JP3890627B2 - 1−ヘキセンの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレンの三量化による1−ヘキセンの製造方法に関する。さらに詳しくは、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の原料コモノマーや可塑剤原料として極めて有用な1−ヘキセンを高選択的に製造しうるエチレンの三量化による1−ヘキセンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレンを三量化する反応において、クロム系触媒を用い1−ヘキセンを製造することは公知である。例えば、米国特許第3347840号明細書及び特開昭62−265237号公報には、クロム化合物、アルミノキサンとジメトキシエタン等のエ−テル化合物類からなる触媒系が、特開平6−239920号公報には、クロム化合物、ピロール含有化合物、金属アルキルからなる触媒系が、又特開平8−59732号公報には、クロム化合物、イミド化合物及び金属アルキルからなる触媒系が開示されている。
【0003】
この製造プロセスは一般に大別して、三量化反応工程、未反応エチレン回収工程、触媒の失活工程および脱灰工程、1−ヘキセンおよび溶媒の分留工程から成っている。ところで、これらの触媒はいずれも触媒活性が高いため、生成した1−ヘキセンは同時に三量化原料として供され、エチレンと1−ヘキセンとの共三量化反応によりC10、C14オレフィンが生成する。従って、クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを製造する方法においては、1−ヘキセンの選択率低下が問題になっている。1−ヘキセンの選択率を向上させるには、三量化反応条件としてエチレン分圧を高めればよい。即ち、高エチレン圧力、低温度にすればよく、具体的には30kg/cm2G以上の高圧力、及び/又は130℃以下の低温度にすればよい。
【0004】
一方、三量化反応終了後に未反応エチレンを回収してリサイクルすることも、工業的な観点から要求されており、通常、三量化反応終了後に0〜30kg/cm2Gの低圧に維持されたフラッシャーに三量化反応生成物を移送して未反応エチレンを回収する。その結果、このフラッシャー内ではエチレン分圧が低下するため、前記クロム系触媒が用いられると、共三量化反応が進行し、1−ヘキセン選択率が低下するという問題を生じる。この問題を解消するためには、フラッシャー内での三量化反応生成液の滞留時間を出来る限り短縮することが望ましいが、このようなフラッシャーを設計することは非常に難しい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、三量化反応生成物をフラッシャーに移送する前に、触媒を失活させる方法もある。しかしながら、このような方法では、触媒を完全に失活させるには大量の失活剤が必要となるため、失活処理後に未反応エチレンをフラッシュさせると使われなかった失活剤が未反応エチレンに同伴される。従って、未反応エチレンをリサイクルして、再度三量化反応に使用する際に、この失活剤の除去に要する新たな装置を設置しなければならず、その費用や用役費が増大するのは免れない。その上、そのポリマーの廃棄に時間と労力を要するという問題があった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的はエチレンを三量化して1−ヘキセンを製造する方法において、エチレンの三量化反応に用いた活性なクロム系触媒を失活処理する際に、1−ヘキセンの選択率を低下させることなく、また未反応エチレンに失活剤を同伴させることなく、失活処理を行うことのできる1−ヘキセンの製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを製造する方法において、三量化反応終了後、反応生成液に特定量の失活剤を添加して、先ずクロム系触媒に含有されるクロム化合物を失活させた後、未反応エチレンを反応生成液から分離し、次いで特定量の失活剤を反応生成液に添加してクロム系触媒を完全に失活させると1−ヘキセンが高選択率で得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを製造する方法において、三量化反応終了後、クロム系触媒に含有されるクロム化合物に対して1モル当量以上で、しかもクロム系触媒に含有される金属の合計モル数に対して3モル当量未満の失活剤を、反応生成液に添加して先ずクロム系触媒に含有されるクロム化合物を失活させた後、未反応エチレンを反応生成液から分離し、次いでクロム系触媒に含有される金属の合計モル数に対して3〜2,000モル当量の失活剤を、反応生成液に添加してクロム系触媒を完全に失活させることを特徴とする1−ヘキセンの製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳しく説明する。
【0009】
本発明においては、エチレンを三量化して得られる、1−ヘキセンを含有する三量化反応生成液中のクロム系触媒を失活させる手順が重要である。
【0010】
本発明において1−ヘキセンは、クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化させることによって得られる。このクロム系触媒は、少なくとも(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物、および所望に応じて用いられる(C)イミド化合物、ピロール含有化合物及びエーテル化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種以上のヘテロ元素含有有機化合物から成っている。
【0011】
本発明で使用される(A)クロム化合物としては、特に制限するものではないが、例えば、下記一般式(1)
CrAmBn (1)
(式中、mは1〜6の整数であり、nは0〜4の整数である。またAは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アレーン、アルコキシ基、カルボキシレート基、β−ジケトナート基、β−ケトエステル基及びアミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、硝酸基、硫酸基、過塩素酸基、カルボニル並びに酸素からなる群より選ばれた1種以上を表し、Bは窒素含有化合物、リン含有化合物、ヒ素含有化合物、アンチモン含有化合物、酸素含有化合物及び硫黄含有化合物からなる群より選ばれた1種以上を表す)
で示される化合物が好適なものとして用いられる。
【0012】
上記一般式(1)において、炭素数1〜20のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、アリル基、ネオペンチル基、シクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基又はトリメチルシリルメチル基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリ−ル基としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニル基又はトルイル基等が挙げられる。炭素数6〜20のアレーンとしては、特に限定するものではないが、例えば、ベンゼン、エチルベンゼン又はヘキサメチルベンゼン等が挙げられる。炭素数1〜20のアルコキシ基としては、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基又はフェノキシ基等が挙げられる。炭素数1〜20のカルボキシレ−ト基としては、特に限定するものではないが、例えば、アセテート基、プロピオネート基、ブチレート基、ネオペンタノエート基、2ーエチルヘキサノエート基、オキシ−2−エチルヘキサノエート基、イソオクタネ−ト基、ジクロロエチルヘキサノエート基、ラウレート基、ステアレート基、オレエ−ト基、ベンゾエート基、又はナフテネート基等が挙げられる。炭素数1〜20のβ−ジケトナート基としては、特に限定するものではないが、例えば、アセチルアセトナート基、トリフルオロアセチルアセトナート基、ヘキサフルオロアセチルアセトナート基、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート基、1,3−ブタンジオナート基、2−メチル−1,3−ブタンジオナート基、ベンゾイルアセトナート基等が挙げられる。炭素数1〜20のβ−ケトエステル基としては、特に限定するものではないが、例えば、アセチルアセテ−ト基等が挙げられる。アミド基としては、特に限定するものではないが、例えば、ジメチルアミド基又はジシクロヘキシルアミド基が挙げられる。ハロゲン原子としては、特に限定するものではないが、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられる。
上記一般式(1)において、窒素含有化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、アミン、ピリジン、アミド、又はニトリル等が挙げられる。アンチモン含有化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、トリアリールアンチモン、又はトリアルキルアンチモン等が挙げられる。リン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ホスフィン、ホスファイト、又はホスフィンオキシド等が挙げられる。酸素含有化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、水、無水カルボン酸、エステル、エーテル、アルコール又はケトン等であり、硫黄含有化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、二硫化炭素、スルフォン、チオフェン、又はスルフィド等が挙げられる。
【0013】
上記一般式(1)で示されるクロム化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、クロム(II)ジメチル、クロム(III)トリメチル、クロム(IV)テトラメチル、クロム(III)トリス(η−アリル)、二クロム(II)テトラキス(η−アリル)、クロム(IV)テトラキス(ネオペンチル)、クロム(IV)テトラキス(トリメチルシリルメチル)、クロム(II)ビス (シクロペンタジエニル)、クロム(II)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)、クロム(III)トリス(π−アリル)、クロム(IV)テトラキス(π−アリル)、クロム(II)ジフェニル、クロム(0)ビス(ベンゼン)、クロム(II)ジフェニル(ベンゼン)、クロム(0)ビス(エチルベンゼン)、クロム(0)ビス(ヘキサメチルベンゼン)、クロム(I)シクロペンタジエニル(ベンゼン)、クロム(IV)テトラメトキシド、クロム(IV)テトラエトキシド、クロム(IV)テトラプロポキシド、クロム(IV)テトラブトキシド、クロム(IV)テトラヘキシルオキシド、クロム(IV)テトラステアリルオキシド、クロム(IV)テトラフェノキシド、クロム(II)ビス(アセテート)、クロム(III)トリス(アセテート)、クロム(II)ビス(プロピオネート)、クロム(III)トリス(プロピオネート)、クロム(III)トリス(ブチレート)、クロム(II)ビス(2−エチルヘキサノエート)、クロム(III)トリス(2ーエチルヘキサノエート)、クロム(II)ビス(イソオクタネ−ト)、クロム(III)トリス(イソオクタネ−ト)、クロム(III)トリス(オキシ−2−エチルヘキサノエート)、クロム(III)トリス(ジクロロエチルヘキサノエート)、クロム(III)トリス(ネオペンタノエート)、クロム(II)ビス(ネオペンタノエート)、クロム(III)トリス(ラウレート)、クロム(II)ビス(ラウレート)、クロム(III)トリス(ステアレート)、クロム(II)ビス(ステアレート)、クロム(III)トリス(オレエート)、クロム(II)ビス(オレエート)、クロム(III)トリス(ベンゾエート)、クロム(II)ビス(ナフテネート)、クロム(III)トリス(ナフテネート)、クロム(II)オキザレート、クロム(II)ビス(アセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(アセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(トリフルオロアセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)、クロム(III)トリス (2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、クロム(III)トリス(1,3−ブタンジオナート)、クロム(III)トリス(2−メチル−1,3−ブタンジオナート)、クロム(III)トリス(ベンゾイルアセトナート)、クロム(III)トリス(アセチルアセテート)、クロム(III)トリス(ジメチルアミド)、クロム(III)トリス(ジシクロヘキシルアミド)、フッ化第一クロム、フッ化第二クロム、塩化第一クロム、塩化第二クロム、臭化第一クロム、臭化第二クロム、ヨウ化第一クロム、ヨウ化第二クロム、塩化クロミル、過塩素酸クロム、二塩化ヒドロキシクロム、硝酸クロム、硫酸クロム等が挙げられる。
【0014】
さらに、トリクロロトリアニリンクロム(III)、ジクロロビス(ピリジン)クロム(II)、ジクロロビス(4−エチルピリジン)クロム(II)、トリクロロトリピリジンクロム(III)、トリクロロトリス(4−イソプロピルピリジン)クロム(III)、トリクロロトリス(4−エチルピリジン)クロム (III)、トリクロロトリス(4−フェニルピリジン)クロム(III)、トリクロロ(1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン)クロム(III)、ジクロロジニトロシルビス(4−エチルピリジン)クロム(II)、ジクロロジニトロシルビス(トリフェニルホスフィンオキシド)クロム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィンオキシド)クロム(II)、トリクロロトリス(トリフェニルホスフィン)クロム(III)、トリクロロビス (トリブチルホスフィン)クロム(III)ダイマー、トリクロロトリス(ブチルアセテート)クロム(III)、トリクロロトリス(エチルアセテート)クロム(III)、トリクロロトリス(テトラヒドロフラン)クロム(III)、トリクロロトリス(ジオキサン)クロム(III)、トリクロロトリス(iso−プロパノール)クロム(III)、トリクロロトリス(2−エチルヘキサノール)クロム(III)、トリフェニルトリス(テトラヒドロフラン)クロム(III)、クロム(III)トリス(アセテ−ト)無水酢酸付加物、ヒドリドトリカルボニル(η−シクロペンタジエニル)クロム(III)等が挙げられる。
【0015】
これらのうち取り扱いやすさ及び安定性の面から、カルボキシレート基を有するクロムカルボキシレ−ト化合物及びβ−ジケトナート基を有するクロムβ−ジケトナート化合物が好ましく用いられる。より好ましくは、クロム(III)トリス(2−エチルヘキサノエート)、クロム(III)トリス(ナフテネート)、クロム(III)トリス(アセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(トリフルオロアセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)が用いられる。また、上記クロム化合物はそれぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0016】
本発明において使用される(B)アルキル金属化合物は、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(2)
RpMXq (2)
(式中、pは0<p≦3であり、qは0≦q<3であって、しかもp+qは1〜3である。Mはリチウム、マグネシウム、亜鉛、ボロン又はアルミニウムを表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基より選ばれた1種以上を表し、Xは水素原子、アルコキシ基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれた1種以上を表す)
で示される化合物、又はアルミノキサンが好適なものとして挙げられる。
【0017】
上記一般式(2)において、炭素数1〜10のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、又はオクチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、又はフェノキシ基等が挙げられる。アリール基としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、特に限定するものではないが、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。
【0018】
なお、上記一般式(2)において、MがAlで、pとqがそれぞれ1.5のとき、AlR1.5X1.5となる。このような化合物は、理論的には存在しないが、通常、慣用的にAl2R3X3のセスキ体として表現されており、これらの化合物も本発明に含まれる。
【0019】
上記一般式(2)で示されるアルキル金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ジエチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、エチルクロロマグネシウム、エチルブロモマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジシクロヘキシルフェニルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジシクロヘキシルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド等が挙げられる。
【0020】
本発明において使用されるアルミノキサンとは、前記のアルキルアルミニウム化合物と水とを一定範囲内の量比で反応させて得られる加水分解生成物である。アルキルアルミニウム化合物を加水分解する方法については、特に限定するものではなく、公知の方法で合成できる。例えば、(1)アルキルアルミニウム化合物そのまま、又は有機溶媒への希釈溶液に水を接触させる方法、(2)アルキルアルミニウム化合物と塩化マグネシウム・6水塩、硫酸鉄・7水塩、硫酸銅・5水塩等の金属塩の結晶水と反応させる方法、等が採られる。具体的には、前記特開昭62−265237号公報や特開昭62−148491号公報に開示されている。加水分解を行う際のアルキルアルミニウム化合物と水とのモル比は1:0.4〜1:1.2、好ましくは1:0.5〜1:1.0である。
【0021】
これらのアルキル金属化合物のうち入手の容易さ及び活性の面からトリエチルアルミニウムやトリイソブチルアルミニウムが好ましく用いられる。これらのアルキル金属化合物は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0022】
さらに、所望に応じて用いられる(C)ヘテロ元素含有有機化合物としては、イミド化合物、ピロール含有化合物及びエーテル化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種以上の化合物が挙げられる。イミド化合物としては、イミド構造を有する化合物であればいかなる化合物でもよく、特に制限はないが、例えば、マレイミド、1−クロロエテン−1,2−ジカルボキシイミド、1−ブロモエテン−1,2−ジカルボキシイミド、1−フルオロエテン−1,2−ジカルボキシイミド、1−トリフルオロメチルエテン−1,2−ジカルボキシイミド、1,2−ジクロロエテン−1,2−ジカルボキシイミド、シトラコンイミド、2−ブテン−2,3−ジカルボキシイミド、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボキシイミド、スクシンイミド、α,α−ジメチル−β−メチルスクシンイミド、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、グルタルイミド、3,3−ジメチルグルタルイミド、ベメグリド、フタルイミド、3,4,5,6−テトラクロロフタルイミド、1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、1,2,3,4−テトラヒドロフタルイミド、3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、1,8−ナフタルイミド、2,3−ナフタレンジカルボキシイミド、シクロヘキシイミド、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨ−ドスクシンイミド、N−(メトキシカルボニル)マレイミド、N−(ヒドロキシ)マレイミド、N−(カルバモイル)マレイミド等のイミド類が挙げられる。
【0023】
さらに、N−(トリメチルシリル)マレイミド、N−(トリメチルシリル)コハクイミド、N−(トリメチルシリル)シトラコンイミド、N−(トリメチルシリル)−2−ブテン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリメチルシリル)−1−シクロペンテン−1,2−ジカルボキシイミド、N−(トリメチルシリル)−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、N−(トリメチルシリル)スクシンイミド、N−(トリエチルシリル)マレイミド、N−(トリ−n−プロピルシリル)マレイミド、N−(トリ−n−ブチルシリル)マレイミド、N−(トリ−n−ヘキシルシリル)マレイミド、N−(トリベンジルシリル)マレイミド、N−(n−ブチルジメチルシリル)マレイミド、N−(t−ブチルジメチルシリル)マレイミド、N−(ジメチルゼキシルシリル)マレイミド、N−(n−オクチルジメチルシリル)マレイミド、N−(n−オクタデシルジメチルシリル)マレイミド、N−(ベンジルジメチルシリル)マレイミド、N−(メチルジブチルシリル)マレイミド、N−(フェニルジメチルシリル)マレイミド、N−(p−メトキシフェニルジメチルシリル)マレイミド、N−(p−トルイルジメチルシリル)マレイミド、N−(トリフェニルシリル)マレイミド、N−(トリブチルチン)マレイミド、N−(トリオクチルチン)マレイミド、N−(ジイソブチルアルミニウム)マレイミド、N−(ジエチルアルミニウム)マレイミド、水銀マレイミド、銀マレイミド、カルシウムマレイミド、カリウムマレイミド、ナトリウムマレイミド、リチウムマレイミド等の金属イミド類が挙げられる。
【0024】
ここで、金属イミドとは、イミドから誘導される金属イミド、あるいはこれらの混合物であり、具体的にはイミドとIA族、IIA族、IB族、IIB族、IIIB族及びIVB族から選択される金属との反応により得られるイミド化合物である。この金属イミド化合物の合成法は、特に限定するものではなく、公知の方法で合成できる。例えば、IA及びIIA族金属のイミド化合物は、リチウム、ブチルリチウム、ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、臭化メチルマグネシウム、塩化ブチルマグネシウム等のIA及びIIA族金属化合物とイミド化合物を反応させることで合成できる。又、IB及びIIB金属のイミド化合物は、硝酸銀、塩化銀、塩化水銀等のIB及びIIB金属化合物とイミド化合物をアルカリの存在下で反応させることで合成できる。IIIB及びIVB族金属のイミド化合物は、トリメチルシリルクロリド、トリブチルシリルクロリド、トリブチルチンクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のIIIB及びIVB族の金属塩化物とイミド化合物をアルカリの存在下で反応させたり、前記のIIIB及びIVB族の金属塩化物とIA、IIA、IB、IIB族の金属イミド化合物を反応させたり、又、トリブチルチンヒドリド、トリイソブチルアルミニウムヒドリド等のIIIB及びIVB族の金属ヒドリドとイミド化合物を反応させることで合成できる。具体的には、Polymer Journal,24,679(1992)によれば、N−(トリアルキルシリル)マレイミドは、マレイミド又は銀マレイミドとトリアルキルシリルクロリドを3級アミン化合物存在下で反応させ、次いで蒸留または再結晶して合成される。また、Journalof Organic Chemistry,39,21(1974)によれば、銀マレイミドは、マレイミドと硝酸銀をエタノ−ル/ジメチルスルホキシド中で苛性ソ−ダ存在下で反応させて合成される。
【0025】
ピロール含有化合物としては、ピロール環構造を有する化合物であればいかなる化合物でもよく、特に制限はないが、例えば、ピロール、2,5−ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロール、2,4−ジメチル−3−エチルピロール、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセチルピロール、3−アセチル−2,4−ジメチルピロール、ピロール−2−カルボン酸、ピロール−2−カルボキサルデヒド、エチル−2,4−ジメチル−5−(エトキシカルボニル)−3−ピロール−プロピオネート、エチル−3,5−ジメチル−2−ピロールカルボキシレート、テトラヒドロインドール等のピロール、リチウムピロリド、ナトリウムピロリド、カリウムピロリド、セシウムピロリド、ジエチルアルミニウムピロリド、エチルアルミニウムジピロリド、アルミニウムトリピロリド、ジイソブチルアルミニウムピロリド、ナトリウム−2,5−ジメチルピロリド、カリウム−2,5−ジメチルピロリド、セシウム−2,5−ジメチルピロリド、ジエチルアルミニウム−2,5−ジメチルピロリド、エチルアルミニウムビス(2,5−ジメチルピロリド)、アルミニウムトリス(2,5−ジメチルピロリド)、ジイソブチルアルミニウム−2,5−ジメチルピロリド等の金属ピロリドが挙げられる。
【0026】
エーテル化合物としては、エーテル結合を有する化合物であればいかなる化合物でもよく、特に制限はないが、例えば、ジエチルエ−テル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ピラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これらのうち活性の面から、マレイミド、N−(トリメチルシリル)マレイミド、ピロール、2,5−ジメチルピロール、ジメトキシエタンが好ましく用いられる。また、これらヘテロ元素含有有機化合物はそれぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0027】
本発明における、前記(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物、及び必要に応じて用いる(C)ヘテロ元素含有有機化合物の混合割合は、(A)クロム化合物1モルに対して、(B)アルキル金属化合物は通常、0.1〜10,000当量であり、好ましくは3〜3,000当量、より好ましくは10〜2,000当量である。また、必要に応じて用いる(C)ヘテロ元素含有有機化合物の使用量は、(A)クロム化合物1モルに対して通常、0.1〜1,000当量であり、好ましくは0.5〜500当量、より好ましくは1〜300当量である。
本発明のクロム系触媒は、前記の(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物及び必要に応じて(C)ヘテロ元素含有有機化合物を原料として、溶媒中で接触させることにより調製できる。接触方法は特に制限されないが、例えば、三量化反応原料であるエチレンの存在下に(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物及び(C)ヘテロ元素含有有機化合物を接触させて触媒を調製し、接触と同時に三量化反応を開始する方法、または(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物及び(C)ヘテロ元素含有有機化合物を前もって接触させて触媒を調製した後、エチレンと接触させて三量化反応を行う方法が採られる。なお、これらの原料の混合順序は特に制限はされない。
【0028】
この触媒系を調製する際の、クロム化合物の濃度は特に制限されないが、通常溶媒1リットルあたり、0.001マイクロモル〜100ミリモル、好ましくは0.01マイクロモル〜10ミリモルの濃度で使用される。またここで用いられる溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類及び塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等の塩素化炭化水素類が挙げられる。また反応原料のオレフィンそのもの、あるいは反応生成物、例えば、ブテン、1−ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン等のオレフィン類を溶媒として用いることもできる。これらの溶媒はそれぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。ここで、触媒調製時の触媒濃度をコントロ−ルする目的で、必要に応じて濃縮や希釈しても差し支えない。
【0029】
また、クロム化合物、アルキル金属化合物及びヘテロ元素有機化合物を接触させる際の温度は通常−100〜250℃、好ましくは0〜200℃である。触媒系の調製時間は特に制限されず、通常0分〜24時間、好ましくは0分〜2時間である。なお、触媒調製のすべての操作は、空気と水分を避けて行なうことが望ましい。また、触媒調製原料および溶媒は十分に乾燥しておくことが好ましい。
本発明によれば、上記の如く調製されたクロム系触媒に、所望に応じて更に、塩素、臭素、ヨウ素、ブチルクロリド、アミルクロリド、ヘキシルクロリド、ヘプチルクロリド、オクチルクロリド、ノニルクロリド、デシルクロリド、ラウリルクロリド、メチルブロミド、プロピルブロミド、ブチルブロミド、アミルブロミド、ヘキシルブロミド、エチルヘキシルブロミド、ノニルブロミド、セチルブロミド、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジクロロブテン、シクロヘキシルブロミド、クロロホルム、四塩化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化ケイ素、四塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、塩化第一スズ、塩化第二スズ、ヨウ化スズ、三塩化リン、五塩化リン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三フッ化アンチモン、五フッ化アンチモン、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムアイオダイド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジアイオダイド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジヘキシルアルミニウムクロリド、ジシクロヘキシルアルミニウムクロリド、ジオクチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、トリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、ジメチルシリルジクロリド、メチルシリルトリクロリド、フェニルシリルトリクロリド、ジフェニルシリルジクロリド、メチルジクロロシラン、トリブチルチンクロリド、ジブチルチンジクロリド、ブチルチントリクロリド、トリフェニルチンクロリド、ジフェニルチンジクロリド、フェニルチントリクロリド等のハロゲン化物やトリス(2−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3−フルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(2,4−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(2,4,5−トリフルオロフェニル)ボロン、トリス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ゲルマニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)スズ、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボロン等のルイス酸を添加し、クロム系触媒として供される。ハロゲン化物やルイス酸の共存により触媒活性の向上やポリマーの副生を抑制する等の効果が認められる。
【0030】
このようにして調製されたクロム系触媒を用いてエチレンの三量化反応が行なわれる。本発明においてクロム系触媒の使用量は特に制限されないが、通常、前記溶媒で希釈し、三量化反応液1リットルあたり、クロム化合物が0.001マイクロモル〜100ミリモル、好ましくは0.01マイクロモル〜10ミリモルの濃度で使用される。これより小さい触媒濃度では十分な活性が得られず、逆にこれより大きい触媒濃度では、触媒活性が増加せず経済的でない。
【0031】
本発明における三量化反応の温度は、通常−100〜250℃であるが、好ましくは0〜200℃である。反応圧力は、絶対圧で通常0〜300kg/cm2であり、好ましくは0〜150kg/cm2である。また、反応時間は温度や圧力に左右され、一概に決めることはできないが、通常5秒〜6時間である。また、エチレンは、前記の圧力を保つように連続的に供給してもよいし、反応開始時に前記圧力で封入して反応させてもよい。原料ガスであるエチレンには、反応に不活性なガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が含まれても何ら差し支えない。なお、三量化反応のすべての操作は、空気と水分を避けて行うことが望ましい。また、エチレンは十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0032】
本発明においては、エチレンの三量化反応によって得られる反応生成液に触媒の失活剤を添加して三量化反応を停止させる場合の失活剤の添加方法が重要である。即ち、前記のようにして得られた三量化反応生成液を、例えばフラッシャーに供給して未反応エチレンを回収する前後において触媒失活を行う。
【0033】
本発明の未反応エチレンの回収前に行うクロム系触媒に含有されるクロム化合物の失活処理は、反応生成液に、クロム化合物と反応可能な化合物を添加することにより行われる。このクロム化合物と反応可能な化合物としては、特に限定するものではないが、プロトン性化合物が挙げられ、例えば、水、及びメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール等のアルコ−ル類、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸等のカルボン酸類、アンモニア又はメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、シエチルアミン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアニリン等のアミン類、ピリジン、ピコリン等の複素環式窒素化合物が挙げられる。これらのうち取り扱い易さの面から、水やアルコール類が好ましく用いられる。この失活剤は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0034】
このクロム化合物と反応可能な化合物の使用量は、三量化反応の触媒として用いるクロム系触媒の共三量化活性を失わせるに十分な量で、クロム系触媒に含有されるクロム化合物に対して1モル当量以上で、しかもクロム系触媒に含有される金属の合計モル数に対して3モル当量未満の割合で使用される。好ましくは、クロム系触媒に含有されるクロム化合物に対して2モル当量以上、クロム系触媒に含有される金属の合計モル数に対して2.5モル当量未満の割合で使用される。クロム化合物と反応可能な化合物の使用量がクロム系触媒に含有されるクロム化合物に対して1モル当量未満ではクロム化合物を完全に失活させるのに十分ではなく、生成した1−ヘキセンはさらに三量化反応の原料として消費され、C10やC14オレフィンに変換されて1−ヘキセン選択率の低下につながる。またクロム系触媒に含有される金属の合計モル数に対して3モル当量より多い量ではフラッシュ後の未反応エチレンに失活剤が同伴され、未反応エチレンのリサイクルに支障がでて好ましくない。
【0035】
この未反応エチレンの回収前に行うクロム系触媒に含有されるクロム化合物の失活処理の温度は、特に制限はされないが、通常、50℃以上、好ましくは85〜180℃、より好ましくは100〜130℃である。このうち反応温度を85℃以上に保持すると、副生したポリマーが反応生成液中に溶融し、副生したポリマーを系外へ取り出すことなく、また失活処理時の反応器、制御弁、配管、ポンプ等の装置を詰まらせることなく、安定に失活処理を行うことができる。この失活処理の圧力は、特に制限されないが、好ましくは反応時の圧力下で行なう。また失活処理時間は温度や圧力に左右され、一概に決めることはできないが、通常5秒〜1時間である。また失活剤の添加時期は、フラッシャーに三量化反応生成液を供給する直前に、失活剤を三量化反応生成液に供給するのが、共三量化反応を抑制するためにも好ましい。
【0036】
本発明においては、このようにして得られたクロム系触媒に含有されるクロム化合物が失活した反応生成液をフラッシャーに供給して未反応エチレンの分離を行なう。未反応エチレンの分離操作は、反応生成液の雰囲気圧力を、三量化反応時の圧力よりも低くすることにより行うことができる。この分離操作の温度および時間の条件は特に制限されない。
【0037】
本発明においてはフラッシャーで未反応エチレンを回収した後、さらに失活剤を反応生成液に添加して、クロム系触媒を完全に失活させる。クロム系触媒を完全に失活させる失活剤としては、特に限定するものではないが、例えば、水、及びメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール等のアルコ−ル類、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸等のカルボン酸類が挙げられる。これらのうち取り扱い易さの面から、水やアルコールが好ましく用いられ、より好ましくは水が用いられる。この失活剤は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0038】
本発明のクロム系触媒を完全に失活させる失活剤の使用量は、触媒を完全に失活させるに十分な量で、通常触媒に含有される金属の合計モル数に対して、3〜2,000モル当量であり、好ましくは5〜1,000モル当量である。失活剤の使用量が3モル当量未満では活性なクロム系触媒を完全に失活することができず、失活処理以降の後処理工程において問題が生ずる。逆に失活剤の使用量が2,000モル当量より大きい量では、失活が実質的に終了しており、これ以上の効果は発現せず、経済的でない。
【0039】
また所望に応じて失活剤に含窒素化合物や無機化合物を添加することができる。触媒中にハロゲンが含まれる場合、失活処理時に触媒中のハロゲンの一部が生成オレフィンに付加して有機ハロゲン化物を少量生成することがあるが、含窒素化合物や無機化合物の共存によりこの有機ハロゲン化物の生成を抑制する等の効果が認められる。
【0040】
含窒素化合物としては、特に限定するものではないが、例えばアンモニア又はメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、シエチルアミン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアニリン等のアミン類、ピリジン、ピコリン等の複素環式窒素化合物が挙げられる。これらのうち取り扱い易さや経済性の面から、アンモニアが好ましく用いられ、より好ましくはアンモニア水溶液として用いられる。この含窒素化合物は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。また無機化合物としては、特に限定するものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらのうち取り扱い易さや経済性の面から、水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0041】
この未反応エチレンの回収後に行うクロム系触媒の完全失活処理の温度は、特に制限はされないが、通常、50℃以上、好ましくは85〜180℃、より好ましくは100〜130℃である。このうち反応温度を85℃以上に保持すると、副生したポリマーが反応生成液中に溶融し、副生したポリマーを系外へ取り出すことなく、失活処理時の反応器、制御弁、配管、ポンプ等の装置を詰まらせることなく、安定に失活処理を行うことができる。この失活処理の圧力は、反応生成G以上、好ましくは5kg/cm2G以上である。また失活処理時間は温度や圧力に左右され、一概に決めることはできないが、通常5秒〜1時間である。
【0042】
このようにして触媒を完全に失活させた後の三量化反応生成液中には、1−ヘキセンが高い分率で含まれており、C10やC14オレフィンの副生は著しく抑制されている。また未反応エチレンへの失活剤の同伴も極端に抑制され、未反応エチレンのリサイクルに際して、失活剤の除去に要する新たな装置の設置の必要もない。
【0043】
本発明においては、このように三量化反応終了後、クロム系触媒に含有されるクロム化合物に対して1モル当量以上で、しかもクロム系触媒に含有される金属の合計モル数に対して3モル当量未満の失活剤を、反応生成液に添加してクロム系触媒に含有されるクロム化合物を失活させた後(クロム系触媒に含有されるクロム化合物の失活工程)、未反応エチレンを反応生成液から分離し(未反応エチレンの回収工程)、次いでクロム系触媒に含有される金属の合計モル数に対して3モル当量以上の失活剤を反応生成液に添加して、クロム系触媒を完全に失活させた後(クロム系触媒の失活工程)、廃金属の脱灰処理を行い(触媒の脱灰工程)、さらに1−ヘキセンと溶媒を蒸留(1−ヘキセンと溶媒の分留工程)によって1−ヘキセンを分離回収する。回収された未反応エチレン及び溶媒は必要に応じて三量化反応系にリサイクルされる。また、本反応においてはエチレンの三量化反応により、1−ヘキセンとともに少量の炭素数10及び14の高沸オレフィンが生成する。この高沸オレフィンは多段形式の蒸留処理によって、所望の各種高沸オレフィンを得ることができる。これら高沸オレフィンも必要に応じて三量化反応系に溶媒としてリサイクルしてもよい。
【0044】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を用いて更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の概要を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
1Lシュレンク管にマレイミド14.5mg(0.15mmol)を秤取り乾燥シクロヘキサン400mlに溶解させ、0.01mol/lのクロム(III)トリス(2−エチルヘキサノエート)/シクロヘキサン溶液5.0mlを入れ混合した。0.12mol/lのトリエチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液11.0mlと0.04mol/lのエチルアルミニウムジクロリド/シクロヘキサン溶液5.0mlの混合物を加え、室温で1時間撹拌して、触媒溶液を調製した。
【0045】
温度計、触媒溶液フィード管及び撹拌装置を備えた内容積1lのステンレス製耐圧反応容器を90℃で加熱真空乾燥したのち窒素ガスで十分置換した。前記の触媒溶液を全量容器に仕込んだ。撹拌速度を1,000rpmに調整し、反応容器を120℃に加熱後、反応容器内の絶対圧力を40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込みエチレンの三量化反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で10分反応を行なった。10分後、反応容器にシクロヘキサンに希釈した表1に示す所定量の失活剤を窒素で圧入することによってクロム系触媒に含有されるクロム化合物を失活させた。反応生成液の一部を抜き出し、反応液中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、2−エチルヘキサノールは含まれておらず、フラッシュにより失活剤が同伴される懸念がないことが判った。次いで未反応エチレンをフラッシュにより10kg/cm2Gまで排出後、さらに表1に示すシクロヘキサンに希釈した所定量の失活剤を窒素で圧入することによって触媒を完全に失活させた。
【0046】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液及び回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。結果を表1に示す。
【0047】
実施例2、3
表1に示す条件で反応生成液中のクロム系触媒の失活処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして三量化反応、失活処理操作を行なった。結果を表1に示す。
【0048】
実施例4
温度計、触媒溶液フィード管及び撹拌装置を備えた内容積1Lのステンレス製耐圧反応容器を90℃で加熱真空乾燥したのち窒素ガスで十分置換した。0.01mol/lのクロム(III)トリス(2−エチルヘキサノエート)/シクロヘキサン溶液5.0ml、0.10mol/lの2,5−ジメチルピロール1.5ml及びシクロヘキサン350mlを反応容器胴側に仕込み、エチレンで十分置換した。一方、触媒フィード管に0.50mol/lのトリエチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液3.0ml、0.10mmol/lの四塩化ゲルマニウム/シクロヘキサン溶液1.0mlを仕込んだ。
【0049】
反応容器を120℃に加熱し、撹拌速度を1,000rpmに調整後、触媒フィード管にエチレンを導入し、エチレン圧によりトリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロリドの混合溶液が反応容器胴側に導入され、エチレンの三量化反応を開始した。反応容器内の絶対圧力を40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分間、エチレンの三量化反応を行なった。30分後、反応容器にシクロヘキサンに希釈した表1に示す所定量の失活剤を窒素で圧入することによってクロム系触媒に含有されるクロム化合物を失活させた。反応生成液の一部を抜き出し、反応液中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、n−ブタノールは含まれておらず、フラッシュにより失活剤が同伴される懸念がないことが判った。次いで未反応エチレンをフラッシュにより10kg/cm2Gまで排出後、さらに表1に示す所定量の失活剤を窒素で圧入することによって触媒を完全に失活させた。
【0050】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液及び回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。結果を表1に示す。
【0051】
実施例5
撹拌装置を備えたシュレンク管を加熱真空乾燥して、次いで窒素ガスで十分置換したのち、0.195mol/lのトリイソブチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液98.3mlを入れ、氷水浴で冷却した。氷冷下、撹拌しながら、259mgの水をゆっくり滴下し、1時間撹拌を継続しながら保持して、0.195mol/lのイソブチルアルミノキサン/シクロヘキサン溶液を合成した。
【0052】
1Lシュレンク管に前記0.195mol/lイソブチルアルミノキサン/シクロヘキサン溶液30.8ml(Al換算6.0mmol)、1,2−ジメトキシエタン0.27g(3.0mmol)と乾燥シクロヘキサン550mlを入れ、次いで0.1mol/lのクロム(III)トリス(2−エチルヘキサノエート)/シクロヘキサン溶液2.0mlを入れ混合し、室温で1時間撹拌して、触媒溶液を調製した。
【0053】
温度計、触媒溶液フィード管及び撹拌装置を備えた内容積1Lのステンレス製耐圧反応容器を90℃で加熱真空乾燥したのち窒素ガスで十分置換した。前記の触媒溶液を全量容器に仕込んだ。撹拌速度を1,000rpmに調整し、反応容器を100℃に加熱後、反応容器内の絶対圧力を35kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込みエチレンの三量化反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。30分後、反応容器にシクロヘキサンに希釈した表1に示す所定量の失活剤を窒素で圧入することによってクロム系触媒に含有されるクロム化合物を失活させた。反応生成液の一部を抜き出し、反応液中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、2−エチルヘキサノールは含まれておらず、フラッシュにより失活剤が同伴される懸念がないことが判った。次いで未反応エチレンをフラッシュにより10kg/cm2Gまで排出後、さらに表1に示す所定量の失活剤を窒素で圧入することによって触媒を完全に失活させた。反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液及び回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
表1に示す条件で失活処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして三量化反応および失活処理操作を行なった。結果を表1に示すが、共三量化反応が進行して1−ヘキセン選択率が低下した。
【0055】
比較例2
表1に示す条件で失活処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして三量化反応および失活処理操作を行なった。結果を表1に示すが、触媒はフラッシュする前に完全に失活しており、フラッシュ前の反応生成液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、2−エチルヘキサノールが残留していた。
【0056】
比較例3
表1に示す条件で失活処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして三量化反応および失活処理操作を行なった。結果を表1に示すが、フラッシュ後の触媒は完全に失活していなかった。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、エチレンを三量化して1−ヘキセンを製造する方法において、エチレンの三量化反応に用いた活性なクロム系触媒を失活処理する際に、1−ヘキセンの選択率を低下させることなく、また未反応エチレンに失活剤を同伴させることなく、失活処理を行うことができる。
Claims (2)
- クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを製造する方法において、三量化反応終了後、クロム系触媒に含有されるクロム化合物に対して1モル当量以上で、しかもクロム系触媒に含有される金属の合計モル数に対して3モル当量未満の失活剤を、反応生成液に添加して先ずクロム系触媒に含有されるクロム化合物を失活させた後、未反応エチレンを反応生成液から分離し、次いでクロム系触媒に含有される金属の合計モル数に対して3〜2000モル当量の失活剤を、反応生成液に添加してクロム系触媒を完全に失活させることを特徴とする1−ヘキセンの製造方法。
- クロム系触媒が少なくとも(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物からなる触媒であることを特徴とする請求項1に記載の1−ヘキセンの製造方法。
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