JP3867620B2 - オフセット輪転印刷用塗工紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット輪転印刷時の乾燥工程後に発生するひじわの発生が少なく、優れた印刷適性を備えたオフセット印刷用塗工紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷物に対し、写真や図案を多用し、更にカラー化するなどにより、視覚的に内容を強力に伝達しようとする(以下視覚化という)強い要望がある。一方、省資源、輸送コストなどの点から印刷物の軽量化に対しても強い要望がある。この二つの要望は相反するものであって、視覚化に適する高級グレードの塗工紙は原紙坪量、塗工量とも多く、高価であって、軽量、低価格の要望にそぐわない。そこで、低坪量、低塗工量のいわゆる低級グレードの塗工紙で、より上のグレードの品質を実現する技術が求められる。
【0003】
塗工紙品質の重要項目のひとつに、オフセット輪転印刷の乾燥過程で発生するひじわがあげられる。オフセット輪転印刷の乾燥工程で、非画線部とインキで覆われている画線部では紙中水分の蒸発速度が異なる。非画線部は、画線部と比較して水分蒸発速度が速いため、先に収縮が始まり、画線部に流れ方向(抄紙方向)のひじわが発生する。ひじわは、坪量が低い場合、顕著に発生するため、塗工紙の軽量化の大きな障害になる。
【0004】
ひじわは紙中水分の蒸発速度の差に起因しているため、印刷前の塗工紙水分を低くすることがひじわ抑制には効果がある。しかし、塗工紙水分を低くした場合、ひじわは相対的に低くなるが、完全に解決するまでには至らない。
【0005】
また、特開平11−350391号公報では、ケン化度が85モル%以上であるポリビニルアルコールを原紙の両面に対し、乾燥重量で1〜6g/m2となるように塗布、乾燥されてなる原紙を使用することにより収縮挙動を抑制させることも提案されている。しかし、PVAは粘度が高く塗工適性に劣るため、連続操業には不向きであり、耐ブリスター性に劣る場合があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況に鑑みて、本発明の課題は、オフセット輪転印刷時の乾燥工程後に発生するひじわの発生が少なく、優れた印刷適性を備えたオフセット印刷用塗工紙を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題について鋭意研究した結果、原紙上の顔料および接着剤を含有する塗工層を設けてなるオフセット輪転印刷用塗工紙において、原紙にアルギン酸と澱粉からなるクリアー塗工層を設けた、あるいは/及び顔料塗工層上に表面サイズ剤とプラスチックピグメントからなる表面層を設けた塗工紙であり、印刷前の透気抵抗度が80000秒未満であることにより、非画線部と画線部の水分蒸発速度の差が小さくなり、ひじわの少ない優れた印刷適性を備えたオフセット輪転印刷用塗工紙を得ることができ、その製造方法により、前記課題が解決されることを見いだし本発明を完成した。
【0008】
本発明においては、印刷前の透気抵抗度(王研式透気抵抗度)が80000秒未満、より好ましくは70000秒未満であることが重要である。印刷前の透気抵抗度が80000秒以上の場合、オフセット輪転印刷後に透気抵抗度が8000秒以上低下したとしても、透気抵抗度の絶対値は高いままである。透気抵抗度が高い場合、インキがのった画線部でブリスターが発生し易くなり、オフセット輪転印刷には適さない。
【0009】
また、印刷後非画線部の透気抵抗度が印刷前に対して8000秒以上、より好ましくは20000秒以上低くなることが重要であり、これにより、非画線部と画線部の透気抵抗度の差が小さくなり、ひじわの発生が抑えられる。本発明において、印刷後非画線部の透気抵坑度を8000秒以上低下させることにより、ひじわが抑えられる理由については、必ずしも明らかでないが以下のように考えられる。即ち、オフセット輪転印刷の乾燥時に、塗工層表面に微小なクラックが発生し、選択的に空気が抜け、非画線部の透気抵坑度が低くなり、インキがのった画線部部分の透気抵坑度も通常よりも低くなるために、非画線部と画線部の透気抵坑度の差が小さくなり、非画線部と画線部の水分蒸発速度差が小さくなることにより、ひじわの発生が抑えられると考えられる。透気抵抗度の低下が8000秒未満の場合、非画線部と画線部の透気抵抗度の差が大きく、ひじわを十分に抑制することは困難である。
【0010】
また、非画線部と画線部の透気抵抗度の差としては、4色重ね印刷部と非画線部で40000秒以内にすることにより、ひじわの抑制効果が顕著になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明においては、印刷前の透気抵抗度(王研式透気抵抗度)が80000秒未満で、非画線部の透気抵抗度を印刷前と比較して8000秒以上低下させる具体的な手法としては、顔料塗工前にアルギン酸・澱粉からなる混合液をクリア塗工して原紙自体の透気抵抗度を高くする方法、顔料塗工後に更に表面サイズ剤、プラスチックピグメントからなる表面層をコートする方法、両者を組み合わせる方法がある。本発明において表面層に使用する表面サイズ剤は、例えばエマルジョンタイプ、溶液タイプのものが用いられ、いずれもコーターで塗工し、熱風乾燥した後は、粒子を形成しないもの等が挙げられ、スチレン・アクリル系、スチレン・マレイン酸系、スチレン・メタクリル酸系、オレフィン系、ウレタン系などの共重合体の表面サイズ剤を単独あるいは併用して使用することができる。重合平均分子量としては1000〜500000のものを使用することが好ましい。
【0012】
本発明の塗工層に用いられる顔料としては、特に制限はなく、発明の目的を損なわない範囲で複数の顔料を併用することができる。顔料としては、塗工紙用に従来から用いられている、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料、プラスチックピグメントなどの有機顔料であり、これらの顔料は必要に応じて単独または2種類以上併用して使用できる。
【0013】
接着剤としては塗工紙用に従来から用いられている、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、あるいは無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体などの通常の塗工紙用接着剤1種以上を適宜選択して使用される。これらの接着剤は顔料100重量部当たり5〜50重量部、より好ましくは10〜30重量部程度の範囲で使用される。
【0014】
本発明の塗工液には、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等の通常使用される各種助剤を使用しても良い。また、塗工適性、印刷適正を良好にするために、本発明の塗工液の固形分濃度は、45〜65重量%に調節することが好ましい。
【0015】
塗工原紙としては、一般の塗工紙に用いられる坪量が25〜400g/m2程度の紙ベースや板紙ベースの原紙が適宜用いられている。原紙の抄紙方法については特に限定されるものではなく、トップワイヤー等を含む長網マシン、丸網マシン、二者を併用した板紙マシン、ヤンキードライヤマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ性抄紙方式で抄紙した原紙のいずれであってもよく、勿論、メカニカルパルプを含む中質原紙および回収古紙パルプを含む原紙も使用できる。また、サイズプレス、ビルブレード、ゲートロールコータ、プレメタリングサイズプレスを使用して、酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン、ポリビニルアルコール、アルギン酸などを予備塗工した原紙や、ピグメントと接着剤を含む塗工液を1層以上予備塗工した塗工原紙も使用可能である。
【0016】
原紙を構成するパルプとしては、化学パルプ(針葉樹の晒または未晒クラフトパルプ、広葉樹の晒しまたは未晒クラフトパルプ等)、機械パルプ(グランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等)、脱墨パルプ(故紙パルプ)を単独または任意の割合で混合使用する。
【0017】
原紙のpHは、酸性、中性、アルカリ性のいずれでも良い。また、紙中填料の種類も特に限定されるものではなく、水和珪酸、ホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、合成樹脂填料等の公知の填料を使用することができる。必要に応じて、硫酸バンド、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤、着色剤、染料、消泡剤等を含有しても良い。
【0018】
調整された塗工液は、ブレードコーター、バーコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーター等を用いて、一層もしくは二層以上を原紙上に両面塗工する。塗工量は、片面当たり3〜20g/m2が好ましい。
【0019】
湿潤塗工層を乾燥させる方法としては、例えば蒸気過熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法が単独もしくは併用して用いられる。
【0020】
次に必要に応じて、表面サイズ剤、プラスチックピグメントを含有する塗工液を塗工し、表面層を設ける。本発明の表面層用塗工液に塗工層の表面強度を調節するための一般紙塗工用天然あるいは合成樹脂接着剤、塗工に際しての塗料の塗工適性を調節するための流動調節剤や消泡剤、カレンダーロール等のロールへの付着を減少させる離型剤、および塗工層表面を着色するための着色剤、少量の顔料などを適宜組み合わせて混合し、表面層用塗工液としてもよい。塗工量としては、通常片面0.1g/m2以上、好ましくは0.3〜3g/m2程度の塗工量で十分である。表面層用塗工液の塗工は、通常紙塗工の分野で使用されるブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、グラビヤコーター、フレキソコーター等で行なうことができる。塗工後の乾燥も、通常のコート紙の製造に用いられる乾燥条件で表面層とすることができる。
【0021】
以上の様に塗工乾燥された塗工紙は、スーパーカレンダー、高温ソフトニップカレンダー等で平滑化処理を行うことが好ましい。本発明の効果は、特に坪量が25〜120g/m2の塗工紙において優れるものである。
【0022】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、勿論これらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、例中の部および%はそれぞれ重量%を示す。尚、塗工液および得られたオフセット印刷用塗工紙について以下に示すような評価法に基づいて試験を行った。
〈評価方法〉
(1)ひじわ:オフセット輪転印刷の4色重ね印刷部(インキ濃度:墨1.80、藍1.50、紅1.45、黄1.05、4色合計濃度5.80、X-Rite社製X-Rite408で測定)に発生したひじわを以下の基準で目視評価した。◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る
(2)耐ブリスター性:オフセット輪転印刷の4色重ね印刷部(インキ濃度:墨1.80、藍1.50、紅1.45、黄1.05、4色合計濃度5.80、X-Rite社製X-Rite408で測定)でブリスターが発生した紙面温度を指標として評価した。
(3)透気抵抗度:J.TAPPI紙パルプ試験方法No.5(B)に準拠して印刷前白紙部、オフセット輪転印刷後の非画線部、4色重ね印刷部(インキ濃度:墨1.80、藍1.50、紅1.45、黄1.05、4色合計濃度5.80、X-Rite社製X-Rite408で測定)を測定した。
(4)白紙光沢度:JIS P 8142に基づいて測定した。
[実施例1]
微粒クレー(IMERYS社製DB−GRAZE)60部、微粒重質炭酸カルシウム(ファイマテック社製FMT−90)40部からなる顔料に、分散剤として対顔料でポリアクリル酸ソーダ0.2部を添加して、セリエミキサーで分散し、固形分濃度が70%の顔料スラリーを調整した。このようにして得られた顔料スラリーにスチレンブタジエンラテックス10部、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉5部を加え、さらに水を加えて固形分濃度64%の塗工液を得た。アルギン酸とヒドロキシエチルエーテル化澱粉混合液(固形分比 1:50)を片面あたり2.0g/m2ゲートロールコーターで塗工した坪量40.0g/m2の上質紙に片面あたりの塗工量が、固形分で11.0g/m2になるように塗工液を、1000m/分の塗工速度のブレードコーター(ジェットファウンテン式アプリケーター)で両面塗工を行い、紙水分が5.5%になるように乾燥した。更に表面層を設けるために、小粒径プラスチックピグメント(平均粒径0.1μm)およびスチレン・アクリル系表面サイズ剤の混合液(固形分比 1:1)を片面あたりの塗工量が、固形分で0.7g/m2になるように、1000m/分の塗工速度のブレードコーター(ジェットファウンテン式アプリケーター)で両面塗工を行なった。
【0023】
次いで、ロール表面温度80℃、4ニップ、カレンダー線圧200kg/cm、通紙速度300m/分でソフトニップカレンダー処理を行いオフセット輪転印刷用塗工紙を得た。
[実施例2]
実施例1において、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉を片面あたり1.0g/m2ゲートロールコーターで塗工した坪量40.0g/m2の上質紙を用いたこと、表面層として、小粒径プラスチックピグメント(平均粒径0.1μm)およびスチレン・アクリル系表面サイズ剤の混合液(固形分比 1:1)を片面あたりの塗工量が、固形分で1.0g/m2になるように、1000m/分の塗工速度のブレードコーター(ジェットファウンテン式アプリケーター)で両面塗工を行なった以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例3]
実施例1において、アルギン酸とヒドロキシエチルエーテル化澱粉混合液を片面あたり3.0g/m2ゲートロールコーターで塗工した坪量40.0g/m2の上質紙を用いたこと、表面層を設けなかった以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[実施例4]
実施例1において、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉を片面あたり1.0g/m2ゲートロールコーターで塗工した坪量40.0g/m2の上質紙を用いたこと、表面層として、小粒径プラスチックピグメント(平均粒径0.1μm)およびスチレン・アクリル系表面サイズ剤の混合液(固形分比 1:1)を片面あたりの塗工量が、固形分で1.5g/m2になるように、1000m/分の塗工速度のブレードコーター(ジェットファウンテン式アプリケーター)で両面塗工を行なった以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[比較例1]
実施例1において、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉混合液を片面あたり1.0g/m2ゲートロールコーターで塗工した坪量40g/m2の上質紙を使用したこと、表面層を設けなかったこと以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
[比較例2]
実施例1において、PVAを片面あたり3.0g/m2ゲートロールコーターで塗工した坪量40g/m2の上質紙に片面あたりの塗工量が、固形分で12.0g/m2になるように塗工液を、1000m/分の塗工速度のブレードコーター(ジェットファウンテン式アプリケーター)で両面塗工を行い、表面層を設けなかったこと以外は実施例1と同様の方法でオフセット印刷用塗工紙を得た。
【0024】
以上の結果を表1に示した。
【0025】
【表1】
【0026】
【発明の効果】
本発明により、オフセット輪転印刷時の乾燥工程後に発生するひじわの発生が少なく、優れた印刷適性を備えたオフセット印刷用塗工紙を得ることができる。
Claims (1)
- 原紙上に顔料および接着剤を含有する顔料塗工層を設けてなるオフセット輪転印刷用塗工紙において、原紙にアルギン酸と澱粉からなるクリアー塗工層を設けた、あるいは/及び顔料塗工層上に表面サイズ剤とプラスチックピグメントからなる表面層を設けた塗工紙であり、印刷前の透気抵抗度が80000秒未満であることを特徴とするオフセット輪転印刷用塗工紙。
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