JP3926555B2 - 加熱用回転体、加熱装置、定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

加熱用回転体、加熱装置、定着装置及び画像形成装置

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被加熱体を加熱する加熱用回転体、加熱装置、定着装置、及び複写機,プリンタ,ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、電子写真方式等の作像プロセス機構により、シート状の記録媒体上に未定着トナー像を転写方式または直接方式で形成して担持させる。この未定着トナー像のトナーは簡単にシート状の記録媒体から剥がれ落ちるので、トナーに熱、あるいは圧力、あるいは熱と圧力の両方を加えることにより、トナーをシート状の記録媒体の表面に永久的に固着させることが必要となる。このトナーをシート状の記録媒体の表面に永久的に固着させる工程は定着プロセスと呼ばれている。
【0003】
シート状の記録媒体の例としては、A4サイズやA3サイズなどにカットされた普通紙やOHPシートが一般的である。トナーをシート状の記録媒体の表面に永久的に固着させる定着装置には色々な方式があるが、熱と圧力の両方を加える定着方式が最も普及しており、その定着方式においてトナーに熱を加える加熱方式として、従来から、熱ローラ定着方式、フィルム加熱定着方式などの接触加熱定着方式が一般に用いられている。
【0004】
熱ローラ定着方式およびフィルム加熱定着方式の定着装置は、中空あるいは中実の円筒形状の回転体と、この回転体に圧接してシート状の記録媒体を挟持する加圧体(中空円筒形状あるいは中実円筒形状の場合は加圧ローラと呼ぶ)とを有している。シート状の記録媒体は上記回転体あるいは上記加圧体の回転運動に従動して上記回転体と上記加圧体の間を搬送される。上記回転体はそれに接して或いはその近傍に配置した発熱体により加熱されるか或いは自己発熱により加熱される。
【0005】
熱ローラ定着方式では、ハロゲンランプやニクロム線ヒータ等の棒管状発熱ヒータを、上記回転体としての定着ローラ本体(ヒータを含めて定着ローラと称する場合があるため、定着ローラからヒータを除いた部分を定着ローラ本体と呼ぶことにする)の中心軸上に配設して定着ローラ本体を加熱するのが一般的である。また、フィルム加熱定着方式では、上記回転体としてのフィルムの回転方向に直交する方向に長手方向を一致させて配置した細長い板状の発熱体をフィルムに当接させて加熱するのが一般的である。
【0006】
従来、上記熱ローラ定着方式の定着装置では、定着ローラ本体の加熱に時間を要し、電源を投入してから定着ローラ表面の温度が定着に適した温度に達するまでの時間(以下、ウォームアップタイムという)が比較的長かった。そのウォームアップタイムの間には使用者は画像形成装置を使用することができず、長時間の待機を強いられるという問題があった。
【0007】
また、待機時から使用可能状態に至るまでの待ち時間を短くするために、待機中も定着ローラを比較的高温に保つように発熱体に通電する必要があり、無駄な電力を消費していた。多量の電力を定着ローラに投入すれば、ウォームアップタイムは短縮できるが、定着装置における消費電力が増大し、省エネルギーという観点から望ましくない。消費電力を増やさずにウォームアップタイムを短縮することが、定着装置の省エネルギー化(低消費電力化)と、ユーザの操作性(クイックプリント)との両立を図るために望まれていた。
【0008】
一方、上記フィルム加熱定着方式の定着装置は、ウォームアップタイムは短いものの、トナーへの熱供給能力において高速な定着には対応できず、またフィルムが蛇行したり破損たりし易いために記録媒体の搬送の安定性および耐久性の点で熱ローラ定着方式に劣っていた。
【0009】
そこで、定着ローラ本体としての回転体の外側表面近傍のみを発熱させ、あるいは加熱し、さらに発熱層の内側に断熱層を形成して発生した熱が回転体の内部に逃げないようにすることによって、ウォームアップタイムを短縮した定着装置が特開平2-131275号公報、特開平2-131276号公報、特開平3-27073号公報、特開平6-75491号公報、特開平8-202194号公報、特開平8-335000号公報、特開平9-152801号公報および特開平10-340023号公報に記載されている。
【0010】
また、回転体の加熱源として電磁誘導作用による発熱現象を利用した誘導加熱方式の定着装置が提案されている。これは、交番磁界中に導電体を置くと電磁誘導により導電体中に渦電流が流れ、その渦電流により発生するジュール熱により導電体が発熱する現象を利用して回転体を加熱するものである。すなわち、回転体の一部または全部を導電体で構成し、回転体の内部または外部に磁束生成コイルを配置し、この磁束生成コイルに交流電流を流して生じた交番磁束を回転体内の導電体に浸透させることによりその導電体に誘導渦電流を発生させ、その渦電流と回転体内の導電体自体の抵抗によって回転体内の導電体をジュール発熱させる。
【0011】
この誘導加熱定着装置では、電気−熱変換効率が大きく向上するため、ウォームアップタイムの短縮が可能となる。また、ハロゲンランプ等のヒータで回転体の表面を加熱する場合や発熱層自体をヒータで構成する場合のような他の表面加熱方式に比べて被加熱材が発火する危険が少ない。この誘導加熱定着装置において、回転体に低熱伝導層(断熱層)を設け、さらにその外側に誘導加熱される導電体からなる薄い発熱層を設けることにより、発熱層の熱が回転体内部に逃げるのを防いでウォームアップタイムを短縮した定着装置が特開平11-288190号公報に記載されている。
【0012】
なお、導電体は、その磁性に着目した場合、銅のような反磁性体、アルミニウムのような常磁性体、鉄のような強磁性体の3種類に分けられる。通常、強磁性体を単に磁性体と呼び、反磁性体と常磁性体を非磁性体と呼んでいる。以下ではその呼び方に従う。磁性体を誘導加熱する場合、上述の渦電流により発生するジュール熱に加えてヒステリシス損による熱も発生する。回転体には機械的強度を保てるだけの厚さが必要であるため、回転体の厚さを減らすことには限界がある。そのため、発熱層を回転体の外側表面近くに設け、断熱層でその発熱層を回転体の内部と熱的に切り離すという上述の従来例が、現在のところ熱ローラ定着方式のウォームアップタイムを短縮できる最上の方式である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
加熱し易いものは冷め易いという性質も併せ持っている。発熱層を回転体の外側表面近くに設けて断熱層でその発熱層を回転体の内部と熱的に切り離すという上述の従来例の場合、断熱層の外側の発熱層は、電力投入を止めるとすぐに冷えてしまう。したがって、使用後例えば5分間の間隔を置いて再使用する場合でも、朝一番に使用する場合と同様に冷えた状態から加熱を開始することになる。そのため、待機状態から使用する場合でも電源オフ状態から使用する場合とあまり大きく変らない時間だけ待たされることになり、使い勝手が悪く、それを避けるためには待機時の予備加熱が欠かせなかった。
【0014】
なお、発熱層を極端に薄くして発熱層の熱容量を減らすことにより、立ち上げに要する時間を3秒程度以下にすれば待機時における発熱層の予備加熱は必要でなくなるが、そうすると、被加熱材に与えるのに十分なだけの熱量を回転体が保持することができずに定着不良を引き起こしてしまう。したがって、待機時に回転体を予備加熱することを避けることはできず、そのための消費エネルギーは依然として大きかった。
【0016】
請求項に係る発明は、ウォームアップタイムが短く、待機時の消費電力が少なくて投入エネルギーの熱への変換効率が高い上に、余分なエネルギーを蓄熱にまわして蓄熱効率を向上させることができる加熱装置を提供することを目的とする。
請求項に係る発明は、ウォームアップタイムが短く、待機時の消費電力を一層少なくすることができる加熱装置を提供することを目的とする。
【0017】
請求項に係る発明は、ウォームアップタイムが短くて待機時の消費電力が少なく、待機時の蓄熱層の加熱効率が高くて待機時の投入エネルギーを減らすことができる加熱装置を提供することを目的とする。
請求項に係る発明は、ウォームアップタイムが短く、かつ待機時の消費電力が少ない定着装置を提供することを目的とする。
請求項に係る発明は、ウォームアップタイムが短く、かつ待機時の消費電力が少ない画像形成装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、熱容量の大きな磁性体からなる蓄熱層、この蓄熱層の外側に設けられ非磁性体でかつ熱伝導率の低い材料からなる断熱層、この断熱層の外側に設けられ導電体からなる発熱層を有する加熱用回転体と、この加熱用回転体の外側に配置され交番電流により交番磁束を生成して該交番磁束により前記発熱層を発熱させる磁束生成手段とを備え、前記加熱用回転体により被加熱体を加熱し、前記磁束生成手段に与える交番電流の周波数を可変にしたものである。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の加熱装置において、待機時の前記交番電流の周波数を立ち上げ時の前記交番電流の周波数よりも低くしたものである。
【0019】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の加熱装置において、前記発熱層を構成する材料の導電率と透磁率との積の値が、前記蓄熱層を構成する磁性体の導電率と透磁率との積の値に比べて小さいものである。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱装置を用いたことを特徴とする定着装置である。
【0021】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置である。
【0022】
【発明の実施の形態】
ウォームアップタイムの短縮には限界があって加熱用回転体の予備加熱が避けられないのなら、加熱用回転体を冷えにくくして、少ないエネルギーでも待機時の加熱用回転体の温度を維持することができるようにする方向で消費エネルギーを減らせば良い。具体的には、加熱用回転体の外側表面近傍に発熱層を設け、その内側に断熱層を設け、さらに断熱層の内側に蓄熱層を設けて熱を蓄積できるようにして、冷えにくくする。
【0023】
断熱層の厚さと熱伝導率が適切であれば、10秒程度の短い時間スケールでは、断熱層の断熱作用が十分働いて発熱層の熱が加熱用回転体の内部に逃げず、加熱用回転体の外側表面は急速に定着可能温度に達することができる。したがって、蓄熱層を設けてもウォームアップタイムの短縮効果は維持される。また、比較的長い時間スケールでは、発熱層の熱が断熱層を通過して内部の蓄熱層に溜まっていく。蓄熱層に溜まった熱が断熱層を通過して加熱用回転体から逃げるのも、同様に比較的長い時間スケールで起こる。したがって、例えば5分間使用した後では蓄熱層が十分に温まり、その熱が5分間程度蓄熱層から発熱層に供給され続けて発熱層を冷めにくくしているので、その間は加熱用回転体の予備加熱に要するエネルギーが少なくて済む。
【0024】
次に、加熱用回転体において発熱層の内側に断熱層を設けてその内側に蓄熱層を設けることにより、ウォームアップタイムが短くかつ待機時の消費電力が少ない加熱用回転体を実現できるということを詳しく説明する。
加熱用回転体の発熱層における単位時間当たりの熱の発生量をQと書く。また、単位時間当たりに断熱層を通過して発熱層から蓄熱層に逃げる熱量をqと書く。また、単位時間当たりに離型層を通過して発熱層から外部空気中に逃げる熱量をpと書く。また、発熱層の熱容量をCと書く。また、発熱層内の温度の空間変化は小さいので、近似的に発熱層内の温度が空間的に均一であると見なす。すると、発熱層の温度は単位時間当たり次のV1だけ上昇する。
V1=(Q−q−p)/C・・・(1)
断熱層が無ければ、単位時間当たりに発熱層から蓄熱層に逃げる熱量をq’と書くと、発熱層の温度は単位時間当たり次のV2だけ上昇することになる。
V2=(Q−q’−p)/C・・・(2)
これより、
V1/V2=(Q−q−p)/(Q−q’−p)・・・(3)
となる。ここでも発熱層内の温度が空間的に均一であると見なした。蓄熱層が発熱層に比べて温度が低いときは、q’はqに比べて大幅に大きいので、(3)式は分子が分母に比べて大幅に大きく、したがって断熱層が有る場合の発熱層の温度上昇速度V1は断熱層が無い場合の発熱層の温度上昇速度V2に比べて大幅に大きい。
このように、断熱層を設けると、立ち上げ時の発熱層の温度上昇速度が大幅にアップする。
【0025】
断熱層がある場合と断熱層が無い場合の立ち上げ時の発熱層と蓄熱層の温度を示すと、図7に示すようになる。図7において、Aは断熱層を設けた場合の発熱層の温度、Bは断熱層を設けた場合の蓄熱層の温度、Cは断熱層を設けない場合の発熱層の温度、Dは断熱層を設けない場合の蓄熱層の温度である。時間が経つと、断熱層があっても無くても、蓄熱層は発熱層に近い温度にまで加熱される。
【0026】
次に、待機状態を考える。蓄熱層から断熱層を通過して発熱層に逃げる単位時間当りの熱量をaと書き、蓄熱層から芯金層に逃げる単位時間当りの熱量をuと書き、蓄熱層の熱容量をDと書く。蓄熱層内の温度の空間変化は小さいので、近似的に蓄熱層内の温度が空間的に均一であると見なせる。すると、蓄熱層の温度は単位時間当たり次のV3だけ低下する。
V3=(a+u)/D・・・(4)
また、断熱層がないときに蓄熱層から発熱層に逃げる単位時間当りの熱量をbと書く。断熱層がないときでも、蓄熱層から芯金層に逃げる単位時間当りの熱量は、断熱層がある場合と断熱層がない場合とで、蓄熱層の温度が同じときは同じである。したがって、断熱層がないときは、蓄熱層の温度は単位時間当たり次のV4だけ低下する。
V4=(b+u)/D・・・(5)
これより、
V3/V4=(a+u)/(b+u)・・・(6)
となる。ここでも蓄熱層内の温度が空間的に均一であると見なした。ここに、aはbに比べて小さいので、断熱層がある場合の蓄熱層の温度低下速度V3は断熱層がない場合の蓄熱層の温度低下速度V4に比べて小さい。
このように、断熱層を設けると、蓄熱層の温度は断熱層が無い場合に比べて下がりにくい。
【0027】
次に、芯金層から回転体内部の空気に逃げる単位時間当りの熱量をeと書く。また、芯金層の熱容量をGと書く。芯金層は近似的に蓄熱層と同じ温度であると見なせるので、芯金層と蓄熱層の平均温度は単位時間当たり次のV5だけ低下する。
V5=(a+e)/(D+G)・・・(7)
次に、断熱層があって蓄熱層が無い場合を考える。
芯金層から回転体内部の空気に逃げる単位時間当りの熱量をeと書き、芯金層から断熱層に逃げる単位時間当りの熱量をfと書き、芯金層の熱容量をGと書く。近似的に芯金層内の温度が空間的に均一であると見なすと、芯金層の温度は単位時間当たり次のV6だけ低下する。
V6=(e+f)/G・・・(8)
蓄熱層が有る場合と蓄熱層が無い場合とを、芯金層および断熱層が両者で同じ温度のときで比較すると、そのときはfがaに等しいので、
V6=(e+a)/G・・・(9)
となり、V6は蓄熱層の熱容量Dが大きいためV5よりもかなり大きい。
【0028】
すなわち、蓄熱層が無い場合は蓄熱層が有る場合に比べて断熱層の内部の温度が速く低下する。逆に言うと、蓄熱層を設けることにより断熱層の内部の温度の低下速度を遅らせることができる。したがって、待機時に加熱用回転体の温度を所定の温度に維持するために投入しなければならないエネルギーが少なくて済む。このように、加熱用回転体において発熱層の内側に断熱層を設けて更にその内側に蓄熱層を設けることにより、ウォームアップタイムが短くかつ待機時の消費電力が少ない加熱用回転体を実現できる。
【0029】
図2は、本発明の参考形態1の概略構成を示す横断面模型図である。この参考形態1は、加熱装置の例であり、例えば画像形成装置に定着装置として用いられる。図2において、1は加熱用回転体としての加熱ローラである。この加熱ローラ1の外側表面に対向して磁束生成手段としての磁束生成コイル2が設けられる。この磁束生成コイル2は、加熱ローラ1の外側表面に接近してニップ部以外の加熱ローラ1外側表面のうちのニップ部入口に近い側のほぼ半分を取り囲むように配置してある。磁束生成コイル2はリッツ線からなる。
【0030】
磁束生成コイル2には非図示の電源により交番電流が供給される。この交番電流により磁束生成コイル2が交番磁束を発生し、その交番磁束は加熱ローラ1の発熱層に渦電流を発生させ、その渦電流により加熱ローラ1の発熱層がジュール発熱する。加熱ローラ1には、加圧部材としての加圧ローラ3が非図示のバネにより圧接される。加圧ローラ3は、直径40mmのアルミニウムからなる円柱の回りに厚さ5mmのシリコーンゴム層を設け、さらにその外側を厚さ50μmのポリテトラフルオロエチレンキャップで覆ったものである。
【0031】
加熱ローラ1は、図示していない駆動手段により矢印4の方向に回転駆動され、その回転に連れて加圧ローラ3が従動回転する。この加熱ローラ1と加圧ローラ3の圧接部には未定着トナー像を担持したシート状の記録媒体5が搬送され、この記録媒体5が加熱ローラ1と加圧ローラ3の圧接部を通過している間に、熱と圧力によりトナー像が記録媒体5に定着される。
【0032】
加熱ローラ1には温度センサ6が取り付けてあり、この温度センサ6は加熱ローラ1の表面温度を検知する。非図示の温度制御機構は、温度センサ6からの検知信号により磁束生成コイル2を加熱ローラ1の表面温度が所定の温度(定着可能温度)になるように制御する。加熱ローラ1に付着した未定着トナーや紙粉等はクリーニング部材(非図示)により除去される。加熱ローラ1と加圧ローラ3の圧接部の出口の外側には、該圧接部を通過して出てきたシート状の記録媒体5を加熱ローラ1から分離させるための分離爪(非図示)が設けてある。
【0033】
加熱ローラ1は、図1に示すように、外径40mm厚さ0.3mmのアルミニウムからなる中空ローラ7を芯金層となし、その外側に厚さ0.1mmのポリイミド樹脂からなる断熱層8を設け、さらにその外側に蓄熱層として厚さ0.8mmの銅からなる層9を設け、さらにその外側に断熱層として厚さ0.2mmのポリイミド樹脂からなる層10を設け、さらにその外側に発熱層として厚さ0.1mmのSUSからなる層11を設け、さらにその外側に離型層として厚さ15μmのポリテトラフルオロエチレンからなる層12を設けたものである。なお、各層7〜12の厚さには大きな差があり、各層7〜12を正確な比率で図示すると薄い層が見えなくなるため、図1では各層7〜12は実際の厚さとは異なった厚さで描いてある。
【0034】
発熱層11は、磁束生成コイル2が生成した交番磁束により生じた渦電流と自身の抵抗とでジュール発熱する。また、SUSは磁性体であるので、発熱層11はヒステリシス損によっても発熱する。ポリイミド樹脂からなる2つの層8、10のうちの外側の層10は、発熱層11に生じた熱のうち単位時間当りに蓄熱層9に伝わる量を減らす働きをする。この層10があるために、数十秒程度の短い時間に発熱層11から蓄熱層9に伝わる熱量は少ない。しかしながら、長い時間の間には大量の熱が発熱層11から蓄熱層9に伝わる。また、このポリイミド樹脂の層10は発熱層11が発熱していないときに蓄熱層9から発熱層11を経由して加熱ローラ1の外部へ逃げる熱の流れを邪魔する働きをする。この層10があるせいで、蓄熱層9の熱が大量に失われるのには長い時間がかかる。
【0035】
ポリイミド樹脂からなる2つの層8、10のうちの内側の層8は、蓄熱層9の熱が芯金層7を経由して加熱ローラ1の取り付け部材などへ逃げるのを阻害する働きをする。蓄熱層9には断熱層8、10に比べて熱伝導率の高い材料を用いているので、断熱層8、10を通過して蓄熱層9に入った熱は蓄熱層9全体に広がって保持され、したがって、熱伝導率の低い材料を蓄熱層9に用いた場合よりも熱の吸収保持性能が高い。なお、加熱ローラ1の取り付け部材に断熱部材を用いたことなどにより芯金層7から加熱ローラ1の外部に逃げる熱量が少ない場合は、ポリイミド樹脂からなる2つの層8、10のうちの内側の層8はなくてもかまわない。
【0036】
加熱ローラ1を回転させながら磁束生成コイル2に電源から1500Wで30kHzの交番電流を供給したところ、加熱ローラ1の外側表面が室温から出発して15秒で190℃に達した。また、加熱ローラ1の外側表面を190℃に保つように上記温度制御機構により磁束生成コイル2を制御しながら加熱ローラ1を30分間加熱し続けた後に加熱ローラ1の加熱を止めたところ、加熱ローラ1の外側表面が120℃にまで低下するのに要した時間は、約1分だった。
【0037】
比較のために、外径40mm、厚さ0.3mmのアルミニウムからなる中空ローラを芯金層となし、その外側に厚さ0.2 mmのポリイミド樹脂からなる層を設け、さらにその外側に発熱層として厚さ0.1 mmの SUSからなる層を設け、さらにその外側に離型層として厚さ15μmのポリテトラフルオロエチレンからなる層を設けた比較用加熱ローラを本参考形態において加熱ローラ1の代りに用いて、同じ条件で測定したところ、加熱ローラ1の外側表面が190℃に達するのに要した時間は同じく15秒であった。一方、比較用加熱ローラの外側表面が120℃にまで低下するのに要した時間は、約40秒であった。
このように、発熱層11の内側に断熱層10を挟んで蓄熱層9を設けたことにより、ウォームアップタイムをほとんど長くすることなく加熱ローラ1を冷却しにくくすることができた。
【0038】
ところで、本参考形態では、誘導加熱により発熱層11を発熱させたが、断熱層10と蓄熱層9の効果は発熱方式には依存しない。すなわち、電流を流すことによって自己発熱するニッケルクロム合金などの電気抵抗体で発熱層11を構成した場合でも、本発明は有効である。また、発熱層11を自己発熱させずに、外部に置いたハロゲンランプやニクロム線ヒータなどの赤外線を放射するヒータによって加熱する場合でも、本発明は有効である。また、発熱層11を自己発熱させずに、サーマルヘッドなどの高温物体を接触させることによって加熱する場合でも、本発明は有効である。
【0039】
また、誘導加熱により発熱層11を発熱させる場合、発熱層11はSUSに限るものではなく、磁性金属であれば何でも用いることができ、たとえば、鋼、鉄、ニッケル、コバルト、あるいはそれらの合金が使える。また、発熱層11には効率は落ちるが非磁性の導電体を用いてもよい。
【0040】
また、断熱層8、10は、熱伝導率の小さい材料であればよく、ポリイミド樹脂に限らず、発泡ガラス、低熱伝導性セラミックス、発泡シリコーンゴムなどが使える。ただし、誘導加熱により発熱層11を発熱させる場合には、断熱層8、10は非磁性体であることが望ましい。
【0041】
また、蓄熱層9は、熱容量が大きくかつ熱伝導率が高い材料なら、銅に限るものではない。たとえば、SUS、鋼、鉄、ニッケル、クロム、あるいはそれらの合金が蓄熱層9に使える。また、蓄熱層9は、熱伝導率が多少小さい材料でも使えないわけではなく、たとえばセラミックスやガラスなどを使用しても、効果はある。
【0042】
発熱層11と蓄熱層9を隔てる断熱層10の厚さは、本参考形態の0.2mmに限るものではないが、あまりに厚いと蓄熱層9と発熱層11の間に大きな温度差が生じるため、蓄熱層9が高温に保たれていても加熱ローラ1の表面が冷えてしまうことが起きるので、好ましくない。また、断熱層10の厚さがあまりに薄いと、断熱効果が少なくなって発熱層11のみを集中的に加熱できなくなり、そのためウォームアップタイムが長くなってしまうため、好ましくない。従って、一般的にいって、断熱層10の厚さは0.05mm程度から10mm程度までが好ましい。
【0043】
蓄熱層9の厚さは、本参考形態の0.8 mmに限るものではないが、あまりに厚いと蓄熱層9の温度が上がりにくいので、好ましくない。また、蓄熱層9の厚さがあまりに薄いと、蓄熱できる熱の量が少なくなって保温効果がほとんど無くなってしまう。このため、一般的にいって、蓄熱層9の厚さは0.2mm程度から10mm程度までが好ましい。
【0044】
この参考形態1の加熱用回転体としての加熱ローラ1によれば、少なくとも1層の熱容量の大きな材料からなる蓄熱層9と、この蓄熱層9の外側に設けられ熱伝導率の低い材料からなる断熱層10と、この断熱層10の外側に設けられ自己発熱する、或いは外部から熱の供給を受ける層11とを有するので、断熱層に囲まれた蓄熱層による保温効果により、待機時の予備加熱に必要なエネルギーを減らすことができ、待機時の消費電力が少なくなる。また、層11と蓄熱層とを断熱層で隔てたので、層11に生じた熱が蓄熱層に逃げにくく、蓄熱層を設けたことによるウォームアップタイムの増加をわずかなものにとどめることができ、ウォームアップタイムが短い。なお、ここでは、加熱装置においても、電源投入後に動作可能温度に立ち上がるまでの立ち上がり時間をウォームアップタイムという。
【0045】
また、この参考形態1の加熱装置によれば、上記構成の加熱ロラ1により被加熱体としてのシート状記録媒体5を加熱するので、断熱層に囲まれた蓄熱層による保温効果により、待機時の予備加熱に必要なエネルギーを減らすことができ、待機時の消費電力が少なくなる。また、層11と蓄熱層とを断熱層で隔てたので、層11に生じた熱が蓄熱層に逃げにくく、蓄熱層を設けたことによるウォームアップタイムの増加をわずかなものにとどめることができ、ウォームアップタイムが短い。
【0046】
次に、本発明の実施形態について説明する。この実施形態は、上記参考形態1と加熱用回転体としての加熱ローラ1の層構成と外径が異なっている他は参考形態1と同じである。実施形態では、加熱ローラ1は、図3に示すように、外径40mm、厚さ0.3mmのアルミニウムからなる中空ローラ13を芯金層となし、その外側に蓄熱層として厚さ0.2 mmの SUSからなる層14を設け、さらにその外側に断熱層として厚さ2mmのポリイミド樹脂からなる層15を設け、さらにその外側に発熱層として厚さ0.1mmのSUSからなる層16を設け、さらにその外側に離型層として厚さ15μmのポリテトラフルオロエチレンからなる層17を設けたものである。なお、図3では各層13〜17は、見やすいように実際の厚さとは異なった厚さで描いてある。
【0047】
この実施形態において、上記磁束生成コイル2に100Vで30kHzの交番電圧を印加した。発熱量を直接測定することは困難であるので、有限要素法による調和磁場解析により発熱量を算出した。その結果、断熱層15の外側に位置している発熱層16において投入電力の約80%に相当する量の熱が発生し、また蓄熱層14において投入電力の約17%に相当する量の熱が発生していることが分かった。合計では投入電力の約97%に相当する量の熱が発熱層16及び蓄熱層14で発生している。
【0048】
比較例として、実施形態の蓄熱層である内側から第2番目の層であるSUS層14を無くし、その代りに芯金層13の厚さを0.5mmにした以外は実施形態と同じ構成の比較用加熱装置で同じ電圧を印加したところ、断熱層15の外側に位置している発熱層16において投入電力の約90%に相当する量の熱が発生し、また芯金層において投入電力の約4%に相当する量の熱が発生していることが分かった。合計では投入電力の約94%に相当する量の熱が発熱層16及び芯金層で発生している。
【0049】
この結果から分かるように、加熱ローラ1において、断熱層15の内側の蓄熱層14を磁性体により構成すると、断熱層15の外側に位置している発熱層16を突き抜けて蓄熱層14に達した磁束も発熱に寄与し、投入電力に対する加熱ローラ1の発熱効率が向上する。また、断熱層15によるウォームアップタイムの短縮効果と蓄熱層14による保温効果については、本実施形態でも参考形態1と同様に機能している。
【0050】
このように、実施形態によれば、熱容量の大きな磁性体からなる蓄熱層14、この蓄熱層14の外側に設けられ非磁性体でかつ熱伝導率の低い材料からなる断熱層15、この断熱層15の外側に設けられ導電体からなる発熱層16を有する加熱用回転体としての加熱ローラ1と、この加熱ローラ1の外側に配置され交番電流により交番磁束を生成して該交番磁束により発熱層16を発熱させる磁束生成手段としての磁束生成コイル2とを備え、加熱ローラ1により被加熱体としてのシート状記録媒体5を加熱するので、参考形態1と同様にウォームアップタイムが短く、待機時の消費電力が少なく、さらに発熱層を発熱させる手段として熱変換効率が高い方式である誘導加熱方式を採用し、しかも、蓄熱層として磁性体を用いて、発熱層を突き抜けた磁束も蓄熱層において発熱に活用でき、投入電力の熱への変換効率が非常に高い。また、誘導加熱方式を採用しているので、加熱ローラを外側からヒータで加熱する方式や加熱ローラの外側表面近くの層を発熱抵抗体で構成する方式に比べて、発火の危険性が少ない。
【0051】
次に、本発明の実施形態について説明する。この実施形態は、上記実施形態と加熱用回転体としての加熱ローラ1の層構成と外径が異なり、磁束生成コイル2に供給する交番電流の周波数が異なっている点と以下に述べる点の他は、実施形態と同じである。本実施形態では、加熱ローラ1は、図4に示すように、厚さ0.4mmのSUSからなる中空ローラ18を芯金層となし、その外側に断熱層として厚さ2mmのポリイミド樹脂からなる層19を設け、さらにその外側に発熱層として厚さ0.1mmの SUSからなる層20を設け、さらにその外側に離型層として厚さ15μmのポリテトラフルオロエチレンからなる層21を設けたものである。芯金層18は蓄熱層の役割を兼ねている。なお、図4では、各層18〜20は、見や1いように実際の厚さとは異なった厚さで描いてある。
【0052】
透磁率がμ、導電率がσである物体を周波数がω/2πである振動磁場の中に置くと、磁場および振動磁場によって誘起される電場は、物体の内部に行くにしたがって弱くなる。磁場および電場が物体の表面からどの程度の深さまで侵入するかの目安を示す量として、次の式で表されるδが広く使われている。
δ=√(2/σμω)・・・(10)
このδは、一般に表皮厚さ、あるいは表皮深さ、あるいは侵入深さと呼ばれている。物体のδより深いところでは、磁場および電場は、物体表面でのそれらの値の1/e以下になる。この侵入深さδは、(10)式から分かるように、振動磁場の周波数が高くなれば短くなり、振動磁場の周波数が低くなれば長くなる。振動磁場の周波数が30kHzの場合、SUSではこの侵入深さδが約0.1mmである。また、磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数と磁束生成コイル2が生成する振動磁場の周波数は等しい。
【0053】
このように、磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数を高くすると、加熱ローラ1における磁束の侵入深さが短くなって発熱層20を突き抜ける磁束の量が減るため、主に発熱層20のみを加熱することができる。また、磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数を低くすると、加熱ローラ1における磁束の侵入深さが長くなって発熱層20と断熱層19を突き抜けて蓄熱層18に達する磁束の量が増えるため、蓄熱層18もある程度発熱する。
【0054】
そこで、磁束生成コイル2に交番電流を与える電源は交番電流の周波数を可変できるものを用い、ウォームアップ時には、図示しない制御手段はその電源を制御して交番電流の周波数を高い周波数に可変することで、電源から磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数を高くする。これにより、主に発熱層20のみを加熱して、加熱ローラ1の外側表面を急速に定着可能温度に達せしめることができる。また、待機時には、制御手段は電源を制御して交番電流の周波数を低い周波数に可変することで、電源から磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数を短くする。これにより、断熱層19に囲まれた蓄熱層18の加熱比率を高めることができるので、待機時に投入したエネルギーが加熱ローラ1の外部に放熱されにくく、蓄熱層18の保温効果が長続きするので、待機時の投入エネルギーを減らすことができる。
【0055】
本実施形態では、ウォームアップ時には、磁束生成コイル2に30kHzの交番電流を印加し、待機持には、磁束生成コイル2に1kHzの交番電流を印加した。発熱量を直接測定することは困難であるので、有限要素法による調和磁場解析により発熱量を算出した。その結果、磁束生成コイル2に30kHzの交番電流を印加したときには、断熱層19の外側に位置している発熱層20における発熱量と蓄熱層18における発熱量の比率は、4.9対1であった。また、磁束生成コイル2に1kHzの交番電流を印加したときには、断熱層19の外側に位置している発熱層20における発熱量と蓄熱層18における発熱量の比率は、1.2対1であった。
【0056】
なお、待機時にのみ磁束生成コイル2に印加する交番電流の周波数を下げるのでなく、被加熱材5を加熱しているときでも、加熱ローラ1の外側表面の温度が十分な温度(定着可能な所定の温度)に達しているときは、制御手段は電源を制御して交番電流の周波数を低い周波数に可変することで、交番電流の周波数を下げることにより蓄熱層18の加熱比率を上げる。それにより、不要なエネルギーを蓄熱に回すことができる。
【0057】
この実施形態によれば、磁束生成手段としての磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数を可変にしたので、実施形態と同様にウォームアップタイムが短く、待機時の消費電力が少なくて投入エネルギーの熱への変換効率が高い上に、発熱層の温度が十分に高いときには磁束生成コイルに与える交番電流の周波数を低くして蓄熱層の加熱比率を高めることができ、余分なエネルギーを蓄熱にまわして蓄熱効率を向上させることができ、エネルギーの無駄を減らすことができる。
【0058】
また、実施形態によれば、待機時の磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数を立ち上げ時の磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数よりも低くしたので、ウォームアップタイムが短く、待機時の消費電力を実施形態よりも更に少なくすることができる。すなわち、ウォームアップ時には、磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数を高くして磁束の侵入深さを短くすることにより、発熱層20を突き抜ける磁束の量を減らして主に発熱層20のみを加熱して、加熱ローラ1の外側表面を急速に定着可能温度に達せしめることができる。また、待機時には、磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数を短くして磁束の侵入深さを長くすることにより、磁束が発熱層20と断熱層19を突き抜けて蓄熱層18に達するようにして、蓄熱層18の加熱比率を高めることができる。このため、待機時に投入したエネルギーが加熱ローラの外部に放熱されにくく、したがって蓄熱層の保温効果が長続きするので、待機時の投入エネルギーを減らすことができる。
【0059】
次に、本発明の実施形態について説明する。この実施形態は、上記実施形態と加熱用回転体としての加熱ローラ1の層構成と外径が異なり、磁束生成コイル2に供給する交番電流の周波数が異なっている点と以下に述べる点の他は、実施形態と同じである。本実施形態では、加熱ローラ1は、図5に示すように、厚さ0.4mmのSUSからなる中空ローラ22を芯金層となし、その外側に断熱層として厚さ2mmのポリイミド樹脂からなる層23を設け、さらにその外側に発熱層として厚さ0.2mmの 銅からなる層24を設け、さらにその外側に離型層として厚さ15μmのポリテトラフルオロエチレンからなる層25を設けたものである。芯金層22は蓄熱層の役割を兼ねている。なお、図5では、各層22〜25は、見やすいように実際の厚さとは異なった厚さで描いてある。
【0060】
実施形態では加熱ローラ1の発熱層20は厚さ0.1mmの SUSからなる層であったが、本実施形態では加熱ローラ1の発熱層24は厚さ0.2mmの銅からなる層であり、本実施形態と実施形態とにおける加熱ローラ1の層構成は、その点で異なっている。銅の場合、上述の(10)式で表される侵入深さδは、振動磁場の周波数が30kHzの場合には約0.4mmである。したがって、振動磁場の周波数が30kHzの場合は、磁束が本実施形態では加熱ローラ1の発熱層24をかなりの割合で突き抜ける。また、銅は、非磁性体であるので、ヒステリシス損による発熱が生じない。このため、磁束生成コイル2に周波数30kHzの交番電流を印加した場合は、発熱層24での発熱量は少なく、SUSからなる蓄熱層22での発熱量が多い。しかし、磁束生成コイル2に印加する交番電流の周波数を100kHzまで上げると、磁束の侵入深さが発熱層24の厚さに近くなり、発熱層24での発熱量の蓄熱層22での発熱量に対する比率が大きくなる。
【0061】
実施形態の構成で待機時における蓄熱層18での発熱量の割合を実施形態の場合よりも高めるには、待機時における交番電流の周波数を1kHzよりもさらに下げて、たとえば0.1 kHzにする必要がある。しかし、交番電流の周波数をそこまで下げると、投入電力のうち磁束生成コイル2自身の発熱として消費されるエネルギーの割合が非常に大きくなるという問題、すなわち発熱効率が大きく下がってしまうという問題が生じる。本実施形態の場合は、待機時における蓄熱層24での発熱量の割合を高めるのに交番電流の周波数をそこまで下げる必要が無いので、そのような問題は生じない。
【0062】
本実施形態では、ウォームアップ時には、制御手段は電源を制御して交番電流の周波数を高い周波数に可変することで、磁束生成コイル2に100kHzの交番電流を印加し、待機持には、制御手段は電源を制御して交番電流の周波数を低い周波数に可変することで、磁束生成コイル2に30kHzの交番電流を印加した。発熱量を直接測定することは困難であるので、有限要素法による調和磁場解析により発熱量を算出した。その結果、磁束生成コイル2に100kHzの交番電流を印加したときには、断熱層23の外側に位置している発熱層24における発熱量と蓄熱層22における発熱量の比率は、2.0対1であった。また、磁束生成コイル2に30kHzの交番電流を印加したときには、断熱層23の外側に位置している発熱層24における発熱量と蓄熱層22における発熱量の比率は、1対2.7であった。
このように、待機持には、ほとんど蓄熱層22にのみ発熱させることができた。
【0063】
この実施形態によれば、発熱層24を構成する材料の導電率と透磁率との積の値が、蓄熱層22を構成する磁性体の導電率と透磁率との積の値に比べて小さい(発熱層24を構成する材料の侵入深さδが、蓄熱層22を構成する磁性体の侵入深さδに比べて大きい)ので、参考形態1と同様にウォームアップタイムが短くて待機時の消費電力が少なく、さらに磁束生成コイル2に与える交番電流の周波数が比較的高くても磁束が発熱層24と断熱層23を突き抜けて蓄熱層22に達し、蓄熱層の加熱比率を高めることができる。つまり、発熱効率を大きく下げることなく、待機時に断熱層に囲まれた蓄熱層の加熱比率を実施形態の場合よりもさらに高めることができる。それにより、待機時の投入エネルギーを実施形態の場合よりもさらに減らすことができる。
【0064】
なお、上記実施形態1、2において、実施形態と同様に発熱層を構成する材料の導電率と透磁率との積の値が、蓄熱層を構成する磁性体の導電率と透磁率との積の値に比べて小さい(発熱層を構成する材料の侵入深さδが、蓄熱層を構成する磁性体の侵入深さδに比べて大きい)構成とし、実施形態と同様な効果を得るようにしてもよい。
【0065】
次に、本発明の実施形態について説明する。この実施形態は、実施形態1乃至実施形態のいずれか1つの加熱装置を定着装置に用いた画像形成装置の例である。図6は実施形態の構成を示す。この実施形態の画像形成装置は、像担持体として円筒状に形成された光導電性の感光体26を有している。この感光体26の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ27、現像装置28、転写手段としての転写ローラ29、クリーニング装置30、除電装置31が配備されている。また、この実施形態の画像形成装置は、露光手段としての光走査装置32と定着装置33を備えている。帯電手段としては、コロナチャージャを用いることもできる。帯電ローラ27及び転写ローラ29は電源からバイアスが印加され、光走査装置32は帯電ローラ27と現像装置28との間の感光体26の表面で光走査による露光を行う。
【0066】
画像形成を実行する際には、感光体26は、駆動部により回転駆動されて図6の時計回りに回転し、その表面が帯電ローラ27により均一に帯電された後に光走査装置32による露光で静電潜像が形成される。この静電潜像は現像装置28により反転現像され、感光体26の表面にトナー画像が形成される。このトナー画像は、感光体26上のトナー画像が転写位置へ移動するのとタイミングを合わせて非図示の給紙装置により転写部へ送り込まれた記録媒体34と重ね合わされて、転写ローラ29の作用により記録媒体34へ静電転写される。トナー画像が転写された記録媒体34は、定着装置33でトナー画像が定着された後、装置外部へ排出される。ここで、定着装置33としては、実施形態1乃至実施形態のいずれかの加熱装置が用いられる。トナー画像が転写された後、感光体26の表面は、クリーニング装置30によりクリーニングされて残留トナーや紙粉などが除去され、さらに除電装置31により除電される。
【0067】
この実施形態の定着装置33によれば、実施形態1乃至実施形態のいずれかの加熱装置を用いたので、ウォームアップタイムが短く、かつ待機時の消費電力が少ない定着装置を実現できる。
また、実施形態の画像形成装置によれば、定着装置33として実施形態1乃至実施形態のいずれかの加熱装置を用いたので、ウォームアップタイムが短く、かつ待機時の消費電力が少ない画像形成装置を実現できる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、画像形成装置の定着装置としての用途のほかに、シート状の被加熱体の乾燥用あるいは表面改質用等様々な用途に用いても構わない。また、加熱用回転体の蓄熱層等の各層は2層以上にしてもよい。
【0069】
【発明の効果】
以上のように請求項1に係る発明によれば、ウォームアップタイムが短く、待機時の消費電力が少ないだけでなく、さらに投入エネルギーの熱への変換効率が高くなる。
【0070】
また、請求項に係る発明によれば、ウォームアップタイムが短く、待機時の消費電力が少なくて投入エネルギーの熱への変換効率が高い上に、余分なエネルギーを蓄熱にまわして蓄熱効率を向上させることができ、エネルギーの無駄を減らすことができる。
請求項に係る発明によれば、ウォームアップタイムが短く、待機時の消費電力を一層少なくすることができる。
【0071】
請求項に係る発明によれば、ウォームアップタイムが短くて待機時の消費電力が少なく、待機時の蓄熱層の加熱効率が高くて待機時の投入エネルギーを減らすことができる。
請求項に係る発明によれば、ウォームアップタイムが短く、かつ待機時の消費電力が少ない定着装置を実現できる。
請求項に係る発明によれば、ウォームアップタイムが短く、かつ待機時の消費電力が少ない画像形成装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考形態1における加熱ローラの概略構成を示す断面図である。
【図2】 同参考形態1の概略構成を示す横断面模型図である。
【図3】 本発明の実施形態における加熱ローラの概略構成を示す断面図である。
【図4】 本発明の実施形態における加熱ローラの概略構成を示す断面図である。
【図5】 本発明の実施形態における加熱ローラの概略構成を示す断面図である。
【図6】 本発明の実施形態の構成を示す概略図である。
【図7】 加熱ローラにおいて断熱層がある場合と断熱層が無い場合の立ち上げ時の発熱層と蓄熱層の温度を示す特性図である。
【符号の説明】
1 加熱ローラ
2 磁束生成コイル
3 加圧ローラ
9、14、18、22 蓄熱層
10、15、19、23 断熱層
11、16、20、24 発熱層
26 感光体
27 帯電ローラ
28 現像装置
29 転写ローラ
32 光走査装置
33 定着装置

Claims (5)

  1. 熱容量の大きな磁性体からなる蓄熱層、この蓄熱層の外側に設けられ非磁性体でかつ熱伝導率の低い材料からなる断熱層、この断熱層の外側に設けられ導電体からなる発熱層を有する加熱用回転体と、この加熱用回転体の外側に配置され交番電流により交番磁束を生成して該交番磁束により前記発熱層を発熱させる磁束生成手段とを備え、前記加熱用回転体により被加熱体を加熱し、前記磁束生成手段に与える交番電流の周波数を可変にしたことを特徴とする加熱装置。
  2. 請求項1記載の加熱装置において、待機時の前記交番電流の周波数を立ち上げ時の前記交番電流の周波数よりも低くしたことを特徴とする加熱装置。
  3. 請求項1または2記載の加熱装置において、前記発熱層を構成する材料の導電率と透磁率との積の値が、前記蓄熱層を構成する磁性体の導電率と透磁率との積の値に比べて小さいことを特徴とする加熱装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱装置を用いたことを特徴とする定着装置。
  5. 請求項4記載の定着装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
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