JP3861424B2 - 成形材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フィルム剥離性、貯蔵安定性に優れる加熱による増粘を利用した成形材料の製造方法、特にシートモールディングコンパウンドおよびバルクモールディングコンパウンドの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱硬化性樹脂を繊維強化材で補強したいわゆるFRPは、漁船、ボート、タンク、パイプ、工業部材、住設部材等の多方面において使用されている。また、成形方法として作業効率、作業環境の点から、シートモールディングコンパウンド(以下SMCと略記)およびバルクモールディングコンパウンド(以下BMCと略記)が広く用いられている。
【0003】
SMCは1970年代の初期に実用化され、工業用部品、自動社用部品、浴槽等の多方面に需要が拡大している。SMCは強化短繊維とマトリックス樹脂から構成され、強化短繊維に樹脂組成物を含浸させてシート状にしたものをBステージ化する事により製造される。BMCの場合、シート状にせずバルク状のままBステージ化し製造される。SMCおよびBMCに使用されるマトリックス樹脂としては、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などがある。その中で不飽和ポリエステルは一般的で、その増粘には酸化マグネシウムなどの金属酸化物が一般に用いられている。増粘には不飽和ポリエステル中のカルボキシル基が必要であることはよく知られている。しかし、この増粘方法は極めて空気中の水分に敏感であり、混合直後から粘度が上昇し、作業性が悪く、かつ増粘度の制御は非常に難しい。
【0004】
一方、耐疲労性、耐熱性に優れた特徴を有するエポキシ樹脂は、その特徴から広い分野でSMCやBMCとして使用する検討が進められている。通常エポキシ樹脂はカルボキシル基を有しておらず、上記の不飽和ポリエステルと同様の増粘方法はできない。また、無水マレイン酸などの酸無水物と側鎖の水酸基を反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入することも可能であるが、その増粘には上記した欠点を有する酸化マグネシウムを用いる方法となる。そこで、エポキシ樹脂を主成分とするSMCおよびBMCのマトリックスについては、水酸基とイソシアネートを反応させ、増粘させる例が特開昭58−191723号公報、特開平2−235919号公報、特開平4−88011号公報、特開平5−320303号公報、特開平6−166742号公報などに記載されている。また、エポキシと硬化剤であるアミンあるいは酸無水物と一部反応させ増粘させる方法もとられるが、いずれも化学反応を利用するため、その制御は困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、エポキシ樹脂の特徴を損なうことなく増粘させることができ、かつ酸化マグネシウム、イソシアネートによる増粘以外の方法で、簡便にかつ制御しやすい増粘方法を用いてフィルム剥離性、貯蔵安定性に優れたエポキシ成形材料、特にSMC又はBMCの製造方法にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題について鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、成形材料の製造方法において、常温で液状のエポキシ樹脂(A)、エポキシ硬化剤(B)、コア層とシェル層とで構成される熱可塑性樹脂粉末であり、コア層がアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの中から選ばれた少なくとも1種の単量体を用いるアクリル系重合体であり、シェル層がN−置換アクリルアミド、アクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系単量体とラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体、遊離カルボキシル基を有する単量体から選ばれる2種以上の単量体を用いるものであり、ラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体をコア/シェル型共重合体中0.5%を超えないで用いるアクリル系共重合体からなる樹脂粉末を有効成分とする増粘剤(C)からなるコンパウンドを45℃〜160℃の加熱によって増粘させることを特徴とする成形材料の製造方法、好ましくは成形材料が、シートモールディングコンパウンド又はバルクモールディングコンパウンドである成形材料の製造方法を提供するものである。
【0008】
次に本発明を詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の成形材料とは、制御が容易でかつ貯蔵安定性に優れた好ましくは型内で加熱加圧される材料であり、さらに好ましくはSMC又はBMCである。
【0010】
本発明で使用される常温で液状のエポキシ樹脂(A)とは、1分子中に1個以上のエポキシ基を有する液状樹脂であれば何でもよく、固体のエポキシ樹脂でも液体エポキシ樹脂に溶解して使用することができる。その例としては、通常のビスフェノールAとエピクロルヒドリンの縮合物、ビスフェノールFとエピクロルヒドリンの縮合物のようなジグリシジルエーテル、脂肪族のグリシジルエーテル、脂環式エポキサイド、フタル酸誘導体とエピクロルヒドリンの縮合物のようなジグリシジルエステル、ヒダントイン系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、NBR変性エポキシ樹脂およびウレタン変性エポキシ樹脂などがあげられ、単体でまたは2種以上を混合して使用する事ができる。
【0011】
エポキシ用硬化剤(B)としては、好ましくは加熱活性型硬化剤が用いられ、加熱により硬化作用を発揮する硬化剤で、例えば、ジシアンジアミド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2−n−ペンタデシルイミダゾールのようなイミダゾール誘導体、イソフタル酸ジヒドラジド、N,N’−ジアルキル尿素誘導体、N,N’−ジアルキルチオ尿素誘導体、メラミン、グアナミンなどがあげられる。これらは、使用するエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量、硬化条件により配合されるが、好ましくはエポキシ樹脂(A)100重量部に対して1〜15重量部添加して用いる。
【0012】
前記イミダゾール誘導体、N,N’−ジアルキル尿素誘導体、アルキルアミノフェノール誘導体などは、促進剤としても使用できる。硬化剤および促進剤の硬化に必要充分な配合量は予め試験することによって容易に決定される。
【0013】
熱可塑性樹脂粉末を有効成分とする増粘剤(C)とは、増粘効果がある熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体、ポリスチレン、ポリプロピレンなどを用いることができる。好ましくはコア層とシェル層で構成される熱可塑性樹脂粉末を有効成分とするものである。更に好ましくはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ジエン系単量体およびこれらと共重合可能な単量体の中から選ばれた少なくとも1種の単量体単位を含有する樹脂粉末である。
【0014】
この(C)成分に用いるアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、メチルメタクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシルメタクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、などがあげられる。
【0015】
又、ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどの共役ジエン系化合物、1,4−ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンなどの非共役ジエン系化合物などがあげられる。
【0016】
これらと共重合可能な単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−t−ブチルスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系化合物、メタアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、などのメタクリルアミド系化合物およびグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルアクリレートなどをあげることができる。好ましくは前記の芳香族ビニル化合物である。
【0017】
上記単量体成分の中から選ばれた1種以上の単量体をコア層とし、シェル層には2種以上の単量体を用いる。また、シェル層にはエポキシ樹脂に対し、加温によって溶解性を発現する構造とするため、N−置換アクリルアミド、アクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系単量体とラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体、遊離カルボキシル基を有する単量体を共重合させる。
【0018】
N−置換アクリルアミドとしては、例えば、N−アクリロイルピロリジン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ドデシルアクリルアミドなどを用いることができる。
【0019】
アクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系単量体とラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートヘキサンジオールジアクリレート、オリゴエチレンジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、オリゴエチレンジメタクリレート、ジビニルベンゼンなどの芳香族ジビニル単量体、トリメリット酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレートなどが例示される。該架橋性単量体量は、コア/シェル型共重合体中0.5%を超えてはならない。なぜなら、架橋度が高すぎ、マトリックスであるエポキシ樹脂に膨潤しないためである。
【0020】
遊離カルボキシル基を有する単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸などの不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸などのジカルボン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチルなどの不飽和ジカルボン酸のモノエステルなどが例示される。
【0021】
本発明で使用するコア層/シェル層を有する樹脂粉末、即ち粒子状共重合体の製造方法は、格別限定されるものではないが、通常は少なくとも2段階の連続した多段シード乳化重合により製造する。すなわち、第1段目にコア層成分となる単量体を、乳化剤の存在下重合開始剤として過酸化物開始剤、レドックス開始剤などのラジカル重合開始剤を用いて乳化重合を行いコア層成分を含有するシードラテックスを得る。次いで第2段目としてシェル層成分の単量体を、第1段目で得られたコア層成分を含有するシードラテックスに添加して、乳化剤の存在下、重合開始剤として過酸化物開始剤、レドックス開始剤などのラジカル重合開始剤を用いて乳化重合してシェル層成分を形成する。このような多段シード乳化重合により粒径が好ましくは300〜5000オングストロームのコア層/シェル層を有する粒子状共重合体を含有するラテックスを製造することができる。
【0022】
なお、この場合シェル層成分の重合は、コア層成分の重合に引き続き行ってもよく、第1段目で製造したコア層成分のシードラテックスを部分凝集させた後に行っても良い。遊離カルボキシル基を有する単量体をシェル層成分の1つとした場合、第2段目の重合の後、金属カチオンを添加してシェル層のカルボキル基間をイオンまたは配位結合させる。この金属カチオンとしては、例えば、カリウム、ナトリウム、リチウム、セシウムなどの一価の金属イオン、カルシウム、亜鉛、スズ、クロム、鉛などの二価の金属イオンなどを使用することができるが、特に周期律表I〜II属に属する金属の一価または二価のイオンが好ましい。また、該カチオンの供給体としては、前記金属類の酸化物、水酸化物、リン酸塩、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物、亜硝酸塩、亜硫酸塩などの無機酸の塩、さらにはギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクチル酸、カプリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルシン酸、リノレン酸、コハク酸、アジピン酸、ナフテン酸、チオカルボン酸などの有機酸の塩、アセチルアセトン塩、エトキシドやメトキシドなどのアルコラートなどがあげられる。これらの金属カチオンの中で、特に一価の金属の水酸化物およびカルボン酸塩が反応効率や加熱成形品の機械的強度の点から有効である。前記の一価および二価のカチオン供給体は、溶液中においては、室温で数分以内でイオン架橋反応が可能であるという特徴を有している。
【0023】
多段重合により得られたコア層/シェル層型共重合体を含むラテックスを通常、多翼型回転ディスク式、円盤型回転ディスク式、ノズル式などで噴霧乾燥することにより、粉末状のコア層/シェル層型共重合体が得られる。この乾燥の場合、一般にコア層/シェル層型共重合体は噴霧液滴単位で凝集し、20〜100μm程度の凝集粒子を形成する。凝集の程度は乾燥条件によって異なり、乾燥後に粉砕してほぐす工程をもうけることもできる。また、乳化重合後に塩析法や凍結法によりラテックス粒子を凝固分離し、脱水して調製したウェットケーキを流動床などで乾燥して、凝集粒子状として得ることもできる
【0024】
本発明には、エポキシ樹脂(A)100重量部に対して、好ましくはコア層/シェル層型粒子状共重合体からなる熱可塑性樹脂粉末を増粘剤(C)として好ましくは5〜150重量部、より好ましくは20〜50重量部を用いる。5重量部未満では加熱による増粘を行っても、わずかに粘度が上昇するだけであって、固形状とはならない。また、150重量部を超える場合は充分にエポキシ樹脂中に分散せず混合できない。なお、本発明のエポキシ樹脂(A)には、所望により硬化促進剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、顔料、内部離型剤等の添加剤を配合することができる。
【0025】
本発明の無機フィラー(D)としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、アスベスト、バーライト、バライタ、シリカ、ケイ砂、ドロマイト石灰石、セッコウ、アルミニウム微粉、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、寒水石、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン、鉄粉などが挙げられる。これらの無機フィラー(D)は、作業性や得られる成形品の強度、外観、経済性などを考慮して選ばれるが、通常炭酸カルシウムや水酸化アルミニウム、シリカなどがよく用いられる。
【0026】
繊維強化材(E)としては、例えば、ガラス繊維、アミド、アラミド、ビニロン、ポリエステル、フェノール等の有機繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維或いはこれらを組合わせて用いられる。経済性を考慮した場合、特に好ましいのはガラス繊維である。また、繊維の形態は、平織り、朱子織り、不織布、マット状等があるが、ガラスロービングを好ましくは5〜100mmにカットしてチョップドストランドにて使用する。チョップドストランドの長さは、好ましくはSMCで5〜60mm、BMCで2〜8mmである。
【0027】
本発明においては、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来SMC用不飽和ポリエステル樹脂組成物に慣用されている各種添加剤、例えば、低収縮化剤、離型剤なども所望に応じ配合することができる。
【0028】
低収縮化剤としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクタム、飽和ポリエステル、スチレン−アクリロニトリル共重合体などの熱可塑性樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体などのゴム状重合体などがあげられる。これらの添加量は、通常4〜10重量部でその目的が達成される。
【0029】
離型剤としては、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩、あるいはアルキルリン酸エステルなどが挙げられる。この離型剤は樹脂分100重量部に対して、通常0.5〜5重量部の割合で用いられる。これらの他に、着色剤、消泡剤、減粘剤などを必要に応じて用いることができる。
【0030】
本発明の製造方法は、従来の不飽和ポリエステル樹脂を用いたSMC又はBMCと同様な製造方法を取るが、不飽和ポリエステル樹脂組成物の増粘剤であるアルカリ土類金属の酸化物または水酸化物の代わりに、熱可塑性樹脂粉末(C)を用いる点、特にコア層とシェル層とで構成される熱可塑性樹脂粉末を有効成分とする点、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ジエンおよびこれらと共重合可能な単量体の中から選ばれた少なくとも1種の単量体単位を含有する増粘剤を用いる点と、その使用に伴う増粘過程で特定の温度で加熱する点で異なる。
【0031】
本発明の熱可塑性樹脂粉末を有効成分とする増粘剤(C)は、水分によって増粘が促進されることがないため、金属酸化物の場合のように組成物の調製中に粘度上昇によって混合が困難になることがない。また、増粘は特定温度で比較的短時間で終了し、かつ増粘後のコンパウンドの粘度が経時的にはほとんど変化しないことが特徴である。
【0032】
本発明の増粘工程の加熱温度は、45℃〜160℃の間の特定温度で良く、熱可塑性樹脂粉末を有効成分とする増粘剤(C)の種類および添加量によってその加熱温度が異なることで、加熱時間が決まる。その加熱時間は、好ましくは15分〜2時間であれば、得られた成形材料の離型フィルムの剥離性は極めて良好である。増粘温度が45℃未満の場合、無機フィラー等の配合混合時、撹拌時の熱で粘度が上昇し、均一に分散した成形材料を得ることができない。また、160℃を超える場合、増粘と同時に硬化してしまうので、Bステージ化した成形材料を得ることができない。加熱方法は、加熱温度雰囲気にできる装置を使用して、その装置内に成形材料を一定時間放置し、増粘工程を行えば良い。
【0033】
増粘後のこれら成形材料の粘度は、好ましくは25℃で2万ポイズ以上であり、より好ましくは、5万〜10万ポイズである。
【0034】
本発明でのSMCの製造方法は、常温で液状のエポキシ樹脂(A)に、例えば、プラネタリーミキサー、ニーダーなどの公知の混合機を用いて、所定の割合のエポキシ硬化剤(B)、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ジエンおよびこれらと共重合可能な単量体の中から選ばれた少なくとも1種の単量体単位を含有する樹脂粉末で、コア層とシェル層で構成される熱可塑性樹脂粉末を有効成分とする増粘剤(C)、無機フィラー(D)などの各成分を順に十分に攪拌混合する。SMCを作製する場合の繊維強化材(E)の添加部位は、通常SMCマシンにおける混合物圧延工程の手前である。混合機で調製された混合物(A)(B)(C)(D)は、2つの離型フィルムの一方または双方にフローコーターまたはドクターナイフ等の塗布装置によって0.3〜5mmの一定の厚さに塗布し、その上に繊維強化材をチョッパーにより切断して散布してから塗布面を内にして貼合わせ、圧延機によって圧延し厚さ0.5〜7mmのシートを得、両面を離型フィルムで被覆した状態でローラーによって巻とる。
【0035】
本発明によるBMCの製造方法は、繊維強化材も含めたすべての成分をプラネタリーミキサー、ニーダーなどの公知の混合機を用いて同時に混合分散させる。混合された組成物はポリエチレンの袋に取り出し、密閉する。組成物はSMCの場合と同様、45℃〜160℃の間の特定温度で増粘させる。形状がバルクであるため、増粘終了までに好ましくは30分〜3時間が必要である。BMCの形状は、ペレット状、小石状、レンガ状など種々の形状と大きさが可能であるが、通常、径または一辺が0.7cm〜1mの大きさである。
【0036】
本発明の成形材料の成形方法は、SMCおよびBMCの場合、好ましくは加熱圧縮成形であるが、BMCの場合には、トランスファー成形で行うことも可能である。
【0037】
【実施例】
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、文中「部」とあるのは、重量部を示すものである。
【0038】
(参考例)コア/シェル型共重合体の製造
n−ブチルアクリレート40重量部を、攪拌機を備えた反応機に仕込み、乳化剤としてメタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体からなる高分子乳化剤1重量部、触媒として過硫酸カリウム0.1重量部を添加し、水150重量部中で重合温度80℃にて180分間攪拌した後、重合転化率98%になるまで重合を行った。次いで、得られたラテックスをシードにして、メチルメタクリレート58重量部、メタクリル酸2重量部を添加し、連続的に重合させ重合体ラテックスを得た。室温まで冷却した後、水酸化カリウム1重量%水溶液100重量部を室温で添加して30分間攪拌した。得られたコア/シェル型ラテックスの平均粒子径はいずれも0.2〜0.5μmの範囲内であった。得られたラテックスをスプレードライによって150℃で噴霧乾燥し、コア/シェル型共重合体粉末を得た。
【0039】
(実施例1〜3:BMC)
表1に示す種類と量の各成分を、プラネタリーミキサーを用いて分散混合しエポキシ樹脂組成物を調製した。増粘剤はいずれも参考例で作製したコア/シェル型共重合体粉末を用いた。いずれも、攪拌混合の段階では増粘は確認されない。得られた組成物をポリエチレンフィルムの袋に入れ密閉し、乾燥機で90℃/30分で増粘させた。この過程で粘度およびフィルムの剥離性を確認した。
【0040】
プレス成形は該組成物340gを20×20cmの金型を用いて行った。成形温度は180℃、成形時間は30分とした。成形圧力は50kg/cm2で行った。
粘度測定は、強化繊維を除くコンパウンドを25℃にて、Tバー型粘度計で測定した。また、フィルム剥離性は増粘後、25℃まで冷却した後評価した。剥離性
【0041】
評価は、フィルムを手で剥す際の状況で次のように判定した。
○:容易に剥離し、フィルム側にBMCが付着しない。
△:やや剥離しにくいが、剥離フィルム側にBMC成分の付着がない。
【0042】
×:剥離しにくく、剥離フィルム側にBMCが付着する。
【0043】
該BMCより成形した成形品はいずれも良好な成形充填性であり、それぞれの曲げ強度、弾性率および表面硬度を測定した。曲げ試験はJISK7203に準じ、25℃で測定を行った。また、貯蔵安定性の評価としては、25℃で保存した場合の使用可能な期限を記述した。
【0044】
【表1】
(実施例1〜3)
【0045】
(比較例1〜4:BMC)
表2に示す種類と量の各成分を、プラネタリーミキサーを用いて分散混合しエポキシ樹脂組成物を調製した。増粘剤は参考例で作製したコア/シェル型(比較例1、2)およびポリメチルメタクリレート(比較例3)、酸化マグネシウム(比較例4)を用いた。
【0046】
【表2】
(比較例1〜4)
【0047】
(実施例4〜6:SMC)
表3に示す種類と量のガラス繊維を除く各成分を、プラネタリーミキサーを用いて分散混合しエポキシ樹脂組成物を調製した。増粘剤はいずれも参考例で作製したコア/シェル型共重合体粉末を用いた。いずれも、攪拌混合の段階では増粘は確認されない。得られた組成物を30℃でSMC製造機中に供給し、双方の離型フィルム上にドクターナイフにて厚さ0.7mmに均一に塗布され、次いで、1インチのガラスチョップドストランドを落とし、挟み込んだ後、ローラーで含浸させる。該シートをロール状に巻とり、90℃/30分で増粘させ、SMCを得た。この過程で粘度およびフィルムの剥離性を確認。プレス成形は該組成物300gを20×20cmの金型を用いて行った。成形温度は180℃、成形時間は30分とした。成形圧力は60kg/cm2で行った。
【0048】
粘度測定は、強化繊維を除くコンパウンドを25℃にて、Tバー型粘度計で測定した。また、フィルム剥離性は増粘後、25℃まで冷却した後評価した。
【0049】
剥離性
評価は、フィルムを手で剥す際の状況で次のように判定した。
○:容易に剥離し、フィルム側にSMCが付着しない。
△:やや剥離しにくいが、剥離フィルム側にSMC成分の付着がない。
×:剥離しにくく、剥離フィルム側にSMCが付着する。
該SMCより成形した成形品はいずれも良好な成形充填性であり、それぞれの曲げ強度、弾性率および表面硬度を測定した。曲げ試験はJISK7203に準じ、25℃で測定を行った。また、貯蔵安定性の評価としては、25℃で保存した場合の使用可能な期限を記述した。
【0050】
【表3】
(実施例4〜6)
【0051】
(比較例5〜8:SMC)
表4に示す種類と量の各成分で、実施例4〜6と同様の方法でSMCの製造を行った。増粘剤は参考例で作製したコア/シェル型(比較例5、6)およびポリメチルメタクリレート(比較例7)、酸化マグネシウム(比較例8)を用いた。
【0052】
【表4】
(比較例5〜8)
【0053】
【発明の効果】
本発明で得られた成形材料、例えばSMCおよびBMCは、フィルム剥離性、貯蔵安定性、物性に優れ、配合時に粘度上昇することなく、特定の温度でのみ増粘するので増粘の制御が簡便で、かつ水分による影響をうけないため安定した増粘後硬さを得ることができる。
Claims (2)
- 成形材料の製造方法において、常温で液状のエポキシ樹脂(A)、エポキシ硬化剤(B)、コア層とシェル層とで構成される熱可塑性樹脂粉末であり、コア層がアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの中から選ばれた少なくとも1種の単量体を用いるアクリル系重合体であり、シェル層がN−置換アクリルアミド、アクリル酸エステル系またはメタクリル酸エステル系単量体とラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体、遊離カルボキシル基を有する単量体から選ばれる2種以上の単量体を用いるものであり、ラジカル重合可能な二重結合を少なくとも2つ以上有する架橋性単量体をコア/シェル型共重合体中0.5%を超えないで用いるアクリル系共重合体からなる樹脂粉末を有効成分とする増粘剤(C)からなるコンパウンドを45℃〜160℃の加熱によって増粘させることを特徴とする成形材料の製造方法。
- 成形材料が、シートモールディングコンパウンド又はバルクモールディングコンパウンドであることを特徴とする請求項1記載の成形材料の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP35349097A JP3861424B2 (ja) | 1997-12-22 | 1997-12-22 | 成形材料の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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