JP3858269B2 - 冷却管及びこれを用いた極低温クライオスタット - Google Patents

冷却管及びこれを用いた極低温クライオスタット Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体ヘリウム等の寒材を使った生体磁気計測用の極低温クライオスタットに関し、低温保持時間を延長すると共にヘリウム蒸発量を低減するための寒冷供給手段を提供するものである。
【0002】
本発明は、生体磁気計測用極低温クライオスタットのみならず、低温を保つために冷媒を必要とするクライオスタット、例えば超伝導マグネットを用いるMRI(核磁気共鳴画像診断装置)や物性研究用のヘリウムクライオスタットにも適用可能である。
【0003】
【従来の技術】
【0004】
【非特許文献1】
川勝他「生体磁気計測システム用ヘリウム再液化・循環システムの開発」Vol.14 No.1 2001,
p274-275, 第16回日本生体磁気学会大会論文誌。
【非特許文献2】
S. Fujimoto et.al. "Cooling of SQUIDs using a
Gifford-McMahorn cryocooler containing magnetic regenerative
material to measure biomagnetism", Cryogenics,
35(1995)pp.138-143.]
【0005】
非特許文献1に記載された従来技術から引用し、図13に液体ヘリウム循環システムの構成図を示す。これは極低温クライオスタット2から蒸発するヘリウムガスをガスバッグ4で一旦溜め、再液化機8で液体ヘリウムに戻して、極低温クライオスタットに還流させるもので、液体ヘリウムを再補給するサイクルを伸ばそうというものである。
【0006】
図中1は磁気シールドルームで、生体磁気を計測するための静寂な磁気環境を得るためのものである。2は極低温クライオスタットであり、液体ヘリウムを冷媒として保持し高感度の超伝導磁気センサ(SQUID)を冷却する。極低温クライオスタット2中に蓄えられた液体ヘリウムは、外部からの熱侵入により少しずつ蒸発する。通常は大気に捨てられているが、これを排気管3を通じてガスバッグ4に溜める。
【0007】
溜められたヘリウムガスは循環ポンプ5で加圧され、途中混入した水分や不純物ガスを水分除去器6及び不純物ガス除去器7を通じて除去し、純度の高いヘリウムガスに精製した後、極低温冷凍機により冷却する再凝縮機8内で液体ヘリウム温度まで冷却・凝縮されたあと、一旦ヘリウムコンテナ9に溜められる。一定量液体ヘリウムが溜まった後、液体ヘリウムトランスファチューブ10を通じて極低温クライオスタット2に移送される。
【0008】
この方式は、蒸発したガスを小型の液化設備で再液化し戻すというものであるが、大量消費している施設では回収ラインを施設内で設け、大型液化設備で再液化後ヘリウムコンテナにて消費設備に配送するという手段がとられている。
【0009】
一方、非特許文献2では、極低温冷凍機をクライオスタットに直接接続し、内部ガスを寒冷状態に保つとともに再液化して計測の用に供している。図14は、非特許文献2記載の図5を簡略化して転記した図である。
【0010】
磁気シールドルーム104の中に設置されたクライオスタット105の上部に冷凍機106が接続されている。冷凍機106には圧縮ガスを給排気するためのロータリバルブ107が接続されており、さらにコンプレッサ108で高圧・低圧ガス配管が接続される。
【0011】
冷凍機106の寒冷発生部109は、クライオスタット105の内部で別室となっているヘリウムガス槽110に露出し、極低温はヘリウムガスを冷却することでヘリウムガス槽110の全体を冷却する。ヘリウムガス槽110の下部に接続されたセンサ取付け台111には、SQUIDセンサ112が接続されており、熱伝導でSQUIDは冷却される。
【0012】
113は、ヘリウムガス槽110を取り囲む空間真空層で、断熱のために設けられている。また真空層には図では省略されている熱輻射シールド箔が収められており輻射伝熱を低減させている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
生体磁気計測用極低温クライオスタットに共通する問題点は、構造上真空断熱層が狭く十分な熱シールドができないことである。これは、微弱な磁気信号源に極低温下におかれたセンサを出来るだけ近づけて計測しなければ十分なSN(信号対雑音比)が得られない、という計測目的に由来している。
【0014】
従って、寒剤として使われる液体ヘリウムは急速に蒸発してしまい補給サイクルは長くても1週間程度となっている。極低温クライオスタットの容量を大きくすると、構造上の歪が大きくなり狭い真空断熱層が潰れてサーマルショートを起こす可能性もあり、むやみに大型化もできない。このような問題点をカバーするため、非特許文献1,2のような技術が提案されている。
【0015】
非特許文献1に類する再循環の一般的な問題点は、不純物ガスの混入である。ガスバッグ4は通常ゴム製のものであるが、水、空気、炭酸ガス等の不純物ガスが透過しやすい。極低温クライオスタットそのものも、樹脂を多用しているためガスを透過する性質があり、配管に樹脂パイプを用いればそこからも侵入する。
【0016】
不純物ガスが混入すると、再凝縮器8の寒冷部分で固化し配管を詰まらせてしまう。従って、液化しようとする液体ヘリウム以外の沸点・凝固点の温度の高い不純物ガスは不純物ガス除去器7により、モレキュラシーブや活性炭、クライオトラップなどを駆使して不純物ガスを除去する。
【0017】
しかし、不純物ガス除去器7も完全に不純物ガスを取り除けるわけではなく再凝縮器8を詰まらせたり、不純物ガス除去器7自体も詰まるため、多量の不純物ガスをトラップした後は加温・排出する再生動作をしなければならない。従って、小型のヘリウム循環システムといえども大型の設備同様メインテナンスが必要である。
【0018】
また、ヘリウムを循環させるための設備規模はガスバッグ等もあり、極低温クライオスタットが小型であっても循環に関連する設備は大型になってしまいコスト的・スペース的に不利である。
【0019】
さらに、液体ヘリウムトランスファ時のロスが大きく、通常のガスバッグでは回収しきれずに排気開放しなければならず、その分回収効率は低下する。回収効率を上げるには非現実的な大きさのガスバッグを用意しなければならない。
【0020】
一方、ヘリウム循環によらず、冷凍機による直接冷却という非特許文献2に類する方法もあるが、次に示す磁気雑音の問題があり実用化されていない。
(1) 磁性蓄冷材による磁気雑音の発生:
寒冷を発生するため、反強磁性体や超伝導材料を膨張機内部に保持するが、内部流通ガス圧の脈動に伴う振動で、周囲に微弱な磁気及び磁気勾配の変動をもたらす。これは数10〜数100pT(ピコテスラ)にもなり、数10fT(フェムトテスラ)〜数10pT程度の生体磁気などの微弱計測に際して極めて大きな妨害信号になる。
【0021】
(2)極低温冷凍機の膨張機は、熱伝導の小さいステンレス(SUS)で構成されるが、微弱ではあるが磁性を帯びている。膨張ガス圧の変動によって振動が発生するため、前記同様磁気雑音となる。
【0022】
(3)寒冷部と常温部は異種金属でループを構成するため熱起電力が発生し、ループ内を電流が流れる。これは温度が一定ならば定常電流に近いが、振動が加わると振幅に応じた変動磁気雑音となって外部の磁場を乱す。
【0023】
以上から、生体磁気計測の分野では極低温クライオスタットに極低温冷凍機を直接取付けるのは困難で、次善の手段としてヘリウム循環システムが提案されているのが現状である。しかし、先にも説明したように設備の大型化やコスト的な問題点が新たに発生している。
【0024】
上記非特許文献2例で代表して、従来術の問題点を示した。これらをまとめると、生体磁気計測用極低温クライオスタットは蒸発量が大きく、この対策は、ガス回収・再液化サイクルによるか、寒冷を発生する手段を極低温クライオスタット直結して具備するかの2通りしかないが、前者は設備の問題、後者は冷凍機由来の発生雑音の問題が大きい。
【0025】
しかし、根本的な原因は極低温クライオスタットへの熱侵入が大きいことである。極低温クライオスタットは、ヘリウムガスの蒸発顕熱を利用してサーマルシールドの冷却に使っている。
【0026】
しかしながら、生体磁気計測用極低温クライオスタットのサーマルシールドの温度は、侵入熱量が大きいために高く、これが帰結的に高蒸発量の一因になっている。従って、寒冷供給手段を低雑音にクライオスタットに具備することでサーマルシールドの温度を下げることが問題の第一の解決手段となる。
【0027】
しかし、サーマルシールド温度が低くなっても、一旦蒸発したヘリウムガスは排気されてしまうため、寒冷を極低温クライオスタット内で供給して再液化しなければ冷たいガスが排気されるだけで蒸発量の大幅な低減は望めない。従って、再循環など外部の系に出すことなく再液化することが第二の解決手段となる。
【0028】
本発明の目的の第1は、ヘリウム循環に見られる閉塞の問題を起こすおそれのない冷却管及びこれを用いた極低温クライオスタットの提供にある。
【0029】
本発明の目的の第2は、小型の寒冷手段により磁気雑音の影響を及ぼすことのない冷却管及びこれを用いた極低温クライオスタットの提供にある。
【0030】
本発明の目的の第3は、小型の設備でヘリウム消費量を減らすことが可能な冷却管及びこれを用いた極低温クライオスタットの提供にある。
【0031】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するための本発明の構成は次の通りである。
(1)筒状真空容器の上端部に取り付けられた冷凍機と、前記真空容器内に配置された前記冷凍機の寒冷発生部と、この寒冷発生部に一端が接続され、他端が前記真空容器の下端より外部に露出して寒冷露出部を形成する所定長の伝熱管とを有し、前記寒冷発生部は前記冷凍機と結合する第1段寒冷発生部(高温側)と第2段寒冷発生部(低温側)とよりなり、前記第1段寒冷発生部に接続する第1伝熱管を設け、この第1伝熱管に熱的に接続するとともに前記第1段及び第2段寒冷発生部を取り囲む熱輻射シールド部材を設け、前記熱輻射シールド部材の内側において一端が前記第2段寒冷発生部に接続され、他端が前記真空容器の下端より外部に露出して寒冷露出部を形成する所定長の第2伝熱管を具備した冷却管。
【0033】
(2)前記第1伝熱管内に窒素を、前記第2伝熱管内にヘリウムを封入したことを特徴とする請求項1記載の冷却管。
【0034】
(3)前記第1段寒冷発生部に一端が接続され、他端が前記第2伝熱管を同心円状に囲んで前記真空容器下部に延長された第3伝熱管路を設けたことを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の冷却管。
【0035】
(4)前記第3伝熱管の他端を前記真空容器の途中の外部に露出させて寒冷露出部を形成したしたことを特徴とする請求項3記載の冷却管。
【0036】
(5)前記伝熱管の両側または片側の端部に、歪吸収部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の冷却管。
【0037】
(6)前記伝熱管の両側または片側の端部を高熱伝導材料で構成し、その他の管部を熱伝導性の低い材料で構成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の冷却管。
【0038】
(7)前記伝熱管において、熱伝導性の低い材料で構成した管部周囲に真空断熱部を形成したことを特徴とする請求項6記載の冷却管。
【0039】
(請求項8)
(8)前記真空容器の上端部に前記冷凍機に追加して配置された1台以上の増設冷凍機と、この増設冷凍機と前記真空容器内で結合する増設寒冷発生部とを具備し、前記増設寒冷発生部を前記熱輻射シールド部材又は前記第1寒冷発生部に接続したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の冷却管。
【0040】
(9)前記請求項1乃至8のいずれかに記載の冷却管を、極低温クライオスタットの真空部に接続し、かつ前記冷却管の前記寒冷放出部を前記極低温クライオスタット内部の熱輻射シールド板の高温部に接触させ、又は複数の寒冷露出部のある冷却管においては極低温クライオスタットの夫々対応する複数の温度の熱シールド板に接触させたことを特徴とする極低温クライオスタット。
【0041】
(10)前記請求項1乃至8のいずれかに記載の冷却管を、極低温クライオスタットの開口部に挿入し、前記極低温クライオスタットの開口部付近の真空層内に接続された熱輻射シールド板の付け根近傍に生じる等温度面に接するように前記冷却管の寒冷露出部を配置させたことを特徴とする極低温クライオスタット。
【0042】
(11)前記請求項1乃至8のいずれかに記載の冷却管の複数の寒冷露出部の内、最も低温の寒冷露出部を極低温クライオスタットの液溜め上部の極低温の気相部分に接するように位置させたことを特徴とする極低温クライオスタット。
【0043】
(12)前記真空層の熱輻射シールド板及び液溜め上部気相に夫々挿入された別々の冷却管を具備することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の極低温クライオスタット。
【0044】
(13)前記冷却管または極低温クライオスタットにおいて、前記冷凍機を囲むように高透磁率材料の板で磁気シールドし、かつ前記冷却管の重量保持部に振動吸収材料を挿入したことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の冷却管又はこれを用いた極低温クライオスタット。
【0045】
(14)前記冷却管または極低温クライオスタットにおいて、貫通穴のある磁気シールド装置から前記冷凍機を外部に出し、前記冷却管の重量保持部を外部に設けた振動吸収材を挟んで設置したことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の冷却管又はこれを用いた極低温クライオスタット。
【0046】
【発明の実施の形態】
以下本発明実施態様を、図面を用いて説明する。図1は、本発明を適用した冷却管の基本構造を示す縦断面図である。
【0047】
本発明の構成上の特徴は、寒冷発生部としての極低温冷凍機と寒冷を必要とする寒冷露出部との間を真空断熱容器で分離すると共に、この間を熱輻射シールドが施された所定長の伝熱管で接続することにある。
【0048】
なお、以下説明の都合上、寒冷とは熱を吸収することを意味し、熱の発散や熱の流れとは逆の意味で使うものとする。また、冷凍機に付属する高圧ガス供給配管やガス圧縮機等は省略するものとする。
【0049】
図1において、11は冷凍機の膨張機部分であり、SUS等の熱伝導の低い非磁性金属でできており、さらにSUS製筒状真空容器の上端部に気密に取り付けられている。真空容器は、前記冷凍機が結合する上部真空容器12とその下部に連結延長されたSUS管製の下部真空容器17よりなる。
【0050】
13は銅製の寒冷発生部であり、上部真空容器12内の空洞部に配置されている。この寒冷発生部13は、冷凍機の膨張機12と結合して冷凍機の構造の一部を形成しており、この部分で極低温を発生する。
【0051】
14は、熱輻射シールド部材を形成する多層熱輻射シールド箔である。その構造は、マイラー等のプラスチック等のフィルムにアルミ等の熱反射効率の高い金属を蒸着した熱輻射シールド箔を、互いに接触しないよう熱伝導率の小さい薄いプラスチック製スペーサで多層にしたものであり、箔の外部からの輻射伝熱を防止する高性能保冷材として機能する。
【0052】
15は、寒冷発生部13にその一端が接続されたヒートパイプ等で形成された伝熱管である。この伝熱管は、下部真空容器17内に収容され、他端が下部真空容器17の下端より外部に露出して外部に寒冷を伝達する寒冷露出部18を形成している。
【0053】
この伝熱管15の機能は、寒冷を外部に伝達するもので、距離の短い場合や熱輸送量の小さな場合は銅やアルミブロックでもよい。ヒートパイプの場合、寒冷発生部13の温度に応じて内部封入ガス種を変えるが、例えば50K〜80Kの窒素温度を伝達するには窒素ガスを適当な圧力で封入するか、当該温度領域及び内部ガス圧で液相―気相の状態を持ちうるガスを封入する。
【0054】
前記熱輻射シールド箔14は、上部真空容器12内の寒冷発生部13及び下部真空容器17内の伝熱管15を囲んで配置され、箔の外部からの輻射伝熱を防止する。16は熱伝導率の低い樹脂等のスペーサであり、下部真空容器17と伝熱管15が熱的に短絡するのを防ぐ目的で挿入されている。
【0055】
19は、上部真空容器12の外周部に取り付けられた真空封止弁である。その機能は、内部のガスを排出する時に真空引き装置に接続して弁を開く時のみ用い、通常は閉じて気密を保つ性質のものである。20は封止板であり、下部真空容器17の下端における伝熱管15の貫通部分にあって、両者の気密接合を確保するものである。
【0056】
SUS製管の下部真空容器17は、先端部にいくに従って肉薄とし、寒冷露出部18より下部真空容器17の上部方向への伝導伝熱を小さくするものとする。又封止板20は、肉薄でバネ性を持つものとし、下部真空容器17と伝熱管15の温度差及び下部真空容器17の上部下部の温度差による線膨張差による歪を吸収するバネ性を持つものとする。
【0057】
冷凍機としてGM冷凍機、スターリング冷凍機やパルスチューブ冷凍機等の1段冷凍機を使用する場合には、冷凍機膨張機11の銅製寒冷発生部13で40〜80K程度の寒冷を発する。外部との熱交換はこの部分を通じて行われる。作動流体としてヘリウムガスが内部で圧力変動しており、GM冷凍機ではピストンの動きもあることから、SUSで構成される冷凍機の膨張機11は振動に伴う磁気雑音を発する。
【0058】
これはSUSが微弱な残留磁気を帯びているためで、振動周波数で周囲空間の磁気的な雑音場を形成することによる。また、内部にはSUSのメッシュや反強磁性体が充填されており蓄冷材として機能するが、この部分の残留磁気も寄与する。
【0059】
一方、冷却の際高圧ガスが低圧側に流れることで熱交換されるが、冷凍機を構成する寒冷発生部の銅とSUS製管とで温度差があるため、熱電対を構成し内部電流が還流する。内部ガス流はパルス的に脈動し、温度も脈動しているためガス流の時間的変動に伴う電磁気的な雑音が発生している。
【0060】
以上の磁気雑音は、冷凍機の膨張機11及び寒冷発生部13を収容する上部真空容器12を中心として発するが、磁気雑音は距離減衰が大きく距離の2〜3乗で減衰する。従って、寒冷発生部13を別の手段で延長すれば、生体磁気計測等の微弱磁気計測に供することができる。
【0061】
伝熱管15は、伝熱すべき熱輸送量が小さい場合は銅やアルミ等の熱伝導度の高い棒で形成してもよいが、磁気雑音減衰に十分な所定長の伝熱距離d(伝熱管15の長さ、13〜18の間隔)を確保した場合及び輸送熱量が数ワット以上の場合には、寒冷露出部18の温度が上昇してしまうため内部に作動流体を封入したヒートパイプを用いる。
【0062】
ヒートパイプは上部が低温、下部が高温のとき流体が気相―液相で相変換しながら上下に移動することにより熱輸送するもので、気相で下部から上部に移動する移動度が特に高いことから効率的な熱輸送が実現できる。
【0063】
使用する温度領域で気相―液相が内部で混在しなければならないため、例えば50K前後の冷凍機では、作動流体として窒素等を封入することで、効率的熱輸送が実現できる。
【0064】
この際、冷却過程にある時等では温度が高すぎると液相が形成されず、効率的な熱輸送がなされないため、より沸点の高いガスを封入するか、沸点の異なるガス種を封入した複数のヒートパイプを併置してもよい。
【0065】
併置したヒートパイプを内部で熱的に接合しておけば、温度範囲の広い伝熱管が実現できる。一方、伝熱管15の周囲からは熱輻射やガスによる伝熱により寒冷露出部18への寒冷輸送が妨害される。
【0066】
このため、寒冷発生部13周囲及び伝熱管15の周囲は、上部真空容器12及び下部真空容器17で密閉し真空断熱すると共に、多層熱輻射シールド箔14で熱侵入を防止している。更に、上下真空容器を形成するSUS製管は熱伝導率が低いため、容器を通じた伝導による熱侵入を低減させる。SUS製管の先端部は熱伝導率を低くするため肉薄とする。
【0067】
以上の冷却管構造により、寒冷を遠方に伝送できるため、生体磁気計測用極低温クライオスタット等の寒冷必要部に熱接触させれば磁気雑音の混入を防ぐと共に冷媒蒸発量を低減させることができる。
【0068】
図2(a)は、図1の構成を拡張した他の実施例の構成を示す断面図、図2(b)は図2(a)のA−A’断面図であり、2段冷凍機における2段目の寒冷を輸送する構成を示すものである。図2(a)、(b)において、21は2段冷凍機で、その一部として下部に連なる第1段寒冷発生部24、さらにその下部に第2段寒冷発生部25を具備する。
【0069】
26は多層熱輻射シールド箔であり、第1段寒冷発生部24及び第2段寒冷発生部25及び後述の第2伝熱管31を取り囲み、箔の外部からの輻射伝熱を防止する。
【0070】
31は所定長の第2伝熱管であり、多層熱輻射シールド箔26の内側において第2段寒冷発生部25に一端が接続され、他端が下部真空容器32の下端より外部に露出して寒冷露出部34を形成している。
【0071】
29は、第3伝熱管であり、第1段寒冷発生部24に一端が直接又は後述の熱輻射シールド網30を介して接続されている。熱輻射シールド網30は、第2伝熱管31を同心円状に囲んで下部真空容器32の下部まで延長されている。
【0072】
このような2段構成において、第1段寒冷発生部24で例えば50Kの低温が、第2段寒冷発生部25で4Kの極低温が達成されるが、2段以上でもよい。一般に4K程度の極低温は熱排出量が極めて小さくなるため、図1の1段冷凍機の寒冷輸送にくらべ輻射シールドを厳重にしなければならない。
【0073】
銅等の細線を絶縁して編み込み同心円筒状(パイプ状)に形成した熱輻射シールド網30を第一段寒冷発生部24に熱的に接触させ、この熱輻射シールド網30内のより温度の低い空間を熱的にシールドする。銅の細線で形成したシールド網は熱伝導率が低く、第一段寒冷発生部24からの寒冷輸送が熱輻射シールド網30の末端に行き届かないため、銅等の金属棒またはヒートパイプよりなる第1伝熱管27が下方に寒冷を伝達するために熱輻射シールド網30に接続される。
【0074】
28は中継板であり、第1段寒冷発生部24の寒冷を下方の第3伝熱管29に伝達する、高熱伝導率の構造物である。これは金属でもセラミックでもよいが、これを省略して第1伝熱管27と第3伝熱管29を一体としてもよい。なお、機器の動作原理は複数設けた伝熱管の各熱伝導率の大小によって変化するものではない。
【0075】
これら真空容器内の外層の構造物27,28,29は、内層構造物31と熱的に分離される必要があるため、接触していないものとする。第2段寒冷発生部25には第2伝熱管31が接続され、寒冷を下端部の寒冷露出部34にて放出する。
【0076】
第3伝熱管29は、熱輻射シールド網30に接続される。銅の細線からなる輻射熱シールド網30は熱伝導が低いため、第1伝熱管27と同様に、第3伝熱管29を熱輻射シールド網30に接続することによって、内部の第2伝熱管31に侵入しようとする輻射熱を効率的に第1段寒冷発生部24に輸送する。
【0077】
第2段寒冷発生部25に接続される第2伝熱管31の内部作動流体は、温度によってヘリウムまたは水素等の極低温で液層―気相の相状態を生じる物質が封入されているものとする。
【0078】
このように、2段冷凍機の第1段寒冷発生部24に熱輻射シールド網及び下部にあっては第2伝熱管29を経由して熱輻射シールド網30が接続されているため、効率的に熱輻射シールド網30の温度が下げられる。
【0079】
このため、熱輻射シールド網30より内部の空間への熱侵入が抑えられ、熱排出量の小さい極低温部の温度上昇を防ぐことができると共に、第2段寒冷発生部25に接続されたヒートパイプ等の第2伝熱管31の寒冷露出部34より例えば4Kの寒冷を発生することができる。
【0080】
2段以上の多段冷凍機にあっては、30の熱輻射シールド網等のシールド構造を多層にすることで更に熱侵入を防止する構造としてもよい。又、ここでは2段冷凍機で夫々の寒冷発生部に接続する熱輸送部を2系統としたが、各寒冷発生部に対し複数の熱シールド構造としてもよい。
【0081】
これは図1に対しても同様である。例えば、図1で1つの寒冷発生部13に熱伝導度を低くするために伝熱管を併設しない熱シールド網(これは伝熱量が少ない)を接続して熱シールドの用に供し、別に設けた伝熱管で寒冷輸送する構造とすることで途中のロスが少なくなる。
【0082】
図3は、図1で説明した1段冷凍機の場合に、膨張機35に結合した寒冷発生部36に伝熱管37及び熱輻射シールド網38を直接接続した実施例の構成を示す簡略断面図であり、真空容器や多層熱輻射シールド箔は省略されている。
【0083】
この実施例では、輻射熱シールド網の構成に特徴があり、ヒートパイプ等の伝熱管に比べると比較的熱伝導度の低い銅等の網状金属を寒冷発生部に接続してあるため、寒冷部への熱負荷を過大に取ることなく熱シールドを構成でき、伝熱管への熱侵入を減らすことができる。
【0084】
図4(a)に示す実施例は、2段冷凍機における第2段寒冷発生部からの極低温の寒冷伝送部の熱シールドを、熱輻射シールド網による熱シールドではなく、第1段寒冷発生部に接続した中空円筒状のヒートパイプにより実現するもので、このヒートパイプは寒冷伝導と熱シールドを兼用する。
【0085】
第1段寒冷発生部40に第1伝熱管42が接続され、これに接して取り囲むように43の熱輻射シールド網43が取付けられており、第1段の寒冷を下方に伝達すると共に周囲を寒冷でシールドしている。43の熱輻射シールド網は円筒状の銅等の金属板でもよい。
【0086】
図4(b)は図4(a)のA−A’断面図であり、第2段寒冷発生部41に接続された第2伝熱管44を囲うように、中空円筒状ヒートパイプよりなる第3伝熱管46が中継板45に熱的に密に接している。第3伝熱管46のヒートパイプ構造は、図4(c)の断面図に示すように内管49及び外管48で取り囲まれたガス封入部50よりなり、内部に窒素などのガスが封入されている。
【0087】
このような構成により、第3伝熱管46でガス封入部50の体積が多く取れるため、作動ガスの流量が増し、寒冷輸送量を大きくとることができる。外部からの輻射による熱流入量は管の長さの2乗に比例するため、輸送管路長が長い場合に効果がある。
【0088】
熱移動速度が遅いと末端ほどシールドの温度が上昇するため、寒冷露出部47の温度が結果的に上がってしまうが、これを防止するのに有効である。また、メッシュ等にくらべると構造上の安定性・剛性が増すため、サーマルショート等の事故を防げるというメリットがある。
【0089】
図5(a)、(b)は図1に示した伝熱管15、図2に示した第2伝熱管31、図3に示した伝熱管37、図4に示した第2伝熱管44の構造の具体例を示す断面図である。
図5(a)は均一の中空配管でなく、端部を異種材料としている。伝熱管51は、熱伝導率の低いSUSの肉薄中空配管で、両端部は熱伝導率の高い銅等の金属キャップ52a,52bで封止してあり、内部のガス封入部53に窒素やヘリウム等のガスが適当な圧力で封入される。
【0090】
図5(b)は、伝熱管54をSUSの肉薄中空配管の2重構造とし、伝熱管の周りに真空断熱部57を形成した例である。両端部は熱伝導率の高い銅等の金属キャップ56a,56bで封止してあり、内部のガス封入部55に窒素やヘリウム等のガスが適当な圧力で封入される。
【0091】
この場合、伝熱管として銅管などの高熱伝導率の管でガスを封入してもよいが、長い部分をSUS管等の熱伝導率の低い材料で構成することにより、熱輻射シールド箔等への接触が発生した場合に伝導熱侵入を低減すると共に、冷凍機のオフ時の寒冷の逆流を防ぐ効果がある。
【0092】
ヒートパイプは、一般に上部を低温、下部を高温となるような状況下で熱輸送あるいは寒冷輸送するが、冷凍機の運転を停止した場合、上部が高温となりヒートパイプの作動流体の動きは停止する。
【0093】
しかし、(内部作動流体でなく)伝熱管の管壁を通じた伝熱移動は方向に関係しないため、下部の寒冷は上昇することになる。図5(a)に示すように、前記伝導熱移動を低減するためには伝熱管51としては、SUS等の熱伝導度の低い材料が有効である。
【0094】
内部流体が窒素などの場合、樹脂等でも可能である。一方、上下端では寒冷の吸収・放散を行うため、熱伝導の移動度は高くする必要があり、銅などの熱伝導率の高い銅製キャップ52a,52bの封止が有効である。
【0095】
図5(b)では、伝熱管54のSUS管部分に真空断熱部57を併設することで、横方向の伝導熱侵入の低減性能を向上させることができ、同時に2重構造による剛性を高められる。
【0096】
また、真空断熱部57の代わりにガラスや樹脂、断熱フォーム、あるいは熱伝導度の低い金属製スペーサで代替しても熱伝導度の低減に同じ効果が得られる。このように、図5の構成によれば、伝導路途中からの熱進入によるロスを低減させることができる。
【0097】
図6の実施例は、冷却管の別の実施形態を示すもので、振動絶縁・電気絶縁と共に板バネによる伝熱管の接続手段を説明する図である。図6(a)は極低温下におかれる冷却管に生じる熱起電力を説明するもので、下部は極低温、上部は室温となっている。
【0098】
冷凍機の膨張機60が取り付けられる上部真空容器はSUS、下部真空容器58もSUS、寒冷発生部59及び寒冷露出部57は銅で構成されており、寒冷露出部57の起電力発生点61と寒冷発生部59の熱起電力発生点62はほぼ同じ温度となっている。
【0099】
また異種金属は互いに逆方向に起電力を発生する方向に接続されるため、原理的には互いに打ち消しあって内部電流は発生しないはずである。しかし、夫々の構造材が完全に同じ材料で構成されることはないため、不平衡電流63が上部より下部に向かって矢印の経路で流れる。これは外部に磁場となって放出されるため電磁気的な雑音となる。
【0100】
図6(b)は、電気絶縁のために絶縁樹脂又は絶縁ゴム等の絶縁材を電気的経路の途中に設けた構造である。64aは、冷凍機の膨張機60と上部真空容器の接続部に設けた絶縁材、64bは上部真空容器と下部真空容器58の接続部に設けた絶縁材、64cは寒冷露出部57に設けた絶縁材である。絶縁材はどこか一箇所設けても、これら異なる挿入位置を複数併用してもよい。
【0101】
図6(c)は、電気絶縁の別の構成を示すもので、下部真空容器58の途中にフランジ部を形成し、絶縁材(例えばゴム)64dを挟む構成である。
【0102】
このように、図6の構成によれば、絶縁樹脂又は絶縁ゴムによる絶縁材により循環電流の電流経路が絶たれるため、熱起電力による時期的雑音を外部に発することはなくなる。
【0103】
又、板バネ65を内部に設けること、あるいはゴム等の弾力性のある絶縁材64を設けることで、内部構造物及び外部構造物の間にバネ性を持たせられるため、内部・外部構造物の線膨張係数の相違による冷却時の破損を防ぐこともできる。
【0104】
図7は、冷却管において寒冷露出部を複数出すための別の実施例の構成を示す断面図である。この構成においては、図2で説明した第3伝熱管66に熱的に接触して銅等の高伝導率材料で形成された寒冷露出部67から寒冷を外部に放出する。一方、より温度の低い寒冷は第2伝熱管の寒冷露出部68から外部に導出される。
【0105】
図7の構成を敷衍すれば、複数の伝熱管で異なる温度の寒冷出力が可能なため、クライオスタットの寒冷利用方法が広がる。例えば、図9、図10で後述するように高温側の寒冷露出部67を輻射シールドに供給し、低温側の寒冷露出部68をより低い温度の輻射シールドに接続したり、クライオスタット内気相温度を冷却または気相部に露出して液化等の使い方ができる。
【0106】
図8は、寒冷の供給手段である冷凍機を2台接続する実施例の構成を示す断面図である。この構成においては、2段冷凍機の膨張機69に併設して1段冷凍機の膨張機70が拡張された上部真空容器71上に設置される。72は真空封止弁である。2段冷凍機側の構成は図2と同様であり、第1段寒冷発生部73、第2段寒冷発生部74、第3伝熱管75、寒冷露出部76、熱輻射シールド網78を有する。
【0107】
79は、1段冷凍機の膨張機70に結合する寒冷発生部であり、第1伝熱管80及び中継板81を介して第3伝熱管75に熱結合している。中継板81は高熱伝導材料で形成され、銅等の金属やヒートパイプでもよい。
【0108】
第1伝熱管80に連なる第3伝熱管75の下端近傍において、前記図7で示した寒冷露出部67と同様な寒冷露出部を形成し、外部に寒冷を取り出す構造としてもよい。82は寒冷発生部79を囲んで配置された多層熱輻射シールド箔である。
【0109】
前記図7の構成では、第1段寒冷発生部の熱負荷が熱シールドや外部寒冷供給に使われるため、寒冷発生能力に比べ熱負荷が大きい場合、第2段寒冷発生部の温度が上昇してしまう問題がある。
【0110】
図8の実施例構造では、第3伝熱管75は第1段寒冷発生部73には接続されず、寒冷発生部79に接続されているので、2段冷凍機の第1段寒冷発生部73への大きな熱負荷が軽減され、第2段寒冷発生部74の温度が上昇することはない。
【0111】
一方、熱シールドまたは寒冷露出部76以外に外部に寒冷が供給される場合、寒冷の供給源は寒冷発生部79であるため、2段冷凍機の寒冷発生部73に影響を及ぼすことはなく、十分な冷却機能を果たすことができる。尚、この実施例では冷凍機を段数の異なる2台とする構成を示したが、同じ段数の冷凍機2台でもよく、またこの構成を敷衍すれば2台以上任意台数の冷凍機増設が可能である。
【0112】
図9は、図1乃至図8で説明した本発明の冷却管を接続した極低温クライオスタットの実施例を示す断面構成図であり、冷凍機の駆動部を併せて図示してある。冷凍機の膨張機86には、ガス配管100を経由して、圧縮機90の高圧側配管91及び低圧側配管92を介してガスがバルブモータ89で切り替えて供給される。上部真空容器87は防振台座88を介して磁気シールドルーム83の上部に固定設置される。
【0113】
下部真空容器93は、磁気シールドルーム83の壁を貫通し、更に磁気シールドルーム内の極低温クライオスタット84のネック部の断熱フォーム94を貫通して取付けられる。上部寒冷露出部95は、サーマルアンカー98の上部または下部付近に形成される等温度面に接するように熱接触される。
【0114】
下部寒冷発生部96は、液体ヘリウム83を底部に有する液溜め気相部に露出した寒冷発散部97に結合している。寒冷発散部97は、銅メッシュ等寒冷を発散しやすい部材で形成されている。
【0115】
この実施例では、極低温クライオスタットの気相部における寒冷露出の一手法を示したが、サーマルアンカー88に寒冷を接続する構成は1個所でも複数個所でもよい。また、上部寒冷露出部95を設けず、下部寒冷露出部96のみの構成でもよい。
【0116】
更にこの実施例では、サーマルアンカー98に近接して上部寒冷露出部95を設けることで寒冷を熱輻射シールド網99に伝達することができる。このため、液体ヘリウム85の溜まっている液槽への輻射熱の伝達が少なくなり、ヘリウム蒸発量は減少する。また寒冷発散部97で冷却するので、液槽上部の気相部分の温度が下がるため蒸発速度が下がる。
【0117】
寒冷発散部97が十分冷却されると、クライオスタットの液溜め気相部で液化が始まるため、蒸発量をさらに下げることができる。一方、冷凍機の膨張機86が磁気シールドルーム83の外部に設けられているため、音響振動や磁気雑音は磁気シールドルーム83内部に悪影響を及ぼすことはない。また防振台座88に設置されているため、振動が磁気シールドルーム83内部に伝播する影響はすくない。
【0118】
図10は本発明冷却管を用いた極低温クライオスタットの更に他の実施例を示す断面構成図である。
図10に示した実施例は、冷凍機の膨張機86を、防音防振材102を内包する磁気シールド箱103で取り囲み、磁気シールドルーム83内に設置する構成例である。ここでは、図9のように極低温クライオスタット84のネック部に下部真空容器93を挿入してもよいが、真空層に接続する構成例を示す。
【0119】
即ち、下部真空容器93下部の寒冷露出部101は、上部のサーマルアンカー98の真空層で接続され、寒冷を効率よく熱輻射シールド網99に伝達する構造となっている。
【0120】
この実施例では、真空層内の上部のサーマルアンカー98に直接接続されているため、気相やクライオスタット構造材を経由した寒冷輸送に比べ熱抵抗が小さく効率が高い。従って、シールド温度をより低くすることが可能で、ヘリウム蒸発量を少なくすることができる。ここでは上部サーマルアンカーへの接続例を示したが、下部のサーマルアンカーに接続しても同様な効果が得られる。
【0121】
また、2段冷凍機等で2個の温度が異なる寒冷露出部を、温度の異なる2個のサーマルアンカーにそれぞれ接続しても、シールド温度を下げることができるため、ヘリウム蒸発量をさらに低減することができる。一方、磁気シールドルーム83内に磁気シールド箱103を用いて接続するため、下部真空容器93の長さが短くて済む。
【0122】
一般に、伝熱管の長さの2乗に比例して熱侵入が大きくなるため、冷凍機が排出すべき熱が少なくて済み、寒冷発生部の温度が低下する。結果的に、ヘリウム蒸発量を少なくするのに効果がある。
【0123】
本発明は、生体磁気計測用SQUID磁束計の極低温クライオスタットの寒剤(ヘリウム)蒸発量の低減をするために、比較的熱シールドの弱い極低温クライオスタットの補助冷却と再液化する手段を、振動・磁気雑音の影響なく提供することを目的としてなされた。しかし、振動や冷凍機騒音の影響を避けたい他の用途にも有用であることは明らかであり、次のような展開が期待される。
【0124】
図11は、本発明冷却管をMRI用超伝導マグネットへ適用した例を示す構成図であり、簡略化して図示してある。201はマグネットが収納され全体を支える外殻で、非磁性材料で構成されている。
【0125】
超伝導マグネット202は、外殻内の空隙に巻かれており、間隙には液体ヘリウムが充填されている。その周囲を真空断熱層200で囲んでいる。真空断熱層200には、熱輻射シールド204が内臓されており、外部から超伝導マグネットへの熱侵入を防止している。205は貫通部である。
【0126】
液体窒素で輻射シールドする場合は、液体ヘリウムが充填されている超伝導マグネット202の外側に真空層を設け、さらに外側に液体窒素槽を設ける多重構造となる。203は本発明冷却管で熱輻射シールド204に接続されるが、液体窒素槽に接続されてもよい。また、寒冷露出部を2個以上もつ冷却管を接続する場合、複数の熱輻射シールドに夫々接続しても、1個を液体ヘリウム槽に露出させてもよい。
【0127】
このような構成によれば、冷却管203によって、マグネット本体から距離を置くことができるため、騒音発生部の防音措置をとることができる。冷凍機の圧力振動に伴う騒音を防止できるばかりでなく、既存の冷凍機を接続する構造にないマグネットに対しても、ヘリウム注入口に冷却管を挿入するだけで機種によらず蒸発量低減が図れるという長所がある。
【0128】
更に、液体窒素をシールドとして使っている機器においても、生体磁気計測用クライオスタット同様、蒸発量を低減するために有効である。
【0129】
図12は、一般的な真空機器への適用例として、電子ビーム露光装置への本発明冷却管の適用例を示す接続図であり、高真空を得るためのクライオポンプとしての使用した例である。
【0130】
206は、周囲振動を遮断するための防振台、207は露光すべきポイントを移動するためのステッパ、208は電子ビーム鏡筒で電子ビームをターゲットに当てるための電子ビーム発生源を内蔵しており、内部は中空で真空状態にある。
【0131】
209は、電子ビーム鏡筒内部の真空を保持するための真空引き用配管であり、その冷却部に、本発明の冷却管211の寒冷露出部210が接している。212はシールド箱であり、内部に冷凍機を内蔵し、冷凍機の磁気雑音が外部に漏洩しないように遮蔽する。
【0132】
電子顕微鏡や電子ビーム露光装置等の電子ビーム鏡筒は、高真空を必要とするが、同時に振動・磁気雑音を極端に嫌う。これらは、真空中を飛行する電子の直進性を生かした像の拡大・縮小の効果を利用しているが、磁気雑音や機器の振動は像のブレを引き起こすため、性能を著しく損なうことになる。
【0133】
極低温冷凍機は、気体分子を冷凍吸着するクライオポンプとして半導体用高真空機器によく使われるが、本発明冷却管により距離をおいて接続できる構造は、磁気雑音の距離減衰効果と振動吸収・振動絶縁の点で有利に作用する。
【0134】
【発明の効果】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば次のような効果を期待することができる。
(1)ヘリウム循環に見られる閉塞の問題を起こすおそれのない冷却管及びこれを用いた極低温クライオスタットを容易に実現することができる。
(2)小型の寒冷手段により磁気雑音の影響を及ぼすことのない冷却管及びこれを用いた極低温クライオスタットを容易に実現することができる。
(3)小型の設備でヘリウム消費量を減らすことが可能な冷却管及びこれを用いた極低温クライオスタットを容易に実現することができる。
【0135】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した冷却管の基本構成を示す断面構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す断面構成図である。
【図3】本発明の更に他の実施例を示す要部の断面構成図である。
【図4】本発明の更に他の実施例を示す要部の断面構成図である。
【図5】本発明の伝熱管の構成例を示す断面構成図である。
【図6】本発明の更に他の実施例を示す要部の断面構成図である。
【図7】本発明の更に他の実施例を示す断面構成図である。
【図8】本発明の更に他の実施例を示す断面構成図である。
【図9】本発明冷却管を用いた極低温クライオスタットの実施例を示す断面構成図である。
【図10】本発明冷却管を用いた極低温クライオスタットの更に他の実施例を示す断面構成図である。
【図11】 MRI用超伝導マグネットへの本発明冷却管の適用例を示す接続図である。
【図12】電子ビーム露光装置への本発明冷却管の適用例を示す接続図である。
【図13】非特許文献1に記載された従来技術を示すヘリウム循環システム構成図である。
【図14】非特許文献2に記載された従来技術を示す極低温冷凍機のクライオスタット接続構成図である。
【符号の説明】
11 膨張機
12 上部真空容器
13 寒冷発生部
14 多層熱輻射シールド箔
15 伝熱管
16 スペーサ
17 下部真空容器
18 寒冷露出部
19 真空封止弁
20 封止板

Claims (14)

  1. 筒状真空容器の上端部に取り付けられた冷凍機と、前記真空容器内に配置された前記冷凍機の寒冷発生部と、この寒冷発生部に一端が接続され、他端が前記真空容器の下端より外部に露出して寒冷露出部を形成する所定長の伝熱管とを有し、前記寒冷発生部は前記冷凍機と結合する第1段寒冷発生部(高温側)と第2段寒冷発生部(低温側)とよりなり、前記第1段寒冷発生部に接続する第1伝熱管を設け、この第1伝熱管に熱的に接続するとともに前記第1段及び第2段寒冷発生部を取り囲む熱輻射シールド部材を設け、前記熱輻射シールド部材の内側において一端が前記第2段寒冷発生部に接続され、他端が前記真空容器の下端より外部に露出して寒冷露出部を形成する所定長の第2伝熱管を具備した冷却管。
  2. 前記第1伝熱管内に窒素を、前記第2伝熱管内にヘリウムを封入したことを特徴とする請求項1記載の冷却管。
  3. 前記第1段寒冷発生部に一端が接続され、他端が前記第2伝熱管を同心円状に囲んで前記真空容器下部に延長された第3伝熱管路を設けたことを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の冷却管。
  4. 前記第3伝熱管の他端を前記真空容器の途中の外部に露出させて寒冷露出部を形成したしたことを特徴とする請求項3記載の冷却管。
  5. 前記伝熱管の両側または片側の端部に、歪吸収部材を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の冷却管。
  6. 前記伝熱管の両側または片側の端部を高熱伝導材料で構成し、その他の管部を熱伝導性の低い材料で構成したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の冷却管。
  7. 前記伝熱管において、熱伝導性の低い材料で構成した管部周囲に真空断熱部を形成したことを特徴とする請求項6記載の冷却管。
  8. 前記真空容器の上端部に前記冷凍機に追加して配置された1台以上の増設冷凍機と、この増設冷凍機と前記真空容器内で結合する増設寒冷発生部とを具備し、前記増設寒冷発生部を前記熱輻射シールド部材又は前記第1寒冷発生部に接続したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の冷却管。
  9. 前記請求項1乃至8のいずれかに記載の冷却管を、極低温クライオスタットの真空部に接続し、かつ前記冷却管の前記寒冷放出部を前記極低温クライオスタット内部の熱輻射シールド板の高温部に接触させ、又は複数の寒冷露出部のある冷却管においては極低温クライオスタットの夫々対応する複数の温度の熱シールド板に接触させたことを特徴とする極低温クライオスタット。
  10. 前記請求項1乃至8のいずれかに記載の冷却管を、極低温クライオスタットの開口部に挿入し、前記極低温クライオスタットの開口部付近の真空層内に接続された熱輻射シールド板の付け根近傍に生じる等温度面に接するように前記冷却管の寒冷露出部を配置させたことを特徴とする極低温クライオスタット。
  11. 前記請求項1乃至8のいずれかに記載の冷却管の複数の寒冷露出部の内、最も低温の寒冷露出部を極低温クライオスタットの液溜め上部の極低温の気相部分に接するように位置させたことを特徴とする極低温クライオスタット。
  12. 前記真空層の熱輻射シールド板及び液溜め上部気相に夫々挿入された別々の冷却管を具備することを特徴とする請求項9乃至11のいずれかに記載の極低温クライオスタット。
  13. 前記冷却管または極低温クライオスタットにおいて、前記冷凍機を囲むように高透磁率材料の板で磁気シールドし、かつ前記冷却管の重量保持部に振動吸収材料を挿入したことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の冷却管又はこれを用いた極低温クライオスタット。
  14. 前記冷却管または極低温クライオスタットにおいて、貫通穴のある磁気シールド装置から前記冷凍機を外部に出し、前記冷却管の重量保持部を外部に設けた振動吸収材を挟んで設置したことを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の冷却管又はこれを用いた極低温クライオスタット。
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