JP3840360B2 - カラープラズマディスプレイパネル用青色蛍光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称することがある)に用いられる蛍光体の技術分野に属し、特に、発光強度の経時劣化が改良されたカラーPDP用青色蛍光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラーPDPは、ガス放電によって出る真空紫外線を赤、緑および青色の蛍光体に当てて励起発光させカラー表示するディスプレイであり、薄形で大画面が可能で高速表示ができるなどの特徴があり、壁掛け用や高品位テレビジョンなどへの用途が期待されている。
【0003】
PDP用青色蛍光体としては、主としてアルミン酸系蛍光体が用いられているが、このPDP用アルミン酸系青色蛍光体は、パネル制作時の熱処理(一般的な条件:500℃×30分)による熱劣化とパネル駆動時の真空紫外線(VUV)によるVUV劣化に起因する発光特性の劣化、特に発光強度の劣化の改善が切望されている。このような背景において、アルミン酸蛍光体の組成そのものの最適化等も行われているが特性改善に至ってない。
【0004】
蛍光体の発光特性を維持しまたは向上させるためには蛍光体の表面をSiO2(シリカ)等の各種の物質で保護しようとする試みが従来から提示されている。例えば、特開平10−204429(特願平9−9645)には、蛍光ランプに用いられるアルミン酸系青色蛍光体の粒子表面にSiO2粉末を付着させることによって発光効率等が高められる旨記述されている。このような蛍光体の表面に設けられる保護物質は、励起発光によって生じる蛍光を透過させるとともに、励起光も充分に透過させて高い励起効率が得られるものでなければならない。蛍光ランプの場合は、Hg(水銀)による254nmの紫外線でアルミン酸青色蛍光体を励起発光させ、この紫外線はSiO2を透過するので、SiO2が付着しても励起光を透過させ所望の目的はある程度達成されるであろう。
【0005】
しかしながら、PDPの場合は、He−XeまたはNeによる147nmまたは172nmの真空紫外線で励起してアルミン酸系青色蛍光体を発光させる。紫外線はSiO2を透過するが、真空紫外線はSiO2を透過せずにSiO2に吸収されてしまう。したがって、SiO2は、真空紫外線を用いるPDP用青色蛍光体の保護物質としては、不適であると考えられている。真空紫外線を透過させる物質としては、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム等のフッ化物が知られているが、これらの物質を蛍光体粉末(粒子)に均一にコーティングする技術は未だ存在していない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、真空紫外線で励起発光させるPDP用青色蛍光体の経時的な発光特性の劣化を防止できる新しい技術を確立することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、検討を重ねた結果、真空紫外線が極力吸収されずに透過するような薄い緻密な膜から成る保護膜層を設けることにより上記の課題が解決されることを見出し、本発明を導き出したものである。
【0008】
かくして、本発明に従えば、アルミン酸系青色蛍光体の粉末表面にSiO2被覆膜が100nm以下の厚さで成膜されていることを特徴とするカラープラズマディスプレイパネル用青色蛍光体が提供される。本発明が適用されるアルミン酸系青色蛍光体の好ましい例は、(Ba,Eu)O・MgO・5Al2O3系蛍光体または(Ba,Eu)O・MgO・7Al2O3系蛍光体である。
【0009】
さらに、本発明は、上記のごときカラープラズマディスプレイパネル用青色蛍光体を製造する方法の1つとして、ケイ素ポリマーを有機溶媒に溶かした溶液中にアルミン酸系青色蛍光体の粉末を浸漬し攪拌する工程、浸漬後の蛍光体と溶液を分離する工程、分離後の蛍光体を乾燥する工程、および乾燥後の蛍光体を酸素存在下に1000℃以下で加熱する工程、を含むことを特徴とする方法を提供する。本発明のカラーPDP用青色蛍光体の製造方法の特に好ましい態様に従えば、加熱工程は、150℃〜600℃で加熱する一次処理と、さらに、500℃〜1000℃で加熱する二次処理とから成る。また、本発明のPDP用青色蛍光体の製造方法において用いられるのに特に好ましいケイ素ポリマーはペルヒドロポリシラザンである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明においてPDP用アルミン酸系青色蛍光体の粉末(粒子)を保護するのに用いられるSiO2は、従来より専ら実施されていた粉末付着法によるもの、例えば、上記の特開平10−204429に記載された蛍光ランプ用青色蛍光体の場合のように蛍光体粒子表面にSiO2の粉末が散在的に付着しているものではなく、SiO2被覆膜が100nm以下の薄い厚さの緻密(均一)な膜を形成していることに特徴がある。本発明におけるSiO2膜がこのような構造を有していることは、X線回折およびEPMAによる面分析によって確認されている(後述の実施例参照)。
【0011】
このようにSiO2被覆膜が100nm以下の厚さで緻密に成膜されて蛍光体粉末を保護している本発明のアルミン酸系青色蛍光体は、真空紫外線の透過率70%以上を有することが確認されている。かくして、本発明の蛍光体は、真空紫外線照射の高エネルギー環境下においても真空紫外線の透過率を可及的に損なわず且つ発光強度の経時変化を軽減し蛍光体の長寿命化を実現する。
【0012】
このアルミン酸系青色蛍光体の粉末表面にSiO2被覆膜が100nm以下の厚さで緻密に成膜されているPDP用青色蛍光体は、本発明に従い、ケイ素ポリマーの溶液に原料蛍光体を浸漬してから1000℃以下の比較的温和な条件でポリマーを加熱分解処理することによって得ることができる。すなわち、本発明に従うカラーPDP用青色蛍光体の製造方法は、上記の特開平10−204429に記述されているように蛍光体粉末(粒子)に粉末状態でSiO2を付着させ熱処理を行うのではなく、ケイ素ポリマーを有機溶媒に溶かした溶液中にアルミン酸系青色蛍光体の粉末を浸漬し攪拌し、次いで蛍光体と溶液の分離および蛍光体の乾燥を行った後、蛍光体を酸素存在下(すなわち、大気中または酸素含有ガス雰囲気下)に1000℃以下で加熱する各工程を含むものである。
【0013】
ここで、本発明の方法の特に好ましい態様に従えば、加熱処理を150℃〜600℃(好ましくは150℃〜500℃)で加熱する一次処理と、さらに、500℃〜1000℃(好ましくは500℃〜700℃)で加熱する二次処理とによって行う。これによって、顕著な熱劣化を引き起こさない温度領域でSiO2膜を作成し(一次処理)このSiO2被覆膜を高温熱処理により緻密化する(二次処理)ことができる。
【0014】
膜厚の制御は、必要に応じて、上記のごとき工程を繰り返すことによって容易に行うことができる。すなわち、一次処理後、または、一次処理および二次処理後の蛍光体を再びケイ素ポリマーの有機溶媒溶液に浸漬し攪拌した後、分離工程および乾燥工程に供してから、一次処理、または一次処理と二次処理とから成る加熱工程に供する。勿論、最終的には、二次処理を行いSiO2の緻密化を図る。
【0015】
このようにして、本発明に従えば、ケイ素ポリマーの溶液に蛍光体を浸漬してSiO2膜を被覆することにより、膜厚を制御が可能となり真空紫外線を透過することのできる緻密なSiO2の薄膜を形成することができる。ここで、本発明において用いられるケイ素ポリマーとは、ケイ素化合物のポリマーであって適当な有機溶媒中の溶液状態でアルミン酸系青色蛍光体の粉末に付着するとともに、上記のごとき酸素存在下の加熱処理に供されると分解してSiO2を生成し得るものを指称する。そのようなケイ素ポリマーは、一般に、分子構造として、Si−H、Si−O−H、またはSi−N−Hで表わされるような化学式を含み、その好ましい例はSiHaNb(a=1〜3、b=0または1)で表わされる反復単位を有するペルヒドロポリシラザンである。
【0016】
本発明の方法においては、このようなケイ素ポリマーを適当な有機溶媒(例えば、キシレン、ジブチルエーテル等)で必要な濃度(一般には、0.001〜2.0重量%)までに稀釈した後、その溶液に一定量の蛍光体粉末を入れ(一般的にはケイ素ポリマー溶液に対して重量比で1/10〜1.0)、均一になるように攪拌する。このようにして、蛍光体粉末(粒子)とケイ素ポリマー溶液とを一定時間(一般的には、10〜30分間)接触させた後、蛍光体を溶液から分離し(一般的には、ろ過、スプレードライ等による)、蛍光体を乾燥(一般的には、100〜120℃)した後、上記のごとき加熱工程に供する。
【0017】
【実施例】
以下に、本発明の特徴を更に明らかにするために実施例に沿って本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例1:膜厚と真空紫外線透過率
キシレンで5wt%(重量%)および10wt%に稀釈されたポリシラザン(SiH2NH)n(商標:東燃株式会社)をCaF2板上にスピンコーティングし、溶媒のキシレンを蒸散させて除去し、350℃で焼成(一次処理)後、再度600℃にて焼成(二次処理)を行い、CaF2板上にSiO2被覆膜を形成した。スピンコーティングするときの回転数は1000、2000、4000回転とした。
【0018】
以上のようにして得られた複数の試料を走査型触針式膜厚計を用いて膜厚を測定し、その値を膜厚とした。真空紫外線の透過率はコーティング前後のCaF2板の透過強度の比から求めた。真空紫外線の透過強度は日本分光製の真空紫外線分光システムを用いて測定した。
【0019】
膜厚と透過率の関係を表1および図1に示す。図1から理解されるように、紫外線は膜厚が厚くなってもSiO2膜を透過するが、真空紫外線の場合はSiO2膜を100nm以下の膜厚にすることによって透過率の顕著な上昇が認められ、70%以上の透過率が得られる。膜質の確認はXRD(X線回折)を用いて行い、SiO2膜であることを確認した。
【0020】
【表1】
【0021】
実施例2:SiO 2 被覆膜で成膜された蛍光体の調製
試料2:膜厚100nm以下のSiO2被膜膜で成膜された蛍光体試料を得るために、(Ba,Eu)O・MgO・5Al2O3系青色蛍光体粉末を秤量し、キシレンにて濃度0.1wt%に調整したポリシラザン溶液に浸漬した。このときポリシラザン溶液は蛍光体重量の10倍とし、混合後10分程度攪拌した後、ろ過法にて、蛍光体と溶液を分離した。分離した蛍光体を120℃の乾燥器中でキシレンを蒸散させて完全に除去し、ポリシラザンを蛍光体に被着させた。この蛍光体を大気中にて、350℃の焼成(一次処理)後、再度600℃の焼成(二次処理)を行い、膜厚約5nm以下の緻密なSiO2の被覆膜を蛍光体表面に形成させた。
【0022】
試料3:上記と同様の蛍光体を秤量し、キシレンにて濃度0.1wt%に調整したポリシラザン溶液に浸漬させた。このときポリシラザン溶液は蛍光体重量の2倍とした。10分程度攪拌後、120℃の乾燥器中でキシレンを蒸散させて完全に除去し、ポリシラザンを蛍光体に被着させた。この蛍光体を上記と同様の条件にて焼成し、膜厚約5nmの緻密なSiO2の被覆膜を蛍光体表面に形成させた。
【0023】
試料4〜6:ポリシラザン濃度を0.3wt%にし、処理(一次処理)を繰り返した後、最後に上記と同様の二次処理を行うことで、膜厚20,50,100nm以下の緻密なSiO2の被覆膜を蛍光体に形成させた。
【0024】
上記のように作成した試料と、被覆を施していない試料とを有機バインダーで塗料化、塗布、焼成(500℃)を行った。これらの試料に真空紫外線を照射し、真空紫外線照射での発光強度の経時変化(VUV劣化)の評価を行った。
【0025】
測定結果を表2に示す。但し、発光強度はSiO2被覆前の試料を基準にそれぞれの強度発光の割合で示す。なお、発光強度はミノルタ分光放射輝度計を用いて測定した。また、膜厚は、シラザン添加量と比表面積から算出した膜厚を膜厚A、SiO2被覆後の蛍光強度の低下率と実施例1のSiO2被覆膜の透過率から算出した膜厚を膜厚Bとした。
【0026】
膜厚AとBはほぼ一致し、真空紫外線を励起光として使用するPDP用としては100nm以下、望ましくは20nm以下の膜厚が適切であることが立証された。また、真空紫外線による劣化での維持率(照射0時間に対する照射22時間の強度)はSiO2の被覆により、43%から60%以上に向上することが立証された。
【0027】
【表2】
【0028】
実施例3:熱処理温度の比較試験
アルミン酸青色蛍光体は、VUV劣化の他に、熱処理による熱劣化が起こる。そのため、高温での熱処理は初期値の低下をまねき、熱処理温度を考慮する必要がある。SiO2被覆膜の作成時においても、顕著な熱劣化を引き起こさない温度領域(一次処理)でSiO2被覆膜を作成しこのSiO2被覆膜を高温熱処理(二次処理)にて緻密化する必要があり、一次処理と二次処理の熱処理温度の比較試験を行った。
【0029】
試料7:(Ba,Eu)O・MgO・5Al2O3系青色蛍光体をキシレン溶液に稀釈した0.1wt%のポリシラザン溶液に浸漬、ろ過、蒸散後、一次処理温度として350℃で焼成を行い、SiO2被覆膜を形成した青色蛍光体粉末を作成した。
【0030】
試料8:(Ba,Eu)O・MgO・5Al2O3系青色蛍光体をキシレン溶液に稀釈した0.1wt%のポリシラザン溶液に浸漬、ろ過、蒸散後、一次処理温度として600℃で焼成を行い、SiO2被覆膜を形成した青色蛍光体粉末を作成した。
【0031】
試料9:(Ba,Eu)O・MgO・5Al2O3系青色蛍光体をキシレン溶液に稀釈した0.1wt%のポリシラザン溶液に浸漬、ろ過、蒸散後、一次処理温度として350℃で焼成を行い、その後さらに350℃にて二次焼成を施し、SiO2被覆膜を形成した青色蛍光体粉末を作成した。
【0032】
試料10〜16:(Ba,Eu)O・MgO・5Al2O3系青色蛍光体をキシレン溶液に稀釈した0.1wt%のポリシラザン溶液に浸漬、ろ過、蒸散後、一次処理温度として150℃〜600℃で焼成を行い、その後さらに500℃〜1100℃にて二次焼成を施し、SiO2被覆膜を形成した青色蛍光体粉末を作成した。
【0033】
上記のように作成した各蛍光体試料と、被覆を施していない蛍光体試料とを有機バインダーで塗料化、塗布、焼成(500℃×30min)後、真空紫外線照射での発光強度の経時変化(VUV劣化)の評価を行った。なお、これらの試料の膜厚は、いずれも、シラザン添加量と比表面積から算出した場合(膜厚A)は5nm、SiO2被覆後の蛍光強度の低下率と実施例1のSiO2被覆膜の透過率から算出した場合(膜厚B)は10nm以下であった。
【0034】
表3にこれらの青色蛍光体の真空紫外線照射前と真空紫外線22時間照射後の結果を示す。用いた青色蛍光体の未処理粉体試料(塗料化前)の発光強度を100%とした。
【0035】
表3よりポリシラザン処理を施した試料は、真空紫外線22時間照射後、ポリシラザン処理を施していない試料と比べ相対発光強度が60%以上の維持率が見られるが、一次処理温度150℃〜500℃で処理後、二次処理温度500℃〜700℃で処理した試料は、真空紫外線22時間照射後、相対発光強度70%以上の高い維持率を示した。
【0036】
【表3】
【0037】
実施例4:表面処理法の比較
蛍光体の表面をSiO2で保護する表面処理の手法を比較するために、本発明に従いポリシラザンの溶液を蛍光体に浸漬して加熱(焼成)を行うことによりSiO2被覆膜をアルミン酸青色蛍光体表面に作成した試料と、従来のように蛍光体にSiO2粉体を付着させて加熱したアルミン酸青色蛍光体試料との比較試験を行った。
【0038】
試料17:(Ba,Eu)O・MgO・5Al2O3系青色蛍光体に粒子径200nmのSiO2を0.01wt%で加え、水中にて分散、十分に攪拌した後、蛍光体粉体をろ過により回収、乾燥後、ふるい分けしSiO2を付着させた後、350℃に加熱してアルミン酸青色蛍光体を得た。
【0039】
試料18〜19:(Ba,Eu)O・MgO・5Al2O3系青色蛍光体に粒子径200nmのSiO2を0.1〜1wt%で加え、水中にて分散、十分に攪拌した後、蛍光体粉体をろ過により回収、乾燥後、ふるい分けしSiO2を付着させた後、350℃に加熱してアルミン酸青色蛍光体を得た。
【0040】
上記のように作成した試料と、被覆を施していない試料とを有機バインダーで塗料化、塗布、焼成(500℃×30min)後、真空紫外線照射での発光強度の経時変化(VUV劣化)の評価を行った。また、蛍光体の表面状態の評価を行うために、走査電子顕微鏡写真による観察およびEPMAによる面分析を行った。
【0041】
表4にこれらの青色蛍光体試料の真空紫外線照射前と真空紫外線22時間照射後の結果を示す。表4には、既述の本発明に従いポリシラザン溶液に浸漬した場合の結果をあわせて示している。用いた青色蛍光体の未処理粉体試料(塗料化前)を100%とした。
【0042】
表4から理解されるように試料17,18および19のSiO2粉体の付着による手法で作成した試料は、真空紫外線22時間照射後の相対発光強度は低く、耐VUV効果は見られない。また、図2の電子顕微鏡写真に示されるように蛍光体の表面にSiO2粉体の付着が確認された。さらに図4に示すように、EPMAによる面分析により蛍光体を構成する元素の存在分布を調べた。図4の右側は、メイン元素であるAlの存在分布を示し、図中の暗色部分(黒い部分)を除いてAlが全体的に分布していることを示す。図4の左側はSiの存在分布を示すものであり、Siが均一に分布していれば、Alの存在分布に対応するが、部分的な対応しか認められずSiは均一(緻密)に存在していないことが理解される。
【0043】
一方、本発明に従いポリシラザンを用いてSiO2被覆膜を作成した試料(試料11)は、図3の電子顕微鏡写真に示されるようにSiO2粉体の付着は確認されない。さらに、図5のEPMA面分析が示すように、蛍光体のメイン元素であるAlの存在分布(図5の右)とSiの存在分布が対応していることから、蛍光体状にSiO2膜が均一(緻密)に存在していることが理解される。試料7についてもほぼ同じ結果が得られる。以上の結果は、単にSiO2が蛍光体の表面に付着していればよいということでなく、ポリシラザンのようなケイ素ポリマーの溶液中への浸漬を含む処理による均一(緻密)なSiO2被覆膜の形成が必要であることを示している。
【0044】
【表4】
【0045】
実施例5:他の蛍光体への適用
本発明によるSiO2被覆の薄膜の形成がある特有の蛍光体のみの効果かを確認するために、プラズマディスプレイ用蛍光体として用いられる緑色蛍光体についても、ポリシラザンを用いたSiO2被覆膜の形成を行いVUV評価を行った。
【0046】
緑色蛍光体としてプラズマディスプレイに用いられている2(Zn,Mn)O・SiO2系を用い、実施例3の試料11を作成した条件で0.1wt%のポリシラザン溶液を用いてSiO2被覆膜を形成した緑色蛍光体(試料20)を得た。また、比較のために、実施例3の試料11のアルミン酸青色蛍光体も調製した。
【0047】
これらの試料と、被覆を施していない各色試料を有機バインダーで塗料化、塗布、焼成(500℃×30min)後、真空紫外線照射での発光強度の経時変化(VUV劣化)の評価を行った。
【0048】
表5に上記のように作成した青色蛍光体と緑色蛍光体の真空紫外線照射前と真空紫外線22時間照射後の結果を示す。各色とも未処理粉体試料(塗料化前)を100%とした。
【0049】
2(Zn,Mn)O・SiO2系の緑色蛍光体においては、ポリシラザン処理によるSiO2被覆膜の形成は逆効果であり、アルミン酸系青色蛍光体のみ有効であった。
【0050】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって得られるSiO2膜の膜厚と紫外線および真空紫外線の透過率との関係を示す。
【図2】従来法に従いSiO2粉末が表面に付着した蛍光体の粒子構造を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明の蛍光体の粒子構造を示す走査顕微鏡写真である。
【図4】従来法に従いSiO2粉末が表面に付着した蛍光体の粒子構造を示すEPMA面分析写真である。右側がメイン元素であるAlの面分析結果を示し、左側がSiの面分析結果を示す。
【図5】本発明の蛍光体の粒子構造を示すEPMA面分析写真である。右側がメイン元素であるAlの面分析結果を示し、左側がSiの面分析結果を示す。
Claims (2)
- アルミン酸系青色蛍光体の粉末表面にSiO2被覆膜が100nm以下の厚さで成膜されているカラープラズマディスプレイパネル用青色蛍光体を製造する方法であって、ケイ素ポリマーを有機溶媒に溶かした溶液中にアルミン酸系青色蛍光体の粉末を浸漬し攪拌する工程、浸漬後の蛍光体と溶液を分離する工程、分離後の蛍光体を乾燥する工程、および乾燥後の蛍光体を酸素存在下に1000℃以下で加熱する工程を含み、前記ケイ素ポリマーがペルヒドロポリシラザンであることを特徴とする方法。
- 加熱工程が、150℃〜600℃で加熱する一次処理と、さらに、500℃〜1000℃で加熱する二次処理とから成ることを特徴とする請求項1記載のカラープラズマディスプレイ用青色蛍光体の製造方法。
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