JP5669684B2 - 水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、軟鋼および490〜590MPa級高張力鋼にショッププライマ(主に無機ジンクプライマ)を塗装した鋼板(以下、プライマ塗装鋼板という。)の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
近年、造船・船舶の分野ではプライマ塗装鋼板のすみ肉溶接の比率が高く、これの溶接能率向上のために溶接材料についても改良要望が依然として強い。また、PSPC(塗装鋼板の塗装基準)対応などにより高速溶接による組立てからスパッタの付着やショットブラストなど溶接後の鋼板の状態や塗装状態に重きを置くようになっている。
プライマ塗装鋼板を特に水平すみ肉溶接した場合、スパッタ発生量の増加、耐ピット性、ビード形状およびビード外観の劣化が問題となるが、これらの改善を目的としたガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが種々提案されている。
プライマ塗装鋼板の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの耐ピット性に関しては、従来のTiOを主体とするスラグ系ワイヤからZrO−SiOを主体とするスラグ系のワイヤ(例えば、特許文献1および特許文献2参照)が主流となっている。しかし、これらのワイヤはZrOをスラグ形成剤の主要成分にすることによって、ZrOによる強いアーク力で溶融プールの激しい攪拌作用により耐ピット性が得られる反面、従来のTiOを主体とするスラグ系のワイヤに比べスパッタが多く発生しやすいという問題がある。
TiOを主体とするスラグ系のワイヤでは、スパッタ発生量は減少するものの、スラグが厚くなり耐ピット性が劣る。これらのワイヤにおいて耐ピット性を向上させようとした場合、スラグの粘性が変化してビード形状が不良になりスラグ剥離性が劣化することがある。ただし、2電極水平すみ肉ガスシールドアーク溶接方法に開発されたワイヤにおいてはTiOを主体とするスラグ系のワイヤであっても耐ピット性が優れている(例えば、特許文献3および特許文献4参照)。
しかし、特許文献3および特許文献4に開示された技術においても、プライマ塗装鋼板のプライマ膜厚が厚い場合においてはスパッタ発生量が多く、ピットの発生を防止することができないという問題があった。
特開平11−5193号公報 特開2000−42787号公報 特開2009−190042号公報 特開2010−194571号公報
本発明は、このような問題点に鑑み、プライマ膜厚が厚いプライマ塗装鋼板の水平すみ肉溶接に使用しても優れた耐ピット性が得られるとともにスパッタ発生量が少なく、ビード形状およびビード外観が優れるなど溶接作業性が良好な水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
本発明の要旨は、鋼製外皮にフラックスを充填してなる水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、
Ti酸化物のTiO換算値:0.5〜2.5%、
Si酸化物のSiO換算値:0.1〜0.5%、
Zr酸化物のZrO換算値:0.1〜0.5%、
C:0.03〜0.10%、
Si:0.4〜0.85%、
Mn:1.5〜3.0%、
かつ、Mn/Si:3.0〜4.5、
Al:0.2〜0.5%、
Mg:0.1〜0.4%、
かつ、Al+Mg:0.5〜0.8%、
Fe酸化物のFeO換算値:0.1〜1.0%、
Na化合物のNaO換算値またはK化合物のKO換算値の1種または2種の合計:0.05〜0.2%、
弗素化合物のF換算値:0.02〜0.1%を含有し、
弗素化合物を含むスラグ形成剤の合計が1.5〜3.5%であり、残部は鋼製外皮のFe分、合金鉄中のFe分、鉄粉および不可避不純物であることを特徴とする。
また、金属BiまたはBi酸化物のBi換算値の1種または2種の合計を0.005〜0.035%含有することも特徴とする水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにある。
本発明の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤによれば、プライマ塗装鋼板のプライマ膜厚が厚めの状態であっても水平すみ肉溶接において優れた耐ピット性が得られるとともにスパッタ発生量が少なく、ビード形状およびビード外観が優れるなど溶接作業性が良好であるので、溶接の高能率化および溶接部の品質向上を図ることができる。
本発明者らは、前記課題を解決するために種々のワイヤを試作して、詳細を検討した。その結果、ZrO−SiO系を主体とするワイヤでは、ZrO−SiO−TiOの成分バランスが崩れてアークが粗くなりスパッタ発生量が増加し、スラグ被包性も劣化する場合がある。
TiOを主成分にすることで、アークが粗くなるのを防止するとともにZrOによる強いアーク力で溶融プールの激しい攪拌作用と、均一なスラグ被包状態がスラグ生成量を少なくしても得られることを利用して、プライマ燃焼ガスを溶融プールから外部に放出しやすくしピットの発生を防止することができる。また、SiOは溶融スラグの粘性を調整してアーク力による溶融プールの過度の後退を抑制してビードの凸状化を防止することができることを考慮しSiO−ZrO量を適正にすることでスラグ形成剤を減少させ極低スラグ系のワイヤにした場合でも耐ピット性が良好でありスラグが均一被包することができることを見出した。
AlやMgは金属として添加することによって脱酸剤として作用し、SiやMnの溶接金属への歩留まりを調整する効果があるとともに一部は溶融中にAlやMgOなどの酸化物としてスラグ剤としてスラグの被包性に関与する。しかし、AlやMgOとして添加した場合、スラグが均一に被包せずにスラグ剥離性も不良となるので酸化物としては添加せず、AlやMgは脱酸剤を主目的として添加することが望ましいことを見出した。
さらに、Mn/Si、AlとMgの合計およびFe酸化物のFeO換算値、弗素化合物を含むスラグ形成剤の合計を限定することによって、十分なスラグ被包性、スラグ剥離性、耐ピット性および機械性能が得られ、プライマ塗装鋼板のプライマ膜厚が厚めの水平すみ肉溶接に適用できることを見出した。
本発明は、本発明者が新たに見出した上記事項に基づいて、水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分設計を行なったものである。
以下に本発明の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの成分組成および含有量の限定理由について説明する。なお、各成分組成の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%で示す。
[Ti酸化物のTiO換算値:0.5〜2.5%]
TiOは、Ti酸化物のルチール、酸化チタン、チタン酸ソーダ、チタンスラグ、イルミナイト等から添加される。これらはビード全体を均一に被包する作用を有する。また、アークを持続して安定させスパッタ発生量を低減させる効果がある。Ti酸化物のTiO換算値が0.5%未満であると、スラグ生成量が不足してビードを均一に被包できないのでスラグがビード表面に焼き付きビード外観が不良になる。また、アークを安定させる効果がなくなりスパッタ発生量も増加する。一方、2.5%を超えると、アークは安定してスパッタ発生量は減少するが、スラグが厚くなりスラグの粘性が高まりピットが発生しやすくなる。したがって、Ti酸化物のTiO換算値は0.5〜2.5%とするが、好ましくは1.2〜2.1%である。
[Si酸化物のSiO換算値:0.1〜0.5%]
SiOは、珪砂やジルコンサンド、珪砂ソーダ等より添加され、溶融スラグの粘性を高め、スラグ剥離性を改善する作用を有する。Si酸化物のSiO換算値が0.1%未満では、スラグ被包状態が悪くスラグ剥離性が不良になり、ビード形状およびビード外観も不良になる。一方、Si酸化物のSiO換算値が0.5%を超えると、スパッタ発生量が多くなる。さらに、ビード止端部(下板側)が膨れビード形状およびビード外観が不良になり、ピットやガス溝も発生しやすくなる。したがって、Si酸化物のSiO換算値は0.1〜0.5%とする。
[Zr酸化物のZrO換算値:0.1〜0.5%]
ZrOは、ジルコンサンドおよび酸化ジルコニウム等より添加され、強いアーク力で溶融プールを攪拌して、プライマ燃焼ガスを溶融プールから外部に放出しやすくしピットの発生を防止する。また、スラグ被包性を高めてビード形状を平滑にする作用を有する。Zr酸化物のZrO換算値が0.1%未満では、ビード形状が平滑にならず、凸状のビード形状となるとともにスラグ剥離性が不良になり、ピットも発生する。一方、Zr酸化物のZrO換算値が0.5%を超えると、ビード形状が凸状になりやすい。したがって、Zr酸化物のZrO換算値は0.1〜0.5%とする。
[C:0.03〜0.10%]
Cは、鋼製外皮とFe−Si、Fe−MnおよびFe−Si−Mn等の鉄合金が微量含有するCから添加され、溶接構造物に要求される溶接金属の強度および靭性を得るために添加する。Cが0.03未満では、溶接金属の靭性が低下する。一方、0.10%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、Cは0.03〜0.10%とする。
[Si:0.4〜0.85%]
Siは、鋼製外皮、金属Si、Fe-SiおよびFe-Si-Mn等より添加され、脱酸剤として作用して溶接金属の強度および靭性を確保するために添加する。Siが0.4%未満では、脱酸不足となりピットが発生する。また、溶接金属の強度および靭性が低下する。一方、0.85%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、Siは0.4〜0.85%とする。
[Mn:1.5〜3.0%]
Mnは、鋼製外皮、金属Mn、Fe−MnおよびFe−Si−Mn等より添加され、脱酸剤として作用するとともに溶接金属の強度および靭性を確保するために添加する。Mnが1.5%未満では、脱酸不足となりピットが発生する。また、溶接金属の強度が低く靭性も低下する。一方、3.0%を超えると、溶接金属の強度が高くなり靭性が低下する。したがって、Mnは1.5〜3.0%とする。
[Mn/Si:3.0〜4.5]
Mn/Siは、溶接金属の粘性に影響する。Mn/Siが大きくなれば溶接金属の粘性が低下し、逆にMn/Siが小さくなると溶接金属の粘性は高くなる。溶接金属の粘性を低くすると溶接金属中から発生するガスを早く抜けさせるので、耐ピット性を向上させることができる。Mn/Siが3.0未満であると、Siに対するMn量が少なくなるので溶接金属の靭性が劣化する。一方、4.5を超えると、溶接金属の粘性が低くなりすぎてビード形状が凸状になる。したがって、Mn/Siは3.0〜4.5とする。
[Al:0.2〜0.5%]
Alは、鋼製外皮、金属Al、Fe−AlおよびAl−Mg合金等より添加され、脱酸剤として作用するとともに溶融中にAl酸化物となってスラグの粘性を高めて、水平すみ肉溶接で溶融プールの後退を抑制し十分なスラグ被包性を保持する作用を有する。Alが0.2%未満では、ビードが凸状になり上脚部にアンダーカットやスラグ焼き付きが発生する。一方、0.5%を超えると、ビード形状に滑らかさがなくなり止端部が膨らんだ形状となり、ピットが発生しやすくなる。また、溶融スラグの凝固むらが生じてスラグ剥離性が不良となる。したがって、Alは0.2〜0.5%とする。
[Mg:0.1〜0.4%]
Mgは、金属Mg、Al-Mg合金等から添加され、強脱酸剤として作用してピットを防止する。Mgが0.1%未満であると、脱酸剤としての効果がなくピットが発生する。一方、0.4%を超えると、アークが荒くなりスパッタ発生量が多くなる。したがって、Mgは0.1〜0.4%とする。
[Al+Mg:0.5〜0.8%]
AlとMgは前述の通り脱酸剤として作用する。AlとMgの合計が0.5%未満では、脱酸剤の効果がなく溶接金属の強度および靭性が低下する。一方、0.8%を超えると、アークが粗くなりスパッタ発生量が増えるとともにスラグ被包が不良となりピットが発生しやすくなる。
[Fe酸化物のFeO換算値:0.1〜1.0%]
FeO、Fe等のFe酸化物は、溶融スラグの粘性および凝固温度を調整し、ビード止端部の膨らみをなくし、下板とのなじみ性を良好にする。Fe酸化物のFeO換算値が0.1%未満であると、ビード止端部の形状が不良になる。一方、1.0%を超えると、スラグ被包状態が悪くなりスラグ剥離性が不良でビード止端部が膨らみビード形状およびビード外観も不良で、さらにヒューム発生量が多くなる。したがって、Fe酸化物のFeO換算値は0.1〜1.0%とする。
[NaおよびK化合物のNaO換算値およびKO換算値の1種または2種の合計:0.05〜0.2%]
NaおよびKは、カリ長石または珪酸ソーダや珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、弗化ソーダや珪酸化カリなどの弗素化合物より添加され、アーク安定剤としての作用だけではなく、スラグ形成剤として溶融スラグの凝固過程の急激な粘性増加を抑えて耐ピット性を高め、平滑なビード形状にする作用がある。NaおよびK化合物のNaO換算値およびKO換算値の1種または2種の合計が0.05%未満では、大粒のスパッタが多発し、ピットやガス溝なども発生しやすく、ビードはごつごつした表面となりビード形状およびビード外観が不良になる。一方、0.2%を超えると、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良となり、スパッタやヒューム発生量も多くなる。したがって、NaおよびK化合物のNaO換算値およびKO換算値の1種または2種の合計は0.05〜0.2%とする。
[弗素化合物のF換算値:0.02〜0.1%]
Fは、弗化ソーダや珪弗化カリ等より添加され、アークの指向性を高めて安定した溶融プールにするとともにスラグの粘性を調整して耐ピット性を良好にする作用を有する。弗素化合物のF換算値が0.02%未満であると、アークが不安定になり、スラグの粘性が高くピットが生じやすくなる。一方、0.1%を超えると、スラグの粘性が低下してビード上脚部に除去しにくい薄いスラグが残りスラグ剥離性が不良となり、ビード形状は凸状になる。したがって、弗素化合物のF換算値は0.02〜0.1%とする。
[弗素化合物を含むスラグ形成剤の合計:1.5〜3.5%]
スラグ形成剤は、ビード外観を整える作用がある。弗素化合物を含むスラグ形成剤の合計が1.5%未満であると、スラグ生成量が不足してスラグ被包が均一にできなくなり、スラグが焼き付きスラグ剥離性が悪くなる。また、アークが荒くなりスパッタ発生量が多くなる。一方、3.5%を超えると、アークが安定してスパッタも減少するが、スラグ生成量が多くスラグが厚くなりピットが発生しやすくなる。
なお、スラグ形成剤は弗素化合物も含み、TiO、SiO、ZrO、KO、NaO、Al、FeO、Fe、MgO等の合計をいう。
[金属BiまたはBi酸化物のBi換算値の1種または2種の合計:0.005〜0.035%]
Biは、金属Biや酸化Bi等により添加され、スラグ剥離性を向上させ、ビード表面に光沢を出しビード外観を良好にする作用を有する。金属BiおよびBi酸化物のBi換算値の1種または2種の合計が0.005%未満では、その効果が得られず、0.035%を超えると、ビード上部のスラグが流れて、ビード全面をスラグで被包することができなくなり、ビード外観が不良となる。したがって、金属BiおよびBi酸化物の一方または両方のBi換算値の1種または2種の合計は0.005〜0.035%とする。
以上、本発明の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの構成要件の限定理由を述べたが、その他のワイヤ成分は、鋼製外皮のFe分、合金鉄中のFe分、鉄粉および不可避不純物である。
また、本発明の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、フラックス充填後の伸線加工性が良好な軟鋼および低合金鋼の外皮内に、前記限定した成分のフラックスをワイヤ全質量に対して8〜18%程度充填後、孔ダイス伸線やローラダイスにより所定のワイヤ径(0.9〜1.6mm)に縮径して製造する。なお、鋼製外皮に貫通した隙間がないシームレスまたは隙間があるシームタイプのいずれのワイヤも適用できる。
以下、実施例により本発明の効果をさらに詳細に説明する。
JIS G3141に記載のSPCCを鋼製外皮として使用してフラックスを充填後、縮径して(外皮の軟化および脱水素のため中間焼鈍を1回実施)、表1に示すフラックス充填率13.5〜15.0%、ワイヤ径1.4mmの鋼製外皮に貫通した隙間がないシームレスタイプのフラックス入りワイヤを各種試作した。
Figure 0005669684
表1に示す試作ワイヤを用いて、無機ジンクプライマ塗布鋼板のT字すみ肉試験体を用いて自動溶接機で水平すみ肉溶接試験を行った。試験体は鋼種SM490B、板厚12mm、試験体長さ600mmであって、プライマ塗装鋼板のプライマ膜厚は約35〜45μmでT字すみ肉試験体の下板および立板端面にもプライマ塗装がある。これらの鋼板を加圧しながら下板と立板の間隙がない状態で仮付け溶接して試験体とした。
溶接条件は、溶接電流320〜330A(電源極性DC+)、アーク電圧32〜33V、溶接速度50cm/min、ワイヤ突出し長さ(コンタクトチップ−母材間距離)25mm、シールドガスCOガス(ガス流量25リットル/min)の溶接条件で両側同時溶接を2回行い、ピット発生数、ビード形状、ビード外観、スラグ剥離性、スパッタ発生状態を調べた。
なお、ピット発生量は1個/m以下を良好とした。
また、溶接金属の強度および靭性は、JIS Z 3111に準じて溶着金属試験を行い、引張試験および衝撃試験を実施した。溶接条件は、溶接電流300A、アーク電圧31V、溶接速度30cm/min、シールドガスCOガス(ガス流量25リットル/min)、パス間温度150±10℃とした。溶着金属試験の強度は、引張強さが510〜630MPa、衝撃試験は、0℃で吸収エネルギーが60J以上のものを良好とした。それらの結果を表2にまとめて示す。
Figure 0005669684
表1および表2中ワイヤNo.1〜10は本発明例、ワイヤNo.11〜26は比較例である。本発明例であるワイヤNo.1〜10は、TiO換算値、SiO換算値、ZrO換算値、C、Si、Mn、MnとSiの比、Al、Mg、AlとMgの合計、FeO換算値、NaO換算値とKO換算値の合計、F換算値、弗素化合物を含むスラグ形成剤の合計が適正であるので、ピット発生数およびスパッタ発生量が少なく、ビード形状、ビード外観およびスラグ剥離性が良好で、溶接金属の引張強さおよび吸収エネルギーも良好で、極めて満足な結果であった。なお、Biを適量含むワイヤNo.2、3、6、7およびワイヤNo.8はスラグ剥離性が非常に良好であった。
比較中ワイヤNo.11は、TiO換算値が少ないので、スラグ生成量が不足してスラグがビード表面に焼き付きビード外観が不良で、アークが不安定でスパッタ発生量も多かった。また、Siが多いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤNo.12は、TiO換算値が多いので、ピットが多発した。また、Bi換算値が多いので、スラグ被包性が悪くビード外観が不良であった。
ワイヤNo.13は、SiO換算値が少ないので、スラグ被包性が悪くスラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良であった。また、Mnが少ないので、ピットが発生し、溶接金属の引張強さが低く吸収エネルギーも低値であった。
ワイヤNo.14は、SiO換算値が多いので、スパッタ発生量が多く、ピットおよびガス溝が発生し、ビード止端部(下板側)が膨れてビード形状およびビード外観も不良であった。また、Mn/Siが低いので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤNo.15は、ZrO換算値が少ないので、凸状のビード形状となりスラグ剥離性が不良で、ピットも発生した。また、Mgが多いので、アークが荒くなりスパッタ発生量が多かった。
ワイヤNo.16は、ZrO換算値が多いので、ビード形状が凸となった。また、弗素化合物を含むスラグ形成剤の合計が多いので、スラグ生成量が多くスラグが厚くなりピットが多発した。
ワイヤNo.17は、Siが少ないので、ピットが発生し、溶接金属の引張強さが低く吸収エネルギーも低値であった。また、Bi換算値が少ないので、スラグ被包性が悪くビード外観およびスラグ剥離性がやや不良であった。
ワイヤNo.18は、Mn/Siが高いので、ビード形状が不良であった。また、F換算値が少ないので、ピットが発生した。
ワイヤNo.19は、Alが多いので、ビード止端部が膨らんでビード形状が不良となり、溶融スラグの凝固むらが生じてスラグ剥離性が不良で、ピットも多発した。また、Mnが多いので、溶接金属の引張強さが高く吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤNo.20は、AlとMgの合計が少ないので、溶接金属の引張強さが低く吸収エネルギーも低値であった。また、F換算値が多いので、スラグ剥離性およびビード形状が不良であった。
ワイヤNo.21は、AlとMgの合計が多いので、スパッタ発生量が多く、スラグ被包が悪くビード外観が不良でピットも多発した。また、FeO換算値が少ないので、ビード止端部の形状が不良であった。
ワイヤNo.22は、FeO換算値が多いので、スラグ被包が悪くビード外観、ビード形状およびスラグ剥離性が不良であった。また、Mgが少ないので、ピットが発生した。
ワイヤNo.23は、NaO換算値およびKO換算値の合計が少ないので、大粒のスパッタ発生量が多く、ピットも多発し、ビード形状およびビード外観が不良であった。また、Cが多いので溶接金属の引張強さが高く吸収エネルギーが低値であった、
ワイヤNo.24は、NaO換算値およびKO換算値の合計が多いので、スラグ剥離性、ビード形状およびビード外観が不良で、スパッタ発生量も多かった。また、Cが少ないので、溶接金属の吸収エネルギーが低値であった。
ワイヤNo.25は、弗素化合物を含むスラグ形成剤の合計が少ないので、スパッタ発生量が多く、スラグ生成量が不足してスラグ被包性が悪くスラグが焼き付いてスラグ剥離性が不良であった。また、Alが少ないので、ビードが凸状になり形状が不良で、アンダーカットも生じてビード外観も不良であった。

Claims (2)

  1. 鋼製外皮にフラックスを充填してなる水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、ワイヤ全質量に対する質量%で、
    Ti酸化物のTiO換算値:0.5〜2.5%、
    Si酸化物のSiO換算値:0.1〜0.5%、
    Zr酸化物のZrO換算値:0.1〜0.5%、
    C:0.03〜0.10%、
    Si:0.4〜0.85%、
    Mn:1.5〜3.0%、
    かつ、Mn/Si:3.0〜4.5、
    Al:0.2〜0.5%、
    Mg:0.1〜0.4%、
    かつ、Al+Mg:0.5〜0.8%、
    Fe酸化物のFeO換算値:0.1〜1.0%、
    Na化合物のNaO換算値またはK化合物のKO換算値の1種または2種の合計:0.05〜0.2%、
    弗素化合物のF換算値:0.02〜0.1%を含有し、
    弗素化合物を含むスラグ形成剤の合計が1.5〜3.5%であり、残部は鋼製外皮のFe分、合金鉄中のFe分、鉄粉および不可避不純物であることを特徴とする水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. 金属BiまたはBi酸化物のBi換算値の1種または2種の合計を0.005〜0.035%含有することを特徴とする請求項1記載の水平すみ肉ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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