JP3878536B2 - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置にかかり、特に、エンジンと、エンジンの出力軸に連結された歯車機構等で構成された動力分割機構と、動力分割機構の出力軸に連結された電動機(発電機として機能する場合も含む)と、を有するハイブリッド車両を停車時に制御して振動を低減するハイブリッド車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来のハイブリッド車両では、停車時には、燃料消費量を低減するためにエンジンを停止すると共に、電力消費量を低減するために電動機にはトルク指令を加えないように制御するのが一般的である。
【0003】
しかしながら、停車中であってもバッテリの電力低下時やエアコンデショナ等の補器類が駆動されるときには、発電等が必要になり、停止していたエンジンを始動させて駆動する。また、逆に発電等が必要なくなった時には駆動していたエンジンを停止させることが行なわれている。
【0004】
このため、ハイブリッド車両では車両停車時にエンジンの始動及び停止を行なう場合があり、エンジンのみで駆動される車両よりも車両停車時におけるエンジン始動時及び停止時の振動問題が大きくなる。
【0005】
この問題を解決するため、従来では、停車時にエンジンを始動または停止する場合には、車軸トルクが0[Nm]になるように電動機のトルクを制御するハイブリッド車両が知られている。この従来のハイブリッド車両では、停車中に、エンジンを始動させる場合やエンジンを停止させる場合には、車軸のトルクが変動しないように、エンジンの反力を打ち消す方向のトルクを電動機に付加している。
【0006】
しかしながら、従来の技術では、エンジンマウントのたわみ、車軸のねじれ、及びサスペンションのたわみ等が変動することから、車軸等のねじれやエンジンマウント等のたわみが維持されなくなるため、エンジンのクランキングによって発生するエンジンマウントのたわみ、車軸のねじれ、及びサスペンションのたわみ等に起因した振動を抑制することができない、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたもので、停車時においてエンジンを始動または停止させた場合においても効果的に振動を低減することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために第1の発明は、エンジンと少なくとも1つの電動機とを有するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、車両に搭載されたセンサからの情報に基づいて、停車中か否かを判断する判断手段と、エンジン始動またはエンジン停止による振動が伝達される弾性部材を、エンジンの回転時に変形する方向に所定量変形させるトルクが発生するように、前記電動機を制御する制御手段と、を含んで構成したものであり、前記判断手段によって停車中と判断されたときにエンジンを始動または停止する場合は、前記制御手段により前記トルクが発生するように前記電動機を制御した後に、前記エンジン始動またはエンジン停止を行うことを特徴としている。
【0009】
本発明では、エンジンと、エンジンの出力軸に入力軸が連結された動力伝達機構と、動力伝達機構の出力軸に連結された少なくとも1つの電動機と、を有するハイブリッド車両を制御するようにすることができる。
【0011】
本発明では、車両停車中にエンジンを始動(又は停止)する場合、電動機にトルクを発生し、エンジンを始動または停止した際に振動が伝達されるエンジンマウント、駆動軸、及びサスペンション等の弾性部材がエンジンの回転時に変形する方向に所定量変形するように電動機を制御した後に、エンジン始動またはエンジン停止を行っている。なお、エンジンは、電動機によって始動されるようになっている。
【0012】
電動機にトルクを付加すると、電動機は回転しようとするが、車両が停車していることから車輪がブレーキでロックされているため車両が動くことはなく、車軸である駆動軸等がねじれるに留まる。また、エンジンフレームに連結されている電動機のステータに発生する反力によりエンジン及び電動機からなる駆動ユニットに回転力が伝達され、エンジンマウントのたわみを発生させる。また、これらの影響で、サスペンションにもたわみが発生する。
【0013】
本発明では、電動機にトルクを生じさせることにより、エンジンマウント、駆動軸、及びサスペンション等の弾性要素を所定量変形(たわみやねじれ)させ、中立点ではなく片側に押え込んだ状態を作り出す。このように、本発明では、予め弾性要素がエンジンの回転側に所定量変形されていることから、エンジン始動(又は停止)時に発生する弾性要素の振動幅を小さくするので、その結果車両振動を低減することができる。
【0014】
また、電動機にトルクを加えることで、減速装置に含まれているギアはエンジンの回転時に変形する方向に押し付けられ、がたやバックラッシュの影響が除去される。さらに、減速装置に含まれるチェーンベルトは、一方向にテンションが作用することでたるみが無くなり、これによりヒステリシスの影響が除去される。本発明では、これらの非線型要因の影響を除去するため、この非線型要因に起因して発生していた停車時のエンジン始動(またはエンジン停止)時の車両振動をも低減することができる。
【0015】
本発明では、判断手段によって停車中と判断されたときに、エンジンを始動(又は停止)する際、エンジンマウントのたわみ、駆動軸のねじれ、及びサスペンションのたわみ等の変形を事前に一方向に生じさせるように電動機にトルクを付加し、これらのたわみやねじれを生じさせた後にエンジンを始動(又は停止)することで、車両に発生する振動を低減させている。
【0016】
付加するトルクは、エンジンマウントのたわみ、駆動軸のねじれ、サスペンションのたわみ等の変形を発生させ、この変形を維持するのに必要な大きさであれば良い。
【0017】
本発明では、エンジン始動要求(またはエンジン停止要求)があってから付加するトルクを徐々に上昇させて弾性部材が所定量変形するようにすることもできる。その際、停車中でかつエンジン始動後のエンジン完爆時、または、停車中でかつ駆動していたエンジンを停止した時に電動機により付加していたトルクを解除するように制御するのが好ましい。
また、上記のトルクは、クリープ現象によって加えられるトルクよりも小さな値とすることができる。
また、第2の発明は、エンジンと少なくとも1つの電動機とを有するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、車両に搭載されたセンサからの情報に基づいて、エンジンが停止しかつ車両も停止している状態から、車両が走行を開始した直後か否かを判断する判断手段と、判断手段によって、エンジンが停止しかつ車両が停止している状態から車両の走行を開始した直後であると判断されたときに、エンジン始動またはエンジン停止による振動が伝達される弾性部材を、走行のために電動機によって発生するトルクにより、エンジンの回転時に変形させる方向に所定量変形させるまで、エンジン始動を禁止する禁止手段と、を含んで構成したものである。
【0018】
本発明においても、弾性部材が、エンジンの回転時に変形する方向に所定量ねじられるトルクが停車中に発生するように電動機が制御されるまで、エンジン始動を禁止するので、弾性要素を変形させて一方向に押え込んだ状態でエンジンが始動されることになるため、上記と同様に車両振動を低減することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1に本発明が適用可能なハイブリッド車両の構成を示す。このハイブリッド車両は、駆動ユニット10、減速装置12、及び、ディファレンシャルギヤ等を含んで構成された駆動軸14を備えている。駆動ユニット10は、クランクシャフトを回転させる内燃機関(エンジン)16、発電機として機能する電動機で構成された第1のモータジェネレータMG1、車輪を駆動する電動機で構成された第2のモータジェネレータMG2、及び、動力分割機構としての遊星歯車18を含んで構成されている。なお、エンジン16と遊星歯車18との間には、弾性緩衝機構としてのトーショナルダンパ(図示せず)が配置されている。
【0020】
この内燃機関16の出力軸であるクランク軸は、トーショナルダンパを介して遊星歯車18の入力軸として機能するプラネタリキャリア18Aに連結され、第1のモータジェネレータMG1は、遊星歯車18の出力軸として機能するサンギヤ18Bに、第2のモータジェネレータMG2は、遊星歯車18の他の出力軸として機能するリングギヤ18Cに各々連結されている。
【0021】
遊星歯車18のリングギヤ18Cは、第2のモータジェネレータMG2に直接接続され、第2のモータジェネレータMG2の出力軸には減速装置12が連結されている。減速装置12は、駆動軸14を介して車輪24に連結されている。
【0022】
モータジェネレータMG1、MG2のステータは、共通のケースに取り付けられており、ケースは、エンジンフレームに固定されている。エンジン、モータジェネレータMG1、MG2、トーショナルダンパ、及び遊星歯車から構成される駆動ユニット10は、エンジンマウント20を介して、車体22に搭載されている。また、タイヤ24は、車体22に取り付けられたサスペンション26に回転可能に取り付けられている。エンジンを始動する際には、モータジェネレータMG1をスタータモータとして利用する。
【0023】
上記の車両には、ブレーキペダルが踏み込まれたときにオンするブレーキペダルセンサ、車速を検出する車速センサ、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ等の各種センサが搭載されている。
【0024】
図2に示すように、本実施の形態の制御装置は、ブレーキペダルセンサからの信号と車速センサからの車速信号とに基づいて車両停車中か否かを判断する車両停車判定器30、車両停車判定器30からの信号に基づいてモータの付加トルク指令値を生成するモータ付加トルク生成器32、及び、アクセル開度センサからのアクセル開度信号及び車速センサからの車速信号等に基づいてモータトルクの指令値を生成するモータトルク生成器34を備えている。
【0025】
モータ付加トルク生成器32で生成された付加トルク、及びモータトルク生成器34で生成されたトルク指令値は、加算器36で加算された後、モータ駆動装置38に供給され、モータ駆動装置38によって第2のモータジェネレータMG2が制御される。第1の実施の形態は、エンジン始動/停止操作には依存せずに実施できる。
【0026】
車両停車判定器30、及びモータ付加トルク生成器32は、これらの機能を備えたマイクロコンピュータで構成することができる。
【0027】
次に、図3を参照して、車両停車判定器及びモータ付加トルク生成器をマイクロコンピュータで構成した場合の第1の実施の形態の制御ルーチンについて説明する。本実施の形態は、ブレーキペダルを踏み込んで車速を0とした車両停車時にも、弾性要素がエンジンの正回転側に変形するようにモータジェネレータMG2にモータトルクを常時加えようにしたものである。
【0028】
ステップ100において、ブレーキペダルセンサからの信号に基づいてブレーキペダルが踏み込まれたか否かを判断すると共に、ステップ102において車速センサからの車速信号に基づいて車速が所定値ε未満か否かを判断する。所定値εは、車両が停止しているとみなして差し支えない程度の値を設定する。
【0029】
ブレーキペダルが踏み込まれ、かつ車速が所定値未満の時には、車両停車中と判断して、ステップ104において値がτaの付加トルクを生成し出力し、ブレーキペダルが踏み込まれていない時、及び車速が所定値以上の時には、車両停車中でないと判断して、ステップ106において値が0の付加トルクを生成して出力する。
【0030】
付加トルクの値τaは、図4に示すように、エンジン始動時または停止時にモータに加えるトルク(駆動トルクと付加トルクとの合算値)の範囲が、減速機等のギヤ系のがた等の非線形領域に入らないような大きさの値であって、エンジンマウントのたわみ、駆動軸のねじれ、サスペンションのたわみを生じさせ、それを維持できる大きさを設定する。一般的には、ブレーキペダル及びアクセルペダルを解放した状態で加えられる車両を駆動するトルク、すなわちクリープ現象によって加えられるトルクよりも小さな値となる。
【0031】
なお、モータジェネレータMG2に入力するトルクは、アクセル開度に応じて出力される駆動トルクにこの付加トルクを加えるだけではなく、図示しないが、エンジンが発生する反力を補償するためのトルクや他に構成されている制御装置が発生する補償トルク等を加え合わせたトルクとしてもよい(ベースとするモータトルクに、付加トルクが加わっていれば良い)。
【0032】
モータジェネレータMG2に付加トルクτaに相当するトルクが発生するように制御される状態で、エアコンデショナ及びヘッドライト等の補器類の駆動が開始されることによりエンジン始動要求があった場合には、第1のモータジェネレータMG1を駆動してモータリングし、エンジンをクランキングさせエンジンを始動させる。
【0033】
図5(A)〜(D)は、上記のように制御している状態で、エンジン始動を開始したときのモータ付加トルク、駆動軸のねじれ角度、車両加速度、及びエンジン回転数の時間応答を示すものである。停車中は、エンジンの始動が開始されても第2のモータジェネレータMG2は、付加トルクτaに相当するトルクが発生するように制御されているので、エンジン始動開始後の駆動軸等のねじれ角度変動、及び車両加速度変動は従来例と比較して小さくなっている。車両加速度を比較すると、付加トルクを加えない今までの方式より振動が低減できていることがわかる。
【0034】
次に、第2の実施の形態について説明する。図6に示すように、本実施の形態には、エンジン運転管理装置40が設けられている。このエンジン運転管理装置40には、エンジン16を制御するエンジン制御装置42、及びモータジェネレータ(発電機)MG1を制御する発電機制御装置44が接続されている。
【0035】
本実施の形態においては、駆動軸等のねじれ角を検出するねじれ角センサを設け、ねじれ角センサからの出力信号をエンジン運転管理装置44に入力する。本実施の形態においては、モータの角度センサ46をねじれ角センサとして用いている。車両が停止している場合、モータの角度センサは、モータのロータとステータとの角度を検出するが、タイヤが停止しているため、駆動軸がねじられる分ロータが回転し、マウントのたわみ分ステータ回転することにより、ねじれ角を検出することができる。
【0036】
また、エンジン運転管理装置40には、ねじれ角の他、エンジン回転数、バッテリの充電量であるSOC、及び、エアコンデショナ等の駆動によりその値が上昇する車両要求電力等が入力されている。エンジン運転管理装置40は、これらの入力信号に基づいて、エンジンを始動するかまたは停止するか否かを判断し、エンジンを始動する場合または停止する場合には、モータ付加トルク生成器32にフラグをセットすることにより付加トルクを出力させ、センサ46からの信号でねじれ量が所定値に達した後、エンジンのクランキングや停止を開始させるため、発電機制御装置44にも指令を与え、エンジンが自らの燃焼により運転する自立運転に移行した後、付加トルクを0にするようにモータ付加トルク生成器32を操作するようにしたものである。
【0037】
次に、図7を参照して第2の実施の形態の制御ルーチンについて説明する。なお、また、図7において図3と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0038】
車両停車中と判断された時には、ステップ108においてエンジン運転中(駆動中)か否かを判断する。エンジン運転中か否かは、エンジン制御装置42から出力される回転数信号やエンジン回転速度センサから出力される信号に基づいて判断することができる。
【0039】
エンジン停止中の場合には、ステップ110において、バッテリの電力低下や、エアコンデショナ及びヘッドライト等の補器類の駆動が開始されることによりエンジン始動要求があったか否かを判断する。エンジン始動要求があった場合には、ステップ112において、以下で説明する処理Aを実行する。
【0040】
一方、ステップ108でエンジン運転中と判断された場合には、ステップ114においてエンジン停止要求があったか否かを判断し、エンジン停止要求があった場合には、ステップ116において、以下で説明する処理Bを実行する。
【0041】
なお、車両停車中でない時、エンジン始動要求が無い時、及びエンジン停止要求が無い時は、ステップ106において値が0の付加トルクを生成して出力する。
【0042】
上記のエンジン始動要求があった場合の処理Aについて、図8を参照して説明する。ステップ120においてエンジン始動フラグFlag.e(以下、単にFとする)が0(初期値)にセットされているか否かを判断し、0にセットされている場合にはステップ122においてフラグFを1にセットした後、ステップ124において付加トルクの値を0から値τaまで、車両に振動を生じさせない変化率で徐々に上昇させる。これにより、減速装置を含む駆動系に内在するギヤのがたをエンジン正回転時に変形する方向に押し付けると共に、駆動軸が所定値θまでエンジン正回転時に変形する方向に徐々にねじられ、エンジンマウント及びサスペンションがエンジンを正回転した場合と同様の方向にたわむように制御される。
【0043】
ステップ126では、駆動軸のねじれ角が所定値θ以上か否かを判断し、駆動軸のねじれ角が所定値θ以上の場合には、ステップ128でエンジン始動フラグFを2にセットする。フラグFが2にセットされるまでは、エンジン始動は禁止されている。このねじれ角の所定値θは、事前の実験により振動が生じない値を求めておいて設定する。なお、上記では、ねじれ角センサによりねじれ角を検出する例について説明したが、ねじれ角を検出する代わりに付加トルクが入力を始めてからの時間を計測してねじれ角が所定値θ以上になったか否かを判断するようにしてもよい。ここで、付加トルクの値を0からτaに増加する際の付加トルクの与え方が一意であれば、付加トルクを加え始めてからねじれ角が所定値θ以上に至るまでの時間は一定とみなされる。そこで、事前にこの時間を計測しておき、その時間でねじれ角が所定値θ以上になったか否かの判定を行なってもよい。
【0044】
ステップ120でフラグFが0にセットされていない場合は、ステップ130においてフラグFにセットされている値を判断する。フラグFが1にセットされている場合は、ステップ124に戻って付加トルクを徐々に上昇させることを継続する。
【0045】
一方、フラグFが2にセットされている時には、ステップ132において付加トルクの値を値τaに固定し、第1のモータジェネレータMG1を駆動することによりモータリングを開始しエンジンのクランキングを開始する。エンジン回転数が所定値に達した時点で燃料噴射を開始するようにエンジン制御装置に指令を送信する。
【0046】
ステップ134では、エンジン回転数等からエンジンが自立運転しているか否かを判断し、自立運転していない場合にはクランキングを継続する。そして、エンジンが自立運転したと判断されたときには、モータジェネレータMG1によるクランキングを停止し、ステップ136でフラグFを3にセットする。
【0047】
ステップ130でフラグFが3にセットされていると判断されたときには、ステップ138において付加トルクの値をτaから0まで徐々に低下させ、ステップ146で付加トルクの値が0になったと判断された時にステップ142でフラグFを0にセットしてこの処理Aを終了する。この減少量の変化率も車両に振動を発生させない程度の大きさであればよい。
【0048】
図9に、エンジン停止要求があった場合の処理Bを示す。エンジン停止要求があった場合の処理Bは、エンジン始動要求があった場合の処理Aの始動を停止に置き換えただけであり、その他は同一であるので、対応する部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
図10に処理A及び処理Bで処理した場合のモータ付加トルクの値の変化、ねじれ角の変化、及びエンジン回転速度の変化を示す。モータ付加トルクは、エンジン始動要求からエンジン始動開始まで、またはエンジン停止要求からエンジン停止開始まで、徐々に増加し、エンジン始動開始からエンジン自立運転開始まで、またはエンジン停止開始からエンジン停止まで、一定値に保持される。この結果、エンジン回転速度の変動が低減されている。
【0050】
本実施の形態では、車両振動の低減に必要な時期のみ付加トルクを加えているので、車両停車時に付加トルクを常時加える第1の実施の形態より、バッテリの消費電力を少なくすることができる、という効果が得られる。
【0051】
次に第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、車両が停車状態からブレーキペダルを離し実際に走行が始まるまでの短時間の間に、エンジン始動(又は停止)要求があった場合、車両を走行させるためにモータに入力される駆動トルクによりエンジンマウントのたわみ、及び駆動軸のねじれ等が生じるまでの間、エンジン始動(又は停止)処理を行なうことを禁止し、これらのたわみやねじれ等が生じた後にエンジン始動(又は停止)処理を実施することで、振動を低減するものである。
【0052】
次に、停車判定器30とモータ付加トルク生成器32とをマイクロコンピュータで構成した場合の本実施の形態の制御装置の制御ルーチンを図12を参照して説明する。ステップ150においてエンジン停止中か否かを判断し、エンジン停止中のときは、上記で説明したのと同様にステップ152及びステップ154において、車両停車中か否かを判断する。ブレーキペダルが踏み込まれていないことから車両停車中でないと判断されたときには、ステップ166においてフラグBを0にセットする。
【0053】
ブレーキペダルが踏み込まれていないときは、ステップ156においてフラグBが0にセットされているか否かを判断し、0にセットされているときは車両が走行を開始した直後であることから、以下で説明するようにねじれ角が所定値以上に至るまで、エンジン始動処理を行なわないようにする。
【0054】
すなわち、ステップ158でフラグBを1にセットし、次のステップ160で、車両を駆動するために発生させたモータトルクによって、上記で説明したステップ126と同様にねじれ量が所定角θ以上になったか否かを判断し、ねじれ量が所定角θ以上になった場合にはステップ162でエンジン始動要求があったか否かを判断し、エンジン始動要求があった場合にはステップ164で上記で説明したようにモータジェネレータMG1を駆動してモータリングすることによりクランキングを行ない、エンジン始動を開始し、上記で説明したように図示しないエンジン制御装置に燃料噴射を開始するように指令を送信する。そして、ステップ166でエンジンが自立運転を開始したか否かを判断し、エンジンが自立運転を開始した場合には、ステップ168でフラグBを2にセットする。
【0055】
一方、ステップ156でフラグBが2にセットされているときには、ステップ170でエンジンが停止しているか否かを判断すると共に、ステップ172でブレーキべダルが踏み込まれていないか否かを判断する。
【0056】
エンジンが停止していないとき、及びエンジン停止中でかつブレーキペダルが踏み込まれていないときは、ステップ174でフラグBを2にセットし、エンジン停止中でかつブレーキペダルが踏み込まれているときは、ステップ176でフラグBを0にセットする。
【0057】
以上の結果、エンジン始動要求があても、駆動軸のねじれ量が所定角θ以上になるまでエンジン始動処理が禁止されており、駆動軸のねじれ量が所定角θ以上になった時点でエンジン始動処理が開始される。
【0058】
上記のように制御したときのフットブレーキに設けられたブレーキセンサの出力信号、モータトルクの変化、駆動軸のねじれ角の変化、及びエンジン回転数の変化を図13に示す。図から理解されるように、本実施の形態では、フットブレーキの踏み込みが開放されて、モータトルク生成器によりアクセル開度に応じた駆動トルクがモータジェネレータMG2に加え始めた直後に、エンジン始動要求があったとしても、駆動軸のねじれ量が所定角θ以上になるまでは、エンジン始動が禁止される。なお、駆動軸のねじれ量の代わりに第2の実施の形態と同様に駆動トルクが入力してからの時間で判定してもよい。
【0059】
上記各実施の形態では、図1に示した構成のハイブリッド車両に本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図14に示したエンジン16、エンジンに連結されたモータジェネレータMG1、駆動軸に連結されたモータジェネレータMG2、及びバッテリBから構成されたシリーズハイブリッド車両、図15に示したエンジン16、エンジンに連結されたモータジェネレータMG、及びバッテリBから構成されたパラレルハイブリッド車両、図16に示したエンジン16、動力分割機構18、モータジェネレータMG1、MG2、及びバッテリBから構成されたシリーズ・パラレルハイブリッド車両等の種々のハイブリッド自動車に対しても適用することができる。
【0060】
また、モータジェネレータMG1、MG2には同期モータが用いられており、同期モータには、ロータの回転角度(ロータ角度)を検出するレゾルバで構成された角度センサが取り付けられている。上記では、車速センサを用いて車両が停車しているか否かを判断する例について説明したが、車速とMG2の回転速度とが比例関係にあるので、上記の車速センサに代えて、角度センサを用い、車速に代えてMG2の回転速度を用いて停車中か否かを判断してもよい。
【0061】
また、上記各実施の形態は、他のモータ制御と組合せて実施してもよい。この低剛性振動低減装置では、図11に示すように、駆動軸の前後端に相当するモータ回転数ωMと車輪回転数ωbとの差を求めることにより、駆動軸の低剛性を原因とするねじれ速度Δωを求め、このねじれ速度Δωにゲインを乗じて修正トルク指令τ’を求める。そして、モータトルク生成器34で生成されたモータトルク指令τrefに、修正トルク指令τ’を加えてトルク指令τdrvを求め、このトルク指令τdrvをモータ駆動装置38に入力して駆動軸の低剛性を主要因とする振動を低減させるようにモータを制御する。
【0062】
なお、ゲインは、制御対象となる車両の特性が非振動的となるように設定する。また、車輪回転数ωbは計測できないため、計測可能なモータ回転数ωMとトルク指令τdrvとを入力とし、運動方程式を用いて設計したオブザーバにより推定した車輪回転数の推定値ωb*を用いるようにする。
【0063】
この低剛性振動低減装置に適用される本実施の形態の制御装置は、上記で説明したように停車判定器30とモータ付加トルク生成器32との機能を有するマイクロコンピュータで構成されている。
【0064】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、発電機にトルクを加え、エンジン始動またはエンジン停止による振動が伝達される弾性部材がエンジンの正回転側に所定量変形するようにしてるので、車両停車中のエンジン始動又は停止時に発生する車両振動を低減し、乗り心地を向上させることができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用可能なハイブリッド車両の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態の制御ルーチンを示す流れ図である。
【図4】付加トルクの値を説明するための線図である。
【図5】第1の実施の形態におけるモータ付加トルク等の変化を示す線図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図7】第2の実施の形態の制御ルーチンを示す流れ図である。
【図8】図6の処理Aの詳細を示す流れ図である。
【図9】図6の処理Bの詳細を示す流れ図である。
【図10】第2の実施の形態におけるモータ付加トルク等の変化を示す線図である。
【図11】本発明に他の制御を組合せた際のブロック図である。
【図12】第3の実施の形態の制御ルーチンを示す流れ図である。
【図13】第3の実施の形態におけるモータ付加トルク指令等の変化を示す線図である。
【図14】本発明が適用可能なシリーズハイブリッド車両の概略図である。
【図15】本発明が適用可能なパラレルハイブリッド車両の概略図である。
【図16】本発明が適用可能なシリーズ・パラレルハイブリッド車両の概略図である。
【符号の説明】
10 駆動ユニット
12 減速装置
14 駆動軸
16 エンジン
18 動力分割機構
20 エンジンマウント
22 車体
24 タイヤ
Claims (6)
- エンジンと少なくとも1つの電動機とを有するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、
車両に搭載されたセンサからの情報に基づいて、停車中か否かを判断する判断手段と、
エンジン始動またはエンジン停止による振動が伝達される弾性部材を、エンジンの回転時に変形する方向に所定量変形させるトルクが発生するように、前記電動機を制御する制御手段と、を含み、
前記判断手段によって停車中と判断されたときにエンジンを始動または停止する場合は、前記制御手段により前記トルクが発生するように前記電動機を制御した後に、前記エンジン始動またはエンジン停止を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 前記エンジンは、前記電動機によって始動される請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
- エンジンと少なくとも1つの電動機とを有するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、
車両に搭載されたセンサからの情報に基づいて、エンジンが停止しかつ車両が停止している状態から、車両の走行を開始した直後か否かを判断する判断手段と、
前記判断手段によって、エンジンが停止しかつ車両が停止している状態から、車両の走行を開始した直後であると判断されたときに、エンジン始動またはエンジン停止による振動が伝達される弾性部材を、走行のために前記電動機によって発生するトルクによりエンジンの回転時に変形する方向に所定量変形させるまで、エンジン始動を禁止する禁止手段と、
を含むハイブリッド車両の制御装置。 - 前記トルクは、クリープ現象によって加えられるトルクよりも小さな値である請求項1又は2記載のハイブリッド車両の制御装置。
- エンジンと少なくとも1つの電動機とを有するハイブリッド車両を制御するハイブリッド車両の制御装置であって、
車両に搭載されたセンサからの情報に基づいて、停車中か否かを判断する判断手段と、
エンジン始動またはエンジン停止による振動が伝達される弾性部材を、エンジンの回転方向に所定量変形させるトルクが発生するように、前記電動機を制御する制御手段と、を含み、
前記判断手段によって停車中と判断されたときにエンジンを始動または停止する場合は、前記制御手段により前記トルクが発生するように前記電動機を制御した後に、前記エンジン始動またはエンジン停止を行うことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。 - 前記エンジンは、前記電動機によって始動される請求項5記載のハイブリッド車両の制御装置。
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