JP3852003B2 - 無機建材用水性塗料組成物及びその塗装板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、無機建材用水性塗料組成物及びその塗装板に関する。
【0002】
【従来の技術】
珪酸カルシウム板、石綿セメント板、木片セメント板、パルプセメント板、軽量気泡コンクリート板等の無機建材の強度アップ、耐水性、耐エフロレッセンス性などの性能向上の為に、塗料組成物が塗布されている。
【0003】
上記無機建材用塗料組成物として、有機溶剤型の塩化ビニル系塗料組成物や、2液ウレタン系塗料組成物が多く使用されてきたが、有機溶剤の揮散や廃棄リサイクル時において塩素にかかわる公害問題、安全衛生性等の面から、最近では水性塗料組成物が用いられるようになってきた。
【0004】
この様な水性塗料組成物としては、アクリル酸モノマー等の酸基含有モノマー、メチルメタクリレートモノマー、スチレン等の硬質モノマー及びn−ブチルアクリレート等の軟質モノマーを、通常スチレンモノマー等の硬質モノマーを10重量%以下となるように含有させたモノマー混合物を共重合反応させて得られる共重合体樹脂を、水に分散したスチレン−アクリル型等のエマルションを樹脂成分とするものが一般的に使用されている。
【0005】
しかしながら、スチレン−アクリル型等のエマルションを使用した水性塗料組成物は、従来からの有機溶剤型の塩化ビニル系の塗料組成物に比べ、耐透水性、耐透湿性、耐ブロッキング性等の性能が不十分であった。ここで、耐ブロッキング性とは、塗装された無機建材が互いに付着して剥がれ難くなるというブロッキング現象を起こさない性質をいう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐エフロレッセンス性、耐水性、耐透水性、耐透湿性、耐ブロッキング性等に優れた塗膜を形成できる無公害型の無機建材用水性塗料組成物及び該無機建材用水性塗料組成物を無機建材表面に塗装して得られる無機建材塗装板を、提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来から使用されている樹脂水性液に、ワックス水分散液又はアルキルアルコキシシラン化合物やその縮合物の水分散液である水性撥水剤を含有させた水性塗料組成物によれば、耐エフロレッセンス性、耐水性、耐透水性、耐透湿性、耐ブロッキング性等に優れた塗膜を無機建材表面に形成でき、又該水性塗料組成物は無公害型であり、上記課題が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の無機建材用水性塗料組成物及びその塗装板に係る。
【0009】
1.樹脂水性液(A)に、ワックス水分散液、アルキルアルコキシシラン化合物水分散液及びアルキルアルコキシシラン化合物縮合物水分散液から選ばれる少なくとも1種の水性撥水剤(B)を配合してなることを特徴とする無機建材用水性塗料組成物。
【0010】
2.水性撥水剤(B)の配合量が、樹脂水性液(A)の固形分100重量部に対して、固形分で1〜50重量部である上記項1に記載の無機建材用水性塗料組成物。
【0011】
3.樹脂水性液(A)が、コア・シェル型樹脂エマルション(1)である上記項1又は2に記載の無機建材用水性塗料組成物。
【0012】
4.樹脂水性液(A)が、硬化型樹脂水溶液(2)である上記項1又は2に記載の無機建材用水性塗料組成物。
【0013】
5.樹脂水性液(A)が、コア・シェル型樹脂エマルション(1)及び硬化型樹脂水溶液(2)の混合物である上記項1又は2に記載の無機建材用水性塗料組成物。
【0014】
6.硬化型樹脂水溶液(2)が、カルボキシル基、水酸基及び置換又は未置換アミド基を有するビニル樹脂を含有する上記項1、2、4又は5に記載の無機建材用水性塗料組成物。
【0015】
7.(a)カルボキシル基含有不飽和単量体及び(b)(a)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(i)を、上記ワックス水分散液、アルキルアルコキシシラン化合物水分散液及びアルキルアルコキシシラン化合物縮合物水分散液から選ばれる少なくとも1種の水性撥水剤(B)及び水の存在下で乳化重合してコア部を形成し、次いで、このものに、(c)(メタ)アクリル酸エステル、(d)カルボキシル基含有不飽和単量体および(e)(c)及び(d)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(ii)を加え、乳化重合してシェル部を形成することにより得られる撥水剤含有コア・シェル型樹脂エマルション(C)を、樹脂成分として含有することを特徴とする無機建材用水性塗料組成物。
【0016】
8.ワックス水分散液に用いるワックスが、融点30〜150℃の範囲のものである上記項1又は7に記載の無機建材用水性塗料組成物。
【0017】
9.ワックス水分散液が、平均粒子径10〜3,000nmのものである上記項1、7又は8に記載の無機建材用水性塗料組成物。
【0018】
10.無機建材用水性塗料組成物が、更に、無機質充填材100g当たりの吸油量が10〜40mlのリン片状無機質充填材(D)を含有する上記項1乃至9のいずれか1項に記載の無機建材用水性塗料組成物。
【0019】
11.塗装された又は未塗装の無機建材表面に、上記項1乃至10のいずれか1項に記載の無機建材用水性塗料組成物を塗布し、乾燥することにより製造される無機建材塗装板。
【0020】
【発明の実施の形態】
無機建材用水性塗料組成物
本発明の好ましい無機建材用水性塗料組成物としては、下記塗料組成物(I)及び(II)が、挙げられる。
【0021】
塗料組成物(I):樹脂水性液(A)に、ワックス水分散液、アルキルアルコキシシラン化合物水分散液及びアルキルアルコキシシラン化合物縮合物水分散液から選ばれる少なくとも1種の水性撥水剤(B)を配合してなることを特徴とする無機建材用水性塗料組成物。
【0022】
塗料組成物(II):(a)カルボキシル基含有不飽和単量体及び(b)(a)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(i)を、上記ワックス水分散液、アルキルアルコキシシラン化合物水分散液及びアルキルアルコキシシラン化合物縮合物水分散液から選ばれる少なくとも1種の水性撥水剤(B)及び水の存在下で乳化重合してコア部を形成し、次いで、このものに、(c)(メタ)アクリル酸エステル、(d)カルボキシル基含有不飽和単量体および(e)(c)及び(d)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(ii)を加え、乳化重合してシェル部を形成することにより得られる撥水剤含有コア・シェル型樹脂エマルション(C)を、樹脂成分として含有することを特徴とする無機建材用水性塗料組成物。
【0023】
塗料組成物(I)
塗料組成物(I)は、樹脂水性液(A)に、上記特定の水性撥水剤(B)を配合してなるものである。
【0024】
上記樹脂水性液(A)としては、従来から公知の合成樹脂エマルション、コア・シェル型樹脂エマルション(1)などの樹脂エマルションや硬化型樹脂水溶液(2)及びこれらの混合物を使用することができる。
【0025】
上記合成樹脂エマルション及びコア・シェル型樹脂エマルション(1)の粒径は、いずれも、通常、平均粒子径約80〜3,000nm、特に約90〜2,000nmの範囲のものが好ましい。エマルションの平均粒子径が約80nm未満になると塗膜の上塗り付着性等が低下し、一方3,000nmを超えると耐ブロッキング性等が低下するので好ましくない。
【0026】
本明細書において平均粒子径は、コールター社製、「ナノサイザ−N−4」を用いて測定した。
【0027】
上記合成樹脂エマルションとしては、酢酸ビニル系エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルション、酢酸ビニル−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体系エマルション、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体系エマルション、スチレン−ブタジェン共重合体系エマルション、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体系エマルション、マレイン化ポリブタジェン重合体系エマルション、塩化ビニル系エマルション、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体系エマルション、合成ゴムラテックス系エマルション、ポリエステル樹脂系エマルション、シリコン樹脂系エマルション、フッ素樹脂系エマルション、ウレタン樹脂系エマルション、エポキシ樹脂系エマルション等が挙げられる。
【0028】
また、これらのエマルションはガラス転移温度が−20℃〜120℃、特に−10℃〜100℃の範囲が好ましい。ガラス転移温度が−20℃未満になると塗膜の耐ブロッキング性等が低下し、一方120℃を超えると塗膜の成膜性等が低下するので好ましくない。
【0029】
上記コア・シェル型樹脂エマルション(1)は、重合体粒子の水分散液であって、その重合体粒子はコア部(芯部)とその周囲を覆っているシェル部(被覆部)とから構成されており、それ自体既知のシード重合法などにより調製することができる。
【0030】
上記コア・シェル型樹脂エマルション(1)としては、例えば次のものを好適に使用できる。即ち、(a)カルボキシル基含有不飽和単量体及び(b)(a)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(i)を水中で乳化重合してコア部を形成し(シード重合ラテックス)、次いで、このものに、(c)(メタ)アクリル酸エステル、(d)カルボキシル基含有不飽和単量体および(e)(c)及び(d)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(ii)を加え、乳化重合してシェル部を形成することにより得られるコア・シェル型樹脂エマルション(1’)を、好適に使用できる。
【0031】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体(a)は、1分子中にカルボキシル基と重合性二重結合をそれぞれ少なくとも1個以上有する化合物であり、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などがあげられる。
【0032】
上記不飽和単量体(b)は、1分子中に重合性二重結合を少なくとも1個以上有する化合物であり、上記単量体(a)は含まれない。具体的には、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸と炭素数1〜20のモノアルコールとのエステル化物;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;アクリルアミド、メタクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、メタクリル酸アシッドホスホオキシエチル、アクリル酸3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル、メチルプロパンスルホン酸アクリルアミド、ジビニルベンゼン、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、(ポリ)オキシエチレンジアクリレート、(ポリ)オキシエチレンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アリルスルホコハク酸、スチレンスルホン酸などの官能基含有単量体などが包含される。単量体(b)は、特にスチレンを必須単量体成分として配合することが好ましい。
【0033】
単量体混合物(i)における単量体(a)と単量体(b)との比率は、特に制限されないが、この両成分の合計重量を基準に、単量体(a)は0.05〜50重量%、特に0.5〜5重量%、単量体(b)は99.95〜50重量%、特に99.5〜95重量%の範囲内が適している。
【0034】
コア部は、これらの単量体混合物(i)を水中で、通常の乳化重合法により重合することにより調製できる。重合触媒としては、水溶性または油溶性の過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などがあげられ、このうち特に水溶性のものが好適である。その使用量は、単量体混合物(i)の0.1〜1重量%が好ましい。さらに、重合速度の促進や低温重合を望むには、重亜硫酸ナトリウム、塩化第1鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリットなどの還元剤を併用することができる。さらに、それ自体既知の重合調整剤や界面活性剤なども必要に応じて使用できる。
【0035】
次に、かくして得られたコア部の水分散液に、(メタ)アクリル酸エステル(c)、カルボキシル基含有不飽和単量体(d)および不飽和単量体(e)からなる単量体混合物(ii)を加え、乳化重合してシェル部を形成することによりコア・シェル型樹脂エマルションが得られる。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステル(c)およびカルボキシル基含有不飽和単量体(d)としては、上記の単量体混合物(i)の単量体(a)および単量体(b)で例示したものが適用できる。また、単量体(e)は、1分子中に重合性二重結合を少なくとも1個以上有する化合物で、しかも、(メタ)アクリル酸エステル(c)およびカルボキシル基含有不飽和単量体(d)を除いたものであって、単量体混合物(i)の単量体(b)で例示したものが適用できる。
【0037】
上記単量体(c)として、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートなどの水酸基含有モノマーを使用することによりシェル部に水酸基を導入することができる。該水酸基の含有量はシェル部樹脂を基準として、水酸基価約10〜200mgKOH/g、特に約20〜150mgKOH/gの範囲が好ましい。該水酸基は、必要に応じて配合されるメラミン樹脂などの水酸基と反応する架橋剤により架橋塗膜を形成し、耐水性、耐ブロッキング性等に優れた塗膜を形成することができる。
【0038】
単量体混合物(ii)におけるこれらの単量体の比率は特に制限されないが、これらの単量体の合計重量を基準に、単量体(c)は15〜100重量%、単量体(d)は0〜15重量%、単量体(e)は0〜70重量%の範囲内が適している。シェル部を形成するための乳化重合において、上記した重合触媒、還元剤やさらに、重合調整剤や界面活性剤なども必要に応じて使用できる。
【0039】
上記コア・シェル型樹脂エマルション(1)において、単量体混合物(i)と単量体混合物(ii)との構成比率は特に制限されないが、両成分の合計重量を基準に、単量体混合物(i)は5〜80重量%、特に10〜60重量%、単量体混合物(ii)は95〜20重量%、特に90〜40重量%の範囲内が適している。
【0040】
特に、上記コア・シェル型樹脂エマルション(1)はコア部のガラス転移温度が−20℃〜50℃、特に0℃〜40℃、シェル部のガラス転移温度が50℃より高く、特に50℃〜105℃の範囲内であって、しかもこの両部分の合計ガラス転移温度が50℃以下、特に10℃〜40℃の範囲内にあることが好ましい。
【0041】
コア・シェル型樹脂エマルション(1)において、コア部のガラス転移温度が−20℃より低くなると形成塗膜がブロッキングしやすくなり、一方、50℃より高くなると造膜性や低温物性(凍結融解試験)などが低下する。シェル部のガラス転移温度が50℃以下では形成塗膜がブロッキングしやすくなり、さらに両部分の合計ガラス転移温度が30℃以上になると造膜性や低温物性(凍結融解試験)などが低下するので、いずれも好ましくない。
【0042】
本明細書において、重合体のガラス転移温度(Tg)(℃)は、下記式によって算出することができる。
【0043】
1/Tg(゜K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・
Tg(℃)=Tg(゜K)−273
式中、W1、W2、・・は共重合に使用された単量体のそれぞれの重量%、T1、T2、・・はそれぞれ単量体のホモポリマーのTg(゜K)を表わす。なお、T1、T2、・・は、Polymer Hand Book(Scond Edition,J.Brandup・E.H.Immergut 編)による値である。
【0044】
また、上記文献にホモポリマーのガラス転移温度(℃)が記載されていないものについては、単離塗膜をバイブロン動的粘弾性装置「DAYNAMIC VISCO ELASTOMETER MODEL VIBRON DDV−IIEA型」(TOYO BACDWINCO. Ltd)を用いて、周波数110ヘルツ、昇温速度3℃/分において動的ガラス転移温度(℃)を測定した。試料としてはポリプロピレン板に塗装後、単離した塗膜を用いた。
【0045】
硬化型樹脂水溶液(2)としては、特に制限されずに従来から公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂及びこれらの変性樹脂から選ばれる少なくとも1種の水溶性樹脂の水溶液が使用できる。
【0046】
該水溶性樹脂の水溶化は、該水溶性樹脂を直接水に溶解するか、又は該樹脂がカルボキシル基を含有する場合には、該カルボキシル基を塩基性化合物で中和(中和当量約0.5〜1.5)したのち、水に溶解することができる。該塩基性化合物としては、例えば、アンモニア;エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級アミン;ジエチルアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−プロパノールアミン、ジ−iso −プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級アミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級アミン;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機水酸化物等を挙げることができる。
【0047】
(1)水溶性ビニル系樹脂:該ビニル系樹脂としては、例えば、使用モノマー成分の合計100重量部に対して、カルボニル基含有ラジカル重合性ビニル系モノマー(イ)が0重量%〜60重量%、好ましくは5重量%〜45重量%、カルボキシル基含有ラジカル重合性ビニル系モノマー(ロ)が0重量%〜20重量%、好ましくは5重量%〜15重量%及びその他のラジカル重合性不飽和モノマー(ハ)が20重量%〜94重量%、好ましくは40重量%〜90重量%であり、且つ上記(イ)+(ロ)のモノマー含有量が6重量%〜80重量%、好ましくは10重量%〜60重量%の範囲のラジカル共重合体が挙げられる。上記(イ)モノマーの配合割合は、上記した範囲を越えると耐水性等の被膜性能が悪くなるといった欠点がある。また、上記(ロ)モノマーの配合割合が2重量%未満になると、例えば、基材に対する浸透性が低下して、その機能を充分に発揮できなくなったり、耐ブロッキング性等の性能が低下するといった欠点があり、一方20重量%を越えると被膜の耐水性、耐エフロレッセンス性等が悪くなるといった欠点がある。
【0048】
また、上記(イ)及び(ロ)モノマーの合計量が6重量%未満になると基材に対する浸透性が劣るため耐ブロッキング性、耐エフロレッセンス性等の性能が悪くなり、一方80重量%を越えると被膜の耐水性等の性能が悪くなるといった欠点がある。
【0049】
カルボニル基含有不飽和モノマー(イ)は、1分子中に少なくとも1個のケト基又はアルデヒド基と1個のラジカル重合可能な二重結合を有するモノマー、即ち重合可能なモノオレフィン性不飽和のアルデヒド化合物及びケト化合物である。代表的な具体例としては、例えば、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクロレイン、ホルミルスチロール、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、ダイアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ビニルアルキルケトンなどが挙げられる。これらの中でもダイアセトン(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0050】
カルボキシル基含有不飽和モノマー(ロ)は1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基(無水カルボキシル基も含む)と1個のラジカル重合性不飽和基を含有する不飽和化合物である。代表的な具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられる。
【0051】
その他のラジカル重合性不飽和モノマー(ハ)としては、上記以外のラジカル重合性不飽和モノマーであって上記したカルボニル基やカルボキシル基と実質的に悪影響(反応等)を起こさない非官能性の不飽和化合物である。代表的な具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルキル又はシクロアルキルエステルモノマー;メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のアルコキシアルキルエステルモノマー;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー;ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等の不飽和モノマー;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−スチリルエチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリヒドロキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルヒドロキシシラン等のヒドロキシシラン及び/又は加水分解性シラン基含有ビニル系モノマー;パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロイソノニルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
上記した以外にその他のモノマーとして、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルメタクリルアミド等の如きN−メチロール(メタ)アクリルアミド、これらのN−メチロール(メタ)アクリルアミドのメチロール基の末端水素原子がブチル基、プロピル基などのアルキル基で置換された誘導体などが挙げられる。
【0053】
ビニル系樹脂は、溶液重合法によって製造することが好ましい。具体的には、例えば、アルコール溶媒類、エーテル溶媒等の親水性有機溶媒を含む溶媒中で上記したラジカル重合性モノマーをラジカル重合開始剤(例えば、アゾ系開始剤、パーオキサイド系開始剤等)の存在下で約50℃〜140℃の温度で約4〜10時間反応を行うことにより製造することができる。
【0054】
該ビニル系樹脂は、数平均分子量約1,000〜100,000、特に2,000〜50,000の範囲が好ましい。数平均分子量が約1,000未満になると耐水性等が低下し、一方100,000を越えると基材への浸透性が劣り、そのために耐ブロッキング性が悪くなるので好ましくない。
【0055】
(2)水溶性ポリエステル系樹脂:該ポリエステル系樹脂としては、例えば、多塩基酸と、多価アルコールとを水性化に必要なカルボキシル基が残るようにエステル化反応又はエステル交換反応させることにより得られる。多塩基酸としては、例えば、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)ピロメリット酸、(無水)トリメリット酸、(無水)コハク酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル等の1分子中に2〜4個のカルボキシル基又はカルボン酸メチルエステル基を有する化合物等を挙げることができる。また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグルコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリシクロデカンジメタノール、ジメチロールプロピオン酸等の1分子中に2〜6個の水酸基を有するアルコール類等を挙げることができる。また、多塩基酸及び多価アルコール以外にも一塩基酸(例えばヒマシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、アマニ油脂肪酸等の脂肪酸や安息香酸等)、油脂類等を必要に応じて使用できる。
【0056】
該ポリエステル系樹脂のカルボキシル基は、樹脂酸価として、約10〜200mgKOH/g、好ましくは約20〜150mgKOH/gの範囲である。該酸価が下限を下回ると基材に対する浸透性が劣るため耐ブロッキング性、耐エフロレッセンス性等の性能が悪くなり、一方、酸価が上限を上回ると被膜の耐水性等の性能が悪くなるといった欠点がある。
【0057】
該ポリエステル系樹脂は、数平均分子量約500〜20,000、特に700〜10,000の範囲が好ましい。数平均分子量が約500未満になると耐水性等が低下し、一方、20,000を越えると基材への浸透性が劣り、そのために耐ブロッキング性が悪くなるので好ましくない。
【0058】
(3)水溶性ポリウレタン系樹脂:該ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸又はジメチロールプロピオン酸及びポリオールとポリイソシアネート化合物との反応物が挙げられる。ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール;メトキシポリメチレンエーテルグリコール、メトキシポリエチレンエーテルグリコール、エトキシポリエチレンエーテルグリコール、エトキシポリブチレンエーテルグリコールなどのアルコキシポリアルキレングリコール等が挙げられる。また、ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;及びこれらのイソシアヌレート体やビュウレット体等の類似の化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上混合して使用できる。
【0059】
(4)水溶性エポキシ系樹脂:該エポキシ樹脂としては、例えば、従来から公知の1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂をポリカルボン酸で変性してなるものが挙げられる。1分子中に少なくとも1個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ基を含有するラジカル重合性モノマー(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等)の単独ラジカル重合体、該モノマーとその他のラジカル重合性モノマー(例えば(メタ)アクリル酸の炭素数1〜24のアルキル又はシクロアルキルエステル、スチレン等)との共重合体、エポリードGT300(ダイセル化学工業(株)製、商品名、3官能脂環式エポキシ樹脂)、エポリードGT400(ダイセル化学工業(株)製、商品名、4官能脂環式エポキシ樹脂)、EHPE(ダイセル化学工業(株)製、商品名、3官能脂環式エポキシ樹脂)、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ε−カプロラクタム変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、ポリビニルシクロヘキセンジエポキサイド等が挙げられる。ポリカルボン酸としては、例えば、ポリカルボン酸樹脂(アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等)、ポリカルボン酸化合物(例えば、アジピン酸、セバシン酸、フタール酸等)等が挙げられる。
【0060】
該エポキシ系樹脂のカルボキシル基は、樹脂酸価として、約10〜200mgKOH/g、好ましくは約20〜150mgKOH/gの範囲である。該酸価が下限を下回ると基材に対する浸透性が劣るため耐ブロッキング性、耐エフロレッセンス性等の性能が悪くなり、一方、酸価が上限を上回ると被膜の耐水性等の性能が悪くなるといった欠点がある。
【0061】
該エポキシ系樹脂は、数平均分子量約500〜20,000、特に700〜10,000の範囲が好ましい。数平均分子量が約500未満になると耐水性等が低下し、一方、20,000を越えると基材への浸透性が劣り、そのために耐ブロッキング性が悪くなるので好ましくない。
【0062】
上記各水溶性樹脂は、水酸基を含有することができる。該水酸基は置換もしくは未置換アミド基により架橋塗膜を形成し、耐ブロッキング性、耐エフロレッセンス性、耐水性等に優れた性能を発揮するので、これを有することが好ましい。該水酸基の含有量は、約20〜200mgKOH/g、好ましくは約30〜150mgKOH/gの範囲である。
【0063】
上記硬化型樹脂水溶液(2)としては、カルボキシル基、水酸基及び置換又は未置換アミド基を有するビニル系樹脂を塩基性化合物で中和したのち水溶化した水溶液が、耐水性、耐エフロレッセンス性に特に優れた効果を発揮するので、この硬化型の樹脂水溶液を使用することが好ましい。
【0064】
また、硬化型樹脂水溶液(2)として、上記した以外にも、カルボニル基含有樹脂や水酸基含有樹脂に架橋剤(カルボニル基含有樹脂に対してポリヒドラジド化合物架橋剤を硬化型樹脂成分とする硬化型樹脂水溶液を使用することができる。
【0065】
上記ポリヒドラジド化合物は、1分子中にヒドラジド基(−CO−NH−NH2)を2個以上含有する上記カルボニル基と反応して架橋構造を作る化合物である。
【0066】
ポリヒドラジド化合物の代表的な具体例としては、例えば、カルボジヒドラジド等のジヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、エイコ酸二酸ジヒドラジドなどの炭素数2〜40個の脂肪族カルボン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド、ピロメリト酸トリヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジドなどの芳香族ポリヒドラジド、及びマレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジヒドラジド、ビスセミカルバジド、ポリアクリル酸ポリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジド/カルボエチル)−5−イソプロピルヒダントインなどのその他のポリヒドラジドなどが挙げられる。
【0067】
ポリヒドラジド化合物の配合割合は、水溶性樹脂の有するカルボニル基に対して0〜2当量、好ましくは0〜1当量の範囲である。
【0068】
本発明において、樹脂水性液(A)として、特にコア・シェル型樹脂エマルション(1)と硬化型樹脂水溶液(2)との混合物を使用することが好ましい。混合物として使用する場合には、成分(1)/成分(2)との混合割合は、両者の固形分総合計量換算で20〜90重量%/80〜10重量%、特に60〜80重量%/40〜20重量%の範囲が好ましい。また、硬化型樹脂水溶液(2)としては、未置換もしくは置換アミド基、水酸基及びカルボキシル基を含有する基体樹脂を硬化性樹脂成分とするものが好ましい。
【0069】
本発明において、樹脂水性液(A)に配合される水性撥水剤(B)は、ワックス水分散液、アルキルアルコキシシラン化合物やその縮合物の水分散液である。
【0070】
ワックス水分散液で使用されるワックスとしては、融点が30℃〜150℃、特に50℃〜120℃の範囲のものが好ましい。融点が30℃未満になると耐ブロッキング性が低下し、一方、150℃を超えると塗膜の外観(平滑性など)が低下するので好ましくない。
【0071】
また、ワックス水分散液は、平均粒子径10〜3,000nm、特に20〜2,000nmの範囲のものが好ましい。平均粒子径が10nmを下回ると塗料粘度が高くなるので塗装作業性が低下し、一方、3,000nmを超えると耐水性、耐透水性などが低下するので好ましくない。
【0072】
ワックス水分散液に用いられるワックスとしては、従来から公知のものを使用することができる。具体的には、天然および合成の炭化水素ワックスやこれらの変性物、酸化物等を広く使用することができる。ここで,天然ワックスとしては、例えば、牛脂、豚脂等の水添硬化ロウ、ラノリン、ミツロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス、カルナバロウ、キャンデリラロウ、木ロウ、ヌカロウ等の植物性ワックス、さらに、モンタンワックス、セリシンロウ、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の鉱物性ワックスをあげることができる。また、合成ワックスとしては、例えば、分子量500〜10,000、特に600〜4,000程度のポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フイッシャートロブッシュ法によるワックス、およびこれらの合成ワックスの酸化物や酸変性物等をあげることができる。これらのワックスは、乳化剤を用いてエマルジョンにしたものを用いることができる。
【0073】
アルキルアルコキシシラン及びその縮合物としては、特に制限はなく、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルモノアルコキシシラン、及びこれらの縮合物が挙げられる。一般には、アルキルアルコキシシランの珪素に直結した少なくとも一個のアルキル基の炭素数は1〜20、好ましくは6〜20であり、さらにアルコキシ基の炭素数は1〜4である。
【0074】
アルキルアルコキシシラン及びその縮合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ノニルトリメトキシシラン、ノニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ウンデシルトリメトキシシラン、ウンデシルトリエトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、トリデシルトリメトキシシラン、トリデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン、ぺンタデシルトリメトキシシラン、ペンタデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、ヘプタデシルトリメトキシシラン、ヘプタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、ノナデシルトリメトキシシラン、ノナデシルトリエトキシシラン、エイコシルトリメトキシシラン、エイコシルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン等のシラン類、これらのシラン化合物の縮合物が挙げられる。
【0075】
水性撥水剤(B)の配合割合は、樹脂水性液(A)の固形分100重量部に対して、水性撥水剤(B)の固形分換算で1〜50重量部、特に1〜20重量部の範囲が好ましい。水性撥水剤(B)の配合割合が1重量部未満になると、耐水性、耐透水性、耐ブロッキング性などが低下し、一方、50重量部を越えると耐エフロレッセンス性、上塗り付着性などが低下するので好ましくない。
【0076】
塗料組成物( II )
塗料組成物(II)は、(a)カルボキシル基含有不飽和単量体及び(b)(a)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(i)を、上記ワックス水分散液、アルキルアルコキシシラン化合物水分散液及びアルキルアルコキシシラン化合物縮合物水分散液から選ばれる少なくとも1種の水性撥水剤(B)及び水の存在下で乳化重合してコア部を形成し、次いで、このものに、(c)(メタ)アクリル酸エステル、(d)カルボキシル基含有不飽和単量体および(e)(c)及び(d)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(ii)を加え、乳化重合してシェル部を形成することにより得られる撥水剤含有コア・シェル型樹脂エマルション(C)を、主な樹脂成分として含有するものである。
【0077】
撥水剤含有コア・シェル型樹脂エマルション(C)において使用される成分、即ち、(a)カルボキシル基含有不飽和単量体、(b)不飽和単量体、単量体混合物(i)、水性撥水剤(B)、(c)(メタ)アクリル酸エステル、(d)カルボキシル基含有不飽和単量体、(e)不飽和単量体、及び単量体混合物(ii)は、前記コア・シェル型樹脂エマルション(1’)の場合と同じものが使用できる。また、それぞれの成分配合割合、コア部とシェル部における水酸基価、ガラス転移温度なども該エマルション(1’)と同様の範囲に入ることが好ましい。即ち、撥水剤含有コア・シェル型エマルション(C)は、前記コア・シェル型樹脂エマルション(1’)と比較して、該エマルション(C)はコア部を構成する単量体混合物(i)を水性撥水剤(B)及び水の存在下で乳化重合してコア部を形成するのに対して、該エマルション(1’)はコア部を構成する単量体混合物(i)を水性撥水剤(B)を含まない水の存在下で乳化重合してコア部を形成する点が異なるのみである。
【0078】
塗料組成物(II)は、コア部に水性撥水剤(B)が含まれるので、塗料組成物(I)のように水性撥水剤(B)を後で添加する必要はないが、必要に応じて水性撥水剤(B)や上記した硬化性樹脂水溶液(2)を後で添加することもできる。
【0079】
また、水性塗料組成物(以下、特に水性塗料組成物(I)及び水性塗料組成物(II)と断らない限り、水性塗料組成物はこれらの両者のものを示す。)には、必要に応じてリン片状無機質充填材(D)を配合することができる。リン片状無機質充填材(D)としては、具体的には、例えば、マイカ、タルクなどのリン片状の無機質充填材であって、このものは塗膜に耐湿性、耐透水性などの性能を向上させる目的として用い、吸油量としては10ml/無機質充填材100g〜40ml/無機質充填材100g、特に15ml/無機質充填材100g〜35ml/無機質充填材100gの範囲内のものが好ましい。無機質充填材(D)の吸油量が10ml/無機質充填材100g未満になると塗膜に耐湿性、耐透水性を向上させる効果が小さく、一方、40ml/無機質充填材100gを超えると配合するモノマー成分との相互作用により耐湿性、耐透水性などの性能が劣る場合があるので好ましくない。
【0080】
吸油量は、無機充填材100gに対するアマニ油の吸収される容量(ml)を表す。測定は、無機充填材1〜5gをガラス板上にとり、アマニ油をビュレットから少量ずつ顔料の上に滴下し、その都度全体をへらで練り合わせる。滴下、練り合わせを繰り返し、全体が硬いパテ状の塊になった状態になったときを終点とする。
【0081】
無機質充填材(D)を配合する場合の配合割合は、水性塗料組成物の樹脂固形分100重量部に対して、無機質充填材(D)を5〜170重量部、好ましくは10〜120重量部の範囲内で配合することが好ましい。配合割合が5重量部未満になると耐湿性、耐透水性などの性能を向上させる効果が小さく、一方、170重量部を超えると耐凍害性が劣るので好ましくない。
【0082】
水性塗料組成物には、上記した以外に更に必要に応じて、着色顔料、上記した以外の充填材、硬化触媒、流動性調整剤、消泡剤、有機溶剤、造膜助剤等を配合することができる。
【0083】
水性塗料組成物の固形分は1〜65重量%、好ましくは3〜60重量%の濃度で使用される。固形分が1重量%未満になると塗装膜厚を確保するために塗装回数が多くなるので塗装作業性が悪くなり、一方65重量%を越えると基材に対する浸透性が劣るため耐ブロッキング性が悪くなる。
【0084】
本発明の水性塗料組成物は、任意の被塗物、例えば、セメント系、珪酸カルシウム系、石膏等の無機質材料を主成分とする無機質多孔質基材、鉄やアルミニウムなどの金属、スレート、コンクリート、レンガ、石綿基材などに塗装することができる。無機質多孔質基材としては、例えば、珪酸カルシウム板、石綿セメント板、木片セメント板、パルプセメント板、軽量気泡コンクリート板等の建築材料として使用されているものを挙げることができる。また、この被塗物は、プライマー等が既に塗装されたものであってもよい。
【0085】
水性塗料組成物の塗布量(固形分換算)は、0.1g/m2〜200g/m2、好ましくは0.5g/m2〜180g/m2の範囲である。塗布量が0.1g/m2未満になると、耐水性、耐透水性、耐エフロレッセンス性が低下し、一方200g/m2を越えると耐ブロッキング性等が低下するので好ましくない。
【0086】
水性塗料組成物の塗装方法は、特に制限なしに従来から公知の塗装方法、例えば、ローラー、刷毛、スプレー、浸漬、フローコーター(カーテンフローコーターなど)等の方法で行うことができる。
【0087】
乾燥は、例えば、通常の乾燥炉、熱風乾燥炉、ジェットヒーターなどで、雰囲気温度50℃〜200℃、好ましくは70℃〜150℃で、10秒〜30分、好ましくは20秒〜20分、さらに好ましくは30秒〜10分程度乾燥させるのがよい。
【0088】
かくして、本発明の塗装板を、好適に収得できる。
【0089】
塗装板
本発明の塗装板は、塗装された又は未塗装の無機建材表面に、本発明の無機建材用水性塗料組成物を塗布し、乾燥することにより製造される無機建材の塗装板である。該塗装板としては、例えば、上記無機建材の表面に、上記無機建材用水性塗料組成物を上記塗装方法により塗装し、上記した乾燥条件により乾燥することによって得られた塗装板が包含される。
【0090】
本発明の塗装板には、更に、上塗り塗料を塗装することができる。この場合、本発明の塗装板は、上塗り付着性に優れているという利点を有している。
【0091】
【実施例】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明する。各例中の部及び%は、重量基準である。
【0092】
前記塗料組成物(I)の例
製造例1
コア・シェル型樹脂エマルション1の製造
単量体成分(注1)10部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2部、水80部及び過硫酸アンモニウム2%水溶液7.5部を均一に混合してプレエマルジョンを作成し、78℃に加熱し1時間を要して重合せしめてエマルジョン(シード)を得た。同温度で、このものに、単量体成分(注1)100部、ラウリル硫酸ナトリウム1.8部、水45部及び過硫酸アンモニウム0.15部からなる混合物を3時間を要して滴下し、さらに同温度で1時間放置して、コア部(ガラス転移温度18℃)を調製した。次に、このものに、シェル部用としての単量体成分(注2)100部(ガラス転移温度50℃)、過硫酸アンモニウム1.2部および水68部からなる混合物を3時間を要して流入させた後、83℃で2時間保持した。ついで、室温に冷却してからアンモニアを添加してpHを8に調整し、200メッシュの濾布で濾過してコア・シェル型樹脂エマルション1を得た。このコア部とシェル部の合計ガラス転移温度は34℃であった。固形分含有率50%。平均粒子径約100nm。
【0093】
(注1)単量体成分:メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸=38.6/20/40.4/1.0(重量比)
(注2)単量体成分:メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸=56/20/23/1.0(重量比)。
【0094】
製造例2
コア・シェル型樹脂エマルション2の製造
単量体成分(注3)10部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2部、水80部及び過硫酸アンモニウム2%水溶液7.5部を均一に混合してプレエマルジョンを作成し、78℃に加熱し1時間を要して重合せしめてエマルジョン(シード)を得た。同温度で、このものに、単量体成分(注3)100部、ラウリル硫酸ナトリウム1.8部、水45部及び過硫酸アンモニウム0.15部からなる混合物を3時間を要して滴下し、さらに同温度で1時間放置して、コア部(ガラス転移温度16℃)を調製する。次に、このものに、シェル部用としての単量体成分(注4)100部(ガラス転移温度60℃)、過硫酸アンモニウムの1.2部および水68部を3時間を要して流入させた後、83℃で2時間保持した。ついで、室温に冷却してからアンモニアを添加してpHを8に調整し、200メッシュの濾布で濾過してコア・シェル型樹脂エマルション2を得た。このコア部とシェル部の合計ガラス転移温度は37℃であった。固形分含有率50%。平均粒子径約100nm。
【0095】
(注3)単量体成分:メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸=33/24/42/1(重量比)
(注4)単量体成分:メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸=60.7/20/18.3/1.0(重量比)。
【0096】
製造例3
コア・シェル型樹脂エマルション3の製造
製造例1において、シェル部を構成するモノマー成分としてメタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート=70/19/1/10(重量比)を使用した以外は製造例1と同様の方法で、コア・シェル型樹脂エマルション3を製造した。該エマルションのシェル部のガラス転移温度は55℃であった。このコア部とシェル部の合計ガラス転移温度は34℃であった。また、該エマルションは固形分含有率50%。平均粒子径約100nmであった。
【0097】
製造例4
硬化型樹脂水溶液1の製造
温度計、攪拌機、冷却器及び滴下ロートを備えた300ccの4つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル100部を入れ、80〜90℃に昇温させ、このものにメチルメタクリレート30部、N−ブチルアクリレート30部、スチレン13部、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド10部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部、アクリル酸7部及びアゾビスイソブチロニトリル1部の混合物を3時間にわたり滴下した。その後同温度で1時間熟成した後、アゾビスブチロニトリル1部を追加触媒として配合し、更に2時間熟成して、樹脂固形分50重量%、樹脂酸価56mgKOH/g、樹脂の数平均分子量約6,000の水性共重合体有機溶剤溶液を得た。
【0098】
次いで、得られた溶液にトリエチルアミンの中和剤を0.9当量配合し攪拌混合した後、固形分が約20重量%になるまで脱イオン水を徐々に滴下混合攪拌して樹脂水溶液を製造した。
【0099】
製造例5
顔料ペーストAの製造
水50部、「Tタルク」(竹原化学工業(株)製、商品名、タルク、吸油量27ml/無機質充填材100g)100部、「ノプコスパース44C」(サンノプコ(株)製、商品名、カルボン酸系顔料分散剤)2部をボールミルで20時間分散し、脱イオン水で調整して固形分40%の顔料ペーストAを製造した。
【0100】
実施例1〜10及び比較例1〜5
表1及び表2に記載の配合で実施例1〜10及び比較例1〜5の水性塗料組成物を製造した。
【0101】
上記各水性塗料組成物の成分配合及び塗膜性能の試験結果を、表1及び表2に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
表1及び表2において、ワックスaは平均粒子径400nm、分子量600、融点120℃、固形分45重量%のポリエチレンワックス水分散液であり、ワックスbは平均粒子径2,500nm、分子量2,000、融点117℃、固形分40重量%のポリエチレンワックスの水分散液であり、またシラン水分散体はn−ヘキシルトリエトキシシシランの水分散体(固形分30重量%)である。
【0105】
上記表1及び2における、耐エフロレッセンス性、耐ブロッキング性、耐水性、耐透水性及び耐透湿性の塗膜性能は、下記試験方法により、調べた。
【0106】
耐エフロレッセンス性:水性塗料組成物を、セメントペースト(セメント/弁柄/水=100/4/35(重量比)の調合したものを、平板状に加工して30分間放置したもの)表面に塗布量が50g/m2になるようにスプレー塗装し、放置乾燥した後、160℃〜170℃で約6時間加熱乾燥した。次いで、湿度100%の雰囲気に7日間放置した後、塗料組成物の塗膜を観察した。評価は次の基準で行った。◎は白化が全くないもの、○は若干白化するが実用上問題がないもの、△は白化して悪いもの、×は白化が著しいものである。
【0107】
耐ブロッキング性:2枚のスレート板に水性塗料組成物を塗布量が50g/m2になるようにスプレー塗装し、100℃で5分間乾燥を行った後、スレート板を塗装面同士を荷重が400g/cm2になるように加圧を行い、このものを170℃で1時間加熱した後、室温に冷却し2枚のスレート板間の剥がれ易さを調べた。評価は次の基準で行った。◎は全く付着せずに良好なもの、○は若干付着はしているが軽い力で剥離が可能なもの、△は強い力をかけないと剥離できないもの、×は剥離が困難なものである。
【0108】
耐水性:水性塗料組成物をスレート板の表面に塗布量が50g/m2になるようにスプレー塗装し、放置乾燥した後、160℃〜170℃で約6時間乾燥を行い、次いで上塗り塗料(「アレスアクアグロス」、関西ペイント(株)製、商品名、水性エマルション塗料)を乾燥膜厚が約30μmになるようにスプレー塗装し、100℃で20分間乾燥を行って試験用塗装基材を作成した。このものを上水に20℃で30日間浸漬した後、上塗り塗膜のワレ、剥がれ、フクレなどの塗膜異常の有無を観察した。○は異常なし、△はフクレが認められるもの、×はワレ、剥がれが認められるものである。
【0109】
耐透水性:試験板について、JIS K 5400のロート法で耐透水性を評価した。評価は、次の基準で行った。○は1ml/24時間以下、△は3ml/24時間未満、×は3ml/24時間以上である。
【0110】
耐透湿性:水性塗料組成物をブリキ板に膜厚50μmになるよう塗装したのちアマルガムで塗膜をはがしてフリー塗膜を得た。このフリー塗膜を使用してJIS Z 0208の透湿試験を行った。評価は、次の基準で行った。○は20g/m2・24時間以下、△は70g/m2・24時間未満、×は70g/m2・24時間以上である。
【0111】
前記塗料組成物( II )の例
製造例6
撥水剤含有コア・シェル型ビニル樹脂系エマルションの製造
還流冷却器、攪拌機、温度計を装備した容量250mlの4つ口フラスコに脱イオン水37.5部を加え、窒素置換後85℃まで昇温した。
【0112】
この中に過硫酸アンモニウム0.1部とパラフィンワックス水分散液(平均粒子径400nm、分子量600、融点120℃、固形分45重量%)5部及びコア部組成物(注5)をエマルション化してなるプレエマルションの3.5%を添加し、添加して20分後からプレエマルションの残りを170分かけて滴下した。
【0113】
滴下終了後1時間熟成し、次にシェル部組成物(注6)をエマルション化してなるプレエマルションを70分かけて滴下した。
【0114】
滴下終了後30分経てから、過硫酸アンモニウム0.1部を脱イオン水2部に溶解させた溶液を30分かけて滴下し、さらに2時間85℃に保持した。その後40℃以下まで温度を下げ、アンモニア水でpH7〜8に調整し、固形分48%のコア・シェル型ビニル系樹脂エマルションを得た。このエマルションの粒径は150nmであった。また、該エマルションはコア部ガラス転移温度4℃、シェル部ガラス転移温度55℃、シェル部とコア部のガラス転移温度差51℃、合計ガラス転移温度19℃であった。
【0115】
(注5)コア部組成物:脱イオン水45.7部、スチレン10.0部、メタクリル酸メチル24.0部、アクリル酸n−ブチル35.3部、メタクリル酸0.7部、30%「Newcol 707SF」3.9部及び過硫酸アンモニウム1.12部からなる混合物。
【0116】
(注6)シェル部組成物:脱イオン水19.6部、メタクリル酸ラウリル3.0部、メタクリル酸メチル23.7部、アクリル酸n−ブチル3.0部、メタクリル酸0.3部、30%「Newcol 707SF」1.7部及び過硫酸アンモニウム0.06部からなる混合物。
【0117】
製造例7〜9
コア・シェル部組成物を表3のように変更した以外は、製造例6と同様にして製造例7〜9のコア・シェル型ビニル樹脂系エマルションを得た。
【0118】
製造例10〜13
コア・シェル部組成物を表3のように配合した。即ち、パラフィンワックス水分散液を使用しない以外は、製造例6〜9と同様にして製造例10〜13のコア・シェル型ビニル樹脂系エマルションを得た。
【0119】
製造例6〜13の各エマルションのモノマー組成、ガラス転移温度及び平均粒子径を、表3に示す。
【0120】
【表3】
【0121】
製造例14
顔料ペーストBの製造
水50部、「タイペークCR−97」(石原産業(株)製、商品名、チタン白)50部、「ノプコサントK」(サンノプコ(株)製、商品名、カルボン酸系顔料分散剤)2部、「ノプコスパース44C」(サンノプコ(株)製、商品名、カルボン酸系顔料分散剤)2部をボールミルで20時間分散し、脱イオン水で調整して固形分40%の顔料ペーストBを製造した。
【0122】
製造例15
顔料ペーストCの製造
水50部、「タイペークCR−97」(石原産業(株)製、商品名、チタン白)25部、「Tタルク」(竹原化学工業(株)製、商品名、タルク、吸油量27ml/無機質充填材100g)25部、「ノプコサントK」(サンノプコ(株)製、商品名、カルボン酸系顔料分散剤)2部、「ノプコスパース44C」(サンノプコ(株)製、商品名、カルボン酸系顔料分散剤)2部をボールミルで20時間分散し、脱イオン水で調整して固形分40%の顔料ペーストCを製造した。
【0123】
実施例15
製造例6で得た撥水剤含有コア・シェル型ビニル系エマルションを実施例15の水性塗料組成物とした。
【0124】
実施例16
製造例6で得た撥水剤含有コア・シェル型ビニル系エマルション210部に、顔料ペーストB47.5部を配合して、脱イオン水で調整し、固形分35%の実施例16の水性塗料組成物を製造した。
【0125】
実施例17〜23
表4に示す配合で実施例17〜23の水性塗料組成物を製造した。
【0126】
【表4】
【0127】
比較例6〜10
表5に示す配合で比較例6〜10の水性塗料組成物を製造した。
【0128】
【表5】
【0129】
次に、上記実施例15〜23及び比較例6〜10の各水性塗料組成物について、耐ブロッキング性、耐透水性及び耐透湿性の塗膜性能を、前記試験方法により、調べた。
【0130】
また、上塗り付着性の塗膜性能を、下記試験方法により、調べた。
【0131】
上塗り付着性:耐透水性試験と同様にして作成した試験板に、アクリル系水性塗料「IMコート5111」(関西ペイント(株)製、商品名)を膜厚50μmになるよう塗装した。この塗装した試験板にカッターナイフで4mm間隔に5×5マスの碁盤目状に切れ目をいれ、セロテープを貼り付けて剥離して、付着性を評価した。評価は、次の基準で行った。○は剥離したマス目のないもの、△は剥離したマス目が2マス以下のもの、×は3マス以上の剥離があるものである。
【0132】
実施例15〜23及び比較例6〜10の試験結果を表6に示す。
【0133】
【表6】
【0134】
【発明の効果】
本発明の水性塗料組成物を無機建材に塗装して得られた塗膜は、特に、耐エフロレッセンス性、耐水性、耐透水性、耐透湿性、耐ブロッキング性、上塗り付着性等の塗膜性能に優れた効果を発揮するものである。
【0135】
窯業系多孔質基材などの表面に塗装する塗料組成物として、従来から公知のアクリルエマルションである下塗り剤を塗料組成物として使用したものは、窯業系多孔質基材への浸透が十分でないために該基材の耐ブロッキング性が劣り、そして被膜の耐水性等の被膜性能が劣るといった欠点があった。
【0136】
また、セメント成形品等の窯業系基材の表面に塗料組成物を塗装したものについては、長期間過酷な条件で使用した場合に、成型品内部から溶出したアルカリ性物質により被膜が加水分解して耐水性、耐ブロッキング性等の性能が悪くなった。
【0137】
また、塗料組成物として従来から公知の水溶性樹脂溶液を使用したものでは多孔質基材表面に存在する塗膜の膜厚が薄くなるので長期暴露試験等により付着性が低下するといった欠点がある。
【0138】
これに対して、本発明の水性塗料組成物は、ワックス水分散液、アルキルアルコキシシランやその縮合物などの水性撥水剤成分の配合により、形成された塗膜に撥水性を付与することができ、これにより塗膜の耐水性、耐透水性などの塗膜性能が向上したと推察される。
【0139】
また、添加される水性撥水剤中のワックス、アルキルアルコキシシランやその縮合物は水中に微粒子として均一分散されているので、それ自体はもちろんのこと、配合された水性塗料組成物の貯蔵安定性が優れており、更に、該成分は多孔質の無機基材の表面に適度に浸透すると共に膜表面にも該成分が適度に存在するので、耐水性、耐透水性や耐ブロッキング性などの性能を満足させることができる。
【0140】
また、本発明において、上記したワックス、アルキルアルコキシシランやその縮合物の水分散体の添加効果は、樹脂水性液として、コア・シェル型樹脂エマルション(1)と硬化型樹脂水溶液(2)との混合液を使用することにより、更に有効に効果が発揮される。
【0141】
本発明で使用する撥水剤含有コア・シェル型樹脂エマルションは、ワックス等の存在下でラジカル重合性モノマーを重合させるので得られたエマルションのコア部の内部にはワックス等の成分濃度が高い粒子として形成される、このために塗膜自体の疎水性が高くなり、耐透水性、耐水性などの性能が向上したものと推察される。また、疎水性の高いコア部は親水性の高いシェル部により安定に水に分散される。この様な粒子形態を形成するので水性塗料組成物を貯蔵してもワックスの相分離による粒子沈降や貯蔵粘度変化などがなく良好な水性塗料組成物が得られたものと思われる。
【0142】
更に、タルクやマイカなどのリン片状無機質充填材を添加することによって、水や湿気に対する塗膜の透過阻止能が向上することにより耐透水性、耐透湿性などの塗膜性能を向上させることも可能である。
Claims (8)
- コア・シェル型樹脂エマルション(1)及び硬化型樹脂水溶液(2)の混合樹脂水性液(A)に、ワックス水分散液、アルキルアルコキシシラン化合物水分散液及びアルキルアルコキシシラン化合物縮合物水分散液から選ばれる少なくとも1種の水性撥水剤(B)を配合してなることを特徴とする無機建材用水性塗料組成物。
- 水性撥水剤(B)の配合量が、樹脂水性液(A)の固形分100重量部に対して、固形分で1〜50重量部である請求項1に記載の無機建材用水性塗料組成物。
- 硬化型樹脂水溶液(2)が、カルボキシル基、水酸基及び置換又は未置換アミド基を有するビニル樹脂を含有する請求項1又は2に記載の無機建材用水性塗料組成物。
- (a)カルボキシル基含有不飽和単量体及び(b)(a)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(i)を、上記ワックス水分散液、アルキルアルコキシシラン化合物水分散液及びアルキルアルコキシシラン化合物縮合物水分散液から選ばれる少なくとも1種の水性撥水剤(B)及び水の存在下で乳化重合してコア部を形成し、次いで、このものに、(c)(メタ)アクリル酸エステル、(d)カルボキシル基含有不飽和単量体および(e)(c)及び(d)以外の不飽和単量体からなる単量体混合物(ii)を加え、乳化重合してシェル部を形成することにより得られる撥水剤含有コア・シェル型樹脂エマルション(C)を、樹脂成分として含有することを特徴とする無機建材用水性塗料組成物。
- ワックス水分散液に用いるワックスが、融点30〜150℃の範囲のものである請求項1又は4に記載の無機建材用水性塗料組成物。
- ワックス水分散液が、平均粒子径10〜3,000nmのものである請求項1、4又は5に記載の無機建材用水性塗料組成物。
- 無機建材用水性塗料組成物が、更に、無機質充填材100g当たりの吸油量が10〜40mlのリン片状無機質充填材(D)を含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無機建材用水性塗料組成物。
- 塗装された又は未塗装の無機建材表面に、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の無機建材用水性塗料組成物を塗布し、乾燥することにより製造される無機建材塗装板。
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