JP3836239B2 - 化粧板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の内装材料や家具用材料、特に、床材として使用するのに好適な木質系の化粧板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、合板などの木質材からなる基板の表面に突板や合成樹脂製の化粧シート又は印刷紙等の化粧シートを貼着したり、或いは塗装等を行って、表面化粧層を施してなる化粧板が、住宅等の建築物の床材や造作材或いは家具用材料として広く使用されている。しかしながら、例えば合板の表面に突板を貼着したのち塗装仕上げしてなる一般的な化粧板を床材として使用した場合、木質基板に存在する小さな穴や抜け節、ジョイント部等の欠陥部が突板表面に現出したり、さらには湿気の吸収、放散に伴う合板の膨張、収縮によって表面の突板に細かい亀裂(干割れ)が生じたりして化粧性を著しく損なうことになり、その上、床材として使用した場合には、表面に重量の大きい家具の脚や落下物などによる局部的な荷重が加わると凹みが生じたりキャスター付きワゴンによる摺動的な負荷によって化粧板の表面が傷を受ける等の問題点がある。
【0003】
このため、合板等の木質材料からなる基板の表面に比較的硬質の中比重木質繊維板(MDF)からなる木質繊維製板材を接着して複合板を形成し、この複合板の木質繊維製板材の表面に突き板や合成樹脂製化粧シート又は印刷紙等の化粧シートを貼着したり、塗装等によって表面化粧層を形成してなる化粧板を床材に使用する試みがなされている。
【0004】
上記木質繊維製板材を形成する中比重木質繊維板は、木質繊維に熱硬化性樹脂接着剤を添加し、加熱下で圧締成形することによって得られたものであるため、加熱面に直接接する表裏層部が高密度に形成され、内部は相対的に低密度に形成されることになる。従って、この中比重木質繊維板を合板などの基板に積層接着して得られた複合板の表面に上記のような表面化粧層を施すと、表面が緻密で硬質且つ平滑であり、方向性が少ない中比重木質繊維板によって表面化粧層に干割れ等の欠点が生じ難くなるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、中比重木質繊維板の厚さは通常2.5mm 以上であり、従ってこのような厚みを有する中比重木質繊維板からなる木質繊維製板材を合板等の木質基板の表面(片面)に接着すると、木質基板よりも木質繊維製板材の収縮力が大きすぎて化粧板に長手方向に凹状の反りが発生することになる。このような凹反りの発生は、化粧板に形成した時にも残存し、この化粧板を床材などに適用するに際しては、その長手方向の中央部に対して両端側が上方に浮き上がった状態となり、両端部分に対する釘や接着剤による固定作業に困難を伴うばかりでなく、隣接する床材の突き合わせ端部に段差や固着不良などが生じるという問題点があった。
【0006】
さらに、上記のような中比重木質繊維板からなる木質繊維製板材を使用すると、高密度の表裏層部に比べて内部の低密度層の厚みの割合が大きいために、このような中比重木質繊維板を備えた上記化粧板をダイニングルームの床材に適用した場合、キャスター付ワゴン等による動的荷重を受けると木質繊維製板材の低密度層に層間剥離が生じて強度が低下すると共に表面の外観を損なうことになる。
【0007】
また、上記反りの発生を防止するために、薄い中比重木質繊維板を使用することも考えられるが、厚みが2mm未満の中比重木質繊維板を得るには、現状の製造方法では生産性がきわめて悪く且つ高価につくという問題点があり、その上、薄くすると、中比重木質繊維板は合板に比べて硬くて脆い性質を有しているため、施工時や運送時に角欠けが生じる虞れがあり、また、薄くしても床材として使用した場合には、表面に重量の大きい家具の脚や落下物などによる局部的な荷重が加わると上述したように中比重木質繊維板からなる木質繊維製板材に層間剥離が生じるという問題点がある。
【0008】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは優れた化粧性を有すると共に木質繊維板を用いているにもかかわらず、長手方向の凹状の反りや層間剥離の発生を抑制して良好な寸法安定性を発揮し、且つ強度的にも優れた化粧板を能率よく製造し得る製造方法を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の化粧板の製造方法は、厚さが2.5 〜4mmで比重が0.6 〜1.0 であり且つ表裏層の密度が芯層の密度よりも大きい木質繊維板を、その厚さ方向の中央部から2分割して一方の面側が高密度層で他方の面側が低密度層に形成された密度傾斜を有する木質繊維製板材を作製したのち、この木質繊維製板材を低密度層側を表向きにして木質基板の表面に貼着一体化することにより複合板を形成し、さらに、この複合板表面の上記木質繊維製板材の低密度層の表面を研削したのち該複合板の木質繊維製板材表面に合成樹脂液を塗布、含浸させて強化木質繊維製板材に形成し、しかるのち、この強化木質繊維製板材表面に化粧層を設けることを特徴とするものである。
【0010】
上記化粧板の製造方法において、上記木質基板表面に貼着している木質繊維製板材の表面の研削は、請求項2に記載したようにサンディングによって行われ、該木質繊維製板材の表層部を表面から少なくとも0.2 mm厚の研削を行うことが望ましい。
【0011】
【作用及び効果】
木質基板表面に貼着する木質繊維製板材は、表裏層が高密度で芯層が低密度に形成されている厚さが 2.5 〜4 mm で比重が 0.6 〜 1.0 の木質繊維板を低密度層の中央部から2分割することにより得られるものであるから、市販の木質繊維板から薄い木質繊維製板材を能率よく且つ確実に得ることができると共に木質繊維板を厚さ方向の中央部から2分割するので、2枚の薄い木質繊維製板材を経済的に得ることができ、安価な製品を提供できる。
【0012】
さらに、この木質繊維製板材をその低密度層側を表向きにして木質基板の表面に積層接着することにより複合板を形成したのち、該木質繊維製板材の表面を研削するものであるから、木質繊維製板材が木質基板と一体化して厚みのある複合板を形成しているので、その表面の研削作業が容易に行えると共に木質繊維製板材の柔らかい低密度層側を研削するので、サンディング等による研削作業が能率よく行えるものである。その上、木質繊維製板材の低密度層の表面は上述したように厚い木質繊維板の分割面であって、その表面に分割した際の微細な凹凸が生じているが、この凹凸粗面を上記研削によって除去して平滑な表面に形成することができる。
【0013】
また、上述したように木質繊維製板材の低密度層側を研削しているものであるから、極薄で且つ全体として高密度の木質繊維製板材になり、従って、該木質繊維製板材の収縮率や方向性が木質基板に殆ど影響を及ぼすことがなく、木質繊維製板材の層間剥離が生じ難くなると共に該木質繊維製板材の収縮率や方向性が木質基板に殆ど影響を及ぼすことがなく、長さ方向の中央部から両端に向かって上向きの凹反りが生じ難い化粧板を得ることができる。
【0014】
さらに、木質基板表面に上記木質繊維製板材を貼着して複合板を形成したのち、この複合板の木質繊維製板材表面に合成樹脂液を塗布、含浸させるものであるから、木質繊維製板材の木質繊維同士が含浸された合成樹脂によって一層強固に結合されて硬質で剛性も高くなり、耐湿性、耐水性、寸法安定性が向上すると共に角欠けや層間剥離が生じるのを確実に防止でき、その上、キャスター付きワゴンによる摺動的な荷重を繰り返し受けても、表面化粧層に傷が付き難い化粧板を製造することができる。
【0015】
また、木質繊維製板材が極薄であるにもかかわらず、上述したように床材に必要な硬さを確保できると共に木質基板の表面に節や***等の欠点があっても、その欠点が表面化粧層から微妙な影や色変化となって浮かび上がるという現象を抑制することができるものであり、しかも、薄い木質繊維製板材に合成樹脂液を含浸させるものであるから、合成樹脂液の含浸によって生じ易い上記凹反りの発生を極力低減することができ、従って、釘着等による床施工性が容易に且つ正確に行えると共に段差などが生じない優れた外観を呈する床構造を形成することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面に基づいて詳述すると、まず、所望厚みを有する木質基板1の表面に厚さが0.5 〜2mmで比重が0.6 〜1.0 の木質繊維板からなる木質繊維製板材2を接着剤3によって一体に貼着することにより、図1(ニ)に示すような複合板A1を形成する。なお、上記木質基板1としては合板、パーティクルボード、OSB(オリエンティドストランドボード)、LVL(ラミネイティドベニヤランバー)等の木質板が使用され、床材を形成する場合にはこの木質基板1の厚みは通常2.3 〜25mmのものが用いられる。
【0017】
一方、木質基板1に積層接着した木質繊維製板材2としては、図1(イ)に示すように、厚さが2.5 〜4mmで比重が0.6 〜1.0 であり且つ表裏層の密度が芯層の密度よりも大きい木質繊維板を、同図(ロ)に示すようにその厚さ方向の中央部からカッタ刃4を用いて2分割して同図(ハ)に示すように、一方の面側が高密度層で他方の面側が低密度層に形成されたものを用いる。このように、通常市販されている厚みの木質繊維板を厚さ方向の中央部から2分割するものであるから、入手が困難な薄手の木質繊維製板材2を容易に作製することができる。
【0018】
この木質繊維製板材2をその低密度層側を表向き(上向き)にして上述したように木質基材1の表面に接着剤3を介して貼着一体化して図1(ニ)に示すように複合板A1を形成したのち、木質繊維製板材2の表面をサンディングにより研削して厚さ0.5mm 以上で2mm未満の木質繊維製板材2とする。この木質繊維製板材2の厚さが0.5mm 未満になると、薄くなりすぎて硬度等の物性が低下し、2mm以上の厚さになると木質基板1との収縮率の差が大きくなって製造すべき化粧板Aに上述したような凹反りが生じ易くなるので、その厚みが0.5mm 以上で2mm未満、好ましくは0.7 〜1.6mm のものが使用される。このように、木質繊維製板材2を木質基板1の表面に貼着して複合板A1を作製したのち、該木質繊維製板材表面をサンディングするものであるから、薄い木質繊維製板材を単品状態で所定厚さにサンディングするのに較べ、安定して精度よく且つ加工性よく研削処理を行うことができる。
【0019】
なお、厚みが0.5mm 以上、2mm未満の上記木質繊維製板材2を得るには、4mm以上の木質繊維板を厚さ方向の中央部から2分割したのち、サンディングすることによって作製することもできるが、この場合にはサンディング量が多くなりすぎて加工手間や歩留まりが悪くなるので好ましくない。また、この木質繊維製板材2の比重が0.6 未満であると硬さが不足する一方、1.0 を越えると剛性が高くなりすぎて上記凹反りが生じたり木質材としての触感が悪くなるので、0.6 〜1.0 、好ましくは0.65〜0.90の範囲に調整された木質繊維製板材2を用いる。
【0020】
木質繊維製板材2を木質基板1上に接着する接着剤3としては、例えば、尿素−ホルマリン樹脂、尿素−メラミン−ホルマリン樹脂、メラミン−フェノール−ホルマリン樹脂、アルキルフェノールホルマリン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、水性ビニルウレタン樹脂、酢ビ−尿素系水性樹脂、アクリル−メラミン系水性エマルジョン、ポバール−イソシアネート水性エマルジョンなど、酢酸ビニル系、尿素樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール系、ウレタン系、エポキシ系の接着剤を使用することができる。
【0021】
次いで、上記複合板A1における木質繊維製板材2の表面に合成樹脂液5を図1(ホ)に示すように、含浸ロール6を使用して塗布、含浸する。この合成樹脂液5の含浸、硬化によって木質繊維製板材2の表層が強化され、角欠けや層間剥離の生じ難い強化木質繊維製板材2'となると共にこの木質繊維製板材2の厚みが薄いにもかかわらず、特に、床材に必要な硬さを確保できる。なお、木質繊維製板材2に対する合成樹脂液の塗布、含浸量は、木質繊維製板材2の重量に対して固形分換算で3〜30%程度がよい。3重量%未満であると硬度や剛性等の強度が不足する一方、30重量%を超えると強度が殆ど大きくなることがなく不経済となるので、上記範囲の含浸量とすることが望ましい。
【0022】
木質繊維製板材2に塗布、含浸させる合成樹脂としては、例えば、熱硬化性の合成樹脂としてユリア系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができ、熱可塑性の合成樹脂としては酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル樹脂などが用いることができる。また、熱硬化性合成樹脂と熱可塑性合成樹脂との混合樹脂を使用することもでき、このような混合樹脂としては例えばSBRーメラミン樹脂がある。
【0023】
次いで、この強化木質繊維製板材2'の表面に図1(ヘ)に示すように、化粧層7を設けることによって化粧板Aを作製するものである。化粧層7としては、強化木質繊維製板材2'の表面に印刷紙を接着したのちクリアー塗装などの塗装を施したもの、或いは、突き板を貼着したのちクリアー塗装などの塗装を施したもの、又は、ダイレクトプリントをしたのちクリアー塗装などの塗装を施したもの、化粧シートを貼着して形成した化粧層、WPC処理突き板を貼着したのちクリアー塗装などの塗装を施したもの等を採用することができる。次に本発明の具体的な実施例と比較例を示す。
【0024】
〔実施例〕
厚さが2.7mm で全体の比重が0.74であり、且つ表裏層の比重が芯層の比重に較べて高い中比重木質繊維板を、その厚さが略半分となるように厚さ方向の中央部から上下に2分割することにより、厚さが約1.35mmで分割面が粗面となっている木質繊維製板材を得た。この木質繊維製板材を、厚さが10.5mmで5プライの合板基板の表面に該木質繊維製板材の分割面が表面側となるように積み重ね、その重ね面に塗布している水性ビニルウレタン樹脂接着剤を介して冷圧により接着し、複合板を得た。
【0025】
次いで、この複合板における木質繊維製板材の表面をサンディングして該木質繊維製板材の厚さを1.0mm にしたのち、この木質繊維製板材の表面に硬化剤として塩化アルモニウムを0.5 %内添しているメラミン樹脂液をスポンジロールを使用して塗布すると共に押圧して樹脂液を固形分換算で木質繊維製板材に対し6重量%、含浸させ、しかるのち、木質繊維製板材の表面に厚さが0.43mmの不飽和ポリエステル樹脂含浸処理突板(WPC板)をビニルウレタン樹脂接着剤を介して載置し、ホットプレスにより加熱、加圧して木質繊維製板材に塗布、含浸している上記メラミン樹脂液を硬化させると共に突板を一体に接着させた。その後、突板の表面にポリエステル系クリア塗料を塗布することにより化粧板を形成した。
【0026】
〔比較例〕
上記実施例において、木質繊維製板材に塩化アルモニウムを0.5 %内添しているメラミン樹脂液を塗布、含浸させる以外は全て材料や処理条件を同じにして化粧板を得た。即ち、厚さが10.5mmで5プライの合板基板の表面に厚さが1.0mm に調整した木質繊維製板材を貼着したのち、該木質繊維製板材に合成樹脂液を含浸させることなくその表面に厚さが0.43mmの不飽和ポリエステル樹脂含浸処理突板をビニルウレタン樹脂接着剤を介して加熱、加圧することにより接着し、該突板の表面にポリエステル系クリア塗料を塗布してなる化粧板を得た。
【0027】
上記実施例と比較例とで示した製造方法によって幅240mm ×長さ750mm ×厚さ12mmの床材としての化粧板をそれぞれ作製し、これらの床材の耐圧試験と耐キャスター試験および角欠け試験を行った結果を次表に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
上記表からも明らかなように、比較例で得た床材の木質繊維製板材にはキャスターの摺動荷重によって層間剥離が生じると共に角欠けも発生し易く、また、硬度も床材として不足しているが、実施例で得た床材においてはその木質繊維製板材には層間剥離が生じていなく、その上、角欠けもなく、床材としての充分な強度を有するものである。なお、耐圧試験は直径10mmの鋼球を1/π(mm)食い込ませるのに必要な荷重を測定(ブリネル強度試験)によって行い、耐キャスター試験は床材の平行方向と直行方向に80Kgの荷重を有する車輪4個を備えたキャスターを最大10万回、往復走行させることによって行った。
【図面の簡単な説明】
【図1】化粧板の製造工程を示す簡略工程図。
【符号の説明】
1 木質基板
2 木質繊維製板材
2' 強化木質繊維製板材
5 合成樹脂含浸
7 化粧層
A1 複合板
A 化粧板
Claims (2)
- 厚さが2.5 〜4mmで比重が0.6 〜1.0 であり且つ表裏層の密度が芯層の密度よりも大きい木質繊維板を、その厚さ方向の中央部から2分割して一方の面側が高密度層で他方の面側が低密度層に形成された密度傾斜を有する木質繊維製板材を作製したのち、この木質繊維製板材を低密度層側を表向きにして木質基板の表面に貼着一体化することにより複合板を形成し、さらに、この複合板表面の上記木質繊維製板材の低密度層の表面を研削したのち該複合板の木質繊維製板材表面に合成樹脂液を塗布、含浸させて強化木質繊維製板材に形成し、しかるのち、この強化木質繊維製板材表面に化粧層を設けることを特徴とする化粧板の製造方法。
- 上記木質基板表面に貼着している木質繊維製板材の表面の研削はサンディングによって行われ、少なくとも0.2 mmの厚みの研削を行うことを特徴とする請求項1に記載の化粧板の製造方法。
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