JP3836791B2 - リガンドの迅速な同定のための拡張されたテザー化アプローチ - Google Patents

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Description

【0001】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、一般に、標的分子に対する結合パートナーの迅速な同定および特徴付けのための、および改善された結合親和性を有する結合パートナーを提供するための方法に関する。より詳細には、本発明は、標的分子上で互いに近くで結合する低分子フラグメントの迅速な同定のための、改善されたテザー化(tethering)方法に関する。この方法は、より高い親和性の化合物を生成するために、標的生物学的分子(TBM)(例えば、ポリペプチドまたは他の高分子)上に予め形成されたリンカーを介して、目的の部位付近に弱く結合する低分子リガンドの迅速な同定に特に適切である。
【0002】
(関連分野の説明)
薬物発見プロセスは、通常、適度な親和性のリード(K 約1〜10μM)を同定するための化合物ライブラリー(代表的には、数十万のメンバー)の大量のスクリーニングから開始する。いくつかの標的は、このスクリーニングプロセスに十分に適切であるが、ほとんどは、適度な親和性のリードが得るのが困難であることから、問題となる。より弱い結合化合物を同定およびその後に最適化することは、この成功率を改善するが、高い濃度でのスクリーニングは、一般に、化合物の不溶性およびアッセイの人為的結果に起因して、実用的でない。さらに、代表的なスクリーニングプロセスは、薬物設計のための特定の部位を標的とせず、高スループットアッセイが利用可能である部位のみを標的とする。最後に、多くの従来のスクリーニング方法は、阻害アッセイに依存し、これは、しばしば、反応性化学種または変性剤によって生じる人為的結果を受けやすい。
【0003】
Erlansonら、Proc.Nat.Acad Sci.USA 97:9367−9372(2000)は、「テザー化(tethering)」と呼ばれる、新しいストラテジーを最近報告した。これは、中間のジスルフィド「テザー」を使用して、タンパク質または他の高分子上の特異的に標的化された部位に低い親和性で結合する小さい(約250Da)可溶性薬物フラグメントを、迅速かつ確実に同定する。このアプローチに従って、ジスルフィド含有分子のライブラリーを、迅速なチオール交換を促進する部分的な還元条件下で、システイン含有標的タンパク質と反応させる。分子が、たとえ、その標的タンパク質に対して弱い親和性を有する場合であっても、その分子を標的タンパク質に連結するジスルフィド結合(「テザー」)は、エントロピー的に安定化される。次いで、このジスルフィドテザー化フラグメントを、種々の方法(質量分析法(MS)を含む)によって同定し得、そしてそれらの親和性が、ジスルフィドテザーの除去の際に従来のアプローチによって改善され得る。PCT公開番号WO00/00823(2000年1月6日公開)もまた参照のこと。
【0004】
Erlansonらのテザー化アプローチは、小さい低親和性リガンドの迅速な同定において有意な利点を提示し、そして薬物リードを生成するための強力なツールであるが、薬物候補の理論的設計を容易にするためのさらなる改善された方法の必要性が存在する。
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、拡張されたテザー化アプローチを使用することによる、標的分子上の異なる部位に対して固有の結合親和性を有するリガンドを迅速かつ確実に同定するためのストラテジーを記載する。このアプローチは、低分子エキステンダー(SME)の設計に基づき、このSMEは、可逆的または不可逆的な共有結合を介して、目的の第1の部位または第1の部位付近で標的分子(TM)にテザー化(繋がれ)され、そしてTM上の目的の第2の部位に対する親和性についてスクリーニングされる有機低分子と反応性である、化学反応基を有する。従って、SMEは、複数のリガンド候補をスクリーニングして、TM上の目的の第2の部位に対する固有の結合親和性を有するリガンドを同定するために使用される。所望の場合、さらなるSMEは、目的の第2の部位に対する結合親和性を有するリガンドの正体に基づいて設計され、そしてスクリーニングを繰り返して、同じTMまたは関連するTM上の目的の同じ部位または他の部位に対する固有の結合親和性を有するさらなるリガンドを同定し得る。
【0006】
本発明の1つの局面は、低分子エキステンダー(SME)の設計に関する。この局面に置いて、本発明は、以下の工程を包含するプロセスに関する:
(i)目的の第1の部位および第2の部位を有する標的分子(TM)を、複数の第1の小さい有機リガンド候補と接触させる工程であって、このTMは、目的の第1の部位または第1の部位付近で反応性の求核剤または求電子剤を含むかまたは含むように改変されており、この候補は、この求核剤または求電子剤と反応性の官能基を有し、この工程は、この求核剤または求電子剤と目的の第1の部位に対する親和性を有する候補との間で、可逆的な共有結合が形成されて、TM−第1のリガンド複合体を形成するような条件下で行われる、工程;
(ii)(i)の複合体由来の第1のリガンドを同定する工程;および
(iii)(ii)で同定された第1のリガンドの誘導体を設計して、TM上の求核剤または求電子剤と反応性の第1の官能基、および目的の第2の部位に対する親和性を有する第2のリガンドと反応性の第2の官能基を有する、SMEを提供する工程。
【0007】
本発明のこの局面の1つの実施形態において、上記工程(iii)のSMEは、それがTMの求核剤または求電子剤と不可逆的な共有結合を形成し得るように、設計される。好ましい実施形態において、TM上の反応基は、求核剤であり、好ましくは、チオール基、保護化チオール基、可逆的ジスルフィド基、ヒドロキシル基、保護化ヒドロキシル基、アミノ基、保護化アミノ基、カルボキシル基、または保護化カルボキシル基であり、そしてSME上の好ましい第1の官能基は、SN2様の付加を受け得るかまたはその求核剤とマイケル型の付加物を形成し得る基である。次いで、この様式で設計されたSMEをTMと接触させて、可逆的なTM−SME複合体を形成する。次いで、この複合体を、複数の第2の小さい有機リガンド候補と接触させ、ここで、このようか候補は、TM−SME複合体中のSMEと反応性の官能基を有する。結果として、TM上の目的の第2の部位に対する親和性を有する候補物は、TM−SME複合体と可逆的な共有結合を形成し、それによって、目的の第2の部位に対する固有の結合親和性を有するリガンドが、同定される。
【0008】
本発明の代替的な実施形態において、上記工程(iii)のSMEは、TMの求核剤または求電子剤と第1の可逆的な共有結合を形成する、第1の官能基を含むように設計される。このTM上の反応基は、好ましくは、求核剤である。好ましくは、この可逆的な共有結合は、TM上のチオール、保護化チオールまたは可逆的ジスルフィド結合で形成される、ジスルフィド結合である。次いで、この様式で設計されたSMEを、チオール交換条件下で、TMと接触させ、その後かまたはそれと同時かのいずれかで、TMを複数の第2の小さい有機リガンド候補と接触させ、各々の小さい有機リガンド候補は、遊離チオール、保護化チオールまたは可逆的ジスルフィド基を有し、ここで、TM上の目的の第2の部位に対する親和性を有するリガンド候補が、TM−SME複合体とジスルフィド結合を形成し、それによって、第2のリガンドが同定される。このプロセスは、ジスルフィド還元剤(例えば、メルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスレイトール(DTE)、メルカプトプロパン酸、グルタチオン、システアミン、システイン、トリス(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびトリス(シアノエチル)ホスフィン)の存在下で行われ得る。
【0009】
特定の実施形態において、SMEは、目的の部位または目的の部位付近にチオールを有する標的生物学的分子(TBM)によって、チオールまたは保護化チオール(ジスルフィドモノフォア(monophore))を有する有機低分子をこのような分子のライブラリーから選択に基づいて設計される。この場合、本発明の豊富尾は、以下の工程を包含するプロセスである:
(i)チオール交換条件下で、TBMを有機低分子のライブラリーと接触させる工程であって、このTBMは、このTBM上の目的の第1の部位または第1の部位付近でチオール、保護化チオールまたは可逆的ジスルフィド基を含むかまたは含むように改変されており、各々の有機低分子は、遊離チオールまたは可逆的ジスルフィド基(ジスルフィドモノフォア(monophore))を有し、ここで、目的の第1の部位に対して親和性を有するライブラリーのメンバーは、このTBMとジスルフィド結合を形成する、工程;
(ii)(i)由来のライブラリーのメンバー(選択されたジスルフィドモノフォア)を同定する工程;
(iii)(ii)由来のライブラリーのメンバーの誘導体を設計する工程であって、この誘導体は、第1の官能基および第2の官能基を有するSMEであり、第1の官能基は、TBM上のチオールと反応性であり、そして第2の官能基は、チオール、保護化チオールまたは可逆的ジスルフィド基である、工程。
【0010】
先のように、SMEは、TBMと不可逆的または可逆的な共有結合を形成する第1の官能基を含むように設計され得、そして第2のリガンドを同定するために、上記のように、低分子の特定のライブラリーにおいて、低分子リガンド候補をスクリーニングするために使用され得る。
【0011】
従って、1つの実施形態において、工程(iii)のSMEは、TBM上のチオールと不可逆的な共有結合を形成する第1の官能基を含むように設計される。この実施形態の好ましい第1の官能基は、SN2様の付加を受け得るかまたはチオールとマイケル型の付加物を形成し得る基である。次いで、この様式で設計されたSMEをTBMと接触させて、不可逆的なTBM−SME複合体を形成する。次いで、この複合体を、チオール交換条件下で、有機低分子の第2のライブラリーと接触させ、各有機低分子は、遊離チオールまたは可逆的ジスルフィド基を有し、ここで、TBM上の目的の第2の部位に対する親和性(好ましくは、最も高い親和性)を有するライブラリーのメンバー(第2のリガンド)が、TBM−SME複合体とジスルフィド結合を形成する。
【0012】
代替的な実施形態において、工程(iii)の低分子エキステンダー(SME)は、TBMのチオールと第1の可逆的な共有結合を形成する、第1の官能基を含むように設計される。次いで、この様式で設計されたSMEを、チオール交換条件下で、TBMと接触させ、その後かまたはそれと同時かのいずれかで、TBMを第2の有機低分子のライブラリーと接触させ、各々の有機低分子は、遊離チオールまたは可逆的ジスルフィド基を有し、ここで、TBM上の目的の第2の部位に対する親和性(好ましくは、最も高い親和性)を有するライブラリーのメンバー(第2のリガンド)が、TBM−SME複合体とジスルフィド結合を形成する。
【0013】
このプロセスは、ジスルフィド還元剤(例えば、上記に列挙されるジスルフィド還元剤)の存在下で行われ得る。
【0014】
TMまたはTBM上の目的の第1の部位または第2の部位に対するリガンド候補(ライブラリーのメンバー)の親和性の決定は、プール中の異なるライブラリーメンバー間の競合によってか、または還元剤(例えば、上記に列挙される還元剤)との比較(すなわち、力価測定)によって行われ得る。
【0015】
特定の実施形態において、本発明は、以下の工程を包含するプロセスに関する:
(i)標的生物学的分子(TBM)を、低分子エキステンダーと接触させる工程であって、このTBMは、そのTBM上の目的の第1の部位または第1の部位付近で求核剤を含むかまたは含むように改変されており、この低分子エキステンダーは、この求核剤と反応性の第1の官能基、およびチオール、保護化チオールまたは可逆的ジスルフィド基である第2の官能基を有し、それによって、TBM−低分子エキステンダー(TBM−SME)複合体を形成する、工程;
(ii)チオール交換条件下で、このTBM−SME複合体を、有機低分子のライブラリーと接触させる工程であって、各々の有機低分子(リガンド)は、遊離チオール、保護化チオールまたは可逆的ジスルフィド基を有し、ここで、目的の部位に対する親和性を有するライブラリーのメンバーは、TBM−SME複合体とジスルフィド結合を形成し、それによって、TBM−SME−リガンド複合体を形成する、工程;および
(iii)(ii)由来のリガンドを同定する工程。
【0016】
別の特定の実施形態において、本発明は、以下を包含するプロセスに関する:
(i)標的生物学的分子(TBM)を提供する工程であって、このTBMは、このTBM上の目的の第1の部位付近に反応性の求核剤を含むかまたは含むように改変されている、工程;
(ii)(i)由来のTBMを、低分子エキステンダーと接触させる工程であって、この低分子エキステンダーは、TBM上の求核剤と反応性である基を有し、そして遊離チオールまたは保護化チオールを有する、工程;
(iii)TBM上の求核剤と低分子エキステンダー上の基との間で共有結合が形成されるように条件を調整する工程であって、それによって、TBMと低分子エキステンダーとを含む共有結合複合体を形成し、この複合体は、TBM上の目的の第2の部位付近に遊離チオールまたは保護化チオールを提示する、工程;
(iv)チオール交換条件下で、(iii)由来の複合体を、有機低分子のライブラリーと接触させる工程であって、各々の分子は、遊離チオールまたは交換可能なジスルフィド連結基を有し、ここで、TBM上の目的の第2の部位に対する最も高い親和性を有するライブラリーのメンバーが、この複合体とジスルフィド結合を形成する、工程;および
(v)(iv)由来のライブラリーのメンバーを同定する工程。
【0017】
特定の実施形態において、本発明のプロセスは、各メンバーがジスルフィド結合を形成するライブラリーで行われ得る。このようなライブラリーの1例は、各メンバーがシステアミンジスルフィドを形成するライブラリーである。ライブラリーのメンバーがジスルフィドを形成する場合、還元剤対総ジスルフィドの好ましいモル比は、約1:100〜約100:1であり、そしてより好ましくは、約1:1〜約50:1である。
【0018】
テザー化(tethering)プロセスは、ジスルフィドライブラリーのメンバーを、TBMとまたは2以上のプール中のTBMと一度に接触させることにより、行われ得る。プールが用いられる場合、1プールにつき5〜15のライブラリーメンバーを用いることが好ましい。
【0019】
全ての実施形態において、SMEおよび/またはTMもしくはTBM上の目的の部位に結合する低分子のライブラリーの正体は、例えば、質量分析法(MS)によって、または検出可能なタグによって、決定され得る。TBMに結合するライブラリーメンバーを検出するために質量分析が用いられ、プールが用いられる場合、プールの各々のメンバーは、分子量が異なり、好ましくは、約10ダルトン異なることが好ましい。TBM−ライブラリーメンバーの複合体の質量を測定することにより、または最初にこの複合体からライブラリーメンバーを遊離するか、もしくは機能的アッセイ(例えば、ELISA、酵素アッセイなど)を用いることにより同定が行われ得る。
【0020】
異なる局面において、本発明は、上記で議論された方法のいずれかにより同定された第1のリガンドおよび/または第2のリガンドを含む分子に関する。特定の実施形態において、この分子は、互いに共有結合された第1および第2のリガンドを含む。共有結合は、任意の共有結合(ジスルフィド結合が挙げられるが、これに限定されない)により提供され得る。
【0021】
さらなる局面において、本発明は、このような分子を合成するための方法に関する。得られた分子は、当然のことながら、例えば、改善された特性(例えば、溶解性、バイオアベイラビリティー、親和性、および半減期)を付与するためにさらに改変され得る。例えば、ジスルフィド結合は、標準的な生物学的条件下でより大きな安定性を有するリンカーにより置換され得る。可能なリンカーとしては、アルカン、アルケン、芳香族、ヘテロ芳香族、エーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
(発明の詳細な説明)
(1.定義)
他に規定されない限り、本明細書中で用いられる技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解される意味と同じ意味を有する。Singletonら,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,第2版,J.Wiley&Sons(New York,NY 1994)、およびMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure,第4版,John Wiley&Sons(New York,NY 1992)は、本出願において用いられる用語の多くに対する一般的ガイドを当業者に提供する。
【0023】
当業者は、本発明の実施において用いられ得る、本明細書中に記載の方法および材料と類似のまたはこれと等価な多くの方法および材料を認識する。実際に、本発明は、記載の方法および材料にはいかようにも限定されない。本発明の目的に関しては、以下の用語が、以下に記載される。
【0024】
用語「標的」、「標的分子」、および「TM」は、交換可能にかつその最も広い意味で用いられ、リガンドが固有の結合親和性を有する化学的実体または生物学的実体をいう。この標的は、分子、分子の一部分、または分子の凝集物であり得る。この標的は、可逆的共有結合を介してリガンドに可逆的に共有結合し得るか、または不可逆的に共有結合(テザー(tether))し得る。標的分子の特定の例としては、ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、酵素(プロテアーゼ(例えば、システインプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、およびアスパルチルプロテアーゼ)が挙げられる))、レセプター、転写因子、レセプターに対するリガンド、増殖因子、サイトカイン、免疫グロブリン、核タンパク質、シグナル伝達成分(例えば、キナーゼ、ホスファターゼ)、アロステリック酵素調節因子など、ポリヌクレオチド、ペプチド、糖質、糖タンパク質、糖脂質、および他の巨大分子(例えば、核酸−タンパク質複合体、クロマチンもしくはリボソーム)、脂質二重層含有構造(例えば、膜)または膜に由来する構造(例えば、小胞)が挙げられる。この規定は、具体的には、以下に規定される標的生物学的分子(TBM)を含む。
【0025】
本明細書中で記載される場合、「標的生物学的分子」または「TBM」は、互いに生物学的に関連する複合体を形成し得る単一の生物学的分子または複数の生物学的分子をいい、これらの分子に対して、低分子アゴニストもしくは低分子アンタゴニストが治療的重要性を有する。好ましい実施形態において、TBMは、2以上のアミノ酸を含み、有機低分子のライブラリーのメンバーに結合するための反応基を有するか、またはこの反応基を有するように改変され得るポリペプチドである。
【0026】
単数形もしくは複数形で用いられる場合、用語「ポリヌクレオチド」とは、一般に、改変されていないRNAもしくはDNA、または改変されたRNAもしくはDNAであり得る、任意のポリリボヌクレオチドまたは任意のポリデオキシリボヌクレオチドをいう。従って、例えば、本明細書中で定義される場合、ポリヌクレオチドとしては、一本鎖DNAおよび二本鎖DNA、一本鎖領域および二本鎖領域を含むDNA、一本鎖RNAおよび二本鎖RNA、ならびに一本鎖領域および二本鎖領域を含むRNA、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子(これらは、一本鎖、もしくはより代表的には、二本鎖であり得、または一本鎖領域および二本鎖領域を含み得る)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本明細書中で用いられる場合、用語「ポリヌクレオチド」とは、RNAもしくはDNA、またはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域をいう。このような領域における鎖は、同じ分子に由来してもよいし、異なる分子に由来してもよい。この領域は、これらの分子の1以上の全てを含み得、より代表的には、これらの分子のいくつかのうちの領域のみを含み得る。三重らせん領域の分子のうちの1つは、しばしば、オリゴヌクレオチドである。用語「ポリヌクレオチド」は、具体的には、1以上の改変塩基を含む、DNAおよびRNAを含む。従って、安定性または他の理由のために骨格が改変されたDNAまたはRNAは、この用語が、本明細書中で意図される限り「ポリヌクレオチド」である。さらに、異常塩基(例えば、イノシン)もしくは改変塩基(例えば、トリチル化塩基)を含む、DNAまたはRNAは、本明細書中で規定される場合、用語「ポリヌクレオチド」内に含まれる。一般に、用語「ポリヌクレオチド」は、改変されていないポリヌクレオチドの化学的に改変された形態、酵素的に改変された形態および/または代謝的に改変された形態、ならびにウイルスおよび細胞(単細胞および多細胞を含む)に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態の全てを含む。
【0027】
本明細書中で規定される場合「リガンド」は、標的に対する固有の結合親和性を有する実体である。このリガンドは、この標的に結合する分子、またはこの標的に結合する分子の一部分であり得、このリガンドは、代表的には、有機低分子であり、この有機低分子は、標的分子に対する固有の結合親和性を有するが、他の配列特異的結合分子でもあり得る。これらの配列特異的結合分子としては、ペプチド(D−、L−、またはD−およびL−の混合物)、ペプチド模倣物、複雑な糖質、または個々のユニットもしくはモノマーの他のオリゴマー(これらは、標的に特異的に結合する)が挙げられる。用語「モノフォア(monophore)」は、用語「リガンド」と交換可能に本明細書中で用いられ、リガンドのモノマーユニットをいう。用語「ダイアフォア(diaphore)」は、ユニットを形成するように共有結合した2つのモノフォアを示し、このユニットは、標的上の2つの別個であるが、近くにある部位に結合する2つの構成的モノフォアユニットもしくはリガンドが原因で標的に対してより高い親和性を有する。個々の成分の親和性の積より大きなダイアフォアの結合親和性は、「アビディティー」といわれる。用語ダイアフォアは、ユニットが標的に共有結合されているか、標的から遊離した後に別々に存在しているか否かにかかわらず、用いられる。この用語はまた、種々の誘導体もしくは標的に対する結合を増強するために導入された改変を含む。
【0028】
本明細書中で用いられる場合、標的上の「目的の部位」は、特定のリガンドが結合する部位であり、この部位は、モノマーサブユニットの特定配列(例えば、アミノ酸残基、またはヌクレオチド)を含み得、3次元構造を有し得る。代表的には、リガンドと標的分子上の目的の部位との間の分子相互作用は、非共有結合であり、水素結合、ファンデルワールス相互作用、および静電相互作用が挙げられる。ポリペプチド(例えば、タンパク質標的)の場合、目的の部位は、広範に、標的の、インビボもしくはインビトロで天然の複合体を形成する分子に対する結合に関与するアミノ酸残基を含む。
【0029】
「低分子」は、通常は10kDa未満の分子量であり、合成の有機化合物もしくは合成の無機化合物、ペプチド、(ポリ)ヌクレオチド、(オリゴ)糖などが挙げられるが、これらに限定されない。低分子としては、具体的には、低分子の非ポリマー性(例えば、非ペプチドもしくは非ポリペプチド)有機分子または無機分子が挙げられる。多くの製薬会社は、このような分子の広範なライブラリーを有し、このライブラリーは、本発明の拡大結合アプローチを用いることにより簡便にスクリーニングされ得る。好ましい低分子としては、約300Da未満の分子量を有し、より好ましくは、約650Da未満の分子量を有する。
【0030】
本明細書中で用いられる場合、用語「テザー(tether)」は、目的の部位の近辺において標的(本明細書中上記で規定される標的生物学的分子を含む)と可逆性または不可逆性の共有結合し得る部分を含む構造をいう。
【0031】
本明細書中で用いられる場合、句「低分子エキステンダー(Small Molecule Extender)(SME)」とは、約75ダルトンから約1,500ダルトンの分子量を有し、かつTM上の求核基または求電子基と反応性の第1の官能基、およびリガンド候補物またはリガンド候補物のライブラリーのメンバーと反応性の第2の官能基を有する有機低分子をいう。好ましくは、第1の官能基は、TBM上の求核基と反応性であり(このような求核基と不可逆性もしくは可逆性の共有結合を形成し得る)、SMEの他の末端における反応基は、遊離チオール基もしくは保護されたチオール基であるか、または遊離チオール基もしくは保護されたチオールの基の前駆体の基である。1つの実施形態において、低分子エキステンダーの少なくとも一部分は、TBM上の目的の第1の部位と非共有結合を形成し得る(すなわち、このような目的の第1の部位に対して固有の親和性を有する)。この定義内には、Cd、Hg、およびAsのような、求核基(例えば、TBMのSH)と結合を形成し得る金属を含む有機低分子(非ポリマー性分子を含む)が含まれる。
【0032】
本明細書中で用いられる場合、句「可逆性共有結合」とは、好ましくは、標的を変性させない条件下で切断され得る共有結合をいう。例としては、ジスルフィド、シッフ塩基、チオエステルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
リガンドを参照する場合の用語「反応基」は、リガンド候補物(例えば、ライブラリーのメンバーまたは有機低分子化合物)との共有結合が形成され得る部位を提供する化学基または部分を記載するために用いられる。従って、反応基は、ライブラリーのメンバーと共有結合を形成して、これに対してスクリーニングされるように選択される。
【0034】
用語「アンタゴニスト」は、最も広範な意味で用いられ、TBMのような標的により示される生物学的活性を部分的にまたは完全にブロックするか、阻害するか、または中和する任意のリガンドを含む。類似の様式で、用語「アゴニスト」は、最も広い意味で用いられ、TBMのような標的により示される生物学的活性を(例えば、このようなTBMの機能もしくは発現、またはこのようなTBMを介するシグナル伝達の効率を特異的に変化させ、それにより、既に存在する生物学的活性を改変する(増加または阻害する)か、または新たな生物学的活性を誘発することにより)模倣する任意のリガンドを含む。
【0035】
句「含むように改変される」または「有するように改変される」は、交換可能に用いられ、標的の変異体、改変体もしくは誘導体、または反応性求核基もしくは反応性求電子基を作製することをいい、化学的改変が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、タンパク質において、当業者は、野生型残基の代わりに、求核基もしくは求電子基を含む側鎖を有するアミノ酸残基を用いて置換し得る。別の例は、システイン残基のチオール基をアミノ基に変換することである。
【0036】
本明細書中で用いられる場合、用語「反応性求核基」とは、標的(例えば、TBM)を変性または損傷させない条件下で別の分子上の適合性官能基と共有結合を形成し得る求核基をいう。最も関連する求核基は、チオール、アルコール、活性化カルボニル、エポキシド、アジリジン、芳香族スルホネート、ヘミアセタール、およびアミンである。同様に、本明細書中で用いられる場合、用語「反応性求電子基」とは、好ましくは、標的(例えば、TBM)を変性させない、そうでなければ損傷させない条件下で、別の分子上の適合性官能基と共有結合を形成し得る求電子基をいう。最も関連する求電子基は、イミン、カルボニル、エポキシド、アジリジン、スルホネート、およびヘミアセタールである。
【0037】
標的(例えば、TBM)上の「目的の第1の部位」とは、SMEの少なくとも一部分が反応性求核基もしくは反応性求電子基に共有結合した場合、SMEの少なくとも一部分により接触され得る部位をいう。目的の第1の部位は、SMEと非共有結合を形成する能力を有してもよいし、このような能力を有さなくてもよい。
【0038】
本明細書中で用いられる場合、句「求核基と反応性の基」、「求核反応基」、「求電子基と反応性の基」、および「求電子反応基」とは、TM(例えば、TBM)上の求核基/求電子基と、TM(例えば、TBM)を変性させないか、そうでなければ損傷させない条件下で共有結合を形成し得るSME上の官能基をいう。
【0039】
本明細書中で用いられる場合、用語「保護されたチオール」とは、共有結合を形成する基もしくは分子と既に反応しているチオールをいい、この共有結合により、チオール基が反応性でなくなり、保護されたチオールを脱保護して、遊離のチオールを再生し得る。
【0040】
本明細書中で用いられる場合、句「条件を調節する」とは、標的(例えば、TBM)を、リガンドと標的との間で共有結合を形成させるために必要な、任意の個々の反応条件、一連の反応条件の組み合わせ、または試薬(例えば、求核基およびSME上の求核基と反応性の基)、あるいは既に形成された共有結合を切断させるために必要な、任意の個々の反応条件、一連の反応条件の組み合わせ、または試薬に供することをいう。
【0041】
本明細書中で用いられる場合、用語「共有結合複合体」とは、SMEとTM(例えば、TBM)の結合をいい、この結合は、TM(例えば、TBM)上の求核基/求電子基を介してSME上の求核基/求電子基と反応性の基と共有結合されている複合体、および低分子エキステンダーの一部分とTM(例えば、TBM)上の目的の第1の部位を介して非共有結合されている複合体の両方である結合をいう。
【0042】
本明細書中で用いられる場合、句「交換可能なジスルフィド連結基」とは、チオール含有低分子エキステンダーを提示する共有結合複合体を用いてスクリーニングされる分子のライブラリーをいう。ここで、このライブラリーの各メンバーは、反応条件がこのようなチオール交換に好ましいように調節されている場合、共有結合複合体上に提示されたチオール基または保護されたチオール基と反応して、新たなジスルフィド結合を形成し得るジスルフィド基を含む。
【0043】
本明細書中で用いられる場合、句「目的の第2の部位に対する最高の親和性」とは、TM(例えば、TBM)上の目的の第2の部位に対してより高いの熱力学的安定性を有する分子をいう。この分子は、ジスルフィド含有ライブラリーメンバーのライブラリーから優先的に選択される。
【0044】
本明細書中の分子の「機能的改変体」は、参照分子と共通した活性を有する改変体である。
【0045】
「活性な」または「活性」は、定量的な生物学的特性および/または免疫学的特性を意味する。
【0046】
(2.標的)
本発明における使用が見出される標的(例えば、標的生物学的分子(TBM))としては、リガンド候補が結合し得る、分子、分子の一部、および分子の凝集体、例えば、ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、酵素、レセプター、転写因子、レセプターに対するリガンド、増殖因子、免疫グロブリン、核タンパク質、シグナル伝達成分、アロステリック酵素調節因子など)、ポリヌクレオチド、ペプチド、炭水化物、糖タンパク質、糖脂質、および他の高分子(例えば、核酸−タンパク質複合体、クロマチン、またはリボソーム)、脂質二重層を含む構造(例えば、膜)、または膜に由来する構造(例えば、小胞)が挙げられるが、これらに限定されない。この標的は、種々の様式で入手され得、この様式としては、天然供給源からの単離および精製、化学合成、組換え生成、ならびにこれらの方法および類似する方法の任意の組み合わせが挙げられる。
【0047】
好ましい酵素標的ファミリーは、システインプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼおよびインテグラーゼである。好ましいタンパク質:タンパク質標的は、4−ヘリカルサイトカイン、三量体サイトカイン、シグナル伝達分子、転写因子、およびケモカインである。
【0048】
特に好ましい実施形態において、その標的は、TBMであり、なおより好ましいのは、ポリペプチド(特に、タンパク質)である。リガンド(好ましくは、低分子有機リガンド)に結合するための標的として本明細書中で用途を見出されるポリペプチド(タンパク質を含む)としては、目的の2つ以上の結合部位を含み、かつ有機低分子または他のリガンド(例えば、ペプチド)に結合するための反応基を保有するかまたは保有するように改変され得る、事実上すべてのポリペプチド(ペプチドとも呼ばれる短いポリペプチドを含む)またはタンパク質が、挙げられる。目的のポリペプチドは、商業的にか、組換えによってか、化学合成によってか、天然供給源からの精製によってか、または他の方法によって、入手され得、そして大部分は、タンパク質(特に、特定のヒト疾患またはヒトの状態に関係するタンパク質(例えば、細胞表面可溶性レセプタータンパク質(例えば、リンパ球細胞表面レセプター)、酵素(例えば、プロテアーゼ(例えば、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、およびアスパラチルプロテアーゼ)およびチミジレートシンテターゼ)、ステロイドレセプター、核タンパク質、アロステリック酵素、凝固因子、キナーゼ(セリンキナーゼおよびスレオニンキナーゼの両方)、およびデホスホリラーゼ(またはホスファターゼ(セリン/スレオニンホスファターゼまたはタンパク質チロシンホスファターゼ(例えば、PTP、特にPTP1B)のいずれか)、細菌酵素、真菌酵素、およびウイルス酵素(特に、HIVに関係する酵素、インフルエンザに関係する酵素、ライノウイルスに関係する酵素、およびRSVに関係する酵素)、シグナル伝達分子、転写因子、DNAおよび/もしくはRNAの合成または分解に関係するタンパク質、DNAおよび/もしくはRNAの合成または分解に関係する酵素、免疫グロブリン、ホルモン、種々のサイトカイン(例えば、エリスロポエチン(EPO))のレセプター、顆粒球コロニー刺激(G−CSF)レセプター、顆粒球マクロファージコロニー刺激(GM−CSF)レセプター、トロンボポエチン(TPO)、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−10、IL−11、IL−12を含む)、成長ホルモン、プロラクチン、ヒト胎盤ラクトゲン(LPL)、CNTF,オンコスタチン、種々のケモカインおよびそのレセプター(例えば、RNATES、MIPβ、IL−8)、チロシンキナーゼの種々のリガンドおよびレセプター(例えば、インスリン、インスリン様増殖因子1(IGF−1)、上皮増殖因子(EGF)、ヘレグリン−αおよびヘレグリン−β、血管内皮増殖因子(VEGF)、胎盤成長因子(PLGF)、組織成長因子(TGF−αおよびTGF−β)、神経成長因子(NGF))、種々のニューロトロフィンおよびそのリガンド、他のホルモンおよびレセプター(例えば、骨形成因子、卵胞刺激ホルモン(FSH)、および黄体形成ホルモン(LH))、三量体ホルモン(組織壊死因子(TNF)を含む)、およびCD40リガンド、アポトーシス因子−1(AP−1)およびアポトーシス因子−2(AP−2)、p53、bax/bcl2、mdm2、カスパーゼ、ならびにこれらと20%以上の配列同一性を共有するタンパク質およびレセプターである。
【0049】
ヒトの炎症標的および免疫標的の重要な群としては、IgE/IgER、ZAP−70、lck、syk、ITK/BTK、TACE、カテプシンSおよびカテプシンF、CD11a、LFA/ICAM、VLA−4、CD28/B7、CTLA4、TNFαおよびTNFβ、(ならびにp55 TNFレセプターおよびp75 TNFレセプター)、CD40L、p38 mapキナーゼ、IL−2、IL−4、IL−13、IL−15、Rac 2、PKCθ、IL−8、TAK−1、jnk、IKK2およびIL−18が、挙げられる。
【0050】
なお他の重要な特定の標的としては、カスパーゼ1、カスパーゼ3、カスパーゼ8およびカスパーゼ9、IL−1/IL−1レセプター、BACE、HIVインテグラーゼ、PDE IV、C型肝炎ヘリカーゼ、C型肝炎プロテアーゼ、ライノウイルスプロテアーゼ、トリプターゼ、cPLA(細胞質ゾルホルホリパーゼA2)、CDK4、c−junキナーゼ、アダプター(例えば、Grb2)、GSK−3、AKT、MEKK−1、PAK−1、raf、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、Tie2、ErbB 1およびErbB 2、FGF、PDGF、PARP、CD2、C5aレセプター、CD4、CD26、CD3、TGF−α、NF−κB、IKKβ、STAT 6、ニューロキニン−1、PTP−1B、CD45、Cdc25A、SHIP−2、TC−PTP、PTP−α、LARおよびヒトp53、bax/bcl2およびmdm2が、挙げられる。
【0051】
目的の標的(例えば、TBM)は、その標的上の目的の部位に対する固有の親和性を有するリガンドと可逆的または不可逆的な共有結合を形成することができる反応性基をその標的が保有するかまたは保有するように改変されるように、選択される。例えば、多くの標的が、リガンド(例えば、有機低分子ライブラリーのメンバー)が共有結合され得る反応性基(例えば、アミン基、チオール基、アルデヒド基、ケトン基、ヒドロキシル基など)を天然に保有する。例えば、ポリペプチドは、しばしば、化学的反応性側鎖を有するアミノ酸(例えば、システイン、リジン、アルギニンなど)を有する。さらに、合成技術により、現在では、例えば、自動ペプチド合成機または自動核酸合成機を使用して、目的の所定部位に化学的反応性基を保有する生物学的標的分子を合成することが、可能である。このように、化学的反応基が、自動合成の間に、標的(例えば、TBM)中に合成により導入され得る。
【0052】
1つの特定の実施形態において、その標的は、少なくとも1つの第1反応性基を含み、この第1反応性基は、その標的がポリペプチドである場合は、そのポリペプチドのシステイン残基と結合されても結合されなくてもよく、そして好ましくは、選択されるテザー(tether)が遊離チオール基または保護されたチオール基(下記を参照のこと)である場合に、そのポリペプチドのシステイン残基と結合される。その標的は、好ましくは、限定数のみの遊離チオール基または保護されたチオール基(好ましくは、約5個以下のチオール基、より好ましくは、約2個以下のチオール基、より好ましくは、1個以下のチオール基)を含むかまたは含むように改変されるが、より多くの遊離チオール基を有するポリペプチドもまた、用途を見出される。目的の標的(例えば、TBM)はまず、所望の数のチオール基をその標的がすでに保有しているかまたは保有するように改変され得るように、入手または選択され得る。
【0053】
その標的がポリヌクレオチドである場合、テザーは、例えば、そのポリヌクレオチドに、任意の環外アミンまたは任意のビニル炭素の塩基(例えば、ピリミジンの5位または6位、プリンの8位または2位)、5’炭素または3’炭素、糖リン酸骨格、またはヌクレオチド間リン原子にて、結合され得る。しかし、テザーはまた、他の位置(例えば、チミジンまたはウラシルの5位)にも導入され得る。二本鎖DNAの場合、例えば、テザーは、目的部位の近くではあるが立体障害を生じるほどには近くなく、主溝または副溝に位置され得る。上記立体障害は、目的部位での標的へのリガンドの結合を妨げ得る。
【0054】
当業者は、標的(例えば、目的のポリペプチド)を改変して、遊離チオール基を含むリガンド酵素への共有結合に利用可能な所望の数の遊離チオール基をその標的が保有するようにするために慣用的に使用され得る、種々の組換え技術、化学技術、合成技術、および/または他の技術に十分に気付く。そのような技術としては、例えば、標的ポリペプチドをコードする核酸配列を部位特異的変異誘発して、その核酸配列が異なる数のシステイン残基を含むポリペプチドをコードするようにすることが、挙げられる。特に好ましいのは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を使用する部位特異的変異誘発である(例えば、1987年7月28日発行の米国特許第4,683,195号;およびCurrent Protocols In Molecular Biology、第15章(Ausubelら編、1991)を参照のこと)。他の部位特異的変異誘発技術もまた、当該分野で周知であり、そして例えば、以下の刊行物中に記載される:Ausubelら(前出)第8章;Molecular Cloning:A Laboratory Manual.,第2版(Sambrookら,1989);Zollerら,Methods Enzymol.100:468−500(1983);ZollerおよびSmith,DNA 3:479−488(1984);Zollerら,Nucl.Acids Res.,10:6487(1987);Brakeら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:4642−4646(1984);Botsteinら,Science 229:1193(1985);Kunkelら,Methods Enzymol.154:367−82(1987),Adelmanら,DNA 2:183(1983);ならびにCarterら,Nucl.Acids Res., 13:4331(1986)。カセット変異誘発(Wellsら、Gene 34:315[1985])および制限選択変異誘発(Wellsら、Philos.Trans.R.Soc.London SerA 317:415[1986])もまた、使用され得る。
【0055】
1つより多くのアミノ酸置換を含むアミノ酸配列改変体が、1つの様式またはいくつかの様式で生成され得る。それらのアミノ酸がそのポリペプチド鎖中でともに近くに位置する場合、それらのアミノ酸は、所望のアミノ酸置換すべてをコードする1つのオリゴヌクレオチドを使用して、同時に変異され得る。しかし、それらのアミノ酸が互いからいくらかの距離に位置する(例えば、10アミノ酸より大きく隔てられている)場合、所望の変化すべてをコードする単一オリゴヌクレオチドを生成することが、より困難である。代わりに、2つの代替法のうちの1つが、使用され得る。第1の方法において、置換されるべきアミノ酸各々について、別個のオリゴヌクレオチドが生成される。その後、それらのオリゴヌクレオチドが、一本鎖テンプレートDNAに同時にアニールされ、そのテンプレートから合成される第2鎖DNAが、所望のアミノ酸置換すべてをコードする。別の方法は、所望の変異体を生成するために2回以上の突然変異を包含する。
【0056】
新しい反応性基の供給源(例えば、システイン)が、その標的内のいずれの場所にも配置され得る。例えば、タンパク質−タンパク質相互作用に重要であることが公知である領域中のタンパク質の表面上にシステインが導入される場合、この表面に結合してその表面をブロックする、低分子が選択され得る。
【0057】
以下の表は、本発明に従って使用され得る、標的生物学的分子(TBM)を例証する。
【0058】
【表1】
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【0059】
【表2】
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(3.目的の部位)
広く、特定の標的(例えば、標的生物学的分子(TBM))上の「目的の部位」は、インビボまたはインビトロでその標的が自然な複合体を形成する分子にその標的が結合することに関与する残基によって、規定される。その標的が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である場合、目的の部位は、その標的のリガンドへの結合(通常は、非共有結合による結合)に関与するアミノ酸残基によって、規定される。
【0060】
例えば、その標的生物学的分子が、別のタンパク質(例えば、ホルモン、サイトカイン、またはシグナル伝達に関与する他のタンパク質)への結合を介してその生物学的効果を発揮するタンパク質である場合、その標的分子は、1つ以上の他のタンパク質と、インビボで自然な複合体を形成し得る。この場合、目的の部位は、特定のタンパク質:タンパク質結合境界面に関係する重大な接触残基として規定される。重大な接触残基は、タンパク質B上のアミノ酸と直接接触するタンパク質A上のアミノ酸として規定され、かつ、アラニンに変異された場合には、直接結合アッセイまたは競合アッセイ(例えば、ELISAまたはRIA)を用いて測定すると、結合親和性が少なくとも10分の1、好ましくは少なくとも20分の1に減少する、アミノ酸として規定される。ClackstonおよびWells、Science 267:383−386(1995)による、A Hot Spot of Binding Energy in a Hormone−Receptor InterfaceならびにCunninghamおよびWells,J.Mol.Biol.234:554−563(1993)を参照のこと。タンパク質A中にて同定された重大な接触残基の約4Å内にあるタンパク質Bのアミノ酸残基もまた、目的の部位の定義に含まれる。
【0061】
スキャニングアミノ酸分析が、連続する配列に沿って1つ以上のアミノ酸を同定するために使用され得る。好ましいスキャニングアミノ酸に含まれるのは、比較的小さい中性アミノ酸である。このようなアミノ酸としては、アラニン、グリシン、セリン、およびシステインが挙げられる。アラニンは、代表的には、この群に含まれる好ましいスキャニングアミノ酸である。なぜなら、アラニンは、β炭素を越える側鎖を排除し、そして改変体の主鎖立体構造を変化する可能性が小さいからである(CunninghamおよびWells、Scinece 244:1081−1085(1989))。アラニンはまた、代表的に好ましい。なぜなら、アラニンは、最も一般的なアミノ酸であるからである。さらに、アラニンは、埋もれた位置および露出した位置の両方において頻繁に見出される(Creighton、The Proteins(W.H.Freeman & Co.,N.Y.);Chothia,J.Mol.Biol.150:1(1976))。アラニン置換が十分な量の改変体を生じない場合、等比体積(isteric)アミノ酸が、使用され得る。
【0062】
その標的生物学的分子が酵素である場合、目的の部位としては、その酵素の結合した基質、インヒビター、アクチベーター、補因子、またはアロステリックモジュレーターと接触するかまたはこれらの約4Å内に存在する、アミノ酸が挙げられ得る。例として、その酵素がプロテアーゼである場合、目的の部位としては、P4からP4’までの基質結合チャネル、触媒機能に関与する残基(例えば、触媒性3つ組(triad)および任意の補因子(例えば、Zn)結合部位が、挙げられる。プロテインキナーゼについて、目的の部位としては、そのATP結合部位に加えて、(上記のような)基質結合チャネルが、挙げられる。デヒドロゲナーゼについて、目的の部位としては、その基質結合領域、ならびにNAD/NADHにより占められる部位が、挙げられる。ヒドロラーゼ(例えば、PDE4)においては、目的の部位としては、そのcAMP基質と接触するすべての残基、ならびにその触媒性二価カチオンとの結合に関与する残基が、挙げられる(Xu,R.X.ら、Science 288:1822−1825(2000))。
【0063】
アロステリック調節される酵素(例えば、グリコーゲンホスホリラーゼB)について、目的の部位としては、その基質結合領域中のすべての残基、天然のアロステリックインヒビターであるグルコース−6−リン酸と接触する残基、ならびに新規なアロステリック部位中の残基(例えば、他のインヒビター(例えば、CP320626)との結合の際に同定される残基)が挙げられる(Oikonomakos NGら、Structure Fold Des 8:575−584(2000))。
【0064】
このTBMは、目的の部位にかまたはその付近に、反応性残基を含むかまたは含むように改変されるかの、いずれかである。好ましくは、このTBMは、目的の部位にかまたはその付近に、チオール含有アミノ酸残基を含むかまたは含むように改変される。この場合、TBMが選択された後、目的の部位が算出される。一旦目的の部位が既知になると、目的の部位内またはその付近にあるどのアミノ酸残基を改変するかを決定するプロセスが、行われる。例えば、1つの好ましい改変は、目的の部位付近に位置する別のアミノ酸残基をシステイン残基に代える置換を生じる。
【0065】
目的の部位内またはその付近にあるどの残基を改変するかの選択は、以下の選択基準に基づいて決定される。まず、そのTBMの3次元の説明が、周知のいくつかの供給源のうちの1つから得られる。例えば、多くのTBMの3次構造が、X線結晶学実験を介して決定されている。これらのX線構造は、広範な供給源(例えば、http://www.rcsb.orgにてインターネット上で見出され得る、Protein Databank(PDB))から入手可能である。3次構造はまた、http://www.psc.comでPittsburg Supercomputer Centerに位置する、Protein Structure Database(PSdb)にて見出され得る。
【0066】
さらに、多くのタンパク質およびタンパク質複合体の3次構造が、コンピューターベースのモデリングアプローチを介して決定されている。従って、タンパク質3次元立体構造のモデルが、現在、広範に入手可能である。
【0067】
一旦そのTBMの3次元構造が既知になると、野生型または改変形態のその標的生物学的分子の構造モデルに基づく測定が、目的の部位内のアミノ酸の任意の原子からそのタンパク質表面に全体にわたり距離約10Åについてなされる。所望の反応性基(例えば、チオール基またはチオール含有残基)を含むように改変された改変体は、目的の部位から半径約10Å内にある、その標的生物学的分子の表面上の1つ以上の野生型アミノ酸の同定に基づく。この測定のために、目的の部位内にあるアミノ酸の任意の原子から半径約10Å内にある少なくとも1つの原子を有する任意のアミノ酸は、チオール含有残基へと改変されることが可能な残基である。
【0068】
改変に好ましい残基は、溶媒接近可能な残基である。溶媒接近性は、標準的数値法(Lee,B.およびRichards,F.M. J.Mol.Biol 55:379−400(1971);Shrake,A.およびRupley,J.A. J.Mol.Biol.79:351−371(1973))または標準的分析法(Connolly,M.L. Science 221:709−713(1983);Richmond,T.J. J.Mol.Biol.178:63−89(1984))を使用する構造モデルより算出され得る。例えば、潜在的システイン改変体は、LeeおよびRichardsの方法(Lee,B.およびRichards,F.M. J.Mol.Biol 55:379−400(1971))によって計算される場合に炭素−β(CB)または硫黄−γ(SG)の結合した表面面積が21Åより大きい場合、溶媒接近可能であるとみなされる。この値は、Creamerら(Creamer,T.P.ら、Biochemistry 34:16245−16250(1995))によって記載されるようなシステイン側鎖に接近可能な理論的表面面積の約33%に相当する。
【0069】
システイン、または別のチオール含有アミノ酸残基へと変異されるが骨格原子との水素結合に関係しない残基、あるいは、せいぜい1つの水素結合のみを介して骨格と相互作用する残基もまた、好ましい。その側鎖が、他の側鎖との複数(>1)の水素結合に関係する野生型残基はまた、より好ましくない。標準的回転異性体(−60°、60°または180°のchi1角)の全てが任意の他の残基のN原子、CA原子、C原子、O原子またはCB原子との好ましくない立体的接触を導入し得る改変体もまた、より好ましくない。好ましくない接触は、関係する原子のファンデルワールス半径の合計の80%未満の原子間距離として規定される。
【0070】
タンパク質の高度に可撓性の領域内にある野生型残基もまた、より好ましくない。X線データから得た構造において、高度に可撓性の領域は、骨格原子が弱い電子密度因子または高温因子(この構造についての平均温度因子よりも4より大きい標準偏差)を有するセグメントとして規定され得る。NMRデータから得た構造において、高度に可撓性の領域は、1残基当たり5未満の実験的拘束(距離、二面性結合およびH結合データ由来)を有するセグメントとしてか、またはこの集団におけるモデルの中で高度な可変性(>2.0ARMS偏差)を示す領域として、規定され得る。さらに凹表面に隣接する凸面「ヒンジ」領域上に見出される残基はより好ましいが、凹面領域内の残基は、改変されるべきシステイン残基として好ましくない。凸面および凹面は、表面ベクター(Duncan,B.S.およびOlson,A. J.Biopolymers 33:219−229(1993))に基づいてか、または分子表面に沿って位置する水プローブの接近性(Nicholls,A.ら、Proteins 11:281−296(1991);Brady,G.P.,Jr.およびStouten,P.F. J.Comput.Aided Mol.Des.14:383−401(2000))を測定することによって、計算され得る。L−アミノ酸に対してわずかに妨害される骨格コンフォーメーションを有する残基(Ramachandran,G.N.ら、J.Mol.Biol.7:95−99(1963);Ramachandran,G.N.およびSasisekharahn,V.Adv.Prot.Chem.23:283−437(1968))は、システインに対する改変に好ましい標的ではない。妨害コンフォーメーションは、一般にphi角の陽性値を特色とする。
【0071】
他の好ましい改変体は、システインへと変異されそしてジスルフィド結合を介してアルキルテザーに結合される場合、このテザーの原子を目的の部位に指向させるコンフォーメーションを有する、改変体である。一般的な2つの手順を使用して、これらの好ましい改変体を同定し得る。第1の手順では、検索は、ジスルフィド結合したシステインを位置jに含む構造フラグメントを同定するためのProtein Databank(Berman,H.M.ら、Nucleic Acids Research 28:235−242(2000))中の独特な構造(Hobohm,U.ら、Protein Science 1:409−417(1992))から構成される。ここで、フラグメントの残基j−1、jおよびj+1の骨格原子は、0.75A未満のRMSDを有する標的分子の残基j−1、jおよびj+1の骨格原子上に重ねあわされ得る。残基iのCB原子よりも目的の部位の任意の原子に近接する位置jのシステイン(システインに変異された場合)にジスルフィド結合した残基のCB原子を配置するフラグメントが同定された場合、位置iは、好ましいとみなされる。代替の手順では、位置iの残基は、コンピュータ上でシステインに「変異され」、そしてジスルフィド結合を介してS−メチル基でキャップされる。
【0072】
本発明の標的上の目的の部位を同定するためのさらなる詳細は、同時係属出願番号60/310,725号(2001年8月7日出願)(この開示全体が本明細書中に明示的に参考として援用される)に提供される。
【0073】
(4.低分子エキステンダー(SME))
(A)静的SME
本発明の1つの実施形態において、SMEは、TBM上の求核剤または求電子体(好ましくは、求核剤)を介して「静的」共有結合または不可逆的共有結合を形成し、これにより、不可逆的TBM−SME複合体を形成する。この方法は、図2に例示される。必要に応じて、SMEはまた、TBM上の目的の第1の部位と非共有結合を形成する。さらに、SMEは、有機低分子のライブラリーのライブラリーメンバーと可逆的結合を形成し得る第2の官能基を含み、このライブラリーの各分子は、SMEの第2の官能基と可逆的結合を形成し得る官能基を有する。TBM−SME複合体およびライブラリーは、TBM上の目的の第2の部位に対して親和性(好ましくは、最高の親和性)を有するライブラリーメンバーが、TBM−SME複合体と可逆的結合を形成する条件に供される。
【0074】
好ましいTBMは、タンパク質であり、そして不可逆的TBM−SME複合体を形成するに適切なTBM上の好ましい求核剤としては、−SH、−OH、−NHおよび−COOH(それぞれcys、serもしくはthr、lysおよびaspもしくはgluの側鎖から通常生じる)が挙げられる。TBMは、これらの求核剤を含むように改変され得る(例えば、変異体または誘導体)か、または天然にこれらを含み得る。例えば、システインプロテアーゼ(例えば、カスパーゼ(特に、カスパーゼ1、3、8および9);カテプシン(特に、SカテプシンおよびKカテプシン)など)およびホスファターゼ(例えば、PTP PTP1B、LAR、SHP1、SHP2 PTPおよびCD45)は、天然に存在するシステインチオール求核剤を含む適切なタンパク質の例示である。静的TBM−SME複合体を生成するようにこのようなTBMをSMEにより誘導体化することおよびライブラリーメンバーとのその反応を、以下に例示する。
【0075】
【化1】
Figure 0003836791
ここで、TBM上の求核剤は、チオール(通常は、システイン)の硫黄であり、これは、(標的を変性しない条件下で)不可逆的共有結合置換基を形成し得るG、および遊離チオール、保護チオールまたは誘導体化チオールSR’を含む、SMEである2と反応させられる。好ましいGは、チオールによるSN2様アタックを受けるかまたはチオールを有するMichael型付加物を形成して、新たな共有結合−SG’−を有するこのアタックの不可逆的反応生成物3を生成させ得る基である。以下は、SN2様付加またはMichael型付加を受け得るG基の代表的な例である。
【0076】
1)−ハロ酸:SMEの一部である酸COOH、POまたはP(OR)OHに置換されたF、ClおよびBrは、TBMのチオールとチオエーテルを形成し得る。このようなG−SME−SR’の単純な例は;
【0077】
【化2】
Figure 0003836791
であり、ここで、Xは、ハロゲンであり、そしてR’は、H、SCH、S(CHAであり、ここで、Aは、OH、COOH、SOH、CONHまたはNHであり、そしてnは、2または3である。
【0078】
2)フルオロホスフェート(フルオロホスホネート):これらは、SH求核剤およびOH求核剤の両方と容易に反応するSarin様化合物であり得る。例えば、PTP1Bのcys215は、以下:
【0079】
【化3】
Figure 0003836791
によって示される単純なG−SME−SR’と反応させられ得、ここで、フェニル環は、単純化したSMEを示し、Rは、置換または非置換の低級アルキルであり、そしてR’は、上記で規定されるようなものである。これらの化合物は、チオール求核剤を有するチオホスフェート(チオホスホネート)SMEを形成する。これらの化合物はまた、セリンもしくはトレオニンのホスファターゼまたはセリンもしくはトレオニンのラクタマーゼ由来の天然に存在する−OHと静的TBM−SMEを形成し得る。
【0080】
3)エポキシド、アジリジンおよびチイラン(thiirane):これらの反応性官能基を含有するSMEは、求核剤−SH、−OHおよび−COOHとのSN2環開裂反応を受け得る。後者の好ましい例は、アスパルチルプロテアーゼ様 −セクレターゼ(BASE)である。エポキシド、アジリジンおよびチイランの好ましい一般例を、以下に示す:
【0081】
【化4】
Figure 0003836791
ここで、R’は、上記に規定されるものであり、Rは、通常Hまたは低級アルキルであり、そしてR’’は、低級アルキル、低級アルコキシ、OH、NHまたはSR’である。チイランの場合、基SR’は、必要に応じて存在する。なぜなら、求核剤アタックおよび環開裂に際して、後の拡張されたテザリング反応において使用され得る遊離チオールが、生成されるからである。
【0082】
4)ハロ−メチルケトン/アミド:これらの化合物は、−(C=O)−CH−Xを有する。ここで、Xは、形態のハロゲン、N、O−R(ここで、Rは、置換または非置換のヘテロアリール、アリール、アルキル、−(P=O)Ar、−N=O−(C=O)アリール/アルキル、−(C=O)アリール/アルキル/アルキルアリールなどである)、S−アリール、S−ヘテロアリールおよびビニルスルホンのような、多くの良好な脱離基であり得る。
【0083】
【化5】
Figure 0003836791
フルオロメチルケトンは、チオール含有タンパク質と反応した場合にチオエーテルの形成を生じる、このクラスの活性化ケトンの単純な例である。他の周知の例としては、ベンゾイルオキシメチルケトンのようなアシルオキシメチルケトン、フェニルメチルアミノメチルケトンおよびスルホニルアミノメチルケトンのようなアミノメチルケトンが挙げられる。これらおよび他の型の適切な化合物は、J.Med.Chem.43(18)p3351−71(2000年9月7日)に総説される。
【0084】
5)求電子体芳香族系:これらの例としては、7−ハロ−2,1,3−ベンズオキサジアゾルおよびオルソ/パラニトロ置換ハロベンゼンが挙げられる。
【0085】
【化6】
Figure 0003836791
この型の化合物は、チオール含有TBMを有するアリールアルキルチオエーテルを形成する。
【0086】
6)TBM求核剤との静的共有結合の形成に適切な、他の適切なSN2様反応は、アルデヒドと、DNA修復タンパク質様の酵素のリジンのアミン基との間のSchiff塩基の形成、その後の例えば、NaCNBHとの還元を含む。
【0087】
【化7】
Figure 0003836791
7)Michael型付加:形態−RC=CR−Qまたは−C≡C−Qの化合物(ここで、Qは、C(=O)H、C(=O)R(キニンを含む)、COOR、C(=O)NH、C(=O)NHR、CN,NO、SOR、SOR(ここで、各Rは独立して、置換または非置換の、アルキル、アリール、水素、ハロゲンである)であるか、あるいは別のQは、TBM上のSR(ここで、RはH、グルタチオンまたはNHまたはOHで置換されたS−低級アルキルである)、OHおよびNHとMichael付加物を形成し得る。
【0088】
8)ボロン酸(boronic acid):これらの化合物を使用して、serまたはthrのヒドロキシルを標識して、以下:
【0089】
【化8】
Figure 0003836791
に示される形態のTBM−SME複合体を形成し得、ここで、R’は、上記で規定されるものである。
【0090】
前述の場合の各々において、「静的」または不可逆的な共有結合は、TBM上の求核剤を介して形成され。チオールまたは保護チオールを含有する不可逆的TBM−SME複合体を生成する。次いで、これらの複合体は、TBM上の第2の結合部位を結合し得る低分子リガンドの選択のための還元剤(例えば、メルカプトエタノール)の存在下で、チオールまたはジスルフィドを含有する有機化合物のライブラリーに曝露される。
【0091】
上記したように、この静的アプローチにおいて、SMEは、TBM上の第1の部位に対する結合親和性を有する(すなわち、結合し得る)部分を含み得るが、含む必要はない。SMEがこのような部分を含まない場合でさえ、リガンド候補は標的の目的の第2の部位に対する自由接近を有することを保障するために、適切な長さおよび可撓性であらねばならない。
【0092】
(B)動的SME
本発明の別の実施形態において、SMEは、二重の可逆的共有結合SME(「二重ジスルフィド」エキステンダー)であり、すなわち、このSMEは、二官能性であり、そして可逆的供給結合を形成し得る2つの官能基(通常は、ジスルフィド)を含む。このSMEは、SME上の第1の官能基を介してTBM上の求核剤と「動的」共有結合または第1の可逆的共有結合を形成する。これにより、可逆的TBM−SME複合体(以下の7)を形成する。必要に応じて、SMEはまた、TBM上の目的の第1の部位と非共有結合を形成する(TBMと非共有結合を形成するSME上の部分は、本明細書中でSMEといわれる)。さらに、SMEは、有機低分子の第2のライブラリーのライブラリーメンバーと第2の可逆的結合を形成し得る第2の官能基を含むか、または含むように改変され、各分子は、SMEの第1の官能基または第2の官能基と可逆的結合を形成し得る官能基を有する。TBM−SME複合体および第2のライブラリーは、TBM上の目的の第2の部位に対して最高の親和性を有するライブラリーメンバーがTBM−SME複合体(以下の8)と可逆的結合を形成する条件に、供される。好ましくは、共有結合は、ジスルフィドであり、これは、還元剤の存在下で可逆的であり得る。
【0093】
【化9】
Figure 0003836791
拡張された動的テザリングプロセスは、図3に例示され、ここで、チオールまたは保護チオールを含むかまたは含むように改変されたTMBは、ある条件下で(例えば、還元剤とともに)、チオールまたは保護チオール(ジスルフィド含有モノフォア)を含む有機低分子の第1のライブラリーとインキュベートされる。この条件において、ライブラリーの少なくとも1つのメンバーは、TBMと選択されたライブラリーメンバーとを連結するジスルフィド結合を形成する。必要に応じて、このプロセスは、チオールまたは保護チオールの位置によって互いに異なるTBMのライブラリー(すなわち、同一のタンパク質の異なるシステイン変異体)を用いて反復される。好ましくは、低分子ライブラリーの各メンバーは、分子量において他のライブラリーメンバーの各々と異なる。好ましくは、低分子ライブラリーは、1〜100メンバーを含み、より好ましくは、5〜15メンバー、そして最も好ましくは、約10メンバーを含む。必要に応じて、選択された低分子ライブラリーメンバー(選択されたモノフォア)はまた、TBM上の目的の第1の部位と非共有結合を形成する。次いで、選択されたモノフォアまたはその誘導体は、第2のチオールまたは保護チオールを含むように改変され、これにより、「二重ジスルフィド」エキステンダーを形成する。次いで、この合成二重ジスルフィドエキステンダーは、ある条件下で(例えば、メルカプトエタノールのような還元剤と)チオールまたは保護チオールを含む有機低分子分子の第2のライブラリー(このライブラリーは、第1のライブラリーと同じであっても異なってもよい)の存在下で、TBMとインキュベートされる。この条件において、この第2のライブラリーの少なくとも1つのメンバーは、上記8に示されるような二重ジスルフィドエキステンダーを介して選択されたライブラリーメンバーをTBMと連結させる、ジスルフィド結合を形成する。必要に応じて、この後、ジアフォア(diaphore)が、この選択された2つのライブラリーメンバー(モノフォア)に基づいて、合成される。
【0094】
2つの基本ストラテジーが、「二重ジスルフィド」エキステンダーを合成するために存在する。第1のストラテジーにおいて、動的エキステンダーの合成が、一般的に行われ、これは、TBMと非共有結合を形成するモノフォアの部分のいかなる改変も伴わない、モノフォアリンカーの改変による。例示の目的で、エキステンダーは、通常、図3に示されるようなジスルフィドモノフォアライブラリーのスクリーニングから生じる。ライブラリーまたはプールから選択される代表的なモノフォアは、そのモノフォアをTBMシステインに連結させるジスルフィドと、TBM上の目的の第1の部位に非共有結合的に結合するそのモノフォアの部分との間に、2個または3個のメチレン単位のリンカーを含む。このモノフォアリンカーを以下に示されるように誘導体化して、二重ジスルフィドエキステンダーを生成し得、ここで、モノフォアの「R」または可変基は、不変であり続け、そしてTBM上の目的の第1の部位と非共有結合的に結合するエキステンダー(SME)の部分になる。
【0095】
【化10】
Figure 0003836791
ここで、モノフォアは、システアミン窒素に最も近接するメチレンで誘導体化されて動的二重ジスルフィドエキステンダー1を生成するか、またはシステアミン窒素自体で誘導体化されて対称的な動的二重ジスルフィドエキステンダー2を生成するかのいずれかである。
【0096】
あるいは、モノフォアが3−メルカプトプロピオン酸誘導体である場合、α炭素が、以下の3に示されるような形態の一般的動的二重ジスルフィドエキステンダーを生成するように誘導体化され得る。
【0097】
【化11】
Figure 0003836791
必要に応じて、アミド窒素は、上記4に示されるような形態のエキステンダーを精製するように、アシルまたはスルフォニルで誘導体化され得る。
【0098】
第二のストラテジーは、TBM上の目的の第一部位に非共有結合的に結合するモノフォア部分を誘導体化することを含む。この誘導体化は好ましくは、以下に例示するように、目的の第一部位へのモノフォアの結合を最小に変更する部位において実施される。
【0099】
【化12】
Figure 0003836791
ここで、動的テザーは、TBM−SME複合体を形成するTBMチオールに結合して示されており、ここで、R’はシステアミン基である。次いで、この複合体をジスルフィドモノフォアまたはジスルフィドモノフォアのライブラリーと接触させて、SMEまたは選択されたモノフォア単独のいずれよりも高いTBM親和性を有する、連結した化合物が入手され得る。
【0100】
TBMに結合するジスルフィドモノフォアを形成するように設計されたSMEの第二の例を以下に示す。この動的SMEを、1以上のジスルフィドモノフォアの存在下でTBMと接触させて、TBM−SME−モノフォアの共有結合複合体を形成し得、ここで、このSMEは、目的の第一部位に対する親和性を有し、そしてこのモノフォアは、TBM上の目的の第二部位に対する親和性を有する。
【0101】
【化13】
Figure 0003836791
TBM−SME−モノフォア複合体の構造の検出および同定は、質量分析法または機能的アッセイ(例えば、ELISA、酵素アッセイなど)における阻害によって実施され得る。
【0102】
SMEはしばしば、特定のTBMまたはTBMのファミリーに応じて作製される。例えば、キナゾリン誘導体は、EGFレセプターまたは「RD」キナーゼと静的エキステンダーまたは動的エキステンダーを形成し得る。EGFレセプターの場合、cys 773は、以下に示すような静的キナゾリンエキステンダーまたは動的キナゾリンエキステンダーのいずれかについての適切な求核剤である;
【0103】
【化14】
Figure 0003836791
ここで、Rは、Michael受容体またはジスルフィドを介してcys 773へと連結され、Rは、
【0104】
【化15】
Figure 0003836791
から選択され;
は、−(CH−SR’および−C(=O)−(CH−SR’であり;
、RおよびRは、−O−(CH−SR’および−(CH−SR’であり;
は、−(CH−SR’であり;ここで、nは、1、2または3であり、そして
R’は、H、ジスルフィドまたはチオール保護基である。
【0105】
ホスホチロシン(P−tyr)、ホスホセリン(P−ser)およびホスホトレオニン(P−thr)の模倣物または代理物は、本発明においてエキステンダーとして用いられて、近傍のサブ部位と相互作用して標的ホスファターゼ(phosphotase)に対する特異性または親和性を改善するフラグメントが同定され得る。従って、エキステンダーを用いた標準的共有結合テザリングによって近傍のフラグメントを見出すための、既知の基材またはインヒビターを「アンカー」として用いる、拡張されたテザリングは、本発明の1つの好ましい実施形態である。
【0106】
ホスホチロシン(P−tyr)模倣物は、PTP−1B、LARなどのようなホスファターゼに応じて作製され得るSMEの例である。以下に示す、メルカプト−プロパン酸および/もしくはシステアミン(cystaeamine)またはそれらの保護形態を用いて誘導体化された既知のPTP−1B P−tyr模倣物は、PTP−1B cys変異体の活性部位に結合する。
【0107】
【化16】
Figure 0003836791
このような化合物を動的エキステンダーとして用いて、上記のような共有結合テザリングによって第二フラグメントを選択し得る。上記の化合物は、標的に結合し、そして−メルカプトエタノールに対してテザーされた場合()、約2.5mMのBME50(平衡時の、50%の結合化合物を標的から交換し得る −メルカプトエタノールの濃度)を示す。動的エキステンダーを用いる場合、動的エキステンダーについてのBME50を測定し、そして動的エキステンダーのBME50以下の総チオール濃度(BME+ライブラリーチオール)で、共有結合テザリングによって第二フラグメントについてスクリーニングすることが好ましい。例えば、2.5mMのBME50を有する上記の動的エキステンダーに関して、第二フラグメントスクリーニング工程における総チオール濃度は、2.5mM以下、そしてより好ましくは約2倍低い(例えば、約1mM以下)であるべきである。あるいは、動的エキステンダーは、静的エキステンダーへと変換され得、これによって、第二フラグメントスクリーニングにおける総チオール濃度の問題が取り除かれる。動的エキステンダーを静的エキステンダーへと変換する場合、標的への静的エキステンダーの非共有結合が破壊されないように、同じ原子数を維持することが重要である。同様の理由から、嵩高い他の原子または基の導入を最小にすることが重要である。これらの要因を心に留めて、上記の動的エキステンダーは、以下に規定される静的エキステンダーへと変換され得る。
【0108】
【化17】
Figure 0003836791
ここで、Rは、
【0109】
【化18】
Figure 0003836791
から選択され、そしてここでRは、
【0110】
【化19】
Figure 0003836791
から選択される。
【0111】
本発明のなお別の実施形態では、エキステンダーは、TBMに可逆的または非可逆的のいずれかで結合したペプチドであり得る。この実施形態では、ペプチドは、約2〜15残基長、好ましくは5〜10残基であり、そして天然および/または人工のαアミノ酸から構成され得る。このようなペプチドエキステンダーの一例は、深い疎水性裂溝中のMDM2のN末端ドメインにnMの親和性で結合し得るαヘリックスp53フラグメントペプチド(またはより小さな既知の非天然ペプチド)である。BCL−2およびBCL−xLもまた、MDM2と類似した深いペプチド結合溝を含むことが公知である。これらの標的に結合するペプチドはまた、本発明に従って有用なペプチドエキステンダーであり得る。例えば、p53のフラグメントペプチドは、TBM上の既存のチオールまたは導入されたチオールと、このペプチド上の既存の(例えば、cys)チオールまたは導入されたチオール(導入されたcys、カルボキシル末端で誘導体化されたシステアミンまたはアミノ末端を通したメルカプト−プロパン酸)を通して、可逆的な(例えば、ジスルフィド)結合を形成し得る。この場合、その後の共有結合テザースクリーニングから、チオールまたはジスルフィドフラグメントを選択するために用いられ得るTBM−ペプチドエキステンダー複合体が形成される。この動的ペプチドエキステンダーは、1つの他の遊離のチオールまたは保護されたチオール(例えば、TBM−ペプチドエキステンダー複合体を形成するために用いられていない、上記のうちの1つ)を有し、これらは、TBMに対する親和性を有するフラグメントとの共有結合ジスルフィド結合を形成するに適切な条件下で、チオールまたは保護されたチオールフラグメントのライブラリーと接触させられる。必要に応じて、ペプチドエキステンダーは、上記のようにTBM上の求核剤または求電子体との不可逆的共有結合が形成される、静的ペプチドエキステンダーであり得る。必要に応じて、この実施形態では、光親和性標識を用いて、ペプチドエキステンダーをTBMへと結合させ得る。上記のように、遊離のチオールまたは保護されたチオール(既存であるかまたは導入された)を用いて、その後のスクリーニングにおいてジスルフィドを形成して、TBMに対する親和性を有する低分子フラグメントを見出す。
【0112】
このようなペプチドエキステンダーはまた、「Z−WQPY」ペプチドのような合成ペプチドであり得、ここで、TBMはIL−1レセプターである。ここで、ペプチドFEWTPGYWQPYALPLまたはそのフラグメント、変異体もしくはアナログは、上記のように静的エキステンダーまたは動的エキステンダーとして用いられて、共有結合テザリングを介してフラグメントが見出され得、ここで、ジスルフィドテザーは、エキステンダーに対してまたはエキステンダーとであり、そして非共有結合は、選択されたフラグメントとTBMとの間に存在する。
【0113】
SME上の反応性基と標的もしくはリガンドとの間でそれぞれ、または2つのリガンドの間で、可逆的または非可逆的な共有結合を形成するために利用可能な他の化学は当該分野で周知であり、そして基本書(例えば、March,Advanced Organic Chemistry,John Wiley & Sons,New York,第4版,1992)に記載されている。アルデヒドとケトンとアミンとの間での還元的アミノ化は、例えば、Marchら,前出,898−900頁に;アミンを調製するための代替方法は1276頁に;ヒドラゾンおよびヒドラゾン誘導体(例えば、セミカルバゾン)を得るためのアルデヒドとケトンとヒドラジド誘導体との間の反応は904−906頁に;アミド結合形成は1275頁に;尿素の形成は1299頁に;チオカルバメートの形成は892頁に;カルバメートの形成は1280頁に;スルホンアミドの形成は1296頁に;チオエーテルの形成は1297頁に;ジスルフィドの形成は1284頁に;エーテルの形成は1285頁に;エステルの形成は1281頁に;エポキシドへの付加は368頁に;アジリジンへの付加は368頁に;アセタールおよびケタールの形成は1269頁に;カルボネートの形成は392頁に;デアミンの形成は1264頁に;アルケンの転移は1146−1148頁に(Grubbsら,Acc,Chem.Res.28:446−453[1995]もまた参照のこと);ハロゲン化アリールおよびアリールスルホネートと、アルカンおよびアセチレンとの遷移金属触媒カップリング(例えば、Heck反応)は717−178頁に;ハロゲン化アリールおよびアリールスルホネートと、有機金属試薬(例えば、有機ホウ素試薬)との反応は662頁に(Miyauraら,Chem.Rev.95:2457[1995]もまた参照のこと);有機錫試薬および有機亜鉛試薬、オキサゾリジンの形成(Edeら,Tetrahedron Letts.28:7119−7122[1997]);チアゾリジンの形成(Patekら,Tetrahedron Letts.36:2227−2230[1995]);イミドエステルを介してアミンをカップリングすることによって、アミジン基を介して連結されたアミン(Daviesら,Canadian J.Biochem.c50:416−422[1972])などに記載されている。特に、ジスルフィド含有低分子ライブラリーは、Parlowら,Mol.Diversity 1:266−269(1995)の方法を適用することによって、市販のカルボン酸および保護されたシステアミン(例えば、mono−BOC−cysteamine)から作製され得、そして反応性システインを含むかまたは含むように改変されている、ポリペプチドへの結合についてスクリーニングされ得る。この節において引用された全ての文献は、本明細書中に明らかに参考として援用される。
【0114】
SMEの結合が標的を変性させないことが通常好ましいが、TBM−SME複合体はまた、変性条件下で形成され得、続いて当該分野で公知の方法によってこの複合体は再折畳みされ得る。さらに、リガンドが標的上の目的の部位を有用な部位特異性で認識して結合するように、SMEおよび共有結合は標的の三次元構造を実質的に変更するべきではない。最終的に、SMEは、反応条件下およびアッセイ条件下で、標的上の他の部位と実質的に非反応性であるべきである。
【0115】
(5.標的に結合したリガンドの検出および同定)
標的に結合したリガンドは、質量分析法(MS)によって容易に検出および同定され得る。MSは、質量対電荷比(m/z)に基づいて分子を検出し、従って、それらのサイズに基づいて分子を分離し得る(Yates,Trends Genet.16:5−8[2000]に概説される)。質量分析計(mass spectrometer)は最初に、分子を気相イオンに変換し、次いで個々のイオンがm/z比に基づいて分離され、そして最終的に検出される。質量分析器(mass analyzer)は、質量分析計の不可欠の部分であり、物理的特性(例えば、電場もしくは磁場、または飛行時間型[TOF])を使用して、特定のm/z値のイオンを分離し、次いでこのイオン検出器に衝突する。質量分析計は、データを迅速に作製し得、従って高処理能力の分析についての大きな可能性を有する。MSは、薬物の発見に用いられ得る、非常に汎用性の高いツールを提供する。質量分析法は、単独で、または標的に結合した有機化合物リガンドの検出もしくは同定のための他の手段との組み合わせのいずれかで用いられ得る。質量分析法を用いる技術は、当該分野で周知であり、そして種々の適用のために用いられている(例えば、FitzgeraldおよびSiuzdak,Chemistry & Biology 3:707−715[1996];Chuら,J.Am.Chem.Soc.118:7827−7835[1996];Siudzak,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11290−11297[1994];Burlingameら,Anal.Chem.68:599R−651R[1996];Wuら,Chemistry & Biology 4:653−657[1997];ならびにLooら,Am.Reports Med.Chem.31:319−325[1996]を参照のこと)。
【0116】
しかし、本発明の範囲は、MSの使用に限定されない。実際、生物学的標的分子とライブラリーメンバーとの間で形成された付加物の検出のための任意の他の適切な技術が用いられ得る。例えば、種々のクロマトグラフィー技術(例えば、液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーなど)を、反応混合物から成分を分離して、共有結合した有機分子を同定する能力を増強するために用い得る。このようなクロマトグラフィー技術は、質量分析法と組み合わせてまたは質量分析法とは別々に用いられ得る。必要に応じて、(蛍光、放射性などで)標識したプローブを遊離の有機化合物にカップリングして、上記の技術のいずれかを用いるその同定を容易にし得る。なお別の実施形態では、新たな結合の形成は、標識したプローブを遊離させ、次いで、このプローブがモニタリングされ得る。簡便な機能的アッセイ(例えば、ELISAまたは酵素アッセイ)をまた用いて、標的へのエキステンダーまたは第二フラグメントの結合が、アッセイによって測定されるに必須の領域(例えば、タンパク質:タンパク質ELISAにおける「ホットスポット」への結合または酵素アッセイについての基質結合ポケットにおける結合)において生じた場合、結合を検出し得る。標的分子に結合した有機化合物を同定するために用途を見出し得る他の技術としては、例えば、核磁気共鳴(NMR)、キャピラリー電気泳動、X線結晶学などが挙げられる。これらの全ては、当業者に周知である。
【0117】
(6.結合体分子(例えば、ダイアフォア(diaphore)の調製)
2以上の有機分子リガンドを連結して結合体分子を生成するための用途が見出されるリンカーエレメントは、少なくとも2つの有機分子を、これらの分子によって保有される反応性官能基を介して一緒に共有結合するように機能し得る、多官能性(好ましくは二官能性)架橋分子である。リンカーエレメントは、少なくとも2つの有機分子を結合するために利用可能である少なくとも2つ(好ましくは2つのみ)の反応性官能基を有し、ここで、これらの官能基は、このリンカー上のどこにでも(好ましくはリンカーの各末端に)出現し得、そしてこれらの官能基は、連結されるべき有機分子が同じ反応性官能基を有するかまたは異なる反応性官能基を有するかに依存して、同じであっても異なっていてもよい。本明細書中で用途が見出されるリンカーエレメントは、直鎖、分岐鎖、芳香族など(好ましくは直鎖)であり得、そして一般に少なくとも約2原子長であり、より一般的には約4原子長よりも長く、そしてしばしば、約12原子長以上もの長さである。リンカーエレメントは一般的に、水素飽和または水素不飽和のいずれかの炭素原子を含み、それゆえアルカン、アルケンもしくはアルキンおよび/または他のヘテロ原子(窒素、硫黄、酸素などを含む)を含み得、これらは(好ましくはアルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシアルキル基またはヒドロキシアルキル基で)置換されていなくても置換されていてもよい。用途が見出されるリンカーエレメントは、種々の長さであり得、それによって、それらから調製される結合体リガンド化合物の結合特性を最適化するための手段を提供する。標的生体分子に共有結合する第一の有機化合物は、それ自体、第二の有機化合物に対する結合部位を提供する化学反応性基を保有し得る。あるいは、第一の有機分子は、(化学的に、それに対する化学的反応基を含む化合物を結合することによって、または他の方法でのいずれかで)改変された後、有機化合物の第二のライブラリーに対してスクリーニングされ得る。
【0118】
(7.本発明の化合物)
本発明の化合物は、少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2つ)のリガンド(このうちの少なくとも1つは、本明細書中に開示される拡張テザリングアプローチによって同定されている)およびこのような化合物のアナログを包含することによって特徴付けられる。従って、本発明の化合物は、有機低分子、ペプチド、(ポリ)ヌクレオチド、(オリゴ)糖などを含むがこれらに限定されない、多数の化学的クラスを包含する。本発明の方法によって同定されるリガンドは代表的に、以下の周知の技術によって設計されるさらなる改変体および誘導体の開発のためのリード化合物として役立つ。特に、同定されるリガンド(モノフォア、ダイアフォア、およびより複雑な構造体を含む)は、医薬品化学および親和性成熟に従い、そして構造補助設計を用いて容易に最適化され得る。本発明の拡張テザリングアプローチは、標的(例えば、TBM)上の異なる部位に結合することがすでに示されたリガンドに焦点を当てたさらなる化学的改変を可能にするという点で、他の公知の技術(コンビナトリアル化学を含む)よりも優れている。
【0119】
(8.同定された化合物の用途)
本発明の方法は、薬物リードを作製するための強力な技術であり、互いに近い部位で標的に弱くまたは中程度の結合性で結合する2以上のフラグメントの同定を可能にし、そしてより高い親和性の化合物を生成する、互いに共有結合的に連結された、同定されたフラグメント(モノフォア)を含むダイアフォアまたはより大きな分子の合成を可能にする。さらなるリガンド化合物を含む、ダイアフォアまたは同様のマルチマー化合物は、合理的薬物設計における貴重なツールであり、これらは、医薬品化学アプローチおよび構造補助設計を用いてさらに改変および最適化され得る。
【0120】
本発明に従って同定されたダイアフォア、ならびにそれらから設計された、改変された薬物リードおよび薬物を用いて、例えば、2つの分子の部位特異的相互作用を必要とするかまたはそれに依存する、種々のインビトロおよびインビボでの生物学的プロセスを調節し得る。ポリヌクレオチドに結合する分子を用いて、例えば、標的遺伝子の活性化に必要な因子の接近をブロックすることによって、遺伝子の活性化を阻害もしくは妨害し得るか、または二重鎖DNAを安定化することもしくは転写機構を妨害することによって転写を抑制し得る。
【0121】
(9.薬学的組成物)
本発明に従って同定されたリガンド、およびこのようなリガンドを含む化合物、ならびにこのような化合物の類似体は、標的の疾患または状態を予防および/または処置するために、薬学的組成物において使用され得る。標的の疾患または状態は、リガンドまたは化合物がそのリガンドの結合に基づいて設計される標的(例えば、TBM)の生物学的/生理学的な機能に依存する。このような疾患および状態の例を、上記のTBMの表において列挙する。
【0122】
薬学的組成物の適切な形態は、一部、その用途または進入経路(例えば、経口、経皮、吸入、または注射による)に依存する。このような形態は、標的細胞が多細胞宿主中に存在しようと培養物中に存在しようと、その薬剤または組成物を標的細胞に到達させるのを可能とすべきである。例えば、血流中に注入される薬理学的薬剤または組成物は、可溶性であるべきである。他の要因は、当該分野で公知であり、そして毒性およびその薬剤または組成物がその効果を発揮するのを妨げる形態のような考慮事項を含む。
【0123】
適切な場合には、活性成分もまた、薬学的に受容可能な塩(例えば、酸付加塩)および/または錯体として処方され得る。薬学的に受容可能な塩は、それらが投与される濃度において非毒性である。薬学的に受容可能な塩としては、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、スルファミン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、およびキナ酸塩を含む塩のような、酸付加塩が挙げられる。
【0124】
薬学的に受容可能な塩は、塩酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、スルファミン酸、酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、マロン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキシルスルホン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、およびキナ酸のような酸から得られ得る。このような塩は、例えば、遊離の酸または塩基の形態の生成物と、適切な塩基または酸の1つ以上の等価物とを、塩が不溶性の溶媒中もしくは媒体中または水のような溶媒中において反応させ、次いで、この溶媒または媒体を、真空中または凍結乾燥によって除去することによってか、あるいは、既存の塩のイオンを、適切なイオン交換樹脂上の別のイオンと交換することによって、調製され得る。
【0125】
キャリアまたは賦形剤もまた、化合物の投与を容易にするために使用され得る。キャリアおよび賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類(例えば、ラクトース、グルコースもしくはスクロース、または様々な種類のデンプン)、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、ポリエチレングリコール、および生理的に適合性の溶媒が挙げられる。組成物または薬学的組成物は、異なる経路によって投与され得る。この経路としては、静脈内、動脈内、腹腔内、心膜内、歯冠内、皮下、筋内、経口、局所、または経粘膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
組成物の所望の等張性は、塩化ナトリウムまたは他の薬学的に受容可能な薬剤(例えば、デキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリオール(例えば、マンニトールおよびソルビトール))、または他の無機溶質もしくは有機溶質を使用して、達成され得る。
【0127】
薬学的処方物を製造するための技術および成分は、一般的に、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA 1990において見出され得る。WangおよびHanson、「Parental Formulations of Proteins and Peptides:Stability and Stabilizers」、Journal of Parental Science and technology、Technical Report、第10号、補遺42−2S(1988)もまた参照のこと。適切な投与形式は、医療従事者によって、各疾患または状態について個々に、そしてまた患者の状態を考慮して、最良に決定され得る。
【0128】
薬学的組成物は、一般的に認められている手順に従って、成分を混合することによって調製される。例えば、選択された成分を、単純にブレンダーまたは他の標準的デバイス中において混合して、濃縮混合物を生成し得、次いで、この濃縮混合物は、水または粘稠化剤、そしておそらくpHを制御するための緩衝剤または張度を制御するためのさらなる溶質の添加によって、最終の濃度および粘度に調整され得る。
【0129】
投与される本発明の組成物において使用するための種々の化合物の量は、標準的な手順によって決定され得る。一般的に、治療的有効量は、患者の年齢およびサイズ、ならびに患者に関連した疾患または障害に依存して、約100mg/kgと10−12mg/kgとの間である。一般的に、治療的有効量は、処置される個体の1kgあたり、約0.05mgと50mgとの間の量である。実際の用量の決定は、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0130】
(10.好ましい実施形態の説明)
好ましい実施形態において、本発明の方法を用いて、第1リガンドとタンパク質との間で形成される中間のジスルフィドのテザー化を介して標的タンパク質上の少なくとも2つの異なる目的の部位に結合する低分子量リガンド、ならびに第1リガンドおよび第2リガンドの各々の反応基を、同定する。
【0131】
本発明の好ましい実施形態においてスクリーニングされる低分子量リガンドは、大部分が、約2000ダルトン未満のサイズ、通常は約1500ダルトン未満のサイズ、より通常は約750ダルトン未満のサイズ、好ましくは約500ダルトン未満のサイズ、しばしば約250ダルトン未満のサイズ、よりしばしば約200ダルトン以下のサイズである、低分子化学分子である。しかし、サイズが2000ダルトンより大きい有機分子もまた本明細書中で用途を見い出す。1つの好ましい実施形態において、このような低分子化学分子は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド以外の、低分子有機分子である。別の好ましい実施形態において、この低分子有機分子は、非重合体である、すなわち、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチドなどではない。
【0132】
有機分子は、市販原料または非市販原料から取得され得る。例えば、莫大な数の低分子有機化合物は、市販業者(例えば、Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,WIおよびSigma Chemical Co.,Sr.Louis,MO)から容易に取得可能であり、または化学合成によって取得され得る。好ましくは本発明の方法を用いて、適切な反応基(好ましくは、チオール基または保護チオール基)を有する低分子有機化合物のライブラリーを、スクリーニングする。
【0133】
近年、典型的に数ダースから数十万のメンバーを有する、コンビナトリアルライブラリーが、リガンドの発見および薬物の開発ための主要な手段となっている。一般に、本明細書中で用途を見い出す有機化合物のライブラリーは、少なくとも2つの有機化合物、しばしば少なくとも約25個の異なる有機化合物、よりしばしば少なくとも約100個の異なる有機化合物、通常少なくとも約300個の異なる有機化合物、好ましくは少なくとも約2500個の異なる有機化合物、および最も好ましくは少なくとも5000個以上の異なる有機化合物を含む。集団が選択または構築され得、その結果、この集団の各々の個別分子が、この集団の他の分子から(例えば、別々のマイクロタイターウェルに)空間的に分離され得るか、または、デコンヴォルーション(deconvolution)のための方法が容易に利用可能である場合、この集団の2つ以上のメンバーが組み合され得る。通常、有機分子ライブラリーの各メンバーは同じ化学クラスである(すなわち、全ライブラリーメンバーがアルデヒドであり、全てのライブラリーメンバーが第1級アミンである、など)、しかし、有機化合物のライブラリーはまた、2つ以上の異なる化学クラス由来の分子を含み得る。
【0134】
好ましい実施形態において、標的生体分子(TBM)は、チオール基、保護チオール基または可逆的ジスルフィド結合を含むか、またはこれらを含むように改変された、ポリペプチドである。次いで、このTBMは低分子エキステンダー(Small Molecule extender)(SME)と反応され、この低分子エキステンダーは、TBM上の第1の目的部位に対して親和性を有する部分、およびTBM上のチオール、保護チオールまたは可逆的ジスルフィド結合と反応する基を含む。上記で議論されるように、TBMとSMEとの間の結合は、TBM−SME複合体を形成するために、不可逆的共有結合(「静的な」拡張テザー化(extended tethering))、または可逆的共有結合(「動的な」拡張テザー化)のいずれかであり得る。静的なアプローチまたは動的なアプローチのどちらが使用されていても、次いで、TBM−SME複合体を用いてジスルフィド含有モノフォア(monophore)のライブラリーをスクリーニングして、標的分子上の第2結合部位(目的の部位)に対して、固有の親和性、最も好ましくは最も高い固有の親和性を有するライブラリーメンバーを同定する。好ましい実施形態において、改変されたTBM上の反応基は、エキステンダーによって提供される遊離チオール基であり、そして、このライブラリーは反応性チオール基を含む低分子量化合物から構成される。最も安定なリガンドを捕捉するためのジスルフィドのテザー化のために、反応は、平衡を可能にするための迅速な交換下になければならない。好ましい実施形態において、この反応は、還元剤(例えば、2−メルカプトエタノール)の触媒作用的な量の存在下において、実施される。還元剤存在下で到達した熱力学的平衡は、改変されたTBM上のエキステンダーのチオール基と、このTBMに対して固有の親和性を有するライブラリーのメンバーのチオール基との間で、ジスルフィド結合の形成を容易にする。従って、同一のTBM上の2つの異なる部位に対して固有の親和性を有する2つの異なるリガンドは、ダイアフォア(diaphore)を形成するために、共有結合的に連結される。このダイアフォアは、いずれの成分のモノフォアユニットよりも、より高い親和性でTBMに結合する。ダイアフォア中のモノフォアユニットは、同一の化学クラスまたは異なる化学クラス由来であり得る。「同一化学クラス」は、各モノフォア成分が同一の化学型(すなわち、両方がアルデヒドまたはアミンなどである)であること意味する。
【0135】
特定の実施形態において、標的は、リガンド候補と接触したチップ上に、存在し得る。この場合、第1リガンドが標的に連結している共有結合はチップと形成され得、このような場合、このチップは「低分子エキステンダー(Small Molecule Extender)」の特別なクラスを表す共有結合の一部となる。
【0136】
リガンド候補物のライブラリー(例えば、低分子有機分子リガンド)は、固体表面に結合され得(例えば、ビーズ上に提示される)、例えば、PCT公開WO98/11436号(1998年3月19日発行)に記載される。特定の実施形態において、ビーズは反応基(例えば、低レベルのスルフィドリル基)を導入するように、改変される。次いで、リガンド候補物のライブラリーは改変されたビーズ上で、合成される。続いて、このライブラリーは、酸化条件下で、反応基(例えば、ジスルフィド結合が標的とビーズ上のスルフィドリルとの間で形成され得るような、スルフィドリル基)を含む、または含むように改変された標的とインキュベーションされる。次いで、このビーズは還元剤の存在下で洗浄され、続いてスルフィドリル失活剤(例えば、ヨード酢酸)の存在下でインキュベーションされる。次いで、このビーズは、全ての非共有結合標的を除去するために、変性条件下で洗浄され得る。
【0137】
(実施例)
本発明を、引続いての非制限的な実施例によってさらに例示する。他に記載しない限り、標準的分子生体学的手順の全てを、以下において記載されるプロトコルに従って実施する:Molecular Cloning:A Laboratory Manual 1巻〜3巻、Sambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T.編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989;Current Protocols in Molecular Biology、1巻〜2巻、Ausbubel,F.、Brent,R.、Kingston,R.、Moore,D.、Seidman,J.G.、Smith,J.およびStruhl,K.編、Wiley Interscience、1987。
【0138】
基本的なテザー化アプローチの概念は、Eriansonら(前述)によって、およびPCT公開WO00/00823号中に記載されている。「拡張テザー化(extended tethering)」アプローチを、この適用において、標的生体学的分子(TBM)としてカスパーゼ−3を使用して、説明する。カスパーゼはシステインプロテアーゼのファミリーであり、このシステインプロテアーゼは、プログラム細胞死(アポトーシス)の開始および実行に関与することが既知である。第1カスパーゼ(ここで、カスパーゼ−1をいう)は、当初、インターロイキン−1β−転換酵素(ICE)として命名されていた(Thornburryら、Nature 356:768〜774(1992);Cerrettiら、Science 356:97〜100(1992))。続いて、莫大な数のカスパーゼが、カスパーゼファミリーを形成することを同定および特性付けられた。現在、このファミリー(カスパーゼ1〜カスパーゼ10)には、少なくとも10のメンバーが存在する。カスパーゼは、酵素的に不活性な形態で細胞中で発現され、そして、アポトーシスの刺激に応答しタンパク質分解切断によって活性化される。不活性酵素前駆体は、阻害性N末端ドメインに加えて、大型ドメインおよび小型ドメイン(大型サブユニットおよび小型サブユニット)の構成をなす。カスパーゼの活性化は、大型サブユニットおよび小型サブユニットへのプロ酵素のプロセッシングに関与し、これは、分子内で内部的に起こる。カスパーゼを、自己凝集およびオートプロセッシングによってか(アポトーシス初期の場合)、または活性化した上流カスパーゼによる切断を介して(アポトーシスの実行段階の場合)のいずれかで、活性化する。総説として、例えばCohen G.M.、Biochem.J.326:1〜16(1997)を参照のこと。
【0139】
公知の、カスパーゼのテトラペプチドインヒビターに基づいて(AtorおよびDolle、Current Pharmaceutical Design 1:191〜210(1995))、エキステンダーを合成した:2,6−ジクロロ−安息香酸 3−(2−アセチルスルファニル−アセチルアミノ)−4−カルボキシル−2−オキソ−ブチルエステル(図4中の化合物5として示す)、この合成を、以下の実施例2に記載する。エキステンダーの遺伝子構造を、図4に示す。カスパーゼをエキステンダーと反応させることで改変し(実施例3)、続いて、拡張テザー化アプローチを使用して、実施例1中に記載されるように調製したジスルフィドライブラリーのスクリーニングのための生体学的標的分子として、使用した。
【0140】
市販の材料全てを、受け取ったまま使用した。合成した化合物の全てをH NMR[Bruker(Billerica,MA)DMX400 MHz Spectrometer]およびHPLC−MS(Hewlett−Packard Series 1100 MSD)によって、特徴付けた。
【0141】
(実施例1)
(ジスルフィドライブラリー)
ジスルフィドライブラリーを、以下の化合物クラスからの標準的な化学を使用して、合成した:アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミン、塩化スルホニル、イソシアネート、およびイソチオシアネート。例えば、ジスルフィド含有ライブラリーメンバーを、Parlowおよび共同研究者らの方法(ParlowおよびNormansell、Mol.Diversity 1:266〜269(1995))を適用することによって、市販のカルボン酸およびモノ−N−(tert−ブトキシカルボニル)保護システイン(モノ−BOC−システイン)から、作製した。簡単に述べると、260μmolの各カルボン酸を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中で1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)を使用して、ポリスチレン樹脂上の130μmol当量の4−ヒドロキシ−3−ニトロベンゾフェノンに、固定化した。室温で4時間後、DMF(×2)、ジクロロメタン(DCM、×3)、およびテトラヒドロフラン(THF、×1)を用いて樹脂をリンスし、カップリングしていない酸およびDICを除去した。酸を、THF中の66μmolのモノ−BOC保護システインを用いるアミド形成を介して、樹脂から切断した。外界温度にて12時間反応後、溶媒をエバポレートし、そして、BOC基を、DCM中で80%トリフルオロ酢酸(TFA)を使用することによって、各ジスルフィドのカップリングしていない半分から、除去した。生成物をHPLC−MSによって特徴付け、そして、実質的に純粋であるこれらの生成物を、さらなる精製なしで使用した。総計530の化合物を、この方法論を使用することによって、作製した。
【0142】
ライブラリーをまた、モノ−BOC−保護システインならびに種々の塩化スルホニル、イソシアネートおよびイソチオシアネートから、構築した。塩化スルホニルの場合、10μmolの各塩化スルホニルを、15mgのポリ(4−ビニル ピリジン)存在下で、THF(2%ジイソプロピルエチルアミンを用いて)中で、10.5μmolのモノ−BOC−保護システインと結合させた。48時間後、ポリ(4−ビニルピリジン)を、ろ過を介して除去し、そして、溶媒をエバポレートした。BOC基を、DCM中で50%TFAを使用することで除去した。イソチオシアネートの場合、10μmolの各イソシアネートまたはイソチオシアネートを、THF中で10.5μmolのモノ−BOC−保護システインとカップリングさせた。外界温度にて12時間反応させた後、溶媒をエバポレートし、そして、BOC基を、DCM中で50%TFAを使用することによって、除去した。総計212の化合物を、この方法論を使用することによって、作製した。
【0143】
最後に、オキシムベースライブラリーを、1:1のメタノール/クロロホルム(2%酢酸を添加)中で、10μmolの特定のアルデヒドまたはケトンと10.5μmolのHO(CHS−S(CHONHを外界温度にて12時間反応させることで構築し、オキシム生成物を得た。総計448の化合物を、この方法論を使用することによって作製した。
【0144】
個別のライブラリーメンバーを、50mMまたは100mMの最終濃度まで、アセトニトリルまたはジメチルスルホキシドのいずれか中に、溶解した。次いで、これらの各々のアリコートを、8個〜15個の別個の化合物群中へプールした(このプールの各メンバーは、固有の分子量を有する)。
【0145】
(実施例2)
(エキステンダー(SME)合成)
拡張テザー化アプローチのために、エキステンダー(2,6−ジクロロ−安息香酸3−(2−アセチルスルファニル−アセチルアミノ)−4−カルボキシル−2−オキソ−ブチルエステル、図4中の化合物5として示す)を、図4中に示すような一連の化学反応を使用して合成し、そして、以下に記載する。
【0146】
(2−(2−アセチルスルファニル−アセチルアミノ)−コハク酸4−tert−ブチルエステル(化合物2、図4)の合成)
アセチルスルファニル酢酸ペンタフルオロフェニルエステル(1.6g、5.3mmol)およびH−Asp(OtBu)−OH(1g、5.3mmol)を、乾燥ジクロロメタン(DCM)(20ml)中で混合した。次いで、1.6mlのトリエチルアミン(11.5mmol)を添加し、そして、反応を、外界温度にて3.5時間進行させた。次いで、有機層を15mlの1Mカルボン酸ナトリウムを用いて抽出し(×3)、合わせた水性画分を、100mlの1M硫酸水素ナトリウムを用いて酸性化し、そして30mlのエチルアセテートを用いて抽出した(×3)。次いで、結合した有機性画分を、30mlの1Mヒドロゲンスルホン酸ナトリウム、30mlの5M NaClを用いてリンスし、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、そして減圧下でエバポレートして、1.97gのほぼ無色のシロップを得、さらなる精製なしに使用した。分子量=305(実測値306、M+1)。
【0147】
(3−(2−アセチルスルファニル−アセチルアミノ)−5−クロロ−4−オキソ−ペンタン酸 tert−ブチルエステル(化合物3、図4)の合成)
遊離酸(化合物2)を10mlの乾燥テトラヒドロフラン(THF)中に溶解し、0℃に冷却し、そして、0.58ml N−メチルモルフォリン(5.3mmol)および0.69イソブチルクロロギ酸を用いて処理した。濃密な白色沈澱を、直ちに形成し、そして30分後、反応物をガラスフリットを介してろ過し、そして、更なる10mlのTHFを有する新しいフラスコに移した。一方、ジアゾメタンを、1−メチル−3−ニトロ−1−ニトロソグアニジン(2.3g、15.6mmol)と7.4mlの40%水性KOHおよび25mlジエチルエーテルとを、0℃にて45分間反応させることによって、調製した。次いで、黄色エーテル層を、混合アルデヒドを含有する反応物へデカントし、そしてこの反応を165分間にわたりゆっくり外界温度まで暖める間、進行させた。この反応物を、8℃に冷却し、そしてジオキサン中の1.5mlの4N HCl(総計6mmol)を滴下した。これは、多くの気泡を生じ、そして黄色溶液は無色となった。この反応を、徐々に外界温度まで暖める間、2時間進行させ、次いで、1mlの氷酢酸を用いてクエンチした。溶媒を減圧下で除去し、そして、残渣を75mlのエチルアセテート中に再溶解し、50mlの飽和ジカルボン酸ナトリウム、50mlの5M NaClでリンスし(×2)、硫酸酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、そして、90:10のクロロホルム:エチルアセテートを使用するフラッシュクロマトグラフィーによって精製する前にエバポレートして乾燥させて、0.747gの淡黄色油(2.2mmol、(1)から42%)を得た。推定分子量=337.7、実測値338(M+1)。
【0148】
(2,6−ジクロロ−安息香酸3−(2−アセチルスルファニル−アセチルアミノ)−4−tert−ブトキシカルボニル−2−オキソ−ブチルエステル(化合物4、図4)の合成)
クロロメチルケトン(化合物3)(0.25g、0.74mmol)を、5mlの乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(これは、0.17gの2,6−ジクロロ安息香酸(0.89mmol)および0.107gのKF(1.84mmol)を添加されている)中に溶解した。反応を、19時間、外界温度にて進行させた。19時間の時点で、75mlのエチルアセテートで希釈し、50mlの飽和炭酸水素酸ナトリウム、50mlの1M硫酸水素ナトリウム、50mlの5M NaClを用いてリンスし(×2)、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、そして、減圧下で乾燥させて、黄色シロップを得た。HPLC−MSは約75%生成物および25%未反応物(3)であることを示した。これを、さらなる精製なしに使用した。推定分子量492.37、実測値493(M+1)。
【0149】
(2,6−ジクロロ−安息香酸3−(2−アセチルスルファニル−アセチルアミノ)−4−カルボキシ−2−オキソ−ブチルエステル(化合物5、図4)の合成)
以前の工程の生成物(化合物4)を、10mlの乾燥DCM中に溶解し、0℃に冷却し、そして、9mlのトリフロロ酢酸(TFA)を用いて処理した。次いで、この反応物を氷浴から取り出し、そして、1時間にわたり外界温度まで暖めた。溶媒を減圧下で除去し、そして、残渣をDCM中に2回溶解し、そして、残存するTFAを除去するためにエバポレートした。粗生成物を、逆相高圧液体クロマトグラフィーによって精製し、101.9mg(0.234mmol、(3)から32%)の白色吸湿性粉末を得た。推定分子量=436.37、実測値437(M+1)。これをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、50mMのストック溶液を得た。
【0150】
(実施例3)
(エキステンダーを用いたカスパーゼ3の改変)
カスパーゼ3を、標準的な技術(Rotondaら、Nature Structural Biology 3(7):619〜625(1996))を使用してクローニングし、大量発現し、そして精製した。2mlの0.2mg/mlカスパーゼ3溶液に、実施例2において記載されたように合成した10mlの50mM 2,6−ジクロロ−安息香酸3−(2−アセチルスルファニル−アセチルアミノ)−4−カルボキシ−2−オキソ−ブチルエステル(化合物5、図3)を添加し、そして、反応を3.5時間、外界温度にて進行させた。3.5時間の時点で、質量分析は、カスパーゼ3大型サブユニットの完全な改変(分子量16861Da、計算分子量16860Da)を示した。チオエステルを、PBS緩衝液中で緩衝化された0.2mlの0.5Mヒドロキシルアミンを加えることによって脱保護し、反応を18時間進行させた。18時間の時点で、この巨大なサブユニットは、16819Da(計算16818Da)の質量を有した。このタンパク質を、Ultrafree 5 MWCOユニット(Millipore)中で濃縮し、そして、緩衝液を、Nap−5カラム(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して、0.1M TES(pH7.5)に交換した。得られた「拡張された」カスパーゼ−3の構造を、図6に示す。
【0151】
次いでこのタンパク質を、上記(実施例1中)のように調製したジスルフィドライブラリーに対して、以下の実施例4に記載される方法論を使用して、スクリーニングした。
【0152】
(実施例4)
(ジスルフィドライブラリーのスクリーニング)
典型的な実験において、8個〜15個のジスルフィド含有化合物のライブラリーを含む1μlのDMSO溶液を、49μlのエキステンダー改変タンパク質含有緩衝液に添加した。質量分析を結合リガンドの同定に用いた場合、化合物を各々が固有の分子量を有するように選択した。例えば、これらの分子量は、少なくとも10の原子質量単位まで異なり、その結果、デコンヴォル−ションは明白である。デコンヴォル−ションの簡便さに起因して、8個〜15個のジスルフィド含有化合物のプールを、スクリーニングのために典型的に選んだが、より巨大なプールもまた、使用され得る。タンパクは約15μMの濃度で存在し、ジスルフィドライブラリーのメンバー各々は約0.2mMで存在し、従って、全ジスルフィドライブラリーメンバーの総濃度は、約2mMであった。反応を、25mMリン酸カルシウム(pH7.5)および1mM 2−メルカプトエタノールを含有する緩衝液中で行ったが、他の緩衝液および還元剤も使用し得る。この反応を少なくとも30分間、外界温度にて、平衡化した。これらの条件は、タンパク質が質量分析においてイオン化する容易さ、特定のシステイン(単数または複数)の反応性などに依存して、かなり変化し得る。
【0153】
アスパルチル結合体化カスパーゼ−3(実施例3)およびライブラリー(実施例1)の平衡化の後、反応物を、HP1100 HPLCに注入し、質量分析器に装置したC18カラム(Finnigan−MAT LCQ、San Jose,CA)でクロマトグラフした。タンパク質から生じる複数の荷電イオンを、利用可能なソフトウェア(XCALIBUR)を用いてデコンヴォルートして、タンパク質の質量を得た。次いで、ジスルフィド結合を介してタンパク質に結合される任意のライブラリーメンバーの同定を、観察された質量から、改変されていないタンパク質の既知の質量を引くことによって、容易に決定した。このプロセスは、ライブラリーメンバーの付着がタンパク質自身に特有なイオン化を劇的に変化しないということ(伝統的仮説)を、仮定する。なぜならば、多くの場合、タンパク質は、任意の所定のライブラリーメンバーよりも、少なくとも20倍大きいからである。この仮定を、1つのタンパク質によって選択された小型分子が、他のタンパク質によって選択されないことを立証することによって、確認した。
【0154】
代表的な実験の結果を、図6に示す。図6の右側のスペクトルは、「拡張」カスパーゼ−3(実施例3で記載したように合成した)が、拡張カスパーゼ3を改変するプールから同定されたジスルフィド含有分子と反応した結果を示す。得られた優意なピーク(17,094の質量)は、カスパーゼ3上の第2の目的部位に対して固有の親和性を有する低分子リガンドに、共有結合的に連結されたカスパーゼ3に対応し、結果として上記のピークに示されるダイアフォア化合物を生じる。
【0155】
左側に示される質量スペクトルは、改変されていないカスパーゼ3(システイン含有ポリペプチド標的)のデコンヴォリューター(deconvoluter)質量スペクトルであり、そして、上記で使用された同じジスルフィド含有低分子リガンドである。このスペクトルは、改変されていないカスパーゼ3の質量(16,614DA)に対応する優意なピークを、示す。有意により小さいピークは、2−アミノエタンチオールにジスルフィド結合されたカスパーゼ−3(合わせた質量:16,691Da)を表す。ここで、低分子リガンドの結合部位が反応性システインから非常に遠く、そして、エキステンダーが導入されていないことに起因して、この低分子リガンドが選択されないことに注意する。
【0156】
次いで、上記のように同定された初期リード化合物を、カスパーゼ−3への特異的結合における、種々の置換基の相対的な重要性を評価するために改変した。
【0157】
本明細書を通して引用された全ての参考文献を、参考として明白に援用する。
【0158】
本発明を、これらの特定の実施形態の参考とともに記載してきたが、種々の変更がなされ得、そして、当価物が、本発明の概念および範囲から逸脱することなく置換され得るということを、当業者は理解するべきである。多くの改変が、目的に対して、特定の、状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス工程を採用するようになされ得る。このような改変の全ては、本明細書に添付の特許請求項の範囲内にあることが、意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、側鎖特異的リガンドの発見のための基本的結合アプローチの模式図である。遊離チオール基を含むか、または遊離チオール基を含むように改変された標的分子(例えば、システイン含有タンパク質)は、還元剤(例えば、2−メルカプトエタノール)の存在下でジスルフィド含有ライブラリーと平衡化される。大部分のライブラリーのメンバーは、標的分子に対してほとんどまたは全く固有の親和性を有さないので、質量作用により、非改変標的分子に向かって平衡になる。しかし、ライブラリーメンバーが、標的分子に対して固有の親和性を実際に示す場合、平衡が、改変された標的分子に向かってシフトし、この標的分子がライブラリーメンバーとジスルフィド結合により結合される。
【図2】 図2は、静止状態の拡大結合アプローチの模式図である。第1の工程において、遊離チオール基を含むか、または遊離チオール基を含むように改変された標的分子(例えば、システイン含有タンパク質)は、チオール含有エキステンダー(extender)(標的分子上のチオール基と不可逆性共有結合を形成し得る反応基を含む)、標的分子に対する固有の親和性を有する部分、およびチオール基により改変される。次いで、標的分子とチオール含有エキステンダーとの間で形成された複合体は、ジスルフィド含有モノフォア(monophore)のライブラリーをスクリーニングして、標的分子上の第2の結合部位に対する最高の固有の結合親和性を有するライブラリーメンバーを同定するために用いられる。LG=リガンド;PG=保護基;R=反応基。
【図3】 図3は、動力学的な拡大結合ストラテジーを示し、ここでエキステンダーは、二官能性であり、2つの官能基(通常は、ジスルフィド)を含み、各々が、可逆性共有結合を形成し得る。R=反応基。
【図4】 図4は、実施例2に記載される、特定のエキステンダー(2,6−ジクロロ−安息香酸3−(2−アセチルスルファニル−アセチルアミノ)−4−カルボキシ−2−オキソ−ブチルエステル)の化学合成を示す。
【図5】 図5は、カスパーゼ3の公知のテトラペプチドインヒビターと、このインヒビターに基づいて合成された包括的エキステンダーとの間の構造比較を示す。
【図6A】 図6Aは、2つの代表的な拡大結合実験の質量スペクトルを示す。
【図6B】 図6Bは、2つの代表的な拡大結合実験の質量スペクトルを示す。

Claims (27)

  1. プロセスであって、以下:
    (i)目的の第1の部位および目的の第2の部位を有し、該目的の第1の部位またはその付近に求核基を含むかまたは含むように改変された標的生物学的分子(TBM)を、複数の第1の有機リガンド候補と、可逆的な共有結合が該求核基と目的の第1の部位に対する親和性を有する候補との間で形成されてTMB第 1 リンガンド複合体を形成する条件下で接触させる工程であって、該求核基は、チオール基、保護チオール基、可逆的ジスルフィド基、ヒドロキシル基、保護ヒドロキシル基、アミノ基、保護アミノ基、カルボキシル基および保護カルボキシル基からなる群より選択され、該候補は、該求核基と反応性である官能基を有する、工程;
    (ii)TBM−第 1 のリガンド複合体から第 1 リガンドを同定する工程;
    (iii)該TBM上の求核基と反応性の第 1 の官能基および該目的の第2の部位に対して親和性を有する第 2 の官能基を有する低分子エキステンダー(SME)を提供するような、(ii)において同定された第1のリガンドの誘導体を設計する工程であって、該第1の官能基が、該TBM上の、チオール基、保護チオール基、可逆的ジスルフィド結合、ヒドロキシル基、保護ヒドロキシル基、アミノ基、保護アミノ基、カルボキシル基または保護カルボキシル基と不可逆的な共有結合基を形成し得る、工程;
    (iv)該TBMとSMEとを接触させて、TBM−SME複合体を形成する工程、および
    (v)該TBM−SME複合体を複数の第2の低分子有機リガンド候補と接触させる工程であって、該候補は、該TBM−SME中のSMEと反応性である官能基を有し、該TBM上の目的の第2の部位に対する親和性を有する候補が、該TBM−SME複合体と共有結合を形成して、それによって、第 2 のリガンドが同定される、工程
    を包含する、プロセス。
  2. 請求項1に記載のプロセスであって、前記工程(v)における、前記TBM上の前記第2の官能基および前記第 2 のリガンド候補上の官能基が、チオール基、保護チオール基または可逆的ジスルフィド基である、プロセス。
  3. 請求項2に記載のプロセスであって、前記工程(v)がチオール交換条件の下で実施される、プロセス。
  4. 請求項3に記載のプロセスであって、前記条件が、メルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスレイトール(DTE)、メルカプトプロパン酸、グルタチオン、システアミン、システイン、トリ(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびトリス(シアノエチル)ホスフィンからなる群より選択される還元剤の添加から生じる、プロセス。
  5. 請求項 4 に記載のプロセスであって、工程(v)における前記第 2 のリガンド候補が、ライブラリーのメンバーである、プロセス。
  6. 請求項 5 に記載のプロセスであって、前記TBM上の目的の第2の部位に対して最も高い親和性を有するライブラリーのメンバーが、前記TBM−SME複合体とジスルフィド結合を形成する、プロセス。
  7. 請求項1に記載のプロセスであって、前記TBM上の目的の第2の部位に対する親和性を有する第 2 のリガンドを同定する工程を包含する、プロセス。
  8. 請求項7に記載のプロセスであって、前記第 2 のリガンドが、質量分析法(MS)によって同定される、プロセス。
  9. 請求項9に記載のプロセスであって、前記第 2 のリガンドが、検出可能なタグを利用して同定される、プロセス。
  10. 請求項7に記載のプロセスであって、互いに共有結合した前記第1のリガンドと第 2 のリガンドを含む分子を合成する工程をさらに包含する、プロセス。
  11. 請求項10に記載のプロセスであって、ここで、前記共有結合が、ジスルフィド結合によって提供される、プロセス。
  12. 請求項11に記載のプロセスであって、前記第 2 の分子が、本質的 に、ジスルフィド結合を介して共有結合する第 1 のリガンドおよび第 2 のリガンドからなる、プロセス。
  13. 請求項12に記載のプロセスであって、前記分子の誘導体を合成する工程をさらに包含する、プロセス。
  14. 請求項13に記載のプロセスであって、前記第 1 のリガンドと第 2 のリガンドを共有結合するジスルフィド結合が、異なる共有結合で置換される、プロセス。
  15. プロセスであって、以下:
    (i)標的生物学的分子(TBM)を提供する工程であって、該TBMは、該TBM上の目的の第1の部位付近に反応性の求核基を含むかまたは含むように改変されている、工程;
    (ii)(i)由来のTBMを、低分子エキステンダーと接触させる工程であって、該低分子エキステンダーは、TBM上の求核基と反応性である基を有し、そして遊離チオールまたは保護チオールを有する、工程;
    (iii)該TBM上の求核基と該低分子エキステンダー上の基との間で共有結合が形成されるように(ii)における接触条件を調整して、それによって、該TBMと該低分子エキステンダーとを含む共有結合複合体を形成し、該複合体は、該TBM上の目的の第2の部位付近に遊離チオールまたは保護チオールを提示する、工程;
    (iv)チオール交換条件下で、(iii)由来の複合体を、有機低分子のライブラリーと接触させる工程であって、該分子の各々は、遊離チオールまたは交換可能なジスルフィド連結基を有し、ここで、TBM上の目的の第2の部位に対する最も高い親和性を有するライブラリーのメンバーが、該複合体とジスルフィド結合を形成する、工程;および
    (v)(iv)由来のライブラリーのメンバーを同定する工程
    を包含する、プロセス。
  16. 請求項15に記載のプロセスであって、前記工程(i)において同定され、ライブラリーメンバーとジスルフィド結合を介して共有結合している、工程(ii)に由来する求電子基を有する低分子エキステンダーから本質的になる、分子を合成する工程を包含する。プロセス。
  17. 請求項16に記載のプロセスであって、前記分子の誘導体を合成する工程をさらに包含する、プロセス。
  18. 請求項18に記載のプロセスであって、前記誘導体が、前記求核基と反応性である異なる基を含む、プロセス。
  19. 請求項17に記載のプロセスであって、前記低分子エキステンダーと前記工程(i)において同定されたライブラリーメンバーとを共有結合させるジスルフィド基が、異なる基で置換される、プロセス。
  20. 請求項15に記載のプロセスであって、前記工程(v)において同定されたライブラリーメンバーとジスルフィド結合を介して共有結合された求核基と反応性である基を有していない低分子エキステンダーから本質的になる、プロセス。
  21. 請求項20に記載のプロセスであって、前記工程(c)において同定されたライブラリーメンバーとジスルフィド結合を介して共有結合された求核基と反応性である基を有していない低分子エキステンダーを共有結合しているジスルフィドを、異なる基と置換する工程をさらに包含する、プロセス。
  22. 請求項15に記載のプロセスであって、前記反応性である求核基が、チオールである、プ ロセス。
  23. 請求項22に記載のプロセスであって、工程(i)の後に、以下:
    (a)チオール交換条件下で、前記TBMを有機低分子のライブラリーと接触させる工程であって、各々の分子が、交換可能なジスルフィド連結基を有し、ここで、前記目的の第1の部位に対して最も高い親和性を有するライブラリーのメンバーが、該TBMとジスルフィド結合を形成する、工程;
    (b)(i)由来の該ライブラリーのメンバーを同定する工程;および
    (c)(ii)における該ライブラリーのメンバーの誘導体を形成する工程であって、該誘導体は、前記求核基と反応性であり、工程(b)のチオールまたは保護チオールを有する低分子エキステンダーである、工程
    をさらに包含する、プロセス。
  24. 請求項23に記載のプロセスであって、メルカプトエタノール、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスレイトール(DTE)、メルカプトプロパン酸、グルタチオン、システアミン、システイン、トリ(カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)およびトリス(シアノエチル)ホスフィンからなる群より選択されるジスルフィド還元剤を添加する工程をさらに包含する、プロセス。
  25. 前記同定する工程が、質量スペクトル分析を含む、請求項15に記載のプロセス。
  26. 前記同定する工程が、質量スペクトル分析を含む、請求項23に記載のプロセス。
  27. 請求項23に記載のプロセスであって、交換可能なジスルフィド連結基を有している有機低分子のライブラリーの分子の各々は、システアミン部分を含む、プロセス。
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