JP3850290B2 - 移動体電話機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体電話機に関する。
【0002】
【従来の技術】
移動体電話機の筐体構造の主流は、図3に示すように、従来のストレート型(非変形型)から折り畳み型(可変形型)へと変遷を遂げている。これは、デザイン面での流行もあるが、技術的観点から見ても移動体電話機をコンパクトに折り畳めるため、携帯性を損なうことなく移動体電話機の高機能化に伴う各機能モジュール(大型のカラーディスプレイ、簡易デジタルカメラなど)の搭載が容易となり、合理的な構造といえる。
【0003】
しかし、移動体電話機の小型・軽量化のニーズは依然として厳しく、また移動体電話機のさらなる高機能化の要求は止まらず、以前は必要としていなかった様々な付加機能を次々と搭載していくのが現状であり、結果として筐体内の各機能モジュール、特にその体積が大きいもの(移動体電話機としての基本機能を満たす無線回路・制御回路などの基板部、ディスプレイ、電池、スピーカ等)の配置には大変な制限が設けられる。
【0004】
ここで、音響部品である送話マイクと拡声用スピーカ(着信リンガ音を鳴らしたり、通話時は相手からの受話音を拡声再生するために用いる)に焦点を当てる。かつては電子ブザーを用いて機能を果たしていた着信リンガ音は、移動体電話機の高機能化に伴い、音楽性豊かな和音メロディを鳴らすのが主流となり、そのため電子ブザーにとって代わり、大型の拡声用スピーカを搭載するのが常識となった。この流れでこの拡声用スピーカを用いることで、かつては一般固定電話機、あるいは専用の外部接続スピーカを使用しなければ実現できなかった受話音の拡声再生による通話、いわゆるハンズフリー通話を移動体電話機で行うことが可能となった。このハンズフリー通話を行うにあたり、技術的に重要なポイントとなるのが拡声用スピーカから再生された受話音が、送話側に回り込むことにより生じるエコー(相手から来た声が相手に戻って聞こえてしまう。最悪の場合ハウリングの発生)の防止、すなわちエコーキャンセリングである。
【0005】
先に述べたように移動体電話機に搭載する各機能モジュールの配置には非常に多くの制限が設けられるのが常であり、特に拡声用スピーカは充分な再生音量と広い再生帯域を望むと大きな体積を有するため、その配置場所は限定される。折り畳み型移動体電話機の部品配置の一実施例について述べると、図4に示すように、最も体積が大きくかつ重量のあるバッテリ部13は、移動体電話機10を手に持ったときの安定感を確保するための低重心化を考慮し、移動体電話機10の下部、すなわち通常使用時下側となる、移動体電話機10の下部ケース11の背面側に配置される。さらに、この下部ケース11の正面側には操作キー群14が配置される。とすると、移動体電話機10の下側にはもうあまりスペースの余裕がなくなるため、拡声用スピーカ15は移動体電話機10の上部、すなわち、通常使用時上側となる、移動体電話機10の上部ケース12の背面側(正面側には表示ディスプレイ16が配置される)に配置される場合が多い。ここで、送話マイクとこの拡声用スピーカ15の位置関係を見てみる。送話マイク17は通常の通話形態(ハンズフリー通話ではなく移動体電話機10を手に持って側頭部に当てて使用する電話機として最も一般的な通話状態)において充分な感度とS/N比を確保するために出来るだけ口元に近くなるように移動体電話機10の下部のさらに最下端、すなわち、下部ケース11の、上部ケース12と反対側の端部に配置される場合が多い。一方、拡声用スピーカ15は上記したように移動体電話機10の上部背面(上部ケース12の背面)に配置される場合が多い。この結果、図5に示すように、移動体電話機10(筐体)が開いている状態と閉じている状態とでは、送話マイク17と拡声用スピーカ15の位置関係は、開いているときは遠く、閉じているときは近くと、著しく変化することとなる。これを音響的に見ると、拡声用スピーカ15から発せられた受話音声が送話マイク17に回り込むときのERL(エコーリターンレベル:受話音が送話側に回り込む量で、絶対値ではなく受話経路の信号電気レベルと送話側に回り込んだ信号電気レベルの比で表わされる)とディレイタイム(受話音が送話側に回り込むまでの時間)が変動することになる。本一実施例における数値として、上記の送話マイク、拡声用スピーカの配置を有する一般的な大きさの折り畳み型移動体電話機ではERL値は開いているときで−25〜−30dB程度、閉じているときで+5〜+10dB、ディレイタイムは音速を340m/Secとすると、開いているときで約500μSec、閉じているときで約50μSecとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
通話時のエコーキャンセリングは近年、デジタル信号処理プロセッサ(DSP)による信号処理によってなされるのが一般的である。その原理を図2を参照して簡単に説明すると、受話側の信号を適応フィルタ51部分で逆位相に変換し、加算部52で送話側に加算することで送話マイク17が拾ったエコーを消去している。この処理は、フィードバックループ53を有して、逐次的な適応演算により、刻々と変化するERL値を検出し、逆位相成分の加算量を調整することで常に最適なエコーキャンセリングが行われるように動作する。さらに、高度なエコーキャンセリング機能を有するDSPでは、残存エコー検出部54、残存エコー抑圧部55および減算部56からなる“残存エコー抑圧手段”を持ち、消し残ったエコーを検知し、消し残し成分にマイナスゲインを付加することで完全にエコーを消去するといった処理を行っている。この際、エコーの消し残し成分と共に話者が発した送話信号もマイナスゲイン分レベルが下がることになるため、残存エコー抑圧手段のマイナスゲインが強すぎると通話品質が逆に低下する。このため、マイナスゲインのピーク値は電話機設計者が最適点を検証し、任意に設定できるようになっている。残存エコー抑圧手段のないDSPでは、エコーの消し残し成分がある場合は送話経路を完全に遮断(ミュート)することでエコーが相手側に伝わらない仕組みとしており、この場合は完全に片通話状態(相手が話している間、こちらの音声は相手に届かない)となり通話品質が低下するため、ミュート動作の起動しきい値(エコーの消し残し量をどこまで許容するか)も電話機設計者が調整できるのが一般的である。
【0007】
上記エコーキャンセリングは高度な性能を持つDSP処理によるエコーキャンセル機能だが、許容できるERL値には限界があり、非常に大きな受話音声の回り込みがある場合はエコーを消しきることはできなくなる。先に述べたように、折り畳み型移動体電話機の場合、開いている状態では拡声用スピーカと送話マイク間の距離がある程度あるため、ERL値は低くエコーが残存する量も小さいと考えてよい。したがって、送話経路をミュート状態にするほどの処理は必要ない場合が多い。一方、閉じた状態では送話マイクと拡声用スピーカ間の距離が縮まることからERL値は高くなり、エコーが残存してしまう場合が多く、送話経路をミュートする或いはそれに近い処理が必要になってくる。他方、このキャンセル処理を時間軸で見ると、ディレイタイムはエコーキャンセル処理にとって重要なファクタであり、ディレイタイムが長くなる場合はその遅延時間をあらかじめ推定しておき、エコーキャンセラ部での逆位相成分の加算タイミングを図2の適応フィルタ51部分の遅延動作で微妙にずらす必要がある。このディレイタイムの推定は拡声用スピーカと送話マイクの距離関係が常に一定であるという条件が必要であり、上記したような折り畳み型移動体電話機の場合は、開いている状態と閉じた状態とではこのディレイタイムが変動してしまい、開いた状態では大きく、閉じた状態では小さくなることから一致しなくなる。
【0008】
まとめると、送話マイクが移動体電話機の下部、拡声用スピーカが移動体電話機の上部に配置してある折り畳み型移動体電話機においてハンズフリー通話を実現しようとした場合、移動体電話機が開いた状態と閉じた状態とで「ERL値」と「ディレイタイム」の2つの条件が変動してしまう。そして、これら2つの条件は開いている場合が「ERL値小、ディレイタイム大」であり、閉じた状態のときが「ERL値大、ディレイタイム小」と相反する条件となる。したがって、上記構造を持つ移動体電話機では、開いた状態を推定してエコーキャンセル調整を行うと閉じた状態では充分なエコーキャンセル処理が行われず、また逆に閉じた状態を想定してエコーキャンセル調整を行うと開いたときにエコーキャンセル処理が充分ではなくなってしまう。その結果、上記構造を持つ移動体電話機においてハンズフリー通話を実現する場合は、開いている状態か閉じている状態のどちらかでのみ動作する仕様としない限り、充分な通話品質が得られない。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、筐体が開いていても閉じていてもそれぞれの条件下で最良の通話品質を保持してハンズフリー通話を行うことができる移動体電話機を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の移動体電話機は、筐体を開閉できる折り畳み型またはスライド型であって、前記筐体は下部ケースの上端に上部ケースの下端が回動またはスライド自在に連結されるように構成され、前記上部ケースに拡声用スピーカが配置され、前記下部ケースに送話マイクが配置される移動体電話機において、受話側の信号を逆位相に変換して送話側に加算することでエコーを消去する第1のエコーキャンセル手段と、この第1のエコーキャンセル手段で消し残ったエコーを検知して、消し残し成分にマイナスゲインを付加することでエコーを消去する第2のエコーキャンセル手段と、前記第1のエコーキャンセル手段で逆位相成分を送話側に加算する際の前記逆位相成分の遅延量を筐体開時用と筐体閉時用の2種類用意してメモリに記憶する手段と、前記第2のエコーキャンセル手段のマイナスゲインのレベルを筐体開時用と筐体閉時用の2種類用意してメモリに記憶する手段と、前記筐体の閉状態検出する検出手段と、この検出手段で前記筐体の閉状態を検出したときは、前記メモリから前記筐体閉時用の遅延量およびマイナスゲインのレベルを読出して前記第1および第2のエコーキャンセル手段に設定する制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記閉状態でのハンズフリー通話時に、前記第1および第2のエコーキャンセル手段に、前記筐体閉時用の遅延量およびマイナスゲインのレベルを設定することを特徴とする。
【0011】
好ましい形態として、前記検出手段はさらに前記筐体の開状態を検出し、前記制御手段はさらに、前記検出手段で前記筐体の開状態を検出したときには、前記メモリから前記筐体開時用の遅延量およびマイナスゲインのレベルを読出して前記第1および第2のエコーキャンセル手段に設定し、前記開状態でのハンズフリー通話時に、前記第1および第2のエコーキャンセル手段に、前記遅延量およびマイナスゲインのレベルを、前記遅延量は前記筐体開時用>前記筐体閉時用に設定し、前記マイナスゲインのレベルは前記筐体開時用<前記筐体閉時用に設定する。
【0012】
本発明の第2の移動体電話機は、筐体を開閉できる折り畳み型またはスライド型であって、前記筐体は下部ケースの上端に上部ケースの下端が回動またはスライド自在に連結されるように構成され、前記上部ケースに拡声用スピーカが配置され、前記下部ケースに送話マイクが配置される移動体電話機において、受話側の信号を逆位相に変換して送話側に加算することでエコーを消去するエコーキャンセル手段と、このエコーキャンセル手段で消し残ったエコーを検知して、消し残し成分が所定のしきい値以上となったならば送話経路をミュートするミュート手段と、前記エコーキャンセル手段で逆位相成分を送話側に加算する際の前記逆位相成分の遅延量を筐体開時用と筐体閉時用の2種類用意してメモリに記憶する手段と、前記ミュート手段のしきい値を筐体開時用と筐体閉時用の2種類用意してメモリに記憶する手段と、前記筐体の閉状態を検出する検出手段と、前記検出手段で前記筐体の閉状態を検出したときは、前記メモリから前記筐体閉時用の遅延量およびしきい値を読出して前記エコーキャンセル手段およびミュート手段に設定する制御手段とを具備し、前記制御手段は、前記閉状態でのハンズフリー通話時に、前記エコーキャンセル手段およびミュート手段に、前記筐体閉時用の遅延量およびしきい値を設定することを特徴とする。
【0013】
この第2の移動体電話機において、好ましい形態として、前記検出手段はさらに前記筐体の開状態を検出し、前記制御手段はさらに、前記検出手段で前記筐体の開状態を検出したときには、前記メモリから前記筐体開時用の遅延量およびしきい値を読出して前記エコーキャンセル手段およびミュート手段に設定し、前記開状態でのハンズフリー通話時に、前記エコーキャンセル手段およびミュート手段に、前記遅延量およびしきい値を、前記遅延量は前記筐体開時用>前記筐体閉時用に設定し、前記しきい値は前記筐体開時用>前記筐体閉時用に設定する。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に添付図面を参照して本発明による移動体電話機の実施の形態を詳細に説明する。本発明の実施の形態の移動体電話機は折り畳み型の移動体電話機である。折り畳み型の移動体電話機は、図4に示すように、下部ケース11の上端に上部ケース12の下端が回動自在に連結されており、ケース(筐体)を図5の左側に示す開いた状態と、図5の右側に示す閉じた状態(折り畳んだ状態)とに可変できる。下部ケース11の正面側には操作キー群14と送話マイク17が配置され、下部ケース11の背面側にはバッテリ部13が設けられる。これに対して、上部ケース12の前面には液晶表示ディスプレイ16及び受話スピーカ18が配置され、上部ケース12の背面には拡声用スピーカ15が配置される。したがって、この拡声用スピーカ15と前記送話マイク17を使用して、図5の左側に示す筐体が開いた状態と、図5の右側に示す筐体が閉じた状態のそれぞれでハンズフリー通話を行うことができる。ハンズフリー通話は、操作キー14の操作により起動する。通常の会話は送話マイク17と受話スピーカ18とによって行われる。受話スピーカ18と拡声用スピーカ15とは、図示されないスイッチで切替え可能となっており、ハンズフリー通話のとき、スイッチは拡声用スピーカ15側に切替えられている。
【0016】
図1は、上記のような本発明の実施形態の移動体電話機の回路ブロック図を示す。このブロック図は、アンテナ21に接続されて送受信動作を実施するRF回路22と、送受信信号をデジタル信号処理するデジタル信号処理プロセッサ(DSP)30と、このDSP30から出力された受話信号をD/A変換するD/Aコンバータ23と、このD/Aコンバータ23でD/A変換された受話信号を拡声再生する拡声用スピーカ15と、話者の音声を入力する送話マイク17と、この送話マイク17から入力された送話信号をA/D変換し前記DSP30に出力するA/Dコンバータ24と、全体を制御するCPU部25と、このCPU部25に接続されプログラムや各種のデータを記憶するメモリ26およびROM27と、同様にCPU部25に接続され筐体(図4の上部ケース12と下部ケース11)の開閉を検出する開閉検出スイッチ28とからなる。この開閉検出スイッチ28は、機械式に動作するもの、電気式、磁気式、光学式など種々のものが考えられる。
【0017】
前記DSP30は、送受信信号を変復調するベースバンドモデム部40と、エコーキャンセル処理を実施するエコーキャンセラ部50とからなる。エコーキャンセラ部50は、既に取り上げた図2に示すように、第1のエコーキャンセル手段60と、第2のエコーキャンセル手段70とからなる。第1のエコーキャンセル手段60は、適応フィルタ51、加算部52およびフィードバックループ53からなり、受話側の信号を逆位相に変換して送話側に加算することで送話マイク17が拾ったエコーを消去する。第2のエコーキャンセル手段70は、残存エコー検出部54、残存エコー抑圧部55および減算部56からなり、第1のエコーキャンセル手段60で消し残ったエコーを検知して、消し残し成分にマイナスゲインを付加することで完全にエコーを消去する。
【0018】
上記のような本発明の実施形態の移動体電話機では、開閉検出スイッチ28により筐体(図4の上部ケース12と下部ケース11)の開閉を検出できる。そして、送話マイク17と拡声用スピーカ15を用いたハンズフリー通話時、前記開閉検出スイッチ28で筐体の開状態(図5の左側)を検出したときは、第1のエコーキャンセル手段60における逆位相成分の加算時の、前記逆位相成分の遅延量を大きく設定する。一方、前記開閉検出スイッチ28で筐体の閉状態(図5の右側)を検出したときは、前記遅延量を小さく設定する。すなわち、本発明の実施形態の移動体電話機では、筐体の開状態ではディレイタイム(受話音が送話側に回り込むまでの時間)が大きいので、対応して、加算される逆位相成分の遅延量を大きく(約500μSecに)設定する。一方、筐体の閉状態ではディレイタイムが小さいので、対応して、加算される逆位相成分の遅延量を小さく(約50μSecに)設定する。すなわち、加算される逆位相成分の遅延量を、筐体開状態と筐体閉状態のそれぞれで最適化する。ここでは、一例として、従来の技術で説明した一実施例の数値を元に設定している。
【0019】
また、筐体開状態ではERL値が小さく(−25〜−30dB)、もし第1のエコーキャンセル手段60でエコーの消し残しがあってもそれは小さな値であるので、筐体開状態(筐体の開状態を開閉検出スイッチ28で検出している状態)では、第2のエコーキャンセル手段(残存エコー抑圧手段)70のマイナスゲインのレベル(固定値)を小さく設定(小さく抑圧)する。これにより、残存エコーを確実に消去できるとともに、送話信号の過度の減衰を防止でき、良好な通話品質を保持できる。一方、ERL値の大きい(+5〜+10dB)筐体閉状態(筐体の閉状態を開閉検出スイッチ28で検出している状態)では、第1のエコーキャンセル手段60のエコーの消し残しとして大きな消し残し成分が発生することも考えられ、この大きな消し残し成分に対しても抑圧対応できるように、第2のエコーキャンセル手段70のマイナスゲインのレベル(固定値)は大きく設定(大きく抑圧)する。これにより、送話信号レベルは若干下がるが、大きな残存エコーでもそれを消去して良好な通話品質を確保できる。
【0020】
上記のような設定法を図1および図2を参照してより具体的に説明する。前記遅延量を表わすパラメータと、前記マイナスゲインのレベルを表わすパラメータ(パラメータは共に2〜4バイト程度のパラメータ)とを2つ一組として“筐体開時用”と“筐体閉時用”として2種類用意し、予めROM27に記憶させる。そして、ハンズフリーによる通話開始時、開閉検出スイッチ28で筐体の開閉状態を検出し、もし開閉検出スイッチ28で筐体の開状態を検出したならば、その開閉検出スイッチ28からの情報を元にCPU部25で“筐体開時用”のパラメータ(遅延量とマイナスゲインのレベル)をROM27から読み出し、その遅延量とマイナスゲインのレベルを第1および第2のエコーキャンセル手段60,70に設定する。一方、開閉検出スイッチ28で筐体の閉状態を検出したならば、その開閉検出スイッチ28からの情報を元にCPU部25で“筐体閉時用”のパラメータ(遅延量とマイナスゲインのレベル)をROM27から読み出し、その遅延量とマイナスゲインのレベルを第1および第2のエコーキャンセル手段60,70に設定する。また、通話途中で筐体の開←→閉動作が発生し、筐体が開状態になったこと、あるいは筐体が閉状態になったことを開閉検出スイッチ28で検出した場合も、上記と同様な設定動作となる。
【0021】
このように、上記の移動体電話機によれば、第1のエコーキャンセル手段60の遅延量と第2のエコーキャンセル手段70のマイナスゲインのレベルとを、筐体開状態および筐体閉状態のそれぞれで最適化できる。したがって、筐体が開いていても閉じていても充分な通話品質を保持しつつハンズフリー通話を行うことができる。また、設定値(遅延量とマイナスゲインのレベル)の選択はCPU部25により自動的になされ、利便性にたけている。
【0022】
上記の実施の形態では、第1のエコーキャンセル手段60で消し残ったエコーを残存エコー抑圧手段(第2のエコーキャンセル手段70)で抑圧消去したが、この残存エコー抑圧手段に代えて、消し残ったエコーのレベルが所定のしきい値以上となったときに送話経路をミュートするミュート手段を備えることもできる。この場合、本発明の移動体電話機では、ミュート手段のしきい値として“筐体開時用”と“筐体閉時用”の2種類用意し、筐体開状態と筐体閉状態とでしきい値を切替え設定する。しきい値は、“筐体開時用”>“筐体閉時用”に設定される。これにより、ERL値が大きくエコー量が非常に大きい筐体閉時はミュートし易くなり、ミュートすることにより通話品質を保持できる。一方、ERL値が低く元々エコー量が小さい筐体開時はミュートしづらくなり、送話を継続させて通話品質を確保できる。なお、しきい値は図1のROM27に記憶され、開閉検出スイッチ28の検出状態に応じてCPU部25により“筐体開時用”あるいは“筐体閉時用”のどちらかが読出されてミュート手段に設定される。
【0023】
本実施の形態では、上部ケース12の下端が回動して下部ケース11を覆う場合について説明したが、上部ケース12がスライド自在に構成されており、上部ケース12がスライドして下部ケース11を覆う場合も、上記の実施の形態と同様に、筐体開閉を検出して制御することは同じである。
【0024】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明の移動体電話機によれば、筐体が開いていても閉じていてもそれぞれの条件下で最良の通話品質を保持してハンズフリー通話を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の移動体電話機の実施の形態を示す回路ブロック図。
【図2】エコーキャンセラ部の具体的回路図。
【図3】移動体電話機の筐体構造の変遷を示す斜視図。
【図4】折り畳み型の移動体電話機を開いた状態で示す斜視図。
【図5】折り畳み型の移動体電話機を開いた状態および閉じた状態で示す斜視図。
【符号の説明】
25 CPU部
27 ROM
28 開閉検出スイッチ
50 エコーキャンセラ部
60 第1のエコーキャンセル手段
70 第2のエコーキャンセル手段
Claims (4)
- 筐体を開閉できる折り畳み型またはスライド型であって、前記筐体は下部ケースの上端に上部ケースの下端が回動またはスライド自在に連結されるように構成され、前記上部ケースに拡声用スピーカが配置され、前記下部ケースに送話マイクが配置される移動体電話機において、
受話側の信号を逆位相に変換して送話側に加算することでエコーを消去する第1のエコーキャンセル手段と、
この第1のエコーキャンセル手段で消し残ったエコーを検知して、消し残し成分にマイナスゲインを付加することでエコーを消去する第2のエコーキャンセル手段と、
前記第1のエコーキャンセル手段で逆位相成分を送話側に加算する際の前記逆位相成分の遅延量を筐体開時用と筐体閉時用の2種類用意してメモリに記憶する手段と、
前記第2のエコーキャンセル手段のマイナスゲインのレベルを筐体開時用と筐体閉時用の2種類用意してメモリに記憶する手段と、
前記筐体の閉状態を検出する検出手段と、
前記検出手段で前記筐体の閉状態を検出したときは、前記メモリから前記筐体閉時用の遅延量およびマイナスゲインのレベルを読出して前記第1および第2のエコーキャンセル手段に設定する制御手段と
を具備し、
前記制御手段は、前記閉状態でのハンズフリー通話時に、前記第1および第2のエコーキャンセル手段に、前記筐体閉時用の遅延量およびマイナスゲインのレベルを設定することを特徴とする移動体電話機。 - 前記検出手段はさらに前記筐体の開状態を検出し、
前記制御手段はさらに、前記検出手段で前記筐体の開状態を検出したときには、前記メモリから前記筐体開時用の遅延量およびマイナスゲインのレベルを読出して前記第1および第2のエコーキャンセル手段に設定し、前記開状態でのハンズフリー通話時に、前記第1および第2のエコーキャンセル手段に、前記遅延量およびマイナスゲインのレベルを、前記遅延量は前記筐体開時用>前記筐体閉時用に設定し、前記マイナスゲインのレベルは前記筐体開時用<前記筐体閉時用に設定することを特徴とする請求項1に記載の移動体電話機。 - 筐体を開閉できる折り畳み型またはスライド型であって、前記筐体は下部ケースの上端に上部ケースの下端が回動またはスライド自在に連結されるように構成され、前記上部ケースに拡声用スピーカが配置され、前記下部ケースに送話マイクが配置される移動体電話機において、
受話側の信号を逆位相に変換して送話側に加算することでエコーを消去するエコーキャンセル手段と、
このエコーキャンセル手段で消し残ったエコーを検知して、消し残し成分が所定のしきい値以上となったならば送話経路をミュートするミュート手段と、
前記エコーキャンセル手段で逆位相成分を送話側に加算する際の前記逆位相成分の遅延量を筐体開時用と筐体閉時用の2種類用意してメモリに記憶する手段と、
前記ミュート手段のしきい値を筐体開時用と筐体閉時用の2種類用意してメモリに記憶する手段と、
前記筐体の閉状態を検出する検出手段と、
前記検出手段で前記筐体の閉状態を検出したときは、前記メモリから前記筐体閉時用の遅延量およびしきい値を読出して前記エコーキャンセル手段およびミュート手段に設定する制御手段と
を具備し、
前記制御手段は、前記閉状態でのハンズフリー通話時に、前記エコーキャンセル手段およびミュート手段に、前記筐体閉時用の前記遅延量およびしきい値を設定することを特徴とする移動体電話機。 - 前記検出手段はさらに前記筐体の開状態を検出し、
前記制御手段はさらに、前記検出手段で前記筐体の開状態を検出したときには、前記メモリから前記筐体開時用の遅延量およびしきい値を読出して前記エコーキャンセル手段およびミュート手段に設定し、前記開状態でのハンズフリー通話時に、前記エコーキャンセル手段およびミュート手段に、前記遅延量およびしきい値を、前記遅延量は前記筐体開時用>前記筐体閉時用に設定し、前記しきい値は前記筐体開時用>前記筐体閉時用に設定することを特徴とする請求項3に記載の移動体電話機。
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