JP3851035B2 - 管ライニング材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、管ライニング材に関する。
【0002】
【従来の技術】
地中に埋設された下水管等の管路が老朽化した場合、この管路を地中から掘出することなくその内周面にライニングを施して該管路を補修する管ライニング工法が提案され、既に実用に供されている。斯かる管ライニング工法の1つとして、管ライニング材を流体圧によって管路内に反転挿入した後、該管ライニング材を管路の内壁に押圧した状態で、管ライニング材に含浸された硬化性樹脂を硬化させるようにしたものが知られている。この場合、管ライニング材にコーティングされたプラスチックフィルムはそのまま管路内に残されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記管ライニング工法に供される管ライニング材は、外表面が気密性の高いプラスチックフィルムでコーティングされた管状樹脂吸着材に未硬化の液状硬化性樹脂を含浸せしめて構成されるが、この管ライニング材の製造においては管状樹脂吸着材の外表面にプラスチックフィルムをコーティングする作業が製造コストを高騰させる原因となっていた。
【0004】
又、管状樹脂吸着材に含浸される硬化性樹脂がスチレン系の不飽和ポリエステル樹脂或はビニールエステル樹脂等の熱硬化性樹脂である場合、管状樹脂吸着材の外表面にコーティングされるプラスチックフィルムとしては耐スチレン性の高いものが選定される。そして、熱硬化性樹脂の硬化発熱によって管状樹脂吸着材が高温(約80℃〜120℃)となるため、該管状樹脂吸着材の外表面にコーティングされるプラスチックフィルムには高い耐熱性が要求される。
【0005】
ところで、管ライニング材の管状樹脂吸着材への硬化性樹脂の含浸に際しては、管状樹脂吸着材の外表面にコーティングされたプラスチックフィルムの一部を切り開いて管状樹脂吸着材を真空引きする必要があるため、作業終了後にプラスチックフィルムの切り開いた部分を例えば別のプラスチックフィルムで塞いで補修する必要があるが、耐スチレン性と耐熱性の高いプラスチックフィルムの大部分は接着剤による接着が不可能である。このため、プラスチックフィルムの切り開いた部分を別のプラスチックフィルムの熱溶着によって塞ぐ必要があるが、硬化性樹脂が熱硬化性樹脂である場合には熱溶着部分が加熱されてその周囲に含浸された熱硬化性樹脂が硬化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、プラスチックフィルムのコーティング作業を省略して製造コストを削減することができるとともに、硬化性樹脂含浸時に切り開かれた部分を硬化性樹脂の硬化を招くことなく容易に塞ぐことができる管ライニング材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の管ライニング材は、未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材を、複数種のプラスチックフィルムを複合して成るシームレスの複合フィルムで構成した気密性の管状体で覆い、該管状体の前記管状樹脂吸着材と接触する内面を硬化後の管状樹脂吸着材に対し剥離性があるナイロン、EVOH、又はポリエステルで構成し、外面を接着性又は溶着性のポリエチレンで構成して成ることを特徴とする。
或いは、未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材を、複数種のプラスチックフィルムを複合して成るシームレスの複合フィルムで構成した気密性の管状体で覆い、該管状体の前記管状樹脂吸着材と接触する内面を硬化後の管状樹脂吸着材に対し剥離性があるポリウレタン、ナイロン、シリコーン、又はビニロンで構成し、外面を接着性又は溶着性のポリウレタン、ポリエチレン、アイオノマー、又はアドマーで構成して成ることを特徴とする。
或いは、未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材を、複数種のプラスチックフィルムを複合して成るシームレスの複合フィルムで構成した気密性の管状体で覆い、該管状体の前記管状樹脂吸着材と接触する内面を硬化後の管状樹脂吸着材に対し剥離性があるナイロン、又はEVOHで構成し、外面を接着性又は溶着性のポリエチレンで構成して成ることを特徴とする。
或いは、未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材を、プラスチックフィルムをプラスチックファイバーの織布又は不織布で補強した複合体から成る気密性の管状体で覆い、該管状体の前記管状樹脂吸着材と接触する内面を硬化後の管状樹脂吸着材に対し剥離性があるナイロン、アクリル、又はポリエステルで構成し、外面を接着性又は溶着性のポリウレタンで構成して成ることを特徴とする。
【0009】
従って、本発明によれば、管ライニング材を従来のように管状樹脂吸着材の外表面に気密性の高いプラスチックフィルムをコーティングするのではなく、管状樹脂吸着材を気密性の高い管状体で覆って構成し、この管状体をライニング後に管状樹脂吸着材から引き剥して取り除くようにしたため、管ライニング材の製造においてプラスチックフィルムのコーティング作業を省略して製造コストを削減することができる。
【0010】
又、硬化性樹脂の含浸作業終了後に管状体の切り開かれた部分にプラスチックフィルム等が接着又は溶着されてその部分が塞がれるが、本発明に係る管ライニング材の管状体の外面は接着性又は溶着性の高い材質のプラスチックで構成されているため、管状体の切り開かれた部分にプラスチックフィルム等を容易に接着又は溶着してその部分を塞いで補修することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明に係る管ライニング材1の部分斜視図であり、本発明に係る管ライニング材1は、未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材2を気密性の高い管状体3で覆って構成されている。
【0013】
ここで、管状樹脂吸着材2は単層構造を有し、これはポリエステル又はビニロンファイバーの帯状不織布を丸めてその幅方向端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部を縫製(ロック縫い)によって接合し、その接合部の内面と外面にリボンテープ状の樹脂吸着材から成る薄肉リボンテープ4,5を接着又は溶着して接合部を補強することによって構成されている。ここで、補強用の薄肉リボンテープ4,5を構成する樹脂吸着材としては、その補強効果を増加させるためにグラスファイバーやケブラー等の無機ファイバーを複合して成るポリエステルやビニロン等の不織布が使用されるが、このとき、これらの薄肉リボンテープ4,5の円周方向の引張伸びは管状樹脂吸着材2のそれよりも小さく設定され、ライニング施工時の管ライニング材1のバーストが効果的に防がれる。尚、管ライニング後の管ライニング材1において硬化した管状樹脂吸着材2にシワが発生するのを防ぐために該管状樹脂吸着材2の周長は後述の管路10(図10参照)の周長よりも3%〜20%小さく設定され、管ライニングに際して管状樹脂吸着材2が伸びるよう構成されている。又、前記管状体3の周長は管状樹脂吸着材2のそれと同等若しくはそれよりも大きく設定される。
【0014】
又、管状樹脂吸着材2に含浸される未硬化の液状硬化性樹脂としては不飽和ポリエステル樹脂、ビニールエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が含浸される。尚、未硬化の液状硬化性樹脂としては光硬化性樹脂や常温硬化性樹脂等を使用することもできる。
【0015】
ところで、本発明に係る管ライニング材1は従来のように管状樹脂吸着材2の外表面に気密性の高いプラスチックフィルムをコーティングするのではなく、管状樹脂吸着材2を気密性の高い管状体3で覆って構成されており、この管状体3はライニング後に硬化した管状樹脂吸着材2から引き剥されて取り除かれる。又、管状樹脂吸着材2への樹脂含浸作業時には管状体3の一部が切り開かれ、その切り開かれた部分に不図示の真空パッドが吸着されて管状樹脂吸着材2が真空引きされ、含浸作業終了後に管状体3の切り開かれた部分にプラスチックフィルム等が接着又は溶着されてその部分が塞がれる。
【0016】
従って、管状体3の管状樹脂吸着材2と接触する内面は硬化後の管状樹脂吸着材2との剥離性が高く、且つ、耐スチレン性と耐熱性が高い材質で構成され、外面は接着性又は溶着性の高い材質で構成されている。尚、管状体3は管状樹脂吸着材2への樹脂含浸作業時に硬化性樹脂の含浸状況を目視することができるよう透明又は半透明であることが必要である。
【0017】
ところで、ポリウレタンは硬化後の管状樹脂吸着材2との剥離性と耐スチレン性及び耐熱性が高く、且つ、接着性及び溶着性に優れるため、管状体3をポリウレタン単体で構成することができる。この場合、ポリウレタンのショアー硬度は85°以上が望ましく、その厚さは0.2m/m以上が望ましい。
【0018】
ところが、ポリウレタンは高価であり、製造コストを大きく削減することができないため、最も安価に製造可能で、且つ、耐バースト性及び耐ピンホール性の高い複合フィルムで管状体3を構成することが臨まれる。
【0019】
ここで、複合フィルムで構成される管状体3の種々の形態を図2(a)〜(c)に示す。尚、図2(a)〜(c)は図1のA−A線拡大断面図である。
【0020】
図2(a)に示す管状体3(1)は3種3層構造の複合フィルムであって、管状樹脂吸着材2と接触する最内層は硬化後の管状樹脂吸着材2との剥離性が高く、且つ、耐スチレン性と耐熱性が高いナイロン、EVOH又はポリエステルから成るフィルム3aで構成され、中間層はアドマー又はアイオノマーから成る接着性フィルム3bで構成され、最外層は接着性又は溶着性の高いポリエチレンフィルム3cで構成されている。
【0021】
図2(b)に示す管状体3(2)も3種3層構造の複合フィルムであって、管状樹脂吸着材2と接触する最内層は硬化後の管状樹脂吸着材2との剥離性が高く、且つ、耐スチレン性と耐熱性が高いポリウレタン、ナイロン、シリコーン又はビニロンから成るフィルム3dで構成され、中間層はナイロン、ポリエステル又はアクリルから成る織布3eで構成され、最外層は接着性又は溶着性の高いポリウレタン、ポリエチレン、アイオノマー又はアドマーから成るフィルム3fで構成されている。
【0022】
図2(c)に示す管状体3(3)は3種5層構造の複合フィルムであって、管状樹脂吸着材2と接触する最内層は硬化後の管状樹脂吸着材2との剥離性が高く、且つ、耐スチレン性と耐熱性が高いナイロン又はEVOHから成るフィルム3gで構成され、中間層はナイロン又はEVOHから成るフィルムの両面をアドマー又はアイオノマーから成る接着性フィルム3gで挟んで構成され、最外層は接着性又は溶着性の高いポリエチレンから成るフィルム3iで構成されている。
【0023】
ところで、複合フィルムはインフレーション法によってシームレス状に成形されるが、例えば外面の材質が低軟化点のナイロン、EVOH又はポリエステルで内面の材質が高融点のポリエチレンであるシームレスの複合フィルムをインフレーション法によって製造する場合には、品質を良好に保つために内面と外面が逆になるようにして複合フィルムを成形し、この複合フィルムを反転して管状体3として用いる。尚、複合フィルムとしては図2(a)〜(c)に示す構成のもの以外に、例えば3種4層、3種6層等の任意の構成のものを使用することができる。
【0024】
又、プラスチックフィルムを織布又は不織布で補強して管状体3を構成しても良い。その例を図3(a),(b)に示す。
【0025】
図3(a)に示す管状体3(4)は、接着性又は溶着性の高いポリウレタンフィルム3jの内面に織布又は不織布3kを接合して構成されており、織布又は不織布3kは硬化後の管状樹脂吸着材2との剥離性が高く、且つ、耐スチレン性と耐熱性が高いナイロン、アクリル、ポリエステル等のプラスチックファイバーで構成されている。
【0026】
又、図3(b)に示す管状体3(5)は、プラスチックフィルム3mの内側に織布又は不織布3kを配して構成されており、プラスチックフィルム3mと織布又は不織布3kは分離状態にある。ここに、プラスチックフィルム3mは接着性又は溶着性の高い複合フィルムで構成され、織布又は不織布3kは硬化後の管状樹脂吸着材2との剥離性が高く、且つ、耐スチレン性と耐熱性が高いナイロン、アクリル、ポリエステル等のプラスチックファイバーで構成されている。
【0027】
ここで、管状体3の長さ方向の接合構造を図4〜図6にそれぞれ示す。尚、図4(a)、図5(a)及び図6は管ライニング材の部分斜視図、図4(b)及び図5(b)は管ライニング材の管状体接合部の構造を示す断面図である。
【0028】
図4に示す接合構造においては、管状体3の端部同士を重ね合わせ、その重ね合わせ部を接着又は溶着することによって両管状体3を長さ方向に接合する方法が採用されている。
【0029】
又、図5に示す接合構造においては、管状体3の端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部にリボン状又はチューブ状のシールテープ6を上から接着又は溶着することによって両管状体3を長さ方向に接合する方法が採用されている。
【0030】
更に、図6に示す接合構造においては、管状体3の端部同士を斜めに重ね合わせ或は突き合わせ、その重ね合わせ部又は突き合わせ部を図4又は図6に示す接合構造によって接合する方法が採用されている。
【0031】
ところで、管状樹脂吸着材2は前述のように帯状樹脂吸着材を丸めてその幅方向端部同士を突き合わせ、その突き合わせ部を縫製によって接合することによって得られるため、接合部の強度が他の部位に比して弱くなる。このため、管状樹脂吸着材2を図7の断面図に示すように内層2aと外層2bとで構成して多層構造とし、内層2aの接合部aと外層2bの接合部bを周方向に互いにずらせる(オフセットする)ようにすることによって接合部aを外層2bによって、接合部bを内層2aによって互いに補強し合うようにすることが行われる。尚、この場合、外層2bの接合部を本縫い又は環縫いによって接合すれば、ライニング施工の後の管ライニング材1の内側に位置する外層2bの接合部bが開いて凹むという不具合の発生が防がれる。
【0032】
又、図8に示すように管状体3を2層構造或は図9に示すように3層構造とする場合、管状樹脂吸着材2を第1の管状体3aの中に通し、管状樹脂吸着材2を減圧しながらこれに硬化性樹脂を含浸させた後、硬化性樹脂が含浸された管状樹脂吸着材2を第1の管状体3aと共に第2の管状体3b(図8に示す2層構造の場合)或は第2及び第3の管状体3b,3c(図9に示す3層構造の場合)の中に引き込み、各管状体3a,3b或は3a,3b,3cのエンド端に空気抜きを設け、管状体3a,3b或は3a,3b,3cの他端部を気密的にシールし、管状樹脂吸着材2の端部を開かないようボルト・ナット等で閉止する。
【0033】
而して、例えば図1に示す管ライニング材1の管状樹脂吸着材2への硬化性樹脂の含浸作業に際しては、管状樹脂吸着材2を覆う管状体3の一部が切り開かれ、その切り開かれた部分に不図示の真空パッドが吸着されて管状樹脂吸着材2が真空引きされ、真空引きされた管状樹脂吸着材2に硬化性樹脂が含浸される。そして、硬化性樹脂の含浸作業終了後に管状体3の切り開かれた部分にプラスチックフィルム等が接着又は溶着されてその部分が塞がれるが、本発明に係る管ライニング材1の管状体3の外面は接着性又は溶着性の高い材質で構成されているため、該管状体3の切り開かれた部分にプラスチックフィルム等を容易に接着又は溶着してその部分を塞いで補修することができる。
【0034】
次に、図1に示す管ライニング1を用いて施工される本発明に係る管ライニング工法を図10〜図16に基づいて説明する。
【0035】
図10において、10は地中に埋設された下水管等の管路であり、この管路10には地上に開口するマンホール11が接続されている。
【0036】
而して、管路10のライニングに際しては、図10に示すように、管ライニング材1の一端が外側へ折り返され、その折り返された端部は地上に設置されたトップカラー12の上端外周部に取り付けられる。
【0037】
その後、図10に示すように、トップカラー12に取り付けられた管ライニング材1の一端開口部から注水ホース13によって管ライニング材1の内部に水を注入すると、管ライニング材1は水圧によって反転しながら管路10内に挿入されていく。そして、管ライニング材1が管路10内に所定長さだけ反転挿入された時点で図11に示すように管ライニング材1の内部にエアーホース14を導入し、地上に設置されたコンプレッサー15を駆動して圧縮エアーをエアーホース14に送り、該エアーホース14の端部に取り付けられたエア噴射ノズル16から圧縮エアーを管ライニング材1の内部に噴射させると、管ライニング材1の内部には水でシールされた加圧空間S’が形成され、この加圧空間S’に供給される圧縮エアーの圧力によって管ライニング材1が反転しながら管路10内に順次反転挿入されていく。尚、このように管ライニング材1が管路10内に反転挿入されると、反転された管ライニング材1の管状体3は内側に位置し、硬化性樹脂が含浸された管状樹脂吸着材2は管路10の内壁面に押圧される(図13参照)。
【0038】
而して、図12に示すように、管ライニング材1が管路10内にその全長に亘って反転挿入されると、該管ライニング材1の内部には温水ホース17とロープ18が引き込まれる。尚、温水ホース17には複数の不図示の噴出口が穿設されており、該温水ホース17とロープ18の各一端は管ライニング材1の管状体3のエンド端(閉止端)に取り付けられている(図14参照)。
【0039】
又、管ライニング材1が管路10内にその全長に亘って反転挿入されると、図12に示すようにトップカラー12の上部にはヘッドカラー19が気密に被着され、該ヘッドカラー19と管ライニング材1の内部には密閉空間Sが形成されている。
【0040】
ところで、図12に示すように、上記密閉空間S内には温水排出ホース20がヘッドカラー19を気密に貫通して導入されており、この温水排出ホース20の密閉空間S内に臨む一端は管ライニング材1の底部に開口し、他端はヘッドカラー19を貫通して密閉空間S外へ延出し、地上に設置された温水タンク21の上方に開口している。尚、温水排出ホース20の途中にはバルブ22が設けられている。又、温水タンク21内には温水が収容されている。
【0041】
他方、前記温水ホース17はヘッドカラー19を気密に貫通して密閉空間S外へ延出しており、その端部は地上に設置された前記温水タンク21の下部側壁に接続され、その途中には温水ポンプ23とバルブ24及びボイラー25が設けられている。
【0042】
而して、図12に示す状態において、コンプレッサー26からエアーホース27を経て密閉空間Sに供給される圧縮エアーによって密閉空間Sの内圧を一定に保ち、管ライニング材1を膨張させてこれを管路10の内壁に押圧した状態で、該管ライニング材1を温水によって加熱してこれに含浸された熱硬化性樹脂を硬化させるが、この管ライニング材1の硬化作業は以下の要領でなされる。
【0043】
即ち、温水ポンプ23とボイラー25が駆動されて温水タンク21内の温水がボイラー25にて所定温度に加熱され、この加熱された温水が温水ホース17を通って管ライニング材1の内部に送り込まれると、図12に示すように、温水は温水ホース17に穿設された複数の噴出口からシャワー状に噴出(シャワリング)して管ライニング材1の加熱に供される。そして、管ライニング材1の加熱に供されて温度の下がった温水は管ライニング材1の底部に溜り、この溜った温水は密閉空間Sの内圧によって温水排出ホース20へと押し出され、温水排出ホース20を通って密閉空間S外へと排出されて温水タンク21に戻される。
【0044】
以下、上記と同様にして管ライニング材1は温水ホース17から連続的にシャワリングされる温水によって加熱され、該管ライニング材1に含浸された熱硬化性樹脂が熱によって硬化し、図13に示すように、硬化した管ライニング材1によって管路10の内周壁がライニングされる。
【0045】
ところで、上述のように管路10内に反転挿入された管ライニング材1が硬化すると、その内面側に位置する管状体3のエンド端に取り付けられた前記温水ホース17とロープ18を図14の矢印方向に引っ張る。すると、そのエンド端に温水ホース17とロープ18が取り付けられた管状体3が図14に示すように逆反転しながら管状樹脂吸着材2から引き剥されて取り除かれる。この場合、管状体3の管状樹脂吸着材2と接触する内面は前述のように硬化後の管状樹脂吸着材2との剥離性が高い材質で構成されているため、該管状体3は管状樹脂吸着材2から容易に引き剥されて取り除かれる。
【0046】
上述のように管状体3を硬化した管状樹脂吸着材2から引き剥して取り除いた後に図15に示すように管状樹脂吸着材2の内面に管状体3の一部が残っている場合には、図示のように先端に高圧水回転ノズル28が取り付けられた高圧水ホース29を管ライニング材1の内部に導入し、高圧水ホース29から高圧水を高圧水回転ノズル28に供給しながら該高圧水回転ノズル28を図示矢印方向に移動させる。すると、高圧水回転ノズル28は回転しながら高圧水を管状樹脂吸着材2の内面に向かって勢い良く噴射し、管状樹脂吸着材2の内面に部分的に残っている管状体3の破片は高圧水によって管状樹脂吸着材2から確実に引き剥されて取り除かれ、図16に示すように管状体3が取り除かれた管ライニング材1(管状樹脂吸着材2)によって管路10がライニングされて補修される。尚、高圧水回転ノズル28から噴射される高圧水の圧力は100kgf/cm2 〜250kgf/cm2 、流量は100リットル/min〜250リットル/minである。
【0047】
以上のように、本発明においては、管ライニング材1を従来のように管状樹脂吸着材の外表面に気密性の高いプラスチックフィルムをコーティングするのではなく、管状樹脂吸着材2を気密性の高い管状体3で覆って構成し、この管状体3をライニング後に管状樹脂吸着材2から引き剥して取り除くようにしたため、管ライニング材1の製造においてプラスチックフィルムのコーティング作業を省略して製造コストを削減することができる。
【0048】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材を気密性の高い管状体で覆って管ライニング材を構成し、該管ライニング材を用いてライニングを施工した後に管ライニング材の管状体を引き剥して取り除くようにしたため、管ライニング材の製造においてプラスチックフィルムのコーティング作業を省略して製造コストを削減することができるという効果が得られる。
【0049】
又、硬化性樹脂の含浸作業終了後に管状体の切り開かれた部分にプラスチックフィルム等が接着又は溶着されてその部分が塞がれるが、本発明に係る管ライニング材の管状体の外面は接着性又は溶着性の高い材質のプラスチックで構成されているため、管状体の切り開かれた部分にプラスチックフィルム等を容易に接着又は溶着してその部分を塞いで補修することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る管ライニング材の部分斜視図である。
【図2】本発明に係る管ライニング材の管状体の構成を示す図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】本発明に係る管ライニング材の管状体の別形態を示す図2と同様の図である。
【図4】本発明に係る管ライニング材の管状体接合構造を示す部分斜視図と管状体接合部分の断面図である。
【図5】本発明に係る管ライニング材の管状体接合構造を示す部分斜視図と管状体接合部分の断面図である。
【図6】本発明に係る管ライニング材の管状体接合構造を示す部分斜視図である。
【図7】本発明の別形態に係る管ライニング材の横断面図である。
【図8】本発明の別形態に係る管ライニング材の横断面図である。
【図9】本発明の別形態に係る管ライニング材の横断面図である。
【図10】本発明に係る管ライニング工法(管ライニング材の反転挿入作業)を示す断面図である。
【図11】本発明に係る管ライニング工法(管ライニング材の反転挿入作業)を示す断面図である。
【図12】本発明に係る管ライニング工法(管ライニング材の硬化作業)を示す断面図である。
【図13】本発明に係る管ライニング工法(管ライニング材の反転挿入作業終了時の管路内の状態)を示す断面図である。
【図14】本発明に係る管ライニング工法(管状体の引き剥し作業)を示す断面図である。
【図15】本発明に係る管ライニング工法(残った管状体の除去作業)を示す断面図である。
【図16】本発明に係る管ライニング工法(ライニング終了後の管路の状態)を示す断面図である。
【符号の説明】
1 管ライニング材
2 管状樹脂吸着材
3 管状体
4,5 薄肉リボンテープ
6 シールテープ
10 管路
17 温水ホース
18 ロープ
21 温水タンク
23 温水ポンプ
25 ボイラー
28 高圧水回転ノズル
Claims (9)
- 未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材を、複数種のプラスチックフィルムを複合して成るシームレスの複合フィルムで構成した気密性の管状体で覆い、該管状体の前記管状樹脂吸着材と接触する内面を硬化後の管状樹脂吸着材に対し剥離性があるナイロン、EVOH、又はポリエステルで構成し、外面を接着性又は溶着性のポリエチレンで構成して成ることを特徴とする管ライニング材。
- 未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材を、複数種のプラスチックフィルムを複合して成るシームレスの複合フィルムで構成した気密性の管状体で覆い、該管状体の前記管状樹脂吸着材と接触する内面を硬化後の管状樹脂吸着材に対し剥離性があるポリウレタン、ナイロン、シリコーン、又はビニロンで構成し、外面を接着性又は溶着性のポリウレタン、ポリエチレン、アイオノマー、又はアドマーで構成して成ることを特徴とする管ライニング材。
- 未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材を、複数種のプラスチックフィルムを複合して成るシームレスの複合フィルムで構成した気密性の管状体で覆い、該管状体の前記管状樹脂吸着材と接触する内面を硬化後の管状樹脂吸着材に対し剥離性があるナイロン、又はEVOHで構成し、外面を接着性又は溶着性のポリエチレンで構成して成ることを特徴とする管ライニング材。
- 未硬化の液状硬化性樹脂を含浸した管状樹脂吸着材を、プラスチックフィルムをプラスチックファイバーの織布又は不織布で補強した複合体から成る気密性の管状体で覆い、該管状体の前記管状樹脂吸着材と接触する内面を硬化後の管状樹脂吸着材に対し剥離性があるナイロン、アクリル、又はポリエステルで構成し、外面を接着性又は溶着性のポリウレタンで構成して成ることを特徴とする管ライニング材。
- 前記複合体は透明又は半透明であることを特徴とする請求項4記載の管ライニング材。
- 前記管状樹脂吸着材を、ポリエステル又はビニロンの帯状不織布の幅方向端部同士を突き合わせて接合し、その接合部の内面と外面にリボンテープ状の樹脂吸着材を接着又は溶着して接合部を補強することによって構成したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の管ライニング材。
- 前記管状樹脂吸着材の周長を管路の周長よりも3%〜20%小さく設定し、前記管状体の周長を管状樹脂吸着材の周長以上に設定したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の管ライニング材。
- 複数の前記管状体の長さ方向端部同士を重ね合わせ、或は突き合わせてリボン状又はチューブ状のシールテープを突き合わせ部に重ね、溶着又は接着によって複数の管状体同士を長さ方向に接合したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の管ライニング材。
- 前記管状樹脂吸着材を多層構造とし、その最外層の管状樹脂吸着材を帯状樹脂吸着材の幅方向端部同士を本縫又は環縫によって接合して管状に成形したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の管ライニング材。
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