JP3843866B2 - 車両搭載用内燃機関 - Google Patents

車両搭載用内燃機関 Download PDF

Info

Publication number
JP3843866B2
JP3843866B2 JP2002062132A JP2002062132A JP3843866B2 JP 3843866 B2 JP3843866 B2 JP 3843866B2 JP 2002062132 A JP2002062132 A JP 2002062132A JP 2002062132 A JP2002062132 A JP 2002062132A JP 3843866 B2 JP3843866 B2 JP 3843866B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
engine
temperature
heat
event
detected
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2002062132A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2003262128A (ja
Inventor
鈴木  誠
芳雄 山下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2002062132A priority Critical patent/JP3843866B2/ja
Publication of JP2003262128A publication Critical patent/JP2003262128A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3843866B2 publication Critical patent/JP3843866B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Combined Controls Of Internal Combustion Engines (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱を蓄える蓄熱装置を有し、同装置の蓄えた熱が所定の熱媒体を通じて供給されることにより、暖機処理がなされる車載用内燃機関に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車等の車両に搭載される内燃機関にとって、燃焼室周辺の温度が所定温に達していない状態(冷間状態)での機関運転は、燃焼室に供給される燃料が十分に霧化されないこと等の不具合を生じさせ、排気特性(エミッション)や燃費性能を悪化させてしまうため好ましくない。
【0003】
しかし実際のところ、一時的な機関停止後における再始動時のような場合は例外として、機関運転を開始する際には毎回のように、機関始動時から暖機完了時までの期間は冷間状態で機関運転を行わざるをえない。
【0004】
こうした問題に対し、内燃機関が運転中に発する熱を、所定の蓄熱容器に蓄えておき、冷間状態にある機関に放出する機能を有する蓄熱装置が知られている。
【0005】
例えば特開平6−185359号公報に記載された内燃機関の蓄熱装置は、当該機関の放熱によって熱せられた冷却水の一部を機関停止後にも保温状態で貯留しておき、次回の機関始動時に冷却系(当該機関の冷却通路)に解放することで機関を早期に暖めるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、内燃機関が自力で行う暖機の所要時間を短縮化するために蓄熱装置による暖機効果の活用機会を増大させるといった観点からみると、上記のような蓄熱装置を用いて行う内燃機関の暖機処理は、機関始動前から開始し、機関始動時には完了していることが最も好ましい。暖機処理の実施時期が早すぎると、一旦高まった機関の温度が機関始動前に再度低下してしまうことになり、また、その実施時期が遅すぎると、結局、暖機が完了してない状態で機関運転が行われ、蓄熱装置に蓄えられた熱が十分に活用されないことになるからである。
【0007】
しかし、運転者の意志に基づいてなされる機関始動のタイミングを当該機関の制御装置等により正確に予知することは困難である。また、暖機処理の実施タイミングを運転者に委ねたのでは、機関始動時における運転者の操作が煩雑となるばかりでなく、蓄熱装置に蓄えられた熱が最大限活用される期間を把握し、そのような期間を正確に選択して暖機を行うことは困難となる。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄熱装置を用いて一時的に熱を蓄え、その蓄えた熱を利用する機能を備えた車載用内燃機関にあって、蓄えた熱を適切な時期に当該機関に供給することで、機関始動の条件を最適化することのできる車載用内燃機関を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、(1)熱を蓄える蓄熱装置を有し、該蓄熱装置の蓄えた熱が所定の熱媒体を通じて供給されることにより暖機処理がなされる車載用内燃機関であって、当該機関の始動に先立って発生することが予測される第1の事象の発生を検知する第1の検知手段と、前記第1の事象の発生を検知したタイミングと同期して、当該機関の始動に先立ち前記熱媒体を通じた熱供給を開始させる第1の制御手段と、前記第1の事象の発生後に発生すると予測され且つ当該機関の始動に関連する第2の事象の発生を検知する第2の検知手段と、前記第2の事象の発生を検知したタイミングと同期して、所定条件下で前記熱媒体を通じた熱供給を開始させる第2の制御手段と、を備えることを要旨とする。
【0010】
ここで、「第1の事象の発生を検知したタイミングと同期して」とは、「第1の事象の発生を検知したタイミングに」といった意味も含め、「第1の事象の発生を検知したタイミングと何らかの関連性を有するタイミングに」といった意味にあたる。例えば、「第1の事象の発生を検知したタイミングの1秒後に」等もここでいう「第1の事象の発生を検知したタイミングと同期して」の意味に含まれる。
【0011】
また、前記第2の制御手段は、所定条件として、例えば「再度の熱供給によって当該機関の始動性をさらに向上させる余地がある場合」、「前記第1の事象の発生の検知タイミングと同期した熱供給を行った後、所定時間が経過している場合」、或いは「当該機関の温度が所定値を下回っている場合」等といった条件を採用するのが好ましい。
【0012】
なお、当該機関の始動に関連する第2の事象に後続して当該機関が実際に始動する必然性は、第1の事象の発生に後続して当該機関が実際に始動する必然性によりも一般的には高くなる。
【0013】
同構成によれば、前記第1の制御手段に基づく熱供給が一旦完了した後、例えば、当該機関の温度が再度低下し、当該機関の始動時における良好な排気特性を確保できない程度にまで達したような場合であれ、当該機関の始動直前に暖機処理を開始することで、始動時における当該機関の燃焼状態が極力最適化されるようになる。よって、始動時における当該機関の燃焼状態が安定し、排気特性の向上や、運転者に与える違和感の軽減が図られる。
(2)また、前記第2の制御手段は、前記第1の事象の発生が検知されたか否かに関わらず、前記第2の事象の発生を検知したタイミングと同期して、所定条件下で前記熱媒体を通じた熱供給を開始させるのが好ましい。
【0014】
ここで、所定条件としては、例えば「前記熱媒体を通じた熱供給によって当該機関の始動性を向上させる余地がある場合」、或いは「当該機関の温度が所定値を下回っている場合」等といった条件を採用するのが好ましい。
【0015】
同構成によれば、当該機関の始動が後続して発生する必然性が比較的低い第1の事象がなんらかの事情で検知されない場合であれ、少なくとも前記第2の事象の発生に基づく当該機関の始動直前の暖機処理は施されることになるため、始動時における当該機関の燃焼状態(排気特性)の最適化が一層高い確率で保証されるようになる。
(3)また、前記第2の事象は当該機関の運転者が当該機関の始動に先立って行う操作行為に関連する事象であり、且つ、前記第1の事象は前記操作行為に先立つ前記運転者の動作に関連する事象であるのが好ましい。
【0016】
ここで、前記第1の事象としては、例えば当該エンジンの搭載された車両の運転座席のドアの開扉が検知されるタイミング等、一定の確実性をもって機関始動前に発生し得る事象(イベント)を採用するのが好ましい。また、前記第2の事象としては、例えば当該機関の運転者等によるイグニションキー、ペダル、ハンドルの操作等、一定の確実性をもって、前記第1の事象に後続し、また機関始動前に発生し得る事象(イベント)を採用するのが好ましい。
【0017】
同構成によれば、各事象の発生タイミングから当該機関の始動タイミングに至る期間と、各事象の発生後に当該機関が始動される確率(必然性)とが異なる複数の事象を引きがね(トリガー)として、前記蓄熱装置の機能を活用した段階的な暖機処理が行われるようになる。よって、始動時における当該機関の燃焼状態(排気特性)の最適化が一層高い確率で保証されるようになる。
(4)他の発明は、熱を蓄える蓄熱装置を有し、該蓄熱装置の蓄えた熱が所定の熱媒体を通じて供給されることにより暖機処理がなされる車載用内燃機関であって、当該機関の始動に先立って発生することが予測され且つ当該機関の始動に関連する所定の事象の発生を検知する検知手段と、当該機関の温度を検出する温度検出手段と、前記所定の事象の発生が検知される前に検出された温度が所定値以上である場合には、前記所定の事象の発生が検知される前から前記熱媒体を通じた熱供給を行う一方、前記所定の事象の発生が検知されるタイミングより前に検出された温度が所定値を下回っている場合には、前記所定の事象の発生が検知されるタイミング以降に、前記熱媒体を通じた熱供給を行う熱供給制御手段と、を備えることを要旨とする。
【0018】
ここで、前記所定の事象としては、例えば当該機関の運転者等によるイグニションキー、ペダル、ハンドルの操作等、一定の確実性をもって機関始動前に発生し得る事象を採用するのが好ましい。
【0019】
同構成によれば、効率的に熱供給を行うことができる態様、若しくは暖機処理された機関の再冷却を抑制する態様を、機関始動前の温度条件に応じて選択される。よって、機関始動前の温度条件に関わらず、前記蓄熱装置の暖機機能を効果的に活用することができる。
【0020】
例えば、前記所定の事象の発生が検知される前の当該機関の温度が比較的高い場合には、早期に熱供給を開始し、前記所定の事象の発生後、暖機が完了するまでに要する時間の短縮を優先的に図ることができる。ちなみに、前記所定の事象が発生した後、当該機関が始動するまでの時間が長びいたとしても、初期条件としての機関温度が比較的高いため、一旦暖機処理を施された機関が再度冷却されてしまうといった懸念もほとんどない。
(5)また、当該機関の始動に先立って発生することが予測される前記所定の事象よりも、さらに先立って発生することが予測される他の事象の発生を検知する検知手段を備えて、且つ、前記熱供給制御手段は、前記他の事象の発生が検知されたときに、前記検出される温度が所定値以上である場合には、前記所定の事象の発生が検知される前から前記熱媒体を通じた熱供給を行う一方、前記他の事象の発生が検知されたときに、前記検出される温度が所定値を下回っている場合には、前記所定の事象の発生が検知されるタイミング以降に、前記熱媒体を通じた熱供給を行うのが好ましい。
【0021】
ここで、前記所定の事象(以下、後続事象という)よりも、さらに先だって発生することが予測される前記他の事象(以下、先行事象という)としては、例えば当該エンジンの搭載された車両の運転座席のドアの開扉が検知されるタイミング等を採用するのが好ましい。
【0022】
前記後続事象は当該機関の始動に関連する事象であるため、一般的には、前記後続事象に後続して当該機関が実際に始動する必然性は、前記先行事象に後続して当該機関が実際に始動する必然性よりも高くなる。また、前記後続事象は前記先行事象よりも、当該機関の始動直前に発生することになる。
【0023】
このような構成によれば、例えば、前記先行事象の発生が検知される前の当該機関の温度が比較的高い場合(非低温状態)には、早期に熱供給を開始し、前記先行事象の発生後、暖機が完了するまでに要する時間の短縮を優先的に図ることができる。さらに、このような早期の熱供給を開始した場合に、前記先行事象が発生してから前記後続事象が発生するまでの時間が長びいたとしても、初期条件としての機関温度が比較的高いため、前記後続事象の発生前、前記蓄熱装置が(例えば当該機関との間で熱交換を行うことによって)消費する熱量は比較的小さい。このため、前記蓄熱装置は、十分な熱量を保持することができ、前記後続事象の発生後にも再度の暖機処理を行うことができる。
【0024】
一方、当該機関の停止中、前記熱媒体を通じた熱供給を行った後に当該機関を始動させずに放置しておくと当該機関の温度が急速に低下することとなり、また、暖機処理の実施に際し前記蓄熱装置が比較的大きな熱量を消費するような条件下(低温状態)では、前記先行事象に比べ機関始動に直近する後続事象を検知するまで待機し、後続事象を検知したところで前記熱媒体を通じた熱供給を開始することができる。従って、前記蓄熱装置に蓄えられた熱を無駄なく効率的に利用することができるようになる。
【0025】
なお、上記各構成からなる内燃機関において、前記熱供給を行う期間が経過した後に当該機関の始動を許可する許可手段をさらに備えるのが好ましい。
【0026】
ここで、「当該機関の始動を許可する」ことに関し、例えば音声、音響、或いはランプの点灯等を通じて運転者に知覚させたり、当該機関を自動的に始動させるといった制御モードを採用してもよい。また、前記熱供給を行う期間が経過するまでは、運転者による機関始動の操作を無効化する処理を行い、当該期間が経過したところでそのような無効化処理を解除するといった制御モードを採用してもよい。
【0027】
同構成によれば、始動時における当該機関の燃焼状態(排気特性)と、運転者の感じる操作性(快適感)や利便性とが両立して図られるようになる。
【0028】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる内燃機関を車載用エンジンシステムに適用し第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態にかかる車載用エンジンシステム(内燃機関)が搭載される車両の一部を示す略図である。
【0030】
車載用エンジンシステム(以下、エンジンシステムという)100を駆動系として搭載する車両1は、その運転にクラッチ操作を要しないいわゆるオートマチックトランスミッション方式の乗用車である。同図1に示すように、車両1室内の一部を占める運転席1aには、運転座席2を中心としてその周辺に、乗降用ドア(運転席側ドア)3、シートベルト(図示略)を脱着するインナーバックル4、エンジンシステム100に備えられたエンジン本体(図示略)の始動等を行うためのキーシリンダ5、同エンジン本体の機関出力を調整するためのアクセルペダル6、車両1を制動するためのブレーキペダル7、トランスミッション(図示略)の機能を切り換えるためのシフトレバー8、道路情報等を画像情報を画面上に映し出す他タッチ操作による入力操作も可能なディスプレイ装置9、運転者の音声を検知するマイク9a等が設けられている。運転席1aに設けられた上記各種部材2〜9及び9a等は、それぞれが直接、或いは当該部材の動作を検出する機器類(センサ類)を介し、電子制御装置(ECU)30と電気的に接続されている。
【0031】
図2には、ECU30を中心としたエンジンシステム100の電気的構成の概略を示す。
【0032】
同図2に示すように、ECU30の外部入力回路36には、キーシリンダ5、着座センサ2a、ドア開閉センサ3a、ドアロックセンサ3b、シートベルトセンサ4a、ブレーキセンサ7a、シフトポジションセンサ8a、マイク(音響センサ)9a及び水温センサ25等、車両1の各部や運転者に関する情報を電気信号として出力する各種機器が電気的に接続されている。
【0033】
キーシリンダ5(図1を併せ参照)は、同キーシリンダ5に挿入されたイグニションキー5Aの操作に応じ、エンジン10の始動に関連する各部材の動作態様を切り換えるいわゆるイグニションスイッチとしての機能を有する。すなわち、ディスプレイ装置9(図1を参照)をはじめとし、ルームランプ(図示略)、オーディオ(図示略)、或いは表示ランプ類といった周辺機器の主電源や、ECU30にとってエンジン10の運転制御を実施する機能を作動させるためのメインリレーの「オン(ON)」、「オフ(OFF)」を行う他、ECU30を通じエンジン10の始動にかかるスタータ26、点火制御装置19、燃料噴射弁18等への指令信号を出力する。
【0034】
また、キーシリンダ5は、イグニションキー5Aと併せて周知の盗難防止装置を構成する。すなわち、イグニションキー5Aは特定コードの記録された通信チップ5Bを内蔵している。イグニションキー5Aがキーシリンダ5に挿入されると、キーシリンダ5は通信チップ5Bに記録された特定コードを読み取りECU30に伝達する。ECU30は、予め自身の記憶しておいた登録コードを、キーシリンダ5から伝達された上記特定コードと照合し、両者が一致した場合にのみエンジン10の始動を許可する。すなわち、正規のコードが記録された通信チップを内蔵したイグニションキー5Aによらなければ、エンジン10を始動することができない。なお、ECU30による上記特定コードと登録コードとの照合を、盗難防止装置の解除動作という。
【0035】
ドア開閉センサ3a及びドアロックセンサ3bは運転席側ドア3(図1を参照)に取付られている。ドア開閉センサ3aは運転席側ドア3の開閉状態を識別し、この識別に応じた信号を出力する。また、ドアロックセンサ3bは運転席側ドア3がロックされているか否かを識別し、この識別に応じた信号を出力する。運転座席2(図1を参照)に内蔵された着座センサ2aは運転者の着座の有無を識別し、この識別に応じた信号を出力する。インナーバックル4に取り付けられたシートベルトセンサ4aは、シートベルト(図示略)のインナーバックル4への着脱状態を識別し、この識別に応じた信号を出力する。ブレーキペダル7に取り付けられたブレーキセンサ7aは、ブレーキペダル7の踏み込み量に応じた信号を出力する。シフトレバー8に取り付けられたシフトポジションセンサ8aは、運転者の選択したシフトレバー8の位置(シフトポジション)に応じた信号を出力する。
【0036】
他方、ECU30の外部出力回路37には、燃料噴射弁18、点火制御装置19、電動式ウォータポンプ(電動ポンプ)EP、電動式送風ファン(電動ファン)22a,23a、スタータ26等、車両1(エンジンシステム100)の運転状態を制御する部材の他、車両1の室内(例えばディスプレイ装置9の近傍)に取り付けられる点灯ランプ28やスピーカ29等が電気的に接続されている。
【0037】
なお、上述したように、道路情報等を画像情報を画面上に映し出す(出力する)他、タッチ操作による入力操作も可能なディスプレイ装置9は、外部入力回路36及び外部出力回路37のいずれにも電気的に接続されている。
【0038】
ECU30は、その内部に中央処理装置(CPU)31、読み出し専用メモリ(ROM)32、ランダムアクセスメモリ(RAM)33、バックアップRAM34、及びタイマーカウンタ35等を備え、これら各部と外部入力回路36および外部出力回路37とをバス38により接続することによって論理演算回路を構成する。ここで、ROM32は、燃料噴射量、点火タイミング、冷却系20内での冷却水の挙動等、エンジン10の運転状態等を制御するための各種プログラムを予め記憶する。RAM33はCPU52による演算の結果等を一時記憶する。バックアップRAM34は、エンジン10の運転停止後においてもデータを記憶する不揮発性のメモリである。タイマーカウンタ35は計時動作を行う。外部入力回路36は、バッファ、波形回路、ハードフィルタ、及びA/D変換器等を含む。外部出力回路は、駆動回路等を含む。
【0039】
このように構成されたECU30は、外部入力回路36を介して取り込まれる上記各種センサ2a,3a,3b,4a,7a,8a,9a、キーシリンダ5、或いはディスプレイ装置9等からの信号に基づき、エンジン10の始動、燃料噴射、点火、或いは冷却水の挙動にかかるエンジンシステム100の各種制御を実行する。
【0040】
図3には、本実施の形態にかかるエンジンシステム100の概略構成を示す。
【0041】
同図3に示すように、エンジンシステム100は、大きくはエンジン本体(エンジン)10、冷却系20、及び電子制御装置(ECU)30から構成される。
【0042】
エンジン10の外郭は、シリンダブロック10aを下段、シリンダヘッド10bを上段とし、両部材10a,10bが互いに閉じ合わされたかたちで形成される。エンジン10の内部には4つの燃焼室(図示略)と、各燃焼室と外部とを連通させる吸排気ポート(図示略)とが形成されている。エンジン10は、吸気ポートを通じて供給される混合気(外気と燃料との混合ガス)を爆発・燃焼させることにより、その出力軸(図示略)に回転駆動力を得る。
【0043】
冷却系20は、エンジン10内において各燃焼室や吸排気ポートの外周を取り巻くように形成されている循環通路(ウォータジャケット)Aと、エンジン10と蓄熱容器21との間で冷却水を循環させる循環通路Bと、エンジン10とラジエータ22との間で冷却水を循環させる循環通路Cと、エンジン10と暖房用ヒータコア23との間で冷却水を循環させる循環通路Dとから構成されている。また、循環通路Aの一部は、各循環通路B,C,Dの一部として共有される。さらに循環通路Aは、シリンダブロック10a内に形成された循環通路A1と、シリンダヘッド10b内に形成された通路A2と、循環通路A1及び通路A2間を連絡するバイパス通路A3とに概ね分別することができる。
【0044】
すなわち、冷却系20は冷却水の循環通路を複数組み合わせて構築された複合システムであって、この冷却系20内を循環する冷却水は、熱媒体としてエンジン10との間で熱交換を行うことにより同エンジン10各部の冷却、或いは昇温を行う。
【0045】
冷却系20を構成する上記各循環通路A,B,C及びDには、冷却水の挙動や温度を制御、或いは検出する各種部材が設けられている。
【0046】
電動式ウォータポンプ(電動ポンプ)EPは、ECU30からの指令信号に基いて作動し、循環通路B内の冷却水を矢指方向に流動させる。
【0047】
電動ポンプEPの下流には蓄熱容器21が設けられている。蓄熱容器21は、所定量の冷却水を外部から断熱した状態で貯留する機能を有する。すなわち、同図3中の概略的な内部構造に示されるように、蓄熱容器21は、ハウジング21aと、同ハウジング21a内に収納された冷却水収容部21bとを備えた二重構造を有する。ハウジング21a及び冷却水収容部21bの間隙はほぼ真空状態に保たれ、冷却水収容部21bの内部空間と外部とを断熱状態に保つ。冷却水収容部21b内には、循環通路B(ポンプ側通路B1)から送られてくる冷却水を同容器21b内に導入するための導入管21cと、同容器21b内の冷却水を循環通路B(エンジン側通路B2)に排出するための排出管21dとが設けられている。排出管21dを通じてエンジン側通路B2に排出される冷却水は、エンジン10のシリンダヘッド10bに導入され、同シリンダヘッド10b内において各気筒の吸気ポート近傍に形成された経路を優先的に流れる。
【0048】
なお、ポンプ側通路B1及びエンジン側通路B2の通路途中に各々設けられた逆止弁21e,21fが、ポンプ側通路B1から蓄熱容器21を介してエンジン側通路B2に向かう冷却水の流れのみを許容し、逆流を規制する。
【0049】
機械式ウォータポンプ(機械式ポンプ)MPは、エンジン10の出力軸から伝達される駆動力を用い、エンジン10の運転中、外部通路P1よりシリンダブロック10a内へ冷却水を引き込む。エンジン10の運転に伴い機械式ポンプMPが作動すると、循環通路C及び循環通路D内の冷却水に各々矢指方向に向かう流れが生じるよう促される。
【0050】
循環通路Cに設けられたラジエータ22は、加熱した冷却水の熱を外部に放熱する。電動ファン22aは、ECU30の指令信号に基づいて駆動し、ラジエータ22による冷却水の放熱作用を高める。また、循環通路Cの通路途中であって、ラジエータ22の下流にはサーモスタット24が設けられている。サーモスタット24は温度の高さに感応して開閉する周知の制御弁であり、同サーモスタット24近傍における循環通路C内の冷却水の温度が所定温度(例えば80℃)を上回ると開弁して冷却水の流れを許容し、当該所定温度を下回ると閉弁して冷却水の流れを規制する。
【0051】
すなわち、エンジン10の運転時(機械式ポンプMPの作動時)、冷却水の温度が80℃を上回ると循環通路C内の冷却水の流れが許容され、ラジエータ22の作用によって冷却水(エンジン10)の強制冷却が行われる。なお、エンジン10にとって、その温度(冷却系20内の冷却水温とほぼ同等)が80℃を上回っているか、概ね80℃近傍にある状態を温間状態といい、80℃を下回っている状態を冷間状態ということにする。
【0052】
循環通路Dに設けられた暖房用ヒータコア23は、エンジン10内で加熱された冷却水の熱を利用し、必要に応じて車両室内(図示略)の暖房を行う。ECU30の指令信号に基づいて駆動される電動ファン23aは、暖房用ヒータコア23を通過する冷却水の放熱を促すとともに、冷却水の放熱により発生した暖気を空気通路(図示略)を介して車両室内に送り込む。
【0053】
各循環通路B,C,Dを循環する冷却水にとって、エンジン10から外部に向かう共通の流路途中に設けられた水温センサ25は、同流路内の冷却水の温度(冷却水温)THWに応じた検出信号をECU30に出力する。
【0054】
次に、エンジン10内に形成された各燃焼室周辺の構造について、冷却水の通路を中心に詳しく説明する。
【0055】
図4は、エンジン10の内部構造の一部として、燃焼室周辺の断面構造を部分的に拡大して示す略図(側面図)である。
【0056】
同図4に示すように、燃焼室11は、シリンダブロック10aとシリンダヘッド10bとの境界に位置し、気筒12内をエンジン10の出力軸の回転と連動して上下動するピストン13の頭上に形成される。燃焼室11内の空間は、吸気バルブ14及び排気バルブ15を介してそれぞれ吸気ポート16及び排気ポート17と連通しており、機関運転時には、吸気ポート16を通じた混合気の導入や、排気ポート17を通じた排ガスの排出が行われる。吸気ポート16に取り付けられた燃料噴射弁18は、ECU30からの指令信号に基づき燃料を噴射供給する。燃料噴射弁18によって噴射供給された燃料は、吸気ポート16内で霧化し、新気とともに混合気を形成しつつ燃焼室11内に取り込まれる。そして、これもECU30の指令信号に基づいて駆動する点火制御装置19が、適宜のタイミングで点火プラグ19aに通電を行うことで、燃焼室11内に取り込まれた混合気が燃焼に供される。
【0057】
シリンダブロック10a内には、気筒12の外周を取り巻くように冷却水通路(図3において示した循環通路A1の一部に相当する)Pcが形成されている。また、シリンダヘッド10b内において吸気ポート16及び排気ポート17の近傍には、各々吸気ポート側冷却水通路Pa(図3において示した循環通路A2の一部に相当する)及び排気ポート側冷却水通路Pb(同じく、図3において示した循環通路A2に相当する)が形成されている。そして、これら各冷却水通路Pa,Pb,Pc(循環通路A1,A2)を含め、冷却系20内を循環する冷却水の挙動は、基本的には機械式ポンプMP、電動ポンプEP、及びサーモスタット24の動作によって制御されることは前述した通りである。
【0058】
次に、本実施の形態にかかるエンジンシステム100が、ECU30の指令信号等を通じて実行する冷却水の挙動に関する冷却系制御について、その概要を説明する。なお、このエンジンシステム100による冷却系制御は、その実行タイミングや実行条件の相違から、「機関始動後冷間時の制御」、「始動後温間時の制御」、及び「機関始動前の制御(プレヒート制御)」に大別される。
【0059】
図5は、エンジンシステム100(図3を参照)の冷却系20を循環する冷却水の流れがエンジン10の運転状態や温度分布に応じて変化する様を説明すべく同エンジンシステム100を概略的に示す模式図である。なお、同図中において、冷却水の流れが生じている通路(通路途中に設けられた各種部材も含む)は実線で示し、冷却水の流れがほとんど、或いは全く生じていない通路(通路途中に設けられた各種部材も含む)は一点鎖線で示す。
【0060】
先ず、図5(a)及び図5(b)は、いずれもエンジン10が運転状態にあり、電動ポンプEPは停止状態にあるときのエンジンシステム100を示す。ただし、図5(a)は、冷却系20内においてサーモスタット24近傍の冷却水温が80℃以下にある状態のものを示し、図5(b)は、同じく冷却系20内においてサーモスタット24近傍の冷却水温が80℃を上回っている状態のものを示す。
【0061】
図5(a)及び図5(b)に示すように、電動ポンプEPが停止状態にあるとき、シリンダヘッド10b内において循環通路A、循環通路C、若しくは循環通路Dの一部をなす循環通路A2を除けば、循環通路Bに沿った冷却水の流れはほぼ停止することとなる。
【0062】
またこのとき、冷却系20内におけるサーモスタット24近傍の冷却水温が80℃以下であれば、同サーモスタット(制御弁)24が閉弁し、同制御弁24からラジエータ22へ向かう冷却水の流れを規制する。従って、エンジンシステム100内において、循環通路A及び循環通路D内の冷却水のみが機械式ポンプMPの作用により流動することとなる(図5(a))。
【0063】
一方、冷却系20内におけるサーモスタット24近傍の冷却水温が80℃を上回っている場合、同サーモスタット(制御弁)24が開弁し、同制御弁24からラジエータ22へ向かう冷却水の流れが許容される。従って、エンジンシステム100内において、循環通路A,C,D内の冷却水が機械式ポンプMPの作用により流動することとなる(図5(b))。
【0064】
なお、本実施の形態にあってエンジン10が機関運転を行っている最中、冷却系20は、基本的には図5(a)若しくは図5(b)に示す状態を保持することとなる。また、各図に示す冷却系20の状態は、「機関始動後冷間時の制御」(図5(a))若しくは「始動後温間時の制御」(図5(b))によって具現されることとなる。
【0065】
また、図5(c)は、エンジン10が停止状態にあり、電動ポンプEPが作動状態にあるときのエンジンシステム100を示す。
【0066】
同図5(c)に示すように、電動ポンプEPが作動すると、循環通路Bに沿って冷却水が流動する。このとき、エンジン10が停止状態にあることから同エンジン10の出力軸と連動する機械式ポンプMPも停止しており、循環通路A1、バイパス通路A3、循環通路C、および循環通路D内には冷却水の流れがほとんど生じない。ちなみに、同図5(c)に示す冷却系20の状態はエンジン10が機関始動を行う直前のものに相当し、上記「プレヒート制御」によって具現されることとなる。
【0067】
ここで、上記「プレヒート制御」の内容及び実行手順について、より詳細に説明する。
【0068】
図6は、先の図3〜図5に示したエンジンシステム100について、エンジン10の機関始動時における電動ポンプEPの作動態様を実験的に変更した結果として、シリンダヘッド10bの温度推移が異なるものとなる様を示すタイムチャートである。なお、各図において、時刻tstはエンジン10の始動タイミングにあたる。
【0069】
先ず図6(a)において、、二点鎖線で示す温度推移のパターン(以下、推移パターンという)αは当該機関始動に際して電動ポンプEPを作動しない場合の温度推移を示し、一点鎖線で示す推移パターンβは当該機関始動と同時に電動ポンプEPの作動を開始した場合の温度推移を示す。また、実線で示す推移パターンγは当該機関始動より所定時間前(時刻t0)に電動ポンプEPの作動を開始した場合の温度推移を示す。なお各推移パターンα,β,γにおいて、エンジン10は、前回の機関運転の終了時(機関停止時)直前、温間状態にあったものと想定する。
【0070】
同図6(a)に示すように、推移パターンαでは、機関始動後(時刻t1以後)、機関運転に伴うエンジン10自身の発熱作用で、シリンダヘッド10bの温度は徐々に上昇する。外気温等の環境条件にもよるが、時刻tstから十数秒〜数十秒程度が経過した後時刻t2において、シリンダヘッド10bの温度(冷却水温とほぼ同等)が所定値Tstd(80℃)に達すると、当該温度近傍でサーモスタット24が開閉弁を繰り返すことにより、冷却水温(シリンダヘッド10bの温度)はほぼ定温(80℃)に保持される。
【0071】
推移パターンβでは、エンジン10の機関始動と同時に、概ね80℃以上の温度状態で蓄熱容器21内に貯留されている冷却水(熱水)がシリンダヘッド10b内に供給されることとなる。この場合、エンジン10の機関始動後(時刻t1以後)、10秒程度が経過した後時刻t1において、シリンダヘッド10bの温度(冷却水温とほぼ同等)が80℃に達し、その後冷却水温(シリンダヘッド10bの温度)がほぼ定温(80℃)に保持されるようになる。
【0072】
推移パターンγでは、エンジン10の機関始動に先立って、蓄熱容器21内の熱水がシリンダヘッド10b内に供給されることとなる。ここで、シリンダヘッド10bの温度は、電動ポンプEPの作動開始から5〜10秒程度で蓄熱容器21内の冷却水温と同等の温度(60〜80℃)に達することが、発明者らによって確認された。同図6(a)中の推移パターンγにおいては、時刻t0における電動ポンプEPの作動開始後、5秒が経過した後(時刻tst)にエンジン10の機関始動を行うように設定を行った。このため、シリンダヘッド10bの温度が上昇してほぼ80℃に達した後、エンジン10が機関始動を行うこととなっている。ちなみに、エンジン10の機関運転に伴い、冷却系20内における循環通路B以外の通路空間から、(循環通路B内の冷却水温よりも)低温の冷却水がシリンダヘッド10bに流れ込む。このため、時刻tst以後、シリンダヘッド10bの温度は一時的にはわずかに降下することとなるが、蓄熱容器21からの継続的な熱水供給と機関運転に伴うエンジン10自身の発熱作用との協働によって再度上昇し、80℃近傍に留まる。
【0073】
次に図6(b)において、一点鎖線で示す推移パターンδは、時刻t0において電動ポンプEPの作動を開始し、温度が80℃に達した時点(t11)でその作動を一旦停止し、その後所定時間が経過した後(tst)に機関始動を開始した場合の温度推移を示す。一方、実線で示す推移パターンδは、時刻t0において電動ポンプEPの作動を開始し、温度が80℃に達した時点(t11)でその作動を一旦停止するが、エンジン始動時tst前の所定時刻tigにおいて電動ポンプEPを再作動させた場合の温度推移を示す。
【0074】
推移パターンδでは、機関始動前、一旦は80℃にまで達したシリンダヘッドの温度が時刻t11以降徐々に低下してしまい、機関始動後、再度80℃に達するのにかなりの時間(時刻tst〜t12の期間)を要することとなっている。これに対し推移パターンεでは、シリンダヘッドの温度が時刻t11以降徐々に低下する点では推移パターンδと共通するものの、機関始動前に電動ポンプEPが再作動することにより、機関始動時tstまでに温度が再上昇するため、機関始動後、短時間でシリンダヘッドの温度が80℃に達している。
【0075】
また、図6(c)において推移パターンζは、時刻t0において電動ポンプEPの作動を開始し、温度が80℃に達した時点(t21)でその作動を一旦停止し、その後、比較的短期間のうちに機関始動が開始された場合の温度推移を示す。このような場合には、電動ポンプEPを再作動させなくともシリンダヘッドの温度は機関始動時tstにおいて十分高いため、機関運転に伴って発生する熱により速やかに80℃まで上昇する。
【0076】
本実施の形態にかかるエンジンシステム100において、燃料噴射弁18を通じてエンジン10に噴射供給される燃料は、吸気ポート16内で霧化し、新気とともに混合気を形成しつつ燃焼室11内に取り込まれ、この混合気が燃焼に供されることは図4において説明した通りである。
【0077】
このため、噴射供給された燃料が吸気ポート16内で速やかに霧化されること、この霧化された状態を好適に保持するといった観点から、エンジン10、とくにシリンダヘッド10b内に形成された吸気ポート16内壁の温度が所定の温度(60℃、好ましくは80℃程度)を上回っているのが好ましい。吸気ポート16内壁の温度が低くくなると同内壁に燃料が付着しやすくなり、燃料を効率良く霧化(気化)することや、霧化(気化)された燃料をその状態に保持することが難しくなるためである。こうした燃料の気化に関する不利は、燃焼効率や空燃比の最適化を困難にし、排気特性や燃費を低下させてしまうのである。
【0078】
エンジン10が冷間状態にあるとき、外部からの熱供給を何ら行わない条件で機関始動を行うと、シリンダヘッド10b(吸気ポート16)の温度が十分高くなるのに比較的長時間(時刻tst〜t2)を要してしまうのは、図6(a)の推移パターンαが示す通りである。また、同図6(a)中の推移パターンβが示すように、機関始動と同時、あるいはその直後に蓄熱容器21から熱水供給を行い、機関始動後の暖機完了タイミングを極力早めたとしても、暖機中(時刻tst〜t2)における排気特性や燃費の低下は免れない。
【0079】
そこで、図6(a)中の推移パターンγが示すように、エンジン10の始動に先立って蓄熱容器21からシリンダヘッド10bへの冷却水の供給を行い、エンジン10の始動時までに暖機を完了する(エンジン10を冷間状態から温間状態に移行させる)ようにエンジンシステム100を制御(プレヒート制御)するのが理想的である。
【0080】
ところが、蓄熱容器21からの熱水供給によってエンジン10が冷間状態から温間状態に移行を完了するには数秒を要する。この移行完了のタイミングに比し、運転者の意図するエンジン10の機関始動タイミングが早すぎると、温間状態に移行する前にエンジン10を始動させてしまうこととなり、燃料の十分な霧化が図れない。
【0081】
一方、この移行完了のタイミングに比し、運転者の意図するエンジン10の機関始動タイミングが遅すぎる場合には、蓄熱容器21に蓄えた熱水をいたずらに消耗することとなる。
【0082】
そこで、本実施の形態にかかるエンジンシステム100では、当該エンジン10の始動に先立つ必然的な動作であり、その動作タイミングが毎回ほぼ同一である特定の動作を、電動ポンプEPの作動(プレヒート)を開始させる第1の引き金(トリガー)として検知する。そして、第1のトリガーの検知されるタイミングと同期して、電動ポンプEPの作動を開始させる。
【0083】
また、電動ポンプEPの作動はシリンダヘッド10bの温度が80℃に達した時点で一旦停止するが、その後、第1のトリガーに比べエンジン10の始動タイミングtstにより直近する事象を第2のトリガーとして検知し、その検知タイミングtigが電動ポンプEPの停止時から所定期間Δtxを経過した後であった場合には、機関始動に先立って電動ポンプEPを再作動させる(図6(b)参照)。一方、第2のトリガーの検知タイミングtigが電動ポンプEPの停止時から所定期間Δtxを経過する前であった場合、電動ポンプEPの再作動は行わない(図6(c)参照)。
【0084】
図7には、本実施の形態にかかる「プレヒート制御」の具体的な手順を示す。すなわち、エンジン10の始動に先立つ蓄熱容器21から当該エンジン10への熱供給(プレヒート)は以下の処理手順に従って行われる。なお、本ルーチンは、ECU30を通じてエンジン10の停止中、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0085】
本ルーチンに処理が移行すると、ECU30は先ずステップS101において、エンジン10の停止後、その再始動に先立つ特定の動作(第1のトリガー)が生じたか否かを判断する。この第1のトリガーは、エンジン10の始動に先立って生じることについて、ある程度必然性のある事象であれば、運転者等の行為に起因する人為的なものであっても、人為的なものでなくても構わない。例えば、ドア3の開扉動作(ドア開閉センサ3aの出力信号)、ドアロックの解除動作(ドアロックセンサ3bの出力信号)、運転者の着座動作(着座センサ2aの出力信号)、盗難防止装置の解除動作等を第1のトリガーとして採用するのが好ましい。ECU30は、同ステップS101における判断が肯定である場合にはその処理をステップS102に移行し、同ステップS101における判断が否定である場合には本ルーチンを一旦抜ける。
【0086】
続くステップS102においては、エンジン10の始動に先立つ特定の動作として、エンジン10の始動に対して第1のトリガーよりも直近する事象と認められる第2のトリガーが生じたか否かを判断する。第2のトリガーもまた、第1のトリガーと同様、エンジン10の始動に先立って生じることについて、ある程度必然性(確実性)のある事象であれば、運転者等の行為に起因する人為的なものであっても、人為的なものでなくても構わない。例えば図8に示すように、キーシリンダ5はイグニションキー5Aの挿入方向に向かってみると、イグニションキー5Aを挿入するためのスリット5bを備えた円形のロータ5cと、円形のロータ5cの外周を自身の内周によって取り囲む環状のケース5dとを備えて構成されている。ケース5dはキーシリンダ5本体の外郭をなすとともに、例えば運転席の操作パネル(図示略)に固定される。ロータ5cは、スリット5bに挿入されたイグニションキー5Aを捻ればケース5dに対して限られた範囲内で回動させることができるようになるように構成されている。イグニションキー5Aは、同図8中において実線で示すように、スリット5bの長軸方向端部がケース5dの「LOCK」と表示された位置SW1と一致した状態で同スリット5bに挿入することができる。
【0087】
エンジン10の機関始動に際しては、先ず、運転者(操作者)がイグニションキー5Aをスリット5bに挿入し、「LOCK」と表示された位置SW1から「ACC」と表示された位置SW2まで回動させると、ルームランプ(図示略)、オーディオ(図示略)、或いはナビゲータ(図示略)といった周辺機器の主電源が「オン(ON)」状態になる。さらに、同イグニションキー5Aを「ON」と表示された位置SW3まで回動させると(図8中、二点鎖線にて示す)、ECU30にとってエンジン10の運転制御を実施する機能を作動させるためのメインリレーが「オン(ON)」状態になる。さらに、同イグニションキー5Aを「START」と表示された位置SW4まで回動させると、スタータ26が作動してエンジン10をクランキングさせるとともに、このクランキング動作に同期して燃料噴射弁18による燃料の噴射供給や点火制御装置19による気化燃料の点火が開始されることとなる。
【0088】
すなわち、イグニションキー5Aの「ON」と表示された位置SW3への回動(イグニションスイッチの「オン(ON)」への切り替え動作)は、エンジン10の機関始動の直前において必然的に発生する事象であるといえる。
【0089】
そこで、第2のトリガーとしては、例えばイグニションキー5Aのキーシリンダ5への挿入、キーシリンダ5への挿入後におけるイグニションキー5Aの回転動作等を第2のトリガーとして採用することができる。
【0090】
ECU30は、上記ステップS102における判断が否定である場合には処理をステップS103に移行し、同ステップS102における判断が肯定である場合には処理をステップS104に移行する。
【0091】
ステップS103においては、1回目のプレヒートに関し、その開始、継続、若しくは完了のための処理を行う。すなわち、ECU30は、同ステップS103に処理が移行したときの状況に応じ、電動ポンプEPの作動開始、作動継続の容認、作動停止といった処理を適宜行う。ここで、1回目のプレヒートは、第1のトリガーが検知された後、所定期間に亘って行う。また、プレヒートの実施要求があること(例えば、エンジン10の温度を代表するパラメータである冷却水温THWが所定値を下回っていること)や、プレヒートの実施が可能であること(例えば、蓄熱容器21に蓄えられた冷却水の温度が所定値を上回っていること)等をその開始条件する。プレヒートの継続期間としては、プレヒートを行うことによりシリンダヘッド10bの温度が80℃を上回るのに要すると推定される期間を予め設定しておいてもよいし、蓄熱容器21に蓄えられた冷却水の温度やエンジン10の冷却水温THW等に基づいて適宜決定するようにしてもよい。また、プレヒートの継続時間を設定する代わりに、例えばエンジン10の温度上昇量や、蓄熱容器21からエンジン10に供給される熱水の供給量が所定値に達したところでプレヒートを完了するようにしてもよい。同ステップS103における処理を一旦終えた後、ECU30は1回目プレヒートを完了した旨を記憶した上で本ルーチンを一旦抜ける。そして、次回、ステップS102において否定の判断を行った場合には、ステップS103での処理(プレヒート)を行うことなく直ちに本ルーチンを抜けるようにする。
【0092】
ステップS104においては、1回目のプレヒート完了後(電動ポンプEPの停止後)、所定期間Δtx(図6(b),(c)参照)が経過しているか否かを判断する。ECU30は、同ステップS104における判断が肯定である場合には処理をステップS105に移行し、同ステップS104における判断が否定である場合には本ルーチンを一旦抜ける。
【0093】
ステップS105においては、2回目のプレヒートに関し、その開始、継続、若しくは完了のための処理を行う。すなわち、ECU30は、同ステップS105に処理が移行したときの状況に応じ、電動ポンプEPの作動開始、作動継続の容認、作動停止といった処理を適宜行う。ここで、2回目のプレヒートは、その検知タイミングが1回目プレヒートの完了後、基準期間Δtxが経過した後に第2のトリガーが検知された場合に限り実行され、エンジン10が始動するまで、或いはエンジン10の始動後所定期間が経過するまで継続するのが好ましい。同ステップS105における処理を終えた後、ECU30は本ルーチンを一旦抜ける。
【0094】
このように、本実施の形態によるプレヒート制御では、1回目のプレヒート完了後、エンジン10の始動直前に発生する事象である第2のトリガー(キーシリンダ5に挿入されたイグニションキー5Aの回転動作等)を検知し、1回目プレヒートの完了から第2のトリガーの発生までに要した時間に基づいて2回目プレヒートの実行の有無を決定することとしている。すなわち、1回目のプレヒートが完了した時点ではシリンダヘッド10bが十分暖まった状態になっていても、その後、(基準期間Δtxを上回る)長時間が経過しシリンダヘッド10bの温度が再度低下してしまった場合には、エンジン始動の直前に再度プレヒートを実施することにより、エンジン始動時における暖機効率や排気特性を高める。
【0095】
この結果、第1のトリガーの検知に基づくプレヒートの効果が確実に担保される。また運転者にとっては、確実に暖機が完了した状態でエンジン10を始動させることができるようになり、エンジン始動時における違和感が解消し、エンジン始動時の条件に関わらず、エンジンシステム100を快適に操作することができるようになる。
【0096】
なお、本実施の形態における「プレヒート制御」(図7参照)では、第1のトリガーの発生が検知された条件(ステップS101での判断が肯定)の下で、第2のトリガーの発生が検知されたか否かを判断することとした(ステップS102)。これに対し、「第1のトリガーの発生が検知されることなく第2のトリガーの発生が検知された場合には、その検知タイミングに同期してプレヒートを実行する」といった制御ロジックを付加することとしてもよい。そのような制御ロジックを付加することで、第2のトリガーに比べると、エンジン10の始動に先だって発生する必然性が比較的低い第1のトリガーがなんらかの事情で検知されない場合であれ、少なくとも第2のトリガーの発生に基づくエンジン10の始動直前の暖機処理は施されることになるため、始動時におけるエンジン10の燃焼状態(排気特性)の最適化が高い確率で担保されるようになる。
【0097】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかる内燃機関を車載用エンジンシステムに適用し第2の実施の形態について、上記第1の実施の形態と異なる点を中心に説明する。なお、当該第2の実施の形態にあって、適用対象とする車両、エンジンシステムの構成、ECU及びその周辺の電気的構成(図1〜図5)は先の第1の実施の形態と同一である。このため、同一の機能および構造を有する部材やハードウエア構成等については同一の符号を用い、ここでの重複する説明は割愛することとする。
【0098】
当該第2の実施の形態にかかるエンジンシステム100は、エンジン10の始動前、所定のトリガーの検知タイミングに同期してプリヒートを開始する点で上記第1の実施の形態と共通する。しかし、プレヒートの具体的な処理内容として、トリガーを検知した際におけるエンジン10の温度に対応する複数の制御ロジックを用意している点で、第2の実施の形態とは異なる。
【0099】
図9には、第2の実施の形態にかかる「プレヒート制御」の具体的な手順を示す。すなわち本実施の形態において、エンジン10の始動に先立つ蓄熱容器21から当該エンジン10への熱供給(プレヒート)は以下の処理手順に従って行われる。なお、本ルーチンもまた、ECU30を通じてエンジン10の停止中、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0100】
本ルーチンに処理が移行すると、ECU30は先ずステップS201において、エンジン10の停止後、その再始動に先立つ特定の動作(第1のトリガー)が生じたか否かを判断する。この第1のトリガー(先行事象)は、先の第1の実施の形態と同様、例えば、ドア3の開扉動作(ドア開閉センサ3aの出力信号)、ドアロックの解除動作(ドアロックセンサ3bの出力信号)、運転者の着座動作(着座センサ2aの出力信号)、盗難防止装置の解除動作等、エンジン10の始動に先立って生じることについて、少なくともある程度の必然性(確実性)がある事象である。ECU30は、同ステップS101における判断が肯定である場合には処理をステップS102に移行し、同ステップS101における判断が否定である場合には本ルーチンを一旦抜ける。
【0101】
続くステップS202においては、プレヒートの実行条件が成立しているか否かを判断する。例えば、プレヒートの実施要求があること(例えば、エンジン10の冷却水温THWが所定値を下回っていること)や、プレヒートの実施が可能であること(例えば、蓄熱容器21に蓄えられた冷却水の温度が所定値を上回っていること)等をプレヒートの実行条件とする。同ステップS202における判断が肯定である場合、ECU30はその処理をステップS203に移行し、同ステップS202における判断が否定である場合、本ルーチンを一旦抜ける。
【0102】
ステップS203においては、エンジン10が低温状態にあるか否かを判断する。ここでECU30は、例えばエンジン10の冷却水温THWに関して所定の基準値(例えば0℃)を予め設定しておき、現在の冷却水温THWが基準値を下回っている場合、エンジン10が低温状態にあると判断する。そして、エンジン10が低温状態にあると判断した場合には処理をステップS210に移行し、エンジン10は低温状態にないと判断した場合には処理をステップS220に移行する。
【0103】
ステップS210では低温状態に対応する処理を実行する。低温状態に対応する処理では、上記第1のトリガーが検知された後、同ステップS210において直ちにプレヒートを開始することはせず、第2のトリガー(後続事象)として、例えばキーシリンダ5への挿入後におけるイグニションキー5Aの回転動作等を検知するまで待機する。そして、上記第2のトリガーを検知したところで電動ポンプEPを作動させ、蓄熱容器21からエンジン10への熱水供給(プレヒート)を開始する。このとき、プレヒートの継続時間は、エンジン10の冷却水温と、蓄熱容器21内の水温とに基づき、マップ等を参照して決定する。プレヒートが完了すると、ECU30は所定のランプを点灯する等して、運転者に対し始動許可の通知を行う。
【0104】
図10には、プレヒートの継続時間を決定するためのマップ上において、エンジン10の冷却水温と、蓄熱容器21内の水温と、プレヒートの継続時間とがどのような関係にあるかを示す関係図の一例である。同図10中において、線分L1,L2,L3,L4は、プレヒートの継続時間を同じくする点の集合にあたる。このうち、エンジン10の冷却水温と蓄熱容器21内の水温との関係が線分L1にある場合にプレヒートの継続時間は最も短く設定され、線分L2,L3,L4の順で、各線分に対応するプレヒートの継続時間は長く設定されることになる。
【0105】
一方、ステップS220では非低温状態に対応する処理を実行する。非低温状態に対応する処理では、低温状態に対応する処理とは異なり、上記第1のトリガーの検知後、同ステップS220において直ちに電動ポンプEPを作動させ、蓄熱容器21からエンジン10への熱水供給(プレヒート)を開始する。このときプレヒートの継続時間は、蓄熱容器21内の水温に基づき、マップ等を参照して決定する。
【0106】
図11には、プレヒートの継続時間を決定するためのマップ上において、蓄熱容器21内の水温と、プレヒートの継続時間とがどのような関係にあるかを示す関係図の一例である。同図11に示すように、蓄熱容器21内の水温が高いほどプレヒートの継続時間は短くなるように設定される。
【0107】
なお、この非低温状態に対応する処理(ステップS220)では、プレヒートが完了すると、ECU30は所定のランプを点灯する等して、運転者に対し始動許可の通知を行う。そして、第2のトリガーとして、例えばキーシリンダ5への挿入後におけるイグニションキー5Aの回転動作等を検知したところで、再度電動ポンプEPを作動させる(プレヒートを行う)。
【0108】
上記ステップS210若しくはS220における処理を行った後、ECU30は本ルーチンを一旦抜ける。
【0109】
このように、本実施の形態によるプレヒート制御では、エンジン始動に先立って第1のトリガー(例えばドア3の開扉等)を検知した場合、そのときの温度条件に応じ、異なる処理内容のプレヒートを実施する。
【0110】
すなわち、プレヒートが完了した後にエンジン10を始動させることなく放置しておいても当該エンジン10の温度は急速には低下せず、比較的緩慢に低下していくような条件下(非低温状態)では、第1のトリガーの検知タイミングに基づくプレヒートと、第2のトリガーの検知タイミングに基づくプレヒートとを順次行うことにより、エンジン10の始動前、早期に熱供給を開始し、暖機が完了するまでに要する時間の短縮を優先的に図るようにする。よって、エンジン10の始動時には確実にプレヒートが完了しておくようにすることができる。すなわち、機関始動前の待機時間を徒に長引かせ運転者にストレスを与えるようなこともなくなる。なお、エンジン10がこのような非低温状態にある場合(初期条件としての機関温度が比較的高い場合)、第1のトリガーが検知されてから第2のトリガーが検知されるまでの時間が長びいたとしても、1回目の暖機が完了した後、エンジン10の始動前に機関温度が再度降下してしまうといった懸念はほとんど生じない。
【0111】
一方、プレヒートが完了した後にエンジン10を始動させることなく放置しておくと当該エンジン10の温度が急速に低下してしまうような条件下(低温状態で)では、エンジン始動の直前に発生する事象である第2のトリガー(キーシリンダ5に挿入されたイグニションキー5Aの回転動作等)を検知するまで待機し、第2のトリガーを検知したところでプレヒートを開始する。また、このような低温状態においては、限られた時間(第2のトリガーの検知時からエンジン10の始動時まで)で極力効率的なプレヒートを行うべく、エンジン10の冷却水温と蓄熱容器21内の水温とを加味することより、プレヒートの継続時間を緻密に設定する。例えば図12(a)及び図12(b)は、プレヒートの実施に伴うシリンダヘッドの温度推移を示すタイムチャートである。ただし、図12(a)において実線、一点鎖線及び二点鎖線で示す各推移パターンは、プレヒートを実行する際の初期条件としてシリンダヘッド10bの温度を相異ならせたものである。また、図12(b)において実線、一点鎖線及び二点鎖線で示す各推移パターンは、プレヒートを実行する際の初期条件として蓄熱容器21内の水温を相異ならせたものである。なお、図12(b)において、実線で示す推移パターンは蓄熱容器21内の水温が最も高い条件に対応し、二点鎖線で示す推移パターンは蓄熱容器21内の水温が最も低い条件に対応する。図12(a)に示すように、プレヒートの開始時(t0)におけるシリンダヘッド10bの温度が高いほど、シリンダヘッド10bの温度が所定値(例えば80℃)に達するまでの時間Δtは短くなる。また図12(b)に示すように、プレヒートの開始時(t0)におけるシリンダヘッド10bの温度(Tx)が一定であっても、蓄熱容器21内の水温が高いほど、シリンダヘッド10bの温度が所定値(例えば80℃)に達するまでの時間Δtは短くなる。
【0112】
本実施の形態において、エンジン10が低温状態にある場合に実行するプレヒート(ステップS210)では、図10に示すようなマップを参照することにより、シリンダヘッド10bの温度の影響(図12(a)参照)と、蓄熱容器21内の水温の影響(図12(b)参照)とを併せて考量し、シリンダヘッド10bの温度が基準温度Tstd(例えば80℃)に達するまでに要するプレヒートの正確な継続時間を設定することになる。これにより、熱供給効率の高いプレヒートがエンジン始動の直前に行われ、且つ、極めて高い精度でプレヒートの完了タイミングが運転者に通知される。
【0113】
よって、プレヒートが完了した後にエンジン10を始動させず放置しておくと当該エンジン10の温度が急速に低下するような低温条件下(低温状態)であっても、プレヒートの実施に基づく暖機効果を短時間で確実に得ることができる。従って、前記蓄熱装置に蓄えられた熱を無駄なく効率的に利用することで、エンジン10の始動性や、始動時における機関燃焼状態の安定性を確実に高めることができるようになる。
【0114】
すなわち、本実施の形態によれば、エンジン始動前の温度条件が異なる場合であれ、各々の温度条件に応じて熱供給の効率の高い態様を選択することにより、プレヒートによる暖機機能を常時効果的に活用することになる。とくに、温度条件に左右されないエンジン10の確実な始動性と、始動時における機関燃焼状態の安定性の確保と排気特性の向上と、エンジン始動時に運転者が感じる違和感の解消とが順次優先して図られるようになる。
【0115】
よって、機関始動時の燃料気化(霧化)に関する不利が解消され、燃焼効率や空燃比の最適化、ひいては排気特性や燃費の向上が図られるようになる。
【0116】
なお、第1のトリガーとしては、上記各実施の形態で例示したもの以外にも、種々の事象を適用することができる。例えば、シフトレバー8の動作(シフトポジションセンサ8aの出力信号)、ブレーキペダル7の踏み込み動作、シートベルトの装着動作(シートベルトセンサ4aの出力信号)等を第1のトリガーとして適用してもよい。
【0117】
また、運転者の意志に基づいて第1のトリガーや第2のトリガーを発生させるように、特定の操作ボタンやスイッチ等を運転席の操作パネルやイグニションキー5A等に設けてもよい。また、ディスプレイ装置9の画面上に周知のタッチパネル(操作パネル)が表示されるよう当該装置を構成し、運転者が同タッチパネルへのタッチ操作を行うことにより、第1のトリガーや第2のトリガーが発生するようにしてもよい。また、ECU30に周知の音声認識機能を具備させることにより、例えば音響センサ(マイク)9aを通じて運転者が音声による指令を発することで、この音声による指令をトリガーとして、プレヒートを実施するようにしても、上記実施の形態に準ずる効果を奏することはできる。
【0118】
また、同じく上記盗難防止装置の解除動作の開始に替え、エンジン10の始動にイグニションスイッチの動作をプレヒートのトリガーとして適用することもできる。
【0119】
また、上記実施の形態では、水温センサ25の出力信号、言い換えれば冷却系の一部位で検出された冷却水の温度(冷却水温)THWを、エンジン10の温度を代表するパラメータとして採用した。これに関わらず、エンジン10の温度、若しくは吸気ポート16の温度を反映する情報を取得する他の検出手段を採用することもできる。例えば、エンジン10本体の温度や、吸気ポート16内の温度を直接検出するセンサを設けたり、潤滑油の油温を検出する油温センサを設けることとしてもよい。さらに、冷却系の複数箇所に水温センサを設け、検出精度を高めるようにしてもよい。
【0120】
また、上記実施の形態において適用することとしたエンジンシステム100の冷却系20は、図3に示すように、シリンダブロック10a内とシリンダヘッド10b内とにほぼ独立した冷却水の循環通路が形成されている。そして、プレヒート中には蓄熱容器21およびシリンダヘッド10b間の循環通路Bのみ、とくにシリンダヘッド内では吸気ポートの近傍を優先的に冷却水が流れることで、吸気ポートの温度管理を他部位に優先して行うように構成されたものである。
【0121】
これに対し、例えば図13に示すエンジンシステム100'のように、その冷却系20'が、シリンダブロック10a及びシリンダヘッド10b内に共通の冷却水の循環通路を備え、プレヒート中にはエンジン10全体に冷却水を循環させるものであっても、本発明を適用して上記実施の形態に準ずる効果を奏することはできる。
【0122】
また、例えば図14に示すエンジンシステム100''に本発明を適用してもよい。
【0123】
エンジンシステム100''では、その冷却系20''の一部として、エンジン10を介して冷却水を循環させる循環通路20aの途中に通路20b及び通路20cを並列配置し、各通路途中に蓄熱容器21及び暖房用ヒータコア23を設けられている。また、通路20cを流れる冷却水の流量は、流量制御弁24Aにより自在に制御できるように構成されている。このような構成からなるエンジンシステム100''にあっては、プレヒート中と通常の機関運転時とで、冷却系20''内の冷却水が逆方向に流れることとなる。
【0124】
すなわち、プレヒート中には電動ポンプEPが作動することにより各部位で矢指X方向に冷却水が流れ、通常運転時には機械式ポンプMPが冷却水をエンジン10内に引き込むよう動作することにより各部位で矢指Y方向に冷却水が流れる。また、流量制御弁を全閉状態にして機械式ポンプが駆動すると、冷却水が概ねエンジン10内に閉じ込められた状態で循環することとなる(矢指方向Z)、このような態様でエンジン10の始動直後等には、エンジン10内の冷却水温を急速に暖機させることもできる。このような冷却系20''の構成に上記実施の形態にかかる「プレヒート制御」を併用すれば、エンジン始動時前後に亘る暖機効率を一層高めることもできるようになる。
【0125】
また、上記実施の形態においては、エンジン10と一体に構成された冷却系20、20'若しくは20''と、ECU30とによって本発明にかかる蓄熱装置が構成されることとなっている。これに対し、何らかの方法で熱を蓄熱しておき、内燃機関の始動に先立って当該機関に熱供給を行うことのできる装置であれば、本発明にかかる蓄熱装置としての機能を果たし得る。言い換えれば熱を蓄え熱源として機能すれば、オイル等、他の熱媒体を介して蓄熱する装置であってもよく、また、熱を電力として蓄電する装置や、潜在的に熱を包含する化学物質を蓄え、その化学反応によって適宜発熱する装置を蓄熱装置として適用することもできる。そしてさらに、冷却水のような熱媒体を介さずとも、蓄熱装置からの輻射熱や伝熱により熱供給を行うようにエンジンシステムや、その他これに相当するシステム(装置)を構成してもよい。、
また、上記実施の形態にかかる車両に備えられた各種センサ機器やディスプレイ装置9等は、上記「プレヒート制御」に関する各々の実施態様に対応して具備されていればよく、必ずしも上述した全てのセンサ機器等が一実施の態様にとって不可欠な要素ではない。要は、適用対象となる車両、内燃機関、或いは制御装置に対し、必要となる部材(センサ機器等)を個別選択的に取り付けるようにすればよい。
【0126】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、機関始動前における温度条件が変動したり、機関始動に先立って必然的に発生する事象の発生タイミングが運転者の諸事情により不規則に変わるようなことがあっても、始動時における機関の燃焼状態や操作性を最適化することができる。その結果、排気特性を向上させ、また、運転者に与える快適感を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる車載用エンジンシステムが搭載される車両の一部を示す略図。
【図2】同実施の形態にかかる電子制御装置を中心としたエンジンシステムの電気的構成を概略的に示すブロック図。
【図3】同実施の形態にかかる車載用エンジンシステムを示す概略構成図。
【図4】同実施の形態にかかるエンジンについて、その燃焼室周辺の断面構造を部分的に拡大して示す略図。
【図5】同実施の形態にかかるエンジンシステムを概略的に示す模式図。
【図6】蓄熱容器の電動ポンプの作動態様を実験的に変更した結果として、シリンダヘッドの温度推移を示すタイムチャート。
【図7】本発明の第1の実施の形態にかかるプレヒート制御の実行手順を示すフローチャート。
【図8】キーシリンダをイグニションキーの挿入方向に向かってみた平面図。
【図9】第2の実施の形態にかかるプレヒート制御の実行手順を示すフローチャート。
【図10】プレヒートの継続時間を決定するためのマップ上において、エンジンの冷却水温と、蓄熱容器内の水温と、プレヒートの継続時間とがどのような関係にあるかを示す関係図の一例。
【図11】プレヒートの継続時間を決定するためのマップ上において、蓄熱容器21内の水温と、プレヒートの継続時間とがどのような関係にあるかを示す関係図の一例。
【図12】プレヒートの実施に伴うシリンダヘッドの温度推移を示すタイムチャート。
【図13】他の実施の形態にかかるエンジンシステムを概略的に示す模式図。
【図14】他の実施の形態にかかるエンジンシステムを概略的に示す模式図。
【符号の説明】
1 車両
10 エンジン
1a 運転席
2 運転座席
2a 着座センサ
3 ドア
3a ドア開閉センサ
3b ドアロックセンサ
4 インナーバックル
4a シートベルトセンサ
5 キーシリンダ
5b スリット
5c ロータ
5d ケース
5A イグニションキー
5B 通信チップ
6 アクセルペダル
7 ブレーキペダル
7a ブレーキセンサ
8 シフトレバー
8a シフトポジションセンサ
9 ディスプレイ装置
9a マイク
10 エンジン
10a シリンダブロック
10b シリンダヘッド
11 燃焼室
12 気筒
13 ピストン
14 吸気バルブ
16 吸気ポート
17 排気ポート
18 燃料噴射弁
19 点火制御装置
19a 点火プラグ
20 冷却系
20a 循環通路
21 蓄熱容器(蓄熱手段)
21a ハウジング
21b 冷却水収容部
21c 導入管
21d 排出管
21e,21f 逆止弁
22 ラジエータ
22a 電動ファン
23 暖房用ヒータコア
23a 電動ファン
24 サーモスタット
24A 流量制御弁
25 水温センサ
26 スタータ
28 点灯ランプ
29 スピーカ
30 電子制御装置(ECU)
31 中央処理装置(CPU)
32 読み出し専用メモリ(ROM)
33 ランダムアクセスメモリ(RAM)
34 バックアップRAM
35 タイマーカウンタ
36 外部入力回路
37 外部出力回路
38 バス
100 エンジンシステム
A,B,C,D 循環通路
EP 電動ポンプ
MP 機械式ポンプ
Pa 吸気ポート側冷却水通路
Pb 排気ポート側冷却水通路
P1 外部通路

Claims (2)

  1. 熱を蓄える蓄熱装置を有し、該蓄熱装置の蓄えた熱が所定の熱媒体を通じ
    て供給されることにより暖機処理がなされる車載用内燃機関であって、当該機関の始動に先立って発生することが予測され且つ当該機関の始動に関連する所定の事象の発生を検知する検知手段と、当該機関の温度を検出する温度検出手段と、前記所定の事象の発生が検知される前に検出された温度が所定値以上である場合には、前記所定の事象の発生が検知される前から前記熱媒体を通じた熱供給を行う一方、前記所定の事象の発生が検知されるタイミングより前に検出された温度が所定値を下回っている場合には、前記所定の事象の発生が検知されるタイミング以降に、前記熱媒体を通じた熱供給を行う熱供給制御手段と、を備えることを特徴とする車両搭載用内燃機関。
  2. 当該機関の始動に先立って発生することが予測される前記所定の事象よりも、さらに先立って発生することが予測される他の事象の発生を検知する検知手段を備えて、且つ、前記熱供給制御手段は、前記他の事象の発生が検知されたときに、前記検出される温度が所定値以上である場合には、前記所定の事象の発生が検知される前から前記熱媒体を通じた熱供給を行う一方、前記他の事象の発生が検知されたときに、前記検出される温度が所定値を下回っている場合には、前記所定の事象の発生が検知されるタイミング以降に、前記熱媒体を通じた熱供給を行うことを特徴とする請求項1記載の車両搭載用内燃機関。
JP2002062132A 2002-03-07 2002-03-07 車両搭載用内燃機関 Expired - Fee Related JP3843866B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002062132A JP3843866B2 (ja) 2002-03-07 2002-03-07 車両搭載用内燃機関

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002062132A JP3843866B2 (ja) 2002-03-07 2002-03-07 車両搭載用内燃機関

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003262128A JP2003262128A (ja) 2003-09-19
JP3843866B2 true JP3843866B2 (ja) 2006-11-08

Family

ID=29196063

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002062132A Expired - Fee Related JP3843866B2 (ja) 2002-03-07 2002-03-07 車両搭載用内燃機関

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3843866B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4923971B2 (ja) * 2006-11-17 2012-04-25 トヨタ自動車株式会社 エンジンの冷却装置
JP6507801B2 (ja) * 2015-04-01 2019-05-08 日産自動車株式会社 ハイブリッド車両の制御装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2003262128A (ja) 2003-09-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4239417B2 (ja) 蓄熱装置付き内燃機関
US6532911B2 (en) Internal combustion engine having heat accumulator, control of heat supply system and control method of internal combustion engine
US7080617B2 (en) Method for controlling idle stop-and-go system
US7082914B2 (en) Method for controlling idle stop-and-go system
JP3843866B2 (ja) 車両搭載用内燃機関
JP4453442B2 (ja) エンジン制御装置
JPS6275069A (ja) 暖機装置
JP4575933B2 (ja) 内燃機関の始動制御装置
JP4718669B2 (ja) 車載用エンジンシステム及び車載用エンジンシステムの制御装置
JP2002038947A (ja) 蓄熱装置を有する車両搭載用内燃機関および被熱供給体の制御装置
JPH11303696A (ja) 燃焼式ヒータの出力制御装置
KR101601479B1 (ko) 디젤 하이브리드 차량의 냉시동 시 ptc 히터 제어 방법
JP2004068789A (ja) 車載用エンジンシステム
JP2002295281A (ja) 駆動力源の制御装置
JP2006242025A (ja) 車両の制御装置
JP3843906B2 (ja) 内燃機関
JP2006170065A (ja) 車両の制御装置
JP2006207498A (ja) 車両の制御装置
JP2006207497A (ja) 車両の制御装置
JP2005016420A (ja) 蓄熱装置を備えた内燃機関
JP2001115837A (ja) 水冷式内燃機関の起動装置
JP2006220087A (ja) 車両の制御装置
JP2006220086A (ja) 車両の制御装置
JPH11182391A (ja) 内燃機関用燃焼式ヒータの燃焼状態検出装置
JP2003200729A (ja) 車両用空調装置

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20041129

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060421

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060425

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060619

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060725

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060807

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100825

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100825

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110825

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110825

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120825

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130825

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees