以下、本発明の第1の実施の形態に係る磁力回転装置について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る磁力回転装置1は、磁力により回転する回転体(回転子)2と、該回転体2を軸支するフレーム(固定子)3とからなる。
回転体2は、回転軸となるシャフト4に2枚の円盤5と1枚の円盤51がスペーサ40を介して所定間隔で固定されており、各円盤5の下面に周方向に一定間隔で4個の永久磁石6が配設されている。一方、フレーム3には永久磁石6に対応して4箇所に電磁石7が固定されている。
永久磁石6は、表面及び裏面に磁極が形成された板状のものであり、具体的にはネオジウム系等の希土類磁石である。このように、表面と裏面にN極及びS極が形成された永久磁石6を用いることにより、各磁極面が広くなり、回転トルクの向上を図ることができる。
図1に示すように、永久磁石6は、円盤5に数mm程度埋め込まれることにより固定されており、図2に示すように、1枚の円盤5に対して、周方向に等間隔となるように4個固定されている。即ち、各永久磁石6は、円盤5の周縁部分に周方向に90°隔てて配設されている。永久磁石6の固定方法は特に限定されず、適宜金具等を用いて円盤5に固定すればよい。また、永久磁石6の個数も特に限定されるものではないが、回転体2のバランスを考慮すれば、本実施形態のように、永久磁石6を周方向に一定間隔で複数配設することが好ましい。
また、各永久磁石6は、円盤5(回転体2)の中心O(回転子中心)から永久磁石6の重心6aを結ぶ直線L1と、永久磁石6の磁極方向、即ち表面及び裏面上の法線方向の直線L2とが交わる角度φが、円盤5の中心O方向からみた場合に約30°以上60°以下となるように位置せしめられている。永久磁石6のN極又はS極のうちいずれかの面が円盤5の外方へ向けられており、永久磁石6に対して所定の磁気ギャップを隔てて設けられる電磁石7の極性は対向する永久磁石6の外方の磁極と同極になっている。
同様にして、別の円盤5にも先と逆の極を外方に向けられた4個の永久磁石6が固定され、各4個の永久磁石6が固定され2枚の円盤5を互いの永久磁石6が周方向に同位置となるようにスペーサ40を介して重ね合わされている。すなわち、永久磁石6は、磁力回転装置1に合計8個設けられている。また、2枚の円盤5と1枚の円盤51の計3枚の円盤もスペーサ40を介して重ね合わされている。
また、円盤51には、センサ検出盤8が同軸となるように固定されている。センサ検出盤8は、円盤5より若干大径の透明なアクリル板であり、円盤5の周縁から突出した部分の所定部位にテープ等を貼り付けることにより、該部位を位置検出センサ9が検出するようになっている。
各円盤5、51の中心にはシャフト4が貫通されており、これらシャフト4、円盤5、51、永久磁石6、及びセンサ検出盤8が固定されて、回転体2として一体に回転するようになっている。また、図1に示すように、回転体2の周縁部分には、各円盤5、51の周縁部間に渡るようにフィルム10が貼り付けられている。回転体2の周縁をフィルム10で封止することにより、回転体2が回転した場合にフィルム10で封止された回転体2の内部の空気が回転体2とともに回転するため、永久磁石6等が空気抵抗を受けることが少ない。これにより、回転体2の空気抵抗を減少させて磁力回転装置1の回転効率を向上させることができる。なお、フィルム10は、永久磁石6と電磁石7との磁力の作用に影響しない素材であって、薄手のものが好ましく、例えば合成樹脂フィルム等を用いることができる。
電磁石7は、図1に示すように、U字の鉄芯70にコイル71が巻かれたものであり、コイル71に電流が流れることにより鉄芯70の両端部に夫々磁極が形成される。これにより、永久磁石6に磁力を作用させて回転体2を回転させる。図に示すように、電磁石7は、その各磁極が各円盤5間に二段に構成された永久磁石6に対応するようにして、所定の磁気ギャップ長で配置されており、対応する二段の永久磁石6は、電磁石7の磁極と同極で対面するように、即ち、電磁石7のN極に対応する永久磁石6はN極を外方へ向けて円盤5に固定されており、電磁石7のS極に対応する永久磁石6はS極を外方へ向けて円盤5に固定されている。このような電磁石7が、図2に示すように、回転体2の永久磁石6の配置に対応して、フレーム3に周方向に90°異なる位置に4個固定されている。このように、回転体2に固定する一組の永久磁石6を二段の構成とし、電磁石7をU字状として該二段の永久磁石6に対応させて、電磁石7の両極から発生する磁極をともに回転体2を回転させるための磁力として利用することにより、磁力回転装置1の電力から動力へのエネルギーの変換効率が向上する。
また、電磁石7は、円盤5(回転体2)の中心Oから電磁石7の重心を結ぶ直線(不図示)と、電磁石7の磁束中心軸(不図示)とが交わる角度が円盤5の中心O方向からみた場合に0°より大きく20°以下となるように、すなわち、電磁石の磁束中心軸と半径方向軸とのなす角度が160°以上180°未満であるように位置せしめられている。これにより、前記角度を0°とする場合と比較して、平均電磁トルクが増大するという利点がある。なお、永久磁石6の固定角度の変更は、磁力回転装置1の分解が必要となるため困難であるが、電磁石7の固定角度の変更は、容易に行うことができる。なお、図面では、上記の角度が略0°の状態を示しているが、電磁石7は、実際には、上記の角度が0°より大きく20°以下となるように固定されている。
フレーム3は、回転体2を軸支するとともに、前記電磁石7及び位置検出センサ9を固定するものであり、図1に示すように、2枚のフレーム板30が所定間隔で対向して互いに連結されている。回転体2は、対向するフレーム板30間において、そのシャフト4が軸支されることにより、フレーム3に回転自在に設けられている。従って、2枚のフレーム板30は、回転体2の外径より十分に大きなものである。また、図には示していないが、シャフト4を軸支する各フレーム板30にはベアリングが適宜設けられている。
また、フレーム3には、前記センサ検出盤8に対応して位置検出センサ9が設けられている。位置検出センサ9は、回転体2とともに回転するセンサ検出盤8の所定部位を検出できれば周知且つ任意のものを使用できる。また、位置検出センサ9は、電磁石7に電流を付与するために各電磁石7と接続された回路11と接続されており、電磁石7に電流を付与するタイミングを回路11に与えている。回路11については詳細に説明しないが、電磁石7のコイル71のエネルギーを抵抗で消費するものではなく、電源に回生するタイプが好ましく、例えばSRM(スイッチトリラクタンスモータ)で一般的に用いられている自己消弧形素子2個の回路を使用することができる。
以下、本磁力回転装置1において、磁力による付勢力を与えて回転体2を回転させる動作について説明するが、まず、図3及び図4に示すように、両端に磁極が形成された棒状の永久磁石90を用いて、該棒状の永久磁石90を、回転体の半径方向に対して磁極方向がなす角度φを60°となるように配置した従来の磁力回転装置について考察する。なお、永久磁石90を含む円は、回転体を示したものである。図3は、安定平衡状態を、図4は、不安定平衡状態を示している。いずれも永久磁石90と電磁石91の吸引力と反発力とが均衡した状態であるが、安定平衡状態では、回転体がいずれの方向に回転しても、永久磁石90と電磁石91との磁力により回転方向逆向きの力が加わり、再び安定平衡状態に戻る。一方、不安定平衡状態では、回転体がいずれかの方向に回転すれば、永久磁石90と電磁石91との磁力によりその回転方向への力が加わり、再び不安定平衡状態に戻ることはない。
図5は、従来の磁力回転装置における回転角度θに対する電磁トルクTeを示したθ−Te特性図である。なお、電磁トルクTeは、二段一対の永久磁石90と一定電流の一個の電磁石91によるものであり、θは電磁石91の中心軸から反時計回りに測った回転角度である。図示するように、安定平衡状態の動作点P1(図3参照)、不安定平衡状態の動作点P2(図4参照)が生じている。また、θ=0°付近のトルク曲線の中央部に比較的ピークの大きい領域が生じるが、ピークを境に吸引力と反発力が作用するこの領域のトルクを剣状トルク(大値狭角度トルク)Taと呼ぶものとする。これに対し、剣状トルク(大値狭角度トルク)Taの両側には比較的ピーク幅の広い領域が生じるが、これらの領域のトルクを夫々岡状トルク(小値広角度(反発力)トルク)Tb及び岡状トルク(小値広角度(吸引力)トルク)Tcと呼ぶものとする。
従来の磁力回転装置では、剣状トルク(大値狭角度トルク)Taの反発力と吸引力を利用していた。剣状トルク(大値狭角度トルク)Taを利用する場合には、−10°≦θ≦20°の間で狭いパルス幅の電流を電磁石91に供給する必要がある。このようなパルス幅の電流を供給する場合に、電流の立上がり時間と減衰時間を考慮すれば、高速回転に対応させることは困難である。
次に、本磁力回転装置1の回転について説明する。
図6は、本磁力回転装置1のθ−Te特性図である。θは、回転体2の回転角度、Teは、電磁トルクであり、+θ方向は、回転体2の反時計回りの方向、−θは、回転体2の時計回りの方向を示している。ここで、この電磁トルクTeを0°以上360°以下で積分すると、その値は0となる。すなわち、電磁トルクTeの合計はゼロである。図示するように、剣状トルク(大値狭角度トルク)Taで負の電磁トルクTeが発生しているが、これは電磁石7の磁極に対して永久磁石6の各磁極が反発力及び吸引力として働き、合計すると時計回り方向である−θ方向へのトルクを発生させるからである。また、二段一対の永久磁石6から+90°及び−90°離れたところにも永久磁石6が存在するので、それらを考慮すると、図中の岡状トルク(小値広角度トルク)Tbと岡状トルク(小値広角度トルク)Tcは重なって正の大きな値となり、剣状トルク(大値狭角度トルク)Taは変化しない。θ=0°では永久磁石6と電磁石7とが作用して+θ方向へのトルクが発生する。また、安定平衡点(安定平衡状態の動作点)P1はθ=−25°と40°で生じ、不安定平衡点(不安定平衡状態の動作点)P2はθ=−1°と−60°で生じる。なお、安定平衡点P1及び不安定平衡点P2の発生する回転角度は、永久磁石6と電磁石7との位置関係、例えば磁気ギャップ長により変化するものである。
本磁力回転装置1では、剣状トルク(大値狭角度トルク)Taを利用せずに岡状トルク(小値広角度トルク)Tb及び岡状トルク(小値広角度トルク)Tcを利用している。これにより、パルス幅の広い電流を電磁石7に流すこととなるので、高速回転においても電流の制御が容易となる。したがって、図6に示すように、−60°≦θ≦−25°、及び−1°≦θ≦40°において電磁石7に電流を流すように制御される。
このように、岡状トルク(小値広角度トルク)Tbと岡状トルク(小値広角度トルク)Tcとの双方を利用すれば、パルス電流を生成すべきθの幅が広くなり、また、電磁トルクも大きくなる。このような電流の制御は、センサ検出盤8の所定領域、即ち、−1°≦θ≦65°の66°の幅の領域内に位置検出センサ9が検出可能なようにテープ等を貼り付けることにより実現できる。
このように、本実施の形態に係る磁力回転装置1によれば、磁力により生ずる回転トルク(電磁トルクTe)と回転角度(回転角度θ)との関係において、剣状トルク(大値狭角度トルク)Taを発生させる回転角度θの領域(回転角度領域)で電磁石7への電流(直流電流)を遮断し、剣状トルク(大値狭角度トルク)Ta以外の岡状トルク(小値広角度トルク)Tb及び岡状トルク(小値広角度トルク)Tcを発生させる回転角度θの領域(回転角度領域)で電磁石7へ一方向通電することにより、回転体2に磁力による回転力を付与することとしたので、電磁石7に流す電流のパルス幅が広くなり、高速回転においても電流の制御が容易となる。したがって、磁力回転装置1の高速回転化が実現できる。
次に、本発明の第2の実施の形態に係る磁力回転装置について説明する。本実施の形態に係る磁力回転装置1は、図1及び図2に基づいて説明した第1の実施の形態に係る磁力回転装置1の構成に加えて、図7に示すように、回転体2の2つの永久磁石6の間に柱状強磁性体121を設けたものである。具体的には、隣り合う永久磁石6の中間部分、すなわち、円盤5の中心Oから永久磁石6の重心6aを結ぶ直線L1と、円盤5の中心Oから柱状強磁性体121A(121)の重心121aを結ぶ直線L4とがなす角度αが永久磁石6A(6)の重心6a方向からみた場合に約45°となるように設けられている。この柱状強磁性体121は、各円盤5に4個ずつ合計8個設けられており、柱状強磁性体121と電磁石7との吸引力によりリラクタンス電磁トルクTrが発生する。
図7は、回転体2の回転角度θが0°の状態、図8は、回転体2の回転角度θが20°の状態、図9は、回転体2の回転角度θが45°の状態、図10は、これらの状態変化に対するリラクタンス電磁トルクTrの変化を示している。図7に示した状態、すなわち、θ=0°において電磁石7への通電を開始する。柱状強磁性体121の構成は簡単であり、その機械的強度は大きいので、柱状強磁性体121A(121)は電磁石7A(7)からの吸引力と電磁石7B(7)からの吸引力を受ける。ここで、この双方の吸引力は同じ大きさで向きが逆であるので、リラクタンス電磁トルクTrの大きさは0となる。これは、他の柱状強磁性体121にも当てはまるので、θ=0°においては、磁力回転装置1におけるリラクタンス電磁トルクTrは0となる。
図8は、通電を開始してθ=20°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体121の状態を示した図である。柱状強磁性体121Aは、電磁石7Aからの吸引力と電磁石7Bからの吸引力を受ける。このとき、柱状強磁性体121Aは、電磁石7A寄りに位置しているため、電磁石7Aからの吸引力の方が大きく、リラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の値となる。
図9は、通電を開始してθ=45°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体121の状態を示した図である。ここでは、図に示した状態、すなわち、θ=45°で電磁石7への電流が0となるように制御する。一方、電流を0としなかった場合には、柱状強磁性体121Aと電磁石7Aとの吸引力だけが極めて大きくなるが、この吸引力は半径方向となる。したがって、電磁石7への電流の有無に関らず、リラクタンス電磁トルクTrは0となる。
図10は、柱状強磁性体121と電磁石7の作用によって生じるリラクタンス電磁トルクTrと回転角度θの特性図であり、電磁石7に一定の電流が流れている場合のθ−Tr特性図である。なお、リラクタンス電磁トルクTrの0°から90°までの平均値は0になっている。上述したように、θが0°及び45°のときにリラクタンス電磁トルクTrは0となっている。また、θ=45°で電磁石7への電流を0とする方法と、θ=45°より大きなθの値になったときに電磁石7への電流を0とする方法があることがこの図からわかる。後者では、リラクタンス電磁トルクTrを多少無駄にするが、通電期間が長くなるため、他の電磁トルク成分が大きくなるという利点がある。
このように、第2の実施の形態に係る磁力回転装置1によれば、永久磁石6の間に柱状強磁性体121を設け、電磁石7へ通電している間に、柱状強磁性体121と電磁石7との吸引力によるリラクタンス電磁トルクTrを発生させたので、リラクタンス電磁トルクTr(図10参照)と電磁トルクTe(図6参照)とにより平均電磁トルクが増大する。これにより、磁力回転装置1の更なる高速回転化が実現できる。
次に、本発明の第3の実施の形態に係る磁力回転装置について説明する。本実施の形態に係る磁力回転装置1は、図1及び図2に基づいて説明した第1の実施の形態に係る磁力回転装置1の構成に加えて、図11に示すように、回転体2の2つの永久磁石6の間に中心を持つ円弧上を移動可能な柱状強磁性体131を設けたものである。具体的には、隣り合う永久磁石6の中間部分を中心とする所定の円弧上、すなわち、円盤5の中心Oから永久磁石6の重心6aを結ぶ直線L1と、円盤5の中心Oから柱状強磁性体131A(131)の重心131aを結ぶ直線L4とがなす角度βが永久磁石6A(6)の重心6a方向からみた場合に約25°以上44°以下となる円弧上を移動可能となるように設けられている。柱状強磁性体131は、各円盤5に4個ずつ合計8個設けられており、この柱状強磁性体131と電磁石7との吸引力によりリラクタンス電磁トルクTrが発生する。
柱状強磁性体131A(131)は、腕16に支えられ、該腕16が軸受15によって軸支されることにより、所定の円弧上を移動可能となっている。前記軸受15は、隣り合う永久磁石6の中間部分、すなわち、直線L1と、軸受15と円盤5の中心Oを結ぶ直線(図11では直線L4)と、がなす角度(図11ではβ)が44°となる位置に設けられている。なお、軸受15に代えて、クロスローラベアリングを用いてもよい。腕16は、上述のβの最小値が25°、最大値が44°となるように、ストッパー141とストッパー142とにより、可動範囲を制限されている。そのため、0°≦θ≦44°においてリラクタンス電磁トルクTr≧0となる。したがって、0°≦θ≦44°において電磁石7に通電することを基本とする。なお、リラクタンス電磁トルクTrの平均値が正になるθ>44°の範囲まで通電する方法もある。
例えば、βが45°を越え、電磁石7への電流が0になった場合、柱状強磁性体131Aは、永久磁石6Aの吸引力よりも永久磁石6Bの吸引力の方が強くなって永久磁石6Bに引き寄せられるため、都合が悪い。したがって、βの最大値を44°としている。なお、ストッパー141の位置は、図示するように、θ=0°において、柱状強磁性体131Aが電磁石7Aの方を向くようにしてもよいし、柱状強磁性体131Aが円周上に近づくように移動させてもよい。また、ストッパー141、142の位置、軸受15の位置、腕16の長さによってβの最小値、最大値が変化し、θ−Tr特性を変化させることができる。
上述した図11は、回転体2の回転角度θが0°の状態、図12は、回転体2の回転角度θが20°の状態、図13は、回転体2の回転角度θが43°の状態、図14は、回転体2の回転角度θが44°の状態、図15は、これらの状態変化に対するリラクタンス電磁トルクTrの変化を示している。図11に示した状態、すなわち、θ=0°において電磁石7への通電を開始すると、柱状強磁性体131Aは、電磁石7Aからの吸引力と電磁石7Bからの吸引力を受ける。ここでは、両吸引力のうち電磁石7Aからの吸引力の方が大きいため、リラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の値となり、そのトルクは大きい。このとき、腕16はストッパー141と接触しており、柱状強磁性体131Aは、反時計回り方向に回転しないようになっている。なお、柱状強磁性体131Aと永久磁石6Aとの吸引力は大きいが、柱状強磁性体131Aと永久磁石6Aは、共に回転体2上に存在するためトルクにはならない。
図12は、通電を開始してθ=20°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。この場合にも、柱状強磁性体131Aが電磁石7Aから受ける吸引力と電磁石7Bから受ける吸引力のうち、電磁石7Aからの吸引力の方が大きいため、リラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の値となる。
図13は、通電を開始してθ=43°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。このとき、柱状強磁性体131Aへの電磁石7Aからの吸引力は、極めて大きいが、図示するように、その方向はほぼ半径方向となる。したがって、リラクタンス電磁トルクTrは正の小さな値となる。
図14は、通電を開始してθ=44°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。図に示した状態、すなわち、θ=44°で電磁石7への電流が0となるように制御する。このとき、電磁石7への通電が行われておれば、柱状強磁性体131Aは、電磁石7Aからの吸引力により、図に示す状態から時計回り方向に移動し、腕16がストッパー142に当接する。柱状強磁性体131Aと電磁石7Aとの吸引力は大きいが、図からわかるように、その方向は半径方向となる。したがって、リラクタンス電磁トルクTrは0となる。θ=44°で電磁石7への電流を0とすると、柱状強磁性体131Aは、永久磁石6Bからの吸引力及び永久磁石6Aからの吸引力を受ける。この場合には、永久磁石6Aからの吸引力が大きいので、永久磁石6Aに引き寄せられて、図に示したように、腕16がストッパ141に当接した状態となる。このため、電流の再流入時(θ=90°)において、一周期前(θ=0°)と同じ状態となる。
例えばθ=44°を越えた状態で、電磁石7への電流が0になったとしても、柱状強磁性体131Aは、永久磁石6Aに引き寄せられ、一周期前と同じ状態になるので、問題が生じない。ただし、θ=44°を越えるとリラクタンス電磁トルクTrは負(−θ方向)の値となるので、ここでは、電流を0に制御している。なお、リラクタンス電磁トルク平均値が負とならない、θのより広い範囲内で電磁石7に通電するという方法もある。
図15は、柱状強磁性体131と電磁石7の作用によって生じるリラクタンス電磁トルクTrと回転角度θの特性図であり、電磁石7に一定の電流が流れている場合のθ−Tr特性図である。上述したように、θ=0°において、リラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の値となり、θ=44°において0となっている。また、44°<θ<82°でリラクタンス電磁トルクTrは負(−θ方向)の値となり、θ=82°でリラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の値に転じている。これは、柱状強磁性体131Aの腕16がストッパー142に当接している状態からストッパー141に当接する状態に変化しているからである。また、リラクタンス電磁トルクTrの0°から90°までの平均値は0になっている。このθ−Tr特性図は、θ=44°で電磁石7への電流を0にすることの利点をよく示している。
このように、本実施の形態に係る磁力回転装置1によれば、回転体2の各円盤5の永久磁石6の間に中心を持つ円弧上を移動可能な柱状強磁性体131を設け、電磁石7へ通電している間に、柱状強磁性体131と電磁石7との吸引力によるリラクタンス電磁トルクTrを発生させたので、リラクタンス電磁トルクTr(図15参照)と電磁トルクTe(図6参照)とにより平均電磁トルクが増大する。これにより、磁力回転装置1の更なる高速回転化が実現できる。
次に、本発明の第3の実施の形態の変形例に係る磁力回転装置について説明する。本実施の形態に係る磁力回転装置1は、図16に示すように、円盤5に所定の円弧上を移動可能な柱状強磁性体131が設けられている。具体的には、円盤5の中心Oから永久磁石6の重心6aを結ぶ直線L1と、円盤5の中心Oから柱状強磁性体131の重心131aを結ぶ直線L4とがなす角度βが永久磁石6の重心6a方向からみた場合に約38°〜44°となる円弧上を移動可能となるように設けられている。柱状強磁性体131は、各円盤5に4個ずつ合計8個設けられており、この柱状強磁性体131と電磁石7との吸引力によりリラクタンス電磁トルクTrが発生する。
柱状強磁性体131Aは、腕16に支えられ、腕16が軸受15によって軸支されることにより、所定の円弧上を移動可能となっている。軸受15は、直線L1と軸受15と円盤5の中心Oを結ぶ直線(不図示)とが成す角度が約35°となる位置に設けられている。なお、軸受15に代えて、クロスローラベアリングを用いてもよい。腕16は、上述のβの最小値が38°、最大値が44°となるように、ストッパー141とストッパー142とにより、可動範囲を制限されている。そのため、0°≦θ≦38°においてリラクタンス電磁トルクTr≧0となる。したがって、θ=38°で電磁石7への電流を0にする方法も考えられるが、この方法では、通電期間が短いので、他の電磁トルク成分の値が小さくなる。
θ>38°においてリラクタンス電磁トルクTrは負(−θ方向)の値となるが、柱状強磁性体131Aは、移動して電磁石7Aからの吸引力の方向は半径方向に近くなるので、リラクタンス電磁トルクTrは、小さな値となる。また、θ=54°でβ=44°となるが、この状態では、柱状強磁性体131Aと電磁石7Aは離れており、リラクタンス電磁トルクTrは小さな値となる。したがって、0°<θ<54°で電磁石7に通電を行う方法も採用することができる。
ストッパー141は、図示するように、0°≦θ≦38°において、柱状強磁性体131A(131)の位置をβ=38°に固定する働きをし、ストッパー142は、βの最大値を44°とする働きをしている。このストッパー141、142、軸受15の位置及び腕16の長さによってθ−Tr特性を変化させることができる。
図16は、回転体2の回転角度θが0°の状態、図17は、回転体2の回転角度θが20°の状態、図18は、回転体2の回転角度θが50°の状態、図19は、回転体2の回転角度θが54°の状態、図20は、回転体2の回転角度θが70°の状態、図21は、これらの状態変化に対するリラクタンス電磁トルクTrの変化を示している。図16に示した状態、すなわち、θ=0°において電磁石7への通電を開始すると、柱状強磁性体131Aは電磁石7Aからの吸引力と電磁石7Bからの吸引力を受ける。ここでは、両吸引力のうち電磁石7Aからの吸引力の方が大きいため、リラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の値となり、そのトルクは大きい。
図17は、通電を開始してθ=20°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。この場合にも、柱状強磁性体131Aが電磁石7Aから受ける吸引力と電磁石7Bから受ける吸引力のうち、電磁石7Aからの吸引力の方が大きいため、リラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の大きな値となる。なお、このときのβは最小値の38°である。
図18は、通電を開始してθ=50°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。このとき、柱状強磁性体131Aへの電磁石7Aからの吸引力はやや大きく、図示するように、その方向はやや半径方向となっている。したがって、リラクタンス電磁トルクTrは負(−θ方向)の中程度の値となる。なお、このときのβは42°である。
図19は、通電を開始してθ=54°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。図示するように、βは最大値の44°となって、腕16がストッパー142に当接している。このとき、リラクタンス電磁トルクTrは、図18に示したθ=50°でのリラクタンス電磁トルクTrとほぼ同じ、負(−θ方向)の中程度の値となる。
図20は、通電を開始してθ=70°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。図示するように、図19に示したθ=54°の場合と同様、βは最大値の44°であり、腕16がストッパー142に当接している。このとき、リラクタンス電磁トルクTrは、負(−θ方向)の小さな値となる。例えば、θ=71°で電磁石7への電流を0にすれば、柱状強磁性体131Aは、永久磁石6Aに引き寄せられ、電流の再流入時(θ=90°)において、一周期前(θ=0°)と同じ状態になる。
図21は、柱状強磁性体131と電磁石7の作用によって生じるリラクタンス電磁トルクTrと回転角度θの特性図である。ただし、電磁石7に一定の電流が流れている場合のθ−Tr特性図である。上述したように、θ=0°において、リラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の値となり、θ=38°において0となっている。また、38°<θ<83°でリラクタンス電磁トルクTrは負(−θ方向)の値となる。また、リラクタンス電磁トルクTrの0°から90°までの平均値は0になっている。図からもわかるように、θ=38°で電磁石7への電流を0にする方法以外に、θ=38°より大きなθの値で電磁石7への電流を0にする方法がある。
次に、本発明の第4の実施の形態に係る磁力回転装置について説明する。本実施の形態に係る磁力回転装置1は、図1及び図2に基づいて説明した第1の実施の形態に係る磁力回転装置1の構成に加えて、図22に示すように、回転体2の2つの永久磁石6の間を直線移動可能な柱状強磁性体131を設けたものである。具体的には、円盤5の中心Oから永久磁石6の重心6aを結ぶ直線L1と、円盤5の中心Oから柱状強磁性体131A(131)の重心131aを結ぶ直線L4とがなす角度βが永久磁石6A(6)の重心6a方向からみた場合に約20°〜44°となる直線上を移動可能となるように設けられている。柱状強磁性体131は、各円盤5に4個ずつ合計8個設けられており、この柱状強磁性体131と電磁石7との吸引力によりリラクタンス電磁トルクTrが発生する。
柱状強磁性体131は、例えば円盤5に設けられた溝(不図示)に沿って直線移動可能となっており、また、この溝によって、柱状強磁性体131Aは、上述のβの最小値が20°、最大値が44°となるように可動範囲を制限されている。
図22は、回転体2の回転角度θが0°の状態、図23は、回転体2の回転角度θが20°の状態、図24は、回転体2の回転角度θが44°の状態、図25は、これらの状態変化に対するリラクタンス電磁トルクTrの変化を示している。図22に示した状態、すなわち、θ=0°において電磁石7への通電を開始すると、柱状強磁性体131Aは電磁石7Aからの吸引力と電磁石7Bからの吸引力を受ける。ここでは、両吸引力のうち電磁石7Aからの吸引力の方が大きいため、リラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の値となる。
図23は、通電を開始してθ=20°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。この場合には、図示するように、柱状強磁性体131Aと電磁石7Aとの吸引力の方向は半径方向となる。したがって、リラクタンス電磁トルクTrは0となる。
図24は、通電を開始してθ=44°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。この場合にも、図示するように、柱状強磁性体131Aと電磁石7Aとの吸引力の方向は半径方向となるので、電磁石7への通電の有無に関らず、リラクタンス電磁トルクTrは0となる。また、θ>44°でリラクタンス電磁トルクTrは負(−θ方向)の値となる。したがって、θ=44°において電磁石7への電流が0となるように制御する。これにより、柱状強磁性体131Aは、通電開始時(θ=0°)における状態に戻る。
図25は、柱状強磁性体131と電磁石7の作用によって生じるリラクタンス電磁トルクTrと回転角度θの特性図であり、電磁石7に一定の電流が流れている場合のθ−Tr特性図である。図示するように、θ=74°でリラクタンス電磁トルクTrが正(+θ方向)の値に転じている。これは、柱状強磁性体131Aが溝の一方の端から他方の端まで移動したこと、すなわち、第3の実施の形態において、柱状強磁性体131Aがストッパー142に当接している状態からストッパー141に当接する状態へ変化したことに相当する(図15参照)。なお、リラクタンス電磁トルクTrの平均値は0である。
このように、本実施の形態に係る磁力回転装置1によれば、回転体2の2つの永久磁石6の間を直線移動可能な柱状強磁性体131を設け、電磁石7へ通電している間に、柱状強磁性体131と電磁石7との吸引力によるリラクタンス電磁トルクTrを発生させたので、リラクタンス電磁トルクTr(図25参照)と電磁トルクTe(図6参照)とにより平均電磁トルクが増大する。これにより、磁力回転装置1の更なる高速回転化が実現できる。
次に、本発明の第5の実施の形態に係る磁力回転装置について説明する。本実施の形態に係る磁力回転装置1は、図1及び図2に基づいて説明した第1の実施の形態に係る磁力回転装置1の構成に加えて、図26に示すように、回転体2の中心Oを中心とする回転体2の2つの永久磁石6の間の円弧上を移動可能な柱状強磁性体131を設けたものである。具体的には、円盤5の中心Oから永久磁石6の重心6aを結ぶ直線L1と、円盤5の中心Oから柱状強磁性体131A(131)の重心131aを結ぶ直線L4とが成す角度βが永久磁石6A(6)の重心6a方向からみた場合に約15°以上44°以下となる中心Oを中心とする円弧上を移動可能となるように設けられている。柱状強磁性体131は、各円盤5に4個ずつ合計8個設けられており、この柱状強磁性体131と電磁石7との吸引力によりリラクタンス電磁トルクTrが発生する。
柱状強磁性体131Aは、腕16に支えられ、腕16が円盤5の中心Oに設けられた軸受15によって軸支されることにより、前記円弧上を移動可能となっている。なお、軸受15に代えて、クロスローラベアリングを用いてもよい。腕16は、上述のβの最小値が15°、最大値が44°となるように、ストッパー141とストッパー142とにより、可動範囲を制限されている。ここでは、βの最小値を15°としているが、これを変更してθ−Tr特性を変更することも可能である。
図26は、回転体2の回転角度θが0°の状態、図27は、回転体2の回転角度θが15°の状態、図28は、回転体2の回転角度θが44°の状態、図29は、これらの状態変化に対するリラクタンス電磁トルクTrの変化を示している。図26に示した状態、すなわち、θ=0°において電磁石7への通電を開始すると、柱状強磁性体131Aは電磁石7Aからの吸引力と電磁石7Bからの吸引力を受ける。ここでは、両吸引力のうち電磁石7Aからの吸引力の方が大きいため、リラクタンス電磁トルクTrは正(+θ方向)の値となる。
図27は、通電を開始してθ=15°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。この場合には、図示するように、柱状強磁性体131Aと電磁石7Aとの吸引力の方向は半径方向となる。したがって、リラクタンス電磁トルクTrは0となる。
図28は、通電を開始してθ=44°となった状態での円盤5と該円盤5に配設された永久磁石6及び柱状強磁性体131の状態を示した図である。この場合にも、図示するように、柱状強磁性体131Aと電磁石7Aとの吸引力の方向は半径方向となるので、電磁石7への通電の有無に関らず、リラクタンス電磁トルクTrは0となる。したがって、θ=44°において電磁石7への電流が0となるように制御する。なお、柱状強磁性体131Aは、通電再開時(θ=90°)において、通電開始時(θ=0°)における状態に戻る。
図29は、柱状強磁性体131と電磁石7の作用によって生じるリラクタンス電磁トルクTrと回転角度θの特性図であり、電磁石7に一定の電流が流れている場合のθ−Tr特性図である。図示するように、θ=77°でリラクタンス電磁トルクTrが正(+θ方向)の値に転じている。これは、柱状強磁性体131Aの腕16がストッパー142に当接している状態からストッパー141に当接する状態へ変化したためである。なお、リラクタンス電磁トルクTrの0°から90°までの平均値は0である。また、図からわかるように、θ=44°において電磁石7への電流が0となるように制御する方法は有効であるが、θ=44°より大きなθの値になったときに、電磁石7への電流を0とする方法では、通電中のリラクタンス電磁トルクTrの平均値が低下する。
このように、本実施の形態に係る磁力回転装置1によれば、回転体2の中心Oを中心とする回転体2の2つの永久磁石6の間の円弧上を移動可能な柱状強磁性体131を設け、電磁石7へ通電している間に、柱状強磁性体131と電磁石7との吸引力によるリラクタンス電磁トルクTrを発生させたので、リラクタンス電磁トルクTr(図29参照)と電磁トルクTe(図6参照)とにより平均電磁トルクが増大する。これにより、磁力回転装置1の更なる高速回転化が実現できる。
なお、本実施の形態は本発明の実施形態の一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜実施態様を変更できる。