JP3833940B2 - フェノール系重合体、その製造方法及びそれを用いたエポキシ樹脂用硬化剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種バインダー、コーティング材、積層材、成形材料等に有用なフェノール系重合体、その製造方法およびそれを用いたエポキシ樹脂用硬化剤に関する。特に半導体封止用、プリント基板絶縁用などのエポキシ硬化剤に好適な、低溶融粘度、高ガラス転移温度及び優れた硬化特性を兼ね備えたフェノール系重合体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子材料、特に半導体封止用、プリント基板絶縁用などのエポキシ樹脂硬化剤として、各種のフェノール系重合体、例えばフェノールノボラック型樹脂、フェノールアラルキル樹脂等が使用されている。しかし近年、半導体パッケージの小型・薄型化、多ピン化、高密度実装化に伴い、より高性能な樹脂が求められている。
【0003】
フェノール系重合体を半導体封止材用に使用するための重要な物性は、ガラス転移温度が高いことである。ガラス転移温度を上げるための手段としては水酸基濃度を高くすることが有効であり、そのため、いわゆる多官能タイプが多く用いられている。その代表的な例として下記式(2)に示すようなトリフェノールメタン型のフェノール樹脂が挙げられる(特公平7−121979、特開平2−173023など)。
【0004】
【化2】
【0005】
これらのトリフェノールメタン型のフェノール樹脂は、ガラス転移温度が高く、そのため各種の信頼性に優れるという特長を有する。また、BGA(Ball Grid Array)などの片面封止パッケージに用いた場合、パッケージの反りが小さいという優れた性能を有する。しかし最近の半導体パッケージでは、例えばBGAの場合、さらなるファインピッチ化や一括封止タイプになり、反りが小さいことの他に流動性が高いこと、基板表面との密着性が良いことなどが求められている。また、SOPやQFP、DIPなどのパッケージでも、ワイヤー長の延長、ワイヤー径の減少、小型化などの点で低粘度化が強く望まれている。また低溶融粘度であれば流動性や密着性が向上し、フィラーも多く配合できるので半田耐熱性や耐水性の面でも有利になる。即ちこれら封止材への要求特性を満たすために、高ガラス転移温度と低溶融粘度及び良好な硬化性を兼ね備えた フェノール系重合体(硬化剤)の出現が強く望まれている。
【0006】
またビルドアップ基板の層間絶縁材にも、耐水性に優れ、高ガラス転移温度で接着性のよいエポキシ樹脂組成物が望まれており、これを達成するために、元々耐水性や保存安定性に優れたフェノール系硬化剤で、高ガラス転移温度と低溶融粘度及び優れた硬化性を兼ね備えたものが望まれている。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしガラス転移温度を上げるために、ヒドロキシ基濃度を上げると、ヒドロキシ基同士の水素結合のため溶融粘度が上昇する。その結果、溶融粘度の上昇により流動性が悪く、そのためワイヤー変形など成形上のトラブルを引き起こす。溶融粘度を下げるために分子量を小さくしたりヒドロキシ基濃度を下げると、ガラス転移温度が下がるとともに成形時の硬化性が低下する。すなわち、高ガラス転移温度と低溶融粘度、硬化性の両立は原理的に難しいとされている。
【0008】
またトリフェノールメタン型のフェノール樹脂にアリル基を付与したタイプの樹脂も提案されている(特開平4−23824)。これらの樹脂はガラス転移温度が高いため熱収縮が小さく、また樹脂骨格的に自由体積が大きいため、硬化収縮率も小さく、これが低反りに寄与しているとされている。しかしこのタイプの樹脂は、実際にはアリル基導入量の増加とともにガラス転移温度が低下し、また硬化性も低下するため、要求されるレベルには未だ不充分であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記トリフェノールメタン型のフェノール樹脂の高ガラス転移温度、低熱収縮性、低反り等の優れた物性を生かし、かつ溶融粘度が低く硬化性にも優れたフェノール系硬化剤を得るために鋭意検討した結果、分子内にトリフェノールメタン型重合体単位と、フェノールノボラック重合体単位を共に有し、両者の重合度の比を特定範囲にすることにより、高ガラス転移温度で、且つ低溶融粘度で硬化性の優れたフェノール系重合体が得られることを見い出し本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は下記一般式(1)で表わされ、150℃における溶融粘度が50〜300mPa・sであるフェノール系重合体である。
【化3】
(式中、m/nが0.7〜1.5であり、またR1、R2、R3及びR4はヒドロキシ基又はアルキル基であり、p、q、r及びsは0〜2である。)
【0011】
また本発明は、フェノール類、サリチルアルデヒド類及びホルムアルデヒドを、酸触媒の存在下で縮合させ、減圧処理により酸触媒を除去することを特徴とする上記式(1)で示されるフェノール系重合体の製造方法である。
【0012】
さらに本発明は、上記式(1)で示されるフェノール系重合体からなるエポキシ樹脂用硬化剤である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のフェノール系重合体は式(1)で示されるトリフェノールメタン型樹脂の重合単位をn個、フェノールノボラック樹脂の重合単位をm個有する共重合タイプのフェノール系重合体であり、式(1)において各重合単位の重合度の比m/nが0.7〜1.5、好ましくは0.9〜1.4である。また150℃における溶融粘度が50〜300mPa・s、好ましくは50〜200mPa・sである。このような溶融粘度を有するものとして、各重合単位の重合度n及びmが通常0〜10の重合体の混合物で、平均重合度がいずれも0.6〜2.0、好ましくは0.8〜1.4のものが用いられる。
【0014】
重合度が高く、溶融粘度が上記範囲より高くなると流動性が低下する。またこれより低分子量で溶融粘度が低いものはガラス転移温度が低くなるので好ましくない。
【0015】
尚、特開昭63―22824号公報には、トリフェノールメタン型樹脂とフェノールノボラック樹脂の共重合体について記載されているが、本発明におけるような低溶融粘度のものは全く開示されていない。とくに具体例として示されているような重合条件では、重合度が大きく、150℃での溶融粘度は300mPa・sを大きく上回るような樹脂しか得られず、本発明の目的を達成するものではない。
【0016】
本発明のフェノール系重合体においてはまた、m/nが1.5を超えるとガラス転移温度が低くなり、また硬化速度も遅くなる。一方m/nが0.7未満では溶融粘度が上昇し流動性が悪くなる。
【0017】
式(1)で表される本発明のフェノール系重合体は、原料フェノール類及びサリチルアルデヒド類の種類によって、式(1)におけるR1、R2、R3及びR4の種類及び数が各種のものが得られるが、フェニル基当たりの置換ヒドロキシ基の平均数は1.0〜1.6である。また、p,q,r,sは0〜2であるが、原料としてフェノール及びサリチルアルデヒドを用いた場合は、p=q=r=s=0、即ち下記式(3)のものが得られる。
【0018】
【化4】
【0019】
本発明のフェノール系重合体は、分子内にトリフェノールメタン型樹脂及びフェノールノボラック樹脂の重合単位を特定の割合で共に有する構造であり、それによりエポキシ硬化剤に好適な、低溶融粘度、高ガラス転移温度、優れた硬化特性を兼ね備えた重合体となっている。
【0020】
本発明のフェノール系重合体は、バインダー、コーティング材、積層材、成形材料等の用途に広く使用できるが、特に低溶融粘度で、しかも高いガラス転移温度と優れた硬化特性を有するところから、特に半導体封止用、プリント基板絶縁用などのエポキシ硬化剤に適している。
【0021】
[フェノール系重合体の製造]
本発明で用いる上記式(1)で示されるフェノール系重合体は、フェノール類としてフェノールを、またサリチルアルデヒド類としてサリチルアルデヒドを使用した場合を例に取ると、下記式(4)に従いフェノール、サリチルアルデヒド及びホルムアルデヒドを、酸触媒の存在下で縮合させることにより製造することが出来る。
【0022】
【化5】
【0023】
縮合反応は、式(4)のようにサリチルアルデヒドとホルムアルデヒドを同時に添加して1段で行なうこともできるが、本発明のフェノール系重合体の製造方法として、より好ましい方法は式 (5) 及び式 (6) の反応を逐次行なう2段反応である。
【0024】
2段反応においては先ず、式(5)のように、フェノールとホルムアルデヒドを、酸触媒の存在下で縮合させ、予めフェノールノボラック樹脂を生成させ、次いで式(6)によりサリチルアルデヒドを添加し、酸触媒の存在下で縮合させる2段反応で行なう。このような2段反応においては、2段目の反応において新たにフェノールを添加する。この場合も1段反応の場合と同様にフェノールを過剰に使用することが重要である。1段目の反応においてホルムアルデヒド1モルに対してフェノール類を3.3〜10.0モル存在させる。2段目の反応において追加するサリチルアルデヒド及びフェノールは、1〜2段反応のトータルで仕込むサリチルアルデヒドとホルムアルデヒドの合計1モルに対して、1〜2段のトータルで仕込むフェノールが3.3〜10.0モルの範囲で使用することが重要である。このような2段反応で行なうと、トリフェノールメタン型樹脂及びフェノールノボラック樹脂の各重合単位の重合度、すなわちn及びmの分布が狭くなり、分子量のコントロールが容易となり、所望の溶融粘度の重合体が得やすいので、本発明の目的のためには好ましい。
【0025】
【化6】
【0026】
【化7】
【0027】
本発明のフェノール系重合体の製造において、原料のフェノール類、サリチルアルデヒド類及びホルムアルデヒドの使用量をコントロールするとともに、上記のように反応条件を設定することにより、所望の150℃における溶融粘度及び各重合単位の重合度比m/nを有する重合体を得ることができる。前記1段反応及び2段反応において酸触媒の使用量は、その種類によっても異なるが、蓚酸の場合は0.1〜2.0重量%程度、塩酸の場合は0.02〜2.0重量%程度、またトリフルオロメタンスルホン酸の場合は0.002〜0.01重量%程度使用するのがよい。とくに2段反応を行なう場合、2段目のサリチルアルデヒド類をフェノール類及びフェノールノボラック樹脂と反応させる際には、塩酸又はトリフルオロメタンスルホン酸を使用することが好ましい。また反応温度はとくに限定はないが、60〜100℃程度の範囲に設定するのが好ましい。
【0028】
フェノール類、ホルムアルデヒド及びサリチルアルデヒド類を酸触媒の存在下で縮合させた後、未反応のフェノール類及び酸触媒を除去することにより、本発明のフェノール系重合体を得ることができる。フェノール類の除去方法は、減圧下あるいは不活性ガスを吹き込みながら熱をかけ、フェノール類を蒸留し系外へ除去する方法が一般的である。酸触媒の除去は、水洗などの洗浄による方法もあるが、揮発性の酸を用いた場合は、フェノール類と一緒に蒸留により系外へ除去する方法が、反応工程の短縮や釜効率のアップという点で好ましい。
【0029】
フェノール類としては例えばフェノール、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール、ブチルメチルフェノール等の1価フェノールの他、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等の2価フェノールも使用することができるが、特にフェノールが好ましい。
【0030】
またサリチルアルデヒド類としては、サリチルアルデヒドのほかに、アルキル置換のサリチルアルデヒドなどを使用することができるが、とくにサリチルアルデヒドを使用することが好ましい。またp−ヒドロキシベンズアルデヒドと併用することも可能である。
【0031】
さらにホルムアルデヒドとしては、37%ホルムアルデヒド水溶液、及びパラホルムアルデヒド、トリオキサンなど酸存在下で分解してホルムアルデヒドとなる重合物を用いることができる。
【0032】
原料として用いる上記フェノール類及びサリチルアルデヒド類の種類により、式(1)における各フェニル基に置換するヒドロキシ基の数を調整することができるが、本発明のフェノール系重合体中、フェニル基当たりの置換ヒドロキシ基の平均数は、1.0〜1.6、好ましくは1.0〜1.4であり、原料としてフェノール及びサリチルアルデヒドを用いた場合はp,q,r,sはいずれも0であり、フェニル基当たりの置換ヒドロキシ基の平均数は1となる。
【0033】
酸触媒としては特に限定はなく塩酸、蓚酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸など公知のものを単独であるいは2種以上併用して使用することができるが、塩酸、蓚酸又はトリフルオロメタンスルホン酸が特に好ましい。これらの触媒は触媒活性が高く、また反応終了後減圧処理により、未反応のフェノール、サリチルアルデヒド、ホルムアルデヒドと共に触媒を除去することができるので水洗等の洗浄工程が不要である。
【0034】
[エポキシ樹脂硬化物]
本発明のフェノール系重合体は、エポキシ樹脂用硬化剤として用いることができる。エポキシ樹脂硬化物はフェノール系重合体とエポキシ樹脂及び硬化促進剤を混合し、100〜250℃の温度範囲で硬化させることにより得られる。
【0035】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂など、分子中にエポキシ基を二個以上有するエポキシ樹脂が挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
(硬化促進剤)
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂をフェノール系硬化剤で硬化させるための公知の硬化促進剤を用いることが出来る。このような硬化促進剤としては例えば有機ホスフィン化合物およびそのボロン塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール類及びそのテトラフェニルボロン塩などを挙げることができるが、この中でも、硬化性や耐湿性の点から、トリフェニルホスフィン及び1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)が好ましい。また、より高流動性にするためには、加熱により活性が発現する熱潜在性の硬化促進剤がより好ましく、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルホスフォニウム誘導体が好ましい。
【0037】
(その他添加剤)
本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、無機充填剤、離型剤、着色剤、難燃剤、低応力剤等を、添加または予め反応して用いることができる。とくに半導体封止用に使用する場合は、無機充填剤の添加は必須である.このような無機充填剤の例として、非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、ガラス、珪酸カルシウム、石膏、炭酸カルシウム、マグネサイト、クレー、タルク、マイカ、マグネシア、硫酸バリウムなどを挙げることができるが、とくに非晶性シリカ、結晶性シリカなどが好ましい.これら添加剤の使用量は、従来の半導体封止用エポキシ樹脂組成物における使用量と同様でよい。
【0038】
本発明のトリフェノールメタン型樹脂は適当量のフェノールノボラック樹脂単位を有し、エポキシ樹脂硬化剤として用いた場合、高ガラス転移温度等、優れた硬化特性を維持し、しかも低粘度化を実現させることができる。
【0039】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお本発明で得られたフェノール系重合体の物性測定法を(1)、(2)に、またフェノー系重合体を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物(フェノール系重合体、エポキシ樹脂、無機フィラー、硬化促進剤、シランカップリング剤、カルナバワックスからなる組成物)の評価方法を(3)〜(5)に示す。
【0040】
(1)150℃溶融粘度
ICI溶融粘度計を用い、150℃でのフェノール系重合体の溶融粘度を測定した。
【0041】
(2)重合度比 m/n
ホルムアルデヒド及びサリチルアルデヒドの反応率を求め、仕込み量と反応率から重合物中のメチレン結合/メチン結合(m/n)の比を求めた。尚、ホルムアルデヒド反応率は、反応後に残存するホルムアルデヒドを塩酸ヒドロキシルアミン法で測定し、求めた。またサリチルアルデヒドの反応率は、反応後の残存するサリチルアルデヒドをガスクロで測定し、求めた。
【0042】
(3)キュラストメーター硬化トルク
フェノール系重合体を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物について、175℃での硬化によるトルク上昇スピードをキュラストメーターで測定し、60秒及び90秒のトルクを読み取った。
【0043】
(4)ガラス転移温度
フェノール系重合体を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物を、トランスファー成形機を用いて175℃ー120秒で成形した後、180℃で6時間ポストキュアさせた成形品から適当な大きさの試験片を切り出し、TMA法(昇温速度5℃/分)によりガラス転移温度を測定した。
【0044】
(5)溶融粘度
フェノール系重合体を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物の175℃における最低溶融粘度を、フローテスター法(荷重:20kgf/cm2、ノズル:1φ×2Lmm)で測定した。
【0045】
[実施例1]
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール94g(1モル)、37%ホルマリン水溶液19.5g(ホルムアルデヒド換算で0.24モル)、蓚酸2水和物0.34gを仕込み、95℃で4時間反応させた。
【0046】
その後、さらにフェノール106.2g(1.13モル)、サリチルアルデヒド29.3g(0.24モル)、35%塩酸水溶液7.1gを追加仕込み、90℃で4時間反応させた。反応後の縮合液中に、未反応ホルムアルデヒド及びサリチルアルデヒドはいずれも検出されなかった(反応率100%)。
【0047】
この縮合液を、さらに減圧下熱処理することで、未反応のフェノール、水、蓚酸及びHClを系外に除去することにより、98.0gのフェノール系重合体を得た。
【0048】
原料仕込み比:サリチルアルデヒド+ホルムアルデヒドの合計に対して、フェノールは4.4モル倍。
生成フェノール系重合体の性状
水酸基当量 :100g/eq
150℃溶融粘度 :220mPa・s
m/n :1.0(アルデヒド類の反応率より求めた値)
[実施例2]
撹拌装置、コンデンサー、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応釜に、フェノール94g(1モル)、37%ホルマリン水溶液14.6g(ホルムアルデヒド換算で0.18モル)、蓚酸2水和物0.33gを仕込み、95℃で4時間反応させた。
【0049】
その後、さらにフェノール17.4g(0.19モル)、サリチルアルデヒド16.9g(0.14モル)、35%塩酸水溶液4.1gを追加仕込み、90℃で5時間反応させた。反応後の縮合液中に、未反応ホルムアルデヒド及びサリチルアルデヒドはいずれも検出されなかった(反応率100%)。
【0050】
この縮合液を、さらに減圧下熱処理することで、未反応のフェノール、水、蓚酸及びHClを系外に除去することにより、64.3gのフェノール系重合体を得た。
【0051】
原料仕込み比:サリチルアルデヒド+ホルムアルデヒドの合計に対して、フェノールは3.72モル倍。
生成フェノール系重合体の性状
水酸基当量 :101g/eq
150℃溶融粘度 :180mPa・s
m/n :1.3(アルデヒド類の反応率より求めた値)
【0052】
[実施例3]
35%塩酸水溶液4.1gの代わりに、10%のトリフルオロメタンスルホン酸85mgを用いた以外は実施例2と同様の処理を行ない、62.1gのフェノール系重合体を得た。
【0053】
原料仕込み比:サリチルアルデヒド+ホルムアルデヒドの合計に対して、フェノールは3.72モル倍。
生成フェノール系重合体の性状
水酸基当量 :101g/eq
150℃溶融粘度 :210mPa・s
m/n :1.3(アルデヒド類の反応率より求めた値)
[比較例1]
実施例1〜3で用いたガラス製反応釜に、フェノール94g(1モル)、37%ホルマリン水溶液19.5g(ホルムアルデヒド換算で0.24モル)、蓚酸2水和物0.34gを仕込み、95℃で4時間反応させた。
【0054】
その後、さらにフェノール35.7g(0.38モル)、サリチルアルデヒド14.7g(0.12モル)、35%塩酸水溶液4.7gを追加仕込み、90℃で4時間反応させた。反応後の縮合液中に、未反応ホルムアルデヒド及びサリチルアルデヒドはいずれも検出されなかった(反応率100%)。
【0055】
この縮合液を、さらに減圧下熱処理することで、未反応のフェノール、水、蓚酸及びHClを系外に除去することにより、70.5gのフェノール系重合体を得た。
【0056】
原料仕込み比:サリチルアルデヒド+ホルムアルデヒドの合計に対して、フェノールは3.8モル倍。
生成フェノール系重合体の性状
水酸基当量 :100g/eq
150℃溶融粘度 :190mPa・s
m/n :2.0(アルデヒド類の反応率より求めた値)
[比較例2]
実施例1〜3で用いたガラス製反応釜に、フェノール94g(1モル)、37%ホルマリン水溶液16.2g(ホルムアルデヒド換算で0.20モル)、蓚酸2水和物0.33gを仕込み、95℃で4時間反応させた。
【0057】
その後、さらにフェノール162.4g(1.73モル)、サリチルアルデヒド48.8g(0.40モル)、35%塩酸水溶液9.2gを追加仕込み、90℃で4時間反応させた。反応後の縮合液中に、未反応ホルムアルデヒド及びサリチルアルデヒドはいずれも検出されなかった(反応率100%)。
【0058】
この縮合液を、さらに減圧下熱処理することで、未反応のフェノール、水、蓚酸及びHClを系外に除去することにより、122.1gのフェノール系重合体を得た。
【0059】
原料仕込み比:サリチルアルデヒド+ホルムアルデヒドの合計に対して、フェノールは4.55モル倍。
生成フェノール系重合体の性状
水酸基当量 :99g/eq
150℃溶融粘度 :520mPa・s
m/n :0.5(アルデヒド類の反応率より求めた値)
【0060】
[比較例3]
実施例1〜3で用いたガラス製反応釜に、フェノール94g(1モル)、37%ホルマリン水溶液16.2g(ホルムアルデヒド換算で0.20モル)、サリチルアルデヒド24.4g(0.20モル)、97%硫酸0.4gを同時に加え、95℃で7時間反応させた。反応後の縮合液中に、未反応ホルムアルデヒド及びサリチルアルデヒドはいずれも検出されなかった(反応率100%)。
【0061】
この縮合液を、NaOHで中和し、純粋100gを加え水洗を行ない、有機相をさらに減圧下で蒸留し、未反応のフェノールを系外に除去することにより、63gのフェノール系重合体を得た。
【0062】
原料仕込み比:サリチルアルデヒド+ホルムアルデヒドの合計に対して、フェノールは2.5モル倍。
生成フェノール系重合体の性状
水酸基当量 :99g/eq
150℃溶融粘度 :730mPa・s
m/n :1.0(アルデヒド類の反応率より求めた値)
【0063】
[実施例4〜6、比較例4〜6]
表1に示す配合比で、エポキシ樹脂組成物を製造した。配合方法は、ロール混練機を用い、80〜90℃で4分間の混練を行い、冷却後粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。尚、使用したエポキシ樹脂は、オルソクレゾール型エポキシ樹脂(日本化薬社製 ESCN195XL、エポキシ当量193g/eq)である。
【0064】
【表1】
【0065】
表1から明らかなように、実施例1〜3で得られたフェノール系重合体は、低溶融粘度、高ガラス転移温度、速硬化性の全てを兼ね備えている.これに対し比較例1のものは硬化性が劣っており、また比較例2のものは硬化性及び溶融粘度の点で劣っており、比較例3のものは溶融粘度の点で劣っている。
【0066】
【発明の効果】
本発明のフェノール系重合体は、分子内にトリフェノールメタン型樹脂及びフェノールノボラック樹脂の重合単位を共に有し、両者の重合度及び両者の重合度の比が特定の範囲である構造としたことにより、エポキシ硬化剤に好適な、低溶融粘度、高ガラス転移温度、優れた硬化特性を兼ね備えた重合体である。これにより、高ガラス転移温度、低熱収縮性、速硬化性というトリフェノールメタン型のフェノール樹脂の特徴を生かし、かつトリフェノールメタン型樹脂の欠点とされていた高溶融粘度の問題を解決することができた。
これによりBGA等、最新の半導体封止材料に対応でき、エポキシ硬化剤として利用できる。
Claims (6)
- p=q=r=s=0である請求項1記載のフェノール系重合体。
- ホルムアルデヒド1モルに対してフェノール類を 3.3 〜 10.0 モル存在させ、酸触媒の存在下、反応温度 60 〜 100 ℃で縮合させて、予めフェノールノボラック樹脂を生成させ、次いで、1〜2段反応のトータルで仕込むサリチルアルデヒドとホルムアルデヒドの合計1モルに対して、1〜2段のトータルで仕込むフェノールが 3.3 〜 10.0 モルとなるように、フェノール類とサリチルアルデヒド類を添加し、酸触媒の存在下、反応温度 60 〜 100 ℃で縮合させ、減圧処理により酸触媒を除去することを特徴とする請求項1または2に記載のフェノール系重合体の製造方法。
- サリチルアルデヒド類1モルに対しホルムアルデヒド0.7〜1.5モルの割合で使用することを特徴とする請求項3に記載のフェノール系重合体の製造方法。
- 酸触媒が塩酸、蓚酸またはトリフルオロメタンスルホン酸であることを特徴とする請求項3または4に記載のフェノール系重合体の製造方法。
- 請求項1または2に記載のフェノール系重合体からなるエポキシ樹脂用硬化剤。
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