JP3868069B2 - ステンレス鋼のデスケール装置及びデスケール方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間加工の際に、あるいは熱処理の際にステンレス鋼の表面にできたスケールを除去するための、ステンレス鋼のデスケール装置及びデスケール方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレス鋼のスケールを除去するためには、通常は硝酸−弗酸の酸洗液を用いている。しかし近年、廃棄された硝酸あるいは硝酸塩は環境汚染を起こすために規制が強化される趨勢にある。このため硝酸を用いないステンレス鋼の酸洗法が望まれている。表面にスケールが発生したステンレス鋼を、溶融アルカリのソルトバスに浸漬するとスケールが変質し、その後の酸洗でスケールの除去が容易となる事が知られている。しかしこのソルトバスを用いるデスケール方法においても、ソルトバス後の酸洗には従来は専ら硝酸−弗酸の酸洗液が用いられていた。このため硝酸の使用量を十分には低減する事ができなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、硝酸、硝酸塩の廃棄量を十分に低減する事ができ、かつ従来よりも高能率でスケールを除去する事が可能な、ステンレス鋼のデスケール装置とデスケール方法の提供を課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)入側から出側方向に、1または2以上の酸洗槽を有する予備系列と、溶融アルカリを収納したソルトバスと、1または2以上の酸洗槽を有する仕上系列とを順次配してなるステンレス鋼のデスケール装置において、何れの酸洗槽にも硝酸を含有する酸洗液を用いる事なく、また予備系列と仕上系列のそれぞれの少なくとも1の酸洗槽を硫酸−弗酸の酸洗槽とし、仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽の使用済みの液を予備系列の硫酸−弗酸の酸洗槽に供給する構造とした事を特徴とする、ステンレス鋼のデスケール装置である。
【0005】
また(2)予備系列の硫酸−弗酸の酸洗槽が、硫酸:25〜60g/L,HF:3〜10g/Lの硫酸−弗酸の酸洗槽であり、仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽が、硫酸40〜80g/L,HF:5〜15g/L,Fe3+>5g/Lの硫酸−弗酸の酸洗槽である事を特徴とする、前記(1)に記載のフェライト系ステンレス鋼のデスケール装置である。
【0006】
また(3)予備系列の硫酸−弗酸の酸洗槽が、硫酸:60〜200g/L,HF:10〜25g/Lの硫酸−弗酸の酸洗槽であり、仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽がH2SO4:100〜250g/L,HF:15〜50g/L,F3+>5g/Lの硫酸−弗酸の酸洗槽である事を特徴とする、前記(1)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼のデスケール装置である。
【0007】
また(4)硫酸−弗酸の酸洗液が、温度が35〜65℃の硫酸−弗酸の酸洗液であることを特徴とする、前記(1)〜(3)の何れかに記載のステンレス鋼のデスケール装置である。
【0008】
尚、前記(1)〜(4)において仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽を、浴の酸化還元電位を+250mV以上に維持し浴中のFe2+を一定割合でFe3+に変換するための過酸化水素を添加する仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽としてもよい。
【0009】
また(5)予備系列の硫酸−弗酸の酸洗槽と、仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽の一方あるいは双方が、20〜30Nm3/hr/m3当たりの空気を連続的に導入する硫酸−弗酸の酸洗槽であることを特徴とする、前記(1)から(4)の何れかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼のデスケール装置である。
【0010】
また(6)前記(2),(4),(5)何れかに記載のデスケール装置によりデスケーリングを行う事を特徴とする、フェライト系ステンレス鋼のデスケール方法である。
【0011】
また(7)前記(3),(4),(5)の何れかに記載のデスケール装置によりデスケーリングを行う事を特徴とする、オーステナイト系ステンレス鋼のデスケール方法である。
【0012】
本発明では酸洗液が硝酸を含有しないものであれば、予備系列、仕上系列に更に他の酸洗槽を配する事を拒むものではない。本発明の各酸洗槽の間には、あるいは酸洗槽とソルトバスの間には、必要に応じて酸洗液等が混じりあう事を防止するための公知の水洗設備が設けられており、また最後の酸洗槽の後には公知の水洗設備やデスマット機能を備えた水洗設備が設けられている事は云うまでもない。
【0013】
【発明の実施の形態】
予備系列では、従来は硫酸、塩酸等が酸洗液として使用されている。本発明ではこれ等に代えて、硫酸−弗酸の酸洗液を用いる。本発明では仕上系列で使用済みの酸洗液を用いるが、この硫酸−弗酸の酸洗液は従来の硫酸あるいは塩酸に比べてステンレス鋼のスケールに強く作用し、次ぎのソルトバスに入る際のステンレス鋼のスケールを従来よりも著しく薄くする。この結果、ソルトバスを出た後のステンレス鋼のスケールは、従来よりも一層除去が容易となる。
【0014】
予備系列の酸洗液は、フェライト系ステンレス鋼の場合は、硫酸:25〜60g/L,HF:3〜10g/Lのものが好ましい。またオーステナイト系ステンレス鋼の場合は、硫酸60〜200g/L,HF:10〜25g/Lのものが好ましい。本発明では予備系列の酸洗液を後で述べる仕上系列の酸洗液と同じ種類の硫酸−弗酸系とし、仕上系列で使用済みの硫酸−弗酸の酸洗液を仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽から受け入れて使用する。この結果、仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗液は予備系列で再利用され、また予備系列では従来の酸洗液よりも強い作用を有する酸洗液となって再利用される。
【0015】
ソルトバスを用いない場合はステンレス鋼のデスケールには長時間を要する。本発明では、スケールを高能率に除去するために、溶融アルカリのソルトバスを用いる。ステンレス鋼のスケールはこの溶融アルカリによって変質し除去が容易となる。このソルトバス用のソルトとしては、例えばコリーンソルトDGS(商品名、(株)パーカーコーポレーション製)を430〜470℃に加熱して使用する事ができる。
【0016】
仕上系列では、従来は硝酸−弗酸が酸洗液として使用されている。本発明では硝酸を用いないで、硫酸−弗酸の酸洗液を用いる。本発明の仕上系列の酸洗液は硫酸−弗酸であるが、予備系列でスケールが十分に薄くなっているために、またソルトバスでこの薄いスケールも除去し易いように変質しているために、従来の硝酸−弗酸の場合と同様に、あるいは従来の硝酸−弗酸の場合よりも高能率でスケールを除去することができる。
【0017】
仕上系列の酸洗液は、フェライト系ステンレス鋼の場合は、硫酸40〜80g/L,HF:5〜15g/L,Fe3+>5g/Lのものが好ましい。またオーステナイト系ステンレス鋼の場合は、H2SO4:100〜250g/L,HF:15〜50g/L,Fe3+>5g/Lのものが好ましい。Fe3+は、例えば硫酸第2鉄として酸洗液に添加する。Fe3+は、2Fe3++Fe→3Fe2+となるために、酸化剤として硝酸にとって代われる。
【0018】
操業中のFe3+は、溶液中のFe2+を一定割合で変換して得られる事が好ましい。酸洗液中の酸化還元電位が+250mV以上で酸洗液中のFe3+はステンレス鋼表面でFe2+に定常的に一定速度で変化する。この酸化還元電位は、酸洗液に過酸化水素を添加する事により、また20〜30Nm3/hr/酸洗液1m3の空気を酸洗液に連続的に導入する事により、あるいは双方を行う事により+250mV以上とする事ができる。
【0019】
仕上系列の酸洗液は、周期的に分析する事によりその成分を管理するが、酸洗力が劣化した場合は、既に述べた如く予備系列の酸洗槽に移送し、仕上系列の酸洗液には硫酸、弗酸等を添加補充して酸洗力を回復させて使用する。
【0020】
【実施例】
本発明者等は、フェライト系ステンレス鋼(JIS SUS430ステンレス鋼)の熱延線材を焼鈍後、予備系列、仕上系列の酸を変えて、デスケーリングを行った。その結果を表1に示した。番号1〜4は予備系列に塩酸又は硫酸を用い、仕上系列に硝酸−弗酸を用いた従来例である。この際には各処理時間が10分で、ライン速度が遅い場合には優れた脱スケール結果が得られるが、処理時間が5分の高能率デスケールの場合は脱スケール結果は悪い。番号5は予備系列にも硝酸−弗酸を用いた例であるが、この際には処理時間が5分の場合にも優れたデスケール結果が得られるる。しかしこの際には、硝酸の使用量が多くなるという問題点が発生する。
【0021】
番号6は、予備系列に本発明の予備系列用の酸洗液よりも希薄な硫酸−弗酸の酸洗液を用いた比較例であり、番号7は仕上系列に本発明よりも希薄な酸洗液を用いた比較例である。これ等の場合に、処理時間が5分の高能率デスケールを行うと、脱スケールは不十分となる。
【0022】
【表1】
【0023】
番号8及び9は予備系列および仕上系列の双方に本発明でそれぞれ特定した硫酸−弗酸の酸洗液を用いた例である。この際には処理時間が10分の場合も、また処理時間が5分の高能率デスケールの場合も、極めて優れた脱スケール結果が得られた。
【0024】
本発明者等は、オーステナイト系ステンレス鋼(JIS SUS304ステンレス鋼)の熱延線材を焼鈍後、鋼帶を、予備系列、仕上系列の酸を変えて、デスケーリングを行った。その結果を表2に示した。番号11〜14は予備系列に塩酸又は硫酸を用い、仕上系列に硝酸−弗酸を用いた従来例である。この際には各処理時間が10分でライン速度が遅い場合には優れた脱スケール結果が得られるが、処理時間が5分の高能率デスケールの場合には脱スケール結果は不十分でありあるいは不良である。
【0025】
【表2】
【0026】
番号5は予備系列にも硝酸−弗酸を用いた例である。この際の予備系列の液は仕上系列で使用したものではないが、脱スケール性は不十分である。番号16は予備系列に本発明よりも希薄な硫酸−弗酸の酸洗液を用いた比較例であり、番号17は仕上系列に本発明よりも希薄な酸洗液を用いた比較例である。これ等の場合に、処理時間が5分の高能率デスケーリングを行うと、脱スケールは不十分となる。
【0027】
番号18及び19は予備系列および仕上系列の双方に本発明でそれぞれ特定した硫酸−弗酸の酸洗液を用いた例である。この際には処理時間が10分の、ライン速度が遅い場合も、また処理時間が5分の高能率デスケールの場合も、極めて優れた脱スケール結果が得られた。
【0028】
【発明の効果】
本発明によると、硝酸を用いないで、且つ従来よりも高能率で、ステンレス鋼のスケールを除去する事ができる。本発明を線材のデスケーリングの実施例について述べたが、本発明はステンレス鋼板、ステンレス鋼パイプ、ステンレス棒鋼などの形状の異なるステンレス鋼のデスケーリングにも適用できることはいうまでもない。
Claims (7)
- 入側から出側方向に、1または2以上の酸洗槽を有する予備系列と、溶融アルカリを収納したソルトバスと、1または2以上の酸洗槽を有する仕上系列とを順次配してなるステンレス鋼のデスケール装置において、何れの酸洗槽にも硝酸を含有する酸洗液を用いる事なく、また予備系列と仕上系列のそれぞれの少なくとも1の酸洗槽を硫酸−弗酸の酸洗槽とし、仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽の使用済みの液を予備系列の硫酸−弗酸の酸洗槽に供給する構造とした事を特徴とする、ステンレス鋼のデスケール装置。
- 予備系列の硫酸−弗酸の酸洗槽が、硫酸:25〜60g/L,HF:3〜10g/Lの硫酸−弗酸の酸洗槽であり、仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽が、硫酸40〜80g/L,HF:5〜15g/L,Fe3+>5g/Lの硫酸−弗酸の酸洗槽である事を特徴とする、請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼のデスケール装置。
- 予備系列の硫酸−弗酸の酸洗槽が、硫酸:60〜200g/L,HF:10〜25g/Lの硫酸−弗酸の酸洗槽であり、仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽が
H2SO4:100〜250g/L,HF:15〜50g/L,Fe3+>5g/Lの硫酸−弗酸の酸洗槽である事を特徴とする、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼のデスケール装置。 - 硫酸−弗酸の酸洗液が、温度が35〜65℃の硫酸−弗酸の酸洗液であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のステンレス鋼のデスケール装置。
- 予備系列の硫酸−弗酸の酸洗槽と、仕上系列の硫酸−弗酸の酸洗槽の一方あるいは双方が、20〜30Nm3/hr/m3当たりの空気を連続的に導入する硫酸−弗酸の酸洗槽であることを特徴とする、請求項1から4の何れかに記載のステンレス鋼のデスケール装置。
- 請求項2,4,5の何れかに記載のデスケール装置によりデスケーリングを行う事を特徴とする、フェライト系ステンレス鋼のデスケール方法。
- 請求項3,4,5の何れかに記載のデスケール装置によりデスケーリングを行う事を特徴とする、オーステナイト系ステンレス鋼のデスケール方法。
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JP20562897A JP3868069B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | ステンレス鋼のデスケール装置及びデスケール方法 |
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JPH1150283A JPH1150283A (ja) | 1999-02-23 |
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JP20562897A Expired - Lifetime JP3868069B2 (ja) | 1997-07-31 | 1997-07-31 | ステンレス鋼のデスケール装置及びデスケール方法 |
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KR101289147B1 (ko) * | 2010-12-28 | 2013-07-23 | 주식회사 포스코 | 표면품질이 우수한 저크롬 페라이트계 스테인리스 냉연강판을 제조하기 위한 친환경 고속 산세 프로세스 |
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1997
- 1997-07-31 JP JP20562897A patent/JP3868069B2/ja not_active Expired - Lifetime
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