JP2004336880A - 磁束量可変磁石型ロータ - Google Patents
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Abstract
【課題】高速回転時の減磁を実現することができる磁束量可変磁石型ロータを提供する。
【解決手段】IPMの永久磁石4をその高速回転時に軸方向に引き出す永久磁石直動機構(10、11、13)を設ける。永久磁石4は、リテーナバー10を通じてウエイト11の案内斜面15に係合し、ウエイト11がガイドバー13に保持されて自己の遠心力により径方向に移動することにより、永久磁石4は軸方向に移動して回転子鉄心3から逸脱して高速回転時の減磁が可能となる。
【選択図】図1
【解決手段】IPMの永久磁石4をその高速回転時に軸方向に引き出す永久磁石直動機構(10、11、13)を設ける。永久磁石4は、リテーナバー10を通じてウエイト11の案内斜面15に係合し、ウエイト11がガイドバー13に保持されて自己の遠心力により径方向に移動することにより、永久磁石4は軸方向に移動して回転子鉄心3から逸脱して高速回転時の減磁が可能となる。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁束量可変磁石型ロータに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
永久磁石型同期機は他の形式の同期機に比較して高出力でコンパクト化、構成簡素化を実現できるので、信頼性及び小型軽量化が要求される車両用回転電機に好適であるが、車両用回転電機は回転数域が広いため、低速トルク確保のために磁石磁界を十分大きく確保すると、高速回転時に過大な電機子巻線誘起電圧が発生するため、高速回転時の磁石磁界を低減するための減磁機構を設けることが提案されている。
【0003】
特許文献1は、磁石型ロータコアの永久磁石を、ロータコアに径方向に形成した摺動孔にスプリングとともに収容し、永久磁石に作用する遠心力が増加するとスプリングの弾性付勢力に抗して、永久磁石がこの摺動孔から抜け、これにより永久磁石がロータコアに与える磁束量が減少する構造を提案している。
【0004】
しかしながら、この技術では、磁石の磁極が周方向に背向する2側面に形成されることになるため、現在、主流となっている略周方向に延設され、磁極がその両主面に形成されるた薄板状磁石を用いる磁石型ロータコアには、適用することができなかった。そのうえ、永久磁石として優れた特性をもつセラミック磁石は、脆いためにこのような磁石運動により破損が生じる可能性もあった。
【0005】
特許文献2は、IPMのロータコア内において周方向に隣接する2つの磁石間にて軸方向に貫設された磁束短絡低減用のスリット内に軟磁性の磁束通路部材(磁束短絡部材)を径方向移動自在に挿入し、ロータコアの軸方向両側にコイルスプリングおよびこれにより軸方向に付勢されるリングをそれぞれ装備し、磁束通路部材の軸方向両端とこのリングとをリンク機構により連結し、コイルスプリングがリング、リンク機構を通じて磁束通路部材を径方向内側に付勢する構造を提案している。
【0006】
この構造では、磁束通路部材に遠心力が作用すると、磁束通路部材はスリット中をコイルスプリングの付勢力に抗して径方向外側に移動し、永久磁石磁束を短絡して減磁を行う。
【0007】
しかしながら、この技術では、ロータコアの両側にコイルスプリング、リング、リンク機構を必要とするため体格が大きくなり、高速回転するリンク機構の騒音がやかましく、ロータコアの端面への冷却ファンの設置も容易でないため、通常の空冷形式のモータではその実用化が困難であった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、高速回転時の減磁を実現することができる磁束量可変磁石型ロータを提供することをその目的としている。
【0009】
【特許文献1】特開平7−288940号公報
【特許文献2】特開平11−275787号公報
【0010】
【課題を解決するための手段】
第一発明の磁束量可変磁石型ロータは、偶数個の永久磁石と、周方向に所定間隔で軸方向に貫設されて前記永久磁石を軸方向移動可能に収容する偶数個の磁石挿入溝を有するロータコアと、前記ロータコアに固定された回転軸とを有する磁束量可変磁石型ロータにおいて、前記ロータコアの端面に近接配置されて高速回転時に前記永久磁石を前記磁石挿入溝から軸方向外側へ部分的に逸脱させる永久磁石直動機構を有することを特徴としている。
すなわち、この発明によれば、永久磁石直動機構が高速回転時にロータコアから永久磁石を軸方向に部分的に逸脱させるので、高速回転時の減磁作用をもつIPM用の磁束量可変磁石型ロータを実現することができる。この発明によれば、略周方向に延設されて磁極がその両主面に形成される薄板状磁石を用いることができるので、特許文献1に比較してステータコイルと鎖交する磁束量を大幅に増大することができる。また、特許文献2のように駆動部の軸方向運動を径方向運動に変換するリンク機構を不要とすることができるので、運動機構を簡素化することができる。
【0011】
好適態様において、前記磁石挿入溝に挿入されて前記永久磁石を軸方向移動自在に収容する薄肉のスリーブを有する。このようにすれば、積層電磁鋼板からなるロータコアに貫設されて微少な凹凸をもつ磁石挿入孔内を永久磁石が摺動することがないので、永久磁石を円滑かつ確実に移動させることができる。また、永久磁石には、ロータコアを通じて加振力や曲げ応力が加えられるが、脆い磁石に代わってスリーブがそれを受けるので、磁石の破損を防止することができる。
【0012】
好適態様において、前記永久磁石直動機構は、前記回転軸に固定されて略径方向に延在するガイド部材と、径方向外側に向かうにつれて前記ロータコアから遠ざかる案内斜面を有して前記ガイド部材に軸方向移動自在に保持されるウエイトと、一端が前記磁石挿入孔内の前記永久磁石に接し、他端が前記ウエイトの前記案内斜面に接する案内部材とを備える。
【0013】
これにより、低速回転時には、ウエイトは永久磁石がロータコア内に磁気的に吸引されることにより生じる付勢力(磁気吸引力)により径方向内側に押さえつけられて永久磁石がロータコア内に収容され、ロータコアの磁石磁束量を増大することができる。高速回転時には、ウエイトに作用する遠心力が増大してウエイトは径方向外側に移動し、これによりウエイトは案内部材を介して永久磁石を上記磁気吸引力に抗してロータコアから軸方向に逸脱させ、ロータコアの磁石磁束量を減少させる。つまり、永久磁石は、ウエイトの遠心力と永久磁石に働く磁気吸引力とがベクトル的にバランスする軸方向位置にシフトする。これらの結果として、高速回転時に減磁機能を奏するIPMを実現することができる。なお、スプリングを追加してもよい。
【0014】
好適態様において、前記永久磁石直動機構は、前記回転軸に固定されて前記永久磁石を軸方向に変位させる電磁直動機構と、前記電磁直動機構に回転数に応じて(正相関を有して)変化する電圧を印加することにより高速回転時に前記永久磁石を前記磁石挿入孔から部分的に逸脱させる回転数相関電圧を印加する給電部とを有する。電磁直動機構としては電磁リニアソレノイドや、回転動作を直動動作に変換する螺旋機構を有するモータとすることができる。
【0015】
これにより、永久磁石は、電磁直動機構の電磁付勢力と永久磁石に働く磁気吸引力とがバランスする軸方向位置にシフトする。これらの結果として、高速回転時に減磁機能を奏するIPMを実現することができる。この場合も、スプリングを追加してもよい。
【0016】
好適態様において、前記給電部は、ロータコアの回転軸にロータが固定される発電機からなる。このようにすれば、簡単に回転数に略比例する電磁直動機構印加電圧を発生させることができる。なお、この発電機は、磁石磁束と鎖交するコイルをもつ交流発電機とすることが簡単であり、電磁直動機構は交流ソレノイドとすることが簡単である。発電機の磁石磁束として、たとえばロータコアに収容した永久磁石の磁束を用いることができる。
【0017】
第二発明の磁束量可変磁石型ロータは、偶数個の永久磁石と、周方向に所定間隔で軸方向に貫設されて前記永久磁石を収容する偶数個の磁石挿入孔を有するロータコアと、前記ロータコアを支持する回転軸とを有する磁束量可変磁石型ロータにおいて、前記ロータコアを高速回転時に固定子に対して相対的に軸方向に移動させる相対直動機構を有することを特徴としている。
【0018】
すなわち、この発明は、ステータに対してロータコアを高速回転時に軸方向に変位させて減磁を実現する。たとえば、回転軸に軸方向変位自在、相対回動不能に支持されたロータコアを高速回転時に軸方向へ変位させてもよく、逆に、ステータを軸方向に変位させてもよい。このようにすれば、全体の機構を簡素化するとともに、永久磁石に対する衝撃を低減して信頼性を向上することができる。相対直動機構としては、上記したウエイト遠心力機構やリニアソレノイド機構を採用することができるが、多数の永久磁石を軸方向に移動させる必要がなく、移動対象は一つとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の好適態様を図面を参照して以下の実施例により具体的に説明する。なお、これら実施例は実施態様を示すものであり、構成要素を周知の代替要素に置換することは当然可能である。
(実施例1)
(全体構成の説明)
図1は、実施例1の磁束量可変磁石型ロータを採用するIPMの模式軸方向断面図である。ただし、断面ハッチングは省略する。以下の実施例では、電動動作時の磁石磁束量制御を説明するが、発電動作時の磁石磁束量制御もウエイトの周方向移動方向を反転すれば本質的に可能である。
【0020】
1はモータフレーム、2は回転子(ロータ)、3は積層電磁鋼板製の回転子鉄心(ロータコア)、4は永久磁石、5は固定子(ステータ)、6は固定子コイル(ステータコイル)、7は回転軸、8はベアリング、9は磁石カバー、10はリテーナバー(案内部材)、11はウエイト、12は磁石カバー、13はガイドバー(ガイド部材)である。
【0021】
モータフレーム1の周壁内周面には固定子5の固定子鉄心が固定され、この固定子鉄心には固定子コイル6が巻装されている。固定子5の径方向内側には、回転軸7、回転子鉄心3、永久磁石4および後述する永久磁石直動機構からなる回転子2が回転自在に収容されている。
【0022】
回転軸7は、ベアリング8を介してモータフレーム1に回転自在に支承されており、回転子鉄心3の回転軸挿入孔に挿入されて回転子鉄心3に固定されている。回転子鉄心3には、合計4個の磁石挿入孔が互いに90度離れてそれぞれ軸方向に貫設されている。各磁石挿入孔には長方形のセラミック薄板からなる永久磁石4が収容され、周方向に隣接する2つの永久磁石4の極性は反対となっている。永久磁石4の径方向外側の主面および径方向内側の主面は磁極面となっている。上記IPM自体は後述する磁石カバーおよび減磁機構を除いて一般的な構造であるので、これ以上の説明は省略する。
【0023】
(永久磁石直動機構の説明)
次に、この実施例の特徴をなす永久磁石直動機構を図1、図2を参照して以下に説明する。図2は図1のA−A線からロータコア側に向けてみた模式矢視断面図である。
【0024】
この永久磁石直動機構は、リテーナバー(案内部材)10、ウエイト11、ガイドバー(ガイド部材)13からなる。なお、図1では、符号を付していないが、回転子鉄心3の磁石挿入孔には金属製のスリーブが圧入され、このスリーブ内に薄長板状の永久磁石4が軸方向移動自在に収容されている。もちろん、薄長板状の永久磁石4を樹脂又は金属製のスリーブにより包んで、上記スリーブに収容してもよい。
【0025】
リテーナバー10は、一端が上記スリーブ内に軸方向移動自在に保持される永久磁石4の一端に固定され、他端がウエイト11の後述する案内斜面15に沿いつつ軸方向に移動自在に係合する案内部材である。
【0026】
ウエイト11は、径方向外側に向かうにつれて回転子鉄心3から遠ざかる案内斜面15を有する重金属製の台形ブロックであって、後述するガイドバー13が径方向に貫通する貫通孔を有し、これにより径方向移動自在となっている。
【0027】
ガイドバー13は、回転子鉄心3の前端面に近接して回転軸7に固定されて略径方向に延在する4本の長棒からなり、ウエイト11を径方向移動自在に保持するガイド部材である。なお、ガイドバー13は、ウエイト11を径方向移動自在に保持することができれば長棒形状でなくてもよく、たとえば円盤状としてもよい。
【0028】
(動作説明)
この実施例の永久磁石直動機構を以下に説明する。
【0029】
低速回転時には、永久磁石4は磁気吸引力により回転子鉄心3の磁石挿入孔内(正確にはスリーブ内)に収容される。その結果、永久磁石4はリテーナバー10を通じてウエイト11を径方向内側に付勢し、ウエイト11は径方向内側に押さえつけられる。これにより、回転子鉄心3の磁石磁束量を増大することができる。
【0030】
高速回転時には、ウエイト11に作用する遠心力が増大して径方向外側に移動する。その結果、ウエイト11の案内斜面15はリテーナバー10を介して永久磁石4を回転子鉄心3から軸方向リヤ側へ永久磁石4の軸方向磁気吸引力に抗して逸脱させ、回転子鉄心3の磁石磁束量を減少させる。
【0031】
つまり、永久磁石4は、ウエイト11の遠心力と永久磁石4に働く磁気吸引力とがベクトル的にバランスする軸方向位置にシフトする。これらの結果として、高速回転時に減磁機能を奏するIPMを実現することができる。この実施例によるロータ回転数と固定子コイルの逆起電圧(磁石起電力)との関係を図3に示す。この実施例では、上記相対回動により、逆起電圧を高速回転時に略飽和させることができる。
【0032】
(変形態様)
上記実施例では、リテーナバー10の斜設された先端面はウエイト11の案内斜面15に当接するのみであったが、図4によりより強固に結合してもよい。
【0033】
図4において、リテーナバー10の前端部101は、リテーナバー10の主部に比べて周方向に広幅に形成されており、このリテーナバー10の前端部101は、ウエイト11の案内斜面15に形成されて径方向かつ軸方向へ延在する長溝110に収容されている。この長溝110の開口部111はその周方向両側から狭窄されて、リテーナバー10の前端部101よりも狭小となっている。これにより、ウエイト11がリテーナバー10を押す場合だけでなく、引く場合においても、リテーナバー10とウエイト11との係合が外れることがない。
【0034】
(変形態様)
上記実施例では、ウエイト11の案内斜面15は径方向外側へ向かうにつれて回転子鉄心3から遠ざかる角度に形成したが、その代わりに、径方向外側へ向かうにつれて回転子鉄心3に近つく角度としてもよい。
(実施例2)
本発明の磁束量可変磁石型ロータを採用するIPMを図5を参照して以下に説明する。図5はこのIPMの模式軸方向断面図である。ただし、図5、図6の各構成要素に付す符号は、実施例1を説明する図1〜図4の符号とは関係がないものとする。
【0035】
1はモータフレーム、2は回転子(ロータ)、3は積層電磁鋼板製の回転子鉄心(ロータコア)、4は永久磁石、5は固定子(ステータ)、6は固定子コイル(ステータコイル)、7は回転軸、8はベアリング、10はリテーナバー、11は電磁形式のリニアソレノイド、13は小型発電機である。リニアソレノイド11および発電機13は本発明でいう永久磁石直動機構を構成している。
【0036】
モータフレーム1の周壁内周面には固定子5の固定子鉄心が固定され、この固定子鉄心には固定子コイル6が巻装されている。固定子5の径方向内側には、回転子軸7、回転子鉄心3、永久磁石4および後述する永久磁石直動機構からなる回転子2が回転自在に収容されている。
【0037】
回転軸7は、ベアリング8を介してモータフレーム1に回転自在に支承されており、回転子鉄心3の回転軸挿入孔に挿入されて回転子鉄心3に固定されている。回転子鉄心3には、合計4個の磁石挿入孔が互いに90度離れてそれぞれ軸方向に貫設されている。各磁石挿入孔には長方形のセラミック薄板からなる永久磁石4が収容され、周方向に隣接する2つの永久磁石4の極性は反対となっている。永久磁石4の径方向外側の主面および径方向内側の主面は磁極面となっている。上記IPM自体は後述する磁石カバーおよび減磁機構を除いて一般的な構造であるので、これ以上の説明は省略する。
【0038】
(永久磁石直動機構の説明)
次に、この実施例の特徴をなす永久磁石直動機構を図5、図6を参照して以下に説明する。図6は図5のA−A線からフロント側に向けてみた模式矢視断面図である。この永久磁石直動機構は、前述したようにリニアソレノイド11および小型発電機13を有している。
【0039】
非磁性材料からなるリテーナバー10は、後述するリニアソレノイド11の可動部材であるプランジャ12の後端と永久磁石4の前端とを連結する棒状部材である。
【0040】
リニアソレノイド11は、回転軸7を囲んでモータフレーム1の周壁内周面に固定されている円筒状の電磁石であって、ヨーク17にコイルを巻いて形成されている。なお、この実施例では、説明を簡単とするためにリニアソレノイド11を簡単な電磁石構造としたが、公知の種々の電磁リニアアクチータを採用することができる。リニアソレノイド11の内部にはこのリニアソレノイド11の可動部材をなす軟磁性のプランジャ12が収容され、このプランジャ12は回転軸7に軸方向移動自在かつ周方向相対回動不能に固定されている。この種の電磁リニアソレノイド自体は周知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0041】
小型発電機13は、磁石式三相交流発電機であって、回転軸7に固定された発電機回転子(ロータ)19と、このロータの外周面を小さい電磁ギャップを隔てて囲む発電機固定子(ステータ)14とからなる。
【0042】
ステータは、モータフレーム1の前端壁に固定された円筒状のケース17と、このケース17の内周面に固定されて円筒状のヨークをなす発電機固定子鉄心23とそれにもうけられたスロットに巻回された固定子コイル22とからなる。
【0043】
発電機回転子(ロータ)19は、回転軸7に嵌着、固定されてヨークをなす積層電磁鋼板製の発電機回転子鉄心18と、この発電機回転子鉄心18の外周部に固着された永久磁石15とを有する。永久磁石15は周方向所定ピッチで極***互に磁化されており、永久磁石15の外周面には周方向所定ピッチかつ極***互に磁極が形成されている。この種の小型発電機自体は周知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0044】
固定子コイル22の三相出力端は、出力線である三相線20を通じて整流回路16に送られ、整流回路16はそれを整流して二相線21を通じてリニアソレノイド11のコイルに直流電圧を出力する。なお、小型発電機13は、上記した三相交流発電機とする他に、単相交流発電機としてもよく、その単相発電電圧を、交流電圧駆動型のリニアソレノイド11に整流回路を介することなく印加してもよい。
【0045】
(動作説明)
この実施例の永久磁石直動機構を以下に説明する。
【0046】
回転子2は、固定子5が形成する回転磁界に同期して回転する。回転子2が回転すると回転軸7に固定された発電機回転子19も回転する。すると、この発電機固定子14の固定子コイル22に対し永久磁石15の磁束が交番鎖交するため、固定子コイル22が三相交流電圧を発電する。この三相交流電圧は整流回路16により直流電圧に整流されて、リニアソレノイド11のヨーク17に巻かれたコイルに印加され、このコイルが発生する磁界によりプランジャ12が軸方向フロント側に吸入される。
【0047】
なお、永久磁石4は回転子鉄心3に全体がはいった状態が最も安定する。すなわち、永久磁石4には回転子鉄心3内に向かう磁気吸引力が生じている。このため、回転開始時は永久磁石4、リテーナバー10、プランジャ12は、破線の位置にあるが、回転数が増大して小型発電機13の発電電圧が増加すると、ヨーク17がプランジャ12をヨーク17内に引き込む電磁吸引力が増加するため、この電磁吸引力と永久磁石4に作用する磁気吸引力とがバランスする軸方向位置まで永久磁石4は引き出され、高速回転時の減磁を実現することができる。
(実施例3)
上記実施例1、2では、高速回転時に永久磁石4を回転子鉄心3から軸方向へ逸脱させたが、その代わりに、上記実施例1、2と同様の原理にて、高速回転時に回転子2を固定子5に対して相対的に軸方向へ変位させてもよい。
【0048】
たとえば、回転子鉄心3を回転軸7に軸方向移動自在、相対回転不能に嵌着し、上記実施例1、2と同様にウエイトの遠心力により又は電磁力により高速回転時に回転子鉄心3全体を軸方向に引き出してもよい。また、その代わりに、固定子5をモータフレーム1に対して軸方向移動自在に嵌着しておき、上記実施例1、2と同様にウエイトの遠心力により又は電磁力により高速回転時に固定子5全体を軸方向に引き出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の磁束量可変磁石型ロータを採用するIPMの模式軸方向断面図である。
【図2】図1のA−A線からロータコア側に向けてみた模式矢視断面図である。
【図3】実施例1の磁束量可変磁石型ロータを用いた場合の逆起電力特性を示す特性図である。
【図4】図1の永久磁石直動機構の変形態様を示す部分拡大断面図である。
【図5】実施例2の磁束量可変磁石型ロータを採用するIPMの模式軸方向断面図である。
【図6】図5のA−A線からロータコア側と逆方向に向けてみた模式矢視断面図である。
【符号の説明】
1 モータフレーム
2 回転子(磁束量可変磁石型ロータ)
3 回転子鉄心
4 永久磁石
5 固定子
6 固定子コイル
7 回転軸
10 リテーナバー(永久磁石直動機構)
11 ウエイト(永久磁石直動機構)
13 ガイドバー(永久磁石直動機構)
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁束量可変磁石型ロータに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
永久磁石型同期機は他の形式の同期機に比較して高出力でコンパクト化、構成簡素化を実現できるので、信頼性及び小型軽量化が要求される車両用回転電機に好適であるが、車両用回転電機は回転数域が広いため、低速トルク確保のために磁石磁界を十分大きく確保すると、高速回転時に過大な電機子巻線誘起電圧が発生するため、高速回転時の磁石磁界を低減するための減磁機構を設けることが提案されている。
【0003】
特許文献1は、磁石型ロータコアの永久磁石を、ロータコアに径方向に形成した摺動孔にスプリングとともに収容し、永久磁石に作用する遠心力が増加するとスプリングの弾性付勢力に抗して、永久磁石がこの摺動孔から抜け、これにより永久磁石がロータコアに与える磁束量が減少する構造を提案している。
【0004】
しかしながら、この技術では、磁石の磁極が周方向に背向する2側面に形成されることになるため、現在、主流となっている略周方向に延設され、磁極がその両主面に形成されるた薄板状磁石を用いる磁石型ロータコアには、適用することができなかった。そのうえ、永久磁石として優れた特性をもつセラミック磁石は、脆いためにこのような磁石運動により破損が生じる可能性もあった。
【0005】
特許文献2は、IPMのロータコア内において周方向に隣接する2つの磁石間にて軸方向に貫設された磁束短絡低減用のスリット内に軟磁性の磁束通路部材(磁束短絡部材)を径方向移動自在に挿入し、ロータコアの軸方向両側にコイルスプリングおよびこれにより軸方向に付勢されるリングをそれぞれ装備し、磁束通路部材の軸方向両端とこのリングとをリンク機構により連結し、コイルスプリングがリング、リンク機構を通じて磁束通路部材を径方向内側に付勢する構造を提案している。
【0006】
この構造では、磁束通路部材に遠心力が作用すると、磁束通路部材はスリット中をコイルスプリングの付勢力に抗して径方向外側に移動し、永久磁石磁束を短絡して減磁を行う。
【0007】
しかしながら、この技術では、ロータコアの両側にコイルスプリング、リング、リンク機構を必要とするため体格が大きくなり、高速回転するリンク機構の騒音がやかましく、ロータコアの端面への冷却ファンの設置も容易でないため、通常の空冷形式のモータではその実用化が困難であった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、高速回転時の減磁を実現することができる磁束量可変磁石型ロータを提供することをその目的としている。
【0009】
【特許文献1】特開平7−288940号公報
【特許文献2】特開平11−275787号公報
【0010】
【課題を解決するための手段】
第一発明の磁束量可変磁石型ロータは、偶数個の永久磁石と、周方向に所定間隔で軸方向に貫設されて前記永久磁石を軸方向移動可能に収容する偶数個の磁石挿入溝を有するロータコアと、前記ロータコアに固定された回転軸とを有する磁束量可変磁石型ロータにおいて、前記ロータコアの端面に近接配置されて高速回転時に前記永久磁石を前記磁石挿入溝から軸方向外側へ部分的に逸脱させる永久磁石直動機構を有することを特徴としている。
すなわち、この発明によれば、永久磁石直動機構が高速回転時にロータコアから永久磁石を軸方向に部分的に逸脱させるので、高速回転時の減磁作用をもつIPM用の磁束量可変磁石型ロータを実現することができる。この発明によれば、略周方向に延設されて磁極がその両主面に形成される薄板状磁石を用いることができるので、特許文献1に比較してステータコイルと鎖交する磁束量を大幅に増大することができる。また、特許文献2のように駆動部の軸方向運動を径方向運動に変換するリンク機構を不要とすることができるので、運動機構を簡素化することができる。
【0011】
好適態様において、前記磁石挿入溝に挿入されて前記永久磁石を軸方向移動自在に収容する薄肉のスリーブを有する。このようにすれば、積層電磁鋼板からなるロータコアに貫設されて微少な凹凸をもつ磁石挿入孔内を永久磁石が摺動することがないので、永久磁石を円滑かつ確実に移動させることができる。また、永久磁石には、ロータコアを通じて加振力や曲げ応力が加えられるが、脆い磁石に代わってスリーブがそれを受けるので、磁石の破損を防止することができる。
【0012】
好適態様において、前記永久磁石直動機構は、前記回転軸に固定されて略径方向に延在するガイド部材と、径方向外側に向かうにつれて前記ロータコアから遠ざかる案内斜面を有して前記ガイド部材に軸方向移動自在に保持されるウエイトと、一端が前記磁石挿入孔内の前記永久磁石に接し、他端が前記ウエイトの前記案内斜面に接する案内部材とを備える。
【0013】
これにより、低速回転時には、ウエイトは永久磁石がロータコア内に磁気的に吸引されることにより生じる付勢力(磁気吸引力)により径方向内側に押さえつけられて永久磁石がロータコア内に収容され、ロータコアの磁石磁束量を増大することができる。高速回転時には、ウエイトに作用する遠心力が増大してウエイトは径方向外側に移動し、これによりウエイトは案内部材を介して永久磁石を上記磁気吸引力に抗してロータコアから軸方向に逸脱させ、ロータコアの磁石磁束量を減少させる。つまり、永久磁石は、ウエイトの遠心力と永久磁石に働く磁気吸引力とがベクトル的にバランスする軸方向位置にシフトする。これらの結果として、高速回転時に減磁機能を奏するIPMを実現することができる。なお、スプリングを追加してもよい。
【0014】
好適態様において、前記永久磁石直動機構は、前記回転軸に固定されて前記永久磁石を軸方向に変位させる電磁直動機構と、前記電磁直動機構に回転数に応じて(正相関を有して)変化する電圧を印加することにより高速回転時に前記永久磁石を前記磁石挿入孔から部分的に逸脱させる回転数相関電圧を印加する給電部とを有する。電磁直動機構としては電磁リニアソレノイドや、回転動作を直動動作に変換する螺旋機構を有するモータとすることができる。
【0015】
これにより、永久磁石は、電磁直動機構の電磁付勢力と永久磁石に働く磁気吸引力とがバランスする軸方向位置にシフトする。これらの結果として、高速回転時に減磁機能を奏するIPMを実現することができる。この場合も、スプリングを追加してもよい。
【0016】
好適態様において、前記給電部は、ロータコアの回転軸にロータが固定される発電機からなる。このようにすれば、簡単に回転数に略比例する電磁直動機構印加電圧を発生させることができる。なお、この発電機は、磁石磁束と鎖交するコイルをもつ交流発電機とすることが簡単であり、電磁直動機構は交流ソレノイドとすることが簡単である。発電機の磁石磁束として、たとえばロータコアに収容した永久磁石の磁束を用いることができる。
【0017】
第二発明の磁束量可変磁石型ロータは、偶数個の永久磁石と、周方向に所定間隔で軸方向に貫設されて前記永久磁石を収容する偶数個の磁石挿入孔を有するロータコアと、前記ロータコアを支持する回転軸とを有する磁束量可変磁石型ロータにおいて、前記ロータコアを高速回転時に固定子に対して相対的に軸方向に移動させる相対直動機構を有することを特徴としている。
【0018】
すなわち、この発明は、ステータに対してロータコアを高速回転時に軸方向に変位させて減磁を実現する。たとえば、回転軸に軸方向変位自在、相対回動不能に支持されたロータコアを高速回転時に軸方向へ変位させてもよく、逆に、ステータを軸方向に変位させてもよい。このようにすれば、全体の機構を簡素化するとともに、永久磁石に対する衝撃を低減して信頼性を向上することができる。相対直動機構としては、上記したウエイト遠心力機構やリニアソレノイド機構を採用することができるが、多数の永久磁石を軸方向に移動させる必要がなく、移動対象は一つとなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の好適態様を図面を参照して以下の実施例により具体的に説明する。なお、これら実施例は実施態様を示すものであり、構成要素を周知の代替要素に置換することは当然可能である。
(実施例1)
(全体構成の説明)
図1は、実施例1の磁束量可変磁石型ロータを採用するIPMの模式軸方向断面図である。ただし、断面ハッチングは省略する。以下の実施例では、電動動作時の磁石磁束量制御を説明するが、発電動作時の磁石磁束量制御もウエイトの周方向移動方向を反転すれば本質的に可能である。
【0020】
1はモータフレーム、2は回転子(ロータ)、3は積層電磁鋼板製の回転子鉄心(ロータコア)、4は永久磁石、5は固定子(ステータ)、6は固定子コイル(ステータコイル)、7は回転軸、8はベアリング、9は磁石カバー、10はリテーナバー(案内部材)、11はウエイト、12は磁石カバー、13はガイドバー(ガイド部材)である。
【0021】
モータフレーム1の周壁内周面には固定子5の固定子鉄心が固定され、この固定子鉄心には固定子コイル6が巻装されている。固定子5の径方向内側には、回転軸7、回転子鉄心3、永久磁石4および後述する永久磁石直動機構からなる回転子2が回転自在に収容されている。
【0022】
回転軸7は、ベアリング8を介してモータフレーム1に回転自在に支承されており、回転子鉄心3の回転軸挿入孔に挿入されて回転子鉄心3に固定されている。回転子鉄心3には、合計4個の磁石挿入孔が互いに90度離れてそれぞれ軸方向に貫設されている。各磁石挿入孔には長方形のセラミック薄板からなる永久磁石4が収容され、周方向に隣接する2つの永久磁石4の極性は反対となっている。永久磁石4の径方向外側の主面および径方向内側の主面は磁極面となっている。上記IPM自体は後述する磁石カバーおよび減磁機構を除いて一般的な構造であるので、これ以上の説明は省略する。
【0023】
(永久磁石直動機構の説明)
次に、この実施例の特徴をなす永久磁石直動機構を図1、図2を参照して以下に説明する。図2は図1のA−A線からロータコア側に向けてみた模式矢視断面図である。
【0024】
この永久磁石直動機構は、リテーナバー(案内部材)10、ウエイト11、ガイドバー(ガイド部材)13からなる。なお、図1では、符号を付していないが、回転子鉄心3の磁石挿入孔には金属製のスリーブが圧入され、このスリーブ内に薄長板状の永久磁石4が軸方向移動自在に収容されている。もちろん、薄長板状の永久磁石4を樹脂又は金属製のスリーブにより包んで、上記スリーブに収容してもよい。
【0025】
リテーナバー10は、一端が上記スリーブ内に軸方向移動自在に保持される永久磁石4の一端に固定され、他端がウエイト11の後述する案内斜面15に沿いつつ軸方向に移動自在に係合する案内部材である。
【0026】
ウエイト11は、径方向外側に向かうにつれて回転子鉄心3から遠ざかる案内斜面15を有する重金属製の台形ブロックであって、後述するガイドバー13が径方向に貫通する貫通孔を有し、これにより径方向移動自在となっている。
【0027】
ガイドバー13は、回転子鉄心3の前端面に近接して回転軸7に固定されて略径方向に延在する4本の長棒からなり、ウエイト11を径方向移動自在に保持するガイド部材である。なお、ガイドバー13は、ウエイト11を径方向移動自在に保持することができれば長棒形状でなくてもよく、たとえば円盤状としてもよい。
【0028】
(動作説明)
この実施例の永久磁石直動機構を以下に説明する。
【0029】
低速回転時には、永久磁石4は磁気吸引力により回転子鉄心3の磁石挿入孔内(正確にはスリーブ内)に収容される。その結果、永久磁石4はリテーナバー10を通じてウエイト11を径方向内側に付勢し、ウエイト11は径方向内側に押さえつけられる。これにより、回転子鉄心3の磁石磁束量を増大することができる。
【0030】
高速回転時には、ウエイト11に作用する遠心力が増大して径方向外側に移動する。その結果、ウエイト11の案内斜面15はリテーナバー10を介して永久磁石4を回転子鉄心3から軸方向リヤ側へ永久磁石4の軸方向磁気吸引力に抗して逸脱させ、回転子鉄心3の磁石磁束量を減少させる。
【0031】
つまり、永久磁石4は、ウエイト11の遠心力と永久磁石4に働く磁気吸引力とがベクトル的にバランスする軸方向位置にシフトする。これらの結果として、高速回転時に減磁機能を奏するIPMを実現することができる。この実施例によるロータ回転数と固定子コイルの逆起電圧(磁石起電力)との関係を図3に示す。この実施例では、上記相対回動により、逆起電圧を高速回転時に略飽和させることができる。
【0032】
(変形態様)
上記実施例では、リテーナバー10の斜設された先端面はウエイト11の案内斜面15に当接するのみであったが、図4によりより強固に結合してもよい。
【0033】
図4において、リテーナバー10の前端部101は、リテーナバー10の主部に比べて周方向に広幅に形成されており、このリテーナバー10の前端部101は、ウエイト11の案内斜面15に形成されて径方向かつ軸方向へ延在する長溝110に収容されている。この長溝110の開口部111はその周方向両側から狭窄されて、リテーナバー10の前端部101よりも狭小となっている。これにより、ウエイト11がリテーナバー10を押す場合だけでなく、引く場合においても、リテーナバー10とウエイト11との係合が外れることがない。
【0034】
(変形態様)
上記実施例では、ウエイト11の案内斜面15は径方向外側へ向かうにつれて回転子鉄心3から遠ざかる角度に形成したが、その代わりに、径方向外側へ向かうにつれて回転子鉄心3に近つく角度としてもよい。
(実施例2)
本発明の磁束量可変磁石型ロータを採用するIPMを図5を参照して以下に説明する。図5はこのIPMの模式軸方向断面図である。ただし、図5、図6の各構成要素に付す符号は、実施例1を説明する図1〜図4の符号とは関係がないものとする。
【0035】
1はモータフレーム、2は回転子(ロータ)、3は積層電磁鋼板製の回転子鉄心(ロータコア)、4は永久磁石、5は固定子(ステータ)、6は固定子コイル(ステータコイル)、7は回転軸、8はベアリング、10はリテーナバー、11は電磁形式のリニアソレノイド、13は小型発電機である。リニアソレノイド11および発電機13は本発明でいう永久磁石直動機構を構成している。
【0036】
モータフレーム1の周壁内周面には固定子5の固定子鉄心が固定され、この固定子鉄心には固定子コイル6が巻装されている。固定子5の径方向内側には、回転子軸7、回転子鉄心3、永久磁石4および後述する永久磁石直動機構からなる回転子2が回転自在に収容されている。
【0037】
回転軸7は、ベアリング8を介してモータフレーム1に回転自在に支承されており、回転子鉄心3の回転軸挿入孔に挿入されて回転子鉄心3に固定されている。回転子鉄心3には、合計4個の磁石挿入孔が互いに90度離れてそれぞれ軸方向に貫設されている。各磁石挿入孔には長方形のセラミック薄板からなる永久磁石4が収容され、周方向に隣接する2つの永久磁石4の極性は反対となっている。永久磁石4の径方向外側の主面および径方向内側の主面は磁極面となっている。上記IPM自体は後述する磁石カバーおよび減磁機構を除いて一般的な構造であるので、これ以上の説明は省略する。
【0038】
(永久磁石直動機構の説明)
次に、この実施例の特徴をなす永久磁石直動機構を図5、図6を参照して以下に説明する。図6は図5のA−A線からフロント側に向けてみた模式矢視断面図である。この永久磁石直動機構は、前述したようにリニアソレノイド11および小型発電機13を有している。
【0039】
非磁性材料からなるリテーナバー10は、後述するリニアソレノイド11の可動部材であるプランジャ12の後端と永久磁石4の前端とを連結する棒状部材である。
【0040】
リニアソレノイド11は、回転軸7を囲んでモータフレーム1の周壁内周面に固定されている円筒状の電磁石であって、ヨーク17にコイルを巻いて形成されている。なお、この実施例では、説明を簡単とするためにリニアソレノイド11を簡単な電磁石構造としたが、公知の種々の電磁リニアアクチータを採用することができる。リニアソレノイド11の内部にはこのリニアソレノイド11の可動部材をなす軟磁性のプランジャ12が収容され、このプランジャ12は回転軸7に軸方向移動自在かつ周方向相対回動不能に固定されている。この種の電磁リニアソレノイド自体は周知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0041】
小型発電機13は、磁石式三相交流発電機であって、回転軸7に固定された発電機回転子(ロータ)19と、このロータの外周面を小さい電磁ギャップを隔てて囲む発電機固定子(ステータ)14とからなる。
【0042】
ステータは、モータフレーム1の前端壁に固定された円筒状のケース17と、このケース17の内周面に固定されて円筒状のヨークをなす発電機固定子鉄心23とそれにもうけられたスロットに巻回された固定子コイル22とからなる。
【0043】
発電機回転子(ロータ)19は、回転軸7に嵌着、固定されてヨークをなす積層電磁鋼板製の発電機回転子鉄心18と、この発電機回転子鉄心18の外周部に固着された永久磁石15とを有する。永久磁石15は周方向所定ピッチで極***互に磁化されており、永久磁石15の外周面には周方向所定ピッチかつ極***互に磁極が形成されている。この種の小型発電機自体は周知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0044】
固定子コイル22の三相出力端は、出力線である三相線20を通じて整流回路16に送られ、整流回路16はそれを整流して二相線21を通じてリニアソレノイド11のコイルに直流電圧を出力する。なお、小型発電機13は、上記した三相交流発電機とする他に、単相交流発電機としてもよく、その単相発電電圧を、交流電圧駆動型のリニアソレノイド11に整流回路を介することなく印加してもよい。
【0045】
(動作説明)
この実施例の永久磁石直動機構を以下に説明する。
【0046】
回転子2は、固定子5が形成する回転磁界に同期して回転する。回転子2が回転すると回転軸7に固定された発電機回転子19も回転する。すると、この発電機固定子14の固定子コイル22に対し永久磁石15の磁束が交番鎖交するため、固定子コイル22が三相交流電圧を発電する。この三相交流電圧は整流回路16により直流電圧に整流されて、リニアソレノイド11のヨーク17に巻かれたコイルに印加され、このコイルが発生する磁界によりプランジャ12が軸方向フロント側に吸入される。
【0047】
なお、永久磁石4は回転子鉄心3に全体がはいった状態が最も安定する。すなわち、永久磁石4には回転子鉄心3内に向かう磁気吸引力が生じている。このため、回転開始時は永久磁石4、リテーナバー10、プランジャ12は、破線の位置にあるが、回転数が増大して小型発電機13の発電電圧が増加すると、ヨーク17がプランジャ12をヨーク17内に引き込む電磁吸引力が増加するため、この電磁吸引力と永久磁石4に作用する磁気吸引力とがバランスする軸方向位置まで永久磁石4は引き出され、高速回転時の減磁を実現することができる。
(実施例3)
上記実施例1、2では、高速回転時に永久磁石4を回転子鉄心3から軸方向へ逸脱させたが、その代わりに、上記実施例1、2と同様の原理にて、高速回転時に回転子2を固定子5に対して相対的に軸方向へ変位させてもよい。
【0048】
たとえば、回転子鉄心3を回転軸7に軸方向移動自在、相対回転不能に嵌着し、上記実施例1、2と同様にウエイトの遠心力により又は電磁力により高速回転時に回転子鉄心3全体を軸方向に引き出してもよい。また、その代わりに、固定子5をモータフレーム1に対して軸方向移動自在に嵌着しておき、上記実施例1、2と同様にウエイトの遠心力により又は電磁力により高速回転時に固定子5全体を軸方向に引き出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の磁束量可変磁石型ロータを採用するIPMの模式軸方向断面図である。
【図2】図1のA−A線からロータコア側に向けてみた模式矢視断面図である。
【図3】実施例1の磁束量可変磁石型ロータを用いた場合の逆起電力特性を示す特性図である。
【図4】図1の永久磁石直動機構の変形態様を示す部分拡大断面図である。
【図5】実施例2の磁束量可変磁石型ロータを採用するIPMの模式軸方向断面図である。
【図6】図5のA−A線からロータコア側と逆方向に向けてみた模式矢視断面図である。
【符号の説明】
1 モータフレーム
2 回転子(磁束量可変磁石型ロータ)
3 回転子鉄心
4 永久磁石
5 固定子
6 固定子コイル
7 回転軸
10 リテーナバー(永久磁石直動機構)
11 ウエイト(永久磁石直動機構)
13 ガイドバー(永久磁石直動機構)
Claims (6)
- 偶数個の永久磁石と、周方向に所定間隔で軸方向に貫設されて前記永久磁石を軸方向移動可能に収容する偶数個の磁石挿入孔を有するロータコアと、前記ロータコアに固定された回転軸とを有する磁束量可変磁石型ロータにおいて、
前記ロータコアの端面に近接配置されて高速回転時に前記永久磁石を前記磁石挿入孔から軸方向外側へ部分的に逸脱させる永久磁石直動機構を有することを特徴とする磁束量可変磁石型ロータ。 - 請求項1記載の磁束量可変磁石型ロータにおいて、
前記磁石挿入孔に挿入されて前記永久磁石を軸方向移動自在に収容する薄肉のスリーブを有することを特徴とする磁束量可変磁石型ロータ。 - 請求項1記載の磁束量可変磁石型ロータにおいて、
前記永久磁石直動機構は、
前記回転軸に固定されて略径方向に延在するガイド部材と、
径方向外側に向かうにつれて前記ロータコアから遠ざかる案内斜面を有して前記ガイド部材に径方向移動自在に保持されるウエイトと、
一端が前記磁石挿入孔内の前記永久磁石に接し、他端が前記ウエイトの前記案内斜面に接する案内部材と、
を備えることを特徴とする磁束量可変磁石型ロータ。 - 請求項1記載の磁束量可変磁石型ロータにおいて、
前記永久磁石直動機構は、
前記回転軸に固定されて前記永久磁石を軸方向に変位させる電磁直動機構と、
前記リニアソレノイドに回転数に応じて変化する電圧を印加することにより高速回転時に前記永久磁石を前記磁石挿入孔から部分的に逸脱させる回転数相関電圧を印加する給電部と、
を有することを特徴とする磁束量可変磁石型ロータ。 - 請求項1記載の磁束量可変磁石型ロータにおいて、
前記給電部は、前記回転軸にロータが装備される発電機からなることを特徴とする磁束量可変磁石型ロータ。 - 偶数個の永久磁石と、周方向に所定間隔で軸方向に貫設されて前記永久磁石を収容する偶数個の磁石挿入孔を有するロータコアと、前記ロータコアを支持する回転軸とを有する磁束量可変磁石型ロータにおいて、
前記ロータコアを高速回転時に固定子に対して相対的に軸方向に移動させる相対直動機構を有することを特徴とする磁束量可変磁石型ロータ。
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