JP3867409B2 - 光導波路の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信分野、光情報処理分野などにおいて用いられる光回路を作成するための光導波路の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マルチメディア時代を迎え、光通信システムやコンピュータにおける情報処理の大容量化および高速化の要求から、光を伝送媒体とする伝送システムが、公衆通信網、LAN(ローカルエリアネットワーク)、FA(ファクトリーオートメーション)、コンピュータ間のインターコネクト、家庭内配線等に使用されつつある。
光導波路は、例えば映画や動画等の大容量の情報伝達や光コンピュータ等を実現するための光デバイス、光電集積回路(OEIC)、並びに光集積回路(光IC)等における基本構成要素である。そして、この光導波路は、大量の需要があることから、近年、特に高性能で低コストの製品が求められている。
【0003】
従来、光導波路としては、ポリマー系光導波路と石英系光導波路が知られており、ポリマー系光導波路の製造方法としては、例えば特開平6−273631号公報、特開平7−159630号公報に、紫外線硬化樹脂を用いて光導波路を作製する方法が例示されている。このポリマー系光導波路は、石英系光導波路と比較して、フォトリソグラフィー等の手段を用いることにより、簡単にかつ低コストで製造することができるという利点があるが、性能としては、一般に導波路損失が大きくて耐熱性が低いという欠点があり、特に通信に用いられる波長650〜1600nmの光について導波路損失が大きい、という問題があった。
【0004】
一方、石英系導波路の製造方法としては、シリコン基板上に、火炎堆積法(FHD)、CVD法等の手段によりガラス膜よりなる下部クラッド層を形成し、この下部クラッド層上にこれと屈折率の異なる無機質の薄膜を形成し、この薄膜を反応性イオンエッチング法(RIE)を利用してパターニングすることによりコア部分を形成し、その後、更に火炎堆積法によって上部クラッド層を形成する方法が代表的である。
しかしながら、この方法は、各工程の実施が相当に煩雑である上、各構成層を透明ガラス化するために1000℃以上の温度に加熱するガラス化工程が必要であることから、製造に長い時間がかかり、コストが高いものとなる。
【0005】
一方、特開平6−250036号公報には、いわゆるゾル−ゲル法を用いて無機質の薄膜を形成することにより、石英系光導波路を製造する方法が例示されている。この方法では、火炎堆積法に比較すれば、低温で短時間のうちに薄膜を形成することができるが、反応性イオンエッチング等の工程に長時間を要する点は同様であり、結局、コストが高いものとなる。
以上のように、従来の石英系光導波路の製造方法によれば、導波路損失が低くて耐熱性に優れた光導波路を得ることができるが、製造工程が煩雑で、効率が悪く、コストが高い、という問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上のような事情を背景としてなされたものであって、可視域から赤外域にわたる光についての導波路損失が低く、しかも耐熱性に優れた光導波路を、短時間でかつ簡単なプロセスで製造することができる方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、下記の製造方法により解決される。
すなわち、本発明の光導波路の製造方法は、基板と、この基板上に形成された下部クラッド層と、この下部クラッド層上に形成されたコア部分と、このコア部分および下部クラッド層上に形成された上部クラッド層とよりなる光導波路の製造方法であって、
下部クラッド層、コア部分および上部クラッド層の少なくとも一つを、下記(A)〜(C)成分を含有する放射線硬化性組成物を塗布して放射線の照射により硬化させることを含む手段により形成することを特徴とする。
(A)一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解物および当該加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物
一般式(1) (R1)p Si(X)4-p
〔式中、R1 は炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。〕
(B)光酸発生剤
(C)カルボン酸エステル、アセタール類(ケタール類を含む。)およびカルボン酸無水物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であって、常圧における沸点が40〜200℃の範囲である有機化合物よりなる脱水剤
【0008】
以上の方法においては、コア部分を形成するための放射線硬化性組成物を塗布して得られる薄膜に、所定のパターンに従って放射線を照射した後、未露光部を除去することにより、コア部分を形成することが好ましい。
また、コア部分を形成するための放射線硬化性組成物は、これにより形成されるコア部分の屈折率が、下部クラッド層および上部クラッド層の屈折率より高いものとなる放射線硬化性組成物である。
【0009】
上記の方法において、一般式(1)におけるR 1 がラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有することが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
図1は、本発明の方法によって製造される光導波路の基本的構成を示す説明用断面図である。図1に示すように、光導波路10は、紙面に直角な方向に伸びる基板12と、この基板12の表面上に形成された下部クラッド層13と、この下部クラッド層13上に形成された、特定の幅を有するコア部分15と、このコア部分15を含む下部クラッド層13上に積重して形成された上部クラッド層17とにより構成され、コア部分15は、その全体が下部クラッド層13および上部クラッド層17の積重体中に埋設された状態とされている。
【0012】
本発明方法の好適な態様によれば、光導波路10は、次のようにして製造される。すなわち、図2(イ)に示すように、平坦な表面を有する基板12が用意される。この基板12としては、特に制限されるものではないが、シリコン基板、ガラス基板等を用いることができる。
この基板12の表面には、下部クラッド層13が形成される。具体的には、図2(ロ)に示すように、基板12の表面に、後述する放射線硬化性組成物からなる下部クラッド層形成用組成物(以下「下層用組成物」という。)を塗布し、乾燥またはプレベークさせて下層用薄膜を形成し、この下層用薄膜を、これに放射線を照射することにより硬化させて下部クラッド層13を形成する。
【0013】
次に、この下部クラッド層13上に、図2(ハ)に示すように、後述する放射線硬化性組成物からなるコア形成用組成物(以下「コア用組成物」という。)を塗布し、乾燥またはさらにプレベークさせてコア用薄膜14を形成する。その後、図2(ニ)に示すように、コア用薄膜14の上面に対して、所定のパターンに従って、例えば所定のパターンのマスク孔を有するフォトマスク18を介して放射線の照射を行う。これにより、放射線が照射された個所が硬化するので、それ以外の未硬化の部分を除去することにより、図2(ホ)に示すように、下部クラッド層13上に、パターニングされた硬化膜よりなるコア部分15が形成される。
【0014】
このようなコア部分15が形成された下部クラッド層13の表面に、後述する放射線硬化性組成物からなる上部クラッド層形成用組成物(以下「上層用組成物」という。)を塗布し、乾燥またはプレベークさせて上層用薄膜を形成し、この上層用薄膜を、これに放射線を照射して硬化させることにより、図1に示したように上部クラッド層17を形成し、もって光導波路10が製造される。
【0015】
以上のようにして得られる光導波路において、下部クラッド層13、上部クラッド層17およびコア部分15の厚みは特に制限されるものではないが、下部クラッド層13の厚みは3〜50μm、コア部分15の厚みは3〜20μm、上部クラッド層17の厚みは3〜50μmであることが好ましい。コア部分15の幅は特に限定されるものではないが、例えば1〜50μmの範囲である。
コア部分15の屈折率は、下部クラッド層13および上部クラッド層17のいずれの屈折率よりも大きいことが必要であり、実際の光導波路におけるコア部分15の屈折率は、波長1300〜1600nmの光に対して1.450〜1.650、下部クラッド層13および上部クラッド層17の屈折率は1.400〜1.648であることが好ましく、コア部分の屈折率は両方のクラッド層の屈折率よりも0.002〜0.5の範囲で大きいことが好ましい。
【0016】
本発明の具体的な態様においては、下部クラッド層、コア部分および上部クラッド層を、いずれも、それらの層を形成するための放射線硬化性組成物、すなわち下層用組成物、コア用組成物および上層用組成物を塗布し、形成される塗布膜を乾燥させ、あるいは必要に応じてプレベークさせて薄膜とし、この薄膜を放射線の照射によって硬化させる工程を経て、形成することが好ましい。
【0017】
本発明において、下層用組成物、コア用組成物および上層用組成物の少なくとも一つとして、下記(A)〜(C)成分を含有する放射線硬化性組成物が用いられる。
(A)一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解物および当該加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物
一般式(1) (R1)p Si(X)4-p
〔式中、R1 は炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。〕
(B)光酸発生剤
(C)有機化合物よりなる脱水剤
【0018】
以下、この放射線硬化性組成物について説明する。
(1)(A)成分
(A)成分は当該放射線硬化性組成物の主成分であって、上記の一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解物および当該加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物である。
【0019】
ここで、Xで表される加水分解性基は、通常、無触媒、過剰の水の共存下、室温(25℃)〜100℃の温度範囲内で加熱することにより、加水分解されてシラノール基を生成することができる基、もしくはシロキサン縮合物を形成することができる基を指す。また、一般式(1)中の添え字pは0〜3の整数であるが、より好ましくは0〜2の整数であり、特に好ましくは1である。
但し、一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解物において、一部未加水分解の加水分解性基が残っていてもよく、その場合は、加水分解性シラン化合物と加水分解物との混合物となる。
また、加水分解性シラン化合物の加水分解物というときは、加水分解反応によりアルコキシ基がシラノール基に変わった化合物ばかりでなく、一部のシラノール基同士が縮合した部分縮合物をも意味している。
さらに、加水分解性シラン化合物は、放射線硬化性組成物を配合する時点で加水分解されている必要は必ずしもなく、放射線を照射する段階で、少なくとも一部の加水分解性基が加水分解されていればよい。すなわち、放射線硬化性組成物において、加水分解性シラン化合物を予め加水分解せずに使用した場合には、事前に水を添加して、加水分解性基を加水分解させ、シラノール基を生成することにより、放射線硬化性組成物を放射線硬化させることができる。
【0020】
〔有機基R1
一般式(1)における有機基R1 は、非加水分解性である1価の有機基の中から選ぶことができる。
このような非加水分解性の有機基として、非重合性の有機基および重合性の有機基あるいはいずれか一方の有機基を選ぶことができる。なお、有機基R1 における非加水分解性とは、加水分解性基Xが加水分解される条件において、そのまま安定に存在する性質であることを意味する。
【0021】
ここで、非重合性の有機基R1 としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。これらは、直鎖状、分岐状、環状あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
また、より具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、および重水素化アルキル基もしくはハロゲン化アルキル基が挙げられる。これらのアルキル基のうち、より好ましくはメチル基である。
【0022】
また、非重合性の有機基R1 における具体的なアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、および重水素化アリール基もしくはハロゲン化アリール基が挙げられる。これらのうち、より好ましくはフェニル基である。
さらに、非重合性の有機基R1 における具体的なアラルキル基としては、ベンジル基およびフェニルエチル基が挙げられる。これらのうち、より好ましくはベンジル基である。
【0023】
さらに、非重合性の有機基R1 は、ヘテロ原子を含む構造単位とすることも好ましい。そのような構造単位としては、エーテル、エステル、スルフィド等を例示することができる。また、ヘテロ原子を含む場合、非塩基性であることが好ましい。
【0024】
また、重合性の有機基R1 は、分子中にラジカル重合性の官能基およびカチオン重合性の官能基あるいはいずれか一方の官能基を有する有機基であることが好ましい。このような官能基を導入することにより、ラジカル重合やカチオン重合を併用して、放射線硬化性組成物をより有効に硬化させることができる。
【0025】
また、重合性の有機基R1 におけるラジカル重合性の官能基およびカチオン重合性の官能基のうち、より好ましいのはカチオン重合性の官能基である。光酸発生剤により、シラノール基における硬化反応のみならず、カチオン重合性の官能基における硬化反応を同時に生じさせることができるためである。
【0026】
ラジカル重合性の官能基を有する有機基R1 としては、オレフィン基を有する有機基、(メタ)アクリロキシを有する有機基、スチリル基を有する有機基、ビニルエーテルを有する有機基等が挙げられる。
そして、より具体的なオレフィン基としてはビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基等が挙げられる。これらのうち、より好ましくはビニル基である。
また、(メタ)アクリロキシを有する有機基の例を示すと、(メタ)アクリロキシメチルや(メタ)アクリロキシプロピル等が挙げられる。
また、スチリル基を有する有機基の例を示すと、スチリル、スチリルエチル、スチリルプロピル等が挙げられる。
さらに、ビニルエーテルを有する有機基の例を示すと、ビニロキシエチル、ビニロキシプロピル、ビニロキシブチル、ビニロキシオクチル、ビニロキシシクロヘキシル、ビニロキシフェニル等を挙げることができる。
【0027】
また、カチオン重合性の官能基を有する有機基R1 としては、環状エーテル構造を有する有機基、ビニルエーテルを有する有機基等が挙げられる。
そして、より好ましくは、環状エーテル構造を有する有機基である。かかる環状エーテル基としては、直鎖や環状構造を有する3〜6員環の環状エーテル構造、より具体的にはエポキシ基、オキセタン基、テトラヒドロフラン、及びピラン単位を含む構造を挙げることができる。また、これらの環状エーテル基のうち、より好ましいものはエポキシ基、オキセタン基等の4員環以下の環状エーテル構造である。
【0028】
また、環状エーテル構造を有する有機基の具体例を示すと、グリシジルプロピル、エポキシ化シクロヘキシルエチル、メチルオキセタニルメトキシプロピル、エチルオキセタニルメトキシプロピル等を挙げることができる。また、ビニルエーテルを有する有機基としては、ビニロキシエチル、ビニロキシプロピル、ビニロキシブチル、ビニロキシオクチル、ビニロキシシクロヘキシル、ビニロキシフェニル等を挙げることができる。
【0029】
〔加水分解性基X〕
一般式(1)における加水分解性基Xとしては、水素原子、炭素数1〜12のアルコキシ基、ハロゲン原子、アミノ基およびアシルオキシ基等が挙げられる。ここで、好ましい炭素数1〜12のアルコキシ基の具体例を挙げると、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシベンジロキシ基、メトキシエトキシ基、アセトキシエトキシ基、2−(メタ)アクリロキシエトキシ基、3−(メタ)アクリロキシプロポキシ基、4−(メタ)アクリロキシブトキシ基、
あるいは、グリシジロキシ基、エポキシ化シクロヘキシルエトキシ基等のエポキシ基含有アルコキシ基、
メチルオキセタンメトキシ、エチルオキセタンメトキシ等のオキセタン基含有アルコキシ基、
オキサシクロヘキシロキシ等の6員環エーテル基を有するアルコキシ基等を挙げることができる。
また、上述した炭素数1〜12のアルコキシ基のうち、メトキシ基およびエトキシ基がより好ましい。これらのアルコキシ基は、容易に加水分解されてシラノール基を生成するため、放射線硬化反応を安定して生じさせることができる。
【0030】
また、好ましいハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。
但し、このように加水分解性基としてハロゲン原子を含む加水分解性シラン化合物を用いる場合、放射線硬化性組成物の保存安定性を低下させないように注意を払う必要がある。すなわち、加水分解により生成するハロゲン化水素の量にもよるが、かかるハロゲン化水素を、中和、蒸留等の操作により除去して、放射線硬化性組成物の保存安定性に影響を及ぼさないようにすることが好ましい。
【0031】
また、好ましいアミノ基としては、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジブチルアミノ基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等を挙げることができる。
但し、このように加水分解性基としてアミノ基を用いた場合、加水分解によりアミン類が生成する。したがって、放射線硬化性組成物の保存安定性に影響を及ぼさないように、放射線硬化性組成物を最終的に調製する前に、かかる副生アミン類を除去することが好ましい。
【0032】
また、好ましいアシルオキシ基としては、アセトキシ基、ブチロイルオキシ基等を挙げることができる。
【0033】
〔加水分解性シラン化合物の具体例〕
次に、式(1)で表される加水分解性シラン化合物(単に、シラン化合物と称する場合がある。)の具体例を説明する。
まず、非重合性の有機基R1 を有するシラン化合物としては、テトラクロロシラン、テトラアミノシラン、テトラアセトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラベンジロキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン等の4個の加水分解性基で置換されたシラン化合物が挙げられる。
【0034】
また、同様に、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、d3 −メチルトリメトキシシラン、ノナフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン等の3個の加水分解性基で置換されたシラン化合物が挙げられる。
【0035】
また、同様に、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジアミノシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン等の2個の加水分解性基で置換されたシラン化合物、及びトリメチルクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリブチルシラン、トリメチルメトキシシラン、トリブチルエトキシシラン等の1個の加水分解性基で置換されたシラン化合物を挙げることができる。
【0036】
これらの中で、加水分解性シラン化合物としてより好ましい例を挙げると、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等のメチルアルコキシシラン、あるいはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のテトラアルコキシシランである。
【0037】
また、重合性の有機基を有するシラン化合物としては、非加水分解性の有機基R 1 に重合性の有機基を含むシラン化合物、加水分解性の有機基Xに重合性の有機基を有するシラン化合物のいずれかを用いることができる。
【0038】
ここで、非加水分解性の有機基R 1 に重合性の有機基を含むシラン化合物としては(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、ビス(メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等のビニルシラン化合物、
グリシジロキシトリメトキシシラン、ビス(グリシジロキシ)ジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシシラン化合物、
3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(3−エチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン等のオキセタンシラン化合物、
オキサシクロヘキシルトリメトキシシラン、オキサシクロヘキシルトリエトキシシラン等の6員環エーテル構造を有するシラン化合物を挙げることができる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
また、加水分解性の有機基Xに重合性の有機基を含むシラン化合物の例としては、テトラ(メタ)アクリロキシシラン、テトラキス[2−(メタ)アクリロキシエトキシ]シラン、テトラグリシジロキシシラン、テトラキス(2−ビニロキシエトキシ)シラン、テトラキス(2−ビニロキシブトキシ)シラン、テトラキス(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)シラン、メチルトリ(メタ)アクリロキシシラン、メチル[2−(メタ)アクリロキシエトキシ]シラン、メチル−トリグリシジロキシシラン、メチルトリス(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)シランを挙げることができる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
また、重合性の有機基を有するシラン化合物の中で、より好ましくは非加水分解性の有機基R 1 に重合性の有機基を含むシラン化合物であり、さらに好ましくは、カチオン重合性の有機基を有するシラン化合物である。
そのような具体例を挙げると、グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(3−エチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(3−メチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリエトキシシラン、3−(3−エチル−3−オキセタンメトキシ)プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
〔加水分解性シラン化合物の入手例〕
以上述べた加水分解性シラン化合物は、公知の方法により合成することができる。例えば、Pure Appl. Chem.,A34(11)、2335頁、1997年、やEur.Polym.J. Vol.33、No.7、1021頁、1997年に記載されているように、オレフィン基を有する化合物に対して、トリアルコキシシランを遷移金属錯体またはラジカル発生剤を触媒とするヒドロシリル化により、種々の官能基を有するアルコキシシラン類を製造することができる。
【0042】
また、これらの加水分解性シラン化合物の一部は、商品として市販されており、容易に入手することができる。例えば、日本ユニカー(株)製のA−151、A−171、A−172、A−174、Y−9936、AZ−6167、AZ−6134、A−186、A−187、MAC−2101、MAC−2301、FZ−3704、AZ−6200、A−162、A−163、AZ−6171、A−137、A−153、A−1230、また、例えば、東レダウコーニングシリコーン(株)製 SZ−6030、SH−6040、SZ−6070、SZ−6072、SZ−6075、SZ−6079、SZ−6300,PRX11、PRX19、PRX24、AY43−154M等を挙げることができる。
【0043】
〔加水分解性シラン化合物の加水分解条件〕
上述したシラン化合物を加水分解または縮合させるための条件は、特に制限されるものではないが、一例として、以下に示す1)〜3)の工程によって実施するのが好ましい。
【0044】
1)一般式(1)に示す加水分解性シラン化合物と、所定量の水とを、撹拌機付の容器内に収容する。
2)次いで、溶液の粘度を調節しながら、有機溶媒を容器内にさらに収容し、混合溶液とする。
3)得られた混合溶液を、空気雰囲気中、0℃から有機溶媒もしくは加水分解性シラン化合物の沸点以下の温度で、1〜24時間の間加熱撹拌する。なお、加熱撹拌中、必要に応じて蒸留によって混合溶液を濃縮したり、あるいは溶剤を置換することも好ましい。
【0045】
(2)光酸発生剤
〔定義〕
放射線硬化性組成物における(B)成分の光酸発生剤は、放射線を照射することにより、(A)成分である加水分解性シラン化合物を放射線硬化(架橋)可能な酸性活性物質を放出することができる化合物と定義される。
【0046】
光酸発生剤を分解させてカチオンを発生させるための放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等を挙げることができるが、一定のエネルギーレベルを有し、大きな硬化速度が得られ、しかも照射装置は比較的安価で小型のものでよい利点があることから、紫外線が好ましい。
【0047】
また、光酸発生剤とともに、後述するラジカル発生剤を併用することも好ましい。中性の活性物質であるラジカルは、シラノール基の縮合反応を促進することはないが、(A)成分中にラジカル重合性の官能基を有する場合に、かかる官能基の重合を推進させることができる。従って、放射線硬化性組成物をより効率的に硬化させることができる。
【0048】
〔光酸発生剤の種類〕
光酸発生剤としては、一般式(2)で表される構造を有するオニウム塩(第1群の化合物)や一般式(3)で表される構造を有するスルフォン酸誘導体(第2群の化合物)を挙げることができる。
【0049】
一般式(2) [R2 a 3 b 4 c 5 d W] +m [MZm+n ] -m
〔式中、カチオンはオニウムイオンであり、WはS、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、I、Br、Clまたは−N≡Nであり、R2 、R3 、R4 およびR5 は同一または異なる有機基であり、a、b、cおよびdはそれぞれ0〜3の整数であって、(a+b+c+d)の値はWの価数に等しい。また、Mはハロゲン化物錯体 [MZm+n ] の中心原子を構成する金属またはメタロイドであり、例えばB、P、As、Sb、Fe、Sn、Bi、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coである。Zは、例えばF、Cl、Br等のハロゲン原子またはアリール基であり、mはハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷であり、nはMの原子価である。]
【0050】
一般式(3) QS −〔S(=O)2−R6 t
〔式中、Qは1価もしくは2価の有機基、R6 は炭素数1〜12の1価の有機基、添え字sは0または1、添え字tは1または2である。〕
【0051】
まず、第1群の化合物であるオニウム塩は、光を受けることにより酸性活性物質を放出することができる化合物である。
ここで、一般式(2)におけるアニオン [MZm+n ] の具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4 - )、ヘキサフルオロホスフェート(PF6 - )、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6 - )、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6 - )、ヘキサクロルアンチモネート(SbCl6 - )、テトラフェニルボレート、テトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロメチルフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0052】
また、一般式(2)におけるアニオン [MZm+n ] の代わりに、一般式 [MZn OH- ] で表されるアニオンを使用することも好ましい。さらに、過塩素酸イオン(ClO4 - )、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CF3 SO3 - )、フルオロスルフォン酸イオン(FSO3 - )、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオン等の他のアニオンを有するオニウム塩を使用することもできる。
【0053】
また、第1群の化合物の市販品例を示すと、サンエイドSI−60、SI−80、SI−100、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−L145、SI−L150、SI−L160、SI−L110、SI−L147(以上、三新化学工業(株)製)、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−171(以上、旭電化工業(株)製)、Irgacure 261(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DS−100、DS−101、DAM−101、DAM−102、DAM−105、DAM−201、DSM−301、NAI−100、NAI−101、NAI−105、NAI−106、SI−100、SI−101、SI−105、SI−106、PI−105、NDI−105、BENZOIN TOSYLATE、MBZ−101、MBZ−301、PYR−100、PYR−200、DNB−101、NB−101、NB−201、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−109(以上、ミドリ化学(株)製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬(株)製)、IBPF、IBCF(三和ケミカル(株)製)等を挙げることができる。
【0054】
また、上述した第1群の化合物のうち、より有効なオニウム塩は芳香族オニウム塩であり、特に好ましくは下記一般式(4)で表されるジアリールヨードニウム塩である。
一般式(4) [R7 −Ar1 −I+ −Ar2 −R8 ][Y-
〔式中、R7 およびR8 は、それぞれ1価の有機基であり、同一でも異なっていてもよく、R7 およびR8 の少なくとも一方は炭素数が4以上のアルキル基を有しており、Ar1 およびAr2 はそれぞれ芳香族基であり、同一でも異なっていてもよく、Y- は1価の陰イオンであり、周期律表3族、5族のフッ化物陰イオンもしくは、ClO4 - 、CF3 −SO3 - から選ばれる陰イオンである。]
【0055】
このようなジアリールヨードニウム塩としては、具体的に、(4−n−デシロキシフェニル)フェニルヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウム
ヘキサフルオロアンチモネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウム トリフルオロスルホネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム トリフルオロスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム テトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウム トリフルオロメチルスルフォネート等の1種または2種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0056】
また、ジアリールヨードニウム塩の市販品としては、例えば、サートマー社製のCD1012、三和ケミカル(株)製のIBPF、IBCF、ミドリ化学(株)製のBBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−109等を挙げることができる。
【0057】
さらに、一般式(4)で表されるジアリールヨードニウム塩の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば、J. Polymer Science:Part A:polymer Chemistry,Vol.31, 1473-1482(1993), J. Polymer Science:Part A:polymer Chemistry,Vol.31, 1483-1491(1993)において記述されている方法により製造することができる。
【0058】
次に、第2群の化合物について説明する。一般式(3)で表されるスルフォン酸誘導体の例を示すと、ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類、1−オキシ−2−ヒドロキシ−3−プロピルアルコールのスルホネート類、ピロガロールトリスルホネート類、ベンジルスルホネート類を挙げることができる。
また、一般式(3)の中でより好ましくはイミドスルホネート類であり、さらに好ましくはイミドスルホネートのうち、トリフルオロメチルスルホネート誘導体である。
【0059】
また、このようなスルホネート類の具体例を挙げると、ジフェニルジスルホン、ジトシルジスルホン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(クロルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシリルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)メタン、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド メチルスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド トシルスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド トリフルオロメチルスルホネート、1,8−ナフタレンジカルボン酸イミド カンファースルホネート、コハク酸イミド フェニルスルホネート、コハク酸イミド トシルスルホネート、コハク酸イミド トリフルオロメチルスルホネート、コハク酸イミド カンファースルフォネート、フタル酸イミド トリフルオロスルホネート、シス−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸イミド トリフルオロメチルスルホネート、ベンゾイントシラート、1,2−ジフェニル−2−ヒドロキシプロピル トシラート、1,2−ジ(4−メチルメルカプトフェニル)−2−ヒドロキシプロピル トシラート、ピロガロール メチルスルホネート、ピロガロール エチルスルホネート、2,6−ジニトロフェニルメチル トシラート、オルト−ニトロフェニルメチル トシラート、パラ−ニトロフェニル トシラートを挙げることができる。
【0060】
〔光酸発生剤の添加量〕
放射線硬化性組成物における光酸発生剤の含有割合は、特に制限されるものではないが、(A)成分100重量部に対して、通常0.1〜15重量部の範囲内の値とするのが好ましい。光酸発生剤の添加量が0.1重量部未満となると、放射線硬化性が低下し、十分な硬化速度が得られない傾向がある。一方、光酸発生剤の添加量が15重量部を超えると、得られる硬化物の耐候性や耐熱性が低下する傾向がある。
したがって、放射線硬化性と得られる硬化物の耐候性等とのバランスがより良好な観点から、光酸発生剤の添加量を、(A)成分100重量部に対して1〜10重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0061】
(3)脱水剤
〔定義〕
放射線硬化性組成物における脱水剤は、化学反応により水以外の物質に変換する化合物、物理吸着または包接により、放射線硬化性および保存安定性に影響を与えなくする化合物と定義される。
すなわち、このような脱水剤を含有することにより、放射線硬化性組成物の耐候性や耐熱性を損なうことなく、保存安定性や放射線硬化性という相反する特性を向上させることができる。この理由は必ずしも明確でないが、外部から侵入してくる水を、脱水剤が有効に吸収するために放射線硬化性組成物の保存安定性が向上し、一方、放射線硬化反応である縮合反応においては、生成した水を順次に脱水剤が有効に吸収するために放射線硬化性組成物の放射線硬化性が向上するものと考えられる。
【0062】
〔脱水剤の種類〕
脱水剤は、カルボン酸エステル、アセタール類(ケタール類を含む。)、およびカルボン酸無水物からなる群から選択される少なくとも一つの有機化合物である。これらの脱水剤は、優れた脱水効果を示し、少量の添加で脱水剤の機能を効率的に発揮することができる。
【0063】
また、脱水剤としてのカルボン酸エステルは、カルボン酸オルトエステルやカルボン酸シリルエステル等の中から選ばれる。
ここで、好ましいカルボン酸オルトエステルとしては、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、オルト蟻酸プロピル、オルト蟻酸ブチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルト酢酸プロピル、オルト酢酸ブチル、オルトプロピオン酸メチルおよびオルトプロピオン酸エチル等が挙げられる。また、これらのカルボン酸オルトエステルのうち、より優れた脱水効果を示し、保存安定性や放射線硬化性をより向上させることができる観点から、オルト蟻酸エステルが脱水剤として特に好ましい。
また、好ましいカルボン酸シリルエステルとしては、酢酸トリメチルシリル、酢酸トリブチルシリル、蟻酸トリメチルシリル、シュウ酸トリメチルシリル等が挙げられる。
【0064】
なお、カルボン酸エステルのうち、カルボン酸オルトエステルを使用することがより好ましい。カルボン酸オルトエステルは、効率的に水を吸収し、自身で加水分解することができる。また、カルボン酸オルトエステルが加水分解して生成する化合物は中性である。したがって、カルボン酸オルトエステルは、優れた脱水効果を示し、保存安定性や放射線硬化性をより向上させることができる。
【0065】
また、好ましいアセタール類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド等のケトン類と、1価アルコールとの反応物であるジメチルアセタール、ジエチルアセタールおよびジプロピルアセタール、あるいは、エチレングリコール等の2価アルコールとケトン類とからなるアセタールおよびカルボン酸エステルのシリル化反応により製造されるケテンシリルアセタール類を挙げることができる。
【0066】
そして、これらのアセタール類のうち、アセトンジメチルアセタール、アセトンジエチルアセタール、メチルエチルケトンジメチルアセタール、メチルエチルケトンジエチルアセタール、シクロヘキサノンジメチルアセタールおよびシクロヘキサノンジエチルアセタールは、特に優れた脱水効果を示し、保存安定性や放射線硬化性をより向上させることができる観点から本発明における脱水剤としての使用に好ましい。
【0067】
また、好ましいカルボン酸無水物としては、例えば、蟻酸無水物、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、安息香酸無水物、酢酸安息香酸無水物等が挙げられる。特に、無水酢酸および無水コハク酸は、脱水効果に特に優れており、好ましい。
【0069】
〔脱水剤の性状〕
次に、脱水剤の性状について説明する。まず、脱水剤は、常温、常圧条件において、固体もしくは液体であり、放射線硬化性組成物中に溶解または分散して、脱水効果を発揮する化合物から選ばれる。
また、有機化合物よりなる脱水剤は、その沸点(常圧条件下)が40〜200℃の範囲内の値のものである。沸点がこのような範囲内の値であれば、室温(25℃)〜200℃の乾燥条件で効率的に揮発させることができる。したがって、脱水剤を除去することが容易である。
【0070】
〔脱水剤の添加量〕
放射線硬化性組成物における脱水剤の含有割合は特に制限されるものではないが、(A)成分100重量部に対して、通常、0.1〜100重量部の範囲内の値とするのが好ましい。脱水剤の添加量が0.1重量部未満となると、添加効果の発現に乏しい傾向があり、また、保存安定性や放射線硬化性の向上効果が低い傾向がある。一方、脱水剤の添加量が100重量部を超えると、保存安定性や放射線硬化性の向上効果が飽和する傾向がある。
したがって、より好ましくは、脱水剤の添加量は(A)成分100重量部に対して0.5〜50重量部の範囲内の値であり、さらに好ましくは、1〜10重量部の範囲内の値である。
【0071】
(4)添加剤等
本発明で使用される放射線硬化性組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、ラジカル性光重合開始剤、光増感剤、反応性希釈剤、シリカ粒子、有機溶剤等の添加剤等を更に含有させることができる。
【0072】
〔ラジカル性光重合開始剤〕
本発明で使用される放射線硬化性組成物において、光酸発生剤と併用してラジカル性光重合開始剤(ラジカル発生剤)を配合してもよい。ラジカル発生剤は、紫外線等の放射線を受けることにより分解してラジカルを発生させ、このラジカルによってラジカル重合性基を重合反応させる化合物である。
【0073】
このようなラジカル発生剤としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4' −ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3' −ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン系化合物、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−2−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリ−メチルペンチルフォスフィンオキサイド、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3',4,4' −テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)等が挙げられる。なお、かかるラジカル発生剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
〔光増感剤〕
本発明で使用される放射線硬化性組成物において、光酸発生剤と併用して光増感剤を配合してもよい。光増感剤は、光等のエネルギー線を吸収し、光酸発生剤の感度を向上させる化合物である。
【0075】
このような光増感剤としては、チオキサントン、ジエチルチオキサントンおよびチオキサントンの誘導体;アントラキノン、ブロムアントラキノンおよびアントラキノンの誘導体;アントラセン、ブロムアントラセンおよびアントラセン誘導体;ペリレンおよびペリレンの誘導体;キサンテン、チオキサンテンおよびチオキサンテンの誘導体;クマリンおよびケトクマリン等を挙げることができる。また、これらの光増感剤中で、より好ましい化合物はジエチルチオキサントンおよびブロムアントラセンである。
【0076】
〔反応性希釈剤〕
本発明で使用される放射線硬化性組成物に、反応性希釈剤を添加(配合)することにより、得られる硬化膜の硬化収縮を低減したり、硬化膜の機械的強度を制御することができる。さらに、ラジカル重合性の反応性希釈剤を用いた場合には、さらにラジカル発生剤を添加することにより、放射線硬化性組成物の光反応性を調節することができる。また、カチオン重合性の反応性希釈剤を用いた場合には、光反応性や機械的特性を調節することができる。
【0077】
〔反応性希釈剤の種類〕
反応性希釈剤としては、カチオン重合性モノマーおよびエチレン性不飽和モノマーあるいはいずれか一方のモノマーを配合することが好ましい。
ここで、反応性希釈剤であるカチオン重合性モノマーとは光酸発生剤の存在下で光照射することにより重合反応や架橋反応を起こす有機化合物と定義される。したがって、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応生成物であるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、ビニル化合物等を挙げることができる。これらのカチオン重合性モノマーは、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0078】
また、上述したカチオン重合性モノマーとしてのエポキシ化合物は、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4' −エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4' −エポキシ−6' −メチルシクロヘキサンカルボキシルレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類;エポキシ化大豆油;エポキシステアリン酸ブチル;エポキシステアリン酸オクチル;エポキシ化アマニ油;エポキシ化ポリブタジエン等を例示することができる。
【0079】
また、他のカチオン重合性モノマーとしては、トリメチレンオキシド、3,3−ジメチルオキセタン、3,3−ジクロロメチルオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン、ビス(3−エチル−3−メチルオキシ)ブタン等のオキセタン類;テトラヒドロフラン、2,3−ジメチルテトラヒドロフラン等のオキソラン類;トリオキサン、1,3−ジオキソラン、1,3,6−トリオキサンシクロオクタン等の環状アセタール類;β−プロピオラクトン、ε−カプロラクトン等の環状ラクトン類;エチレンスルフィド、1,2−プロピレンスルフィド、チオエピクロロヒドリン等のチイラン類;3,3−ジメチルチエタン等のチエタン類;エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のビニルエーテル類;エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル類;ビニルシクロヘキサン、イソブチレン、ポリブタジエン等のエチレン性不飽和化合物類;上記の各化合物の誘導体等を例示することができる。
【0080】
また、上述したカチオン重合性モノマーのうち、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4' −エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0081】
また、特に好ましいカチオン重合性モノマーは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4' −エポキシシクロヘキサンカルボキシルレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等、1分子中に2個以上の脂環式エポキシ基を有するエポキシ化合物である。
【0082】
なお、上述したカチオン重合性モノマーは、UVR−6100、UVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6200、UVR−6216(以上、ユニオンカーバイド社製)、セロキサイド2021、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、セロキサイド2000、セロキサイド3000、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、サイクロマーM100、エポリードGT−300、エポリードGT−301、エポリードGT−302、エポリードGT−400、エポリード401、エポリード403(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2100、KRM−2110、KRM−2199、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2200、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製),Rapi−Cure DVE−3、CHVE、PEPC(以上、ISP社製)、VECTOMER 2010、2020、4010、4020(以上、アライドシグナル社製)等の市販品として容易に入手することができる。
【0083】
次に、反応性希釈剤としてのエチレン性不飽和モノマーを説明する。ここで、エチレン性不飽和モノマーとはエチレン性不飽和結合(C=C)を分子中に有する化合物であり、1分子中に1個のエチレン性不飽和結合を有する単官能モノマー、および1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能モノマーと定義することができる。
【0084】
したがって、エチレン性不飽和モノマーである単官能性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレートを例示することができる。
【0085】
また、これらのアクリレートのうちで、放射線硬化性を低下させない観点からアミドやアミン構造を含まないアクリレートが好ましく、さらには、耐候性を確保する目的で芳香環を含有しないアクリレートが好ましい。
これらのアクリレートとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0086】
また、これらのエチレン性不飽和モノマーである単官能性モノマーとしては、例えばアロニックスM−101、M−102、M−111、M−113、M−117、M−152、TO−1210(以上、東亞合成(株)製)、カヤラッド
TC−110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬(株))、ビスコート192、ビスコート220、ビスコート2311HP、ビスコート2000、ビスコート2100、ビスコート2150、ビスコート8F、ビスコート17F(以上、大阪有機化学工業(株)製)等の市販品として、容易に入手することができる。
【0087】
また、エチレン性不飽和モノマーである多官能性モノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等を例示することができる。
【0088】
これらのアクリレート等の中でも、放射線硬化性を低下させない観点からアミドやアミン構造を含まないアクリレートが好ましく、また、耐候性を確保する目的で芳香環を含有しないアクリレートが好ましい。したがって、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0089】
これらのエチレン性不飽和モノマーである多官能性モノマーは、例えばSA1002(三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等の市販品として、容易に入手することができる。
【0090】
また、エチレン性不飽和モノマーである単官能モノマーおよび多官能モノマーは、各々1種単独でまたは2種以上組み合わせるか、あるいは単官能モノマーの少なくとも1種と多官能モノマーの少なくとも1種とを組み合わせて構成することが好ましい。
このような重合性基が3官能以上の多官能モノマーとしては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物の中から選択することができる。これらのうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0091】
〔シリカ粒子〕
本発明で使用される放射線硬化性組成物に、シリカ粒子を添加(配合)することにより、得られる硬化膜の硬化収縮を低減することができる。ここに、シリカ粒子の添加量は、特に制限されるものではないが、例えば(A)成分100重量部に対して10〜250重量部の範囲内とすることが好ましく、特に20〜200重量部、更に30〜150重量部であることが好ましい。
【0092】
シリカ粒子の種類
使用するシリカ粒子は、シリカを主成分とする粒子であればよく、シリカ以外の他の成分を含んでいてもよい。そのようなシリカ以外の成分としてはアルカリ金属酸化物、アルカリ土類酸化物、およびTi、Zr、Al、B、Sn、P等の酸化物を挙げることができる。
また、シリカ粒子の平均粒子径は0.001〜20μmの範囲内の値とするのが好ましいが、特に透明な硬化膜が形成される点から、平均粒子径を0.001〜0.2μmの範囲内の値とするのが好ましく、より好ましくは0.001〜0.01μmの範囲内の値とすることである。
【0093】
また、シリカ粒子の屈折率(温度25℃、Na−D線、以下、同様)と、放射線硬化性組成物の屈折率との差を、0.02(−)以下とするように、シリカ粒子を選択することが好ましい。屈折率差を、このような値とすることにより、硬化膜の透明性をより高めることができる。
また、シリカ粒子の比表面積を、0.1〜3000m2 /gの範囲内の値とするのが好ましく、より好ましくは10〜1500m2 /gの範囲内の値とすることである。
さらに、シリカ粒子の形状も特に制限されるものではないが、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状もしくは不定形状の群から選ばれる少なくとも一つの形状であることが好ましい。但し、分散性がより良好な観点から、球状のシリカ粒子を使用することがより好ましい。
シリカ粒子の使用方法は特に制限されるものではないが、例えば、乾燥状態で使用することができるし、あるいは水もしくは有機溶剤に分散した状態で使用することもできる。
【0094】
また、コロイダルシリカとして業界に知られている微粒子状のシリカ粒子の分散液を直接用いることもできる。そして、特に高い透明性が得られることから、コロイダルシリカの使用が好ましい。
ここで、コロイダルシリカの分散溶媒が水の場合、その水素イオン濃度はpH値として2〜13の範囲内の値であることが好ましく、3〜7の範囲内の値であることがより好ましい。
また、コロイダルシリカの分散溶媒が有機溶剤の場合、有機溶剤としてメタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド等を使用することができ、もしくくはこれらと相溶する有機溶剤または水との混合物として用いてもよい。好ましい分散溶剤としてはメタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン、キシレン等である。
【0095】
シリカ粒子として市販されている商品としては、例えばコロイダルシリカとしては、メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL(以上、日産化学工業(株)製)等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、AEROSIL130、AEROSIL300、AEROSIL380、AEROSILTT600、AEROSILOX50(以上、日本アエロジル(株)製)、シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株)製)、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を挙げることができる。
【0096】
〔有機溶媒〕
本発明で使用される放射線硬化性組成物には、必要に応じて有機溶媒を配合することができる。かかる有機溶媒は(A)成分の加水分解性シラン化合物の加水分解物又は縮合物を製造する際に添加してもよく、あるいは、(A)成分〜(C)成分を配合する際に加えてもよい。
【0097】
このような有機溶媒としては、本発明の目的、効果を損なわない範囲で選ぶことができるが、通常、大気圧下での沸点が50〜200℃の範囲内の値を有する有機化合物であり、各成分を均一に溶解させる有機化合物が好ましい。
好ましい有機溶媒を示すと、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることが可能である。
これらの中で、より好ましい有機溶媒を示すと、アルコール類、エーテル類、ケトン類を挙げることができる。さらに好ましくは、アルコール類、ケトン類である。
【0098】
特に本発明においては、放射線硬化性組成物を塗布するためにスピンコート法を用いることが好ましいが、スピンコートに適した塗布液が得られる観点からは、有機溶媒として、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;乳酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルなどのジエチレングリコール類;メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトンなどのケトン類を用いることが好ましく、特にエチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メチルイソブチルケトンおよびメチルアミルケトンが好ましい。
【0099】
〔その他〕
本発明で使用される放射線硬化性組成物には、さらに必要に応じて各種の添加剤を含有することができる。
このような添加剤としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリクロロプレン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂、フッ素系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリスルフィド系ポリマー等の有機樹脂(ポリマー)あるいはオリゴマー、もしくはこれらの有機樹脂あるいはオリゴマーが加水分解性シリル基で置換された化合物が挙げられる。
また、その他の添加剤として、フェノチアジン、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤;重合開始助剤;レベリング剤;濡れ性改良剤;界面活性剤;可塑剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;帯電防止剤;シランカップリング剤;無機充填剤等を挙げることもできる。
【0100】
〔放射線硬化性組成物の調製および性状〕
光導波路を構成する下部クラッド層、コア部分および上部クラッド層を形成するための放射線硬化性組成物、すなわち下層用組成物、コア用組成物および上層用組成物は、それぞれ、上述した加水分解性シラン化合物や脱水剤等を、常法にしたがって混合撹拌することにより、製造することができる。
下層用組成物、コア用組成物および上層用組成物としては、それぞれ、最終的に得られる各部の屈折率の関係が、光導波路に要求される条件を満足することとなるよう、互いに異なる放射線硬化性組成物を用いることができるが、下層用組成物と上層用組成物とは同一の放射線硬化性組成物であってもよく、通常は同一の組成物であることが種々の点から好ましい。
【0101】
上述の放射線硬化性組成物は、その(A)成分である加水分解性シラン化合物および/またはその加水分解物の種類を選ぶことにより、異なる屈折率を有する硬化膜を形成するものとなる。従って、屈折率の差が適宜の大きさとなるような2種または3種の放射線硬化性組成物を用い、最も高い屈折率の硬化膜を与える放射線硬化性組成物をコア用組成物とし、他の放射線硬化性組成物を下層用組成物および上層用組成物として用いればよい。
【0102】
各放射線硬化性組成物の粘度は、5〜10000cps(25℃)の範囲内の値であることが好ましい。粘度がこれらの範囲を超えると、均一な塗膜を形成することが困難となる傾向がある。なお、放射線硬化性組成物の粘度は、反応性希釈剤や有機溶媒の配合量によって、適宜調整することができる。
【0103】
既述のように、本発明においては、基板上に下部クラッド層が形成され、その上にコア部分が形成され、更に上部クラッド層が形成されることにより、目的とする光導波路が製造されるが、各クラッド層およびコア部分の形成においては、放射線硬化性組成物の塗布および乾燥による薄膜の形成、並びにこの薄膜に対する放射線の照射による硬化が行われる点で共通である。但し、コア部分の形成では、薄膜に対する放射線の照射が所定のパターンに従って行われ、未硬化の部分が除去される操作が行われる点で異なる。
【0104】
放射線硬化性組成物の塗布する手段としては、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、カーテンコート法、グラビア印刷法、シルクスクリーン法、またはインクジェット法等の方法を用いることができる。このうち、特にスピンコート法が好ましい。
また、放射線硬化性組成物のレオロジー特性を、実際の塗布手段に適したものとするために、各種レベリング剤、チクソ付与剤、フィラー、有機溶媒、界面活性剤等を、必要に応じて配合することができる。
【0105】
放射線硬化性組成物の塗布により形成された塗布膜は、50〜90℃の温度で乾燥させ、あるいは必要に応じてさらに60〜120℃に加熱してプレベークすることにより、薄膜が形成される。プレベークのための加熱の条件は、用いる放射線硬化性組成物の各成分の種類、配合割合などによっても異なるが、通常60〜120℃で10〜600秒間程度である。
【0106】
形成された薄膜は、これに放射線が照射されることにより、硬化される。下部クラッド層および上部クラッド層の形成では、薄膜の全面に放射線が照射され、その全体が硬化される。
ここに、放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等を用いることができるが、既述のように、特に紫外線が好ましい。そして、紫外線を照射する手段としては、特に制限されるものではなく、種々の手段を利用することができる。例えば、光源としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマランプ等の紫外線光源ランプを用いることができる。
薄膜に照射される放射線は、波長200〜390nm、照度が1〜500mW/cm2 のものを所定時間照射することにより照射量が10〜5000mJ/cm2 となるようにすることが好ましい。
【0107】
コア部分を形成するためのコア用薄膜に対する放射線の照射は、所定のパターンに従って行われ、その後、現像液により現像することにより、未硬化の不要な部分が除去され、これによってコア部分が形成される。
所定のパターンに従って放射線の照射を行う方法としては、所定のパターンのマスク孔を有するフォトマスクを用いる方法に限られず、例えば液晶表示装置と同様の原理を利用した、所定のパターンに従って放射線透過領域と放射線不透過領域とよりなるマスク像を電気光学的に形成する手段を利用する方法、多数の光ファイバーを束ねてなる導光部材を用い、この導光部材における所定のパターンに対応する光ファイバーを介して放射線を照射する方法、レーザ光、あるいはレンズ、ミラー等の集光性光学系により得られる収束性放射線を走査させながら放射線硬化性組成物に照射する方法を用いることもできる。
【0108】
このようにして所定のパターンに従って選択的に硬化させた薄膜に対しては、硬化部分と未硬化部分との溶解性の差異を利用して、適宜の有機溶媒あるいはアルカリ現像液によって現像処理することにより、未硬化部分を除去し硬化部分を残存させることができ、これにより、コア部分が形成される。
【0109】
ここに、現像液としては、放射線硬化性組成物の調製に用いられるものとして前述した有機溶媒、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、N−メチルピロリドン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノナンなどのアルカリ類からなるアルカリ水溶液を用いることができる。このアルカリ水溶性の濃度は、通常0.1〜2.5重量%、好ましくは0.2〜0.5重量%である。また上記アルカリ水溶液に、メタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒、界面活性剤などを適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0110】
現像時間は、通常30〜180秒間であり、また現像方法は液盛り法、ディッピング法などのいずれでもよい。現像液として有機溶媒を用いた場合はそのまま風乾することにより、また、アルカリ水溶液を用いた場合には流水洗浄を30〜90秒間行い、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって表面上の水分を除去することにより、パターン状被膜が形成される。続いてホットプレート、オーブンなどの加熱装置により、所定温度、例えば150〜250℃で、所定時間、例えばホットプレート上で5〜30分間、オーブン中では30〜90分間加熱処理することによって、パターニングされた架橋被膜よりなるコア部分が形成される。
【0111】
また、放射線の照射によって得られる硬化膜は、必要に応じて、さらに加熱することができる。この場合の加熱は、通常、室温から基板や薄膜の分解開始温度以下の温度で、例えば5分間〜72時間、行えばよい。このように、放射線硬化後にさらに加熱することにより、硬度および耐熱性に優れたコア部分を得ることができる。この後加熱は、下部クラッド層および上部クラッド層の形成においても行うことができる。
以上のようにして、微細にパターン化されたコア部分が、下部クラッド層とこれに積重された上部クラッド層との内部に埋設された状態で形成され、これにより光導波路が得られる。
【0112】
而して、本発明によれば、コア部分を形成するために、特定の加水分解性シラン化合物および/またはその加水分解物を含有してなる放射線硬化性組成物を用いるため、所定のパターンに従う放射線の照射により、きわめて容易にかつ短時間の処理でコア部分を形成することができると共に、得られるコア部分はポリシロキサンを主成分とするものであるために高い透明性を有するものとなり、得られる光導波路は、導波路損失が小さく、しかも大きな耐熱性を有するものとなる。
【0113】
更に、下部クラッド層および上部クラッド層も、上記のコア部分のための組成物と同様の組成成分による放射線硬化性組成物によって形成することができ、この場合には、必要とされる操作は、当該放射線硬化性組成物の塗布および放射線の照射のみであるため、塗布装置および放射線照射装置、その他の処理装置として、コア部分の形成に供したものをそのまま共通に使用することができ、その結果、全体として、きわめて簡単に、非常に低いコストで目的とする光導波路を製造することができる。
【0114】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔ポリシロキサン溶液の調製〕
ポリシロキサン溶液1
撹拌機付の容器内に、フェニルトリメトキシシラン(23.3g、0.12モル)と、メチルトリメトキシシラン(61.6g、0.43モル)と、電気伝導率が8×10-5S・cm-1のイオン交換水(15.7g、0.87モル)とを収容した後、温度60℃、6時間の条件で加熱撹拌することにより、フェニルトリメトキシシランとメチルトリメトキシシランの加水分解を行った。次いで、メチルイソブチルケトン(MIBK)を滴下しながら、加水分解により副生したメタノールを蒸留除去した。そして、最終的に固形分を40重量%に調整したポリシロキサンを含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。これを「ポリシロキサン溶液1」とする。
【0115】
ポリシロキサン溶液2
撹拌機付の容器内に、メチルトリメトキシシラン(80.0g、0.558モル)と、電気伝導率が8×10-5S・cm-1のイオン交換水(16.0g、0.889モル)とを収容した後、温度60℃、6時間の条件で加熱撹拌することにより、メチルトリメトキシシランの加水分解を行った。MIBKを滴下しながら、加水分解により副生したメタノールを蒸留除去した。そして、最終的に固形分を40重量%に調整したポリシロキサンを含有するメチルイソブチルケトン溶液を得た。これを「ポリシロキサン溶液2」とする。
【0116】
〔放射線硬化性組成物の調製〕
放射線硬化性組成物A(コア用組成物)
ポリシロキサン溶液1(固形分および溶剤)100重量部に対し、光酸発生剤(サートマー社製、CD1012)を1.0重量部、脱水剤としてオルト蟻酸メチル3.0重量部をそれぞれ添加し、均一に混合することにより、放射線硬化性組成物Aを得た。
放射線硬化性組成物B(下層用組成物および上層用組成物)
ポリシロキサン溶液2(固形分および溶剤)100重量部に対し、光酸発生剤(サートマー社製、CD1012)を1.0重量部、脱水剤としてオルト蟻酸メチル3.0重量部をそれぞれ添加し、均一に混合することにより、放射線硬化性組成物Bを得た。
【0117】
〔実施例1〕
放射線硬化性組成物Bをシリコン基板の表面上にスピンコータで塗布し、70℃で10分間乾燥させた後、波長365nm、照度200mW/cm2 の紫外線を5秒間照射することにより、厚み10μmの下部クラッド層を形成した。この下部クラッド層の波長1550nmの光の屈折率は1.423であった。
次に、放射線硬化性組成物Aを下部クラッド層の上にスピンコータで塗布し、70℃で10分間乾燥させた後、幅4〜20μmの光導波路パターンを刻んだフォトマスクを用いて、波長365nm、照度200mW/cm2 の紫外線を5秒間照射することにより、露光を行った。その後、この基板をエタノールよりなる現像液中に浸漬して未露光部を溶解し、厚み7μmのコア部分を形成した。このコア部分の波長1550nmの光の屈折率は1.452であった。
さらに、このコア部分を有する下部クラッド層の上面に、放射線硬化性組成物Bをスピンコータで塗布し、70℃で10分間乾燥させた後、波長365nm、照度200mW/cm2 の紫外線を5秒間照射することにより、厚み15μmの上部クラッド層を形成し、これにより、光導波路を製造した。形成された上部クラッド層の波長1550nmの光の屈折率は1.423であった。
【0118】
このようにして得られた光導波路について、波長1300nmの光を導波路の一端から入射させたときに他端から出射する光量を測定することにより、導波路損失を求めたところ、0.1dB/cm以下であった。
また、得られた光導波路を150℃で5000時間加熱した後、上記と同様にして導波路損失を測定したところ0.1dB/cm以下であり、熱劣化は認められず、優れた耐熱性を有することが確認された。
【0119】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、可視域から赤外域にわたる光についての導波路損失が低く、しかも耐熱性に優れた光導波路を、短時間でかつ簡単なプロセスで製造することができる方法を提供することができ、また、当該方法で製造された、光通信システムなどに好適な光導波路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法によって製造される光導波路の基本的構成を示す説明用断面図である。
【図2】(イ)〜(ホ)は、本発明の光導波路の製造方法の一例を工程順に示す説明用断面図である。
【符号の説明】
10 光導波路
12 基板
13 下部クラッド層
15 コア部分
14 コア用薄膜
17 上部クラッド層
18 フォトマスク

Claims (4)

  1. 基板と、この基板上に形成された下部クラッド層と、この下部クラッド層上に形成されたコア部分と、このコア部分および下部クラッド層上に形成された上部クラッド層とよりなる光導波路の製造方法であって、
    下部クラッド層、コア部分および上部クラッド層の少なくとも一つを、下記(A)〜(C)成分を含有する放射線硬化性組成物を塗布して放射線の照射により硬化させることを含む手段により形成することを特徴とする光導波路の製造方法。
    (A)一般式(1)で示される加水分解性シラン化合物の加水分解物および当該加水分解物の縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物
    一般式(1) (R1)p Si(X)4-p
    〔式中、R1 は炭素数が1〜12である非加水分解性の有機基、Xは加水分解性基、およびpは0〜3の整数である。〕
    (B)光酸発生剤
    (C)カルボン酸エステル、アセタール類(ケタール類を含む。)およびカルボン酸無水物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物であって、常圧における沸点が40〜200℃の範囲である有機化合物よりなる脱水剤
  2. コア部分を形成するための放射線硬化性組成物を塗布して得られる薄膜に、所定のパターンに従って放射線を照射した後、未露光部を除去することにより、コア部分を形成することを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方法。
  3. コア部分を形成するための放射線硬化性組成物は、これにより形成されるコア部分の屈折率が、下部クラッド層および上部クラッド層の屈折率より高いものとなる放射線硬化性組成物であることを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路の製造方法。
  4. 一般式(1)におけるR1 がラジカル重合性基またはカチオン重合性基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
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