JP3836045B2 - 炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法 - Google Patents

炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭酸ガスアーク溶接用チタニヤ系フラックス入りワイヤを使用して、被溶接物をすみ肉溶接する炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の如く、フラックス入りワイヤ(以下、FCW(Flux Cored Wire))は、鋼製外皮の中にフラックスを含有させており、そのフラックス量及び種類は、溶接作業性、溶着金属性能等のFCWの品質に大きく影響している。
【0003】
FCWの中で、特に、スラグ造滓剤をフラックス質量当たり25〜60質量%(TiO:20〜50質量%)含有させたチタニヤ系の全姿勢溶接用FCWは、1つのワイヤで全姿勢溶接できるだけでなく、良好な溶接作業性、高能率性、及び良好な溶接金属性能等を有するという理由で、造船及び橋梁をはじめとする広範囲な分野で使用されている。
【0004】
しかしながら、チタニヤ系FCWの欠点の一つとして、すみ肉溶接での溶接開先部にギャップを有した溶接施工を1パスで実施する場合、特に溶接速度が速くなりやすい立向下進溶接での耐高温割れ性が劣るとされている。このようなギャップは、造船及び橋梁等の大型構造物を建造し、建築する場合に、鋼板切断、配材の精度悪化、溶接又はガス切断による熱歪み等によって不可避的に発生してしまうという施工上の問題がある。従って、現状では、2パスで溶接施工を実施するとか、溶接電流を下げるとか、立向の場合には、上進溶接方法を適用する等の配慮により、高温割れの防止を図っているのが実状である。このことは、逆にいうと、チタニヤ系FCWは、溶接能率が低く、溶接施工能率の面からは問題が大きいという欠点を有している。
【0005】
換言すれば、1パスでのすみ肉溶接施工における耐高温割れ性が低いという欠点が技術的に解決されれば、チタニヤ系FCWは、溶接施工時間が短縮され、優れたメリットを有しているため、これが生きてくることになる。なお、ギャップとは、溶接開先部の間隙であって、開先面内の目違い又は開先部の板同士の隙間をいう。以下、これを単にギャップという。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来、造船溶接施工ハンドブック等に記載されているように、立向すみ肉継手の場合、3mm以上のギャップを有する場合においては、立向上進溶接を適用するとされている。しかしながら、実質上は、すみ肉での1パス以下の施工においては、2mm以下のギャップで下進の1パス溶接が実施されているのが現状である。従って、実質的には、3mm以上のギャップについては、すみ肉の1パス施工では不可能である。
【0007】
また、すみ肉溶接ではないが、チタニヤ系以外のワイヤでは、特開平11−347725号公報に記載されているように、耐高温割れ性が優れたものも開示されているが、これは正極性溶接であり、溶着効率が悪く、市場に広く受け入れられるものではない。溶接施工においては、特公平7−233号公報及び特公平7−77666号公報に記載されているように、シーリングビードをおくことにより、耐高温割れ性を含めた溶接継手の信頼性を向上させた溶接方法が開示されているが、基本的にすみ肉溶接ではなく、また、1パス施工ではない。
【0008】
ワイヤに関しては、前述の如く、チタニヤ系のFCWは、全姿勢溶接性及び溶接作業性が良好であることが、性能に関する最大の特長である。TiO、ZrO、SiOに代表されるスラグ造滓剤は、このような性能を引き出していることから、チタニヤ系のFCWからスラグ造滓剤を削除することは、本質的に不可能である。従って、従来の性能(全姿勢溶接性、溶接作業性等)を有したままで、すみ肉溶接での耐高温割れ性能を向上させることが望まれていた。
【0009】
溶材の面では、これまで、溶接金属の高温割れ性能に関する研究が古くからなされており、例えば、溶接学会誌第49巻第1号19(1980)及び同誌第44巻第7号(1975)等がある。これらの文献には、化学成分的には、P、S、B等の元素が高温割れ性を著しく劣化させること、及びその防止効果がある元素としてMnがあること等が記載されている。
【0010】
しかしながら、これらの技術は既に適用されているものの、近時の耐高温割れ性能に対する要求には不十分である。また、特開平2−55697号公報には、アルカリ土類金属の弗化物の作用について開示されているが、弗化物をチタニヤ系のワイヤに添加した場合、少なからずスパッタが増加するという悪影響があり、実用上、受け入れられるものではない。従って、良好な溶接作業性を有し、すみ肉溶接における耐高温割れ性能が優れたチタニヤ系FCWについては、従来、存在せず、このため、すみ肉溶接での耐高温割れ性能が優れたチタニヤ系FCWの早期開発が望まれていた。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、優れた全姿勢溶接性、良好な溶接作業性及び良好な溶接金属性能を有しつつ、すみ肉溶接での良好な耐高温割れ性能を有する溶接金属を得ることができる炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法は、炭酸ガスアーク溶接用チタニヤ系フラックス入りワイヤを使用して、ギャップを有する被溶接物をすみ肉溶接する炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法において、前記被溶接物のギャップを3.0〜5.0mm、溶接電流を250〜350A、溶接速度を40〜90cm/分とし、ワイヤ全質量に対する各成分の質量比(質量%)が、Sn≦0.010質量%、B≦0.005質量%、Bi+Pb≦0.005質量%、2.5≦Mn≦3.0質量%、7.0≦TiO+ZrO+SiO≦8.0質量%以下であるチタニヤ系フラックス入りワイヤを使用して、水平すみ肉溶接又は立向下進溶接により溶接することを特徴とする。
【0013】
この炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法において、例えば、前記ワイヤは、ワイヤ全質量に対する質量比(質量%)で、0.05≦Al≦0.30質量%を含む。また、例えば、前記ワイヤは、ワイヤ全質量に対する質量比(質量%)で、Nb+V≦0.020質量%に抑制する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。上述のように、チタニヤ系FCWのすみ肉溶接での耐高温割れ性能が劣る理由としては、以下のことが考えられる。FCWの場合、フラックスの中にTiO、ZrO、SiOに代表されるスラグ造滓剤を多量に含有させており、ソリッドワイヤに比較して、溶接金属中の酸素量が高いと共に、造滓剤原料に不可避的に含まれる不純物成分が多いという相違点がある。従って、酸素又は不純物成分の量を下げて、不純物成分中の酸化物量を下げるのが有効である。
【0015】
本願発明者等は、種々のワイヤを試作し、先ず、溶接金属中の酸素量を下げることを試みた。しかしながら、必須成分であるTiO及びZrOは、元来、酸化物であることから、チタニヤ系FCW溶接金属中の酸素量を大きく低下させることができない。
【0016】
次に、チタニヤ系FCW全体の不純物成分量を下げることを試みた。この場合に、本願発明者等は、溶接中に、溶接金属中から不純物を除去して溶接金属を清浄化する方法よりも、供給ワイヤ中に不純物を添加しないことが、不純物成分量の低減に最も効果があることを知見した。この知見に基づき、逆にどの原料から不純物が混入しているかを調査した。先ず、衝撃性能向上及びスラグ剥離性向上のために積極的に添加しているB、Bi、Pbを削除することにより、低融点酸化物を排除した。その結果、衝撃性能及びスラグ剥離性は劣化するが、Mn量及びスラグ造滓剤量を適正化(いずれも、増加)することにより、衝撃性能及びスラグ剥離性の劣化を補償することができることを確認した。上述したように、Mnの増加は、耐高温割れ性能の面からも望ましく、有効である。
【0017】
しかしながら、不純物の排除としては、未だ不十分であり、更に実験研究した結果、TiOに混入する不純物の影響が最も大きいことを見出した。FCWの場合、不純物は、鋼製外皮中に含まれる不純物とフラックス中の不純物に大別される。前者の不純物(主に、P、S)は、外皮自体、製鋼メーカーで人工的に製造・管理されることから、不純物量が比較的、安定して低いのに対し、フラックス原料(特に、スラグ造滓剤)は、経済性の面から天然鉱石を使用することが多く、従って、産地及び時期によっては不純物の種類及び量が違ってくる。
【0018】
その中でも、TiOに混入するSnが耐高温割れ性能に大きな影響を及ぼすことを把握し、Sn量を管理することで飛躍的に耐高温割れ性能が向上することを見いだした。また、溶接金属中からSnを減少させることは、衝撃性能向上の面からも望ましい。尚、TiO中に含有されるSnの削除方法としては浮選選鉱及び湿式共洗い法等、比較的簡易な方法で行えるので、処理コストも低いという利点がある。
【0019】
また、適正なAl量が溶接金属に添加された場合、脱酸作用を有し、Mnの歩留まりを安定させ、耐割れ性が向上し、衝撃性能の安定化作用として有効である。更に一層効果を得るためには、TiO中に含有されるNb、Vも所定範囲に管理することで、耐高温割れ性能が向上し、衝撃性能向上に有効であることも把握した。しかしながら、Nb,VはSnのように簡単に除去することができないことから、これらの元素を除去するためには、処理コストがかかるという問題点がある。
【0020】
一方、溶接施工法から見てみると、上記従来技術の限界から、一般的なすみ肉溶接のギャップは3mm以下である。ギャップを制限している理由としては、ギャップが大きい場合、ビードの断面形状が梨型形状になりやすく、凝固形態の点から高温割れが発生しやすくなるからである。従って、上記のようなワイヤを開発することによりギャップが3mm以上の場合のすみ肉溶接施工が可能となる。
【0021】
次に、本発明のチタニヤ系フラックス入りワイヤの組成限定理由について説明する。
【0022】
Sn≦0.010質量%
Snが0.010質量%より多いと、耐高温割れ性が劣ると共に、衝撃性能も劣る。なお、Snの量は、Sn単体の含有量と、Sn化合物中のSn換算量の総量である。
【0023】
B≦0.005質量%
Bが0.005質量%より多いと、耐高温割れ性能が劣る。また、B含有量は、B単体の含有量と、B化合物中のB換算量との総量である。
【0024】
Bi+Pb≦0.005質量%
Bi+Pbが0.005質量%より多いと、耐高温割れ性能が劣る。
【0025】
2.5≦Mn≦3.0質量%
Mn含有量が2.5質量%より少ないと、衝撃性能が劣化する。逆に、Mn含有量が3.0質量%より多くなると、溶接金属の強度が著しく高くなり、低温割れ性能が劣化する。溶接金属の強度を考慮すると、Mn含有量は2.5〜2.8質量%が望ましい。なお、Mnの量は、Mn単体の含有量と、Mn化合物中のMn換算量との総量である。
【0026】
7.0≦TiO +ZrO +SiO ≦8.0質量%
TiO、ZrO、SiOの総量が7.0質量%より少ないと、スラグ剥離性が劣化する。逆に、TiO、ZrO、SiOの総量が8.0質量%より多くなると、スラグ量が多くなり過ぎて、スラグ巻きを起こしやすくなり、溶接作業性上好ましくない。なお、TiO、ZrO、SiOの分析方法は、ワイヤ全量を溶解し、吸光光度法等の化学分析により分析されるTi、Zr、Siを全てTiO、ZrO、SiOに換算すればよい。即ち、金属Ti、合金Ti、Ti化合物などに含まれるTiをTiOに換算した値とする。ZrO及びSiOについても同様である。
【0027】
0.05≦Al≦0.30質量%
Al含有量が0.05質量%より少ないと、衝撃性能の安定性効果が発揮されない。逆に、Al量が3.0質量%より多くなると、溶接金属の強度が著しく高くなり、低温割れ性能が劣化する。なお、Al量は、Al単体の含有量と、Al化合物中のAl換算量との総量である。
【0028】
Nb+V≦0.020質量%
Nb+Vが0.020質量%より多いと、耐高温割れ性能及び衝撃性能の向上効果が発揮されない。耐高温割れ性能及び衝撃性能を考慮すると、Nb+Vは、0.005質量%以下が望ましい。なお、Nb、Vは、夫々Nb又はV単体の含有量と、Nb化合物又はV化合物中のNb又はV換算量との総量である。
【0029】
次に、溶接施工条件について説明する。
【0030】
ギャップ:3.0〜5.0mm
ギャップが3.0mmより小さい場合は、従来の溶接施工と変わりがなく、本発明を適用するだけのメリットがない。一方、ギャップが5.0mmを超えると、1パス施工自体が困難になる。
【0031】
溶接電流:250〜350A
溶接電流が250Aより小さい場合、溶接速度が遅くなり、能率性が損なわれる。溶接電流が350Aより大きい場合、溶接速度が速くなり、耐高温割れ性能が劣化すると共に、アーク力増加により、1パス施工が困難になり、アークが被溶接材の裏面側に抜けてしまう。
【0032】
溶接速度:40〜90cm/分
溶接速度が40cm/分より小さい場合、溶接速度が遅いために能率性が損なわれるのに加え、溶融池が先行し、スラグ巻き込みが発生したり、特に、立向下進溶接において、十分な溶け込みが得られなくなる。溶接速度が90cm/分より大きい場合、溶接速度が速いために、耐高温割れ性能が劣化する。これは、一般に溶接速度が速いと、溶融池が長くなり、ビードの形状が割れやすい形(所謂梨型ビード)になりやすいためである。また、一般に、溶接速度は、ギャップの大きさ及び溶接電流だけで決まるものではなく、アーク電圧、ワイヤ種又は運棒方法等に影響される。
【0033】
【実施例】
第1実施例
以下、本発明の実施例の効果について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。ワイヤ化学成分は、ワイヤ全量を溶解し、吸光光度法等の化学分析により、Sn、B、Bi、Pb、Mn、Al、Nb、Vを分析した。
【0034】
実施例に使用したワイヤ線径は、1.2mmであり、外皮金属組成として、下記表1に示す軟鋼を使用した。なお、フラックス率は14,5質量%とした。
【0035】
【表1】
Figure 0003836045
【0036】
なお、Sn、B、Bi、Pb、Nb、Vの調整は、それぞれの酸化物試薬を使用し、Mnの調整としては、Fe−Mn、Fe−Si−Mn、又は電解Mn等の添加量で行い、Alの調整としてはAl−Mg、Fe−Al、又は金属Al等の添加量で行った。
【0037】
耐高温割れ性能は片面溶接の初層溶接にて評価した。具体的な方法は、下記表2に溶接試験条件を示し、下記表3に供試鋼板の組成を示す。なお、1パスの脚長としては、2〜7mm程度とした。
【0038】
【表2】
Figure 0003836045
【0039】
【表3】
Figure 0003836045
【0040】
表7の耐高温割れ性の欄において、割れ無し(N=4の試験ですべてが割れ無し)の場合を○、割れ有り(N=4の試験で一つでも割れ有り)の場合を△で表示した。
【0041】
溶接金属の衝撃性能及び強度は以下のようにして試験した。即ち、JIS Z3313に規定される全溶着金属の試験方法に準じて行った。その試験方法を下記表4に示し、供試鋼板の組成を下記表5に示す。
【0042】
【表4】
Figure 0003836045
【0043】
【表5】
Figure 0003836045
【0044】
使用したチタニヤ系FCWの組成と、裏当材の組成を下記表6に示す。また、溶接試験により求められた耐高温割れ性、衝撃性能、引張強度、スラグ剥離性の評価結果を、下記表7に示す。この表8において、衝撃性能欄は、衝撃エネルギが90J以上の場合を◎、60J以上90J未満の場合を○、60J未満の場合を△とした。引張強度欄は、490以上600N/mm未満の場合を◎、600以上630N/mm未満の場合を○、630N/mm未満の場合を△で表示した。スラグ剥離性の評価は、耐高温割れ試験の初層溶接時のスラグ剥離性を官能評価することにより行った。○は従来ワイヤレベル、△は従来ワイヤ以下である。
【0045】
【表6】
Figure 0003836045
【0046】
【表7】
Figure 0003836045
【0047】
この表7に示すように、従来例1は従来のFCWであり、耐高温割れ性が劣る。比較例2は、従来例1のワイヤにおいて、Bi+Pb量を微量ににしたFCWであるが、耐高温割れ性が劣り、且つ、スラグ剥離性も劣化した。比較例3は、比較例2のワイヤにおいて、B量を微量(Tr)にしたFCWであるが、耐高温割れ性、スラグ剥離性が劣り、且つ衝撃性能も劣化した。比較例4は比較例3のワイヤにおいて、Sn量を0.007質量%にしたFCWであるが、耐高温割れ性が向上していない。比較例5は、比較例3のワイヤにおいて、Sn量を0.005質量%にしたFCWであるが、耐高温割れ性は向上するものの、衝撃性能及びスラグ剥離性は改善されない。比較例6乃至10は、比較例5のワイヤにおいて、Mn量を2.4〜3.2質量%にしたFCWであるが、いずれのワイヤも良好な耐高温割れ性及び良好な衝撃性能を有しているものの、比較例10は引張強度が高すぎ、またいずれのワイヤもスラグ剥離性が低いという欠点を有する。また、比較例11は、比較例8のワイヤにおいて、TiO+ZrO+SiO量を6.6質量%にしたFCWであるが、スラグ剥離性が改善されていない。
【0048】
これに対し、実施例12乃至14は、比較例8のワイヤにおいて、TiO+ZrO+SiO量を7.0〜7.8質量%にしたFCWである。この実施例12乃至14のワイヤにおいては、スラグ剥離性が改善されている。また、比較例15のワイヤは、比較例8のワイヤにおいて、TiO+ZrO+SiO量を8.2質量%にしたFCWであり、スラグ剥離性は改善されているものの、スラグが多くなりすぎて、スラグ巻きが発生し易く、実用的でない。一方、実施例16〜18は、実施例13のワイヤにおいて、Al量を0.04〜0.20質量%にしたFCWであるが、実施例17,18は耐高温割れ性能を維持したまま、衝撃値性能が優れたものとなっている。
【0049】
実施例19乃至23は、実施例14のワイヤにおいて、Nb+V量を0.025〜0.005質量%にしたFCWであるが、耐高温割れ性能及び衝撃値性能がより一層向上し、実施例19は、耐高温割れ性及び衝撃性能が特に良好である。
【0050】
第2実施例
次に、溶接施工法の試験結果について説明する。表2の試験条件に加えて、ギャップ、溶接電流、溶接速度を種々検討し、割れ発生の有無を判定した、判定方法は前述と同様である。また、溶接姿勢としては、水平すみ肉(HF)及び立向下進(VD)の双方を使用した。使用したワイヤは、表6の従来例1及び実施例17のワイヤである。1パスの脚長としては、約2〜7mmである。
【0051】
下記表8にその試験結果をまとめて示す。
【0052】
【表8】
Figure 0003836045
【0053】
この表8に示すように、従来例1〜4は、従来のFCWを使用し、3mmのギャップですみ肉溶接施工した場合であるが、高温割れ性と能率性とが両立していないことがわかる。
【0054】
比較例5は本発明の範囲に入るFCWを使用し、3mmギャップで240Aの溶接電流、32cm/分の溶接速度ですみ肉溶接施工を実施した場合である。この比較例5は耐高温割れ性は良好であるが、能率性が劣るものである。
【0055】
比較例8,11,14は、本発明のFCWを使用し、種々のギャップ、種々の溶接電流、種々の溶接速度ですみ肉溶接施工した場合のものであるが、いずれも耐高温割れ性が劣るものである。
【0056】
これに対し、実施例6,7,9,10,12,13は、本発明のFCWを使用し、種々のギャップ、種々の溶接電流、種々の溶接速度ですみ肉溶接施工した場合のものであり、高温割れ性及び能率性がいずれも十分なものであった。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、チタニヤ系フラックス入りワイヤを使用して3.0〜5.0mmのギャップを有する被溶接物をすみ肉溶接する際に、優れた全姿勢溶接性、良好な溶接作業性及び良好な溶接金属性能を有し、優れた耐高温割れ性能を有する溶接金属を得ることができるという効果を奏する。

Claims (3)

  1. 炭酸ガスアーク溶接用チタニヤ系フラックス入りワイヤを使用して、ギャップを有する被溶接物をすみ肉溶接する炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法において、前記被溶接物のギャップを3.0〜5.0mm、溶接電流を250〜350A、溶接速度を40〜90cm/分とし、ワイヤ全質量に対する各成分の質量比(質量%)が、Sn≦0.010質量%、B≦0.005質量%、Bi+Pb≦0.005質量%、2.5≦Mn≦3.0質量%、7.0≦TiO+ZrO+SiO≦8.0質量%以下であるチタニヤ系フラックス入りワイヤを使用して、水平すみ肉溶接又は立向下進溶接により溶接することを特徴とする炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法。
  2. 前記ワイヤは、ワイヤ全質量に対する質量比(質量%)で、0.05≦Al≦0.30質量%を含むことを特徴とする請求項1に記載の炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法。
  3. 前記ワイヤは、ワイヤ全質量に対する質量比(質量%)で、Nb+V≦0.020質量%に抑制することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭酸ガスアーク溶接によるすみ肉溶接方法。
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