JP3832351B2 - 車両用空調防曇制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空調用圧縮機の駆動動力の低減と窓ガラスの防曇性の確保とを両立する車両用空調防曇制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平11−291753号公報には、空調用圧縮機の作動制御により、蒸発器温度(具体的には蒸発器吹出空気温度)を凝縮水の凍結温度付近の低めの第1目標温度(例えば、3℃〜4℃程度)に制御する最大冷却モード(一般にはエアコンモードと称される)と、蒸発器温度を上記低めの第1目標温度より十分高い第2目標温度(例えば、10℃〜12℃程度)に制御する省動力冷却モード(一般にはエコノミーモードと称される)とを切り替え可能とする車両用空調装置が記載されている。
【0003】
すなわち、最大冷却モードでは実際の蒸発器温度が上記低めの第1目標温度となるように空調用圧縮機の作動を制御し、そして、省動力冷却モードでは実際の蒸発器温度が上記高めの第2目標温度となるように空調用圧縮機の作動を制御する。
【0004】
ところで、省動力冷却モードでは蒸発器温度が上記高めの第2目標温度となり、空調用圧縮機の駆動動力を低減できるが、その反面、車室内吹出空気の除湿能力が最大冷却モード時より低下して車両の窓ガラスが曇り易くなる。
【0005】
そこで、上記の従来装置では、省動力冷却モードの実行により車両の窓ガラスが曇ってきて、乗員がデフロスタモードの設定操作を行うと、空調の吹出モードをデフロスタモードに切り替えると同時に、空調用圧縮機の作動モードを最大冷却モードに自動切り替えして、窓ガラスの防曇性能を高めようとしている。
【0006】
そして、窓ガラスの曇りが除去されて、乗員がデフロスタモード以外の他の吹出モードを選択してデフロスタモードが解除されるときに、最大冷却モードを直ちに停止すると、車室内吹出空気の除湿能力の低下により窓ガラスが再び曇る恐れがある。そこで、上記の従来装置では、デフロスタモードの解除後も、所定時間の間は最大冷却モードを維持し、所定時間経過後に始めて省動力冷却モードに切り替えるようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、デフロスタモードの解除後も、所定時間の間は最大冷却モードの状態を維持するので、空調用圧縮機の駆動動力の大きい状態が長時間継続されて、圧縮機の駆動源である車両エンジンの燃費を悪化させる原因になっている。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、窓ガラスの防曇性を確保しつつ、空調用圧縮機の駆動動力を低減することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、デフロスタモードにおける防曇性能を効果的に向上できる車両用空調防曇制御装置を提供することを他の目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、前面窓ガラス(W)を直接加熱する電気発熱体(61)を備える車両において、空調用圧縮機(11)の作動制御により冷房用熱交換器(9)の温度を凝縮水の凍結温度付近の第1目標温度に制御する最大冷却モードと、空調用圧縮機(11)の作動制御により冷房用熱交換器(9)の温度を、第1目標温度をより高い第2目標温度に制御する省動力冷却モードとを切り替え可能とし、冷房用熱交換器(9)を通過した空調風を前面窓ガラス(W)の内面に吹き出すデフロスタモード時に最大冷却モードを設定し、デフロスタモードが解除されると、最大冷却モードを省動力冷却モードに切り替えるとともに、電気発熱体(61)に通電することを特徴とする。
【0011】
これにより、デフロスタモード時に空調用圧縮機(11)の作動モードとして最大冷却モードを設定して冷房用熱交換器(9)の除湿能力を最大限高めることができる。そのため、デフロスタモードによる防曇性能を高めて、前面窓ガラス(W)の曇りを急速に除去できる。
【0012】
更に、デフロスタモードが解除されると、最大冷却モードを省動力冷却モードに切り替えて、空調用圧縮機(11)の駆動動力を直ちに低減できる。従って、空調用圧縮機(11)を車両エンジンにより駆動する場合は車両エンジンの燃費を向上できる。
【0013】
しかも、最大冷却モードを省動力冷却モードに切り替えても、電気発熱体(61)に通電して前面窓ガラス(W)を直接加熱し、前面窓ガラス(W)の温度を上昇させるから、デフロスタモード解除後における窓ガラスの防曇性を良好に確保できる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、前面窓ガラス(W)を直接加熱する電気発熱体(61)を備える車両において、空調用圧縮機(11)の作動制御により冷房用熱交換器(9)の温度を凝縮水の凍結温度付近の第1目標温度に制御する最大冷却モードと、空調用圧縮機(11)の作動制御により冷房用熱交換器(9)の温度を、第1目標温度をより高い第2目標温度に制御する省動力冷却モードとを切り替え可能とし、冷房用熱交換器(9)を通過した空調風を前面窓ガラス(W)の内面に吹き出すデフロスタモード時に最大冷却モードを設定し、デフロスタモードにおいて、最大冷却モード設定後の経過時間が所定時間以上になると、最大冷却モードを維持したまま電気発熱体(61)に通電することを特徴とする。
【0015】
これにより、デフロスタモード時に空調用圧縮機(11)の作動モードとして最大冷却モードを設定して冷房用熱交換器(9)の除湿能力を最大限高めることができる。そのため、デフロスタモードによる防曇性能を高めることができる。しかも、最大冷却モード設定後の経過時間が所定時間以上になると、最大冷却モードを維持したまま電気発熱体(61)に通電するから、電気発熱体(61)により前面窓ガラス(W)を直接加熱して前面窓ガラス(W)の温度を上昇できる。その結果、デフロスタモード時における窓ガラスの防曇性能をより一層高めることができ、曇りの発生しやすい条件下においても、前面窓ガラス(W)の曇りを急速に除去できる。
【0016】
請求項3に記載の発明では、請求項2において、デフロスタモードにおいて電気発熱体(61)に通電後の経過時間が所定時間以上になると、電気発熱体(61)への通電を維持したまま最大冷却モードを省動力冷却モードに切り替えることを特徴とする。
【0017】
これによると、デフロスタモードが解除されなくても、最大冷却モードによる圧縮機駆動動力が大きい状態を所定時間以内に制限できる。そのため、空調用圧縮機(11)を車両エンジンにより駆動する場合は車両エンジンの燃費を向上できる。
【0018】
そして、最大冷却モードを省動力冷却モードに切り替えても、電気発熱体(61)への通電を維持して前面窓ガラス(W)を直接加熱し、前面窓ガラス(W)の温度を上昇させるから、窓ガラスの防曇性を良好に確保できる。
【0019】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つにおいて、デフロスタモードの解除後に前面窓ガラス(W)の防曇状態を判定して、前面窓ガラス(W)が防曇状態にあると判定すると、電気発熱体(61)の通電を停止することを特徴とする。
【0020】
これにより、電気発熱体(61)の不要な電力消費を未然に防止できる。
【0021】
請求項5に記載の発明では、蒸請求項1ないし4のいずれか1つにおいて、冷房用熱交換器(9)を通過した空調風を前面窓ガラス(W)の内面および乗員足元部の両方に吹き出すフットデフロスタモードが選択されたときは、省動力冷却モードを設定して電気発熱体(61)に通電することを特徴とする。
【0022】
ところで、フットデフロスタモードは、デフロスタモードに比較して窓ガラスの曇り除去に対する緊急度が低い条件のとき選択される。そこで、この点に鑑みて請求項5では、フットデフロスタモード時に省動力冷却モードの設定と電気発熱体(61)への通電とにより防曇性能を確保して、圧縮機駆動動力を低減できる。
【0023】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態による車両用空調防曇制御装置を含む車両用空調装置全体の概略構成を示すもので、車両の前面窓ガラスWの防曇手段として、前面窓ガラスWを直接加熱して前面窓ガラスWの曇りを除去する電気発熱体61を備えている。この電気発熱体61は、車両のバッテリBから電力が供給されると発熱する透明導電性薄膜からなる電気発熱体にて構成されている。
【0025】
また、車両の前面窓ガラスWの別の防曇手段を空調装置1の送風機8、冷凍サイクル10の蒸発器9、ヒータコア15等により構成しており、冷凍サイクル10の蒸発器9によって除湿され、ヒータコア15により加熱された除湿温風を、送風機8により車両の前面窓ガラスWに向けて吹き出して前面窓ガラスWの曇りを除去するようになっている。
【0026】
車両用空調装置1は、車室内に向かって空気が送風される空気通路を構成するケース2を有し、このケース2の空気通路の最上流部に内気導入口3および外気導入口4を有する内外気切替箱5を配置している。この内外気切替箱5内に、内外気切替手段としての内外気切替ドア6を回動自在に配置している。
【0027】
この内外気切替ドア6はサーボモータ7によって駆動されるもので、内気導入口3より内気(車室内空気)を導入する内気モードと外気導入口4より外気(車室外空気)を導入する外気モードとを切り替える。
【0028】
内外気切替箱5の下流側には車室内に向かう空気流を発生させる電動式の送風機8を配置している。この送風機8は、遠心式の送風ファン8aをモータ8bにより駆動するようになっている。送風機8の下流側にはケース2内を流れる空気を冷却する蒸発器9を配置している。この蒸発器9は、送風機8の送風空気を冷却する冷房用熱交換器であって、冷凍サイクル10を構成する要素の一つである。
【0029】
なお、冷凍サイクル10は、圧縮機11の吐出側から、凝縮器12、レシーバ13および減圧装置をなす膨張弁14を介して蒸発器9に冷媒が循環するように形成された周知のものである。圧縮機11は、電磁クラッチ11aを介して車両エンジン(図示せず)の回転動力が伝達されることにより回転駆動される。
【0030】
蒸発器9の下流側にはケース2内を流れる空気を加熱するヒータコア15を配置している。このヒータコア15は車両エンジンの冷却水(以下、温水)を熱源として、蒸発器9通過後の空気(冷風)を加熱する暖房用熱交換器であり、その側方にはヒータコア15をバイパスして空気が流れるバイパス通路16が形成してある。
【0031】
蒸発器9とヒータコア15との間にエアミックスドア17が回動自在に配置してある。このエアミックスドア17はサーボモータ18により駆動されて、その回転位置(開度)が連続的に調節可能になっている。エアミックスドア17の開度によりヒータコア15を通る空気量(温風量)と、バイパス通路16を通過してヒータコア15をバイパスする空気量(冷風量)とを調節し、これにより、車室内に吹き出す空気の温度を調節するようになっている。従って、本例では、エアミックスドア17により車室内への吹出空気の温度調節手段が構成される。
【0032】
ケース2の空気通路の最下流部には、車両の前面窓ガラスWに向けて空調風を吹き出すためのデフロスタ吹出口19、乗員上半身に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出口20、および乗員下半身に向けて空調風を吹き出すためのフット吹出口21の計3種類の吹出口が設けられている。
【0033】
これら吹出口19〜21の上流部にはデフロスタドア22、フェイスドア23およびフットドア24が回動自在に配置されている。これらのデフロスタドア22、フェイスドア23およびフットドア24は、図示しないリンク機構を介して共通のサーボモータ25によって駆動される。
【0034】
制御手段としての制御装置30は、CPU31、ROM32およびRAM33等を含んで構成されるもので、予めROM32内に防曇制御および車室内の空調制御のための制御プログラムを記憶しており、その制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行う。制御装置30はバッテリBに接続されており、バッテリBから電力が供給されると制御プログラムをスタートするようになっている。
【0035】
制御装置30の出力側には、それぞれ上記サーボモータ7、18、25、送風機駆動回路34、クラッチ駆動回路35、および電気発熱体61が接続されている。送風機モータ8bの印加電圧を送風機駆動回路34により制御することにより、送風機モータ8bの回転数(風量)を制御する。また、圧縮機11の電磁クラッチ11aの通電をクラッチ駆動回路35により断続して圧縮機11の作動を断続制御する。また、制御装置30は、電気発熱体61への通電を断続制御する。
【0036】
制御装置30の入力側には、車室内の運転席前方の計器盤(図示せず)に設けられた空調操作パネル36の操作スイッチ37〜42が接続されている。この操作スイッチ37〜42のうち、内外気切替スイッチ37は、内気モードをマニュアル設定する内気スイッチ37aと、外気モードをマニュアル設定する外気スイッチ37bとを有している。
【0037】
温度設定スイッチ38は車室内の設定温度の信号を出すものであり、吹出モードスイッチ39は吹出モードとしてフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、およびデフロスタモードをマニュアル設定するための信号を出すものである。風量切替スイッチ40は送風機8のオンオフおよび送風機8の風量切替をマニュアル設定するための信号を出すものであり、エアコンスイッチ41は電磁クラッチ11aの通電のオンオフ信号を出して圧縮機11の作動を断続するものである。防曇スイッチ42は前面窓ガラスWの電気発熱体61のオンオフをマニュアル設定するための信号を出すものである。
【0038】
なお、フェイスモードは、フェイス吹出口20を全開し、デフロスタ吹出口19およびフット吹出口21を閉塞して、フェイス吹出口20のみから空調風を車室内の乗員上半身側へ吹き出すモードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口20およびフット吹出口21を全開し、デフロスタ吹出口19を閉塞して、フェイス吹出口20およびフット吹出口21の両方から乗員上半身側および乗員足元側へ空調風を略同量ずつ吹き出すモードである。
【0039】
フットモードは、フェイス吹出口20を閉塞し、フット吹出口21を全開し、デフロスタ吹出口19を小開度だけ開口して、フット吹出口21から主に空調風を乗員足元側へ吹き出すと同時に、デフロスタ吹出口19から少量の空調風を車室内の窓ガラス内面側へ吹き出すモードである。
【0040】
デフロスタモードは、フェイス吹出口20およびフット吹出口21を閉塞し、デフロスタ吹出口19を全開して、デフロスタ吹出口19から空調風を前面窓ガラスWの内面側へ吹き出すモードである。フットデフロスタモードは、フェイス吹出口20を閉塞し、デフロスタ吹出口19およびフット吹出口21を全開して、フット吹出口21とデフロスタ吹出口19から空調風を略同量ずつ吹き出すモードである。
【0041】
制御装置30の入力側には空調環境条件を検出するセンサとして、内気センサ50、外気センサ51、日射センサ52、水温センサ53、蒸発器温度センサ54、および湿度センサ55が接続されている。
【0042】
内気センサ50は内気温度を検出し、その検出温度に応じた内気温信号Trを発生する。外気センサ51は外気温度を検出し、その検出温度に応じた外気温信号Tamを発生する。日射センサ52は車室内に入射した日射量を検出し、その検出した日射量に応じた日射量信号Tsを発生する。水温センサ53はヒータコア15に循環する温水の温度を検出し、その検出水温に応じた水温信号Twを発生する。蒸発器温度センサ54は、蒸発器9の吹出空気温度を検出し、その検出温度に応じた蒸発器温度信号Teを発生する。そして、湿度検出手段としての湿度センサ55は、車室内において例えば前面窓ガラスWの近くに設置されて、車室内窓ガラス付近の相対湿度に応じた湿度信号RHを発生する。
【0043】
次に、上記構成において第1実施形態の作動を図2により説明する。図示しない車両エンジンのイグニッションスイッチがON位置に設定されてバッテリBから制御装置30に電源が供給されると、制御装置30は制御プログラムをスタートする。図2の制御ルーチンは空調操作パネル36のエアコンスイッチ41が投入されて電磁クラッチ11aの通電のオン信号が出るとスタートし、先ず、ステップS10にて圧縮機11の作動モードとして最大冷却モードを設定する。すなわち、蒸発器吹出空気温度の目標温度として、凝縮水の凍結温度付近の低めの第1目標温度(例えば、3℃〜4℃程度)を設定する。
【0044】
これにより、最大冷却モードでは実際の蒸発器吹出空気温度が上記第1目標温度より低下すると、電磁クラッチ11aの通電をオフして圧縮機11の作動を停止する。そして、実際の蒸発器吹出空気温度が上記第1目標温度を上回ると、電磁クラッチ11aの通電をオン状態に復帰させて圧縮機11を作動状態に復帰させる。このように、実際の蒸発器吹出空気温度の変動に応じて圧縮機11の作動を断続制御することにより、実際の蒸発器吹出空気温度を凍結温度付近の低めの第1目標温度に維持する。
【0045】
次のステップS20では、最大冷却モードの設定後の経過時間が所定時間t1(例えば、5分程度)に到達したか判定し、経過時間が所定時間t1に到達するまで、最大冷却モードの設定を維持する。これにより、車室内を急速に冷房できる。経過時間が所定時間t1に到達すると、ステップS30に進み、圧縮機11の作動モードとして省動力冷却モードを設定する。すなわち、蒸発器吹出空気温度の目標温度として、上記第1目標温度(例えば、3℃〜4℃程度)より十分高めの第2目標温度(例えば、10℃〜12℃程度)に設定する。
【0046】
これにより、省動力冷却モードでは実際の蒸発器吹出空気温度が上記第2目標温度より低下すると、電磁クラッチ11aの通電をオフして圧縮機11の作動を停止する。そして、実際の蒸発器吹出空気温度が上記第2目標温度を上回ると、電磁クラッチ11aの通電をオン状態に復帰させて圧縮機11を作動状態に復帰させる。このように、実際の蒸発器吹出空気温度の変動に応じて圧縮機11の作動を断続制御することにより、実際の蒸発器吹出空気温度を高めの第2目標温度に維持する。
【0047】
次のステップS40では吹出モードの判定を行う。具体的には、吹出モードとして、デフロスタモードおよびフットデフロスタモード以外のモード、すなわち、フェイスモード、バイレベルモード、およびフットモードが選択されているときは、ステップS30による省動力冷却モードの設定状態を維持する。
【0048】
これに対して、降雨時のように空気湿度が高くて車両窓ガラスが曇りやすい条件が発生して、乗員が空調操作パネル36の吹出モードスイッチ39を操作して吹出モードのうちデフロスタモードを選択したときはステップS50に進み、デフロスタモードおよび最大冷却モードを設定する。
【0049】
具体的には、ドア23、24によりフェイス吹出口20およびフット吹出口21を閉塞し、ドア22によりデフロスタ吹出口19を全開して、デフロスタ吹出口19から空調風を前面窓ガラスWの内面側へ吹き出すデフロスタモードを設定する。また、蒸発器吹出空気温度の目標温度として凍結温度付近の低めの第1目標温度(例えば、3℃〜4℃程度)を設定して、最大冷却モードを設定する。
【0050】
次のステップS60では、デフロスタモードが解除されたか判定する。具体的には、乗員が空調操作パネル36の吹出モードスイッチ39を操作して、デフロスタモード以外の他の吹出モードを選択したか判定する。デフロスタモードが維持されている間は、ステップS50によるデフロスタモードおよび最大冷却モードの設定を維持する。
【0051】
そして、乗員がデフロスタモード以外の他の吹出モードを選択するとデフロスタモードが解除されるので、ステップS70に進み、省動力冷却モードを設定するとともに、電気発熱体61をON状態とする。
【0052】
次のステップS80では車両前面窓ガラスWの防曇判定を湿度センサ55により検出される前面窓ガラスW内面付近の相対湿度RHに基づいて行う。具体的には、前面窓ガラスW内面付近の相対湿度RHが所定値以上の時は前面窓ガラスWの曇りが発生しやすい状況にあるので、防曇判定は防曇不可(NO)となり、ステップS70に戻って、省動力冷却モードの設定および電気発熱体61のON状態を維持する。
【0053】
これに対し、前面窓ガラスW内面付近の相対湿度RHが所定値未満に低下した時は前面窓ガラスWの曇りが発生しない状況にあるので、防曇判定は防曇OK(YES)と判定して、ステップS90に進み、電気発熱体61をOFF状態とし、ステップS30に戻る。
【0054】
一方、冬期の降雨時のように、車両窓ガラスの防曇性能と乗員足元部の暖房効果を同時に発揮したい条件が発生して、乗員が空調操作パネル36の吹出モードスイッチ39を操作して吹出モードのうちフットデフロスタモードを選択したときはステップS40からステップS100に進み、フットデフロスタモード、省動力冷却モード、および電気発熱体61のON状態を設定する。
【0055】
具体的には、ドア23によりフェイス吹出口20を閉塞し、ドア22、24によりデフロスタ吹出口19およびフット吹出口21をともに開口して、デフロスタ吹出口19から空調風を前面窓ガラスWの内面側へ吹き出すと同時に、フット吹出口21から空調風を乗員足元部へ吹き出す。
【0056】
ここで、空調風の吹出温度はエアミックスドア17の開度により調節することができ、冬期であれば、ヒータコア15を通過する温風の風量割合をバイパス通路16を通過する冷風の風量より多くして、所望温度の温風を前面窓ガラスWの内面側および乗員足元部側へ吹き出すことができる。
【0057】
次のステップS110ではフットデフロスタモードが解除されたか判定する。この判定は前述のステップS60の判定と同様に、フットデフロスタモード以外の吹出モードが選択されたかどうかで判定できる。フットデフロスタモードの選択が維持されている間は、ステップS100に戻って、フットデフロスタモード、省動力冷却モード、および電気発熱体61のON状態を維持する。
【0058】
これに対し、フットデフロスタモードの解除を判定すると、ステップS90に進み、電気発熱体61をOFF状態とし、ステップS30に戻る。
【0059】
次に、第1実施形態の作用効果を説明すると、(1)デフロスタモードが選択されたときはステップS50にてデフロスタモードの設定と同時に最大冷却モードを設定する。この最大冷却モードでは蒸発器吹出空気温度の目標温度として凍結温度付近の低めの第1目標温度(例えば、3℃〜4℃程度)を設定して、蒸発器9による冷却除湿性能を最大にするから、蒸発器9により最大限に冷却除湿された低湿度の空調風をデフロスタ吹出口19から前面窓ガラスWの内面側へ吹き出すことができる。
【0060】
乗員によるデフロスタモードの選択は一般に、前面窓ガラスWの曇りによる車両前方視界の阻害を速やかに除去したいという緊急性のある判断に基づくものであるが、上記のように蒸発器9の冷却除湿性能を最大に発揮することにより、前面窓ガラスWの曇りを急速に除去することができ、車両前方視界を速やかに確保できる。従って、デフロスタモードに要請される緊急性のある曇り除去機能を良好に果たすことができる。
【0061】
(2)しかも、デフロスタモードが解除されると、直ちに、ステップS70にて圧縮機11の作動モードを最大冷却モードから省動力冷却モードに切り替えるため、圧縮機11の駆動動力を直ちに低減できる。すなわち、省動力冷却モードでは蒸発器吹出空気温度の目標温度を、上記第1目標温度より十分高めの第2目標温度(例えば、10℃〜12℃程度)に設定するから、圧縮機11の作動の断続制御における圧縮機稼働率が低下して圧縮機11の駆動動力を低減できる。
【0062】
このとき、圧縮機11の作動モードを省動力冷却モードに切り替えることにより、蒸発器9の冷却除湿性能が低下するが、ステップS70では省動力冷却モードの設定と同時に、電気発熱体61をON状態にして前面窓ガラスWを直接電気発熱体61により加熱して、前面窓ガラスWの温度を上昇させることができる。これにより、前面窓ガラスWの内面付近の空気の相対湿度を低下させて、デフロスタモードの解除後に前面窓ガラスWが再度曇ることを防止できる。
【0063】
なお、電気発熱体61をON状態にすることに伴って、車載のバッテリ充電用発電機(図示せず)の発電負荷が増加し、車両エンジンの発電機駆動動力が増加するが、この発電機駆動動力の増加分は上記した圧縮機11の駆動動力の低減分より大幅に小さいから、車両エンジン全体の駆動負荷が減少して車両エンジンの燃費を向上できる。
【0064】
(3)フットデフロスタモードはデフロスタモードに比較して本来、前面窓ガラスWの曇り除去に対する緊急性が低いので、デフロスタモード並に防曇性能を高める必要性がない。そこで、第1実施形態では、フットデフロスタモードが選択されると、ステップS100においてフットデフロスタモードの設定と同時に省動力冷却モードと電気発熱体61のON状態とを設定している。
【0065】
これにより、ある程度の防曇性能を確保しつつ、圧縮機11の駆動動力を低減して車両エンジンの燃費を向上できる。
【0066】
(第2実施形態)
図3は第2実施形態であり、図2と同等のステップには同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態との相違点について主に説明する。第1実施形態ではステップS60においてデフロスタモードの解除を判定しないとき(判定がNOのとき)はステップS50に直接戻るようにしているが、第2実施形態では、ステップS60においてデフロスタモードの解除を判定しないとき(判定がNOのとき)はステップS120に進み、ステップS50で設定された最大冷却モードの経過時間が所定時間t2(例えば、5分程度)経過したか判定する。
【0067】
最大冷却モードの経過時間が所定時間t2以内であるときはステップS50に戻り、デフロスタモードと最大冷却モードの設定を維持する。そして、最大冷却モードの経過時間が所定時間t2を超えると、ステップS130に進み、デフロスタモードおよび最大冷却モードの設定と同時に電気発熱体61をON状態に設定する。
【0068】
これにより、蒸発器9により最大限に冷却除湿された低湿度の空調風をデフロスタ吹出口19から前面窓ガラスWの内面側へ吹き出すことができるとともに、電気発熱体61をON状態にして前面窓ガラスWを直接電気発熱体61により加熱して、前面窓ガラスWの温度を上昇させることができる。この結果、前面窓ガラスWの防曇性能をより一層向上できる。従って、冬期の降雨時とか乗車人員が多いときのように前面窓ガラスWが非常に曇りやすい条件にあるときでも、前面窓ガラスWの曇りを急速に除去できる。
【0069】
次のステップS140では、再び、デフロスタモードが解除されたか判定する。デフロスタモードが解除されていないときは、ステップS150に進み、ステップS130による最大冷却モードと電気発熱体61のON状態との同時設定のデフロスタモードの経過時間が所定時間t3(例えば、1分〜2分程度)経過したか判定する。
【0070】
ステップS130によるデフロスタモードの経過時間が所定時間t3以内である間はステップS130のデフロスタモードを維持する。そして、ステップS130によるデフロスタモードの経過時間が所定時間t3を超えると、ステップS160に進み、圧縮機11の作動モードを省動力冷却モードに切り替えて、省動力冷却モードと電気発熱体61のON状態との同時設定によるデフロスタモードを実行する。
【0071】
次のステップS170では、再び、デフロスタモードが解除されたか判定し、デフロスタモードが解除されるまで、ステップS160による省動力冷却モードと電気発熱体61のON状態との同時設定のデフロスタモードを維持する。
【0072】
そして、ステップS60、S140、S170においてそれぞれデフロスタモードの解除を判定すると、ステップS70に進み、第1実施形態と同様に、省動力冷却モードと電気発熱体61のON状態を維持して、前面窓ガラスWが再度曇ることを防止する。
【0073】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形可能である。
(1)上述の実施形態ではステップS80における防曇判定を湿度センサ55により検出される前面窓ガラスWの内面付近の相対湿度RHに基づいて行っているが、湿度センサ55以外の手段、例えば、降雨の有無、具体的には、ワイパスイッチの投入時(降雨時)は防曇不可と判定し、ワイパスイッチの非投入時(非降雨時)は防曇OKと判定するようにしてもよい。
【0074】
(2)上述の実施形態では電気発熱体61のON(通電)状態の制限について特に言及していないが、電気発熱体61への通電による消費電力は大きいので、車載バッテリBの過放電の原因となる。そこで、車載バッテリBの充電状態を車載バッテリBの電圧等に基づいて判定し、車載バッテリBが所定レベル以下の充電状態にあると判定したときに、電気発熱体61のON(通電)状態を自動的にキャンセルし、これにより、車載バッテリBの過放電を未然に防止するようにしてもよい。
【0075】
また、車両エンジンの制御装置(エンジンECU)に、車載バッテリBの充電状態を判定する機能が具備されている場合はエンジン制御装置によるバッテリ充電状態判定信号を利用して、電気発熱体61のON(通電)状態の自動キャンセルを行うようにしてもよい。
【0076】
(3)上述の実施形態では、空調用圧縮機11として吐出容量が所定容量に固定された通常の固定容量型圧縮機を用いて、この固定容量型圧縮機11の作動を断続させて、蒸発器吹出空気温度を目標温度となるように制御しているが、空調用圧縮機11として吐出容量を変化させることができる可変容量型の圧縮機(例えば、周知の斜板式可変容量型圧縮機)を用いて、この可変容量型圧縮機の吐出容量を変化させることにより蒸発器吹出空気温度を目標温度となるように制御してもよい。
【0077】
(4)上述の実施形態では、空調用圧縮機11の作動制御による制御対象温度を蒸発器吹出空気温度としているが、蒸発器吹出空気温度の代わりに、蒸発器9のフィン表面温度等を制御対象温度としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の全体概要図である。
【図2】第1実施形態の空調防曇制御を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態の空調防曇制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
9…蒸発器、11…空調用圧縮機、61…電気発熱体、W…前面窓ガラス。
Claims (5)
- 前面窓ガラス(W)を直接加熱する電気発熱体(61)を備える車両において、
空調用圧縮機(11)の作動制御により冷房用熱交換器(9)の温度を凝縮水の凍結温度付近の第1目標温度に制御する最大冷却モードと、
前記空調用圧縮機(11)の作動制御により前記冷房用熱交換器(9)の温度を、前記第1目標温度をより高い第2目標温度に制御する省動力冷却モードとを切り替え可能とし、
前記冷房用熱交換器(9)を通過した空調風を前記前面窓ガラス(W)の内面に吹き出すデフロスタモード時に前記最大冷却モードを設定し、
前記デフロスタモードが解除されると、前記最大冷却モードを前記省動力冷却モードに切り替えるとともに、前記電気発熱体(61)に通電することを特徴とする車両用空調防曇制御装置。 - 前面窓ガラス(W)を直接加熱する電気発熱体(61)を備える車両において、
空調用圧縮機(11)の作動制御により冷房用熱交換器(9)の温度を凝縮水の凍結温度付近の第1目標温度に制御する最大冷却モードと、
前記空調用圧縮機(11)の作動制御により前記冷房用熱交換器(9)の温度を、前記第1目標温度をより高い第2目標温度に制御する省動力冷却モードとを切り替え可能とし、
前記冷房用熱交換器(9)を通過した空調風を前記前面窓ガラス(W)の内面に吹き出すデフロスタモード時に前記最大冷却モードを設定し、
前記デフロスタモードにおいて、前記最大冷却モード設定後の経過時間が所定時間以上になると、前記最大冷却モードを維持したまま前記電気発熱体(61)に通電することを特徴とする車両用空調防曇制御装置。 - 前記デフロスタモードにおいて前記電気発熱体(61)に通電後の経過時間が所定時間以上になると、前記電気発熱体(61)への通電を維持したまま前記最大冷却モードを前記省動力冷却モードに切り替えることを特徴とする請求項2に記載の車両用空調防曇制御装置。
- 前記デフロスタモードの解除後に前記前面窓ガラス(W)の防曇状態を判定して、前記前面窓ガラス(W)が防曇状態にあると判定すると、前記電気発熱体(61)の通電を停止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用空調防曇制御装置。
- 前記冷房用熱交換器(9)を通過した空調風を前記前面窓ガラス(W)の内面および乗員足元部の両方に吹き出すフットデフロスタモードが選択されたときは、前記省動力冷却モードを設定して前記電気発熱体(61)に通電することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調防曇制御装置。
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