕−オクト−7−エン−2:3:5:6−テトラカルボン酸二無水物等)、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、デカン二酸、ドデカン二酸、ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキシジ安息香酸等)などを使用することができる。
【0014】
本発明において(b)成分として用いる前記一般式(II)で表されるジイソシアネートは、例えば、一般式(V)
【化6】
(式中、複数個のRはそれぞれ独立に炭素数1〜18のアルキレン基を示し、mは、1〜20の整数である)
で表されるカーボネートジオール類と一般式(VI)
【化7】
〔式中、Xは、炭素数1〜18のアルキレン基又はフェニレン基等のアリーレン基(これはメチル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基を置換基として有していてもよい)を示す〕
で表されるジイソシアネート類とを無溶媒あるいは有機溶媒中で反応させることにより得られる。
【0015】
上記の一般式(V)で表されるカーボネートジオール類としては、例えば、ダイセル化学(株)製の商品名PLACCEL、CD−205、205PL、205HL、210、210PL、210HL、220、220PL、220HLとして市販されるものが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
また、上記一般式(VI)で表されるジイソシアネート類としては例えば、ジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジメチルジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジエチルジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、3,2′−又は3,3′−又は4,2′−又は4,3′−又は5,2′−又は5,3′−又は6,2′−又は6,3′−ジメトキシジフェニルメタン−2,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3′−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4′−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4′−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、4,4′−[2,2ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
また、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、水添m−キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式イソシアネート及び3官能以上のポリイソシアネートを用いてもよく、経日変化を避けるために必要なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。ブロック剤としては、アルコール、フェノール、オキシム等があるが、特に制限はない。
【0018】
上記の一般式(V)で表されるカーボネートジオール類と一般式(VI)で表されるジイソシアネートの配合量は、水酸基数とイソシアネート基数の比率が、イソシアネート基/水酸基=1.01以上になるようにすることが好ましい。
反応は、無溶媒あるいは有機溶媒の存在下で行うことができる。反応温度は、60〜200℃とすることが好ましく、反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件などにより適宜選択することができる。
【0019】
このようにして得られる(b)成分のジイソシアネートの数平均分子量は、500〜10,000であることが好ましく、1,000〜9,500であることがより好ましく、1,500〜9,000であることが特に好ましい。数平均分子量が500未満であると、反り性が悪化する傾向があり、10,000を超えると、ジイソシアネートの反応性が低下し、ポリアミドイミド樹脂化することが困難となる傾向がある。
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値である。
【0020】
本発明においては、さらに(c)成分として上記(b)成分以外のポリイソシアネート化合物を用いることが、耐熱性の点で好ましい。このようなポリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、例えば、(b)成分で用いられる一般式(VI)で表されるジイソシアネート類又は3価以上のポリイソシアネート類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
(c)成分のポリイソシアネート化合物としては、その総量の50〜100重量%が芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、耐熱性、溶解性、機械特性、コスト面などのバランスを考慮すれば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートが特に好ましい。
【0022】
本発明における(b)成分の一般式(II)で表されるジイソシアネートと(c)成分のポリイソシアネートの配合割合は、(b)成分/(c)成分の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1とすることが好ましく、0.2/0.8〜0.8/0.2とすることがより好ましく、0.3/0.7〜0.7/0.3とすることが特に好ましい。この当量比が0.1/0.9未満では、低弾性率化できず、反り性及び密着性が低下する傾向があり、0.9/0.1を超えると、耐熱性等の膜特性が低下する傾向がある。
【0023】
また、(a)成分の酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸の配合割合は、(b)成分と(c)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分のカルボキシル基及び酸無水物基の総数の比が0.6〜1.4となるようにすることが好ましく、0.7〜1.3となるようにすることがより好ましく、0.8〜1.2となるようにすることが特に好ましい。この比が0.6未満又は1.4を超えると、ポリアミドイミド樹脂の分子量を高くすることが困難となる傾向がある。
【0024】
本発明のポリアミドイミド樹脂の製造法における反応は、有機溶媒、好ましくは非含窒素系極性溶媒の存在下に、遊離発生してくる炭酸ガスを反応系より除去しながら加熱縮合させることにより行うことができる。
上記非含窒素系極性溶媒としてはエーテル系溶媒、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチルエーテル、トリエチレングリコール、ジメチルエーテル、トリエチレングリコール、ジエチルエーテル、含硫黄系溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホラン、エステル系溶媒、例えば、γ−ブチロラクトン、酢酸セロソルブ、ケトン系溶媒、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、芳香族炭化水素系溶媒、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。生成する樹脂を溶解する溶剤を選択して使用するのが好ましい。合成後、そのままペーストの溶媒として好適なものを使用することが好ましい。高揮発性であって、低温硬化性を付与でき、かつ効率良く均一系で反応を行うためには、γ−ブチロラクトンが最も好ましい。
【0025】
溶媒の使用量は、生成するポリアミドイミド樹脂の0.8〜5.0倍(重量比)とすることが好ましい。0.8倍未満では、合成時の粘度が高すぎて、攪拌不能により合成が困難となる傾向があり、5.0倍を超えると、反応速度が低下する傾向がある。
反応温度は、80〜210℃とすることが好ましく、100〜190℃とすることがより好ましく、120〜180℃とすることが特に好ましい。80℃未満では反応時間が長くなり過ぎ、210℃を超えると反応中に三次元化反応が生じてゲル化が起こり易い。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択することができる。また、必要に応じて、三級アミン類、アルカリ金属、アルカリ土類金属、錫、亜鉛、チタニウム、コバルト等の金属又は半金属化合物等の触媒存在下に反応を行っても良い。
【0026】
このようにして得られたポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、4,000〜40,000であることが好ましく、5,000〜38,000であることがより好ましく、6,000〜36,000であることが特に好ましい。数平均分子量が4,000未満であると、耐熱性等の膜特性が低下する傾向があり、40,000を超えると、非含窒素系極性溶媒に溶解しにくくなり、合成中に不溶化しやすい。また、作業性に劣る傾向がある。
また、合成終了後に樹脂末端のイソシアネート基をアルコール類、ラクタム類、オキシム類等のブロック剤でブロックすることもできる。
【0027】
本発明に用いられる(B)成分のエポキシ樹脂としては、例えば、油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート828等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、東都化成(株)製の商品名YDF−170等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート152、154、日本化薬(株)製の商品名EPPN−201、ダウケミカル社製の商品名DEN−438等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬(株)製の商品名EOCN−125S、103S、104S等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製の商品名Epon1031S、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名アラルダイト0163、ナガセ化成(株)製の商品名デナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等の多官能エポキシ樹脂、油化シェルエポキシ(株)製の商品名エピコート604、東都化成(株)製商品名YH−434、三菱ガス化学(株)製の商品名TETRAD−X、TETRAD−C、日本化薬(株)製の商品名GAN、住友化学(株)製の商品名ELM−120等のアミン型エポキシ樹脂、チバ・スペシャルティ・ケルカルズ(株)製の商品名アラルダイトPT810等の複素環含有エポキシ樹脂、UCC社製のERL4234、4299、4221、4206等の脂環式エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
これらのエポキシ樹脂のうち、1分子中にエポキシ基を3個以上有するアミン型エポキシ樹脂は、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性の向上の点で特に好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(B)は、1分子中にエポキシ基を1個だけ有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。このようなエポキシ化合物は、ポリアミドイミド樹脂全量に対して0〜20重量%の範囲で使用することが好ましい。このようなエポキシ化合物としては、n−ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等がある。また、3,4−エポキシシクロヘキシル、メチル(3,4−エポキシシクロヘキサン)カルボキシレート等の脂環式エポキシ化合物を使用することができる。
【0029】
本発明における(B)成分のエポキシ樹脂の使用量は、(A)成分のポリアミドイミド樹脂100重量部に対して好ましくは1〜50重量部、より好ましくは2〜45重量部、さらに好ましくは3〜40重量部とされる。エポキシ樹脂の配合量が1重量部未満では、耐溶剤性、耐薬品性、耐湿性が低下する傾向にあり、50重量部を超えると、耐熱性及び粘度安定性が低下する傾向にある。
エポキシ樹脂の添加方法としては、添加するエポキシ樹脂を予めポリアミドイミド樹脂に含まれる溶媒と同一の溶媒に溶解してから添加してもよく、また、直接ポリアミドイミド樹脂に添加してもよい。
【0030】
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物には、塗工時の作業性及び被膜形成前後の膜特性を向上させるため、必要に応じて、有機又は無機のフィラー類、消泡剤、レベリング剤等の界面活性剤類、染料又は顔料等の着色剤類、硬化促進剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤などを添加することができる。
【0031】
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、被膜形成材料として、例えば、半導体素子や各種電子部品用オーバーコート剤、リジット又はフレキ基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層、接着層などや、液状封止剤、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニスにも使用できる。本発明における被膜形成材は、上記組成物を用いて形成される被膜を有する、半導体素子、フレキシブル回路基板、積層板、エナメル線等を指す。
【0032】
本発明におけるポリアミドイミド樹脂組成物は、前記した(b)成分のジイソシアネートを用いて得られるポリアミドイミド樹脂を用いること又はさらにエポキシ樹脂を用いることにより所期の目的の効果を得ることができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【0034】
実施例1
攪拌機、油水分離器付き冷却管、窒素導入管及び温度計を備えた5リットルの四つ口フラスコに、(b)成分としてPLACCEL CD−220(ダイセル化学(株)製1,6−ヘキサンジオール系ポリカーボネートジオールの商品名)1000.0g(0.50モル)及び4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート250.27g(1.00モル)と、γ−ブチロラクトン833.51gを仕込み、140℃まで昇温した。140℃で5時間反応させ、ジイソシアネート[一般式(I)において、Rがすべてヘキサメチレン基を示し、Xがジフェニルメタン基を示し、m=13、n=1であるジイソシアネート]を得た。
【0035】
更に、この反応液に(a)成分として無水トリメリット酸288.20g(1.50モル)、(c)成分として4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート125.14g(0.50モル)及びγ−ブチロラクトン1361.14gを仕込み、160℃まで昇温した後、6時間反応させて、数平均分子量が18,000の樹脂を得た。得られた樹脂をγ−ブチロラクトンで希釈し、粘度160Pa・s、不揮発分52重量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。なお、(b)成分/(c)成分のモル比は、0.5/0.5である。
【0036】
実施例2
実施例1で得られたポリアミドイミド樹脂溶液の樹脂分100重量部に対してYH−434(東都化成(株)製アミン型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約120、エポキシ基4個/分子)10重量部を加え、γ−ブチロラクトンで希釈して、粘度100Pa・s、不揮発分52重量%のポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0037】
実施例3
実施例2において、YH−434、10重量部の代わりに、エピコート828(油化シェルエポキシ(株)製ビスフェノールA型エポキシ樹脂の商品名、エポキシ当量約189、エポキシ基2個/分子)10重量部を用いた以外は、実施例1と全く同様の操作を行い、粘度95Pa・s、不揮発分52重量%の樹脂組成物を得た。
【0038】
比較例1
フラスコを2Lとした以外は実施例1と同様のフラスコに(a)成分として無水トリメリット酸288.2g(1.50モル)、(c)成分として4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート382.9g(1.53モル)及びN−メチル−2−ピロリドン1006.7gを仕込み、130℃まで昇温した後、3時間反応させて、数平均分子量が16,000の樹脂を得た。得られた樹脂をN,N′−ジメチルホルムアミドで希釈して、粘度17Pa・s、不揮発分38重量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0039】
比較例2
比較例1で得られたポリアミドイミド樹脂溶液の樹脂分100重量部に対してYH−434を10重量部を加え、N−メチル−2−ピロリドンで希釈して、粘度12Pa・s、不揮発分38重量%のポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0040】
比較例3
比較例1と同様のフラスコに(c)成分として4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート150.0g(0.60モル)、(a)成分として無水トリメリット酸69.1g(0.36モル)及びシリコーンジカルボン酸BY16−750(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製ジメチルポリシロキサン系ジカルボン酸の商品名)335.0g(0.24モル)、γ−ブチロラクトン277.1g及びN−メチル−2−ピロリドン277.1gを仕込み、160℃まで昇温した後、2時間反応させて、数平均分子量が12,600の樹脂を得た。得られた樹脂をγ−ブチロラクトンで希釈して、粘度8Pa・s、不揮発分40重量%のポリアミドイミド樹脂溶液を得た。
【0041】
比較例4
比較例3で得られたポリアミドイミド樹脂溶液の樹脂分100重量部に対してYH−434を10重量部を加え、γ−ブチロラクトンで希釈して、粘度6Pa・s、不揮発分39重量%のポリアミドイミド樹脂組成物を得た。
【0042】
上記の実施例及び比較例で得られたポリアミドイミド樹脂溶液及びポリアミドイミド樹脂組成物の物性を下記の方法で測定し、結果を表1に示した。
【0043】
▲1▼反り性
厚さ50μm、縦35mm、横20mmのポリイミドフィルム上に、得られたポリアミドイミド樹脂組成物を塗布し、90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で120分又は160℃で60分加熱し、得られた塗膜(厚さ:20μm)について、塗布面を下にして定盤上に置き、反り高さを評価した。
【0044】
▲2▼耐溶剤性
厚さ35μmの電解銅箔の粗面上に、得られたポリアミドイミド樹脂組成物を塗布し、90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で120分又は160℃で60分加熱し、得られた塗膜(厚さ:20〜30μm)について、室温でアセトン中に1時間塗膜を浸漬させ、塗膜外観の変化について下記基準で評価した。
○:外観変化なし
△:一部外観に変化あり
×:全面外観に変化あり
【0045】
▲3▼封止材に対する密着性
厚さ35μmの電解銅箔の粗面又は厚さ50μmのポリイミドフィルム上に、得られたポリアミドイミド樹脂組成物を塗布し、90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で120分又は160℃で60分加熱し、得られた塗膜(厚さ:20〜30μm)上に、エポキシ系封止材〔日立化成工業(株)製商品名CEL−C−5020〕を0.06gポッティングし、120℃で120分、さらに150℃で120分加熱する。得られた塗膜は、封止材側が外側になるように折り曲げ、剥離のモードを下記の基準で評価した。
○:基材/塗膜の界面剥離
△:塗膜/封止材の界面剥離
×:全く接着せず
【0046】
▲4▼耐湿性(プレッシャークッカーテスト)
厚さ35μmの電解銅箔の粗面又は厚さ50μmのポリイミドフィルム上に、得られたポリアミドイミド樹脂組成物を塗布し、90℃で15分乾燥した後、空気雰囲気下、120℃で120分又は160℃で60分加熱し、得られた塗膜(厚さ:20〜30μm)についてプレッシャークッカーテスト(PCTと略す、条件121℃、2.0265×105Pa、100時間)を行った後の塗膜外観変化について下記の基準で評価した。
○:外観変化なし
△:一部外観に変化あり
×:全面外観に変化あり
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】
本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は、低反り性、柔軟性、封止材との密着性、耐溶剤性及び耐薬品性に優れ、しかも非含窒素系極性溶媒に可溶で低温硬化性を有し、耐熱性、電気特性、作業性及び経済性に優れるものである。
【0049】
また、本発明のポリアミドイミド樹脂組成物は被膜形成材料として、上記の優れた特性を有するものであり、半導体素子や各種電子部品用オーバーコート、リジット又はフレキ基板分野などにおける層間絶縁膜、表面保護膜、ソルダレジスト層、接着層などや、液状封止材、エナメル線用ワニス、電気絶縁用含浸ワニス、注型ワニス、マイカ、ガラスクロス等の基材と組み合わせたシート用ワニス、MCL積層板用ワニス、摩擦材料用ワニスに好適に用いられる。被膜を形成して得られる各種電気部品、電子部品等の被膜形成材は、信頼性に優れる物となる。
Claims (8)
- (A)成分が、さらに(c)成分として(b)成分以外のポリイソシアネート化合物を反応成分として得られるものである請求項2記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
- 有機溶媒として非含窒素系極性溶媒を含む請求項1、2又は3記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
- (A)成分のポリアミドイミド樹脂を製造する際の(b)成分及び(c)成分の配合割合が(b)成分及び(c)成分の当量比で0.1/0.9〜0.9/0.1であり、(b)及び(c)成分中のイソシアネート基の総数に対する(a)成分のカルボキシル基及び酸無水物基の総数の比が0.6〜1.4である請求項3記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
- (A)ポリアミドイミド樹脂100重量部並びに(B)エポキシ樹脂1〜50重量部を含有してなる請求項1〜5の何れかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
- エポキシ樹脂(B)が、エポキシ基を3個以上有するアミン型エポキシ樹脂である請求項6記載のポリアミドイミド樹脂組成物。
- 請求項1〜7の何れかに記載のポリアミドイミド樹脂組成物を用いて形成される被膜を有する被膜形成材。
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