JP3836638B2 - ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐湿熱性に優れたポリカーボネート樹脂組成物およびそれから形成された成形品に関する。さらに詳しくは、耐湿熱性に優れるとともに、さらに難燃性にも優れたポリカーボネート樹脂組成物およびそれから形成された成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネート樹脂は、優れた機械特性、熱的性質を有しているため工業的に広く利用されている。しかしながら加工性、成形性に劣るため他の熱可塑性樹脂とのポリマーアロイが数多く開発されており、その中でもABS樹脂に代表されスチレン系樹脂とのポリマーアロイは、自動車分野、OA機器分野、電子電気機器分野等に広く利用されている。一方、近年OA機器、家電製品等の用途を中心に、使用する樹脂成形品の難燃化の要望が強く、これらの要望に応えるためにポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイについても、難燃化の検討が数多くなされている。
【0003】
従来、かかるポリマーアロイにおいてはブロムを有するハロゲン系難燃剤と三酸化アンチモン等の難燃助剤の併用が一般的であったが、燃焼時の有害性物質の発生問題からブロムを有するハロゲン系化合物を含まない難燃化の検討が盛んになってきた。例えばポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイに、トリフェニルホスフェートとフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを配合する方法(特開平2−32154号公報)、縮合リン酸エステルであるホスフェート系オリゴマーを配合する方法(特開平2−115262号公報)、特定の無機充填剤と特定の衝撃改良剤を配合する方法(特開平7−126510号公報)等が提案されている。一方で、近年は製品の安全性、製品寿命の長期化による環境負荷低減、メーカーの製品保証等の観点から長期使用における性能保持性が極めて重要視されてきている。
【0004】
しかしながら、これらのリン酸エステル系の難燃剤を配合したポリカーボネート樹脂組成物はその長期使用において、配合したリン酸エステル系の難燃剤が加水分解し、この分解物がポリカーボネート樹脂のカーボネート結合の加水分解を促進させ、例えば衝撃強度等が著しく低下するという問題点がある。すなわち、ポリカーボネート樹脂とABS樹脂とのポリマーアロイにリン酸エステル系の難燃剤を配合した樹脂組成物において、耐湿熱性を向上させることが求められ、解決が急がれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第1の目的は、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とのポリマーアロイにリン酸エステル系の難燃剤を配合した樹脂組成物において、耐湿熱性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とのポリマーアロイにリン酸エステル系の難燃剤およびドリップ防止剤としてフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンを配合した難燃性樹脂組成物において、耐湿熱性、耐衝撃性、難燃性および着色性に優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、UL規格94Vによる燃焼試験に基づいてV−0の判定を有し、かつ比較的高い温度で高い湿度条件下において、衝撃強度の低下と分子量低下が少ないポリカーボネート樹脂成形品を提供することにある。
【0007】
本発明者らは、前記本発明の目的を達成するため研究を進めたところ、ポリカーボネート樹脂とスチレン系樹脂とのポリマーアロイにおいて、リン酸エステル系難燃剤を配合した場合に組成物中の塩素化合物の含有量を特定量以下とし、かつ特定の種類の無機充填剤を組合せて配合することによって、優れた難燃性とともに、長期間にわたる耐加水分解性(耐湿熱性)を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)40〜92重量%
(B)スチレン系樹脂(b成分)5〜40重量%
(C)リン酸エステル系難燃剤(c成分)3〜20重量%
および
(D)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.1〜30重量部のケイ酸塩充填剤(d成分)
より実質的になる樹脂組成物であり、b成分は、塊状重合法により得られ、アクリロニトリルをモノマー構成単位として含有するスチレン系樹脂であり、該樹脂組成物は、アクリロニトルモノマーの含有量が50ppm以下であり、塩素原子量に換算した塩素化合物の含有量が100ppm以下である、ポリカーボネート樹脂組成物が提供される(以下この組成物を“樹脂組成物−I”と称することがある)。
【0009】
さらに本発明によれば、
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)40〜92重量%
(B)スチレン系樹脂(b成分)5〜40重量%
(C)リン酸エステル系難燃剤(c成分)3〜20重量%
(D)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.1〜30重量部のケイ酸塩充填剤(d成分)
(E)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.1〜2重量部のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(e成分)および
(F)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、1〜10重量部の(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体(f−1成分)、
より実質的になる樹脂組成物であり、
b成分は、塊状重合法により得られ、アクリロニトリルをモノマー構成単位として含有するスチレン系樹脂であり、該樹脂組成物は、アクリロニトルモノマーの含有量が50ppm以下であり、塩素原子に換算した塩素化合物の含有量が100ppm以下である、ポリカーボネート樹脂組成物が提供される(以下、この組成物を“樹脂組成物−II”と称することがある)。
本発明において単に“樹脂組成物”という場合、前記樹脂組成物−Iおよび−IIを総称することとする。
【0010】
本発明は、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂およびリン酸エステル系難燃剤よりなる組成物において、塩素化合物の含有量を塩素原子に換算して100ppm以下に抑制しかつケイ酸塩充填剤を一定割合配合することによって、耐湿熱性(耐加水分解性)が改良され、その上長期間における衝撃強度の低下が極めて少ない樹脂組成物が得られる。
以下本発明のポリカーボネート樹脂組成物についてさらに具体的に説明する。まず樹脂組成物を構成する成分について詳細に説明する。
【0011】
(A)ポリカーボネート樹脂(a成分)
本発明のa成分におけるポリカーボネート樹脂とは、2価フェノールとカーボネート前駆体を反応させて得られるポリカーボネート樹脂、すなわち芳香族ポリカーボネート樹脂をいう。ここで用いる2価フェノールの代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビスフェノールAという)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。好ましい2価フェノールは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン系であり、ビスフェノールAが特に好ましい。カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、炭酸ジエステル、ビスハロホルメート等が挙げられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネート、2価フェノールのジビスクロロホルメート等が挙げられる。上記2価フェノールとカーボネート前駆体を反応させてポリカーボネート樹脂を製造するにあたり、2価フェノールを単独でまたは2種以上を併用してもよく、またポリカーボネート樹脂は、2種以上のポリカーボネート樹脂の混合物であってもよい。
【0012】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で表して通常10,000〜40,000であり、12,000〜30,000が好ましい。ここでいう粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mLにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/C=[η]+0.45×[η]2C
[η]=1.23×10-4M0.83
(ただし[η]は極限粘度、Cはポリマー濃度)
【0013】
ポリカーボネート樹脂を製造する界面重合法(溶液法)を簡単に説明する。カーボネート前駆体としてホスゲンを用いる界面重合法では、通常酸結合剤および有機溶媒の存在下で反応させる。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第3級アミンや第4級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤としては例えばフェノールやp−tert−ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノールおよび4−(2−フェニルイソプロピル)フェノールのようなアルアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。なお、結果として得られた分子鎖末端の全てが末端停止剤に由来の構造を有する必要はない。
【0014】
カーボネート前駆体として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応(溶融重合法)では、不活性ガス雰囲気下に所定割合の2価フェノール成分および必要に応じて分岐剤等を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために、アルカリ金属化合物や含窒素塩基性化合物等の公知のエステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。また末端停止剤としてジフェニルカーボネートやメチル(2−フェニルオキシカルボニルオキシ)ベンゼンカルボキシレート等を、反応の初期段階でまたは反応の途中段階で添加すること、および反応終了直前に従来公知の各種触媒失活剤を添加することも好ましく行われる。
【0015】
本発明で使用するa成分としてのポリカーボネート樹脂は、前記界面重合法および溶融重合法のいずれで製造されたものでもよい。しかし本発明は、界面重合法により製造されたポリカーボネート樹脂をa成分として使用するのに適している。その理由を次に説明する。前記したように、界面重合法により製造されたポリカーボネート樹脂中には、溶媒とその変性体、触媒、触媒失活剤およびそれらの変性体、および反応副生成物などの塩素化合物が少なからず残存している。この残存塩素化合物は、精製によりある程度は除去されるが、わずかの塩素化合物の残存は避けられない。本発明者は主としてポリカーボネート樹脂に由来する塩素化合物の存在が、組成物中の難燃剤としてのリン酸エステル(c成分)と相互に作用して組成物の加水分解を引起しているものと考えた。しかしながら、本発明においてはケイ酸塩充填剤をさらに配合することにより、塩素化合物が残存したポリカーボネート樹脂により塩素化合物がある程度存在する場合においても、大幅に加水分解を抑制し、耐湿熱性の向上を可能としたものである。一方、さらに耐湿熱性の向上を図るべく、組成物中の塩素化合物の含有量を抑制するため、主成分としてのポリカーボネート樹脂中の塩素化合物の含有量の低減を行った。その結果、樹脂組成物中の塩素化合物の含有量が塩素原子に換算して100ppm以下、好ましくは90ppm以下、特に好ましくは50ppm以下とすべきことが見出された。
【0016】
本発明の組成物において、塩素化合物の含有量は前記範囲を保持すればよく、その塩素化合物は、どの成分から混入したものでもよい。しかし前記したようにポリカーボネート樹脂(a成分)は、本発明の樹脂組成物の主たる割合を占める成分でありかつその製造法に起因して塩素化合物が残存しているので、ポリカーボネート樹脂は、それ自体塩素化合物の含有量が少ないものを使用すべきである。
【0017】
本発明の組成物中のポリカーボネート樹脂(a成分)の割合および他の成分中の塩素化合物の含有量によっても左右されるが、使用するポリカーボネート樹脂中の塩素化合物の含有量は塩素原子に換算して100ppm以下、好ましくは90ppm以下、特に好ましくは20ppm以下が有利である。
【0018】
かかる低塩素化合物含有ポリカーボネート樹脂を得るためには、例えばポリカーボネート樹脂をアセトン処理したり、またポリカーボネート樹脂粉末をペレット化する際、ベント付き押出機の途中に水を強制的に注入し脱塩素化合物を行う方法、およびポリカーボネート樹脂溶液を非溶剤沈殿する方法や、さらに乾燥処理を強化する等、従来公知の種々の方法により得ることが可能である。
【0019】
さらに、ポリカーボネート樹脂粉粒体と温水との混合物が存在する容器中に、撹拌状態で、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液を連続的に供給して、該溶媒を蒸発させることにより、ポリカーボネート樹脂の有機溶媒溶液からポリカーボネート樹脂粉粒体を製造する方法において、該容器内の温度を下記式に示されたT1(℃)またはT2(℃)の範囲内に保持し、撹拌速度が60〜100rpmであり、かつ撹拌能力が5〜10kw/hr・m3であることを特徴とする製造方法が、残留塩素化合物の低減のみならず、粉体が少なく、ろ過性が良好で、また乾燥性に優れたポリカーボネート樹脂が得られるため好ましく使用できるものである。
【0020】
0.0018×M1+37≦T1(℃)≦0.0018×M1+42
(M1:粘度平均分子量 10,000〜20,000)
0.0007×M2+59≦T2(℃)≦0.0007×M2+64
(M2:粘度平均分子量 20,000以上)
なお、本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物などにおける塩素原子の含有量は、理化学電気工業(株)製PIX−2000全自動蛍光X線分析装置を用いた蛍光X線による分析法により測定した値である。
【0021】
(B)スチレン系樹脂(b成分)
本発明においてb成分として使用されるスチレン系樹脂とは、その樹脂100重量%当り、スチレンまたはα−メチルスチレンまたはビニルトルエンのスチレン系モノマーから得られた割合が20重量%以上好ましくは25重量%を含有する樹脂をいう。従ってスチレン系樹脂としては、かかるスチレン系モノマーの単独重合体またはこれらモノマーの相互共重合体およびこれらスチレン系モノマーとアクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニルモノマーとの共重合体が挙げられる。さらにはポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン・プロピレン系ゴム、アクリル系ゴム、ポリオルガノシロキサン成分とポリ(メタ)アルキルアクリレート成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴム等のゴム成分に、スチレン系モノマー、またはスチレン系モノマーとビニルモノマーをグラフト重合させたものを挙げることができる。これらのスチレン系樹脂として具体的には、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)等の樹脂、またはこれらの混合物が挙げられ、共重合体および混合物においてはスチレン系モノマー成分が、かかるスチレン系樹脂100重量%中20重量%以上含まれるものである。かかる各種重合体は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、塊状懸濁重合等の各種重合法により製造されるものが使用可能であり、また共重合の方法も1段で共重合しても、多段で共重合してもよい。
【0022】
本発明のb成分としては、これらの中でもポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)が好ましく、中でも耐衝撃性の観点からABS樹脂が最も好ましい。さらにこれらの中でも塊状重合法により製造されたものがより耐湿熱性を向上させることができる点で好ましく使用できる。またこれらのb成分は1種のみならず2種以上を混合して用いることもできる。
【0023】
本発明のb成分としてのABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体であり、通常AS樹脂等のグラフト重合時に副生される他の重合体との混合物を形成しているものである。さらにかかるABS樹脂と別途重合されたAS樹脂との混合物が工業的に広く利用されているものである。かかるABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレンおよびスチレン−ブタジエン共重合体等のガラス転移点が10℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5〜75重量%であるのが好ましい。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル等を挙げることができ、またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレンおよび核置換スチレンを挙げることができる。かかるシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物の含有割合は、かかるシアン化ビニル化合物および芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が50〜95重量%である。さらにメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することができるが、これらの含有割合はb成分中15重量%以下とすべきである。
【0024】
ABS樹脂は、塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよいが、上記に示したごとく、塊状重合法で製造されたものが耐湿熱性をさらに良好とする点でより好ましいものである。かかる原因は十分に解明できていないものの、乳化重合、懸濁重合で使用される乳化剤等の金属塩成分が、直接リン酸エステルに起因する加水分解に影響をおよぼすか、またはポリカーボネート樹脂組成物中に残留する塩素化合物に作用して加水分解に影響をおよぼしている可能性等が考えられる。
【0025】
本発明者の研究によれば、b成分としてアクリロニトリルをモノマー構成単位として含有するスチレン系樹脂(ことにABS樹脂)を使用する場合、その樹脂中に残留するアクリロニトリルモノマーの含有量が少ないものが好ましいことが見出された。すなわち、本発明の樹脂組成物中に、主としてb成分から由来するアクリロニトリルモノマーが50ppmを超える量含有されると、樹脂組成物の耐湿熱性に望ましくない影響を与えることが見出された。その理由ははっきりしないが、アクリロニトリルモノマーが、樹脂中のリン酸エステル(c成分)または塩素化合物と作用して、ポリカーボネート樹脂の加水分解に影響を与えているものと推定される。
【0026】
本発明の樹脂組成物中に含有されるアクリロニトリルモノマーの含有量は、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、最も好ましくは20ppm以下であるのが有利である。
【0027】
樹脂組成物中のアクリロニトリルモノマーの含有量を前記割合に低減するには、アクリロニトリルをモノマー構成単位として含有するスチレン系樹脂(ことにABS樹脂)としてアクリロニトリルモノマー含有量の少ない樹脂を使用することが最も簡単な手段である。b成分中の、アクリロニトリルモノマー含有量は、樹脂組成物中のb成分の割合に主として左右されるが、通常200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下の条件を満足するものが望ましい。かかる残留アクリロニトリルモノマー量がこれらの量を満足する場合には、樹脂組成物中のアクリロニトリルモノマー含有量を前記範囲とすることができ、より良好な耐湿熱特性を満足することができる。したがって、アクリロニトリルをモノマー構成単位として含有するスチレン系樹脂(ことにABS樹脂)としてより好ましいのは、アクリロニトリルモノマー含有量が200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、特に好ましくは50ppm以下であり、塊状重合法により製造されたものである。
【0028】
(C)リン酸エステル系難燃剤(c成分)
本発明の樹脂組成物は、ハロゲン含有難燃剤を含有しないで高度な難燃性を達成させる目的で、リン酸エステル系難燃剤が配合されている。このc成分は、ポリカーボネート樹脂に対する非ハロゲン系難燃剤として使用されるリン酸エステル系難燃剤であればよい。
好ましいリン酸エステル系難燃剤は下記式(1)で表される。
【0029】
【化3】
【0030】
ただし式中Xは芳香族ジヒドロキシ化合物残基を示し、j、k、lおよびmは、それぞれ独立して0または1を示し、nは0または1〜5の整数を示し、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して芳香族モノヒドロキシ化合物残基を示す。
【0031】
前記式(1)において、j、k、lおよびmは、それぞれ独立して0または1を示すが、j、k、lおよびmはいずれも1であるのが好ましい。またnは0または1〜5の整数を示すが、0または1〜3の整数であるのが好ましい。特に好ましいのは0または1である。通常nは、nの数の異なるリン酸エステルの混合物における平均値として示される。従ってnは平均値として0〜5、好ましくは0〜3として示すこともできる。Xは芳香族ジヒドロキシ化合物の残基を示し、またR1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して芳香族モノヒドロキシ化合物の残基を示す。ここで残基とは、それぞれジヒドロキシ化合物またはモノヒドロキシ化合物に対して2つのOH基または1つのOH基を除いた基を意味する。例えばビスフェノールAの残基(X)は、
【0032】
【化4】
で表される。
【0033】
Xの具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトンおよびビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドの残基が挙げられ、これらのうち、ハイドロキノン、レゾルシノールおよびビスフェノールAの残基が好ましい。一方R1、R2、R3およびR4の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノールおよびp−クミルフェノールの残基が挙げられ、これらのうち、フェノール、クレゾールおよびキシレノールの残基が好ましく、フェノールおよびキシレノールの残基が特に好ましい。
【0034】
c成分としてのリン酸エステル系難燃剤は、モノホスフェート化合物としてはトリフェニルホスフェート、縮合リン酸エステルとしてはレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)が、難燃性が良好でありかつ成形時の流動性が良好である等の理由により好ましく使用できる。
【0035】
(D)ケイ酸塩充填剤(d成分)
本発明おいてd成分としてのケイ酸塩充填剤とは、その化学組成上SiO2成分を35重量%以上含有する無機充填剤、好ましくは40重量%以上含有する無機充填剤をいう。かかるケイ酸塩充填剤の具体例としては、カオリン、タルク、クレー、パイロフィライト、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、ワラストナイト、セピオライト、ゾノトライト、天然シリカ、合成シリカ、各種ガラスフィラー、ゼオライト、ケイソウ土およびハロイサイト等、またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0036】
中でも、本発明の樹脂組成物においては、かかる充填剤が微分散することによって加水分解を抑制する作用点を多くできること、および難燃性付与の観点からは樹脂に対する補強効果も重要であること等の点から、タルク、マイカ、ワラストナイト、またはこれらの混合物を好ましい充填剤として挙げることができる。中でもタルクが最も好ましい。
【0037】
d成分としてのマイカとしては、補強効果確保の面から、平均粒径が1〜80μmの粉末状のものが好ましい。マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカには白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等があり、マイカとしてはいずれのマイカも使用できるが、特に金雲母、黒雲母および金雲母のOH基がF原子に置換された人造雲母よりは、SiO2含有量のより高い白雲母が好ましい。また、マイカの製造に際しての粉砕法としては、マイカ原石を乾式粉砕機にて粉砕する乾式粉砕法とマイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕機で本粉砕し、その後脱水、乾燥を行う湿式粉砕法があり、乾式粉砕法の方が低コストで一般的であるがマイカを薄く細かく粉砕することが困難であるため本発明においては湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
【0038】
マイカの平均粒径としては、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒径が1〜80μmのものが好ましく使用できる。さらに好ましくは平均粒径が2〜50μmのものである。1〜80μmの場合には、より難燃性に良好な作用を与えるとともに、樹脂中の微分散の条件も満足するため耐湿熱性も良好に維持できる。
【0039】
マイカの厚みとしては、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01〜1μmのものを使用できる。好ましくは厚みが0.03〜0.3μmである。さらにマイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、さらにエポキシ系、ウレタン系、アクリル系等の結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。マイカの具体例としては、株式会社山口雲母工業所製雲母粉(マイカ粉)A−41、A−21およびA−11等があり、これらは市場で容易に入手できるものである。
【0040】
d成分としてのタルクとしては、剛性確保の面から、平均粒径が0.5〜20μmの粉末状のものが好ましい。タルクはマイカに比較して厚みが厚いため、樹脂中の分散において同等とするのには、より小粒径である方が好ましい。ここでタルクの平均粒径とはマイクロトラックレーザー回折法により測定された値をいう。
【0041】
タルクとしては、特に産地等を限定するものではないが、より好ましくは、SiO2成分がより高いもの、例えば60重量%以上のものが好ましい。かかるSiO2成分量の高いものの場合は、相対的に不純物であるFe2O3の含有量も少なくなりやすいため、かかるタルクは色相の点においても有利である。またかかるタルクを原石から粉砕する際の製法に関しては特に制限はなく、軸流型ミル法、アニュラー型ミル法、ロールミル法、ボールミル法、ジェットミル法、および容器回転式圧縮剪断型ミル法等を利用することができる。さらにかかるタルクは、その取り扱い性等の点で凝集状態であるものが好ましく、かかる製法としては脱気圧縮による方法、バインダー樹脂を使用し圧縮する方法等があり、特に脱気圧縮による方法が簡便かつ不要のバインダー樹脂成分を本発明の組成物中に混入させない点で好ましい。
【0042】
d成分としてのワラストナイトとは、ケイ酸カルシウムを主成分とする針状結晶をもつ天然白色鉱物であり、実質的に化学式CaSiO3で表され、通常SiO2が約50重量%、CaOが約47重量%、その他Fe2O3、Al2O3等を含有しており、比重は約2.9である。
【0043】
ワラストナイトとしては、粒子径分布において3μm以上が75%以上、10μm以上が5%以下でかつアスペクト比L/D(長さ/直径)が3以上、特にL/Dが8以上であるものが好ましい。粒子径分布において3μm以上が75%以上、かつ10μm以上が5%以下の場合、補強効果が十分であり難燃性を高めやすく、かつ樹脂中に微分散して耐湿熱性も良好となるからである。特にアスペクト比が8以上の場合は、補強効果が十分であり好ましい。ただし、作業環境面を考慮すると、アスペクト比が50以下好ましくは40以下であるものがより有利である。また、かかるワラストナイトには、通常の表面処理剤、例えばシラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理を施しても差し支えない。
【0044】
本発明の樹脂組成物−Iは、a成分、b成分、c成分およびd成分の4成分を必須成分としている。この樹脂組成物−Iにおけるこれら必須成分の配合割合について説明する。樹脂組成物中a成分、b成分およびc成分の配合割合は、3成分の合計重量に基づいて表される。3成分の合計100重量%当り、a成分は40〜92重量%、b成分は5〜40重量%、c成分は3〜20重量%である。a成分が40重量%未満またはb成分が40重量%を越える場合には、耐熱性(特に荷重撓み温度)や機械的強度が低下するようになる。また、a成分が92重量%を越えるかまたはb成分が5重量%未満の場合には、流動性が低下し成形加工性が低下するようになる。さらに、c成分が3重量%未満では十分な難燃性が得られず、20重量%を越えると機械的強度や耐熱性(特に荷重撓み温度)が著しく低下するとともに、耐湿熱性も大きく低下する。
a成分、b成分およびc成分の好ましい配合割合は、a成分が50〜88重量%、b成分が7〜35重量%およびc成分が5〜15重量%である。
【0045】
本発明においてd成分の配合割合は、a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜20重量部の範囲である。このd成分の配合割合が0.1重量部未満では、耐湿熱性の向上効果がなく、30重量部を越えると耐湿熱性に対する効果が飽和する一方で、衝撃強度が低下したり、得られる成形品の表面外観が悪化するようになるため好ましくない。
【0046】
本発明の樹脂組成物−Iには、難燃性能をさらに向上させるためにさらに、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(e成分)を配合することもできる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンはASTM規格においてタイプ3に分類されているものである。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、UL規格の垂直燃焼テストにおいて試験片の燃焼テスト時に溶融滴下防止性能を有しており、かかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは、例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)よりテフロン6Jとして、またはダイキン化学工業(株)よりポリフロンとして市販されており容易に入手できる。フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンの配合量は上記a成分、b成分およびc成分の3成分の合計100重量部に対して0.1〜2重量部が好ましい。0.1重量部未満では十分な溶融滴下防止性能が得られ難く、2重量部を越えると外観が悪化するようになる。e成分の割合は0.1〜1重量部が特に好ましい。
【0047】
かかるポリテトラフルオロエチレンは、通常の固体形状の他、水性エマルジョン、およびディスパージョン形態のものも使用可能であるが、分散剤成分が耐湿熱性に悪影響を与えやすいため、特に固体状態のものが好ましく使用できる。
またかかるフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンは樹脂中での分散性を向上させ、さらに良好な外観および機械的特性を得るために、ポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物も好ましい形態として挙げることができる。
【0048】
ここでビニル系重合体としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、HIPS、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、MABS樹脂、AAS樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、スチレンおよびブタジエンからなるブロック共重合体およびその水添共重合体、スチレンおよびイソプレンからなるブロック共重合体、およびその水添共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン−ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−ブチルアクリレート等のエチレン−不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、ブチルアクリレート−ブタジエン等のアクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、ポリアルキル(メタ)アクリレート等のゴム質重合体、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、さらにかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体等を挙げることができる。
【0049】
これらのなかでもb成分との相溶性の観点から、ポリスチレン、HIPS、ABS樹脂、AAS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリオルガノシロキサンおよびポリアルキル(メタ)アクリレートを含む複合ゴム、さらにかかる複合ゴムにスチレン、アクリロニトリル、ポリアルキルメタクリレート等のビニル系単量体をグラフトした共重合体が好ましく、さらに好ましくはb成分と同種の重合体を使用する場合である。
【0050】
かかる凝集混合物を調整するためには、平均粒子径0.01〜1μm、特に0.05〜0.5μmを有するb成分の水性エマルジョンを、平均粒子径0.05〜10μm、特に0.05〜1.0μmを有するポリテトラフルオロエチレンの水性エマルジョンと混合する。かかるポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合でポリテトラフルオロエチレンを重合させることにより得られる。なお、かかる乳化重合の際、ヘキサフルオロプロピレン等の他の共重合成分をポリテトラフルオロエチレン全体の10重量%以下で共重合させることも可能である。
【0051】
なお、かかる凝集混合物を得る際には、適当なポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンは通常40〜70重量%、特に50〜65重量%の固形分含量を有し、b成分であるスチレン系樹脂のエマルジョンは25〜60重量%、特に30〜45重量%の固形分を有するものが使用される。さらに凝集混合物中のポリテトラフルオロエチレンの割合は、凝集混合物に使用されるビニル系重合体との合計100重量%中、5〜40重量%、特に10〜30重量%のものが好ましく使用できる。上記のエマルジョンを混合後、撹拌混合し塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固させることにより分離回収する製造法を好ましく挙げることができる。他に撹拌した混合エマルジョンをスプレー乾燥、凍結乾燥等の方法により回収する方法も挙げることができる。
【0052】
また、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の形態は種々のものが使用可能であり、例えばポリテトラフルオロエチレン粒子の周りをビニル系重合体が取り囲んだ形態、ビニル系重合体の周りをポリテトラフルオロエチレンが取り囲んだ形態、1つの粒子に対して、数個の粒子が凝集した形態などを挙げることができる。
【0053】
さらに、凝集混合体のさらに外層に、同じまたは別の種類のビニル系単量体がグラフト重合したものも使用可能である。かかるビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸ドデシル、アクリロニトリル、アクリル酸−2−エチルヘキシルを好ましく挙げることができ、これらは単独でもまた共重合することも可能である。
【0054】
上記のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンのエマルジョンとビニル系重合体のエマルジョンとの凝集混合物の市販品としては、三菱レイヨン(株)よりメタブレン「A3000」を代表例として挙げることができ、本発明のe成分の好ましい形態として挙げることができる。
【0055】
本発明の樹脂組成物−Iは、特に低温の耐衝撃性を向上させる目的で、ゴム質重合体(f成分)を配合することができる。かかるゴム質重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体、ポリウレタン系エラストマーおよびポリエステル系エラストマーを挙げることができる。
樹脂組成物−Iにゴム質重合体(f成分)をさらに配合する場合、その割合は、a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、1〜10重量部が好ましく、2〜8重量部が特に好ましい。
【0056】
f成分としてのゴム質重合体としては、前記したように、(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体(f−1成分)、ポリウレタン系エラストマー(f−2成分)およびポリエステル系エラストマー(f−3成分)を代表例として挙げることができる。
【0057】
(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体(f−1成分)としては、炭素数2〜8のアルキル基を有するゴム状アルキル(メタ)アクリレート重合体およびジエン系ゴム状重合体との共重合体または混合物とのコアに、アルキル(メタ)アクリレートおよび任意に共重合可能なビニル単量体を重合したシェルが形成されたコア−シェル型の重合体、同様にした多段のコア−シェル型ポリマーも使用可能である。またコアとしてジエン系ゴム状重合体のみからなるものも使用可能である。かかる(メタ)アクリル酸エステルコア−シェルグラフト重合体として、呉羽化学工業(株)から商品名「HIA−15」、「HIA−28」として市販されている樹脂を挙げることができ、またコアとしてジエン系ゴム状重合体のみからなるものとしては、呉羽化学工業(株)から商品名「パラロイド EXL−2602」として市販されている樹脂を挙げることができる。
【0058】
さらにf−1成分としてポリオルガノシロキサン成分とポリ(メタ)アルキルアクリレート成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴムに、アルキル(メタ)アクリレートおよび任意に共重合可能なビニル単量体がグラフト重合した重合体(以下IPN型ポリマーという)も使用できる。かかるIPN型ポリマーとしては、三菱レイヨン(株)より「メタブレンS−2001」という商品名で市販されており、入手容易である。このf−1成分についてさらに詳細を後に説明することにする。
【0059】
ゴム質重合体(f成分)の他の例としてのポリウレタン系エラストマー(f−2成分)としては、有機ポリイソシアネート、ポリオール、および官能基を2ないし3個有しかつ分子量が50〜400の鎖延長剤の反応により得られるものであり、公知の各種熱可塑性ポリウレタンエラストマーが使用可能である。かかる熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、例えばクラレ(株)製「クラミロンU」(商品名)等容易に入手可能である。
【0060】
ゴム質重合体(f成分)のさらに他の例としてのポリエステル系エラストマー(f−3成分)としては、2官能性カルボン酸成分、アルキレングリコール成分、およびポリアルキレングリコール成分を重縮合して得られるものであり、公知の各種熱可塑性ポリエステルエラストマーの使用が可能である。かかる熱可塑性ポリエステルエラストマーとしては、例えば東洋紡績(株)製「ペルプレン」(商品名)、帝人(株)製「ヌーベラン」(商品名)等容易に入手可能なものである。
【0061】
本発明者の研究によれば、前述した樹脂組成物−Iについて、さらに物性の改良について研究を進めたところ、a成分、b成分、c成分およびd成分を必須成分とする樹脂組成物−Iに対して、さらにフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(e成分)および(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体(f−1成分)を特定割合配合させた組成物は、一層優れた特性を有していることが見出された。
【0062】
かくして本発明によれば、下記の樹脂組成物−IIが提供される。
(A)芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)40〜92重量%
(B)スチレン系樹脂(b成分)5〜40重量%
(C)リン酸エステル系難燃剤(c成分)3〜20重量%
(D)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.1〜30重量部のケイ酸塩充填剤(d成分)
(E)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.1〜2重量部のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(e成分)
および
(F)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、1〜10重量部の(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体(f−1成分)、
より実質的になる樹脂組成物であって、該樹脂組成物は、塩素原子に換算した塩素化合物の含有量が100ppm以下である、ポリカーボネート樹脂組成物−II。
【0063】
本発明の樹脂組成物−IIは、前述した樹脂組成物−Iに対して、e成分および特定のf成分をさらに必須成分としている点に特徴を有している。かくして樹脂組成物−IIにおいて、a成分、b成分、c成分およびd成分は、樹脂組成物−Iと実質的に同じものが同様の割合で使用される。またe成分は、前記樹脂組成物−Iの任意成分として説明した化合物が同じ割合で使用される。
樹脂組成物−IIにおいて、ゴム質重合体(f成分)の1種である(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体(f−1成分)を必須成分として使用する。このf−1成分は、a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り0.1〜10重量部使用され、好ましくは2〜8重量部使用される。
【0064】
次にf−1成分について詳細に説明する。
(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体(f−1成分)とは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルをコアまたはシェルの必須成分として含有するものをいう。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体のコアの形態としては、コア成分が1種の単量体の単独重合体からなるもの、2種以上の単量体の共重合体からなるもの、および2種以上の単独重合体および共重合体が相互に絡み合った構造、いわゆるIPN(Inter−Penetrating−Network)構造を有するものを挙げることができ、いずれの形態も使用可能である。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体中のコアの割合、すなわちゴム成分の割合は、30重量%以上であることが必要であり、好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上である。一方上限は95重量%以下であり、好ましくは90重量%以下、特に好ましくは85重量%以下である。このコアの割合以外の部分がシェルを構成する。
【0067】
またかかるコアの平均粒子径は、0.08〜0.6μmの範囲にあることが好ましい。平均粒子径が0.08μm未満では耐衝撃性の改良が不十分であり、0.6μmを超える場合には成形品表面の外観を悪化させる。
一方(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体のシェルの形態としては、1種の単量体の単独重合体がグラフト重合したもの、2種以上の単量体を同時にグラフト共重合したものの他、1種または2種以上の単量体のグラフト重合を多段階に分けて行う多段グラフトによるものを挙げることができ、いずれの形態も使用可能である。
【0068】
f−1成分としての(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体は、コアおよびシェルについて上記のいずれの形態についても、それぞれ組合せることが可能である。
かかるコアには、アクリルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、エピクロルヒドリンゴム等を使用することができる。かかるゴム成分の中でもブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴムが耐衝撃性の面で好ましく、特にブタジエンゴムが好ましい。
【0069】
さらにアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、エチレン、プロピレン、α−オレフィン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよびスチレンから1種以上の単量体との共重合体ゴムをコアとして使用することができる。この共重合体ゴムは耐衝撃性、難燃性、耐湿熱性等をより良好にバランスできる点で好ましく使用でき、またかかる観点からかかる共重合体ゴム成分の中でもアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルとブタジエン、イソプレン、イソブチレン、エチレン、プロピレン、α−オレフィン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンおよびスチレンから1種以上の単量体との共重合体ゴムが好ましく、中でもアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルとブタジエンおよび/またはイソプレンとの共重合体が好ましく、特に好ましくはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルとブタジエンとの共重合体である。
【0070】
またシリコンゴム成分と、アクリルゴム成分、ブタジエンゴム成分、イソプレンゴム成分、イソブチレンゴム成分、エチレン−プロピレン−ジエンゴム成分、およびこれら各成分の共重合成分から選択されるいずれかのゴム成分が相互に分離できないよう相互に絡み合った構造のIPNゴムを使用することができる。かかるIPNゴムは、シリコンゴム成分を含有することにより難燃性に優れるとともに他のゴム成分との絡み合い構造により耐衝撃性等にも優れるものである。かかるIPNゴムの中でも、シリコンゴム成分とアクリルゴム成分および/またはイソブチレンゴム成分とからなるIPNゴムが好ましく、より好ましくはシリコンゴム成分とアクリルゴム成分とが分離できないよう相互に絡み合った構造のIPNゴムである。
【0071】
一方、シェルを形成する単量体成分としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上、およびこれらと共重合可能な他の単量体を使用することができる。ここで共重合可能な他の単量体としては、無水マレイン酸、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N―シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。
【0072】
f−1成分の(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体のコアにおけるアクリルゴム、共重合体ゴム、IPNゴムに使用されるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、炭素数2〜12のアルキル基を有するものが好ましい。具体的には、アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等を挙げることができ、中でもn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートを好ましく挙げることができる。またメタクリル酸エステルとしては、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等を挙げることができる。
【0073】
f−1成分の(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体のコアにおけるシリコンゴム、IPNゴムに使用されるオルガノシロキサンとしては、3員環以上の各種の環状体が挙げられ、好ましく用いられるのは3〜6員環である。例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサンおよびオクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0074】
f−1成分の(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体のシェルにおけるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとしては、炭素数1〜8のアルキル基を有するものが好ましい。具体的には、アクリル酸エステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等を挙げることができ、またメタクリル酸エステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等を挙げることができる。これらの中でもメチルメタクリレートがより好ましい。
【0075】
f−1成分の(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体のシェルにおける芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等を挙げることができ、中でもスチレンが好ましい。またシアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルを挙げることができ、中でもアクリロニトリルが好ましい。
【0076】
f−1成分の(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体には、そのコアやシェルに架橋性モノマーやグラフト交叉剤を使用することも可能であり、特に共役ジエン系の成分を含有しない場合にはより好ましく使用されるものである。
【0077】
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルに対応する架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート等を挙げることができ、なかでもアリルメタクリレート 、エチレングリコールジメタクリレートが好ましい。
アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルに対応するグラフト交叉剤としては、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0078】
またオルガノシロキサンに対応する架橋性モノマーとしては、3官能性または4官能性のシラン系化合物、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシランおよびテトラブトキシシラン等が用いられる。特に4官能性の架橋性モノマーが好ましく、この中でもテトラエトキシシランが特に好ましい。
オルガノシロキサンに対応するグラフト交叉剤としては、下記式(2)、式(3)および式(4)で表される単位を形成しうる化合物が使用される。
【0079】
【化5】
(各式中R1はメチル基、エチル基、プロピル基またはフェニル基、R2は水素原子またはメチル基、nは0、1または2、pは1〜6の数を示す。)
【0080】
式(2)の単位を形成し得るアクリロイルオキシシロキサンまたメタクリロイルオキシシロキサンはグラフト効率が高いため有効なグラフト鎖を形成することが可能であり耐衝撃性発現の点で有利である。なお式(2)の単位を形成し得るものとしてメタクリロイルオキシシロキサンが特に好ましい。メタクリロイルオキシシロキサンの具体例としてはβ−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシランおよびδ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシランを挙げることができる。
前記したf−1成分としての(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体のうち、下記のグラフト共重合体がより一層好ましい。
【0081】
好ましいグラフト共重合体
コアとして(i)ブタジエン60〜100重量%およびスチレン0〜40重量%の合計100重量%からなるゴム、(ii)アクリル酸エステル60〜90重量%およびブタジエン10〜40重量%の合計100重量%からなる共重合体ゴム、または(iii)オルガノシロキサン重合体成分5〜95重量%とアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルからなる重合体成分5〜95重量%とが分離できないよう相互に絡み合った構造を有し、その合計が100重量%である複合ゴムのいずれかのゴム40〜90重量%、およびシェルとしてアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上の単量体からなる重合体もしくは共重合体10〜60重量%からなる(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体。
前記“好ましいグラフト共重合体”において、下記のグラフト共重合体(1)〜(3)は、特に好ましい態様である。
【0082】
グラフト共重合体(1)
コアとして(i)ブタジエン60〜100重量%およびスチレン0〜40重量%の合計100重量%からなるゴム40〜90重量%、およびシェルとしてメタクリル酸エステルを必須成分とし、さらに必要に応じて芳香族ビニル化合物、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上の単量体10〜60重量%を塊状重合、懸濁重合、塊状懸濁重合、溶液重合あるいは乳化重合等の方法、特に乳化重合の方法でグラフト重合した共重合体(以下「グラフト共重合体(1)」と称することがある)。
【0083】
グラフト共重合体(1)のコアの割合は、60〜85重量%がより好ましく、さらに好ましくは65〜80重量%である。かかるコアの割合が60〜85重量%の場合には、耐衝撃性の向上と難燃性のより良好な両立が可能となる。コアとしてはブタジエンゴムがより好ましい。
【0084】
またシェルとしては、メタクリル酸エステル30〜100重量%および芳香族ビニル化合物および/またはアクリル酸エステル0〜70重量%の合計100重量%からなる重合体もしくは共重合体が好ましく、メタクリル酸エステルとしてはメチルメタクリレートが好ましい。特に好ましくはメチルメタクリレート60〜100重量%、エチルアクリレート等のアクリル酸エステル10〜40重量%からなる重合体もしくは共重合体である。
【0085】
したがってグラフト共重合体(1)として特に好ましくは、かかる共重合体の全量100重量%中、コアとしてブタジエンゴム65〜80重量%、およびシェルとしてかかるシェルの全量100重量%中メチルメタクリレート60〜100重量%およびエチルアクリレート等のアクリル酸エステル0〜40重量%からなる重合体もしくは共重合体20〜35重量%からなるグラフト共重合体である。
【0086】
かかるグラフト共重合体(1)は、耐衝撃性の改質効果の高いブタジエンゴム成分をコアの主体とするため、耐衝撃性の改良に有利である。したがって耐衝撃性がやや低下しやすい縮合リン酸エステルを使用する場合に、すなわち前記式(1)において、nが平均値として0でない場合、好ましくはnが0.5〜3の場合に併用することが好ましい。
【0087】
グラフト共重合体(2)
アクリル酸エステル60〜90重量%およびブタジエン10〜40重量%の合計100重量%からなる共重合体ゴム40〜90重量%に対して、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上を1段または2段以上のグラフト重合によりグラフトさせてなるシェル10〜60重量%からなり、かかるコアとシェルの合計100重量%からなる共重合体(以下「グラフト共重合体(2)」と称することがある)。
より好ましくはコアが50〜75重量%およびシェルが25〜50重量%からなるものであり、さらに好ましくはコアが50〜70重量%およびシェルが30〜50重量%からなるものである。
【0088】
またコア中のアクリル酸エステルとブタジエンとの割合は、かかるコアの全量100重量%中、アクリル酸エステル60〜80重量%およびブタジエン20〜40重量%がより好ましい。なお、かかるコアには、コア全量100重量%中、20重量%以下の範囲で、他の共重合可能な単量体、好ましくはメタクリル酸エステル、芳香族ビニルを共重合することも可能である。
【0089】
かかるグラフト共重合体(2)は耐候性、難燃性の良好なアクリル酸エステル成分と、耐衝撃性に優れるブタジエン成分とをバランスよくコアに含有するため、難燃性、耐衝撃性、耐候性および着色性等の特性バランスに優れた樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0090】
グラフト共重合体(2)のコアに使用されるアクリル酸エステルとしてはn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられ、特に2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。またシェルに使用されるメタクリル酸エステルとしては、特にメチルメタクリレートが好ましい。
さらにグラフト共重合体(2)のコアの平均粒径としはて0.08〜0.25μmがより好ましく、特に好ましくは0.13〜0.20μmである。
【0091】
グラフト共重合体(2)におけるシェルは、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、メタクリル酸エステル、およびアクリル酸エステルから選択される1種または2種以上からなる重合体もしくは共重合体であるが、特に上記コアの各種特性に優れた点を生かすため芳香族ビニル化合物およびメタクリル酸エステルを含むものが好ましく、特にメタクリル酸エステルを含んでいることが好ましい。
【0092】
ここでグラフト共重合体(2)のシェルにおける各単量体の割合としては、該シェルの全量100重量%中メタクリル酸エステルが45〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは55〜70重量%である。したがって芳香族ビニル化合物およびその他の成分は20〜55重量%が好ましく、より好ましくは30〜45重量%である。さらにシアン化ビニル化合物またはアクリル酸エステルを含有する場合には、これらの割合は芳香族ビニル化合物との合計100重量%中20〜35重量%が好ましく、さらに好ましくは22〜30重量%である。またかかるその他の成分としてはシアン化ビニル化合物がより好ましい。
【0093】
さらに本発明のグラフト共重合体(2)のシェルとしては、該グラフト共重合体のシェルが2段のグラフト重合からなり、第1段のグラフト成分が芳香族ビニル化合物およびメタクリル酸エステルの混合物、または芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物およびメタクリル酸エステルの混合物のいずれかからなるものであり、さらに第2段のグラフト成分がメタクリル酸エステルからなるものであって、かつシェル成分の合計100重量%中第1段のグラフト成分が40〜75重量%および第2段のグラフト成分が25〜60重量%であるものが好ましく使用できる。さらに第1段のグラフト成分が42〜70重量%および第2段のグラフト成分が30〜58重量%であるものがより好ましい。
【0094】
さらに本発明のグラフト共重合体(2)は、該共重合体のコアおよび各段階のシェルを重合する際、架橋性モノマーおよび必要に応じてグラフト交叉剤を使用することもできる。これらの割合としては、コアの重合に対しては、コアの重合に使用する単量体の合計量100重量%中0.01〜3重量%、各段階のシェルの重合においては各段階の単量体の合計100重量%中0.01〜2重量%である。
さらにグラフト共重合体(2)は、本発明の樹脂組成物の製造時の分散不良を解消する目的で、耐ブロッキング性改良の処理を施したものも使用でき、かかる処理方法としは公知の手法を取ることができる。
【0095】
かかる方法としては、グラフト共重合体のラテックスを噴霧乾燥し、粉末を球状化する方法、共重合体ラテックスの塩析条件を調整する方法および滑剤などの添加剤を添加する方法が挙げられる。また弾性幹重合体5〜49重量%に硬質重合体を形成する単量体51〜95重量%をグラフト重合することにより得られた粉体特性改良グラフト共重合体0.1〜25重量部をスラリー状態にてグラフト共重合体(2)100重量部に配合する方法も挙げられる。ここで弾性幹重合体とはグラフト共重合体(2)のコアに使用される単量体の重合体または共重合体をいい、硬質重合体を形成する単量体とはグラフト共重合体(2)のシェルに使用される単量体をいう。
【0096】
あるいは、硬質非弾性重合体のエマルジョンを凝固させたグラフト共重合体(2)のスラリーに加える方法も挙げられる。ここで硬質非弾性重合体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、およびメタクリル酸エステルから選択される1種以上の単量体から重合されたものであり、特にメチルメタクリレートが80重量%以上であるものが好ましい。
【0097】
以上の耐ブロッキング性の改良処理の中でも、粉体特性改良グラフト共重合体または硬質非弾性重合体をスラリー状態のグラフト共重合体(2)に配合する方法が、簡便かつ効果的に耐ブロッキング性を達成できる点で好ましい。なお、粉体特性改良グラフト共重合体あるいは、硬質非弾性重合体の添加による耐ブロッキング性改良の方法は、本発明のグラフト共重合体(2)における各成分量の範囲内で行われる。
【0098】
特に好ましいグラフト共重合体(2)としては、コアとシェルの合計が100重量%中、アクリル酸エステル60〜80重量%およびブタジエン20〜40重量%の合計100重量%を含有するゴムラテックスからなるコア50〜70重量%に対して、芳香族ビニル化合物およびメタクリル酸エステル、および必要に応じてシアン化ビニル化合物からなる混合物を、2段グラフト重合によりグラフトさせてなるシェル30〜50重量%からなり、かかるシェル100重量%中メタクリル酸エステルが55〜70重量%であり、さらにシアン化ビニル化合物を含む場合にはかかるシアン化ビニル化合物が芳香族ビニル化合物との合計100重量%中22〜30重量%であり、第1グラフト成分が芳香族ビニル化合物およびメタクリル酸エステルの混合物、または芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物およびメタクリル酸エステルの混合物のいずれかからなるものであり、さらに第2グラフト成分がメタクリル酸エステルからなるものであって、かつシェル成分の合計100重量%中、第1グラフト成分が42〜70重量%および第2グラフト成分が30〜58重量%であるものが挙げられる。このグラフト共重合体(2)の具体例としては呉羽化学工業(株)から商品名「HIA−15」、「HIA−28」、「HIA−28S」として市販されている樹脂を挙げることができる。
【0099】
グラフト共重合体(3)
オルガノシロキサン重合体成分5〜95重量%とアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルからなる重合体成分5〜95重量%とが分離できないよう相互に絡み合った構造を有し、その合計が100重量%である複合ゴム40〜90重量%のコア、およびアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上の単量体からなる重合体もしくは共重合体10〜60重量%のシェルからなるグラフト共重合体(以下「グラフト共重合体(3)」と称することがある)。
【0100】
コア中におけるオルガノシロキサン重合体成分とアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル重合体成分との好ましい割合は、これらの合計100重量%中、オルガノシロキサン重合体成分が5〜70重量%、より好ましくは6〜60重量%、さらに好ましくは7〜50重量%であり、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが好ましくは30〜95重量%、より好ましくは40〜94重量%、さらに好ましくは50〜93重量%である。
【0101】
またグラフト共重合体(3)中におけるコアとなる複合ゴムの割合は、かかる共重合体の全量100重量%中60〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは60〜85重量%である。60〜90重量%の場合には、耐衝撃性の向上と難燃性のより良好な両立が可能となる。
また複合ゴムの平均粒子径は0.08〜0.6μm、より好ましくは0.1〜0.4μmである。
【0102】
かかるグラフト共重合体(3)の複合ゴムを製造するためには、乳化重合法が最適であり、まずオルガノシロキサン重合体ラテックスを調整し、次にアクリル酸エステル単量体および/またはメタクリル酸エステル単量体を、オルガノシロキサン重合体ラテックスのゴム粒子に含浸させてからかかる単量体を重合することが好ましい。
【0103】
上記複合ゴムを構成するオルガノシロキサン重合体成分は、以下に示すオルガノシロキサン、および前記のオルガノシロキサンに対応する架橋性モノマーを用いて乳化重合により調整することができ、その際さらに前記のオルガノシロキサンに対応するグラフト交叉剤を併用することもできる。
オルガノシロキサンとしては、3員環以上の各種の環状体が挙げられ、好ましく用いられるのは3〜6員環である。例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。これらの使用量はポリオルガノシロキサンゴム成分中50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。
【0104】
架橋性モノマーとしては特に4官能性のものが好ましく、中でもテトラエトキシシランが特に好ましい。グラフト共重合体(3)中の複合ゴムのオルガノシロキサン重合体成分における架橋性モノマーの使用量はオルガノシロキサン重合体成分100重量%中、0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。またグラフト交叉剤としては前記したものが使用可能であるが、その使用量はオルガノシロキサン重合体成分中0〜10重量%である。
【0105】
かかるオルガノシロキサン重合体ラテックスの製造は、例えば米国特許第2891920号明細書、同第3294725号明細書等に記載された方法を用いることができる。例えば、オルガノシロキサンと対応する架橋性モノマーおよび所望により対応するグラフト交叉剤の混合溶液とを、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸等のスルホン酸系乳化剤の存在下で、例えばホモジナイザー等を用いて水と剪断混合する方法により製造することが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸はオルガノシロキサンの乳化剤として作用すると同時に重合開始剤ともなるので好適である。この際、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸金属塩等を併用するとグラフト重合を行う際にポリマーを安定に維持するのに効果があるので好ましい。
【0106】
次に複合ゴムを構成するアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルからなる重合体を製造するには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液の添加により中和された前記オルガノシロキサン重合体ラテックス中へ、前記のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル、架橋性モノマー、およびグラフト交叉剤を添加し、オルガノシロキサン重合体ゴム粒子へ含浸させたのち、通常のラジカル重合開始剤を作用させて行う。なお、ここでアクリル酸エステル等に対応する架橋性モノマーおよびグラフト交叉剤の合計の使用量としてはアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルからなる重合体100重量%中0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0107】
重合の進行とともにオルガノシロキサン重合体ゴムの架橋網目に相互に絡んだアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルからなる重合体の架橋網目が形成され、実質上分離できないオルガノシロキサン重合体とアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルからなる重合体との複合ゴムのラテックスが得られる。
【0108】
なおこの複合ゴムとしてオルガノシロキサン重合体の主骨格がジメチルシロキサンの繰り返し単位を有し、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルからなる重合体の主骨格がn−ブチルアクリレートの繰り返し単位を有する複合ゴムが好ましく用いられる。
【0109】
このようにして乳化重合により調製された複合ゴムは、ビニル系単量体とグラフト共重合可能であり、またオルガノシロキサン重合体成分とアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルからなる重合体成分とは強固に絡み合っているためアセトン、トルエン等の通常の有機溶剤では抽出分離出来ない。この複合ゴムをトルエンにより90℃で12時間抽出して測定したゲル含量は80重量%以上である。
かかる複合ゴムにグラフト重合させるビニル系単量体としては、前記の芳香族ビニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上組合せて用いられる。
【0110】
グラフト共重合体(3)は、上記ビニル系単量体を複合ゴムのラテックスに加えラジカル重合技術によって1段で、あるいは多段で重合させて得られるラテックスを、塩化カルシウムまたは硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固することにより分離、回収することができる。
【0111】
好ましいグラフト共重合体(3)としては、コアとしてオルガノシロキサン重合体成分7〜50重量%とアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル50〜93重量%とが分離できないよう相互に絡み合った構造を有し、その合計が100重量%である複合ゴム60〜85重量%、シェルとしてアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上の単量体からなる重合体もしくは共重合体15〜40重量%の合計100重量%からなるものである。
【0112】
本発明のf−1成分としての(メタ)アクリル系コア−シェルグラフト重合体は、該グラフト重合体とシェル成分を構成するメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上の単量体70〜100重量%と、これと共重合可能な他の単量体0〜30重量%とを重合してなる重合体または共重合体との混合物であってもよい。かかる重合体および共重合体成分は、グラフト重合の過程で生じる遊離の重合体および/または共重合体として含まれるものの他、別途混合されるものであってもよい。
【0113】
前述した好ましいグラフト共重合体およびグラフト共重合体(1)〜(3)のうち、グラフト共重合体(2)は他のグラフト共重合体に比較して難燃効果および着色性の両面が優れている。その難燃効果および着色性は、c成分のリン酸エステル系難燃剤の配合割合が比較的少ない場合に一層顕著である。
【0114】
本発明の樹脂組成物上記各成分をタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混錬ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。さらに、本発明の目的を損わない範囲でポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル等の他の熱可塑性樹脂が混合されていてもよく、またポリオルガノシロキサン系難燃剤の配合も可能である。
【0115】
さらに本発明の目的を損わない範囲であれば、安定剤(例えば、リン酸エステル、亜リン酸エステル等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系化合物等)、光安定剤(例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾフェノン系化合物)、着色剤、発泡剤、帯電防止剤等の一般に微量配合される各種の添加剤を配合することも可能であり、これらは単独の他、各種樹脂のマスターペレット形状で配合することも可能である。
【0116】
熱安定剤としては、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定剤として公知の亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等の亜リン酸エステル化合物、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート等のリン酸エステル化合物、さらにその他のリン系熱安定剤として、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−ビフェニレンジホスホナイト等の亜ホスホン酸エステル化合物等を挙げることができる。これらのうち、トリスノニルフェニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトが好ましい。これらの熱安定剤は、単独でもしくは2種以上混合して用いてもよい。
【0117】
本発明の熱安定剤としては、上記以外に一般に酸化防止剤として知られるヒンダードフェノール系の化合物やイオウ系の化合物を配合することも好ましく行われる。かかる化合物は特にスチレン系樹脂の熱安定性を保持し、該樹脂の熱分解を抑制する点で好ましいものである。かかる化合物として具体的には、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−tert−アミル−6−[1−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート等、およびペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート等を挙げることができる。
【0118】
かくして得られる樹脂組成物は押出成形、射出成形、圧縮成形等の方法で容易に成形可能であり、特に射出成形に好適である。またブロー成形、真空成形等にも適用できる。特にUL94V−0が要求される電気電子部品、OAの外装用途等の材料として最適である。
【0119】
ことに、本発明のポリカーボネート樹脂組成物から形成された成形品は、リン酸エステル系難燃剤を使用し、UL規格94Vによる燃焼試験に基づいてV−0の判定を達成するものである。加えて良好な耐湿熱性を有し、その上製品の長期間における耐衝撃性の低下も極めて少ない成形品を得ることが可能となる。より具体的には、リン酸エステル系難燃剤を使用し、V−0の判定を達成し、さらに65℃の温度および85%の相対湿度の環境下で500時間保存した時の耐衝撃値保持率が50%以上であり、見掛けの分子量保持率が80%以上である成形品を達成するものである。特に65℃の温度および85%の相対湿度の環境下で1,000時間保存した時の耐衝撃値保持率が50%以上であり、見掛けの分子量保持率が80%以上である成形品を得ることも可能であり、耐湿熱性が要求されたり、製品の長期の寿命が求められる電気電子部品、OAの外装用途等の材料として最適である。
【0120】
【実施例】
以下に実施例をあげて本発明をさらに説明する。なお実施例中の部は重量部であり、評価は下記の方法によった。
【0121】
(1)耐湿熱性−1:1/8”アイゾット衝撃用試験片をノッチ切削処理後環境試験機(タバイエスペック(株)製プラチナスサブゼロルシファー)で65℃、85%RHの条件下で500時間処理した後、ASTM D256に従ってアイゾットノッチ付き耐衝撃値を測定し、湿熱処理前のアイゾットノッチ付き耐衝撃値との比較を行った。なお、保持率は湿熱処理前の値に対する湿熱処理後の値の割合を%で表している。
【0122】
(2)耐湿熱性−2:(1)の湿熱処理後の試験片につき、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を測定するのと同一の手法で見掛けの粘度平均分子量を測定した。すなわち、試験片を塩化メチレンに溶解した後、不溶分をろ過により取り除いて溶液として得られたものの比粘度を、本文記載のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量測定と同様に測定し、さらに同一の算出式を用いて見掛けの粘度平均分子量の値を算出した。なお、保持率は湿熱処理前の値に対する湿熱処理後の値の割合を%で表している。
【0123】
(3)難燃性:UL規格94Vに従い厚み1.6mmにおける燃焼試験を実施した。
(4)耐衝撃性:ASTM D256に従い、アイゾットノッチ付き耐衝撃値を測定した。
【0124】
I.構成成分の説明
I−(1) a成分(ポリカーボネート樹脂)
参考例1(ポリカーボネート樹脂PC−1の製造)
ポリカーボネートの有機溶媒供給口、温水供給口、水蒸気導入口、気化有機溶媒の排気口およびオーバーフロー型排出口を備えた有効内容積500L水平軸回転型混合機の二軸式の容器に、撹拌羽根としてリボン型形状を有する撹拌機を装着した。その容器に平均粒径7mmのポリカーボネート樹脂粉粒体を50gおよび水250gを仕込み、撹拌速度が80rpmで撹拌しながら、容器内の温度が77℃になったところで、平均分子量が22,000であるポリカーボネート樹脂16重量%濃度の塩化メチレン溶液を10kg/分の速度で供給し、また温水を10kg/分の速度で供給した。供給中、容器内の温水量/ポリカーボネート樹脂粉粒体(容量比)は約5に保持され、また、容器内の温度は、圧力2.7kg/cm2の蒸気を使用して水蒸気導入口とジャケットの加熱により77℃に保持した。また、撹拌能力は6kw/hr・m3であった。供給開始後、容器内のスラリーのレベルが上昇し、容器内の上部に設けられた排出口より、生成されたポリカーボネート樹脂粉粒体と温水が排出された。この際、ポリカーボネート樹脂粉粒体の滞留時間は1時間であった。
【0125】
次に、粉粒体が排出され粉粒体の性状が安定してからサンプル採取した。排出口より排出されたポリカーボネート樹脂粉粒体と温水は、次いで縦型遠心分離機(コクサン製)によって1,500Gの遠心力で遠心分離し、ポリカーボネート樹脂粉粒体をろ過分離した。分離したポリカーボネート樹脂粉粒体を粉砕機により平均粒径2mmに粉砕し、熱風乾燥機により、140℃、4時間の乾燥を行った。これより得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は22,000、嵩密度は0.3g/cm3、塩素原子量は5ppmであった。ここで得られたポリカーボネート樹脂をPC−1と称する。
【0126】
参考例2(ポリカーボネート樹脂PC−2の製造)
参考例1で示した製造方法と、容器内の温度を70℃とする以外は参考例1と同様にして製造を実施した。これより得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は22,000、嵩密度は0.4g/cm3、塩素原子量は50ppmであった。ここで得られたポリカーボネート樹脂をPC−2と称する。
【0127】
参考例3(ポリカーボネート樹脂PC−3の製造)
参考例1で示した製造方法と、容器内の温度を50℃とする以外は参考例1と同様にして製造を実施した。これより得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は22,000、嵩密度は0.65g/cm3、塩素原子量は370ppmであった。ここで得られたポリカーボネート樹脂をPC−3と称する。
【0128】
I−(2) b成分(スチレン系樹脂)
参考例4(ABS−1の調製)
塊状重合法により重合した後、多管式熱交換器と減圧室よりなる分離回収装置よりポリマーを得、その後多段ベント型二軸押出機より粒状ペレット化したABS樹脂。かかるABS樹脂の組成はアクリロニトリル15重量%、ブタジエン20重量%、スチレン65重量%であり、遊離のアクリロニトリル−スチレン重合体の重量平均分子量が90,000(GPCによる標準ポリスチレン換算)、グラフト率55%、電子顕微鏡観察により求められる平均ゴム粒径が0.80μm、およびABS樹脂をクロロホルムに溶解し、液体クロマトグラフィーにより測定された残留アクリロニトリルモノマー量が250ppmであった。
このABS樹脂をABS−1と称する。
【0129】
参考例5(ABS−2の調製)
前記参考例4で得られたABS−1を、攪拌羽根を備えたステンレス容器内に投入し、さらにその7倍量(重量比)のメタノールを加えて、1時間撹拌洗浄した。その後60℃、12時間真空乾燥を行った。かかるABS樹脂中の残量アクリロニトリルモノマー量は80ppmであった。
このABS樹脂をABS−2と称する。
【0130】
参考例6(ABS−3の調製)
前記参考例4で得られたABS−1をABS−2と同様の手法で、メタノールでの2時間の洗浄を、3回繰返し、その後60℃、12時間真空乾燥を行った。かかるABS樹脂中の残量アクリロニトリルモノマー量は20ppmであった。
このABS樹脂をABS−3と称する。
【0131】
参考例7(ABS−4の調製)
ポリブタジエンラテックス10重量部(固形分)、スチレン34.8重量部、アクリロニトリル5.2重量部の割合で乳化グラフト重合を行った。得られたグラフト共重合体は希硫酸で凝固し、洗浄・ろ過後60℃、12時間真空乾燥を行った。かかるABS樹脂の組成はスチレン69.5重量%、ブタジエン20重量%、アクリロニトリル10.5重量%であり、遊離のアクリロニトリル−スチレン重合体の重量平均分子量が120,000(GPCによる標準ポリスチレン換算)、グラフト率50%、電子顕微鏡観察により求められる平均ゴム粒径が0.40μm、および液体クロマトグラフィーにより測定された残留アクリロニトリルモノマー量が50ppmであった。
このABS樹脂をABS−4と称する。
【0132】
I−(3) c成分(リン酸エステル系難燃剤)
FR−1:トリフェニルホスフェート(大八化学工業(株)製TPP)
FR−2:レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)(旭電化工業(株)製アデカスタブFP−500)
【0133】
I−(4) d成分(ケイ酸塩充填剤)
タルク−1:タルク(日本タルク(株)製タルクP−3、平均粒子径約3μm)タルク−2:タルク(林化成(株)製HST0.8、平均粒子径約5μm)
WSN−1:ワラストナイト(キンセイマテック(株)製WIC10、平均繊維径4.5μm、アスペクト比L/D=8)
WSN−2:ワラストナイト(巴工業(株)製サイカテックNN−4、平均繊維径1.5μm、アスペクト比L/D=20)
マイカ:マイカ粉((株)山口雲母工業所製A−41、平均粒子径約40μm)(d成分以外の充填剤)
CF:炭素繊維(東邦レーヨン(株)製ベスファイト HTA−C6−U、PAN系、ウレタン集束、径7μm)
【0134】
I−(5) e成分(ポリテトラフルオロエチレン)
PTFE:ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン工業(株)製F−201L)
【0135】
I−(6) f成分(ゴム質重合体)
ゴム−1:メタクリル酸メチル・アクリル酸2−エチルヘキシル・ブタジエン・スチレン多段グラフト共重合体(スチレン含有量:15重量%)(呉羽化学工業(株)製HIA−15)
ゴム−2:ブタジエン系衝撃改質剤(呉羽化学工業(株)製EXL2602)
ゴム−3:アクリル−シリコン系衝撃改質剤(三菱レイヨン(株)S−2001)
【0136】
実施例1,2,4〜16および比較例1〜5
下記表1および表2に記載の各成分およびその量に基づいてV型ブレンダーで混合した後、径30mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30XSST)によりシリンダー温度240℃でペレット化した。このペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機(FANUC(株)製T−150D)でシリンダー温度250℃、金型温度70℃で各種試験片を作成し評価した。評価結果を表1および表2に示した。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
【表4】
Claims (39)
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)40〜92重量%
(B)スチレン系樹脂(b成分)5〜40重量%
(C)リン酸エステル系難燃剤(c成分)3〜20重量%
および
(D)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.1〜30重量部のケイ酸塩充填剤(d成分)
より実質的になる樹脂組成物であり、b成分は、塊状重合法により得られ、アクリロニトリルをモノマー構成単位として含有するスチレン系樹脂であり、該樹脂組成物は、アクリロニトルモノマーの含有量が50ppm以下であり、塩素原子量に換算した塩素化合物の含有量が100ppm以下である、ポリカーボネート樹脂組成物。 - 該a成分は、界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、アクリロニトルモノマーの含有量が100ppm以下である請求項1記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、全モノマー構成単位中、スチレン系モノマー単位が20重量%以上のスチレン系樹脂である請求項1記載の樹脂組成物。
- 該スチレン系モノマー単位が、スチレン単位、α−メチルスチレン単位またはビニルトルエン単位である請求項4記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)である請求項1記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、塊状重合法により得られたスチレン系樹脂を洗浄したものである請求項1記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、塊状重合法により得られたアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)である請求項1記載の樹脂組成物。
- 該d成分は、SiO2成分を35重量%以上含有するケイ酸塩充填剤である請求項1記載の樹脂組成物。
- 該d成分は、タルク、マイカまたはワラストナイトである請求項1記載の樹脂組成物。
- a成分が50〜88重量%、b成分が7〜35重量%、c成分が5〜15重量%およびd成分がa成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.5〜20重量部より実質的になる請求項1記載の樹脂組成物。
- 塩素化合物の含有量が塩素原子に換算して樹脂組成物当り90ppm以下である請求項1記載の樹脂組成物。
- アクリロニトリルモノマーの含有量が、樹脂組成物当り40ppm以下である請求項1記載の樹脂組成物。
- さらに、フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(e成分)を、a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.1〜2重量部含有する請求項1記載の樹脂組成物。
- さらに、ゴム質重合体(f成分)を、a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、1〜10重量部含有する請求項1記載の樹脂組成物。
- 該ゴム質重合体(f成分)が、(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体、ポリウレタン系エラストマーまたはポリエステル系エラストマーである請求項16記載の樹脂組成物。
- 該ゴム質重合体(f成分)が、(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体である請求項16記載の樹脂組成物。
- (A)芳香族ポリカーボネート樹脂(a成分)40〜92重量%
(B)スチレン系樹脂(b成分)5〜40重量%
(C)リン酸エステル系難燃剤(c成分)3〜20重量%
(D)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.1〜30重量部のケイ酸塩充填剤(d成分)
(E)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、0.1〜2重量部のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(e成分)および
(F)a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、1〜10重量部の(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体(f−1成分)、
より実質的になる樹脂組成物であり、b成分は、塊状重合法により得られ、アクリロニトリルをモノマー構成単位として含有するスチレン系樹脂であり、該樹脂組成物は、アクリロニトルモノマーの含有量が50ppm以下であり、塩素原子に換算した塩素化合物の含有量が100ppm以下である、ポリカーボネート樹脂組成物。 - 該a成分は、界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項19記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、アクリロニトルモノマーの含有量が100ppm以下である請求項19記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、全モノマー構成単位中、スチレン系モノマー単位が20重量%以上のスチレン系樹脂である請求項19記載の樹脂組成物。
- 該スチレン系モノマー単位が、スチレン単位、α−メチルスチレン単位またはビニルトルエン単位である請求項22記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)である請求項19記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、塊状重合法により得られたスチレン系樹脂を洗浄したものである請求項19記載の樹脂組成物。
- 該b成分は、塊状重合法により得られたアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)である請求項19記載の樹脂組成物。
- 該d成分は、SiO2成分を35重量%以上含有するケイ酸塩充填剤である請求項19記載の樹脂組成物。
- 該d成分は、タルク、マイカまたはワラストナイトである請求項19記載の樹脂組成物。
- f−1成分が、(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体であり、コアとして(i)ブタジエン60〜100重量%およびスチレン0〜40重量%の合計100重量%からなるゴム、(ii)アクリル酸エステル60〜90重量%およびブタジエン10〜40重量%の合計100重量%からなる共重合体ゴム、または(iii)オルガノシロキサン重合体成分5〜95重量%とアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルからなる重合体成分5〜95重量%とが分離できないよう相互に絡み合った構造を有し、その合計が100重量%である複合ゴムの中から選択されるいずれかのゴム40〜90重量%、およびシェルとしてアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上の単量体からなる重合体もしくは共重合体10〜60重量%からなる請求項19に記載の樹脂組成物。
- f−1成分が、(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体であり、アクリル酸エステル60〜90重量%およびブタジエン10〜40重量%の合計100重量%からなる共重合体ゴム40〜90重量%からなるコアに対して、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上を1段または2段以上のグラフト重合によりグラフトさせてなるシェル10〜60重量%からなり、かかるコアとシェルの合計100重量%からなる請求項19に記載の樹脂組成物。
- f−1成分が(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体であり、コアとシェルの合計が100重量%中、アクリル酸エステル60〜80重量%およびブタジエン20〜40重量%の合計100重量%を含有するゴムラテックスからなるコア50〜70重量%に対して、芳香族ビニル化合物およびメタクリル酸エステル、および必要に応じてシアン化ビニル化合物からなる混合物を、2段グラフト重合によりグラフトさせてなるシェル30〜50重量%からなり、かかるシェル100重量%中メタクリル酸エステルが55〜70重量%であり、さらにシアン化ビニル化合物を含む場合にはかかるシアン化ビニル化合物が芳香族ビニル化合物との合計100重量%中22〜30重量%であり、第1グラフト成分が芳香族ビニル化合物およびメタクリル酸エステルの混合物、または芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物およびメタクリル酸エステルの混合物のいずれかからなるものであり、さらに第2グラフト成分がメタクリル酸エステルからなるものであって、かつシェル成分の合計100重量%中、第1グラフト成分が42〜70重量%および第2グラフト成分が30〜58重量%である請求項19に記載の樹脂組成物。
- f−1成分が、(メタ)アクリル酸エステル系コア−シェルグラフト共重合体であり、コアとしてオルガノシロキサン重合体成分7〜50重量%とアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル50〜93重量%とが分離できないよう相互に絡み合った構造を有し、その合計が100重量%である複合ゴム60〜85重量%、シェルとしてアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物から選択される1種または2種以上の単量体からなる重合体もしくは共重合体15〜40重量%の合計100重量%からなる請求項19に記載の樹脂組成物。
- a成分が50〜88重量%、b成分が7〜35重量%、c成分が5〜15重量%、a成分、b成分およびc成分の合計100重量部当り、d成分が0.5〜20重量部、e成分が0.1〜1重量部およびf−1成分が2〜8重量部より実質的になる請求項19記載の樹脂組成物。
- 塩素化合物の含有量が塩素原子に換算して樹脂組成物当り90ppm以下である請求項19記載の樹脂組成物。
- アクリロニトリルモノマーの含有量が、樹脂組成物当り40ppm以下である請求項19記載の樹脂組成物。
- 請求項1または19記載の樹脂組成物より形成された成形品。
- UL規格94Vによる燃焼試験に基づいてV−0の判定を有する請求項37記載の成形品。
- 65℃の温度および85%の相対温度の環境下で500時間保持した時の衝撃値保持率が50%以上でありかつ見掛けの分子量保持率が80%以上である請求項37記載の成形品。
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