JP3901063B2 - 狭域通信車載器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、路車間の狭域通信に関するもので、DSRCおよびETCに用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来、ETC(Electronic Toll Collection system)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、等の路車間通信システムが研究、開発、または実用化されている。DSRCは、数メートル程度の短い距離において無線通信を行う狭域通信システムである。この通信システムは、ITS(Intelligent Transport System)において、車両の走行支援等の用途に供されることが想定されている。ETCは、有料道路の走行料金の支払いを無線通信によって行うための通信システムである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これらDSRCやETCにおいては、この路車間通信システムを利用する狭域通信の車載器やユーザが変わるとその内容が変化するサービスを行いたいという路上機側の要望がある。路上機側とは、路上機に専用回線等で接続されたサービス業者のサーバ等のことである。このような狭域通信車載器やユーザに応じて変化するサービスを行うには、路上機側がサービスを行う対象の狭域通信車載器またはユーザの識別情報を取得して、それぞれの狭域通信車載器またはユーザを特定しなければならない。
【0004】
一方狭域通信車載器のユーザ側に立って見ると、不特定の相手に対して自分や自分の狭域通信車載器の識別情報を教えることについては、個人情報の漏洩等に繋がる恐れがあり、プライバシー上好ましくない場合がある。
【0005】
例えば、DSRCの狭域通信車載器が通信エリアに入ると路上機側と自動的に通信を開始するようになっている場合、車で走行中、路上機の通信エリアに入ったとき、意図しないタイミングで、希望しない路上機側に、狭域通信車載器が識別情報を送信してしまう場合がある。このように、通信エリアに入る度に自動的に識別情報を送信してしまうと、この車両がどの時刻にどの場所にいたかという情報が頻繁に記録されることになる。これらの情報を何らかの方法で包括的に取得されれば、車両の乗員の行動記録という個人情報が流出することになる。
【0006】
本発明は上記点に鑑み、通信エリアに入ると自動的に通信を開始する路車間の狭域通信の狭域通信車載器が、乗員の意図しない通信相手に狭域通信車載器の識別情報を送信してしまうことを防止することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、路車間の狭域通信に用いられ、狭域通信の通信エリアに入ると、自動的に狭域通信を開始する狭域通信車載器であって、通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報のリストである通信相手リストを保存するメモリを備え、自動的に開始した通信において、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号およびこの通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報を受信することと、メモリに保存されている通信相手リスト中に受信した固有の識別情報がないことに基づいて、識別情報の送信の要求があることを乗員に通知する要求通知手段と、乗員による自己の識別情報を送信する旨の入力を受けつけることに基づき、通信の相手に自己の識別情報を送信する識別情報手動送信手段と、を備えたことを特徴とする狭域通信車載器である。
【0008】
これによって、狭域通信の通信エリアに入ると自動的に通信を開始する狭域通信車載器において要求通知手段が、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号およびこの通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報を受信することに基づいて、この自己の識別情報の送信の要求があることを乗員に通知する。この通知を受けた乗員は、自車の現在位置および周囲の店舗等の構造物を確認することで、識別情報を送信するか否かを判断することができる。これは、乗員がこのような判断ができる程度に狭域通信の通信エリアが狭いことによって可能となっている。乗員が識別情報を送信する旨の入力を行うと、識別情報手動送信手段がこの入力を受け付けて通信の相手に自己の識別情報を送信するので、乗員の入力によって識別情報の送信が行われるようになる。したがって、通信エリアに入ると自動的に通信を開始する路車間の狭域通信の狭域通信車載器が、乗員の意図しない通信相手に狭域通信車載器の識別情報を送信してしまうことを防止することができる。
【0010】
また、これによって、通信相手リスト中にない通信相手の装置に対してのみ、狭域通信車載器は乗員の入力によることなく、自動的に自己の識別情報を送信できるようになるので、さらに細かい場合分けによる識別情報の送信を行うことができるようになる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、路車間の狭域通信に用いられ、狭域通信の通信エリアに入ると、自動的に狭域通信を開始する狭域通信車載器であって、自動的に開始する前記狭域通信におけるこの通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報のリストである通信相手リストを保存するメモリを備え、自動的に開始した通信において、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号およびこの通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報を受信することと、前記メモリに保存されている前記通信相手リスト中に受信した前記固有の識別情報がないことに基づいて、特定の信号を受信すると自車の位置情報および狭域通信の通信エリア毎の通信の相手に関する情報に基づいた現在の前記通信エリアの通信の相手に関する情報を前記識別情報の送信の要求があることと共に乗員に通知するユーザインターフェース装置に特定の信号を送信する特定信号送信手段と、乗員による識別情報を送信する旨の入力を受けつけることに基づき、通信の相手に自己の識別情報を送信する識別情報手動送信手段と、を備えたことを特徴とする狭域通信車載器である。
【0012】
これによって、狭域通信の通信エリアに入ると自動的に通信を開始する狭域通信車載器において要求通知手段が、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号およびこの通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報を受信することに基づいて、ある特定の信号をユーザインターフェース装置に通知する。この特定の信号を受信したユーザインターフェース装置は識別情報の送信の要求があることと共に現在の通信エリアの通信の相手に関する情報を乗員に通知する。この通知を受けた乗員は、自車の現在位置および周囲の店舗等の構造物に加え、ユーザインターフェース装置による通信の相手に関する情報を確認することで、識別情報を送信するか否かを判断することができる。乗員が識別情報を送信する旨の入力を行うと、識別情報手動送信手段がこの入力を受け付けて通信の相手に自己の識別情報を送信するので、乗員の入力によって識別情報の送信が行われるようになる。したがって、通信エリアに入ると自動的に通信を開始する路車間の狭域通信の狭域通信車載器が、乗員の意図しない通信相手に狭域通信車載器の識別情報を送信してしまうことを防止することができる。
【0013】
なお、識別情報手動送信手段が乗員による識別情報を送信する旨の入力を受けつける方法は直接的なものであっても間接的なものであってもよい。
【0015】
また、これによって、通信相手リスト中にない通信相手の装置に対してのみ、狭域通信車載器は乗員の入力によることなく、自動的に自己の識別情報を送信できるようになるので、さらに細かい場合分けによる識別情報の送信を行うことができるようになる。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の狭域通信車載器において、自動的に開始した通信において、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号およびこの通信の相手の識別情報を受信することと、メモリに保存されている通信相手リスト中にこの通信の相手の識別情報があることに基づいて、通信の相手に自己の識別情報を送信する識別情報自動送信手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
これによって、識別情報を送信してもよい通信の相手の識別情報を通信相手リストに保存しておくことで、これらの通信相手に対しては、狭域通信車載器は乗員の入力によることなく、自動的に自己の識別情報を送信できるようになる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の狭域通信車載器において、乗員の入力に基づいて通信相手リストの内容を変更する手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係るDSRCによる路車間の狭域通信システムの構成を示す。本実施形態においては、道路、料金ゲート、店舗、駐車場等(以下インフラと記す)の近傍にアンテナ1が点在し、このアンテナを中心として半径数メートルの通信エリアが形成されている。DSRC制御器2は、アンテナ1によって受信した信号に対して、DSRCの規格に従って増幅、復調、A/D変換等の処理を施し、それによって得た受信データをアプリケーション処理装置3に送信する。またDSRC制御器2は、アプリケーション処理装置3から受信した送信データに対して、DSRCの規格に従ってD/A変換、変調、増幅等の処理を施し、それによって得た無線信号をアンテナ41から出力する。
【0020】
アプリケーション処理装置3は、店舗、駐車場、料金所、道路脇等に設置され、DSRCの通信相手に対して各種サービスを行うための処理を行うサーバである。アプリケーション処理装置3は、自己を他のアプリケーション処理装置と区別するための識別情報として、固有のIDを図示しないメモリ内に保存しており、DSRCの通信相手にこのIDを送信するようになっている。以下、このアプリケーション処理装置3のIDをインフラIDと記す。インフラIDとしては、例えば十数桁の英数字列を用いることができる。またアプリケーション処理装置3は、DSRCの通信時には通信相手に対して識別情報としてIDを送信するよう要求するコマンド(信号)を送信するようになっている。
【0021】
DSRC車載器4は、DSRCの通信を行うための、図示しない車両に搭載される通信機(狭域通信車載器)である。このDSRC車載器4は、車両のイグニッションオン時にバッテリ電源から電力の供給を受けて作動するようになっている。図2にこのDSRC車載器4の構成をブロック図で示す。DSRC車載器4は、アンテナ41、無線部42、ベースバンド処理部43、制御部44、RAM45、ボタン46、ディスプレイ47、スピーカ48、およびEPROM49を有している。
【0022】
無線部42は、アンテナ41から受信した無線信号に対して、DSRCの規格に従って増幅、変調、A/D変換等の処理を施し、それによって得たI、Qデータをベースバンド処理部43に送信する。また無線部42は、ベースバンド処理部43から受信した送信のためのI、Qデータに対して、DSRCの規格に従ってD/A変換、変調、増幅等の処理を施し、それによって得た無線信号をアンテナ1から出力する。
【0023】
ベースバンド処理部43は、DSPを有し、無線部42からI、Qデータを受信すると、これらのデータをASK、π/4シフトQPSK、BPSK−OFDM、QPSK−OFDM、16QAM−OFDM、64QAM−OFDM等の復調方式に従ってデータ列にデジタル復調する。そしてベースバンド処理部43は、この復調されたデータを制御部44に出力する。
【0024】
またベースバンド処理部43は、制御部44から無線送信のためのデータを受信すると、これらの送信データをBPSK−OFDM、QPSK−OFDM、16QAM−OFDM、64QAM−OFDM等の変調方式に従ってI、Qデータに直交符号化(デジタル変調)する。そしてこのI、Qデータを無線部42に出力する。
【0025】
制御部44は、書き換え可能な不揮発性のメモリであるEPROM49に記録されたプログラムを読み出して実行することで作動し、その作動の必要に応じて揮発性メモリであるRAM45に対して情報の読み出し、書き込みを行う。EPROM49には、CPUの作動のプログラムに加え、DSRC車載器4の識別情報としてのID(以下車載器IDと記す)、インフラIDのリスト等が保存されるようになっている。このインフラIDのリスト(以下単にリストと記す)は、後述するように自動的に車載器IDを送信してもよい1つまたは複数の通信の相手のリストである。車載器IDとしては、例えば十数桁程度の英数字列等を用いることができる。またこの制御部44は、その作動の必要に応じて制御部44、ボタン46、ディスプレイ47、スピーカ48と制御情報および通信のための情報のやりとりを行う。
【0026】
ボタン46は、メニューボタンと選択ボタンの2つのボタン(共に図示せず)を有している。メニューボタンは後述するリストの消去等のモードを切り替えるためのボタンであり、選択ボタンは各種選択および決定をする旨の入力を行うためのボタンである。
【0027】
以上のような構成のDSRC車載器4がインフラとDSRCの通信を行う場合は、受信時にはアンテナ41が受信した信号が無線部42で増幅、復調、D/A変換され、ベースバンド処理部43でデジタル復調され、制御部44でプログラムに従って処理される。また送信時には、制御部44でプログラムによって生成された送信データが、ベースバンド処理部43でデジタル変調され、無線部42でA/D変換、変調、増幅された後、無線信号としてアンテナ1から出力される。
【0028】
以下、DSRC車載器4とアプリケーション処理装置3との通信における作動を、図3および図4のシーケンス図を用いて説明する。
【0029】
図3は、DSRC車載器4を搭載する車両が進入した通信エリアのインフラのインフラIDが、EPROM49が有するリスト中に存在しない場合の制御部44の作動を示すシーケンス図である。
【0030】
まず、DSRC車載器4を搭載する車両がアンテナ1の形成する通信エリアに進入すると、DSRC車載器4の制御部44はアプリケーション処理装置3と無線リンクを確立するための処理を、DSRCの規格に従って自動的に行う(ステップ105)。この無線リンクの確立の処理においては、DSRC車載器4とアプリケーション処理装置3とはOSI参照モデルのデータリンク層に属する通信のやりとりを行う。このリンクの確立は、両者が互いを他と区別して認識するための識別子を付与されることによって実現されるが、DSRC車載器4に付与される識別子は一時的なランダムIDであるので、DSRC車載器4に固有である車載器IDのように後にDSRC車載器4を特定するために用いることはできない。
【0031】
リンクが確立されると、アプリケーション処理装置3はDSRC車載器4に対して車載器IDを送信するよう要求する信号を、保存している自己のインフラIDと共に送信し、制御部44はこれを受信する(ステップ110)。なお、この車載器ID要求の信号は、当該DSRC車載器4から車載器IDの送信があるまで繰り返して送信される。
【0032】
そして制御部44は、受信したインフラIDがEPROM49に保存しているリスト中にあるか無いかを判定する。ここでは無いと判定し(ステップ115)、無いと判定したことに基づいて、車載器ID送信を拒否する旨の信号を、ベースバンド処理部43等を介してアプリケーション処理装置3に送信し(ステップ120)、また車載器IDの送信の要求があることを乗員に通知する(ステップ125)。この通知は、制御部44がスピーカ48を制御して、「IDを送信してよいですか?」等の音声通知を行わせることで実現される。あるいはディスプレイ47を制御して、ディスプレイ47に同内容の文字表示を行わせることによっても実現される。
【0033】
そして制御部44は、以後は同じインフラIDからの車載器ID送信要求を受信しても(ステップ130)、後述する乗員からの送信する旨の入力がない限り車載器ID拒否信号を返す(ステップ135)。
【0034】
当該車両が通信エリア内にいる間に、上記した通知を受けた乗員が車載器IDを送信する旨の入力を選択ボタンの押下によって行うと、制御部44はそのボタン押下を検出し(ステップ140)、ボタン押下を検出したことを示すフラグをRAM45内に設定してオンとする。なおこのフラグは、車両が当該通信エリア外に退出することによってオフとなる。
【0035】
またこのとき、選択ボタン押下が長押しであることを検出すると、当該インフラIDをEPROM49中のリストに追加する(ステップ145)。長押しとは、一定時間(例えば3秒)以上持続する押下のことである。これによって、以後この通信エリアを退出した後再びこの通信エリアに進入したときでも、当該インフラに対しては乗員の入力によることなく、自動的に車載器IDを送信できるようになる。
【0036】
その後アプリケーション処理装置3から再度車載器ID送信要求を受信すると(ステップ150)、制御部44は選択ボタン押下のフラグがオンに設定されていることに基づいて、EPROM49に保存されているDSRC車載器4の車載器IDをアプリケーション処理装置3に送信する(ステップ155)。
【0037】
この車載器IDを受信したアプリケーション処理装置3は、この車載器IDに基づいてサービス処理のための通信を開始する。サービス処理としては、受信した車載器IDとあらかじめ登録してある車載器IDリストとの照合、および駐車場への進入の許可がある。またこのとき制御部44は、このサービス処理を受けるための処理、すなわち入構許可の通知を受信したことに基づく入構可の音声通知等を行う(ステップ160)。
【0038】
図4は、DSRC車載器4を搭載する車両が進入した通信エリアのインフラのインフラIDが、EPROM49が有するリスト中に存在する場合の制御部44の作動を示すシーケンス図である。この図4中、図3と同様の制御部44の処理には同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
通信エリアに進入してリンクを確立し、アプリケーション処理装置3から車載器IDの送信要求およびインフラIDを受信すると、制御部44は受信したインフラIDがEPROM49に保存しているリスト中にあるか無いかを判定する。ここではあると判定し(ステップ215)、あると判定したことに基づいて、乗員に車載器IDの送信の可否の判断をさせることなく、アプリケーション処理装置3に対してDSRC車載器4の車載器IDを送信する(ステップ220)。そして、スピーカ48を制御して、車載器IDを送信した旨を通知するための音を発生させる。この音は「ピッ」というブザー音でもよいし、「IDを送信しました」という音声でもよい。そして、アプリケーション処理装置3と制御部44とはサービス処理およびそれを受ける処理に入る(ステップ160)。
【0040】
なお、メニューボタンを数回押すことによって、リスト消去のモードに切り替えを行い、このモードで選択ボタンを押下すると、リスト中のインフラIDは全て消去されるようになっている。
【0041】
以上のようなDSRC車載器4の作動によって、DSRCの通信エリアに入ると自動的に通信を開始するDSRC車載器4の制御部44が、この通信の相手から自己の車載器IDを送信するよう要求する信号を受信することと、EPROM49に保存されたインフラIDのリスト中にこの通信の相手すなわちアプリケーション処理装置3のインフラIDがないことに基づいて、この車載器IDの送信の要求があることを乗員に通知する。この通知を受けた乗員は、自車の現在位置および周囲の店舗等の構造物を確認することで、車載器IDを送信するか否かを判断することができる。これは、乗員がこのような判断ができる程度に狭域通信の通信エリアが狭いことによって可能となっている。乗員がボタンの押下によって車載器IDを送信する旨の入力を行うと、制御部44がこの入力を受け付けて、通信の相手に自己の車載器IDを送信するので、乗員の入力によって車載器IDの送信が行われるようになる。したがって、通信エリアに入ると自動的に通信を開始する路車間の狭域通信の車載器が、乗員の意図しない通信相手に車載器の車載器IDを送信してしまうことを防止することができる。
【0042】
また、車載器IDを送信してもよい通信の相手のインフラIDを上記リストに保存しておくことで、これらの通信相手に対しては、DSRC車載器4は乗員の入力によることなく、自動的に自己の車載器IDを送信できるようになる。
【0043】
また、ボタンの長押しによってインフラIDをリストに登録することができるので、乗員による車載器IDを自動的に送信しても良いリストの変更が可能となる。また、車載器IDを送信する旨の入力と、インフラIDのリストへの登録の両方に1つのボタンが使用できるので、通常は小型で多数のボタンを備えることが困難なDSRC車載器においてボタン数を節約できる。
【0044】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、車両の乗員への車載器ID送信要求の信号の受信を通知し、および乗員による車載器IDを送信する旨の入力を直接受け付けるのが、DSRC車載器ではなくカーナビゲーション装置となることである。
【0045】
以下、本実施形態が第1実施形態と異なる部分についてのみ詳細に説明する。図5に、本実施形態に係るDSRC車載器4’の構成を示す。図5中、図2に示したDSRC車載器4と同様の構成要素については同一の符号を付し、それらの説明については省略する。
【0046】
カーナビゲーション装置52は、ディスプレイおよび地図情報を保存するメモリを有し、また自車両の現在位置情報、走行履歴情報を取得し、自車が地図上のどの位置を走行しているか、あるいは走行していたかをディスプレイに表示し、またこの地図情報、あるいは交通状況の情報から目的地までの最適な経路を探索し、その結果をディスプレイに表示する装置である。本実施形態においては、カーナビゲーション装置52は地図情報として、DSRCの通信エリアの情報、およびこの通信エリア毎のインフラに関する情報を有している。インフラに関する情報とは、例えばインフラに割り当てられたインフラIDとこれらインフラの店舗名、駐車場名等の名称との対応である。このインフラに関する情報は、DSRCや携帯電話等の通信手段を使ってダウンロードすることができる。
【0047】
また本実施形態におけるカーナビゲーション装置52は、外部インターフェース51を介して制御部44から特定の信号を受信すると、このDSRCの通信エリア毎のインフラに関する情報に基づいて、車載器IDの送信の要求があることと共に現在の通信エリアの通信の相手に関する情報を乗員に通知するユーザインターフェース装置である。この特定の信号とは、本実施形態においては通信の相手のインフラIDと、このインフラIDを有するインフラとの通信が開始したことを示す情報とを含む信号である。またこのカーナビゲーション装置52は、乗員による車載器IDを送信する旨の入力を直接受けつけ、この入力を受け付けた旨の信号を制御部44に送信するようになっている。
【0048】
外部インターフェース51は、制御部44とDSRC車載器4’の外部の機器との信号の授受を媒介するものである。制御部44は、この外部インターフェース51を介してカーナビゲーション装置52と制御情報および情報のやりとりをする。
【0049】
本実施形態におけるDSRC車載器4’の作動が第1実施形態のDSRC車載器4と異なる部分の1つは、自動的に開始した通信において、この通信の相手から車載器IDを送信するよう要求する信号を受信することと、EPROM49に保存されている通信相手リスト中にこの通信の相手のインフラIDがないことに基づいて、カーナビゲーション装置52に上記した特定の信号を送信し、また乗員による車載器IDを送信する旨のカーナビゲーション装置52への入力を、カーナビゲーション装置52を介して間接的に受けつけることに基づき、現在の通信の相手に車載器IDを送信することである。
【0050】
以下、DSRC車載器4’とアプリケーション処理装置3とが通信を行う際の、DSRC車載器4’、アプリケーション処理装置3、およびカーナビゲーション装置52の作動を、図6および図9のシーケンス図を用いて説明する。なお、図6および図9中の制御部44の処理で、図3および図4中の処理と同等のものにはそれらと同一のステップ番号を付し、それらについての詳細な説明は省略する。
【0051】
図6は、DSRC車載器4’を搭載する車両が進入した通信エリアにおけるインフラのインフラIDが、EPROM49が有するリスト中に存在しない場合の制御部44等の作動を示すシーケンス図である。
【0052】
この車両がアプリケーション処理装置3の通信エリア内に進入すると、制御部44が自動的にアプリケーション処理装置3とのリンクを確立し(ステップ105)、アプリケーション処理装置3からインフラIDを含んだ車載器ID送信要求を受信し(ステップ110)、EPROM49のリスト中にこの受信したインフラIDが無いと判定し(ステップ115)、アプリケーション処理装置3に対して車載器ID送信拒否の通知を行う(ステップ120)。
【0053】
そして、制御部44は上記した特定の信号、すなわち受信したインフラIDと、このインフラIDを有するインフラとの通信が開始したことを示す情報とを含む信号を外部インターフェース51を介してカーナビゲーション装置52に送信する(ステップ625)。
【0054】
この特定の信号を受信したカーナビゲーション装置52は、地図情報中のインフラに関する情報中から、制御部44から受信したインフラIDに対応するものを検索する(ステップ310)。そして検索の結果見つけた当該インフラIDに対応する店舗名等をディスプレイに表示することで、乗員に対する通知を行う。この通知のための表示は、例えば、「XXXにIDを送信してよければID送信ボタンを押してください。」という文字表示である。XXXは、店舗名等のインフラの名称である。また、カーナビゲーション装置52がスピーカを有し、それによって同じ内容の音声を出力するようになっていてもよい。
【0055】
当該車両が通信エリア内にいる間に、上記した通知を受けた乗員がカーナビゲーション装置52に備えられたボタン等のあらかじめ設定されたユーザインターフェースによって、車載器IDを送信する旨の入力を行うと、カーナビゲーション装置52はその入力を検出し、車載器ID送信可である旨の信号を制御部44に送信する。
【0056】
制御部44はこの信号を受信し(ステップ640)、この受信に基づいて当該インフラに車載器IDを送信してよいことを示すフラグをRAM45内に設定してオンとする。なおこのフラグは、車両が当該通信エリア外に退出することによってオフとなる。これによってDSRC車載器4’は当該インフラに車載器IDの送信を行うことができるようになる。
【0057】
また、この実施形態におけるアプリケーション処理装置3のサービス処理としては、例えば飲食物等のメニュー送信、注文の受信、および時刻、受信した車載器IDおよび注文内容の保存がある。この制御部44は、このサービスを受ける処理(ステップ160)として、例えばカーナビゲーション装置52のディスプレイへメニューを表示させるためのカーナビゲーション装置52への信号の送信、カーナビゲーション装置52から受信した乗員の選択による注文の受信およびこの注文のアプリケーション処理装置3への送信等がある。
【0058】
その後、カーナビゲーション装置52は図7の上部に示すような地図上の当該インフラの位置をディスプレイに表示し、その後(例えば数秒後)さらに図7の下部に示すような「XXXを自動送信に登録しますか?」という表示を行うことで、「はい」または「いいえ」の選択を乗員に促す。この際、乗員がカーナビゲーション装置52に備えられ、あらかじめ設定されたユーザインターフェースによって、当該インフラIDをリストに登録する旨の入力、すなわち「はい」の入力を行うと、カーナビゲーション装置52はその入力を検出し、インフラIDをリストに登録する旨の信号を制御部44に対して送信する。また、ディスプレイがタッチパネルのように入力装置を兼ねている場合は、ディスプレイの「はい」の表示部分に触れることでこの入力を行うことができる。
【0059】
制御部44はこの信号を受信し(ステップ670)、この受信に基づいてリストに当該インフラIDを登録する(ステップ680)。これによって、以後この通信エリアを退出した後再びこの通信エリアに進入したときでも、当該インフラに対しては乗員の入力によることなく、自動的に車載器IDを送信できるようになる。
【0060】
また、このリストへの登録は、図8に示すように一覧表をカーナビゲーション装置52のディスプレイに表示し、それを乗員が選択することで、カーナビゲーション装置52が選択されたインフラのインフラIDを制御部44に通知することによって行っても良い。
【0061】
図9は、DSRC車載器4’を搭載する車両が進入した通信エリアのインフラのインフラIDが、EPROM49が有するリスト中に存在する場合の制御部44の作動を示すシーケンス図である。この図9中、図6と同様の制御部44の処理には同一のステップ番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0062】
通信エリアに進入してリンクを確立し、アプリケーション処理装置3から車載器IDの送信要求およびインフラIDを受信すると、制御部44は受信したインフラIDがEPROM49に保存しているリスト中にあるか無いかを判定する。ここではあると判定し(ステップ215)、あると判定したことに基づいて、乗員に車載器IDの送信の可否の判断をさせることなく、アプリケーション処理装置3に対してDSRC車載器4の車載器IDを送信する(ステップ220)。
【0063】
そして、制御部44はカーナビゲーション装置52に対して、アプリケーション処理装置3から受信したインフラIDと、このインフラIDを有するインフラに車載器IDを送信した旨を示す信号をカーナビゲーション装置52に送信する(ステップ730)。
【0064】
このインフラIDおよび信号を受信したカーナビゲーション装置52は、地図情報中のインフラに関する情報中から、制御部44から受信したインフラIDに対応するものを検索する(ステップ410)。そして検索の結果見つけた当該インフラIDに対応する店舗名等をディスプレイに表示することで、乗員に対して車載器IDの送信が行われた旨の通知を行う。この通知のための表示は、例えば、「XXXにIDを送信しました。」という文字表示である。XXXは、店舗名等のインフラの名称である。また、カーナビゲーション装置52がスピーカを有し、それによって同じ内容の音声を出力するようになっていてもよい。
【0065】
なお、あらかじめ設定されたカーナビゲーション装置52のインターフェースから乗員がリストの消去を行う旨の入力を行うと、カーナビゲーション装置52はリストを送信するよう要求する信号を制御部44に送信する。この信号を受信した制御部44はリストをEPROM49から読み出してカーナビゲーション装置52に送信する。リストを受信したカーナビゲーション装置52は、リストの内容の一覧をディスプレイに表示する。そして乗員から消去する対象のインフラを選択する入力を受け付け、受け付けた選択に基づいてリスト中から当該インフラの情報を消去するよう要求する信号をDSRC車載器4に送信する。そしてDSRC車載器4’はこの信号に基づいてEPROM49のリスト中から当該インフラの情報を消去する。
【0066】
以上のようなDSRC車載器4’の作動によって、DSRCの通信エリアに入ると自動的に通信を開始するDSRC車載器4’の制御部44が、この通信の相手から自己の車載器IDを送信するよう要求する信号を受信することと、EPROM49に保存されたインフラIDのリスト中にこの通信の相手すなわちアプリケーション処理装置3のインフラIDがないことに基づいて、上記した特定の信号をカーナビゲーション装置52に通知する。この特定の信号を受信したカーナビゲーション装置52は車載器IDの送信の要求があることと共に現在の通信エリアの通信の相手のインフラIDを乗員に通知する。この通知を受けた乗員は、自車の現在位置および周囲の店舗等の構造物に加え、カーナビゲーション装置52による通信の相手に関する情報の表示を確認することで、車載器IDを送信するか否かを判断することができる。乗員が車載器IDを送信する旨の入力をカーナビゲーション装置52に対して行うと、制御部44が外部インターフェース51を介してこの入力を受け付けて通信の相手に自己の車載器IDを送信するので、乗員の入力によって車載器IDの送信が行われるようになる。したがって、通信エリアに入ると自動的に通信を開始する路車間の狭域通信の車載器が、乗員の意図しない通信相手に車載器の車載器IDを送信してしまうことを防止することができる。
【0067】
また、車載器IDを送信してもよい通信の相手のインフラIDを上記リストに保存しておくことで、これらの通信相手に対しては、DSRC車載器4は乗員の入力によることなく、自動的に自己の車載器IDを送信できるようになる。
【0068】
またカーナビゲーション装置52は、自車の位置情報およびDSRCの通信エリア毎のインフラに関する情報から、現在位置におけるインフラを特定し、車載器IDの送信の要求があることと共に現在の通信エリアにおける通信の相手に関する情報を乗員に通知するようになっていてもよい。
【0069】
なお、上記した各実施形態において、制御部44の図3、4、6、9に示した各ステップの処理は、それぞれの処理の示す機能を実現する手段として構成されるものである。
【0070】
具体例としては、図3の自動的に開始した通信において、ステップ125の通知処理が、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号を受信することに基づいて、識別情報の送信の要求があることを乗員に通知する要求通知手段を構成する。
【0071】
また、図3のステップ155の送信処理が、乗員による識別情報を送信する旨の入力を受けつけることに基づき、通信の相手に自己の識別情報を送信する識別情報手動送信手段を構成する。
【0072】
また図6のステップ625の送信処理が、自動的に開始した通信において、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号を受信することに基づいて、ユーザインターフェース装置に特定の信号を送信する特定信号送信手段を構成する。
【0073】
また、図4および図9のステップ220の送信処理が、自動的に開始した通信において、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号およびこの通信の相手の識別情報を受信することと、メモリに保存されている通信相手リスト中にこの通信の相手の識別情報があることに基づいて、通信の相手に自己の識別情報を送信する識別情報自動送信手段を構成する。
【0074】
また、図3のステップ145および図6のステップ680の処理、ならびにリストの内容を削除する処理が、乗員の入力に基づいて通信相手リストの内容を変更する手段を構成する。
【0075】
なお、第1および第2実施形態においては、通信相手リストは、乗員に問い合わせるまでもなく、自動的に自己の識別情報を送信してもよい通信相手のリストであったが、DSRC車載器4、4’はこのリストを有さず、常に乗員の入力によって識別情報の送信の可否を決定してもよい。また、DSRC車載器4、4’は、乗員に問い合わせるまでもなく車載器IDの送信を行わないリストを有していても良い。
【0076】
また、第2実施形態においては、乗員の識別情報を送信する旨の入力はカーナビゲーション装置52に対して行われ、DSRC車載器4’は、カーナビゲーション装置52を介してこの旨の入力を受け付けるようになっているが、DSRC車載器4’が第1実施形態のようにボタン押下等によって直接この入力を受け付けるようになっていてもよい。
【0077】
また第2実施形態においては、車両の乗員への車載器ID送信要求の信号の受信を通知し、および乗員による車載器IDを送信する旨の入力を直接受け付けるのが、カーナビゲーション装置52である必要はなく、特定の信号を受信すると自車の位置情報および前記狭域通信の前記通信の相手に関する情報に基づいて前記識別情報の送信の要求があることと共に現在の前記通信エリアの通信の相手に関する情報を乗員に通知する機能のみを備えた装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るDSRCによる路車間の狭域通信システムの構成を示す図である。
【図2】DSRC車載器4の構成を示す図である。
【図3】制御部44のアプリケーション処理装置3との通信の作動を示すシーケンス図である。
【図4】制御部44のアプリケーション処理装置3との通信の作動を示すシーケンス図である。
【図5】第2実施形態に係るDSRC車載器4’の構成を示す図である。
【図6】制御部44のアプリケーション処理装置3およびカーナビゲーション装置52との通信の作動を示すシーケンス図である。
【図7】カーナビゲーション装置52のディスプレイの表示内容を示す図である。
【図8】カーナビゲーション装置52のディスプレイの表示内容を示す図である。
【図9】制御部44のアプリケーション処理装置3およびカーナビゲーション装置52との通信の作動を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
1…アンテナ、2…DSRC制御器、3…アプリケーション処理装置、
4、4’…DSRC車載器、41…アンテナ、42…無線部、
43…ベースバンド処理部、44…制御部、45…RAM、46…ボタン、
47…ディスプレイ、48…スピーカ、49…EPROM、
51…外部インターフェース、52…カーナビゲーション装置。
Claims (4)
- 路車間の狭域通信に用いられ、前記狭域通信の通信エリアに入ると、自動的に前記狭域通信を開始する狭域通信車載器であって、
通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報のリストである通信相手リストを保存するメモリを備え、
前記自動的に開始した通信において、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号およびこの通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報を受信することと、前記メモリに保存されている前記通信相手リスト中に受信した前記固有の識別情報がないことに基づいて、前記識別情報の送信の要求があることを乗員に通知する要求通知手段と、
前記乗員による前記自己の識別情報を送信する旨の入力を受けつけることに基づき、前記通信の相手に前記自己の識別情報を送信する識別情報手動送信手段と、を備えたことを特徴とする狭域通信車載器。 - 路車間の狭域通信に用いられ、前記狭域通信の通信エリアに入ると、自動的に前記狭域通信を開始する狭域通信車載器であって、
自動的に開始する前記狭域通信におけるこの通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報のリストである通信相手リストを保存するメモリを備え、
前記自動的に開始した通信において、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号およびこの通信の相手の装置を他の装置と区別するための固有の識別情報を受信することと、前記メモリに保存されている前記通信相手リスト中に受信した前記固有の識別情報がないことに基づいて、特定の信号を受信すると自車の位置情報および前記狭域通信の前記通信の相手に関する情報に基づいた現在の前記通信エリアの通信の相手に関する情報を前記識別情報の送信の要求があることと共に乗員に通知するユーザインターフェース装置に前記特定の信号を送信する特定信号送信手段と、
前記乗員による前記識別情報を送信する旨の入力を受けつけることに基づき、前記通信の相手に前記自己の識別情報を送信する識別情報手動送信手段と、を備えたことを特徴とする狭域通信車載器。 - 前記自動的に開始した通信において、この通信の相手から自己の識別情報を送信するよう要求する信号およびこの通信の相手の識別情報を受信することと、前記メモリに保存されている前記通信相手リスト中にこの通信の相手の識別情報があることに基づいて、前記通信の相手に前記自己の識別情報を送信する識別情報自動送信手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の狭域通信車載器。
- 前記乗員の入力に基づいて前記通信相手リストの内容を変更する手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の狭域通信車載器。
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