JP5356142B2 - ガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents

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Description

本発明は490〜520MPa級高張力鋼のガスシールドアーク溶接方法に関し、特に全姿勢溶接における溶接作業性に優れるフラックス入りワイヤを用いて大入熱および高パス間温度の溶接施工条件で溶接するさい、高能率で機械的性能の優れた溶接金属を得ることができるガスシールドアーク溶接方法に関する。
近年、建築鉄骨分野において、溶接施工のさらなる能率向上を図るため、大入熱および高パス間温度の溶接施工条件に対応するガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤが開発され、JIS Z3312 YGW18に規定されている。このガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、490MPa級高張力鋼に対して、最大入熱40kJ/cmで最高パス間温度が350℃の溶接施工条件が許容される。また520MPa級高張力鋼に対しては、最大入熱30kJ/cmで最高パス間温度が250℃の溶接施工条件が許容される。
このような大入熱、高パス間温度の溶接施工条件に対応したガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは、例えば特開平10−230387号公報(特許文献1)、特開平11−90678号公報(特許文献2)および特開2001−287086号公報(特許文献3)等に示されている。これらによると大入熱、高パス間温度の溶接施工条件においても強度を確保するために、Si、Mnや必要に応じてMo、Cr等を多く含み、靭性を確保するためにTiおよびBを含んでいる。
また、大入熱、高パス間温度の溶接施工条件においてもスラグ剥離性を確保するために、特開2006−26643号公報(特許文献4)、特開2006−88187号公報(特許文献5)および特開2007−301597号公報(特許文献6)等にあるように、生成スラグのスラグ剥離性を良好にする技術の開示がある。
しかし、前記特許文献1〜6は、ガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤであるのでスパッタの発生量が多く、また、特に立向上進姿勢溶接においては溶融メタルが垂れやすいという問題がある。
一方、スパッタ発生量を低くできるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを用いて、大入熱、高パス間温度の溶接施工条件で機械的性能を満足する技術が特開2005−279683号公報(特許文献7)に開示されている。しかし、特許文献7に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、スラグ剤が非常に少ない金属粉(メタル)系フラックス入りであるので、立向上進姿勢溶接においてはガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤと同様に溶融メタルが垂れやすいという問題がある。さらに、スパッタ発生量についても満足できるものではなかった。
特開平10−230387号公報 特開平11−90678号公報 特開2001−287086号公報 特開2006−26643号公報 特開2006−88187号公報 特開2007−301597号公報 特開2005−279683号公報
本発明は、大入熱、高パス間温度の溶接施工条件を採用することによって溶接能率を向上し、スパッタ発生量が少なく全姿勢溶接においても溶接作業性が良好で、溶接金属の機械的性能が優れるなど高品質な溶接部が得られるガスシールドアーク溶接方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、鋼製外皮内にフラックスを充填したフラックス入りワイヤを使用するガスシールドアーク溶接方法において、ワイヤ全質量に対する質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.4〜1.0%、Mn:1.7〜2.8%、Mo:0.1〜0.3%、Mg:0.35〜0.65%、Ti酸化物のTiO換算値:4.8〜6.5%、Si酸化物のSiO換算値:0.3〜0.8%、Zr酸化物のZrO換算値:0.2〜0.5%、AlのAl換算値およびAlの1種または2種の合計:0.4〜1.2%、Na化合物およびK化合物のNaO換算値およびKO換算値の1種または2種の合計:0.06〜0.20%を含有し、弗素化合物のF換算値が0.03%以下で、残部は鉄粉、鉄合金のFe分、鋼製外皮のFe分および不可避不純物からなるフラックス入りワイヤを用いて、溶接入熱量20〜40kJ/cm、パス間温度200〜350℃の溶接施工条件で炭酸ガスシールドアーク溶接することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法にある。ここにおいて、フラックス入りワイヤは製鋼外皮に貫通した合わせ目が無く、ワイヤ表面に厚さ0.3〜0.9μmの銅めっきを有すること、また、フラックス入りワイヤは全水素量が20ppm以下であることも特徴とする。
本発明のガスシールドアーク溶接方法によれば、490〜520MPa級高張力鋼に対し、大入熱および高パス間温度の溶接施工条件で溶接を行うのに際し、用いるフラックス入りワイヤの成分組成を適正にすることによって、全姿勢溶接においてもスパッタ発生量が少なく良好な溶接作業性が得られる。その結果、溶接パス数の減少および各パス毎の冷却待ち時間の短縮が図れることによる高能率溶接が達成でき、かつ機械的性能の良好な溶接部を得ることができる。
本発明者らは、全姿勢溶接で溶接作業性が良好であり、大入熱および高パス間温度の溶接施工条件で高能率に溶接した場合においても機械的性能の優れた溶接金属を得るべく、フラックス入りワイヤの成分組成について種々検討を行った。その結果、最大入熱量40kJ/cm、最高パス間温度350℃という高能率で溶接施工が可能な条件で多層盛溶接した場合の強度および靭性を確保するためには、用いるフラックス入りワイヤのC、Si、Mn、Moを適量とし、強脱酸剤であるMgを比較的多く含みTiOを適量含み、さらに弗素化合物を低減することことが効果的であることが判明した。
また、全姿勢溶接における溶接作業性は、ワイヤのフラックス中にTiO、SiO、ZrO、Al、NaOおよびKOを適量含有することによって良好になることを見出した。さらに、ワイヤ表面の銅めっき厚さを限定することによって高電流の溶接施工条件においてもアークが安定し、ワイヤの全水素量を限定することによって多層盛溶接における耐割れ性を向上させることができた。
以下、本発明のガスシールドアーク溶接方法の施工条件および用いるフラックス入りワイヤ成分組成の限定理由について説明する。
[溶接入熱量:20〜40kJ/cm]
溶接入熱量が大きくなれば、1パス当りの溶着量が増すので溶接能率が向上する。溶接入熱量が20kJ/cm未満であると1パス当りの溶着量が少ないので溶接パス数が多くなり溶接能率が低下する。一方、溶接入熱量が大きいと冷却速度が遅くなって、一般的に溶接金属の組織が粗大化して強度および靭性が低下する。また、高温割れも生じやすくなる。後述する本発明に用いるフラックス入りワイヤを用いても40kJ/cmを超えた溶接入熱量では強度および靭性が確保できず、高温割れも生じやすくなる。したがって、溶接入熱量は20〜40kJ/cmとする。
[パス間温度:200〜350℃]
パス間温度も溶接入熱量と同様に溶接能率に影響する。パス間温度を低くすると、特に溶接長の短い部材の溶接においてはパス毎の冷却待ち時間が長くなるので溶接能率が低下する。パス間温度が200℃未満であると本発明が目的とする溶接能率向上の効果が得られない。一方、パス間温度が350℃を超えると強度および靭性が著しく低下する。したがって、パス間温度は200〜350℃とする。
また本発明のガスシールドアーク溶接方法においてはシールドガスとして炭酸ガスを使用する。炭酸ガスはアルゴンを主成分とする混合ガスよりも安価であり、シールドガスとして炭酸ガスを使用した場合においてもスパッタの発生が少ないというフラックス入りワイヤの利点を発揮させることができるからである。このようなことから本発明に使用するフラックス入りワイヤはシールドガスとして炭酸ガスを使用したときに性能を最大限に発揮できるような成分となっている。
[C:0.03〜0.10質量%]
Cは、溶接金属の焼入れ性を高め、強度および靭性を確保するうえで重要な元素である。Cは鋼製外皮とフラックスの一方または両方に含有させるがこれらの合計が、ワイヤ全質量に対し(以下の各成分についても同様)0.03質量%(以下、%という)未満であると、必要な強度と靭性が得られない。一方、0.10%を超えると溶接金属の高温割れ感受性が高くなる。したがってCは0.03〜0.10%とする。
[Si:0.4〜1.0%]
Siは、溶接金属の酸素量を低下させて靭性の向上に重要な元素である。しかしながら、多くなりすぎると大入熱、高パス間温度での溶接施工条件では溶接金属を脆化させる。また、大入熱、高パス間温度での溶接施工条件ではSiの消耗が多いが、Siが適量溶接金属に歩留まって強度を確保する必要がある。鋼製外皮とフラックスの一方または両方に含有するSiの合計が0.4%未満であると、所定の強度が得られず靭性も低下する。一方、1.0%を超えると溶接金属の靭性が悪くなる。したがってSiは0.4〜1.0%とする。Siはフラックス成分としては、フェロシリコン、金属Si、シリコンマンガンなどとして添加される。
[Mn:1.7〜2.8%]
Mnは、溶接金属の酸素量を下げて靭性を得るための重要な元素である。また、強度の改善にも有効な元素である。さらに、高融点のMnSを形成して硫化物が溶接金属の粒界に晶出するのを防止し割れを抑制する。反面、多くなりすぎると大入熱、高パス間温度の溶接施工条件では、Siと同様に溶接金属を脆化させる。鋼製外皮とフラックスの一方または両方に含有するMnの合計が1.7%未満であると、所定の強度と安定した靭性が得られない。一方、2.8%を超えると溶接金属の靭性が低下する。したがってMnは1.7〜2.8%とする。Mnはフラックス成分としては、フェロマンガン、金属Mn、シリコンマンガンなどとして添加される。
[Mo:0.1〜0.3%]
Moは、溶接金属の焼入れ性を高める元素である。特に大入熱、高パス間温度の溶接施工条件では溶接金属の焼入れ性が不足するので、強度を確保するうえで必須の元素である。鋼製外皮とフラックスの一方または両方に含有するMoの合計が0.1%未満であると、必要な強度が得られない。一方、0.3%を超えると強度が高くなりすぎ靭性が低下する。したがってMoは0.1〜0.3%とする。Moはフラックス成分としては、フェロモリブデンなどとして添加される。
[Mg:0.35〜0.65%]
Mgは、強脱酸剤として溶接金属の酸素を低減して溶接金属の靭性を向上させる。特に、大入熱、高パス間温度の溶接施工条件では溶融プールが大きくなって他の脱酸剤(C、Si、Mn)の消耗が多いので、主にMgで脱酸して靭性を確保する。Mgは金属MgやAl−Mg合金としてフラックス中に添加されるが、Mgが0.35%未満であると溶接金属の酸素が多くなって靭性が低下する。一方、0.65%を超えるとスパッタ発生量が多くなる。したがって、Mgは0.35〜0.65%とする。
[Ti酸化物のTiO換算値:4.8〜6.5%]
フラックス中のルチール、チタンスラグ等のTi酸化物は、アーク安定剤であるとともにビード形状を良好にする。また、立向上進溶接では適度な粘性と融点のスラグにより溶融メタルが垂れるのを防止する。さらに、一部がTi酸化物として溶接金属に歩留り、再結晶の核となることにより溶接金属のミクロ組織を微細化して靭性を向上する。Ti酸化物のTiO換算値が4.8%未満であるとアークが不安定でスパッタが多くビード形状も不良となる。また、立向上進溶接で溶融メタルが垂れるようになる。さらに、溶接金属へのTi酸化物の歩留りが少なくなってミクロ組織が粗大となって靭性が低下する。一方、6.5%を超えるとアークは安定してスパッタ発生量も少なくなるが、多層盛溶接でスラグ量が多くなりスラグ剥離性が不良となる。また、溶接金属へのTi酸化物の歩留りが過剰になり非金属介在物が多くなって靭性が低下する。したがって、Ti酸化物のTiO換算値は4.8〜6.5%とする。
[Si酸化物のSiO換算値:0.3〜0.8%]
フラックス中の珪砂やジルコンサンド、珪酸ソーダ等のSi酸化物は、大入熱、高パス間温度の溶接施工条件においても溶融スラグの粘性を高めてスラグ被包性を向上させてビード外観およびスラグ剥離性を向上する。Si酸化物のSiO換算値が0.3%未満であると溶融スラグの粘性が低くなりスラグ被包性が悪くビード形状が不良でスラグが焼き付くようになる。一方、0.8%を超えると溶接金属のミクロ組織の硬化相生成を促進して溶接金属の靭性が低下する。したがって、Si酸化物のSiO換算値は0.3〜0.8%とする。
[Zr酸化物のZrO換算値:0.2〜0.5%]
フラックス中のジルコンサンド、酸化ジルコン等のZr酸化物は、溶融スラグの凝固温度を高くして立向上進姿勢溶接で溶融メタルを垂れにくくする。また、下向溶接のさいスラグ被包性を高めてビード形状を良好にする。Zr酸化物のZrO換算値が0.2%未満であると立向上進姿勢溶接で溶融メタルが垂れやすくなり、下向溶接ではスラグ被包性が悪くビード形状が不良となる。一方、0.5%を超えるとスラグが緻密で固くなりスラグ剥離性が不良となる。したがって、Zr酸化物のZrO換算値は0.2〜0.5%とする。
[AlのAl換算値およびAlの1種または2種の合計:0.4〜1.2%]
Alは鋼製外皮とフラックスの一方または両方から添加されるが、フラックスには金属Al、Al−Mg合金、フェロアルミ等として添加される。またAlとしてフラックスに添加されることもある。Alは酸化物となってAlとともに溶融スラグの粘性および凝固点を調整してスラグ被包性を高めてビード形状を良好にする。AlのAl換算値およびAlの1種または2種の合計が0.4%未満であると下向溶接のさいスラグ被包性が悪くビード形状不良となる。一方、1.2%を超えると溶接金属中にAlが非金属介在物として残留し靭性が低下する。また、立向上進姿勢溶接で溶融メタルが垂れやすくなる。したがって、AlのAl換算値およびAlの1種または2種の合計は0.4〜1.2%とする。
[Na化合物およびK化合物のNaO換算値およびKO換算値の1種または2種の合計:0.06〜0.20%]
カリ長石、珪酸ソーダや珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、弗化ソーダや珪弗化カリ等の弗素化合物からのNaおよびKは、アーク安定剤およびスラグ形成剤として作用する。Na化合物およびK化合物のNaO換算値およびKO換算値の1種または2種の合計が0.06%未満であると、アークが不安定でスパッタ発生量が多くなる。一方、0.20%を超えるとスラグ剥離性が不良となる。また、立向上進姿勢溶接で溶融メタルが垂れやすくなる。したがって、Na化合物およびK化合物のNaO換算値およびKO換算値の1種または2種の合計は0.06〜0.20%とする。
[弗素化合物のF換算値:0.03%以下]
フラックス中の弗化ソーダや珪弗化カリ等の弗素化合物は、アークの指向性を高めて安定した溶融プールを形成するが、大入熱、高パス間温度の溶接施工条件においてはスパッタ発生量が多くなる。したがって、弗素化合物のF換算値は0.03%以下とする。
[ワイヤ表面の銅めっき厚さ:0.3〜0.9μm]
ワイヤ表面の銅めっきは、チップ先端での通電性を良好にしアークを安定にする。銅めっき厚さが0.3μm未満であると、特に大入熱、高パス間温度の溶接施工条件においてはアークが不安定となる。一方、銅めっき厚さが0.9μmを超えると、溶接時におけるワイヤ表面とコンジットチューブとの接触によって削られた銅めっきが、チップに蓄積されついにはチップに詰まってアークが停止する。したがって、ワイヤ表面の銅めっき厚さは0.3〜0.9μmが好ましい。なおワイヤ表面に銅めっきを施す場合めっき液に浸漬するので、ワイヤは鋼製外皮に貫通した合わせ目が無いものを用いる。
[全水素量:20ppm以下]
ワイヤの水素は、溶接金属の拡散性水素源となるのでできるだけ低減する必要があり、全水素量が20ppm以下であることが好ましい。ワイヤの全水素量が20ppmを超えると拡散性水素量(JIS Z3118)が4ml/100gを超えるので、多層盛溶接をした場合に低温割れの感受性が高まる。ワイヤ中の全水素量は、不活性ガス融解熱伝導度法などにより測定することができる。
なお、本発明に用いるフラックス入りワイヤは、鋼帯をパイプ状に成形しその内部にフラックスを充填した構造で、製造の過程で成形した鋼製外皮を溶接した貫通した合わせ目が無いワイヤと、溶接を行わず鋼製外皮に貫通した合わせ目を有するワイヤとに大別できる。本発明においては何れの断面構造も採用できるが、鋼製外皮に貫通した合わせ目を有するワイヤは、水素含有量の低い充填フラックスの選定が必要である。鋼製外皮に貫通した合わせ目の無いワイヤは、ワイヤの全水素量を低減することを目的に650〜1000℃での熱処理が可能であり、また製造後の吸湿がないことから、拡散性水素量を低減して耐割れ性を向上できるので、より好ましい。
本発明のガスシールドアーク溶接方法に用いるフラックス入りワイヤのその他の成分は、成分調整のために添加した鉄粉、鋼製外皮のFe分、鉄合金(フェロシリコン、フェロマンガン等)のFe分および不可避不純物である。
以下、本発明の効果を実施例により具体的に説明する。JIS G3141 SPCCの鋼帯を鋼製外皮に使用して表1および表2に示すワイヤ径1.4mmのフラックス入りワイヤを試作した。各試作ワイヤは、伸線途中で650〜800℃で焼鈍を実施したが、鋼製外皮に貫通した合わせ目を有するワイヤ記号W4、W8、W11およびW18は、Ar雰囲気中で焼鈍し、ワイヤ製造後は、ビニール製の袋に封入して溶接時まで保管した。なお、ワイヤ記号W21は、焼鈍およびビニール製の袋への封入は実施しなかった。鋼製外皮に貫通した合わせ目の無いワイヤは、ワイヤ表面に銅めっきを施した。
Figure 0005356142
Figure 0005356142
各試作ワイヤにつき(株)堀場製作所製の水素分析装置:EMGA−621を用いて全水素量を測定した。また各試作ワイヤにつき拡散性水素量の測定、スパッタ発生量の測定、立向上進姿勢溶接での溶接作業性、多層盛溶接での溶接作業性および機械的性能の調査をした。拡散性水素量の測定は、JIS Z3118にしたがって測定した。拡散性水素量は4ml/100g以下を良好とした。
スパッタ発生量の測定は銅製の捕集箱を用いて、表3に示す条件No.T1でJIS G3136 SN490B鋼、板厚12mmの試験板に30秒×5回溶接し、スパッタを捕集して1分間当りのスパッタ発生量を算出した。1分間当りのスパッタ発生量が1.0g以下を良好とした。
Figure 0005356142
立向上進姿勢溶接での溶接作業性の調査は、表3に示す条件No.T2でJIS G3136 SN490B鋼、板厚12mmの鋼板をT字すみ肉試験体として溶接し、アークの安定性、溶融メタル垂れの有無およびスラグ剥離性について調査した。
下向多層盛溶接は、JIS G3136 SN490B鋼、板厚20mmの鋼板を開先角度45度、ルート間隔12mmの裏当付き試験板として、表3に示す条件No.T3の溶接施工条件範囲で各試験の溶接入熱量およびパス間温度を変えて溶接した。そして溶接パス数、アークの安定性、スラグ剥離性、ビード形状および高温割れの有無を調査した。
下向多層盛溶接においては、さらに溶接金属の板厚中央部から引張試験片(JIS Z2201 A1号)およびシャルピー衝撃試験片(JIS Z2202 4号)を採取して評価した。引張強さは540〜680MPaを合格とし、シャルピー衝撃試験は試験温度0℃で各5本行い平均値が70J以上を合格とした。それらの結果を表4および表5にまとめて示す。
Figure 0005356142
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表4および表5中試験No.1〜10が本発明例、試験No.11〜26は比較例である。
本発明例である試験No.1〜10は、用いたフラックス入りワイヤの成分組成が適量であるのでスパッタ発生量が少なく、立向上進姿勢溶接での溶接作業性が良好であった。また下向多層盛溶接においても溶接入熱量およびパス間温度が適正であるので溶接パス数が少なく、溶接作業性が良好で高温われも無く、溶接金属の引張強さおよび吸収エネルギーも良好で極めて満足な結果であった。また、用いた何れのフラックス入りワイヤも全水素量が低いので拡散性水素量も低値であった。なお、試験No.4およびNo.8は、用いたフラックス入りワイヤNo.W4およびW8が鋼製外皮の断面に貫通した合わせ目を有し、ワイヤ表面に銅めっきが施されていないので立向上進姿勢溶接および下向多層盛溶接ともにややアークが不安定であった。
比較例中試験No.11は、用いたフラックス入りワイヤNo.W11のCが少ないので、下向多層盛溶接の機械試験で引張強さが低く吸収エネルギーも低値であった。また、ZrOが少ないので立向上進姿勢溶接で溶融メタルが垂れ、下向多層盛溶接ではスラグの被包性が悪くビード形状が不良であった。さらに、鋼製外皮の断面に貫通した合わせ目を有し銅めっきが施されていないので、立向上進姿勢溶接および下向多層盛溶接ともにややアークが不安定であった。
試験No.12は、用いたフラックス入りワイヤNo.W12のCが多いので、下向多層盛溶接で高温割れが生じた。また、SiOが多いので下向多層盛溶接の機械試験で吸収エネルギーが低値であった。
試験No.13は、用いたフラックス入りワイヤNo.W13のSiが少ないので、下向多層盛溶接の機械試験で引張強さが低く吸収エネルギーも低値であった。また、AlのAl換算値およびAlの合計が少ないので、下向多層盛溶接でスラグの被包性が悪くビード形状が不良であった。
試験No.14は、用いたフラックス入りワイヤNo.W14のSiが多いので、下向多層盛溶接の機械試験で吸収エネルギーが低値であった。また、SiOが少ないので立向上進姿勢溶接および下向多層盛溶接ともにスラグ剥離性が不良で、下向多層盛溶接ではスラグの被包性が悪くビード形状も不良であった。
試験No.15は、用いたフラックス入りワイヤNo.W15のMnが少ないので、下向多層盛溶接の機械試験で引張強さが低く吸収エネルギーも低値であった。また、弗素化合物のF換算値が多いのでスパッタ発生量が多かった。
試験No.16は、用いたフラックス入りワイヤNo.W16のMnが多いので、下向多層盛溶接の機械試験で吸収エネルギーが低値であった。また、Na化合物およびK化合物のNaO換算値およびKO換算値の合計が多いので、立向上進姿勢溶接および下向多層盛溶接ともにスラグ剥離性が不良で、立向上進姿勢溶接では溶融メタルも垂れた。
試験No.17は、用いたフラックス入りワイヤNo.W17のMoが少ないので、下向多層盛溶接の機械試験で引張強さが低かった。また、Na金属化合物のNaO換算値が少なく他にK化合物の添加もないのでスパッタ発生量が多く、立向上進姿勢溶接および下向多層盛溶接ともにアークが不安定であった。
試験No.18は、用いたフラックス入りワイヤNo.W18のMoが多いので、下向多層盛溶接の機械試験で引張強さが高く吸収エネルギーは低値であった。また、ZrOが多いので立向上進姿勢溶接および下向多層盛溶接ともにスラグ剥離性が不良で、鋼製外皮の断面に貫通した合わせ目を有し銅めっきが施されていないのでややアークが不安定であった。
試験No.19は、用いたフラックス入りワイヤNo.W19のMgが少ないので、下向多層盛溶接の機械試験で吸収エネルギーが低値であった。また、AlのAl換算値およびAlの合計が多いので立向上進姿勢溶接で溶融メタルが垂れた。
試験No.20は、用いたフラックス入りワイヤNo.W20のMgが多いのでスパッタ発生量が多かった。また、ワイヤ表面の銅めっき厚さが薄いので立向上進姿勢溶接および下向多層盛溶接ともにアークがやや不安定であった。
試験No.21は、用いたフラックス入りワイヤNo.W21の全水素量が多いので、拡散性水素量が多かった。また、TiOが多いので立向上進姿勢溶接および下向多層盛溶接ともにスラグ剥離性が不良であった。また鋼製外皮の断面に貫通した合わせ目を有し銅めっきが施されていないので、ややアークも不安定で、下向多層盛溶接の機械試験で吸収エネルギーも低値であった。
試験No.22は、用いたフラックス入りワイヤNo.W22のTiOが少ないので、スパッタ発生量が多く立向上進姿勢溶接および下向多層盛溶接ともにアークが不安定で、立向上進姿勢溶接で溶融メタルが垂れ下向多層盛溶接でビード形状が不良で、機械試験の吸収エネルギーが低値であった。さらに、ワイヤ表面の銅めっき厚さが厚いのでコンジットチューブを通過したワイヤ表面の銅めっきが剥離した箇所があった。
試験No.23は、溶接入熱量が低いので溶接パス数が多くなり、溶接に要した時間が長かった。
試験No.24は、溶接入熱量が高いので高温割れが生じ、機械試験で引張強さが低く吸収エネルギーも低値であった。
試験No.25は、パス間温度が低いので溶接待ち時間が長くなった。また、用いたフラックス入りワイヤNo.W21のTiOが多いのでスラグ剥離性が不良で、鋼製外皮の断面に貫通した合わせ目を有しワイヤ表面に銅めっきが施されていないので、ややアークも不安定であった。
試験No.26は、パス間温度が高いので機械試験で引張強さが低く吸収エネルギーも低値であった。

Claims (3)

  1. 鋼製外皮内にフラックスを充填したフラックス入りワイヤを使用するガスシールドアーク溶接方法において、ワイヤ全質量に対する質量%で、
    C:0.03〜0.10%、
    Si:0.4〜1.0%、
    Mn:1.7〜2.8%、
    Mo:0.1〜0.3%、
    Mg:0.35〜0.65%、
    Ti酸化物のTiO換算値:4.8〜6.5%、
    Si酸化物のSiO換算値:0.3〜0.8%、
    Zr酸化物のZrO換算値:0.2〜0.5%、
    AlのAl換算値およびAlの1種または2種の合計:0.4〜1.2%、
    Na化合物およびK化合物のNaO換算値およびKO換算値の1種または2種の合計:0.06〜0.20%
    を含有し、
    弗素化合物のF換算値が0.03%以下
    で、残部は鉄粉、鉄合金のFe分、鋼製外皮のFe分および不可避不純物からなるフラックス入りワイヤを用いて、溶接入熱量20〜40kJ/cm、パス間温度200〜350℃の溶接施工条件で炭酸ガスシールドアーク溶接することを特徴とするガスシールドアーク溶接方法。
  2. フラックス入りワイヤは製鋼外皮に貫通した合わせ目が無く、ワイヤ表面に厚さ0.3〜0.9μmの銅めっきを有することを特徴とする請求項1に記載のガスシールドアーク溶接用方法。
  3. フラックス入りワイヤは全水素量が20ppm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用方法。
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